(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、膨張を完了したエアバッグは、前記インフレータに着火信号が入力してから400ms以内までの間、内圧を保持することを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
請求項2において、前記インフレータは、燃焼試験用60リットルタンク内で作動した場合、作動開始後30msにおけるタンク内圧力が300〜400kPaであり、作動開始後40msにおけるタンク内圧力が450〜650kPaであることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、歩行者等の受け止めに好適な歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歩行者用エアバッグ装置は、自動車のAピラー、ウィンドシールド及びフードパネル後端部の少なくとも一部を被覆するように膨張するエアバッグと、前記エアバッグが折り畳まれて収容されたリテーナと、前記エアバッグを膨張させるためのインフレータと、を備える歩行者用エアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記インフレータに着火信号が入力してから30ms以内にフードパネル後端部を被覆し、30ms以降60ms以内に膨張を完了することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の一態様では、膨張を完了したエアバッグは、前記インフレータに着火信号が入力してから400ms以内までの間、内圧を保持する。
【0009】
本発明の別の一態様では、前記インフレータは、燃焼試験用60リットルタンク内で作動した場合、作動開始後30msにおけるタンク内圧力が300〜400kPaであり、作動開始後40msにおけるタンク内圧力が450〜650kPaである。
【0010】
本発明の別の一態様では、前記リテーナは車体幅方向に沿って延在し、車体幅方向端部において前記エアバッグが前記リテーナに取り付けられている箇所は、前記リテーナの車体幅方向の端部から100mm以内の範囲にある。
【0011】
本発明の別の一態様では、エンジンルーム内の後部の上部において左右の車体側メンバ間に架設される支持部材をさらに備え、前記リテーナは、車体前方を向いた前面壁、及び車体後方を向いた後面壁を有しており、前記リテーナは、前記支持部材上に配置され、複数個のブラケットによって前記支持部材に連結されており、前記ブラケットは、前記前面壁又は前記後面壁に固着された縦片と、該縦片の下縁に連なり、前記支持部材の上面に固定された横片とを有しており、前記ブラケットのうち少なくとも2個は、前記リテーナの車体幅方向中心から左右100mm以内の範囲に設けられている。
【0012】
本発明の別の一態様では、前記ブラケットのうち一部のものは、前記リテーナの車体幅方向の端部に設けられている。
【0013】
本発明の別の一態様では、前記リテーナの上面を覆うリッドにテアラインが設けられており、車体幅方向の中心部において、前記テアラインとフードパネルの後縁との間隔が最大となる。
【0014】
本発明の別の一態様では、前記リッドは、天板部と、この天板部の前縁部から垂下する前面壁と、天板部の後縁部から垂下する後面壁とを有しており、天板部の前部に前記テアラインが車体幅方向に延設されており、このテアラインよりも前側の天板前部と前面壁とに連なるようにリブが設けられている。
【0015】
本発明の別の一態様では、前記リッドは、天板部と、この天板部の前縁部から垂下する前面壁と、天板部の後縁部から垂下する後面壁とを有しており、天板部の前部に前記テアラインが車体幅方向に延設されており、このテアラインよりも前側の天板前部と前面壁とが交わる部分に凹部が設けられており、該凹部は、前面壁から後方に張り出す張出部と、天板前部と、天板前部のうちテアラインに沿う部分から垂下する縦壁部とによって囲まれている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグが、インフレータに着火信号が入力してから30ms以内にフードパネル後端部を被覆し、30ms以降60ms以内に膨張を完了するので、歩行者等の受け止めに好適なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。以下の説明において、前後及び左右は、歩行者用エアバッグ装置を搭載した自動車の前後及び左右を表わす。
