(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択部は、前記評価部により評価された最高の品質を特定し、前記一の通信装置との組合せが、前記特定した最高の品質に対応する他の通信装置を、前記複数の通信装置の中から選択する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信システム。
前記評価部は、2つの通信装置の間で単位時間当たりに送受信された情報量と、前記2つの通信装置の間で遣り取りされるデータを中継する機器の数と、を用いて前記品質を評価する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような品質を保証するギャランティ型インターネット回線では、通信能力が予め定まっている。一方、ギャランティ型インターネット回線に対して、通信能力を予め定めずに、最大限の努力サービスを提供するベストエフォート型インターネット回線では、通信状況によって通信能力が変動する。インターネット回線の構築においては、通信能力を考慮して、最適な経路を選択する必要があるため、ベストエフォート型インターネット回線では、変動する通信能力を把握した上で、最適な経路を選択する必要がある。
本発明は、変動する通信能力を考慮して、インターネット回線の経路を選択することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る通信システムは、公衆用の通信回線にそれぞれ接続された、情報提供装置と、複数の通信装置と、を有し、前記
複数の通信装置
のそれぞれは、自装置が、他の通信装置と通信をしたときの通信能力を測定して、得られた測定値を前記情報提供装置へ通知する通知部と、前記情報提供装置から提供される他の通信装置の情報を用いて自装置に該他の通信装置を接続して、該自装置と該他の通信装置との間に仮想の専用線を構築する接続部と、を有し、前記情報提供装置は、
前記複数の通信装置から通知される測定値をそれぞれ取得する取得部と、前記仮想の専用線を構築していない一の通信装置と接続することにより該仮想の専用線を構築する他の通信装置を、取得した前記測定値を用いて前記複数の通信装置の中から選択する選択部と、前記選択部が選択した他の通信装置を示す情報を、前記一の通信装置に提供する提供部と、
前記複数の通信装置のうち2つの通信装置の間の通信の品質を、取得した前記測定値を用いて評価する評価部と、を有
し、前記選択部は、前記一の通信装置の拠点の種別が基幹でないときには、拠点の種別が基幹である他の通信装置のうち、該一の通信装置との通信について前記評価部により評価された品質が最高のものを選択し、前記一の通信装置の拠点の種別が基幹であるときには、拠点の種別が基幹である他の通信装置、および、拠点の種別が基幹でない他の通信装置のうち、該一の通信装置との通信について前記評価部により評価された品質が最高のものを選択することを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に係る通信システムは、請求項1に記載の構成において、
前記選択部は、前記一の通信装置から前記他の通信装置の一覧の要求を受付けたときに、該他の通信装置を選択することを特徴とする。
本発明の請求項3に係る通信システムは、請求項
1または2に記載の構成において、前記評価部は、前記2つの通信装置がそれぞれ利用する回線事業者の組合せごとに、該2つの通信装置
の間の通信の品質を評価し、前記選択部は、前記評価部による評価が決められた条件を満たす前記回線事業者の組合せを特定し、前記一の通信装置との組合せが、前記特定した回線事業者の組合せに対応する他の通信装置を、前記複数の通信装置の中から選択することを特徴とする。
本発明の請求項4に係る通信システムは、請求項
1から3のいずれか1項に記載の構成において、前記選択部は、前記評価部により評価された最高の品質を特定し、前記一の通信装置との組合せが、前記特定した最高の品質に対応する他の通信装置を、前記複数の通信装置の中から選択することを特徴とする。
本発明の請求項5に係る通信システムは、請求項
1から4のいずれか1項に記載の構成において、前記評価部は、2つの通信装置の間で単位時間当たりに送受信された情報量と、前記2つの通信装置の間で遣り取りされるデータを中継する機器の数と、を用いて前記品質を評価することを特徴とする。
