(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.第1実施形態:
図1(A)は第1実施形態における圧電駆動装置10の概略平面図であり、
図1(B)はそのB−B断面図である。圧電駆動装置10は、複数の圧電振動部100を備えるものであり、
図1は、2つの圧電振動部100a,100bを備えた構成を例に示している。圧電振動部100a,100bは、それぞれ、基板200と、基板200上に形成された圧電素子110とを備えた同じ構成を有しており、圧電駆動装置10は、圧電振動部100a,100bのそれぞれの基板200同士を向かい合せて不図示の接着剤により接合させて一体形成したユニット(「圧電振動ユニット」とも呼ぶ)で構成されている。以下では、圧電振動部100a,100bを区別して説明する場合を除いて、単に「圧電振動部100」として説明する。
【0018】
なお、圧電振動部100の基板200は、振動体210と、固定部220と、振動体210と固定部220とを接続する接続部230(第1接続部231と第2接続部232)とを備える。固定部220と接続部230とを合わせて「支持部」とも呼ぶ。圧電素子110は、振動体210上の絶縁層260の上に形成されている。
【0019】
圧電素子110は、第1電極130と、第1電極130の上に形成された圧電体140と、圧電体140の上に形成された第2電極150と、を備え、第1電極130と第2電極150は、圧電体140を挟持している。第1電極130や第2電極150は、例えばスパッタリングによって形成される薄膜である。第1電極130や第2電極150の材料としては、例えばAl(アルミニウム)や、Ni(ニッケル),Au(金),Pt(白金),Ir(イリジウム)、Cu(銅)などの導電性の高い任意の材料を利用可能である。
【0020】
圧電体140は、例えばゾル−ゲル法やスパッタリング法によって形成され、薄膜形状を有している。圧電体140の材料としては、ABO
3型のペロブスカイト構造を採るセラミックスなど、圧電効果を示す任意の材料を利用可能である。ABO
3型のペロブスカイト構造を採るセラミックスとしては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、タンタル酸ストロンチウムビスマス(SBT)、メタニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を用いることが可能である。またセラミック以外の圧電効果を示す材料、例えばポリフッ化ビニリデン、水晶等を用いることも可能である。圧電体140の厚みは、例えば50nm(0.05μm)以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。この範囲の厚みを有する圧電体140の薄膜は、膜形成プロセス(「成膜プロセス」とも呼ぶ。)を利用して容易に形成することができる。圧電体140の厚みを0.05μm以上とすれば、圧電体140の伸縮に応じて十分に大きな力を発生することができる。また、圧電体140の厚みを20μm以下とすれば、圧電振動部100を十分に小型化することができる。
【0021】
本実施形態では、圧電振動部100は、圧電素子110として、5つの圧電素子110a,110b,110c,110d,110eを含んでいる。圧電素子110eは、略長方形形状に形成されており、振動体210の幅方向の中央において、振動体210の長手方向に沿って形成されている。4つの圧電素子110a,110b,110c,110dは、振動体210の四隅の位置に形成されている。4つの圧電素子110a,110b,110c,110dは、第1の対角にある一対の圧電素子110a,110dと、第2の対角にある一対の圧電素子110b,110cとに区分され、これらは、中央の圧電素子110eを中心として、左右対称の位置関係にある。なお、以下では、一対の圧電素子110a,110dを「第1の圧電素子」とも呼び、他の一対の圧電素子110b,110cを「第2の圧電素子」とも呼ぶ。また、中央の圧電素子110eを「第3の圧電素子」とも呼ぶ。各圧電素子110a,110b,110c,110dに応じて、第1電極130及び第2電極150は、5つの第1電極130a,130b,130c,130d,130e及び5つの第2電極150a,150b,150c,150dに区分されている。但し、5つの第1電極130a〜130eには、共通の電圧が印加されるので、必ずしも区分される必要はない。以下では、第1電極130a〜130eを特に区別することなく、第1電極130として説明する場合もある。
【0022】
圧電振動ユニットを構成する第1の圧電振動部100aと第2の圧電振動部100bは基板200側で互いに背中合わせに接合されているので、第2の圧電振動部100bの圧電素子110a,110b,110c,110d,110eは、第1の圧電振動部100aの圧電素子110a,110b,110c,110d,110eに対して振動体210を対称面とする対称位置に配置されるものとして扱われる。すなわち、第2の圧電振動部100bの4つの圧電素子110a,110b,110c,110dのうち、圧電素子110a,110dは第2の圧電素子110c,110bとして扱われ、圧電素子110b,110cは第1の圧電素子110d,110aとして扱われる。
【0023】
基板200は、第1電極130と圧電体140と第2電極150を膜形成プロセスで形成するための基板として使用される。また、基板200の振動体210は機械的な振動を行う振動板としての機能も有する。基板200は、例えば、Si,Al
2O
3,ZrO
