特許第6593042号(P6593042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593042
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】車両用自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F16H3/66 Z
【請求項の数】4
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-176881(P2015-176881)
(22)【出願日】2015年9月8日
(65)【公開番号】特開2017-53407(P2017-53407A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年8月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】高木 清春
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 篤弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 栄希
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−64043(JP,A)
【文献】 特開2009−197927(JP,A)
【文献】 特開2016−223483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1要素、第2要素及び第3要素をそれぞれ有する第1プラネタリ機構、第2プラネタリ機構、第3プラネタリ機構及び第4プラネタリ機構と、
前記第1プラネタリ機構の第2要素と連結する入力軸と、
前記第4プラネタリ機構の第2要素と連結する出力軸と、
第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ及び第4クラッチ並びに第1ブレーキ、第2ブレーキ及び第3ブレーキの7つの係合要素と、
前記第1クラッチと前記第2クラッチとを連結する第1連結部材と、
前記第1プラネタリ機構の第3要素と前記第3プラネタリ機構の第1要素とを連結する第2連結部材と、
前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第3要素とを連結する第3連結部材と、
前記第2プラネタリ機構の第3要素と前記第1連結部材とを連結する第4連結部材と、
前記第3プラネタリ機構の第2要素と前記第4プラネタリ機構の第2要素とを連結する第5連結部材と、
前記第3プラネタリ機構の第3要素と前記第4プラネタリ機構の第1要素とを連結する第6連結部材と、
を備え、
前記第1ブレーキは、前記第1プラネタリ機構の第1要素を固定部材に対し係脱可能に固定し、
前記第2ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第1要素を前記固定部材に対し係脱可能に固定し、
前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係脱可能に固定し、
前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係脱可能な係合により連結し、
前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係脱可能な係合により連結し、
前記第3クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2連結部材とを係脱可能な係合により連結し、
前記第4クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第3プラネタリ機構の第2要素とを係脱可能な係合により連結し、
前記7つの係合要素のうちの3つの係合要素を係合することにより、前進11段速及び後進5段速を形成する車両用自動変速機であって、
後進第1段形成時、
前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、
前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
前記第3クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2連結部材とを係合により連結し、
後進第2段形成時、
前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、
前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
前記第3クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2連結部材とを係合により連結し、
後進第3段形成時、
前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、
前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
後進第4段形成時、
前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、
前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
前記第4クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第3プラネタリ機構の第2要素とを係合により連結し、
後進第5段形成時、
前記第1ブレーキは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記固定部材とを係合により固定し、
前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
前記第4クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第3プラネタリ機構の第2要素とを係合により連結する、車両用自動変速機。
【請求項2】
前記第1プラネタリ機構、前記第2プラネタリ機構、前記第3プラネタリ機構及び前記第4プラネタリ機構は、シングルピ二オン式プラネタリ機構であり、
前記第1プラネタリ機構、前記第2プラネタリ機構、前記第3プラネタリ機構及び前記第4プラネタリ機構の各第1要素はサンギヤであり、各第2要素はキャリアであり、各第3要素はリングギヤである、請求項1に記載の車両用自動変速機。
【請求項3】
前記第1プラネタリ機構、前記第3プラネタリ機構及び前記第4プラネタリ機構は、シングルピ二オン式プラネタリ機構であり、