本発明の請求項
6に係る情報提供装置は、公衆用の通信回線により複数の通信装置と接続され、
前記複数の通信装置から通知される測定値をそれぞれ取得する取得部と、仮想の専用線を構築していない一の通信装置と接続することにより該仮想の専用線を構築する他の通信装置を、取得した前記測定値を用いて前記複数の通信装置の中から選択する選択部と、前記選択部が選択した他の通信装置を示す情報を、前記一の通信装置に提供する提供部と、
前記複数の通信装置のうち2つの通信装置の間の通信の品質を、取得した前記測定値を用いて評価する評価部と、を有
し、前記選択部は、前記一の通信装置の拠点の種別が基幹でないときには、拠点の種別が基幹である他の通信装置のうち、該一の通信装置との通信について前記評価部により評価された品質が最高のものを選択し、前記一の通信装置の拠点の種別が基幹であるときには、拠点の種別が基幹である他の通信装置、および、拠点の種別が基幹でない他の通信装置のうち、該一の通信装置との通信について前記評価部により評価された品質が最高のものを選択することを特徴とする。
本発明の請求項
7に係るプログラムは、公衆用の通信回線により複数の通信装置と接続されたコンピュータを、
前記複数の通信装置から通知される測定値をそれぞれ取得する取得部と、仮想の専用線を構築していない一の通信装置と接続することにより該仮想の専用線を構築する他の通信装置を、取得した前記測定値を用いて前記複数の通信装置の中から選択する選択部と、前記選択部が選択した他の通信装置を示す情報を、前記一の通信装置に提供する提供部
と、
前記複数の通信装置のうち2つの通信装置の間の通信の品質を、取得した前記測定値を用いて評価する評価部、として機能させる
とともに、前記選択部が、前記一の通信装置の拠点の種別が基幹でないときには、拠点の種別が基幹である他の通信装置のうち、該一の通信装置との通信について前記評価部により評価された品質が最高のものを選択し、前記一の通信装置の拠点の種別が基幹であるときには、拠点の種別が基幹である他の通信装置、および、拠点の種別が基幹でない他の通信装置のうち、該一の通信装置との通信について前記評価部により評価された品質が最高のものを選択するように前記コンピュータを制御するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1、
6、
7に係る発明によれば、変動する通信装置の通信能力を考慮して、その通信装置が接続すべき他の通信装置を選択することができ
、また、拠点の種別が基幹である通信装置同士の接続を、他の通信装置の組合せよりも優先することができる。
請求項2に係る発明によれば、
通信装置から他の通信装置の一覧の要求を受付けたときに、その通信装置が接続すべき他の通信装置を選択することができる。
請求項3に係る発明によれば、回線事業者の組合せによる通信品質への影響に応じて、新たに仮想の専用線を構築する通信装置が接続すべき他の通信装置を選択することができる。
請求項4に係る発明によれば、通信品質が最高となる回線事業者の組合せに応じて、新たに仮想の専用線を構築する通信装置が接続すべき他の通信装置を選択することができる。
請求項5に係る発明によれば、通信の速度と信頼性の評価に基づいて、新たに仮想の専用線を構築する通信装置が接続すべき他の通信装置を選択することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.実施形態
1−1.通信システムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システム9の全体構成を示す概略図である。通信システム9は、情報提供装置1と、複数の通信装置2と、を有する。情報提供装置1と複数の通信装置2とは、互いに通信回線3を介して接続されている。
【0010】
図1に示すように、1つの通信装置2には、複数台の端末4が接続されていてもよいが、1台の端末4だけが接続されていてもよいし、1台も端末4が接続されていなくてもよい。また、
図1に示すように情報提供装置1は1台であってもよいが、複数台であってもよい。ただし、複数台の情報提供装置1を用いる場合、これらが通信装置2に提供する「接続すべき他の通信装置2」についての情報が一意に定まるように共有されることが望ましい。