2などで形成することができる。Si製の基板200(「シリコン基板200」とも呼ぶ。)として、例えば半導体製造用のSiウェハーを利用することが可能である。基板200の厚みは、例えば10μm以上100μm以下の範囲とすることが好ましい。基板200の厚みを10μm以上とすれば、基板200上の成膜処理の際に基板200を比較的容易に取扱うことができる。なお、基板200の厚みを50μm以上とすれば、基板200をさらに容易に取扱うことができる。また、基板200(振動体210)の厚みを100μm以下とすれば、薄膜で形成された圧電体140の伸縮に応じて、振動体210を容易に振動させることができる。
【0024】
本実施形態では、固定部220の上にも、第1電極130と、圧電体140と、第2電極150とが形成されている。その結果、振動体210における圧電振動部100の厚さと固定部220における圧電振動部100の厚さをほぼ同じにする(例えば厚さの差を6μm以下、あるいは3μm以下にする)ことができる。これにより複数の圧電振動部100を重ねて圧電駆動装置10を構成する場合、振動体210における隣接する2つの圧電振動部100の間の隙間と、固定部220における隣接する2つの圧電振動部100の間の隙間とをほぼ同じにできるので、圧電振動部100間のガタツキが発生し難い。なお、固定部220の上の第1電極130と、圧電体140と、第2電極150とは、動作可能な圧電素子を構成していないことが好ましい。圧電素子を構成していなければ、圧電体140が変形しないので、固定部220を他の部材と固定しやすい。なお、第1電極130と第2電極150への電圧の印加は、基板電極250を介して行われる。但し、固定部220の上の電極130,150及び圧電体140は、固定部220の上の電極130,150と圧電体140とにより動作可能な圧電素子が構成されないように、振動体210の上の電極130,150及び圧電体140から分離されている。
【0025】
図2は、基板200の平面図である。基板200は、振動体210と、固定部220と、振動体210と固定部220とを接続する2つの接続部230(第1接続部231と第2接続部232)とを備えている。振動体210は、第1辺211と、第2辺212と、第1辺211と第2辺212との間をつなぎ第1辺よりも長い第3辺213と第4辺214と、の4辺を含む長方形形状を有している。2つの接続部230は、それぞれ固定部220の端部に設けられ、振動体210の第3辺213と第4辺214のそれぞれ中央の位置に接続されている。固定部220は、第1接続部231から第2辺212側を回って、第2接続部232に至るように、第1辺211よりも第2辺212に近い側に配置されている。振動体210と、固定部220と、接続部230は、1枚のシリコン基板から一体形成されている。具体的には、圧電素子110が形成されたシリコン基板をエッチングにより、個々の基板200の形状に形成するとともに、振動体210と、固定部220との間の隙間205を形成する。これにより、基板200(振動体210と、固定部220と、接続部230)が一体形成される。
【0026】
なお、図示は省略するが、圧電素子110の上層または下層には、圧電素子110に電気を通電するための配線を構成する配線層が形成されている。配線層には、5つの圧電素子110a,110b,110c,110d,110eのそれぞれの第2電極150a,150b,150c,150d,150eにそれぞれ接続される不図示の配線パターンが設けられ、第1電極130a〜130eに共通に接続される不図示の配線パターンが設けられている。これらの配線パターンは、基板200の振動体210上に圧電素子110a,110b,110c,110d,110eが形成される膜形成プロセスにおいて形成することができる。
【0027】
振動体210の長さL(第3辺213及び第4辺214の長さ)と幅W(第1辺211及び第2辺212の長さ)の比は、L:W=約7:2とすることが好ましい。この比は、振動体210がその平面に沿って左右に屈曲する超音波振動(後述)を行うために好ましい値である。振動体210の長さLは、例えば0.1mm以上30mm以下の範囲とすることができ、幅Wは、例えば0.02mm以上9mm以下の範囲とすることができる。なお、振動体210が超音波振動を行うために、長さLは50mm以下とすることが好ましい。
【0028】
振動体210の第1辺211には、接触部20(「突起部」又は「作用部」とも呼ぶが設けられている。接触部20は、被駆動部材50と接触して、被駆動部材に力を与えるための部分である、接触部20は、セラミックス(例えばSi,SiC,Al
2O
3,Zr0
2)などの耐久性がある材料で形成することが好ましい。例えば、圧電素子110が形成されたシリコン基板をエッチングにより、個々の基板200の形状の一部として一体形成することができる。また、独立した接触部を基板200に接着剤で接合することによっても形成することもできる。なお、独立した接触部の場合、振動板としての振動体210ではなく圧電素子110に接合するようにしてもよい。
【0029】
図3は、圧電駆動装置10と駆動回路30の電気的接続状態を示す説明図である。駆動回路30は、交流成分を含む駆動電圧を発生する。交流成分を含む駆動電圧としては、接地電位に対してプラス側とマイナス側に変動する交流成分のみからなる交流駆動電圧と、交流成分とDCオフセット(直流成分)とを含むオフセット付駆動電圧と、のうちの少なくとも一方を発生できるように構成されていることが好ましい。この駆動電圧の交流成分は、圧電振動部100の設計上の機械的な共振周波数に近い周波数、理想的には共振周波数を、駆動周波数とする電気信号であることが好ましい。なお、交流成分の波形は、典型的には正弦波であるが、正弦波以外の波形を有していてもよい。直流成分は、厳密に一定である必要はなく、多少変動しても良い。例えば、直流成分は、その平均値の±10%以内で変動しても良い。駆動回路30と圧電振動部100a,100bの電極130,150とは以下のように接続されている。
