(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明のボイラシステムは、複数種類の燃料ガスを混合して燃焼させることが可能なボイラシステムであり、特に、プラント設備等において副生ガスとして発生した水素ガス、及び13Aガス等の第1燃料ガスを使用可能なボイラシステムである。
第1実施形態のボイラシステム1は、
図1に示すように、複数(4台)の貫流ボイラ20を含むボイラ群2と、第1燃料ガス供給ラインL1と、水素ガス供給ラインL2と、水素ホルダ30と、蒸気ヘッダ40と、蒸気集合ラインL3と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する台数制御装置50と、を備える。
【0016】
ボイラ群2は、複数の貫流ボイラ20から構成され、蒸気使用設備60に供給する蒸気を生成する。貫流ボイラ20は、燃料ガスを燃焼させて蒸気を生成する。第1実施形態では、貫流ボイラ20は、第1燃料ガス及び水素ガスの混合ガスを燃料ガスとして燃焼可能、かつ、第1燃料ガスのみを燃料ガスとして燃焼可能な混焼燃焼及び専焼燃焼が可能なボイラにより構成される。
【0017】
尚、貫流ボイラ20は、複数の段階的な燃焼位置を有する段階値制御ボイラ、又は連続制御ボイラにより構成することができる。段階値制御ボイラとは、燃焼を選択的にオン/オフしたり、高燃焼、中燃焼、低燃焼等に燃焼位置を設定したりすること等により燃焼量を制御して、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能なボイラである。
また、連続制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態(例えば、最大燃焼率の20%の燃焼量における燃焼状態)から最大燃焼状態の範囲で、燃焼量が連続的に制御可能とされているボイラである。連続制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度を制御することにより、燃焼量を調整するようになっている。
【0018】
第1燃料ガス供給ラインL1は、複数の貫流ボイラ20それぞれに第1燃料ガスを供給する。第1燃料ガスとしては、燃料供給業者から安定的に供給される13AやLPG等の炭化水素ガスが好適に用いられる。
【0019】
第1燃料ガス供給ラインL1は、第1燃料本ラインL11と、複数の第1燃料分岐ラインL12と、を備える。第1燃料本ラインL11の上流側は、第1燃料ガス供給源(図示せず)に接続される。複数の第1燃料分岐ラインL12の上流側は、第1燃料本ラインL11に接続される。複数の第1燃料分岐ラインL12の下流側は、それぞれ、複数の貫流ボイラ20に接続される。
複数の第1燃料分岐ラインL12には、それぞれ、第1燃料ガス供給弁61が配置される。第1燃料ガス供給弁61は、例えば、モータバルブにより構成され、第1燃料分岐ラインL12の流路を開閉又は開度調整することで、第1燃料分岐ラインL12を流通する第1燃料ガスの流量を調整する。
【0020】
水素ガス供給ラインL2は、複数の貫流ボイラ20それぞれに水素ガスを供給する。水素ガス供給ラインL2は、水素ガス本ラインL21と、複数の水素ガス分岐ラインL22と、を備える。水素ガス本ラインL21の上流側は、水素ホルダ30に接続される。複数の水素ガス分岐ラインL22の上流側は、水素ガス本ラインL21に接続される。複数の水素ガス分岐ラインL22の下流側は、それぞれ、複数の貫流ボイラ20に接続される。
複数の水素ガス分岐ラインL22には、それぞれ、水素ガス供給弁62及び水素ガス放出弁63が配置される。
【0021】
水素ガス供給弁62は、例えば、モータバルブにより構成され、水素ガス分岐ラインL22の流路を開閉又は開度調整することで、水素ガス分岐ラインL22を流通する水素ガスの流量を調整する。
水素ガス放出弁63は、水素ガス分岐ラインL22における水素ガス供給弁62よりも上流側に配置される。水素ガス放出弁63は、例えば、電磁弁により構成され、水素ガス分岐ラインL22から外部への水素ガスの放出路を開閉する。
【0022】
水素ホルダ30は、プラント設備において副生ガスとして発生した水素ガスを貯留する。水素ホルダ30には、水素圧力検出部としての水素圧センサ31が配置される。水素圧センサ31は、水素ホルダ30に貯留された水素ガスの圧力を検出し、検出した水素ガスの圧力に係る信号(水素圧力信号)を、後述の台数制御装置50に送信する。
【0023】
蒸気ヘッダ40は、複数の貫流ボイラ20において生成された蒸気を集合させる。蒸気ヘッダ40は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整する。そして、圧力が調整された蒸気を、蒸気供給ラインL4を介して蒸気使用設備60に供給する。
蒸気ヘッダ40には、蒸気圧センサ41が配置される。蒸気圧センサ41は、蒸気ヘッダ40の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を検出し、検出した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、台数制御装置50に送信する。
【0024】
蒸気集合ラインL3は、複数の貫流ボイラ20と蒸気ヘッダ40とを接続し、複数の貫流ボイラ20において生成された蒸気を集合させて蒸気ヘッダ40に供給する。
【0025】
台数制御装置50は、蒸気圧センサ41により検出される蒸気ヘッダ40の内部の蒸気圧に基づいて、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を制御する。