【0011】
通信回線3は、情報提供装置1と通信装置2とで遣り取りされる通信を中継する公衆用の回線であり、例えばインターネットである。端末4は、通信装置2を用いて通信回線3を利用する情報処理装置であり、例えばパーソナルコンピュータである。
【0012】
通信装置2は、通信回線3を介して他の通信装置2とデータを遣り取りし、それぞれの通信装置2に接続された端末4同士の通信を中継するデータ中継装置であり、例えばルータである。通信装置2は、仮想プライベートネットワーク(Virtual Private Network;以下、VPNと表記する)を構築するための機能を有する。
【0013】
VPNとは、共通のグループに属する通信装置同士の情報の遣り取りを公衆用のネットワークを用いてグループ外に漏れないように中継するネットワークであり、公衆用のネットワークを用いて構築された仮想の専用線である。VPNは、例えばインターネットに代表されるパブリックネットワークを用いながらも、あたかも通信装置同士が直接接続されたプライベートネットワークのように機能する。通信システム9の通信装置2は、例えばIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)などのプロトコルを用いることにより、いわゆる暗号処理やトンネリング処理などを行って、VPNを構築する。
【0014】
情報提供装置1は、例えば通信回線3上に新たに追加されたり、通信回線3上のアドレスが変更されたりした通信装置2に対して、その通信装置2と共通のグループに属する他の通信装置2の中から、接続すべき通信装置2(以下、対向装置ともいう)を選択し、選択したその対向装置の情報を提供する装置である。通信装置2は、情報提供装置1から対向装置の情報を提供されると、この情報を用いて対向装置と接続し、VPNに参加する。
【0015】
1−2.情報提供装置の構成
図2は、通信システム9に用いられる情報提供装置1の構成を示す図である。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置と、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などの主記憶装置とを備えている。演算装置は、RAMをワークエリアとして用いてROMや記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、情報提供装置1の各部の動作を制御する。
【0016】
通信部13は、通信回線3経由で通信装置2と通信を行う。記憶部12は、例えばハードディスク等の記憶デバイスであり、制御部11が用いるデータやプログラムを記憶している。記憶部12は、装置データベース(以下、図において「データベース」を「DB」と記述する)121、実績データベース122、および品質データベース123を記憶している。
【0017】
1−3.装置データベースの構成
図3は、装置データベース121の例を示す図である。装置データベース121には、通信回線3を介して通信装置2から送信される、通信装置2自身の情報が登録される。具体的には、「通信装置ID」と、「グループID」と、「拠点種別」と、「IPアドレス」と、「ISPドメイン」との組が、通信装置2自身の情報として情報提供装置1に送信され、制御部11はこれを装置データベース121に登録する。
【0018】
「通信装置ID」とは、情報を送信した通信装置2自身を識別するための識別情報である。「グループID」とは、その通信装置2が属するグループを識別するための識別情報である。「拠点種別」とは、その通信装置2がグループ内において属する拠点の種別を表した情報であり、基幹であるか支社であるかを示す情報である。
【0019】
「IPアドレス」とは、ネットワーク上においてその通信装置2をIP(Internet Protocol;インターネット・プロトコル)で識別するための識別情報であり、インターネット上のアドレスである。なお、通信回線3がインターネットでない場合、装置データベース121には、IPアドレスに代えて、通信回線3において通信装置2を識別する識別情報が記述されてもよい。
【0020】
