特許第6593039号(P6593039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593039
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】空気式防舷材およびその折り畳み方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/26 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   E02B3/26 K
   E02B3/26 D
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-172533(P2015-172533)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-48603(P2017-48603A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】栗林 延全
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−112198(JP,A)
【文献】 特開2014−041075(JP,A)
【文献】 実開昭58−159203(JP,U)
【文献】 特開2009−137586(JP,A)
【文献】 特開2010−030467(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0200910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/26
B65B 31/06
B65D 51/16
B60C 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状部の両端にボウル状の鏡部を連接した袋体と、前記袋体の内部と外気とを連通させる排出口を有して前記鏡部の一方に埋設されている口金具とを備えた空気式防舷材において、
金属製の前記口金具が円盤状の平板部とその中央部を貫通する前記排出口とを備えていて、前記口金具の前記平板部が埋設されている範囲の前記袋体の内面に、前記袋体の内側に向かって突出する突部を有し、前記突部が、前記排出口の近傍から、前記平板部の外縁よりも前記口金具が埋設されている前記鏡部の半径方向外側に向かって延在していて、前記袋体を収縮させた状態で前記突部が前記袋体の前記突部に対向する位置にある内面に当接することにより、少なくとも前記口金具が埋設されている範囲の前記袋体の内面と、前記突部が当接した側の前記袋体の内面との間にすき間が存在するとともに、このすき間が前記排出口に連通した状態になる構成にしたことを特徴とする空気式防舷材。
【請求項2】
前記突部が弾性部材により形成されている請求項1に記載の空気式防舷材。
【請求項3】
前記突部が複数であり、前記排出口を中心にして放射状に延在している請求項1または2に記載の空気式防舷材。
【請求項4】
円筒状部の両端にボウル状の鏡部を連接した袋体と、前記袋体の内部と外気とを連通させる排出口を有して前記鏡部の一方に埋設されている口金具とを備えた空気式防舷材を、前記袋体の内部から空気を排出させることにより収縮させて、前記鏡部のそれぞれを前記円筒状部の上側にして平坦状に折り畳んだ状態にする空気式防舷材の折り畳み方法において、
金属製の前記口金具が円盤状の平板部とその中央部を貫通する前記排出口とを備えていて、前記口金具の前記平板部が埋設されている範囲の前記袋体の内面に、前記袋体の内側に向かって突出する突部を設けて、前記突部を、前記排出口の近傍から、前記平板部の外縁よりも前記口金具が埋設されている前記鏡部の半径方向外側に向かって延在させておき、前記排出口から前記袋体の内部の空気を外部に排出させて前記袋体を収縮させることにより、前記突部を前記袋体の前記突部に対向する位置にある内面に当接させて、少なくとも前記口金具が埋設されている範囲の前記袋体の内面と、前記突部が当接した側の前記袋体の内面との間にすき間を形成するとともに、このすき間を前記排出口に連通させた状態にして、この状態で前記排出口から前記袋体の内部の空気を外部に排出させて収縮させることにより、前記鏡部のそれぞれを前記円筒状部の上側にして平坦状に折り畳んだ状態にすることを特徴とする空気式防舷材の折り畳み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式防舷材およびその折り畳み方法に関し、さらに詳しくは、防舷材を構成する袋体の内部の空気を円滑に外部に排出させ、収縮させて畳んだ状態にするために要する時間を短縮できる空気式防舷材およびその折り畳み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気式防舷材は一般的に、円筒状部の両端にボウル状の鏡部が連接された袋体を備えている。