前記第2プラネタリ機構は、ダブルピ二オン式プラネタリ機構であり、
前記第1プラネタリ機構の第1要素、前記第2プラネタリ機構の第3要素、前記第3プラネタリ機構の第1要素及び前記第4プラネタリ機構の第1要素は、サンギヤであり、
前記第1プラネタリ機構の第2要素、前記第2プラネタリ機構の第1要素、前記第3プラネタリ機構の第2要素及び前記第4プラネタリ機構の第2要素は、キャリアであり、
前記第1プラネタリ機構の第3要素、前記第2プラネタリ機構の第2要素、前記第3プラネタリ機構の第3要素及び前記第4プラネタリ機構の第3要素は、リングギヤである、請求項に記載の車両用自動変速機。
【請求項4】
前記車両用自動変速機は、
前記第2プラネタリ機構を一体回転させることができ、前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第2プラネタリ機構の第2要素、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2プラネタリ機構の第3要素、前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第2プラネタリ機構の第3要素の何れかを係脱可能に係合する第5クラッチを備え、
追加の前進変速段形成時、
前記第1ブレーキは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記固定部材とを係合により固定し、
前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、
前記第5クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2プラネタリ機構の第3要素とを係合により連結する、請求項1〜の何れか一項に記載の車両用自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジン等が出力する回転駆動力を変速する車両用自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記に示す特許文献1,2に記載の車両用自動変速機は、3つのシングルピ二オン式プラネタリ機構並びに6つの係合要素、すなわち2つのブレーキ及び4つのクラッチで構成され、そのうちの3要素を係合させることで、前進10速段、後進1速段の変速段を形成する。図17に示すように、車両用自動変速機30の第1、第2、第3プラネタリ機構P31,P32,P33は、この順序で入力軸N側から出力軸T側に向かって配置される。
【0003】
以下の説明では、第1、第2、第3プラネタリ機構P31,P32,P33を構成する各要素は、第1、第2、第3ピニオンQ31,Q32,Q33を支承する第1、第2、第3キャリアC31,C32,C33、第1、第2、第3サンギヤS31,S32,S33及び第1、第2、第3リングギヤR31,R32,R33と称する。
【0004】
第2キャリアC32は、入力軸Nと連結している。第2リングギヤR32は、第3サンギヤS33と連結している。第2サンギヤS32は、第1ブレーキB31によりハウジングHとの固定を選択可能であり且つ第2クラッチCL32により第1サンギヤS31との連結を選択可能である。第2キャリアC32は、第1クラッチCL31により第1サンギヤS31との連結を選択可能である。
【0005】
第2リングギヤR32は、第3クラッチCL33により第1キャリアC31との連結を選択可能である。第1リングギヤR31は、第3キャリアC33と連結している。第1キャリアC31は、第4クラッチCL34により第3リングギヤR33との連結を選択可能である。第3リングギヤR33は、第2ブレーキB32によりハウジングHとの固定を選択可能である。第3キャリアC33は、出力軸Tと連結している。
【0006】
図18は、各変速段に対応する各クラッチCL31,CL32,CL33,CL34及び各ブレーキB31,B32の作動状態を示しており、欄に丸印が付されている場合、係合状態にあることを示す。図19は、後進変速段形成時における第1、第2、第3プラネタリ機構P31,P32,P33を構成する各要素であるサンギヤS31,S32,S33、キャリアC31,C32,C33、リングギヤR31,R32,R33を横軸方向にギヤ比λ31,λ32,λ33に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその回転速度比を取った回転速度線図を示す。
【0007】
また、例えば、下記に示す特許文献3に記載の車両用自動変速機は、4つのシングルピ二オン式プラネタリ機構並びに6つの係合要素、すなわち3つのブレーキ及び3つのクラッチで構成され、そのうちの3要素を係合させることで、前進10速段、後進1速段の変速段を形成する。図20に示すように、車両用自動変速機40の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P41,P42,P43,P44は、この順序で入力軸N側から出力軸T側に向かって配置される。
【0008】
以下の説明では、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P41,P42,P43,P44を構成する各要素は、第1、第2、第3、第4ピニオンQ41,Q42,Q43,Q44を支承する第1、第2、第3、第4キャリアC41,C42,C43,C44、第1、第2、第3、第4サンギヤS41,S42,S43,S44及び第1、第2、第3、第4リングギヤR41,R42,R43,R44と称する。
【0009】
第2キャリアC42は、入力軸Nと連結している。第2リングギヤR42は、第3サンギヤS43と連結している。第2サンギヤS42は、第1ブレーキB41によりハウジングHとの固定を選択可能であり且つ第2クラッチCL42により第1サンギヤS41との連結を選択可能である。第2キャリアC42は、第1クラッチCL41により第1サンギヤS41との連結を選択可能である。
【0010】
第2リングギヤR42は、第3クラッチCL43により第1キャリアC41との連結を選択可能である。第1リングギヤR41は、第3キャリアC43と連結している。第1キャリアC41は、第4リングギヤR44と連結している。第3リングギヤR43は、第4キャリアC44と連結している。第4キャリアC44は、第2ブレーキB42によりハウジングHとの固定を選択可能である。第4サンギヤS44は、第3ブレーキB43によりハウジングHとの固定を選択可能である。第3キャリアC43は、出力軸Tと連結している。
【0011】
