(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592958
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造、及び、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20191010BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20191010BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20191010BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20191010BHJP
E04B 5/32 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
E04B1/30 Z
E04B1/26 E
E04B1/94 R
E04B1/58 603
E04B5/32 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-98210(P2015-98210)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-211327(P2016-211327A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 富雄
(72)【発明者】
【氏名】山中 昌之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 博則
【審査官】
土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−046286(JP,A)
【文献】
特開2015−014154(JP,A)
【文献】
特開2001−342612(JP,A)
【文献】
特開2006−307606(JP,A)
【文献】
特開2015−059347(JP,A)
【文献】
実開昭62−149502(JP,U)
【文献】
特開2014−234688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04C 3/00 − 3/46
E04B 1/58
E04B 1/94
E04B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木質板材が積層されて綴り材により一体化され、隣接する前記木質板材のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設され上方に開放された凹部を有する荷重支持層、
前記荷重支持層の両側面と下面とにわたって配置される燃え止まり層、及び、
前記燃え止まり層の両側面と下面とにわたって配置される木質材からなる燃えしろ層、
を備えた耐火構造材でなる耐火構造材梁と、
前記凹部に嵌合されて上方に突出する突出部を有する鋼板、及び、前記鋼板の前記突出部に設けられ前記鋼板の面と交差する方向に突出する鋼製の棒状部材、を有する接合部材と、
前記突出部及び前記棒状部材が埋設されたコンクリートスラブと、を有し、
前記荷重支持層、前記燃え止まり層及び前記燃えしろ層の上面は、前記コンクリートスラブに覆われていることを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造であって、
前記荷重支持層は、互いに対向する前記木質板材でなる一対の端板部と、前記一対の端板部の間に設けられ前記木質板材でなる内側木質部と、を有し、
前記凹部は、前記内側木質部の両側にて各々、隣接する前記端板部と前記内側木質部とのうちの一方に設けられていることを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造であって、
前記棒状部材は、前記鋼板に設けられたスタッドであることを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造であって、
前記鋼板は、前記突出部に貫通孔を有し、
前記棒状部材は、前記貫通孔に貫通されて係止部材により前記鋼板に係止された鋼棒であることを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造。
【請求項5】
積層される複数の木質板材を有し互いに対向する2枚の前記木質板材のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設させて上方が開放された凹部を形成し、前記複数の木質板材を積層して綴り材を貫入することにより一体化して荷重を支持するための荷重支持層を形成し、
前記荷重支持層の両側面と下面とにわたって燃え止まり層を形成し、
前記燃え止まり層の両側面と下面とにわたって燃えしろ層を形成して耐火構造材梁を形成する耐火構造材梁形成ステップと、
前記耐火構造材梁の前記凹部に、鋼板と前記鋼板の面と交差する方向に突出する鋼製の棒状部材とを有する接合部材を上方に突出させて嵌合する接合部材取付ステップと、
前記鉄筋と前記耐火構造材梁上に突出している前記接合部材とを埋設させてコンクリートを打設するスラブ形成ステップと、
