【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明の耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造は、
耐火構造材でなる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記耐火構造材柱は、荷重を支持するための、木質材からなる柱荷重支持層、
前記柱荷重支持層の外側に配置される柱燃え止まり層、及び、
前記柱燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる柱燃えしろ層、を有し、
前記耐火構造材梁と接合される上端部には、前記柱燃え止まり層及び前記柱燃えしろ層とが設けられずに前記柱荷重支持層が露出する露出部を有し、
前記耐火構造材梁は、互いに対向する木質板材でなる一対の梁端板部と、前記一対の梁端板部の間に設けられ木質板材でなる梁内側木質部とが綴り材により一体化された梁荷重支持層と、
前記梁荷重支持層の外側に配置される梁燃え止まり層と、
前記梁燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる梁燃えしろ層と、を有し、
前記梁荷重支持層の、前記耐火構造材柱と接合される先端部は、前記梁内側木質部の両側にて各々隣接する前記梁端板部と前記梁内側木質部とのうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設された2つの梁凹部を有しており、
前記耐火構造材梁に設けられた前記梁燃え止まり層のうちの、前記梁荷重支持層よりも下側に設けられた部分は、前記梁凹部と連続する部位を有さず、
前記露出部に対面させて当接される基板部と、前記基板部と交差する方向に突出する2つの突出板部とを有する鋼製の接合金具の前記基板部が前記露出部に固定され、前記柱燃えしろ層より外側に突出する前記2つの突出板部が、前記2つの梁凹部に各々挿入され、前記2つの突出板部を貫通する接合綴り材が前記一対の梁端板部間に亘って貫入されていることを特徴とする耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造である。
【0007】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、耐火構造材柱に固定された鋼製の接合金具の、柱燃えしろ層より外側に突出する2つの突出板部が、耐火構造材梁が有する2つの梁凹部に挿入されており、2つの突出板部を貫通する接合綴り材が一対の梁端板部間に亘って貫入されているので、2つの突出板部により梁内側木質部を挟持して耐火構造材柱と耐火構造材梁とを強固に接合することが可能である。また、耐火構造材梁の梁荷重支持層は、木質板材でなる一対の梁端板部と木質板材でなる梁内側木質部とが綴り材により一体化されて形成されているので、容易に形成することが可能である。また、耐火構造材柱と耐火構造材梁とを接合するために、耐火構造材柱に設けられた接合金具の突出板部が挿入される2つの梁凹部は、隣接する梁端板部と梁内側木質部とのうちの一方の、他方と対向する対向面に他方の対向面から離れる方向に凹設されているので、梁凹部を端板部又は内側木質部の側面に形成することが可能である。このため、長尺の梁の小口に溝を形成するよりも容易に正確な梁凹部を形成することが可能である。また、予め形成された梁凹部に鋼板を配置して接合綴り材を貫入するだけなので、容易に施工することが可能である。
【0008】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記接合金具の前記基板部は、前記柱荷重支持層を挟んで反対側に設けられる鋼製の裏板部材及び前記柱荷重支持層とともにボルトが貫通されており、
前記接合金具は、前記ボルトにナットが締め付けられることにより前記裏板部材とともに前記柱荷重支持層を挟持して固定されていることが望ましい。
【0009】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、接合金具は柱荷重支持層を挟んで両側に配置される接合金具の基板部と裏板部材を貫通するボルトにナットを締め込んで固定するので、強固にかつ確実に固定することが可能である。
【0010】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記接合金具は、前記柱荷重支持層を挟んで当該柱荷重支持層の両側にそれぞれ設けられ、各々の前記接合金具の前記基板部と前記柱荷重支持層とに貫通されたボルトにナットが締め付けられることにより2つの前記接合金具の前記基板部により前記柱荷重支持層を挟持して固定され
前記2つの接合金具が備える前記突出板部には、各々互いに異なる耐火構造材梁が接合されていることが望ましい。