また、台数制御装置50は、水素圧センサ31により検出される水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力に基いて、水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する。台数制御装置50の詳細については、後述する。
【0026】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ40を介して、蒸気使用設備60に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備60における蒸気消費量である。台数制御装置50は、この蒸気消費量の変動に対応して生じる蒸気ヘッダ40の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ41が検出する蒸気ヘッダ40の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0027】
具体的には、蒸気使用設備60の需要の増大により要求負荷(蒸気消費量)が増加し、蒸気ヘッダ40に供給される蒸気量が不足すれば、蒸気ヘッダ40の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備60の需要の低下により要求負荷(蒸気消費量)が減少し、蒸気ヘッダ40に供給される蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ40の内部の蒸気圧が増加することになる。従って、ボイラシステム1は、蒸気圧センサ41により検出された蒸気圧の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、蒸気ヘッダ40の蒸気圧に基づいて、蒸気使用設備60の消費蒸気量(要求負荷)に応じて必要とされる蒸気量である必要蒸気量を算出し、この算出された必要蒸気量に基いて、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態(燃焼させる貫流ボイラ20の台数及び燃焼させる貫流ボイラ20の燃焼量)を決定する。
【0028】
次に、本実施形態のボイラシステム1による複数の貫流ボイラ20への燃料ガスの供給制御の詳細について説明する。
台数制御装置50は、蒸気圧センサ41からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を算出する。そして、台数制御装置50は、算出された複数の貫流ボイラ20の燃焼状態に応じて、第1燃料ガス供給弁61及び水素ガス供給弁62の開閉又は開度を制御することで、それぞれの貫流ボイラ20への燃料ガス(水素ガス及び第1燃料ガス)の供給量を調整し、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を制御している。
【0029】
また、台数制御装置50は、水素圧センサ31により検出される水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定し、水素ガス供給弁62及び水素ガス放出弁63の開閉又は開度を制御することで、副生ガスとして発生した水素ガスの供給量が変動した場合であっても、ボイラシステム1を安定的に運転させ、かつ、水素ガスを好適に消費させている。
【0030】
以上の機能を実現するために、台数制御装置50は、記憶部51と、制御部52と、を備える。
記憶部51は、台数制御装置50(制御部52)の制御により複数の貫流ボイラ20に対して行われた指示の内容や、複数の貫流ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、複数の貫流ボイラ20の燃焼パターンの設定条件等の情報、複数の貫流ボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報、水素圧センサ31から受信した水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力の情報等を記憶する。
【0031】
また、第1実施形態では、記憶部51は、水素圧センサ31で検出される水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力値と水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数とを対応付けて記憶する。例えば、記憶部51は、
図2に示すように、水素ガスの圧力がP1以上の場合には水素ガスを供給する貫流ボイラ20を4台とし、圧力がP1未満P2以上の場合には水素ガスを供給する貫流ボイラ20を3台とし、圧力がP2未満P3以上の場合には水素ガスを供給する貫流ボイラ20を2台とし、圧力がP3未満P4以上の場合には水素ガスを供給する貫流ボイラ20を1台とし、そして圧力がP4未満の場合には水素ガスを供給する貫流ボイラ20を0台とするように対応付けられたテーブルを記憶する。
【0032】
図3に示すように、制御部52は、水素供給制御部521と、燃焼状態取得部522と、第1状態検出部523と、水素ガス弁制御部524と、を備える。
【0033】
水素供給制御部521は、水素圧センサ31により検出された水素ホルダ30の内部の圧力に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する。即ち、水素供給制御部521は、水素圧センサ31により検出された水素ガスの圧力値に対応して記憶部51に記憶された貫流ボイラ20の台数を抽出し、水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する。より詳細には、水素供給制御部521は、水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定すると共に、水素ガスを供給する貫流ボイラ20を優先順位の高い順に選択する。