を有することを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造、及び、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造としては、たとえば、単材を複数集成し単材同士を接着して一体化した梁心材の上面に、梁心材の長手方向に沿って略等間隔に複数配置された角材状の単材と、この単材と略直交するように配置された単材とを固定することにより凹部を形成し、その上にコンクリートを打設して床スラブが形成される梁床接合構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−241506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような梁床接合構造は、梁心材の上面に凹部を形成するために、多数の単材を配置して固定しなければならず、作業が繁雑で多大な時間を費やさなければならないという課題がある。
【0005】
本発明はかかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工が容易な耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造、及び、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造は、複数の木質板材が積層されて綴り材により一体化され、隣接する前記木質板材のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設され上方に開放された凹部を有する荷重支持層、
前記荷重支持層の両側面と下面とにわたって配置される燃え止まり層、及び、
前記燃え止まり層の両側面と下面とにわたって配置される木質材からなる燃えしろ層、
を備えた耐火構造材でなる耐火構造材梁と、
前記凹部に嵌合されて上方に突出する突出部を有する鋼板、及び、前記鋼板の前記突出部に設けられ前記鋼板の面と交差する方向に突出する鋼製の棒状部材、を有する接合部材と、
前記突出部及び前記棒状部材が埋設されたコンクリートスラブと、を有し、
前記荷重支持層、前記燃え止まり層及び前記燃えしろ層の上面は、前記コンクリートスラブに覆われていることを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造
である。
【0007】
このような耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造によれば、コンクリートスラブに埋設される鋼製の棒状部材が設けられた鋼板は、耐火構造材梁の荷重支持層に設けられた凹部に突出させて嵌合されているので、簡単な構成で強固に耐火構造材梁とコンクリートスラブとを接合することが可能であり、容易に施工することが可能である。また、凹部は、隣接する木質板材のうちの一方の、他方と対向する対向面に他方の対向面から離れる方向に凹設されて形成されている。すなわち、凹部は木質板材の側面に形成されているので、精度良く形成することが可能であり、高い強度を備えて嵌合された接合部材を備えることが可能である。このため、耐火構造材梁とコンクリートスラブとをより強固に接合することが可能である。また、接合部材が鋼板と、鋼板の面と交差する方向に突出する棒状部材なので、より大きなせん断力に抗することが可能である。
【0008】
かかる耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造であって、
前記荷重支持層は、互いに対向する前記木質板材でなる一対の端板部と、前記一対の端板部の間に設けられ前記木質板材でなる内側木質部と、を有し、
前記凹部は、前記内側木質部の両側にて各々、隣接する前記端板部と前記内側木質部とのうちの一方に設けられていることが望ましい。
【0009】
このような耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造によれば、一対の端板部と内側木質部とが綴り材により一体化された荷重支持層の内側木質部の両側にて各々設けられた凹部に接合部材が嵌合されているので、耐火構造材梁とコンクリートスラブとをより強固に接合することが可能である。
【0010】
かかる耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造であって、
前記棒状部材は、前記鋼板に設けられたスタッドであることが望ましい。
【0011】
このような耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造によれば、接合部材が鋼板と、鋼板に設けられたスタッドなので、スタッドが設けられた鋼板を嵌合するだけでより容易に耐火構造材梁に接合部材を設けることが可能である。
【0012】
かかる耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造であって、
前記鋼板は、前記突出部に貫通孔を有し、
前記棒状部材は、前記貫通孔に貫通されて係止部材により前記鋼板に係止された鋼棒であることが望ましい。
【0013】
このような耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造によれば、鋼板の突出部に設けられた貫通孔に鋼棒を貫通させて係止部材により係止するだけで容易に耐火構造材梁に接合部材を設けることが可能である。また、鋼板と鋼棒なので、部材の手配、在庫の管理等が容易である。