「ISPドメイン」とは、その通信装置2が用いるISP(Internet Service Provider;インターネット・サービス・プロバイダ)のドメイン名である。各通信装置2には、それぞれ利用する回線事業者が定められており、これら回線事業者は、例えば、ISPドメインによって識別される。なお、ISPは通信装置2が利用する回線事業者の一例であり、ISPドメインはこの回線事業者を識別する識別情報の一例である。
【0021】
1−4.実績データベースの構成
図4は、実績データベース122の例を示す図である。実績データベース122には、2つの通信装置2間の通信において、通信能力を測定した結果が実績として登録される。具体的には、「測定日時」と、「自ISPドメイン」と、「対ISPドメイン」と、「スループット」と、「ホップ数」との組が、測定結果として情報提供装置1に通知され、制御部11はこの組を、通信の実績を示す情報として実績データベース122に登録する。
【0022】
「測定日時」とは、通信装置2が同じグループに属する他の通信装置2との通信能力を実際に測定した日時を示す情報である。「自ISPドメイン」とは、接続した2つの通信装置2のうち、通信能力を測定した側の通信装置2が用いるISPドメインである。「対ISPドメイン」とは、接続した2つの通信装置2のうち、通信能力を測定した側でない方の通信装置2が用いるISPドメインである。
【0023】
「スループット」とは、2つの通信装置2の間で単位時間当たりに送受信された情報量であって、通信速度を示す情報である。スループットは、例えば、通信速度の測定のために作成され予めデータ量が決められているダミーデータを送受信し、この送受信にかかった時間を測定して算出される。スループットが大きいほど、通信速度が速い。
【0024】
「ホップ数」とは、2つの通信装置2の間で遣り取りされるデータを中継する機器の数であって、通信の信頼性を示す情報である。通信経路上の各中継機器は、そのいずれか1つでも故障すると、通信経路全体が断絶する。つまり、ホップ数が小さいほど、通信経路上で故障し得る中継機器が少なくなるので通信の信頼性は向上する。
【0025】
1−5.品質データベースの構成
図5は、品質データベース123の例を示す図である。情報提供装置1の制御部11は、実績データベース122から、2つの通信装置2のそれぞれに対応付けられたISPドメインの組合せごとに通信速度および通信信頼性を集計し、これらを用いて2つの通信装置2のそれぞれが利用するISPドメインの組合せごとに、それら通信装置2間の通信の品質を評価する回線品質値を算出する。品質データベース123には、この算出された回線品質値が、上述したISPドメインの組合せごとに登録される。具体的には、「ISPドメイン組合せ」と、「回線品質値」との組が登録される。
【0026】
1−6.通信装置の構成
図6は、通信システム9に用いられる通信装置2の構成を示す図である。制御部21は、CPU等の演算装置と、ROMおよびRAMなどの主記憶装置とを備えている。演算装置は、RAMをワークエリアとして用いてROMや記憶部22に記憶されたプログラムを実行することによって、通信装置2の各部の動作を制御する。
【0027】
記憶部22は、例えばハードディスク等の記憶デバイスであり、制御部21が用いるデータやプログラムを記憶している。記憶部22は、通信装置2の通信装置IDなど、通信装置2自身の情報を記憶している。第1通信部23は、いわゆるWAN(Wide Area Network;ワイドエリアネットワーク)側の通信インターフェイスであり、通信回線3経由で他の通信装置2や情報提供装置1と通信を行う。第2通信部24は、いわゆるLAN(Local Area Network;ローカルエリアネットワーク)側の通信インターフェイスであり、例えば複数台の端末4と接続してこれらとの通信を行う。
【0028】
1−7.通信システムの機能的構成
図7は、通信システム9の機能的構成を示す図である。
図7において、情報提供装置1の通信部13、通信装置2の第1通信部23、第2通信部24、および通信回線3を省略する。情報提供装置1の制御部11は、上述したプログラムを実行することにより、第1取得部111、第2取得部112、評価部113、選択部114、および提供部115として機能する。通信装置2の制御部21は、上述したプログラムを実行することにより、送信部211、測定部212、通知部213、要求部214、および接続部215として機能する。