【0034】
燃焼状態取得部522は、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を取得する。即ち、燃焼状態取得部522は、燃焼状態にある貫流ボイラ20(即ち、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20)の台数に関する情報及びそれぞれの貫流ボイラ20の燃焼量(燃焼率又は燃焼位置)に関する情報を取得する。
【0035】
第1状態検出部523は、水素供給制御部521により決定された水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数が、燃焼状態取得部522により取得された燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数よりも多い第1状態を検出する。
【0036】
水素ガス弁制御部524は、水素供給制御部521により決定された台数の貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放する。より具体的には、水素ガス弁制御部524は、水素供給制御部521により水素ガスを供給する貫流ボイラ20として選択された貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放する。
【0037】
第1実施形態では、水素ガス弁制御部524は、第1状態検出部523により第1状態が検出されない場合、即ち、水素供給制御部521により決定された水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数が燃焼状態取得部522により取得された燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数以下の場合には、水素供給制御部521により決定された台数の貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放する。
【0038】
そして、水素ガス弁制御部524は、第1状態検出部523により第1状態が検出された場合には、水素ガスを供給すると決定された貫流ボイラ20のうち、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス放出弁63を閉止して水素ガス供給弁62を開放し、燃焼指示が出されていない貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を閉止して水素ガス放出弁63を開放する。これにより、燃焼状態にない貫流ボイラ20に水素ガスが供給されてしまうことを防げる。
【0039】
次に、第1実施形態のボイラシステム1における水素ガスの供給制御の流れについて、
図4を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態の制御部52の処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
ステップST1において、台数制御装置50は、蒸気圧センサ41からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を算出し、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を制御する。そして、処理をステップST2に移す。
【0041】
ステップST2において、水素供給制御部521は、水素圧センサ31により検出された水素ガスの圧力値を取得し、取得した水素ガスの圧力値に対応して記憶部51に記憶された貫流ボイラ20の台数を抽出し、水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する。また、優先順位に基いて、水素ガスを供給する貫流ボイラ20を選択する。そして、処理をステップST3に移す。
【0042】
ステップST3において、燃焼状態取得部522は、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数に関する情報及びそれぞれの貫流ボイラ20の燃焼量(燃焼率又は燃焼位置)に関する情報を取得する。そして、処理をステップST4に移す。
【0043】
ステップST4において、制御部52は、第1状態検出部523により、水素供給制御部521により決定された水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数が、燃焼状態取得部522により取得された燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数よりも多い第1状態が検出されたかを判定する。この判定において、第1状態が検出されたと判定した場合(YES)には、処理をステップST5に移す。この判定において、第1状態が検出されていないと判定した場合(NO)には、処理をステップST6に移す。
【0044】
ステップST5において、水素ガス弁制御部524は、水素供給制御部521により水素ガスを供給すると決定された貫流ボイラ20のうち、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス放出弁63を閉止して水素ガス供給弁62を開放し、燃焼指示が出されていない貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を閉止して水素ガス放出弁63を開放する。そして、処理を終了する。
【0045】