【0011】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、柱荷重支持層を挟んで両側に設けられた接合金具の各基板部と柱荷重支持層とに貫通されたボルトにナットが締め付けられて固定された接合金具の突出板部に各々互いに異なる耐火構造材梁が接合されているので、裏板部材等の別の部材を用いること無く、2本の耐火構造材梁を耐火構造材柱に効率良く接合することが可能である。また、2つの接合金具は、基板部により柱荷重支持層を挟持して固定されているので、耐火構造材柱に強固に接合することが可能である。
【0012】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記耐火構造材柱の柱荷重支持層は、互いに対向する前記木質板材でなる一対の柱端板部と、前記一対の前記柱端板部の間に設けられ前記木質板材でなる柱内側木質部とが綴り材により一体化され、前記耐火構造材柱の小口から突出する突出部を有し、
前記耐火構造材柱は、当該耐火構造材柱の上に配置され、
荷重を支持し、互いに対向する前記木質板材でなる一対の上柱端板部と、前記一対の上柱端板部の間に設けられ前記木質板材でなる上柱内側木質部とが綴り材により一体化された上柱荷重支持層、
前記上柱荷重支持層の外側に配置される上柱燃え止まり層、及び、
前記上柱燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる上柱燃えしろ層、を有する上耐火構造材柱と接合され、
前記上耐火構造材柱は、前記耐火構造材柱と互いに小口を合わせて重ねられたときに、前記突出部が挿入されて、前記柱内側木質部と前記上柱内側木質部とが当接される挿入凹部を有し、
前記突出部が前記挿入凹部に挿入された状態で、前記一対の柱端板部のうちの少なくともいずれか一方の前記柱端板部と前記柱内側木質部との間及び前記一対の上柱端板部のうちの少なくともいずれか一方の前記上柱端板部と前記上柱内側木質部との間に、前記耐火構造材柱と前記上耐火構造材柱との間に亘って形成される空隙部に配置され、前記耐火構造材柱の前記小口より突出された前記柱内側木質部とともに前記突出部をなす鋼板を有し、
前記耐火構造材柱は、前記ボルトが前記鋼板を貫通し、
前記上耐火構造材柱は、前記鋼板を貫通する接合綴り材が前記一対の上柱端板部間に亘って貫入されていることが望ましい。
【0013】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、上下に位置する耐火構造材柱と上耐火構造材柱とを接合するために、耐火構造材柱と上耐火構造材柱との間に亘って鋼板が挿入される空隙部は、一対の柱端板部のうちの少なくともいずれか一方の柱端板部と柱内側木質部との間及び一対の上柱端板部のうちの少なくともいずれか一方の上柱端板部と上柱内側木質部との間に、柱端板部、柱内側木質部、上柱端板部及び上柱内側木質部のいずれかの側面に凹設されているので、長尺の柱の小口に溝を形成するよりも容易に正確な空隙部を形成することが可能である。また、予め形成さえた空隙部に鋼板を配置して接合綴り材を貫入するだけなので、容易に施工することが可能である。
【0014】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記鋼板は、前記耐火構造材柱の上端部から、当該鋼板の面に沿って側方に延出された梁接合部を有し、
前記梁接合部に、
互いに対向する前記木質板材でなる一対の他の梁端板部と、前記一対の他の梁端板部の間に設けられ前記木質板材でなる他の梁内側木質部とが綴り材により一体化された他の梁荷重支持層と、
前記他の梁荷重支持層の外側に配置される他の梁燃え止まり層と、
前記他の梁燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる他の梁燃えしろ層と、を有する前記耐火構造材でなる他の耐火構造材梁が接合されていることが望ましい。
【0015】
このような接合構耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、耐火構造材柱と上耐火構造材とを接合するための鋼板に設けられた、鋼板の面に沿って側方に延出された梁接合部に他の耐火構造材梁を接合するので、他の耐火構造材梁を接合するための部材を増やすこと無く他の耐火構造材梁を容易に接合することが可能である。
【0016】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記他の耐火構造材梁は、一対の前記他の端板部と前記他の内側木質部との間に備えられ前記梁接合部が挿入される鋼板挿入部を備え、
前記一対の他の端板部間に亘り前記梁接合部を貫通する接合綴り材により接合されていることが望ましい。
【0017】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、他の耐火構造材梁に設けられた鋼板挿入部に梁接合部を挿入して接合綴り材を貫入するだけで容易に短時間で他の耐火構造材梁を接合することが可能である。