図21は、各変速段に対応する各クラッチCL41,CL42,CL43及び各ブレーキB41,B42,B43の作動状態を示しており、欄に丸印が付されている場合、係合状態にあることを示す。図22は、後進変速段形成時における第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P41,P42,P43,P44を構成する各要素であるサンギヤS41,S42,S43,S44、キャリアC41,C42,C43,C44、リングギヤR41,R42,R43,R44を横軸方向にギヤ比λ41,λ42,λ43,λ44に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその回転速度比を取った回転速度線図を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7828688号明細書
【特許文献2】米国特許第7131926号明細書
【特許文献3】米国特許第8926469号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図19に示すように、特許文献1,2に示される車両用自動変速機30では、後進変速段形成時に、第1クラッチCL31を係合状態にして入力軸Nの回転駆動力を第1サンギヤS31に入力する。そして、第4クラッチCL34を係合状態にして第1キャリアC31と第3リングギヤR33とを連結し、第2ブレーキB32を係合状態にして第1キャリアC31を固定することにより、第1リングギヤR31に逆回転駆動力を作り出す。この第1リングギヤR31の逆回転駆動力は、第3キャリアC33を介して出力軸Tに出力される。つまり、この車両用自動変速機30では、第1プラネタリ機構P31への入力と第1プラネタリ機構P31へのブレーキの作動のみで逆回転駆動力を作り出している。
【0014】
そして、第3サンギヤS33は、第3リングギヤR33が固定され、第3キャリアC33が逆回転しているため、受動的に第3キャリアC33よりも増速で逆回転となる。そして、第2リングギヤR32は、第3サンギヤS33と連結しているので逆回転となり、第2キャリアC32は、入力軸Nの回転が入力されているため、第2サンギヤS32は、高速回転に晒される。すなわち、第2サンギヤS32の回転速度比は、ギヤ比λ32(=第2サンギヤS32の歯数/第2リングギヤR32の歯数)の逆数と、第2リングギヤR32の回転速度比の絶対値及び入力回転速度比の和とを積算した値に、入力回転速度比を加算した値Haとなる。
【0015】
よって、第2サンギヤS32を第1サンギヤS31に係脱可能な第2クラッチCL32及びハウジングHに係脱可能な第1ブレーキB31は、相対回転速度が大きくなって急激な温度上昇等が発生し易くなる。また、第2サンギヤS32を支持している軸受等は、耐久性の低下が著しくなる。また、第2サンギヤS32に連結している軸に油路を形成している場合は、軸上に設置されているシーリングの耐久性も問題になるおそれがある。
【0016】
また、図22に示すように、特許文献3に示される車両用自動変速機40では、後進変速段形成時に、第1クラッチCL41を係合状態にして入力軸Nの回転駆動力を第1サンギヤS41に入力する。そして、第2ブレーキB42を係合状態にして第4キャリアC44を固定し、第3ブレーキB43を係合状態にして第4サンギヤS44を固定することにより、第3リングギヤR43を固定し、第3リングギヤR43に連結する第1キャリアC41を固定することにより、第1リングギヤR41に逆回転駆動力を作り出す。この第1リングギヤR41の逆回転駆動力は、第3キャリアC43を介して出力軸Tに出力される。つまり、この車両用自動変速機40では、第1プラネタリ機構P41への入力と第1プラネタリ機構P41へのブレーキの作動のみで逆回転駆動力を作り出している。
【0017】
そして、第3サンギヤS43は、第3リングギヤR43が固定され、第3キャリアC43が逆回転しているため、受動的に第3キャリアC43よりも増速で逆回転となる。そして、第2リングギヤR42は、第3サンギヤS43と連結しているので逆回転となり、第2キャリアC42は、入力軸Nの回転が入力されているため、第2サンギヤS42は、高速回転に晒される。すなわち、第2サンギヤS42の回転速度比は、ギヤ比λ42(=第2サンギヤS42の歯数/第2リングギヤR42の歯数)の逆数と、第2リングギヤR42の回転速度比の絶対値及び入力回転速度比の和とを積算した値に、入力回転速度比を加算した値Hbとなる。
【0018】
よって、第2サンギヤS42を第1サンギヤS41に係脱可能な第2クラッチCL42及びハウジングHに係脱可能な第1ブレーキB41は、相対回転速度が大きくなって急激な温度上昇等が発生し易くなる。また、第2サンギヤS42を支持している軸受等は、耐久性の低下が著しくなる。また、第2サンギヤS42に連結している軸に油路を形成している場合は、軸上に設置されているシーリングの耐久性も問題になるおそれがある。
【0019】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、後進変速段形成時におけるギヤの高速回転化を抑制できる車両用自動変速機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明の車両用自動変速機は、第1要素、第2要素及び第3要素をそれぞれ有する第1プラネタリ機構、第2プラネタリ機構、第3プラネタリ機構及び第4プラネタリ機構と、前記第1プラネタリ機構の第2要素と連結する入力軸と、前記第4プラネタリ機構の第2要素と連結する出力軸と、第1クラッチ、第2クラッチ、第3クラッチ及び第4クラッチ並びに第1ブレーキ、第2ブレーキ及び第3ブレーキの7つの係合要素と、前記第1クラッチと前記第2クラッチとを連結する第1連結部材と、前記第1プラネタリ機構の第3要素と前記第3プラネタリ機構の第1要素とを連結する第2連結部材と、前記第2プラネタリ機構の第1要素と前記第3プラネタリ機構の第3要素とを連結する第3連結部材と、前記第2プラネタリ機構の第3要素と前記第1連結部材とを連結する第4連結部材と、前記第3プラネタリ機構の第2要素と前記第4プラネタリ機構の第2要素とを連結する第5連結部材と、前記第3プラネタリ機構の第3要素と前記第4プラネタリ機構の第1要素とを連結する第6連結部材と、を備える。
【0021】
そして、前記第1ブレーキは、前記第1プラネタリ機構の第1要素を固定部材に対し係脱可能に固定し、前記第2ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第1要素を前記固定部材に対し係脱可能に固定し、前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係脱可能に固定し、前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係脱可能な係合により連結し、前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係脱可能な係合により連結し、前記第3クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2連結部材とを係脱可能な係合により連結し、前記第4クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第3プラネタリ機構の第2要素とを係脱可能な係合により連結し、前記7つの係合要素のうちの3つの係合要素を係合することにより、前進11段速及び後進5段速を形成する。