【0029】
図8は、情報提供装置1が通信装置2の情報を装置データベース121に登録する動作を示すシーケンス図である。通信回線3上に新たに追加されたり、通信回線3上のアドレスが変更されたりした通信装置2の制御部21は、記憶部22から通信装置2自身の情報を読み出す(ステップS101)。通信装置2自身の情報とは、具体的には、上述した「通信装置ID」と、「グループID」と、「拠点種別」と、「IPアドレス」と、「ISPドメイン」との組である。そして、通信装置2の制御部21は、これらの情報を情報提供装置1へ送信する(ステップS102)。これにより、制御部21は、
図7に示した送信部211として機能する。
【0030】
情報提供装置1の制御部11は、通信装置2から取得した情報を装置データベース121に登録する(ステップS103)。ここで「登録」とは、新規の情報を記憶することであるが、既に登録された情報の一部を修正する場合に行う「更新」も含むものである。そして、制御部11は、装置データベース121への上記の登録が完了すると、登録の可否を通信装置2に通知する(ステップS104)。これにより制御部11は、
図7に示した第1取得部111として機能する。
【0031】
図9は、情報提供装置1が実績データベース122および品質データベース123にデータを登録する動作を示すシーケンス図である。情報提供装置1は、通信装置2で測定された通信能力の測定値を実績データベース122に登録する。そして、情報提供装置1は、通信能力の測定値から算出された回線品質値を品質データベース123に登録する。
【0032】
通信装置2の制御部21は、情報提供装置1に対してVPN接続可能な他の通信装置2の一覧を要求する(ステップS201)。ここでいう「VPN接続可能な」とは、要求元である通信装置2と共通のグループに属している通信装置2である。また、この要求は、要求元である通信装置2の「通信装置ID」と、「グループID」と、を提示して行われる。
【0033】
情報提供装置1の制御部11は、通信装置2からの要求を受付けると、要求に含まれる「グループID」をキーにして装置データベース121を走査し、要求元の通信装置2と共通のグループに属する他の通信装置2の「通信装置ID」と、「IPアドレス」と、を抽出する(ステップS202)。そして、制御部11は、これらのリスト(一覧)を要求元である通信装置2に回答する(ステップS203)。
【0034】
このリストを受取った通信装置2の制御部21は、受取ったリストに含まれる「IPアドレス」が割当てられている「他の通信装置2」に対して順次、接続し(ステップS204)、通信能力の測定を行う(ステップS205)。制御部21は、通信能力の「スループット」と「ホップ数」と、について測定する。つまり、制御部21は、自装置が、共通のグループに属する他の通信装置2と通信をしたときの通信能力を測定する。これにより、制御部21は、
図7に示した測定部212として機能する。
【0035】
通信能力を測定した制御部21は、その測定により得られた測定値を情報提供装置1へ通知する(ステップS206)。この通知には、測定が行われた日時を示す「測定日時」と、測定を行った通信装置2の「IPアドレス」と、この通信装置2が接続して測定対象となる通信を行った、他の通信装置2の「IPアドレス」と、測定結果そのもの、すなわち、「スループット」と、「ホップ数」と、が含まれる。これにより、制御部21は、
図7に示した通知部213として機能する。
【0036】
測定結果を取得した情報提供装置1の制御部11は、通知に含まれる2つの「IPアドレス」をキーとして、装置データベース121を走査し、測定をした通信装置2と、その通信装置2に接続された他の通信装置2のそれぞれの「ISPドメイン」(すなわち「自ISPドメイン」および「対ISPドメイン」)を特定する。そして、制御部11は、これらとともに測定結果そのものを実績データベース122に登録する(ステップS207)。この登録が完了すると制御部11は、通信装置2に登録が完了した旨の通知をする(ステップS208)。これにより制御部11は、
図7に示した第2取得部112として機能する。
【0037】