ステップST6において、水素ガス弁制御部524は、水素供給制御部521により決定された台数の貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放する。より具体的には、水素ガス弁制御部524は、水素供給制御部521により水素ガスを供給すると決定された貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放する。この場合、水素ガス弁制御部524は、すべての貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス放出弁63を閉止する。そして、処理を終了する。
【0046】
以上説明した第1実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0047】
(1)ボイラシステム1を、複数の貫流ボイラ20を有するボイラ群2と、複数の貫流ボイラそれぞれに第1燃料ガスを供給する第1燃料ガス供給ラインL1と、複数の貫流ボイラ20それぞれに水素ガスを供給する水素ガス供給ラインL2と、水素ホルダ30と、水素圧センサ31と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部52と、を含んで構成した。そして、制御部52を、水素圧センサ31により検出された圧力に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する水素供給制御部521を含んで構成した。これにより、水素ガスの発生量が多く水素ホルダ30の内部の圧力が高い場合には、水素ガスを供給して水素ガス及び第1燃料ガスの混合燃料を燃焼させる貫流ボイラ20の台数を増加させられ、水素ガスの発生量が少なく水素ホルダ30の内部の圧力が低い場合には、水素ガスを供給して水素ガス及び第1燃料ガスの混合燃料を燃焼させる貫流ボイラ20の台数を減少させられる。よって、ボイラシステム1を、複数の貫流ボイラ20からなるボイラ群2を含み、水素供給制御部521に、水素圧センサ31により検出された圧力に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定させることで、水素ガスの供給量が変動した場合であっても、安定的にボイラシステム1を運転させられ、かつ、好適に水素ガスを消費させられる。
【0048】
(2)ボイラシステム1を、水素ガス供給ラインL2における複数の貫流ボイラ20それぞれの上流側に配置される複数の水素ガス供給弁62を含んで構成し、制御部52を、水素供給制御部521により決定された台数の貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放する水素ガス弁制御部524を含んで構成した。これにより、水素供給制御部521により水素ガスを供給すると決定された貫流ボイラ20に好適に水素ガスを供給できる。
【0049】
(3)ボイラシステム1を、水素ガス供給ラインL2における複数の水素ガス供給弁62それぞれの上流側に配置される複数の水素ガス放出弁63を含んで構成し、制御部52を、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を取得する燃焼状態取得部522と、水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数が燃焼状態にある貫流ボイラ20の台数よりも多い第1状態を検出する第1状態検出部523と、含んで構成した。そして、水素ガス弁制御部524に、第1状態が検出された場合に、燃焼状態にある貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62を開放し、燃焼状態にない貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス放出弁63を開放させた。これにより、第1状態検出部523により第1状態が検出された場合に、水素供給制御部521により水素ガスを供給すると決定された貫流ボイラ20のうち、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20に水素ガスを供給でき、燃焼指示が出されていない貫流ボイラ20に水素ガスが供給されてしまうことを防げる。よって、ボイラシステム1の安全性を向上させられる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係るボイラシステム1Aについて、
図5〜
図7を参照しながら説明する。第2実施形態のボイラシステム1Aは、主として、水素ガス放出弁63Aの配置及び制御部52Aの構成において、第1実施形態と異なる。尚、第2実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0051】
図5に示すように、第2実施形態のボイラシステム1Aでは、水素ガス放出弁63Aは、水素ホルダ30に配置されており、水素ガス供給ラインL2(水素ガス分岐ラインL22)には配置されていない。
第2実施形態における制御部52Aは、
図6に示すように、燃焼状態取得部522Aと、水素供給制御部521Aと、を備える。
【0052】
燃焼状態取得部522Aは、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を取得する。即ち、燃焼状態取得部522Aは、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数に関する情報及びそれぞれの貫流ボイラ20の燃焼量(燃焼率又は燃焼位置)に関する情報を取得する。
【0053】
水素供給制御部521Aは、水素圧センサ31により検出される圧力が予め設定された目標圧力となるようにボイラ群2に供給する水素ガス量を制御する。