【0014】
また、積層される複数の木質板材を有し互いに対向する2枚の前記木質板材のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設させて上方が開放された凹部を形成し、前記複数の木質板材を積層して綴り材を貫入することにより一体化して荷重を支持するための荷重支持層を形成し、
前記荷重支持層の両側面と下面とにわたって燃え止まり層を形成し、
前記燃え止まり層の両側面と下面とにわたって燃えしろ層を形成して耐火構造材梁を形成する耐火構造材梁形成ステップと、
前記耐火構造材梁の前記凹部に、鋼板と前記鋼板の面と交差する方向に突出する鋼製の棒状部材とを有する接合部材を上方に突出させて嵌合する接合部材取付ステップと、
前記鉄筋と前記耐火構造材梁上に突出している前記接合部材とを埋設させてコンクリートを打設するスラブ形成ステップと、
を有することを特徴とする耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法である。
【0015】
このような耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法によれば、コンクリートスラブに埋設される鋼製の棒状部材が設けられた鋼板は、耐火構造材梁の荷重支持層に設けられた凹部に突出させて嵌合するだけなので、容易に取り付けることが可能である。また、凹部は、隣接する木質板材のうちの一方の、他方と対向する対向面に他方の対向面から離れる方向に凹設されて形成されているので、より容易に短時間で正確に形成することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、施工が容易な耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造、及び、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】接合部材が設けられた耐火構造材梁の一実施例を示す斜視図である。
【
図3】耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造の一実施例を示し耐火構造材梁の長手方向に破断した縦断面図である。
【
図4】耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造の一実施例を示し積層方向に沿って破断した縦断面図である。
【
図5】耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法を示す図である。
【
図7】係止部材の他の実施例を示し積層方向に沿って破断した縦断面図である。
【
図8】一枚の鋼板で構成された接合部材の実施例を示し積層方向に沿って破断した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
まず、コンクリートスラブと接合する耐火構造材梁をなす耐火構造材について説明する。
【0020】
図1は、耐火構造材の一実施形態を示す図である。本実施形態の耐火構造材1は、芯部をなし荷重を支持するための、木質材からなる荷重支持層2と、荷重支持層2の両側面と下面とにわたって配置される耐火材からなる燃え止まり層3と、燃え止まり層3の両側面と下面とにわたって配置される木質材からなる燃えしろ層4と、を備えている。すなわち、本耐火構造材の上面には、燃え止まり層3及び燃えしろ層4は設けられておらず、荷重支持層2の上面と、荷重支持層2の両側面に設けられた燃え止まり層3及び燃えしろ層4の上縁が露出している。
【0021】
荷重支持層2は、断面略矩形状をなし、製材、集成材、LVL等の板状をなす木質板材としての木質ブロック21を複数積層し、積層されている積層方向に綴り材としてのビス5が貫入されて一体化されている。以下の説明においては、荷重支持層2を形成し、積層された複数の木質ブロック21のうちの、積層方向において両端に位置する2枚の木質ブロック21をそれぞれ端板部21aと称し、一対の端板部21aの間に位置する1枚以上の木質ブロック21を内側木質部21bと称する。すなわち、荷重支持層2は、一対の端板部21a間に亘るビス5により一対の端板部21aと内側木質部21bとが接合されて一体化されている。ここで、内側木質部21bを構成する木質ブロック21は、1枚でも、複数積層されていても構わない。
【0022】
燃え止まり層3は、荷重支持層2の両側面と下面とにわたって覆うように両側面と下面とに耐火材としての石膏ボードがビスにより取り付けられている。ここで、燃え止まり層3を形成する部材は石膏ボードに限らず、例えば、高熱容量材であるモルタル、石材、ガラス、繊維補強セメント等の無機質材料、各種の金属材料の他、中空矩形断面の金属製のパイプ内に無機材料、液体金属、水、無機水和塩、消石灰等の蓄熱材料を充填して一体化したもの等であったり、断熱材である不燃木材、難燃処理材、珪酸カルシウム板、ロックウール、グラスウール等であったり、熱慣性の大きい木材であるセランガンバツ、ジャラ、ボンゴシ等であっても構わない。
【0023】
燃えしろ層4は、荷重支持層2と同様のひき板や単板(LVL)等からなる単材を複数集成した木質材が燃え止まり層3の両側面と下面とを覆うように両側面と下面とに接着剤により取り付けられている。