【0019】
図1は実施の形態に係る歩行者用エアバッグ装置10を搭載した自動車1の前部の平面図であり、エアバッグ11が展開した状態を示している。
図2は、
図1のII−II線に沿った縦断面図である。
図3はエアバッグ11のリテーナ12への取り付け箇所の拡大断面図である。
図4は支持部材40に取り付けられた歩行者用エアバッグ装置10の斜視図であり、エアバッグ11がリテーナ12に収容された状態を示している。
図5は支持部材40に取り付けられた歩行者用エアバッグ装置10の平面図である。
図6は
図5のVI−VI線に沿った縦断面図である。
図7は、フードパネル2の後部及び歩行者用エアバッグ装置10の平面図である。
図8は歩行者用エアバッグ装置10に設けられたインフレータ13の出力特性を示すグラフである。
【0020】
図1に示すように、自動車1はフードパネル2、カウル3、ウィンドシールド4、Aピラー5、歩行者用エアバッグ装置10等を備えている。歩行者用エアバッグ装置10は、エンジンルーム内の後部の上部において車体左側及び右側にそれぞれ設けられた車体側メンバ(図示略)間に架設された支持部材40上に設置されている。車体側メンバとしては、例えばダンパーハウジングが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
この歩行者用エアバッグ装置10は、エアバッグ11と、折り畳まれたエアバッグ11を収容する函状のリテーナ12と、エアバッグ11を膨張させるためのインフレータ13と、リテーナ12に被さるリッド30等を備えている。
【0022】
エアバッグ11は基布(パネル)を縫製することにより構成されている。この実施の形態では、
図2に示すように、エアバッグ11の上面を構成するパネル15と、下面を構成するパネル16とが縫合糸17によって縫合されることによって、エアバッグ11が構成されている。
【0023】
エアバッグ11は、フードパネル2の後部からウィンドシールド4の前部までを覆うように膨張する主部11aと、該主部11aの左右両端側から後方に延出してAピラー5の少なくとも前部を被覆するように膨張する1対のピラー被覆部11b,11bとを有している。主部11a及びピラー被覆部11b,11bは連通している。
【0024】
エアバッグ11が膨張した状態において、主部11aは、自動車1の左端から右端まで連続して延在している。
【0025】
図4,5に明示される通り、支持部材40は、車体幅方向に延在した長尺の主橋部45と、主橋部45の長手方向両端側にそれぞれ連なり、先端側ほど下位となるように傾斜した立下り部46と、各立下り部46の先端側からそれぞれ略水平に延出した取付片部47とを有する。取付片部47の車両後方側は、車体幅方向に張り出した張出部48になっている。
【0026】
取付片部47にはボルト挿通孔42が設けられており、該ボルト挿通孔42は、前記車体側メンバの雌螺子孔(図示略)に対し同軸的に重なるようになっている。また、支持部材40の車体後方側の縁部には、複数のボルト挿通孔44が車体幅方向に間隔を空けて設けられている。このボルト挿通孔44に挿通されたボルト(図示略)によって、支持部材40の車体後方側の縁部は、車体から伸びた薄板(図示略)に締結されるようになっている。
【0027】
リテーナ12は、支持部材40の上面に沿って延在する長函状であり、長手方向の両側の端部12aに、側面視形状が略L字形のブラケット32の縦片32aが溶接等により固着されている。ブラケット32は、縦片32a及び横片32bを有している。縦片32aは、車体の側方に向かって下り勾配となっており、その下端側から、略水平な横片32bが延設されている。この横片32bにボルト挿通孔32cが設けられている。ボルト挿通孔32cは、支持部材40に設けられたボルト挿通孔及び車体側メンバの雌螺子孔に重なるようになっている。
【0028】
リテーナ12の車体前方側の前面壁12fの前面、及び車体後方側の後面壁12rの後面には、側面視形状が略L字形のブラケット36の縦片36aがスポット溶接等により固着されている。ブラケット36は、縦片36a及び横片36bを有し、横片36bにボルト挿通孔が設けられている。縦片36aがリテーナ12の前面壁又は後面壁に重なり、スポット溶接等により固着されている。横片36bは、リテーナ12の底面12b(