情報提供装置1は、例えば定期的に実績データベース122を参照して、決められた期間(例えば直近の1か月など)の通信の実績を取得すると、この実績を基に回線品質値を算出する。回線品質値は、通信をした2つの通信装置2のISPドメインの組合せごとに集計し、例えば、「スループット」の相加平均値を「ホップ数」の相加平均値で除算した値などにより求める。すなわち、制御部11は、ISPドメインの組合せごとに回線の品質を評価する(ステップS209)。
【0038】
なお、回線品質値の算出方法は、これに限らず、例えば「スループット」を「ホップ数」で除算した値の相加平均値により求める方法でもよいし、「スループット」などの通信速度を示す測定値、および「ホップ数」などの通信信頼性を示す測定値のいずれか一方を用いて求める方法でもよい。「スループット」が大きいほど通信速度が速く、「ホップ数」が小さいほど通信信頼性が高いため、回線品質値は、通信速度が速く、且つ、通信信頼性が高いものほど、高い数値となる。
【0039】
そして、制御部11は、算出した回線品質値を品質データベース123に登録する(ステップS210)。これにより制御部11は、
図7に示した評価部113として機能する。
【0040】
図10は、通信装置2が対向装置と接続してVPNを構築する動作を示すシーケンス図である。他の通信装置2と未だ接続していない通信装置2を「通信装置2A」とし、既存の通信装置2の1つを「通信装置2B」とする。
【0041】
例えば新たに通信回線3上に追加された通信装置2Aは、他の通信装置2と未だVPNを構築するための接続をしていない。通信装置2Aが通信装置2A自身の情報を情報提供装置1に送信し、情報提供装置1が上述の
図8に示した装置データベース121への登録を終えると、通信装置2Aの制御部21は、他の通信装置2への接続要求を情報提供装置1に送る(ステップS301)。この接続要求には、通信装置2Aの「通信装置ID」が含まれている。これにより、制御部21は、
図7に示した要求部214として機能する。
【0042】
情報提供装置1の制御部11は、受取った接続要求に含まれる「通信装置ID」をキーにして装置データベース121を走査し、この接続要求を送った通信装置2Aの属するグループを特定する。そして、制御部11は、特定したこのグループに属する他の通信装置2の中から、通信能力の測定値を用いて通信装置2Aが接続すべき通信装置2、つまり対向装置を選択する(ステップS400)。
【0043】
ここで、制御部11は通信能力の測定値から算出された回線品質値を登録している品質データベース123を参照して、複数の通信装置2の中から通信装置2Aとの通信の品質が決められた条件を満たす対向装置を選択する。
【0044】
なお、本実施形態において、品質データベース123は、「ISPドメイン組合せ」と「回線品質値」とを対応付けて記憶している。そのため、制御部11は、品質データベース123を参照して、通信装置2Aと、対向装置の候補となる通信装置2(以下、「候補装置」という)と、の「ISPドメイン組合せ」に対応付けられた「回線品質値」が決められた条件を満たすか否か判断し、この条件を満たすときの候補装置を対向装置として選択する。すなわち、制御部11は、評価部113による評価が決められた条件を満たす回線事業者の組合せを特定し、通信装置2A(一の通信装置)との組合せが、特定した回線事業者の組合せに対応する候補装置(他の通信装置)を対向装置として選択する。これにより制御部11は、
図7に示した選択部114として機能する。
【0045】
上述した決められた条件とは、どのようなものであってもよいが、本実施形態においては、品質の評価が最高であること、である。他の条件としては、品質の評価が2番目であることや、評価された品質の順位が決められた順位以上であること、などが挙げられる。最高と2番目との差が閾値を超えていないときに最高のものを選択し、超えたときに2番目を選択するようにしてもよい。また、選択部114は、複数の候補装置を対向装置として選択してもよい。
【0046】
図11は、ステップS400に示した対向装置の選択の動作を示すフロー図である。制御部11は、接続要求の要求元である通信装置2A(以下、「要求元装置」という)のグループIDを特定する(ステップS401)。そして、同グループに属しており、且つ、未検討の対向装置の候補(候補装置)があるか否か判断する(ステップS402)。
【0047】