【0030】
第1の圧電振動部100aの5つの第2電極150a,150b,150c,150d,150eのうちで、第1の対角にある一対の第1の圧電素子110a,110dの第2電極150a,150dが配線151を介して互いに電気的に接続され、他の第2の対角の一対の第2の圧電素子110b,110cの第2電極150b,150cも配線152を介して互いに電気的に接続されている。これらの配線151,152は、上述したように成膜処理によって基板電極250内に形成されている。但し、これらの配線はワイヤ状の配線によって実現してもよい。
図3の右側にある3つの第2電極150b,150e,150dと、第1電極130(
図2)は、配線310,312,314,320を介して駆動回路30に電気的に接続されている。なお、
図3の例では、配線320は接地されている。また、第1の圧電素子110a,110dと第2の圧電素子110b,110cと第3の圧電素子110eとは、接地配線320と他の配線310,312,314との間に、駆動回路30と並列に接続されている。なお、配線310,312,314,320の一部は、上述したように成膜処理によって配線層内に形成されており、配線層内に形成されている一部を除く他の部分は、配線層内に形成されている一部の配線の端子と駆動回路30との間のワイヤ状の配線によって形成されている。但し、ワイヤ状の配線によって配線310,312,314,320の全てを形成するようにしてもよい。なお、第2の圧電振動部100bの接続も第1の圧電振動部100aの接続と同様である。
【0031】
駆動回路30は、圧電振動部100a,100bのそれぞれの一対の第1の圧電素子110a,110dの第2電極150a,150dと第1電極130との間に駆動周波数の交流成分を含む駆動電圧を印加することにより、圧電振動部100a,100bを同時に超音波振動させ、接触部20に接触する被駆動部材(本例ではローター)50を所定の回転方向に回転させることが可能である。また、圧電振動部100a,100bのそれぞれの一対の第2の圧電素子110b,110cの第2電極150b,150cと第1電極130との間に駆動周波数の交流成分を含む駆動電圧を印加することにより、接触部20に接触する被駆動部材50を逆方向に回転させることが可能である。なお、
図3に示した配線151,152,310,312,314,320を構成する配線(又は配線層及び絶縁層)は、
図2では図示が省略されている。
【0032】
図4は、圧電駆動装置10の動作の例を示す説明図である。圧電駆動装置10の接触部20は、ローターで構成された被駆動部材50の中心51に垂直な回転面に接触している。
図4に示す例では、駆動回路30は、圧電振動部100a,100bのそれぞれの一対の第1の圧電素子110a,110dに駆動電圧を印加しており、一対の第1の圧電素子110a,110dは矢印xの方向に伸縮する。これに応じて、圧電振動部100a,100bの振動体210が振動体210の平面内で屈曲して蛇行形状(S字形状)に変形し、接触部20の先端が矢印yの向きに往復運動するか、又は、楕円運動する。その結果、被駆動部材50は、その中心51の周りに所定の方向zに回転する。すなわち、一対の第1の圧電素子110a,110dは、協調して振動体210を屈曲させる。なお、駆動回路30が、他の一対の第2の圧電素子110b,110cに駆動電圧を印加する場合には、被駆動部材50は逆方向に回転する。なお、中央の第3の圧電素子110eに、一対の第1の圧電素子110a,110d(又は他の一対の第2の圧電素子110b,110c)と同様の駆動電圧を印加すれば、圧電振動部100a,100bが長手方向に伸縮するので、接触部20から被駆動部材50に与える力をより大きくすることが可能である。なお、圧電駆動装置10(又は圧圧電振動部100a,100b)のこのような動作については、先行技術文献1(特開2004−320979号公報、又は、対応する米国特許第7224102号)に記載されており、その開示内容は参照により組み込まれる。
【0033】
図5は、本実施形態の圧電駆動装置10の特徴について示す説明図である。圧電駆動装置10は、
図5(A)に示すように、圧電振動ユニットとして一体形成された2つの圧電振動部100a,100bを備えている。図中に破線で示す矩形領域は、振動体210上に形成された圧電素子110(圧電素子110a,110b,110c,110d,110e)の領域を簡略化して示している。第1の圧電振動部100aの寸法(長さLa,幅Wb)は、第2の圧電振動部100bの寸法(長さLb,幅Wb)よりも大きく設定されている。なお、
図5(A)では、2つの圧電振動部100a,100bの寸法の差が誇張されて描かれている。第1の圧電振動部100aの寸法と設計の基準寸法との寸法差、第2の圧電振動部100bの寸法と設計の基準寸法との寸法差、及び、第1の圧電振動部100aの寸法と第2の圧電振動部100bの寸法との寸法差は、それぞれ、寸法加工精度に比べて有意差が認められる寸法差に設定される。なお、これらの寸法差については後で説明する。
【0034】
圧電振動部100の長さ方向(
図5(A)のLa,Lbに沿った方向)に沿った伸縮の振動(「縦一次振動」と呼ばれる)の共振周波数frvは下式(1)で表され、幅方向(
図5(A)のWa,Wbに沿った方向)に沿った屈曲の振動(「面内屈曲二次振動」と呼ばれる)の共振周波数frhは下式(2)で表される。