この防舷材を使用する場合には、袋体の内部に空気等を入れて膨張させた状態にする。一方、防舷材を使用しない状況、例えば、防舷材を製造した工場等で保管する場合や、搬送する場合には、袋体を膨張させた状態では嵩張るため、袋体の内部から空気を排出させることにより収縮させて折り畳んだ状態にする(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方の鏡部には、袋体の内部と外部とを連通させる排出口を備えた口金具が設けられている。袋体の内部から空気を外部に排出する際には、例えば、真空ポンプに接続された排気ホースを排出口に連結する。そして、真空ポンプを稼動することにより、排出口および排気ホースを通じて、袋体の内部から空気を外部に排出させることにより収縮させて折り畳んだ状態にしている。
【0004】
空気を外部に排出するに連れて袋体が収縮するが、袋体がある程度収縮した状態になると、排出口が袋体の対向する内面に当接して塞がれることがある。排出口が塞がれると、袋体の内部から空気を排出することができなくなる。このような場合には、排出口から空気を袋体の内部に注入して袋体を若干膨張させて、排出口を袋体の内面から離反させる。次いで、排出口が袋体の内面に当接して塞がれないように注意しながら、再度、袋体の内部から空気を排出させて収縮させている。
【0005】
このように、ある程度空気を外部に排出させた袋体に対して、空気を内部に注入して若干膨張させた後に再度、袋体の内部から空気を外部に排出させる作業が必要になるため、作業工数が増加する。これに伴い、袋体を収縮させて折り畳んだ状態にするために要する時間が長くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−112198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、防舷材を構成する袋体の内部の空気を円滑に外部に排出させて、収縮させて畳んだ状態にするために要する時間を短縮できる空気式防舷材およびその折り畳み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の空気式防舷材は、円筒状部の両端にボウル状の鏡部を連接した袋体と、前記袋体の内部と外気とを連通させる排出口を有して前記鏡部の一方に埋設されている口金具とを備えた空気式防舷材において、
金属製の前記口金具が円盤状の平板部とその中央部を貫通する前記排出口とを備えていて、前記口金具の前記平板部が埋設されている範囲の前記袋体の内面に、前記袋体の内側に向かって突出する突部を有し、前記突部が、前記排出口の近傍から、前記平板部の外縁よりも前記口金具が埋設されている前記鏡部の半径方向外側に向かって延在していて、前記袋体を収縮させた状態で前記突部が前記袋体の前記突部に対向する位置にある内面に当接することにより、少なくとも前記口金具が埋設されている範囲の前記袋体の内面と、前記突部が当接した側の前記袋体の内面との間にすき間が存在するとともに、このすき間が前記排出口に連通した状態になる構成にしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の空気式防舷材の折り畳み方法は、円筒状部の両端にボウル状の鏡部を連接した袋体と、前記袋体の内部と外気とを連通させる排出口を有して前記鏡部の一方に埋設されている口金具とを備えた空気式防舷材を、前記袋体の内部から空気を排出させることにより収縮させて、前記鏡部のそれぞれを前記円筒状部の上側にして平坦状に折り畳んだ状態にする空気式防舷材の折り畳み方法において、金属製の前記口金具が円盤状の平板部とその中央部を貫通する前記排出口とを備えていて、前記口金具の前記平板部が埋設されている範囲の前記袋体の内面に、前記袋体の内側に向かって突出する突部を設けて、前記突部を、前記排出口の近傍から、前記平板部の外縁よりも前記口金具が埋設されている前記鏡部の半径方向外側に向かって延在させておき、前記排出口から前記袋体の内部の空気を外部に排出させて前記袋体を収縮させることにより、前記突部を前記袋体の前記突部に対向する位置にある内面に当接させて、少なくとも前記口金具が