【0024】
図2は、接合部材が設けられた耐火構造材梁の一実施例を示す斜視図である。
図3は、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造の一実施例を示し耐火構造材梁の長手方向に破断した縦断面図である。
図4は、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合構造の一実施例を示し積層方向に沿って破断した縦断面図である。
【0025】
本実施形態においては、
図2〜
図4に示すように、上述した耐火構造材でなる耐火構造材梁6には、長手方向に適宜間隔を隔てて複数の接合部材7が耐火構造材梁6の上方に突出させて設けられており、突出している接合部材7の突出部7cを埋設して耐火構造材梁6上に鉄筋コンクリート造のコンクリートスラブ8が設けられている。
【0026】
接合部材7は、耐火構造材梁6の上方に突出部7cを突出させて嵌合された鋼板7aと、突出部7cに設けられた貫通孔7dに貫通される鋼棒7bとを有している。鋼棒7bは、係止部材としての番線(不図示)等により鋼板7aに固定されている。
【0027】
耐火構造材梁6の、内側木質部62bと隣接する一対の端板部62aには各々、内側木質部62bと対向する対向面に内側木質部62bから離れる方向に凹設されるとともに上方が開放され、接合部材7の鋼板7aが上方から嵌合される凹部62cが形成されている。凹部62cは、当該凹部62cに嵌合される鋼板7aが内側木質部62bを挟んで両側にて互いに対向する位置にそれぞれ設けられている。各凹部62cの積層方向の幅は、嵌合される鋼板7aの厚みより僅かに狭く形成されており、嵌合された鋼板7aが高い強度で嵌合されるように構成されている。
【0028】
各凹部62cに嵌合された鋼板7aは、積層方向に対向する2枚の鋼板7aの突出部7cにそれぞれ備えられた貫通孔7dに、単一の鋼棒7bが貫通可能に配置されている。
【0029】
耐火構造材梁6の上には、鋼板7aに固定された鋼棒7bの上下にそれぞれ位置させて、耐火構造材梁6に沿う方向と、略直交する方向とに鉄筋9が配筋され、コンクリートが打設されてコンクリートスラブ8が形成されている。このとき、コンクリートスラブ8の下面8aは耐火構造材梁6の荷重支持層62、燃え止まり層63及び燃えしろ層64の上縁に当接しており、荷重支持層62は、燃え止まり層63、燃えしろ層64、及びコンクリートスラブ8により覆われている。
【0030】
本実施形態の耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8との接合構造によれば、コンクリートスラブ8に鉄筋9とともに埋設される接合部材7は、耐火構造材梁6の荷重支持層62に設けられた凹部62cに突出させて嵌合されている鋼板7aと鋼棒7bなので、簡単な構成の部材により強固に耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8とを接合することが可能である。また、接合部材7を鋼板7aと鋼棒7bとにより構成したので、部材の手配、在庫の管理等も容易である。
【0031】
また、接合部材7は、鋼板7aを耐火構造材梁6に嵌合して、嵌合された鋼板7aに鋼棒7bを貫通させて固定するだけで耐火構造材梁6に取り付けられるので、短時間で容易にかつ確実に取り付けることが可能である。また、荷重支持層62の内側木質部62bの両側にて一対の端板部62aに各々設けられた凹部62cに接合部材7の鋼板7aが2枚嵌合されているので、耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8とをより強固に接合することが可能である。
【0032】
また、接合部材7が鋼板7aと、鋼板7aの面と交差する方向に突出する鋼棒7bにより構成されているので、例えば、スタッドボルトのみの場合より大きなせん断力に抗することが可能である。
【0033】
次に、耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8との接合方法の一実施例について説明する。
図5は、耐火構造材梁とコンクリートスラブとの接合方法を示す図である。
【0034】
耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8とを接合する場合には、凹部62cを備えた耐火構造材梁6を形成し(耐火構造材梁形成ステップS1)と、耐火構造材梁6の凹部62cに接合部材7を取り付ける(接合部材取付ステップS2)と、耐火構造材梁6の上方に鉄筋9を配置しコンクリートを打設してコンクリートスラブ8を形成する(スラブ形成ステップS3)。
【0035】
耐火構造材梁形成ステップS1では、まず、荷重支持層62を形成する複数の木質ブロック21のうちの積層方向において両端に配置されて一対の端板部62aをなす木質ブロック21の、内側木質部62bをなす木質ブロック21と対向する対向面に鋼板7aを嵌合するための凹部62cを形成する。このとき、凹部62cは、各端板部62aに、その長手方向に沿って適宜間隔を隔てて複数設けておく。また、凹部62cは、鋼板7aの厚みより僅かに浅く、各端板部62aの側面に設けておく。さらに、鋼板7aを凹部62cに嵌合したときに、耐火構造材梁6の上方に、貫通孔7dが設けられている鋼板7aの上部が突出するように形成しておく。
【0036】