frv=(krv/l)・(E/ρ)
1/2 …(1)
frh=(krh・w/l
2)・(E/ρ)
1/2 …(2)
ここで、lは圧電振動部の長さ、wは圧電振動部の幅、Eは圧電振動部を構成する部材のヤング率、ρは圧電振動部を構成する部材の密度である。また、krv,krhは圧電振動部を構成する部材から求められる定数であり、本例では、krv=1/2、krh=2.83である。
【0035】
通常、圧電振動部の長さLと幅Wの寸法比L/Wは、縦一次振動の共振周波数frv及び面内屈曲二次振動の共振周波数frhを一致させるように、上記(1)式及び(2)式から、下式(3)を満たすように設定することが好ましい。
L/W=l/w=krh/krv …(3)
【0036】
このため、通常、圧電振動部100の基準寸法の寸法比L0/W0は、上記(3)式に等しい寸法比となるように設定されており、圧電振動部100の基準共振周波数は、縦一次振動の共振周波数及び面内屈曲二次振動の共振周波数が一致した共振周波数となる。同様に、第1の圧電振動部100aの寸法比La/Wb及び第2の圧電振動部100bの寸法比Lb/Wbも、上記(3)式に等しい寸法比となるように設定されており、第1の圧電振動部100a及び第2の圧電振動部100bの共振周波数も、縦一次振動の共振周波数及び面内屈曲二次振動の共振周波数が一致した共振周波数となる。以下では、第1の圧電振動部100aの共振周波数をfraとし、第2の圧電振動部100bの共振周波数をfrbとする。なお、実際の寸法比L/Wは、
図2で説明したように7/2に設定されており、krh/Krv=5.66に比べて小さい値となっている。これは、圧電素子の厚さが薄くなると、面内屈曲二次振動がし易くなる傾向にあり、これによって実際の面内屈曲共振周波数は計算値よりも低くなるものと推定される。このため、実際の寸法比L/Wを、上式から求められる寸法比よりも小さい7/2と設定することにより、縦一次振動の共振周波数と面内屈曲二次振動の共振周波数を一致させている。
【0037】
ここで、圧電振動部100の共振周波数は上記(1)式及び(2)式からわかるように、長さlが大きくなると低くなるため、第1の圧電振動部100aの共振周波数fraは、第2の圧電振動部100bの共振周波数frbよりも低くなる。
【0038】
第1の圧電振動部100a及び第2の圧電振動部100bは、それぞれ単独の状態では、
図5(B)に示すそれぞれのインピーダンス特性(図中実線で示す)を有する。このため、それぞれ、単独の状態では、温度変動や負荷変動によってインピーダンス特性が変化すると、共振周波数fra,frbや駆動特性が大きく変動してしまう、と考えられる。なお、機械的な振動の共振周波数は、本例では最小のインピーダンスの周波数としている。
【0039】
一方、2つの圧電振動部100a,100bを含む圧電駆動装置10全体としての合成されたインピーダンス特性は、
図5(B)に破線で示すように、2つの圧電振動部100a,100bのインピーダンス特性が重なり合うことによって、周波数変化に対するインピーダンス変化(変化率)が低く抑えられた状態の特性を示す。このため、合成後のインピーダンス特性における共振周波数あるいはその近傍周波数に設定した駆動周波数fdの近傍でのインピーダンスの変化率が低く抑えられる。これにより、温度変動や負荷変動によって圧電震振動部100a,100bのインピーダンス特性が変化しても、被駆動部材50を駆動する際の駆動周波数fdにおける圧電駆動装置10全体としてのインピーダンス変化を低く抑えることができ、駆動特性(駆動電圧や駆動電流の振幅等)の変動の影響を抑制することが可能である。特に、圧電駆動装置10は、2つの圧電振動部100a,100bを一体形成した圧電振動ユニットとしているので、互いの動作が干渉し合って、それぞれのインピーダンス特性の合成効果が高められ、圧電駆動装置10全体でのインピーダンス特性における周波数変化に対するインピーダンス変化(変化率)の抑制効果が高くなる、と考えられる。
【0040】
なお、圧電振動部100を上記した成膜プロセスにより形成する場合、±0.3μm〜±1.0μmの加工精度で寸法(長さ,幅)の加工が可能であり、圧電振動部100の長さの最大寸法は60mmであることから、基準寸法に対して最高±0.0005%の寸法加工精度での加工が可能である。このことから、複数の圧電振動部100a,100bのそれぞれの圧電振動部の寸法差によって、それらのインピーダンス特性に優位差を持たせるためには、それら複数の圧電振動部の平均寸法に対して少なくとも寸法加工精度の2倍の0.001%以上の寸法差が設定されることが好ましいが、成膜プロセス上作りこめる0.003%以上の寸法差が設定されてもよく、機械加工上作りこめる0.1%以上の寸法差が設定されてもよい。また、5%以下の寸法差が設定されることが好ましい。また、平均寸法に対して1%を超えて5%以下の範囲で寸法差が設定されるようにしてもよい。
【0041】
また、圧電振動部100a,100bの寸法の違いに応じた共振周波数fra,frbの変化は、上記(1)式及び(2)式からかわるように、ほぼ寸法の変化に従う。従って、第1の圧電振動部100aの共振周波数fraと第2の圧電振動部100bの共振周波数frbとの差は、それら複数の圧電振動部の平均共振周波数に対して0.001%以上の差であることが好ましく、また、5%以下の差であることが好ましい。また、平均共振周波数の0.003%以上の差であってもよく、0.1%以上の差であってもよく、1%を超えて5%以下の範囲の差であってもよい。
【0042】
なお、圧電駆動装置10としての圧電振動ユニットを構成する圧電振動部100a,100bとして用いられる圧電振動部100の共振周波数が、上述した範囲にあるか否かの確認は、以下のように実行することができる。