埋設されている範囲の前記袋体の内面と、前記突部が当接した側の前記袋体の内面との間にすき間を形成するとともに、このすき間を前記排出口に連通させた状態にして、この状態で前記排出口から前記袋体の内部の空気を外部に排出させて収縮させることにより、前記鏡部のそれぞれを前記円筒状部の上側にして平坦状に折り畳んだ状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記排出口から前記袋体の内部の空気を外部に排出させて前記袋体を収縮させた際に、前記突部が前記袋体の前記突部に対向する位置にある内面に当接して前記口金具が埋設されている範囲の前記袋体の内面と、前記突部が当接した側の前記袋体の内面との間にすき間が形成される。また、このすき間は前記排出口に連通させた状態になる。そのため、袋体が収縮しても排出口が袋体の対向する内面に当接して塞がれることがなく、空気排出のためのすき間を確保できる。したがって、袋体の内部の空気を円滑に外部に排出させて収縮させることにより、短時間で、前記鏡部のそれぞれを前記円筒状部の上側にして平坦状に折り畳んだ状態にすることが可能になる。
【0011】
ここで、前記突部が弾性部材により形成されている仕様にすることも、前記口金具が内側表面に金具突起部を有し、この金具突起部によって前記突部が形成された状態になっている仕様にすることもできる。
【0012】
前記突部が、前記排出口の近傍から、前記口金具が埋設されている前記鏡部の半径方向外側に向かって延在している仕様にすることもできる。この仕様によれば、空気を排出すき間を確保し易くなる。さらに、前記突部が複数であり、前記排出口を中心にして放射状に延在している仕様にすることもできる。この仕様によれば、袋体が、円筒状部の周方向のどのような位置で置かれた状態であっても、円滑に袋体の内部から空気を排出させることができる。
【0013】
或いは、前記突部が複数の点状体であり、これら点状体の突部が散在している仕様にすることもできる。この仕様によっても、体が、円筒状部の周方向のどのような位置で置かれた状態であっても、円滑に袋体の内部から空気を排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の空気式防舷材を縦断面視で例示する全体概要図である。
図2図1のA矢視図である。
図3図1の袋体の内部の空気を外部に排出して収縮させた状態を縦断面視で例示する説明図である。
図4図3の袋体を平面視で例示する説明図である。
図5】突部の変形例を示す説明図(図1の口金具周辺を拡大した説明図)である。
図6】突部の別の変形例を示す説明図(図2相当図)である。
図7】従来の空気式防舷材の袋体の内部の空気を外部に排出している状態を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の空気式防舷材およびその折り畳み方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1図2に例示する本発明の空気式防舷材1(以下、防舷材1という)は、ゴムを主材料として補強材が埋設されて構成された袋体2を有している。袋体2は、円筒状部3の筒軸方向両端にボウル状の鏡部4が連接して形成されている。
【0017】
一方の鏡部4には口金具6が埋設されている。金属製の口金具6は、円盤状の平板部7とその中央部を貫通する排出口8とを備えている。口金具6には、その他に排出口を開閉する開閉バルブ、安全弁などの必要な部品が適宜設けられる。排出口8は、袋体2の内部と外部(外気)とを連通させ、袋体2の内部の空気aを外部に排出させる機能を有する。この実施形態の排出口8は、袋体2の外部から内部に空気aを注入する注入口としても機能する。
【0018】
口金具6が埋設されている範囲の袋体2の内面には、袋体2の内側に向かって突出する突部5が備わっている。この実施形態では、突部5が排出口8の近傍(例えば、排出口8から30mm〜100mm程度の位置)から、口金具6が埋設されている鏡部4の半径方向外側に向かって延在している。具体的には、平板部7の範囲内に突部5が延在している。尚、突部5は平板部7の外縁よりも鏡部4の半径方向外側に向かって延在させることもできる。
【0019】
突部5の大きさは例えば、延在長さが50mm〜150mm、幅が5mm〜15mm、袋体2の内面からの突出高さが5mm〜15mmである。ただし、突部5の大きさはこれに限定されることはなく、後述するすき間を確保できる大きさであればよい。
【0020】