次に、内側木質部62bを一対の端板部62aの間に介在させて一対の端板部62aと内側木質部62bとを積層し、凹部62cを避けてビス5により内側木質部62bと端板部62aとを一体化して荷重支持層62を形成する。このとき、一対の端板部62aにそれぞれ設けられた凹部62cが積層方向に並ぶように、一対の端板部62aと内側木質部62bとを配置しておく。
【0037】
次に、荷重支持層62の両側面と下面とに石膏ボードをビスにより固定して燃え止まり層63を形成する。このとき、側面の石膏ボードと下面の石膏ボードとの間に隙間が生じないように、すなわち側面の石膏ボードと下面の石膏ボードとが互いに当接して石膏ボードが両側面と下面とにわたるように配置する。
【0038】
次に、燃え止まり層63の両側面と下面とに木質ブロック21を接着して燃えしろ層64を形成する。このとき、側面の木質ブロック21と下面の木質ブロック21との間に隙間が生じないように、すなわち側面の木質ブロック21と下面の木質ブロック21とが互いに当接して木質ブロック21が両側面と下面とにわたるように配置する。
【0039】
接合部材取付ステップS2では、まず、接合部材7とともに施工現場に搬入された耐火構造材梁6の凹部62cに、施工現場において接合部材7の鋼板7aを嵌合する。次に、積層方向に並べて形成された凹部62cに嵌合されて対向する2枚の鋼板7aの貫通孔7dに鋼棒7bを貫通させ番線等により鋼棒7bを鋼板7aに固定する。
【0040】
スラブ形成ステップS3では、複数設けられている耐火構造材梁6の間にコンクリートスラブ8を形成するための型(不図示)を配設するとともに、接合部材7の鋼棒7bより高い位置及び低い位置を通るように耐火構造材梁6の長手方向及び長手方向と略直交する方向に鉄筋9を配筋する。
【0041】
次に、配設した型にコンクリートを打設してコンクリートスラブ8を形成する。コンクリートが硬化することにより、接合部材7を介して耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8とがより強固に接合される。このとき、各耐火構造材梁6の上部がコンクリートスラブ8により覆われることにより、各耐火構造材梁6の荷重支持層62が、燃え止まり層63、燃えしろ層64、コンクリートスラブ8により覆われる。
【0042】
本実施形態の耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8との接合方法によれば、コンクリートスラブ8に鉄筋9とともに埋設される鋼板7aは、耐火構造材梁6の荷重支持層62に設けられた凹部62cに突出させて嵌合するだけなので、容易に取り付けることが可能である。また、凹部62cは、隣接する木質ブロック21のうちの一対の端板部62aをなす木質ブロック21の、内側木質部62bをなす木質ブロック21と対向する対向面に内側木質部62bの対向面から離れる方向に凹設されて形成されている。このため、凹部62cは、木質ブロック21の側面を加工して形成することが可能なので、精度良く加工することが可能であり、高い精度に形成された凹部62cに嵌合された鋼板7aは高い強度にて耐火構造材梁6に固定される。このため、耐火構造材梁6とコンクリートスラブ8とをより強固に接合することが可能である。
【0043】
上記実施形態においては、接合部材7を、鋼板7aと、鋼板7aに形成された貫通孔7dを貫通する鋼棒7bとした例について説明したが、これに限るものではない。例えば、
図6に示すように、鋼板7aの一方の面に予め溶接等によりスタッド7e等が設けられている形態であっても構わない。
【0044】
上記実施形態においては、鋼棒7bを鋼板7aに番線により固定する例について説明したが、これに限らず、例えば、
図7に示すように、鋼棒7bの外周面に雄ねじを形成し、2枚の鋼板7aを貫通させた後に、鋼棒7bの両端からナット7fを螺合することにより鋼棒7bを鋼板7aに固定してもよい。また、鋼板7aの貫通孔7dの内周に雌ねじを形成し、雄ねじが形成された鋼棒7bを直接螺合してもよい。
【0045】
上記実施形態においては、鋼板7aを配置するための凹部62cを一対の端板部62aにそれぞれ設けた例について説明したが、対面する端板部と内側木質部との少なくともいずれか一方に設けられていれば構わない。
【0046】
また、上記実施形態においては、耐火構造材梁6の荷重支持層62が、一対の端板部62aと内側木質部62bとでなり、一対の端板部62aにそれぞれ凹部62cを設けて、内側木質部62bの両側に鋼板7aを配置した例につて説明したが、これに限るものではない。例えば、
図8に示すように、荷重支持層62をなし隣接する2枚の木質ブロック21のいずれかに備えられた凹部に嵌合された1枚の鋼板7aが耐火構造材梁6の長手方向に適宜間隔を隔てて設けられている構成であっても構わない。
【0047】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 耐火構造材
2 荷重支持層
3 燃え止まり層
4 燃えしろ層
5 ビス(綴り材)
6 耐火構造材梁
7 接合部材
7a 鋼板
7b 鋼棒(棒状部材)
7c 突出部
7d 貫通孔
7e スタッド(棒状部材)
7f ナット
8 コンクリートスラブ
8a 下面
9 鉄筋
21 木質ブロック(木質板材)
21a 端板部
21b 内側木質部
62 荷重支持層
62a 端板部
62b 内側木質部
62c 凹部
63 燃え止まり層
64 燃えしろ層