【0043】
図6は、圧電振動部100のインピーダンス特性の測定回路について示す説明図である。圧電振動部100のインピーダンス特性はインピーダンス測定回路34を用いて測定することができ、圧電振動部100の共振周波数は測定したインピーダンス特性に基づいて求めることができる。インピーダンス測定回路34としては、インピーダンスアナライザーやインピーダンスメーター等が用いられる。
【0044】
インピーダンス測定回路34に対して測定対象の圧電振動部100の5つの圧電素子110a,110b,110c,110d,110eの全てを並列に接続してインピーダンス特性を測定し、測定結果を解析することによって共振周波数frを求める。なお、この共振周波数frとしては、本例では、上述したように、インピーダンスが最小となる周波数が用いられる。そして、測定した圧電振動部100のうち、共振周波数の差が平均共振周波数の0.001%以上5%以下の範囲にある2つの圧電振動部100を選択し、低い共振周波数の圧電振動部100を第1の圧電振動部100aとし、高い共振周波数の圧電振動部100を第2の圧電振動部100bとする。これにより、最小の共振周波数と最大の共振周波数との差が平均共振周波数の0.001%以上5%以下あるいは1%を超えて5%以下の範囲の2つの圧電振動部100a,100bを一体形成した圧電振動ユニットを用いて、圧電駆動装置10を構成することができる。
【0045】
図7は、縦一次振動の共振周波数frvと面内屈曲二次振動の共振周波数frhとがずれた場合のインピーダンス特性を示す説明図である。圧電振動部100の寸法比L/Wの設定の違いや加工精度に依存して、縦一次振動の共振周波数frvと面内屈曲二次振動の共振周波数frhとがずれた状態のインピーダンス特性となる場合がある。この場合には、圧電駆動装置10による被駆動部材の主な駆動を司る面内屈曲二次振動の共振周波数frhを共振周波数frとして、2つの圧電振動部100a,100bとして用いられる圧電振動部100の選択を行なえばよい。但し、これに限定されるものではなく、一次振動の共振周波数frvを共振周波数frとして、2つの圧電振動部100a,100bとして用いられる圧電振動部100の選択を行なうようにしてもよい。
【0046】
図8は、圧電駆動装置10の変形例としての圧電駆動装置10a,10bの断面図である。
図1に示した実施形態の圧電駆動装置10が2つの圧電振動部100a,100bの基板200の振動体210同士を向かい合せて接合することにより一体形成した圧電振動ユニットであるのに対して、
図8(A)の圧電駆動装置10aは、2つの圧電振動部100a、100bを同じ向きで積層して接合することにより一体形成した圧電振動ユニットである。また、
図8(B)の圧電駆動装置10bは、2つの圧電振動部100a,100bの圧電素子110同士を接合した圧電振動ユニットである。なお、
図8及び以下で説明する
図9においても、
図1と同様に圧電素子110の上層または下層に形成される配線層を省略して示している。
【0047】
図9は、圧電駆動装置10の他の変形例としての圧電駆動装置10cの断面図である。圧電駆動装置10cは、2つの圧電振動部100c,100dを積層して接合することにより一体形成した圧電振動ユニットである。2つの圧電振動部100c,100は、いずれも、振動体210の両面に圧電素子を備えた構成であり、例えば、成膜プロセスによって基板200の一方の面上に圧電素子110を形成した後、他方の面に圧電素子110を形成することにより形成することができる。2つの圧電振動部100c,100dは、上側の第1の圧電振動部100cの下側の圧電素子110と第2の圧電振動部100dの上側の圧電素子110とが不図示の接着剤により接着されることによって接合される。なお、圧電振動部100c,100dの共振周波数は、振動体210の両面に形成された全ての圧電素子110をインピーダンス測定回路34(
図6)に並列に接続してインピーダンス特性を測定することにより求めることができる。
【0048】
これら変形例の圧電振動ユニットで構成された駆動装置10a,10b,10cにおいても、実施形態と同様に、圧電駆動装置全体として被駆動部材を駆動する際の駆動周波数におけるインピーダンス変化を低く抑えることができ、駆動特性の変動の影響を抑制することが可能である。
【0049】
また、圧電駆動装置10,10a,10b,10cは、2つの圧電振動部を一体形成した圧電振動ユニットを例に説明したが、これに限定されるものではなく、2以上の複数の圧電振動部を一体形成した圧電振動ユニットとしてもよい。この場合、複数の圧電振動部は、それぞれの共振周波数のうち、最大の共振周波数と最小の共振周波数との差が、平均共振周波数の0.001%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の1%を超え5%以下の範囲内である複数の圧電振動部とされればよい。2以上の複数の圧電振動部を一体形成した圧電振動ユニットで圧電駆動装置を構成した場合、それぞれのインピーダンス特性の合成効果により、圧電駆動装置10全体でのインピーダンス特性における周波数変化に対するインピーダンス変化(変化率)の抑制効果をより効果的に高めることができ、駆動特性の変動の影響をより効果的に抑制することが可能である。
【0050】