【0018】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記耐火構造材梁及び前記他の耐火構造材梁の上にスラブが形成されていることが望ましい。
【0019】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、耐火構造材梁及び他の耐火構造材梁に支持されるスラブを形成することが可能である。また、耐火構造材梁及び他の耐火構造材梁の上面がスラブに覆われるので、より高い耐火性を備えることが可能である。
【0020】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記耐火構造材梁の前記梁燃え止まり層には前記接合綴り材が挿通される燃え止まり層挿通孔が形成されており、
前記燃え止まり層挿通孔には、燃え止まり機能を有する部材が封入されていることが望ましい。
【0021】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、梁燃え止まり層は、接合綴り材が挿通される燃え止まり層挿通孔にも燃え止まり機能を有する部材が封入されているので、梁荷重支持層全体を隙間無く梁燃え止まり層で囲うことが可能である。このため、より耐火性の高い耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造を実現することが可能である。
【0022】
かかる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造であって、
前記耐火構造材梁の前記梁燃えしろ層には前記接合綴り材が挿通される燃えしろ層挿通孔が形成されており、
前記燃えしろ層挿通孔には、前記梁燃えしろ層と同じ材質の部材が封入されていることが望ましい。
【0023】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合構造によれば、梁燃えしろ層は、接合綴り材が挿通される燃えしろ層挿通孔にも梁燃えしろ層と同じ材質の部材が挿入されているので、梁燃え止まり層全体を隙間無く、単一の材質でなる梁燃えしろ層により囲うことが可能である。
【0024】
また、 耐火構造材でなる耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合方法であって、
荷重を支持するための、木質材からなる柱荷重支持層の第一側面に、基板部と、前記基板部と交差する方向に突出する2つの突出板部とを有する鋼製の接合金具の前記基板部を対面させて当接し、前記第一側面と前記柱荷重支持層を挟んで反対側に位置する第二側面に配置した裏板部材、前記基板部及び前記柱荷重支持層にボルトを貫通させて接合金具を固定し、前記接合金具が固定されている部位を除き、前記裏板部材が固定されている部位の外側を覆うとともに前記柱荷重支持層の外側に燃え止まり層を形成し、前記燃え止まり層の外側に燃えしろ層を形成して耐火構造材柱を形成する柱形成ステップと、
木質板材でなり対向する一対の梁端板部及び前記一対の梁端板部の間に設けられる梁内側木質部のうちの一方の、他方と対向する対向面に前記他方の対向面から離れる方向に凹設された梁凹部を、前記梁内側木質部の両側に位置するように各々形成し、前記一対の梁端板部と前記梁内側木質部とを積層し綴り材を貫入することにより一体化して荷重を支持するための梁荷重支持層を形成し、
前記梁荷重支持層の外側に配置される梁燃え止まり層と、
前記梁燃え止まり層の外側に配置される木質材からなる梁燃えしろ層と、を形成して前記耐火構造材梁を形成する梁形成ステップと、
前記2つの突出板部を各々の前記梁凹部に挿入して、前記2つの突出板部を貫通する接合綴り材を前記一対の梁端板部の間に亘らせて貫入する接合ステップと、
を有し、
前記耐火構造材梁に設けられた前記梁燃え止まり層のうちの、前記梁荷重支持層よりも下側に設けられた部分は、前記梁凹部と連続する部位を有さないことを特徴とする耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合方法である。
【0025】
このような耐火構造材柱と耐火構造材梁との接合方法によれば、耐火構造材梁の梁荷重支持層は、木質板材でなる一対の梁端板部と木質板材でなる梁内側木質部とを綴り材により一体化するので、接着して乾燥するような時間を必要とせず、短時間に形成することが可能である。また、耐火構造材柱と耐火構造材梁とを接合するために、耐火構造材柱に設けられ接合金具の2つの突出板部が挿入される2つの梁凹部を、いずれも隣接する梁端板部と梁内側木質部とのうちの一方の、他方と対向する対向面に他方の対向面から離れる方向に凹設して形成するので、梁凹部を端板部又は内側木質部の側面に形成することが可能である。このため、長尺の梁の小口に溝を形成するよりも容易に正確な梁凹部を形成することが可能である。また、予め形成された梁凹部及び挿入凹部に鋼板を配置して接合綴り材を貫入するだけなので、容易に施工することが可能である。