図2参照)と同一高さに配置されているか、又はリテーナ12の底面12bよりも若干下位に位置している。
図6の通り、ボルト38を横片36b及び支持部材40のボルト挿通孔に通し、該ボルト38にナット38aを締め込むことで、リテーナ12が支持部材40に組み付けられる。
【0029】
また、ボルト挿通孔42、及びブラケット32のボルト挿通孔32cにそれぞれボルト(図示略)を通して車体側メンバの雌螺子孔に締め込む。さらに、ボルト挿通孔44及び車体から伸びた前記薄板(図示略)のボルト挿通孔にボルト(図示略)を挿通してナットを締め込むことで、歩行者用エアバッグ装置10が車体に固定設置される。
【0030】
複数個のブラケット36のうち少なくとも2個は、リテーナ12の車体左右方向の中央部付近に配置されている。具体的には、リテーナ12の車体左右方向において、リテーナ12の中心Cからリテーナ12の全長の±10%の範囲に、少なくとも2個のブラケット36が位置する。
【0031】
例えば、リテーナ12の全長が1000mm程度である場合、少なくとも2個のブラケット36が、リテーナ12の長手方向(車体幅方向)の中心Cから左右L=100mm以内の範囲(L×2)に配置される。この実施の形態ではL×2の範囲に3個のブラケット36が設けられている。本実施の形態では、ブラケット36は、リテーナ12の前面壁12fに3個、後面壁12rに2個、計5個設けられているが、ブラケットの数はこれに限定されず、6個以上であってもよい。
【0032】
リテーナ12に対するブラケット36の固定点(縦片36aと前面壁12f又は後面壁12rとのスポット溶接の位置)は、エアバッグ11、インフレータ13、リテーナ12及びリッド30からなるエアバッグモジュールのモジュール重心に対して、高さ方向(上下方向)で±50mm以内に位置している。
【0033】
リッド30は、リテーナ12の上面を覆う主板部30aと、主板部30aの前側及び後側から立ち下がる前板部30b及び後板部30cを有している。主板部30aにはテアライン31が設けられている。
【0034】
リッド30は、前板部30b及び後板部30cがそれぞれリテーナ12の前面壁12fの前面及び後面壁12rの後面に重なるようにリテーナ12に装着され、リベット34によってリテーナ12に固定されている。
【0035】
図7に示す通り、歩行者用エアバッグ装置10が車体に固定設置された状態において、テアライン31は、自動車の平面図において、フードパネル2の後縁2aと重なる位置か、又はそれよりも車体後方側に位置している。この実施の形態では、リテーナ12の車体左右方向の中心Cから端部側に向かって、フードパネル2の後縁2aまでの水平方向の間隔dが徐々に狭くなっている。テアライン31と後縁2aとの間隔dは、リテーナ12の車体左右方向の中心Cにおいて、最大となる。
【0036】
例えば、リテーナ12の車体左右方向において、リテーナ12の両端からリテーナ12の全長の1/3程度の範囲では、テアライン31は後縁2aに沿うように位置し、テアライン31と後縁2aとの間隔は0〜10mm程度となる。
【0037】
リテーナ12の車体左右方向において、リテーナ12の中心Cからリテーナ12の全長の±1/6程度の範囲では、中心C側ほどリッド30の前縁に沿うテアライン31とフードパネル後縁2aとの間隔は大きくなっている。中心C付近では、テアライン31と後縁2aとの間隔dは好ましくは5〜40mm特に好ましくは10〜20mm程度となっている。
【0038】
なお、
図7の通り、テアライン31は、リッド30の前縁に沿って左右方向に延在している。テアライン31は、リッド30の左右の側辺に沿って後方に延在し、さらにリッド30の後部の左右両端側を回り込み、後縁に沿って所定長さ延在している。
【0039】
図2、
図3に示すように、エアバッグ11は、リテーナ12の長手方向の両端部において、固定部20によりリテーナ12の底面12bに固定されている。固定部20は、エアバッグ11のパネル16及びリテーナ底面12bを貫通するボルト21と、ボルト21に締め込まれるナット22とを有する。パネル16の内面には補強パネル23が縫着されている。補強パネル23に対しプレート24を重ねた状態で、ボルト21が挿通される。