なお、3つ以上の圧電振動部の場合における「寸法差」は、最大のものと最小のものの寸法差を意味する。また、「寸法差が許容範囲内にある」という語句は、矩形状の振動板の縦寸法同士の寸法差、及び、横寸法同士の寸法さ、の両方がその許容範囲内であることを意味する。そして、最大のものの縦寸法は最小のものの縦寸法より大きく、かつ、最大のものの横寸法も最小のものの横寸法よりも大きい。また、最大のものと最小のもの以外は、平均値にほぼ等しい寸法を有していてもよい。すなわち、平均値からの寸法差が許容範囲よりも小さくてもよい。また、3つ以上の圧電振動部の場合における共振周波数の差も、寸法差の場合と同様に、最大のものと最小のものの差を意味し、最大のものと最小のもの以外は、平均共振周波数にほぼ等しい共振周波数を有していてもよい。すなわち、平均共振周波数からの周波数の差が許容範囲よりも小さくてもよい。
【0051】
また、圧電駆動装置10,10a,10b,10cは、2つの圧電振動部100を振動体210の平面に垂直な法線方向に積層して一体形成した圧電振動ユニットを例に説明したが、2以上の圧電振動部100を振動体の平面に沿って配置して一体形成した圧電振動ユニットとしてもよい。
【0052】
B.第2実施形態:
図10は、第2実施形態における圧電駆動装置10dの概略構成図である。第1実施形態では、2つの圧電振動部100a,100bが一体形成された1つの圧電振動ユニットを備える圧電駆動装置10及びその変形例について説明したが、これに限定されるものではない。
図10に示すように、複数(図の例では4つ)の圧電振動ユニット180を備えた構成の圧電駆動装置10dとしてもよい。なお、圧電振動ユニット180は、2つの圧電振動部100a,100bが一体形成されたものであり、第1実施形態の圧電駆動装置10に相当する。但し、複数の圧電振動ユニット180は、それぞれに含まれる圧電振動部100の共振周波数のうち、最大の共振周波数と最小の共振周波数との差が、平均共振周波数の0.001%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の0.003%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の0.1%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の1%を超え5%以下の範囲内である圧電振動部で構成されていればよい。
【0053】
本実施形態の圧電駆動装置10dは、第1実施形態の圧電駆動装置10と同様に、2つの圧電振動部100a,100bが一体形成された圧電振動ユニット180を用いているので、圧電駆動ユニットのインピーダンス特性において、周波数変化に対するインピーダンス変化(変化率)を効果的に低く抑えることができ、圧電振動ユニット180が被駆動部材50を駆動する駆動特性の変動を効果的に抑制することができる。また、複数の圧電振動ユニット180のそれぞれのインピーダンス特性が重なり合うことによって、圧電駆動装置10d全体でのインピーダンス特性において、周波数変化に対するインピーダンス変化(変化率)を低く抑えることができ、圧電駆動装置10dが被駆動部材50を駆動する駆動特性の変動を抑制することができ、駆動効率を向上させることができる。
【0054】
なお、圧電振動ユニット180の数は4つに限定されるものではなく、複数であればよい。また、圧電振動ユニット180としては、圧電駆動装置10に限定されるものではなく、第1実施形態で説明した種々の変形例の圧電駆動装置を用いることが可能である。
【0055】
C.第3実施形態:
図11は、第3実施形態における圧電駆動装置10eの概略構成図である。第2実施形態では、複数の圧電振動ユニット180を備える構成の圧電駆動装置10dを例に示したが、
図11に示すように、複数の圧電振動部100を備えた構成の圧電駆動装置10eとしてもよい。但し、複数の圧電振動部100としては、上述したように、それぞれの共振周波数のうち、最大の共振周波数と最小の共振周波数との差が、平均共振周波数の0.001%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の0.003%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の0.1%以上5%以下の範囲内、または、平均共振周波数の1%を超え5%以下の範囲内である複数の圧電振動部が用いられる。
【0056】
本実施形態の圧電駆動装置10eは、複数の圧電振動部100のそれぞれのインピーダンス特性が重なり合うことによって、圧電駆動装置10e全体でのインピーダンス特性において、周波数変化に対するインピーダンス変化(変化率)を低く抑えることができ、圧電駆動装置10eが被駆動部材50を駆動する駆動特性の変動を抑制することができ、駆動効率を向上させることができる。
【0057】
なお、圧電振動部100ではなく、
図9に示した振動体210の両面に圧電素子110が形成された圧電振動部を用いるようにしても良い。
【0058】
D.圧電振動部の他の実施形態:
図12(A)は、他の実施形態としての圧電振動部100eの平面図であり、上記実施形態の
図1(A)に対応する図である。
図12(A)〜(C)では、図示の便宜上、振動体210のみを図示し、固定部220や接続部230は、図示が省略されている。
図12(A)の圧電振動部100eでは、一対の圧電素子110b,110cが省略されている。この圧電振動部100eを用いた圧電駆動装置も、
図5に示すような1つの方向zに被駆動部材(ローター)50を回転させることが可能である。なお、
図12(A)の3つの圧電素子110a,110e,110dの第2電極150a,150e,150dには同じ電圧が印加されるので、これらの3つの第2電極150a,150e,150dを、連続する1つの電極層として形成してもよい。
【0059】