第2実施形態では、記憶部51Aは、水素ホルダ30の内部における水素ガスの目標圧力を記憶している。そして、水素供給制御部521Aは、検出された水素ガスの圧力値と記憶部51Aに設定された目標圧力との偏差に対して、所定のPIアルゴリズム又はPIDアルゴリズムに基づくフィードバック制御を行うことで、水素ガスの圧力値が目標圧力となるために必要な水素ガスのボイラ群2への供給量(必要出力水素量)を算出する。
そして、水素供給制御部521Aは、必要出力水素量で水素ガスがボイラ群2に供給されるように水素ガス供給弁62の開閉又は開度を制御する。
【0054】
より具体的には、水素供給制御部521Aは、燃焼状態取得部522Aにより取得された燃焼状態にある貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62の開度を制御することで、ボイラ群2に供給する水素ガス量を制御する。即ち、例えば、燃焼状態取得部522Aにより、3台の貫流ボイラ20が燃焼状態にあることが取得された場合、水素供給制御部521Aは、これら3台の貫流ボイラ20に対応した配置された水素ガス供給弁62を所定の開度で開放することで、必要出力水素量の水素ガスを貫流ボイラ20に供給する。
【0055】
また、水素供給制御部521Aは、燃焼状態にある貫流ボイラ20への水素ガスの供給だけでは水素ホルダ30から出力される水素量(出力水素量)が必要出力水素量に到達しない場合、又は燃焼状態にある貫流ボイラ20がない場合には、水素ガス放出弁63Aの開度を制御することで、水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力が目標圧力となるように制御する。
【0056】
次に、第2実施形態のボイラシステム1Aにおける水素ガスの供給制御の流れについて、
図7を参照しながら説明する。
図7は、第2実施形態の制御部52Aの処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
ステップST11において、台数制御装置50は、蒸気圧センサ41からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を算出し、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を制御する。そして、処理をステップST12に移す。
【0058】
ステップST12において、燃焼状態取得部522Aは、燃焼指示が出されている貫流ボイラ20の台数に関する情報及びそれぞれの貫流ボイラ20の燃焼量(燃焼率又は燃焼位置)に関する情報を取得する。そして、処理をステップST13に移す。
【0059】
ステップST13において、水素供給制御部521Aは、水素圧センサ31により検出された水素ガスの圧力値と記憶部51Aに設定された目標圧力との偏差に基づいて、水素ガスの圧力値が目標圧力となるために必要な水素ガスのボイラ群2への供給量である必要出力水素量を算出する。そして、処理をステップST14に移す。
【0060】
ステップST14において、制御部52Aは、燃焼状態にある貫流ボイラ20があるかを判定する。この判定において、燃焼状態にある貫流ボイラ20があると判定した場合(YES)には、処理をステップST15に移す。この判定において、燃焼状態にある貫流ボイラ20がないと判定した場合(NO)には、処理をステップST17に移す。
【0061】
ステップST15において、水素供給制御部521Aは、必要出力水素量で水素ガスをボイラ群2に供給するように、燃焼状態にある貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62の開度を制御する。そして、処理をステップST16に移す。
【0062】
ステップST16において、制御部52Aは、ボイラ群2に供給される水素ガスの量(出力水素量)が必要出力水素量に到達しているかを判定する。この判定において、出力水素量が必要出力水素量に到達していると判定した場合(YES)には、処理を終了する。この判定において、出力水素量が必要出力水素量に到達していないと判定した場合(NO)には、処理をステップST17に移す。
【0063】
ステップST17において、水素供給制御部521Aは、必要出力水素量で水素ガスが出力されるように、水素ガス放出弁63Aの開度を制御する。そして、処理を終了する。
【0064】
以上説明した第2実施形態のボイラシステム1Aによれば、以下のような効果を奏する。
【0065】
(4)ボイラシステム1Aを、複数の貫流ボイラ20を有するボイラ群2と、複数の貫流ボイラそれぞれに第1燃料ガスを供給する第1燃料ガス供給ラインL1と、複数の貫流ボイラ20それぞれに水素ガスを供給する水素ガス供給ラインL2と、水素ホルダ30と、水素圧センサ31と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部52Aと、を含んで構成した。そして、制御部52Aを、水素圧センサ31により検出される圧力が予め設定された目標圧力となるようにボイラ群2に供給する水素ガス量を制御する水素供給制御部521Aを含んで構成した。これにより、水素ガスの発生量が多く水素ホルダ30の内部の圧力が高い場合には、ボイラ群2に供給する水素ガス量(出力水素量)を多く制御でき、水素ガスの発生量が少なく水素ホルダ30の内部の圧力が低い場合には、出力水素量を少なく制御できる。よって、ボイラシステム1を、複数の貫流ボイラ20からなるボイラ群2を含み、水素供給制御部521Aに、水素圧センサ31により検出される圧力が予め設定された目標圧力となるようにボイラ群2に供給する水素ガス量を制御させることで、水素ガスの供給量が変動した場合であっても、安定的にボイラシステム1Aを運転させられ、かつ、好適に水素ガスを消費させられる。