【0040】
固定部20は、リテーナ12の車体左右方向において、端部12aから100mm以内の範囲に位置している。固定部20は、エアバッグ11をリテーナ12の端部12aに固定するものであってもよい。
【0041】
エアバッグ11の内部にインフレータ13が配置されている。この実施の形態では、インフレータ13はロッド状であり、一端側にガス噴出口が設けられている。インフレータ13はリテーナ12の後面壁12rに沿って配置されている。インフレータ13は、リテーナ12の長手方向の中央付近において該長手方向に延在している。
【0042】
インフレータ13からは複数本のスタッドボルト(図示略)が車体後方に向けて突設されている。このスタッドボルトがエアバッグ11及びリテーナ12の後面壁12rを貫いている。このスタッドボルトにナットが締め込まれることにより、インフレータ13及びエアバッグ11がリテーナ後面壁12rに固定される。
【0043】
インフレータ13は、圧縮ガスが充填されており、火薬点火による熱で気体を膨張させてエアバッグ11を早期に展開すると共に、圧縮ガスを開放して展開したエアバッグ11の内圧を一定時間以上保持するハイブリッドインフレータである。圧縮ガスは例えばヘリウム及びアルゴンを含む。エアバッグ11の容量が110L〜200Lの場合、インフレータ13は、好ましくは長さが300mm以上400mm以下、径が35mm以上40mm以下のものが使用される。
【0044】
インフレータ13に車両センサから着火信号が入力されてからガスが発生するまでの時間は、例えば5〜15msである。インフレータ13には、燃焼試験用60リットルタンク内で作動させた場合のタンク圧が450〜650kPaのものを使用することが好ましい。
【0045】
図8は、インフレータ13を、燃焼試験用60リットルタンク内で作動させた場合のタンク圧の変化の一例を示すグラフである。60リットルタンク圧は最大550kPa程度である。
【0046】
着火信号が入力してインフレータ13が作動を開始してから30msにおいて60リットルタンク圧が300〜400kPaとなる場合、容量が110L〜200Lのエアバッグ11は、インフレータ13の作動開始後30ms以内で、主部11aが膨張展開し、フードパネル2の後端部を覆う。
【0047】
そして、インフレータ13が作動を開始してから40msにおいて60リットルタンク圧が450〜550kPaとなる場合、エアバッグ11は、インフレータ13の作動開始後30ms以降60ms以内で、1対のピラー被覆部11b,11bが膨張展開し、エアバッグ11が展開を完了する。インフレータ13は、エアバッグ11の展開完了後、400ms以内までの間、エアバッグ11の内圧を保持する。「エアバッグ11の内圧を維持する」とは、エアバッグ11の内圧が、40〜50ms時の内圧の20%以上に保持されることを表わす。
【0048】
この歩行者用エアバッグ装置10を搭載した自動車1が歩行者等と接触してインフレータ13が作動すると、作動開始後、30ms以内にフードパネル2の後部及びウィンドシールド4の前部が主部11aで覆われ、40msにおける60リットルタンク圧が450〜650kPaとなり、60ms以内にエアバッグ11が展開を完了し、Aピラー5の少なくとも前部及びその近傍がピラー被覆部11bで覆われる。その後、400msまでの間、展開したエアバッグ11の内圧が保持される。そのため、エアバッグ11は、歩行者等を適切に受け止めることができる。自動車1が小型車である場合、エアバッグ11は50ms以内に展開を完了することが好ましい。
【0049】
エアバッグ11の膨張時、エアバッグ11からリテーナ12に対し力が加えられる。特に、インフレータ13が配置されるリテーナ12の左右方向中心C付近に大きな力が加えられる。また、リテーナ12の車体左右方向端部12aにも力が加えられる。
【0050】
本実施の形態では、リテーナ12の車体左右方向の中心C付近に複数のブラケット36を配置し、車体左右方向の両端部12aにそれぞれブラケット32を配置しているため、リテーナ12の変形や揺れ動きを防止できる。
【0051】
また、リテーナ12の左右方向中心C付近が多少前後方向に拡幅した場合でも、リテーナ12の車体左右方向の中心C付近では、テアライン31とフードパネル2の後縁2aとの間隔dを大きくとっているため、フードパネル2に加わる力を低減し、フードパネル2の変形を防止ないし抑制することができる。