図12(B)は、本発明の更に他の実施形態としての圧電振動部100fの平面図である。この圧電振動部100fでは、
図1(A)の中央の圧電素子110eが省略されており、他の4つの圧電素子110a,110b,110c,110dが
図1(A)よりも大きな面積に形成されている。この圧電振動部100fも、第1実施形態とほぼ同様な効果を達成することができる。
【0060】
図12(C)は、本発明の更に他の実施形態としての圧電振動部100gの平面図である。この圧電振動部100gでは、
図1(A)の4つの圧電素子110a,110b,110c,110dが省略されており、1つの圧電素子110eが大きな面積で形成されている。この圧電振動部100gは、長手方向に伸縮するだけであるが、接触部20から被駆動部材(図示省略)に対して大きな力を与えることが可能である。
【0061】
図1及び
図12(A)〜(C)から理解できるように、圧電振動部100の第2電極150としては、少なくとも1つの電極層を設けることができる。但し、
図1及び
図12(A),(B)に示す実施形態のように、長方形の圧電振動部100の対角の位置に第2電極150を設けるようにすれば、圧電振動部100を、その平面内で屈曲する蛇行形状に変形させることが可能である点で好ましい。
【0062】
E.圧電駆動装置の他の実施形態:
図13は、本発明の他の実施形態としての圧電駆動装置10j,10kの断面図であり、
図1(B)に対応する図である。第1実施形態の圧電駆動装置10では、基板200を成膜プロセスの基板として機能させるとともに、基板200の振動体210を振動板として機能させる構成を例に説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、以下で説明するように、成膜プロセスの基板と、振動板とを独立して備える構成としてもよい。
【0063】
図13(A)の圧電駆動装置10jは、振動板200と、振動板200の両面(第1面215と第2面216)にそれぞれ配置された2つの圧電素子110j,110kとを備える。圧電素子110j,110kは、基板120と、基板120の上に形成された第1電極130と、第1電極130の上に形成された圧電体140と、圧電体140の上に形成された第2電極150と、を備えている。
図13(B)の圧電駆動装置10kは、圧電素子110j,110jが、
図13(A)とは上下を逆にした状態で振動板200に配置されている。すなわち、ここでは、第2電極150が振動板200に近く、基板120が振動板200から最も遠くなるように配置されている。なお、
図13(A),(B)においては、
図8,9と同様に、第2電極150a,150b,150c,150d,150eの間の電気的接続のための配線(又は配線層及び絶縁層)と、第1電極130及び第2電極150a,150b,150c,150d,150eと駆動回路との間の電気的接続のための配線(又は配線層及び絶縁層)とは、図示が省略されている。
【0064】
圧電素子110j,110kは、それぞれ、第1実施形態の圧電振動部100a,100bの圧電素子110(
図1)と同様に、成膜プロセスによって形成することができる。振動板200と圧電素子110j、及び、振動板200と圧電素子110kが、それぞれ、本実施形態において一体形成されている2つの圧電振動部100j,100kに相当する。2つの圧電振動部100j,100kとしては、振動板200に配置される前の圧電素子110の共振周波数を測定し、上述した共振周波数の範囲を満足する圧電素子110を振動板200に配置することにより構成される。これらの圧電駆動装置10j,10kも、第1実施形態と同様な効果を達成することができる。
【0065】
また、振動板200の一方の面211に圧電素子110jが形成された複数の圧電振動部100jを、
図8に示した圧電駆動措置10a,10bと同様に接合して圧電駆動装置を構成することも可能である。また、複数の圧電駆動装置10jや圧電駆動装置10kを、
図9に示した圧電駆動装置10cと同様に接合して圧電駆動装置を構成することも可能である。
【0066】
F.圧電駆動装置を用いた装置の実施形態:
上述した圧電駆動装置は、共振を利用することで被駆動部材に対して大きな力を与えることができるものであり、各種の装置に適用可能である。圧電駆動装置は、例えば、ロボット、電子部品搬送装置(ICハンドラー)、投薬用ポンプ、時計のカレンダー送り装置、印刷装置(例えば紙送り機構。ただし、ヘッドに利用される圧電駆動装置では、振動板を共振させないので、ヘッドには適用不可である。)等の各種の機器における駆動装置として用いることが出来る。以下、代表的な実施の形態について説明する。
【0067】
図14は、上述の圧電駆動装置10を利用したロボット2050の一例を示す説明図である。ロボット2050は、複数本のリンク部2012(「リンク部材」とも呼ぶ)と、それらリンク部2012の間を回動又は屈曲可能な状態で接続する複数の関節部2020とを備えたアーム2010(「腕部」とも呼ぶ)を有している。それぞれの関節部2020には、上述した圧電駆動装置10が内蔵されており、圧電駆動装置10を用いて関節部2020を任意の角度だけ回動又は屈曲させることが可能である。アーム2010の先端には、ロボットハンド2000が接続されている。ロボットハンド2000は、一対の把持部2003を備えている。ロボットハンド2000にも圧電駆動装置10が内蔵されており、圧電駆動装置10を用いて把持部2003を開閉して物を把持することが可能である。また、ロボットハンド2000とアーム2010との間にも圧電駆動装置10が設けられており、圧電駆動装置10を用いてロボットハンド2000をアーム2010に対して回転させることも可能である。なお、各圧電駆動装置10を制御する駆動回路30は不図示の制御回路に含まれている。