突部5は単数にすることもできるが、複数にすることが好ましい。そして、この実施形態のように、排出口8を中心にして複数の突部5を放射状に延在させるとよい。例えば、突部5の数は3本〜16本程度、さらに好ましくは4本〜8本にして、周方向に等間隔に配置して放射状に延在させる。
【0021】
突部5は例えば、ゴム等の弾性部材により形成される。具体的には、ゴム片を接着剤等の適宜の接合手段によって袋体2の内面に接合する。突部5は、袋体2の内部から外部へ空気aを排出する時だけに用いるので、恒久的な接合強度は不要であり、突部5と袋体2の内面との接合強度は低くても構わない。
【0022】
次に、本発明の防舷材の折り畳み方法により、この防舷材1の袋体2を収縮させて平坦状に折り畳む手順の一例を説明する。
【0023】
工場で防舷材1を製造した後、特別な内圧を付与することなく膨張している袋体2を図3図4に例示するように横倒し状態にして、排出口8に排出ホース10の一端部を接続する。排出ホース10の他端部には真空ポンプ9を接続する。
【0024】
次いで、真空ポンプ9を稼動させて排出口8および排出ホース10を通じて、袋体2の内部の空気aを外部に排出させる。これにより、袋体2は徐々に収縮する。袋体2がある程度収縮した状態になると、突部5が袋体2の突部5に対向する位置にある内面に当接する。そして、突部5が対向する袋体2の内面に当接することで、口金具6(平板部7)が埋設されている範囲の袋体2の内面と、突部5が当接した側の袋体2の内面との間にすき間が形成される。このすき間は、排出口5に連通した状態になる。
【0025】
袋体2の内部に、このようなすき間が延在するため、引き続いて真空ポンプを稼動させても、すき間と排出口8と排出ホース10を通じて、袋体2の内部の空気aを外部に排出させることができる。袋体2をさらに収縮させてもすき間は確保される。
【0026】
図7に例示するように、突部5を有していない従来の空気式防舷材11では、袋体2がある程度収縮した状態になると、排出口8が袋体2の対向する内面に当接して塞がれることがあり、袋体2の内部から空気aを排出することができなくなる。本発明では、突部5を設けることで、このような不具合の発生を回避している。
【0027】
本発明の防舷材1では、図3図4に例示するように、内部の空気aがほとんど外部に排出されて袋体2が収縮して、それぞれの鏡部4が円筒状部3の上側にして平坦状に折り畳んだ状態になっても、排出口8が袋体2の対向する内面に当接して塞がれることがなく、すき間が確保される。それ故、袋体2の内部の空気aを円滑に外部に排出させることで収縮させて、平坦状に折り畳むために要する時間を短縮することが可能になる。
【0028】
このように平坦状に折り畳まれた袋体2は、その後、必要に応じて、円筒状部3の筒軸方向の折り目に沿って、適宜、2つ折りや3つ折りにされる。
【0029】
この実施形態のように、突部5が排出口8の近傍から、鏡部4の半径方向外側に向かって延在していると、すき間の延在長さが長くなる。これにより、空気aを袋体2の内部に残留させずに外部に排出させ易くなる。
【0030】
複数の突部5が排出口8を中心にして放射状に延在していると、袋体2が、円筒状部3の周方向のどのような位置で横倒しで置かれた状態であっても、すき間を確保し易くなるため、円滑に袋体2の内部から空気aを排出させるには有利になる。
【0031】
図5に例示するように、平板部7の内側表面に袋体2の内側に突出する金具突起部7aを設けることもできる。そして、この平板部7を袋体2に埋設した状態にすることで、金具突起部7aに相当する部分が袋体2の内側に突出する。この金具突起部7によって袋体2の内側に突出した部分を、突部5として機能させることもできる。この仕様の場合は、突部5にする部材をわざわざ用意して袋体2の内面に接合する必要がない。
【0032】
突部5は、上述したすき間を確保できれば、図6に例示するように、複数の点状体にすることもできる。点状体の突部5は、口金具6が埋設されている範囲の袋体2の内面に万遍なく散在させるとよい。このような突部5にすることによっても、袋体2が、円筒状部3の周方向のどのような位置で横倒しで置かれた状態であっても、すき間を確保し易くなるため、円滑に袋体2の内部から空気aを排出させるには有利になる。
【符号の説明】
【0033】
1 空気式防舷材
2 袋体
3 円筒状部
4 鏡部
5 突部
6 口金具
7 平板部
7a 金具突起部
8 排出口(注入口)
9 真空ポンプ
10 排気ホース
11 従来の空気式防舷材
a 空気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7