上述した候補装置がないと判断すると(ステップS402;NO)、制御部11は、処理を終了する。一方、上述した候補装置があると判断すると(ステップS402;YES)、制御部11は、要求元装置と候補装置の両方の拠点種別が共に「基幹」であるか否かを判断する(ステップS403)。
【0048】
要求元装置と候補装置の両方の拠点種別が共に「基幹」であると判断すると(ステップS403;YES)、制御部11は、候補装置を対向装置として選択し(ステップS406)、処理を終了する。
【0049】
一方、要求元装置と候補装置の少なくともいずれか一方の拠点種別が「基幹」ではないと判断すると(ステップS403;NO)、制御部11は、これら両方の拠点種別が共に「支社」であるか否かを判断する(ステップS404)。
【0050】
ステップS404において、要求元装置と候補装置の両方の拠点種別が共に「支社」であると判断すると(ステップS404;YES)、制御部11は、処理を終了する。要求元装置と候補装置の両方の拠点種別が「支社」ではない、つまり、要求元装置と候補装置のいずれか一方の拠点種別が「基幹」であって他方の拠点の種別が「支社」である、と判断すると(ステップS404;NO)、制御部11は、品質データベース123を参照して、この要求元装置と候補装置との組合せにおける回線品質値を特定する。そして特定したその回線品質値が、他の「支社」と「基幹」とにそれぞれ属する通信装置2の組合せの中で最高であるか否かについて、判断する(ステップS405)。
【0051】
この要求元装置と候補装置との組合せにおける回線品質値が、他の「支社」と「基幹」にそれぞれ属する通信装置2の組合せの中で最高ではないと判断すると(ステップS405;NO)、制御部11は処理を終了する。
【0052】
一方、この要求元装置と候補装置との組合せにおける回線品質値が、他の「支社」と「基幹」にそれぞれ属する通信装置2の組合せの中で最高であると判断すると(ステップS405;YES)、制御部11は上述したステップS406に処理を進める。すなわち、制御部11は、この候補装置を対向装置として選択する(ステップS406)。
【0053】
図11を用いて説明した対向装置の選択の動作を行うことにより、情報提供装置1の制御部11は、「一の通信装置」の拠点の種別が「基幹」でないときには、拠点の種別が「基幹」である「他の通信装置」のうち、その「一の通信装置」との通信について評価部により評価された品質が最高のものを選択し(ステップS405;YES)、「一の通信装置」の拠点の種別が「基幹」であるときには、拠点の種別が「基幹」である「他の通信装置」(ステップS403;YES)、および、拠点の種別が「基幹」でない「他の通信装置」のうち、その「一の通信装置」との通信について評価部により評価された品質が最高のものを選択する(ステップS405;YES)。
【0054】
図10に示す情報提供装置1は、ステップS400で選択した対向装置の情報を、接続要求の要求元である通信装置2Aに提供する(ステップS302)。これにより制御部11は、
図7に示した提供部115として機能する。
通信装置2Aは、提供された対向装置の情報を用いてその対向装置(
図10に示す例では「通信装置2B」)に接続する(ステップS303)。これにより通信装置2Aの制御部21は、
図7に示した接続部215として機能する。
【0055】
以上の通り、通信システム9は、新たに仮想の専用線に参加する通信装置が接続すべき他の通信装置を、既に評価された通信品質に基づいて選択するため、その通信装置との間の通信品質を測定する必要がない。
【0056】
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0057】
2−1.変形例1
上述した実施形態において、制御部11は、通信能力の測定値から回線品質値を算出し、算出したその回線品質値を品質データベース123に登録していたが、通信能力の測定値を用いて対向装置を選択するのであれば、回線品質値を算出しなくてもよく、回線品質値を品質データベース123に登録しなくてもよい。
【0058】
2−2.変形例2
上述した実施形態において、制御部11によって実現される評価部113は、2つの通信装置がそれぞれ利用するISPドメイン(回線事業者)の組合せごとに、これら2つの通信装置間の通信の品質を評価していたが、制御部11は、「ISPドメイン組合せ」など回線事業者の組合せごとに通信の品質を評価しなくてもよい。