【0068】
図15は、
図14に示したロボット2050の手首部分の説明図である。手首の関節部2020は、手首回動部2022を挟持しており、手首回動部2022に手首のリンク部2012が、手首回動部2022の中心軸O周りに回動可能に取り付けられている。手首回動部2022は、圧電駆動装置10を備えており、圧電駆動装置10は、手首のリンク部2012及びロボットハンド2000を中心軸O周りに回動させる。ロボットハンド2000には、複数の把持部2003が立設されている。把持部2003の基端部はロボットハンド2000内で移動可能となっており、この把持部2003の根元の部分に圧電駆動装置10が搭載されている。このため、圧電駆動装置10を動作させることで、把持部2003を移動させて対象物を把持することができる。また、圧電駆動装置10をフリーモードで動作させることにより、アーム2010や手首を手動で動作させること(いわゆる「ティーチング」)ができ、ロボット2050に実行させる動作を記憶させることができる。
【0069】
なお、ロボットとしては、単腕のロボットに限らず、腕の数が2以上の多腕ロボットにも圧電駆動装置10を適用可能である。ここで、手首の関節部2020やロボットハンド2000の内部には、圧電駆動装置10の他に、力覚センサーやジャイロセンサー等の各種装置に電力を供給する電力線や、信号を伝達する信号線等が含まれ、非常に多くの配線が必要になる。従って、関節部2020やロボットハンド2000の内部に配線を配置することは非常に困難だった。しかしながら、上述した実施形態の圧電駆動装置10は、通常の電動モーターや、従来の圧電駆動装置よりも駆動電流を小さくできるので、関節部2020(特に、アーム2010の先端の関節部)やロボットハンド2000のような小さな空間でも配線を配置することが可能になる。
【0070】
図16は、上述の圧電駆動装置10を利用した送液ポンプ2200の一例を示す説明図である。送液ポンプ2200は、ケース2230内に、リザーバー2211と、チューブ2212と、圧電駆動装置10と、ローター2222と、減速伝達機構2223と、カム2202と、複数のフィンガー2213、2214、2215、2216、2217、2218、2219と、が設けられている。なお、駆動回路30は不図示である。リザーバー2211は、輸送対象である液体を収容するための収容部である。チューブ2212は、リザーバー2211から送り出される液体を輸送するための管である。圧電駆動装置10の接触部20は、ローター2222の側面に押し付けた状態で設けられており、圧電駆動装置10がローター2222を回転駆動する。ローター2222の回転力は減速伝達機構2223を介してカム2202に伝達される。フィンガー2213から2219はチューブ2212を閉塞させるための部材である。カム2202が回転すると、カム2202の突起部2202Aによってフィンガー2213から2219が順番に放射方向外側に押される。フィンガー2213から2219は、輸送方向上流側(リザーバー2211側)から順にチューブ2212を閉塞する。これにより、チューブ2212内の液体が順に下流側に輸送される。こうすれば、極く僅かな量を精度良く送液可能で、しかも小型な送液ポンプ2200を実現することができる。なお、各部材の配置は図示されたものには限られない。また、フィンガーなどの部材を備えず、ローター2222に設けられたボールなどがチューブ2212を閉塞する構成であってもよい。上記のような送液ポンプ2200は、インシュリンなどの薬液を人体に投与する投薬装置などに活用できる。ここで、上述した実施形態の圧電駆動装置10を用いることにより、従来の圧電駆動装置よりも駆動電流が小さくなるので、投薬装置の消費電力を抑制することができる。従って、投薬装置を電池駆動する場合は、特に有効である。
【0071】
G.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0072】
(1)上記各実施形態では、圧電素子として、成膜プロセスにより形成した圧電体を用いるものを例に取り説明したが、圧電体は、バルクの圧電体であってもよい。
【0073】
(2)上記実施形態では、振動体210の左右の長辺からそれぞれ1本ずつ延びる接続部230によって振動体210を振動可能に支持する構成を例に説明したが、接続部210の配置位置や数は、これに限定されるものではなく、種々の配置位置や数を採用することができる。例えば、振動体210の左右の長辺からそれぞれ複数本ずつ延びる接続部230によって振動体210を振動可能に支持する構成としても良い。また、長手方向に沿った片側のみに接続部を設けて、振動体210を片持ち状態で支持する構造としても良い。また、振動体210の接触部20とは反対側の短辺に接続部を設けて、振動体210を片持ち状態で支持する構造としても良い。
【0074】
(3)上記実施形態では、複数の圧電振動部のそれぞれの周波数特性としてインピーダンス特性を測定し、測定したインピーダンス特性に基づいてそれぞれの共振周波数を求める場合を例に説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、電流特性や電圧特性等の種々の周波数特性を測定し、測定した周波数特性からそれぞれの共振周波数を求めることも可能である。
【0075】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、或いは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。