【0066】
(5)ボイラシステム1Aを、水素ガス供給ラインL2における複数の貫流ボイラ20それぞれの上流側に配置される複数の水素ガス供給弁62を含んで構成し、制御部52Aを、複数の貫流ボイラ20の燃焼状態を取得する燃焼状態取得部522Aを含んで構成した。そして、水素供給制御部521Aに、燃焼状態取得部522Aにより取得された燃焼状態にある貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62の開度を制御させた。これにより、燃焼状態にある貫流ボイラ20に対して好適に水素ガスを供給できる。
【0067】
(6)ボイラシステム1Aを、水素ホルダ30に貯留された水素ガスを放出する水素ガス放出弁63Aを含んで構成し、水素供給制御部521Aに、燃焼状態取得部522Aにより取得された燃焼状態にある貫流ボイラ20に対応して配置された水素ガス供給弁62Aの開度、及び水素ガス放出弁63Aの開度を制御させた。これにより、燃焼している貫流ボイラ20への水素ガスの供給だけでは出力される水素量(出力水素量)が必要出力水素量に到達しない場合、又は燃焼している貫流ボイラ20がない場合には、水素ガス放出弁63Aの開度を制御することで、水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力が過剰に高くなってしまうことを防げる。よって、ボイラシステム1Aの安全性をより向上させられる。
【0068】
次に、本発明の第3実施形態に係るボイラシステム1Bについて、
図8を参照しながら説明する。第3実施形態のボイラシステム1Bは、水素ホルダを備えない点で、第1実施形態と異なる。
【0069】
第3実施形態では、水素ガス供給ラインL2(水素ガス本ラインL21)の上流側は、プラント設備における副生水素ガス供給源(図示せず)に接続される。そして、水素ガス本ラインL21には、流量検出部としての流量計64が配置される。流量計64は、水素ガス供給ラインL2(水素ガス本ラインL21)を流通する水素ガスの流量を検出する。
【0070】
また、第3実施形態では、制御部52Bは、第1実施形態と同様に、水素供給制御部521と、燃焼状態取得部522と、第1状態検出部523と、水素ガス弁制御部524と、を含んで構成される(
図3参照)。
第3実施形態においては、水素供給制御部521は、第1実施形態と異なり、流量計64により検出された水素ガスの流量に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する。
燃焼状態取得部522、第1状態検出部523、及び水素ガス弁制御部524については、第1実施形態と同様の機能を有する。
【0071】
即ち、第3実施径形態のボイラシステム1Bは、水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を、水素ホルダ30の内部の水素ガスの圧力ではなく、水素ガス供給ラインL2を流通する水素ガスの流量に基いて決定する他は、第1実施形態のボイラシステム1と同様の制御を行う。
【0072】
第3実施形態のボイラシステム1Bによれば、上述の(2)及び(3)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0073】
(7)ボイラシステム1Bを、複数の貫流ボイラ20を有するボイラ群2と、複数の貫流ボイラそれぞれに第1燃料ガスを供給する第1燃料ガス供給ラインL1と、複数の貫流ボイラ20それぞれに水素ガスを供給する水素ガス供給ラインL2と、水素ガス供給ラインL2を流通する水素ガスの流量を検出する流量計64と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する制御部52Bと、を含んで構成した。そして、制御部52Bを、流量計64により検出された水素ガスの流量に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定する水素供給制御部521を含んで構成した。これにより、水素ガスの発生量が多く水素ガス供給ラインL2を流通する水素ガスの流量が多い場合には、水素ガスを供給して水素ガス及び第1燃料ガスの混合燃料を燃焼させる貫流ボイラ20の台数を増加させられ、水素ガスの発生量が少なく水素ガス供給ラインL2を流通する水素ガスの流量が少ない場合には、水素ガスを供給して水素ガス及び第1燃料ガスの混合燃料を燃焼させる貫流ボイラ20の台数を減少させられる。よって、ボイラシステム1Bを、複数の貫流ボイラ20からなるボイラ群2を含み、水素供給制御部521に、流量計64により検出された水素ガスの流量に基いて水素ガスを供給する貫流ボイラ20の台数を決定させることで、水素ガスの供給量が変動した場合であっても、安定的にボイラシステム1Bを運転させられ、かつ、好適に水素ガスを消費させられる。
【0074】
以上、本発明のボイラシステムの好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第1実施形態〜第3実施形態では、本発明を、4台の貫流ボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステム1に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、5台以上の貫流ボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよく、また、3台以下の貫流ボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。