【0052】
本実施の形態では、エアバッグ11をリテーナ12に固定する固定部20が、リテーナ12の車体左右方向の端部12a近傍に設けられており、膨張したエアバッグ11のピラー被覆部11bと固定部20との距離が小さい。そのため、膨張したエアバッグ11のピラー被覆部11bの揺動を早期に収束させることができる。
【0053】
上記実施の形態では、歩行者用エアバッグ装置10は、車体側メンバ間に架設した支持部材40に組み付けるものであったが、
図9に示す歩行者用エアバッグ装置10Aのように、カウル3と一体的とされたものであってもよい。
【0054】
この歩行者用エアバッグ装置10Aは、エアバッグ11と、折り畳まれたエアバッグ11を収容するリテーナ12と、インフレータ13と、リッド50等を備えている。リッド50には、テアライン51が設けられている。
【0055】
エアバッグ11、リテーナ12、インフレータ13は、上記実施の形態におけるエアバッグ11、インフレータ13と同様のものが用いられる。また、テアライン51とフードパネル2の後縁2aとの位置関係は、上記実施の形態におけるテアライン31とフードパネル2の後縁2aとの位置関係と同様となっている。
【0056】
図10に示すように、この実施の形態では、リッド50には、天板部53の後縁から後方に張り出すカウルルーバ部56が一体に成形されている。このカウルルーバ部56の後縁部がウェザストリップ(図示略)を介してウィンドシールド4の下縁と係合している。
【0057】
この実施の形態では、
図10の通り、リッド50の車体前方側にリブ60を設け、リッド50の天板部53の前部53bの剛性を向上させている。
【0058】
リッド50は、天板部53と、該天板部53の前縁から垂設された前面壁52と、天板部53の後縁から垂設された後面壁54とを有している。天板部53には、前面壁52近傍において、車体幅方向に延在するようにテアライン51が設けられている。天板部53は、このテアライン51よりも前部側が天板前部53bとなっており、テアライン51よりも後部側が天板主部53aとなっている。リブ60は、天板前部53bと前面壁52とが交わるコーナー部に設けられている。リブ60は、天板前部53bと前面壁52とに連なる三角形板状である。リブ60は、リッド50の長手方向に、間隔を空けて複数設けられている。
【0059】
リブ60を設けたことにより、前面壁53bの剛性が高くなる。そのため、エアバッグ11が膨張開始したときに、リッド50の前部に生じる応力がテアライン51に集中し、テアライン51が早期に開裂する。
【0060】
なお、このテアライン51は、前記テアライン31と同様に、フードパネル2の後縁2aよりも前記距離dだけ後方に位置している。テアライン51の左右両端は、テアライン31と同様に天板部53の左右の側辺部に沿って後方に延在し、さらに天板部53の後縁部の左端側及び右端側を回り込むように延在している。
【0061】
図9,10のリッド50では、リブ60によって天板部53の前部53bを補強し、エアバッグ11の膨張時にテアライン51に応力が集中するように構成しているが、リブ60の代わりに、
図11に示すリッド50Aのように、リッド50の前面壁52の上部から車体後方へ凹陥する凹部70を設けてもよい。凹部70は、リッド50の前面壁52から後方へ張り出した張出部71と、リッド50の天板前部53bのうちテアライン51に沿う部分から下方へ垂下した縦壁部72とを有する。張出部71の後縁と、縦壁部72の下縁とが連なっており、凹部70は側面視形状がL字形断面形状を有している。凹部70は、天板前部53bと、縦壁部72と、張出部71とによって囲まれている。この凹部70の縦壁部72が天板前部53bのテアライン51直近部に連なることにより、エアバッグ11の膨張時に応力がテアライン51に集中し、テアライン51が早期に開裂する。
【0062】
なお、
図9〜11の実施の形態では、リッド50,50Aがテアライン51に沿って開裂して開放したときの前後方向の開口幅W
1は、リテーナ12の前後方向の幅W
2よりも小さい。
【0063】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。