【0059】
2−3.変形例3
上述した実施形態において、制御部11は、要求元装置と候補装置の拠点種別が「基幹」であるか否かを判断して、その組合せに応じて対向装置を選択していたが、通信装置2の拠点種別を判断しなくてもよい。
【0060】
2−4.変形例4
上述した実施形態において、制御部11は、要求元装置と候補装置の両方の拠点種別が共に「基幹」であると判断すると、候補装置を対向装置として選択していたが、両方の拠点種別が共に「基幹」である場合の候補装置が複数ある場合には、さらにこれら複数の候補装置の中から、絞り込んで対向装置を選択してもよい。
【0061】
図12は、この変形例における装置データベース121の例を示す図である。この装置データベース121には、
図3に示した項目のほか、拠点を識別する識別情報である「拠点ID」と、共通の拠点に複数存在する通信装置2を識別する識別情報である「内部ID」と、が登録される。以下、拠点種別が「支社」である拠点には、通信装置2が1台のみ配置されるが、拠点種別が「基幹」である拠点には、複数台の通信装置2が配置されることがある、とする。複数台の通信装置2が配置される拠点において、各通信装置2には、それぞれを識別するための内部IDが割当てられる。
【0062】
図13は、この変形例における対向装置の選択の動作を示すフロー図である。
図13に示す動作は、
図11に示す動作と、ステップS403の後が異なる。以下、
図11に示す動作との相違点について説明する。
【0063】
ステップS403において、制御部11が、要求元装置と候補装置の両方の拠点種別が共に「基幹」であると判断すると(ステップS403;YES)、制御部11は、要求元装置の属する拠点と、候補装置が属する拠点とをそれぞれ特定し、品質データベース123を参照して、これら双方の拠点にそれぞれ属している全ての通信装置2の組合せにおける回線品質値を特定する。そして特定したその回線品質値が、上記拠点間における他の通信装置2の組合せの中で最高であるか否かについて、判断する(ステップS407)。
【0064】
この要求元装置と候補装置との組合せにおける回線品質値が、上記拠点間における他の通信装置2の組合せの中で最高ではないと判断すると(ステップS407;NO)、制御部11は処理を終了する。
【0065】
一方、この要求元装置と候補装置との組合せにおける回線品質値が、上記拠点間における他の通信装置2の組合せの中で最高であると判断すると(ステップS407;YES)、制御部11は上述したステップS406に処理を進める。すなわち、制御部11は、この候補装置を対向装置として選択する(ステップS406)。
【0066】
したがって、制御部11は、要求元装置の拠点の種別が「基幹」でないときには、拠点の種別が「基幹」である候補装置のうち、この要求元装置との通信について評価部113により評価された品質が最高のものを選択する。また制御部11は、要求元装置の拠点の種別が「基幹」であるときには、拠点の種別が「基幹」である候補装置のうち、この要求元装置との通信について評価部113により評価された品質が最高のもの、および、拠点の種別が「基幹」でない候補装置のうち、この要求元装置との通信について評価部により評価された品質が最高のものを選択する。
【0067】
これにより、種別が基幹である2つの拠点の少なくともいずれか一方に、複数台の通信装置が属している場合に、それら拠点間で最も通信の品質が高いと評価される通信装置の組が、VPN構築のために接続される。
【0068】
2−5.変形例5
情報提供装置1の制御部11によって実行されるプログラムは、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、光ディスクなどの光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどの、コンピュータ装置が読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で提供し得る。また、このプログラムを、インターネットのようなネットワーク経由でダウンロードさせることも可能である。なお、上記の制御部11によって例示した制御手段としてはCPU以外にも種々の装置が適用される場合があり、例えば、専用のプロセッサなどが用いられる。