【0022】
そして、車両用自動変速機は、後進第1段形成時、前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、前記第3クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2連結部材とを係合により連結し、後進第2段形成時、前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、前記第3クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第2連結部材とを係合により連結し、後進第3段形成時、前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、前記第1クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第2要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、後進第4段形成時、前記第3ブレーキは、前記第4プラネタリ機構の第3要素を前記固定部材に対し係合により固定し、前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、前記第4クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第3プラネタリ機構の第2要素とを係合により連結し、後進第5段形成時、前記第1ブレーキは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記固定部材とを係合により固定し、前記第2クラッチは、前記第1プラネタリ機構の第1要素と前記第1連結部材とを係合により連結し、前記第4クラッチは、前記第2プラネタリ機構の第2要素と前記第3プラネタリ機構の第2要素とを係合により連結することを要旨とする。
【0023】
この構成の車両用自動変速機では、後進第1段形成時は、第3ブレーキ、第1クラッチ及び第3クラッチを係合状態にして第4リングギヤを固定することにより、第4キャリアに逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸に出力される。第3サンギヤ及び第1リングギヤは、同一回転で回転し、第1サンギヤは、高速回転となる。しかし、第1サンギヤの回転は、第1リングギヤの回転速度比が1より小さいが0より大きく、第1キャリアが入力回転であるので、従来の車両用自動変速機の第2サンギヤのような高速回転に達することはない。
【0024】
また、後進第2段形成時は、第3ブレーキ、第2クラッチ及び第3クラッチを係合状態にして第4リングギヤを固定することにより、第4キャリアに逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸に出力される。第2サンギヤ、第3リングギヤ及び第4サンギヤは、同一回転で第4キャリアの回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤの回転は、第4リングギヤが固定され、第4キャリアが出力回転であるので、従来の車両用自動変速機の第2サンギヤのような高速回転に達することはない。
【0025】
また、後進第3段形成時は、第3ブレーキ、第1クラッチ及び第2クラッチを係合状態にして第4リングギヤを固定することにより、第4キャリアに逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸に出力される。第2サンギヤ、第3リングギヤ及び第4サンギヤは、同一回転で第3キャリアの回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤの回転は、第4リングギヤが固定され、第4キャリアが出力回転であるので、従来の車両用自動変速機の第2サンギヤのような高速回転に達することはない。
【0026】
また、後進第4段形成時は、第3ブレーキ、第2クラッチ及び第4クラッチを係合状態にして第4リングギヤを固定することにより、第4キャリアに逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸に出力される。第2サンギヤ、第3リングギヤ及び第4サンギヤは、同一回転で第3キャリアの回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤの回転は、第4リングギヤが固定され、第4キャリアが出力回転であるので、従来の車両用自動変速機の第2サンギヤのような高速回転に達することはない。
【0027】
また、後進第5段形成時に、第1ブレーキ、第2クラッチ及び第4クラッチを係合状態にして第1サンギヤ及び第2リングギヤを固定することにより、第2キャリアに逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第2キャリアから第3キャリアを介して出力軸に出力される。第2サンギヤ及び第3リングギヤは、同一回転で第3キャリアの回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤの回転は、第2リングギヤが固定され、第2キャリアが出力回転であるので、従来の車両用自動変速機の第2サンギヤのような高速回転に達することはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の車両用自動変速機の第1実施形態の概略構成を模式的に示すレバーダイアグラムである。
図2図1の第1実施形態の第1具体例の概略構成を模式的に示すスケルトン図である。
図3図2の第1具体例の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
図4図2の第1具体例の後進第5段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図5図2の第1具体例の後進第4段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図6図2の第1具体例の後進第3段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図7図2の第1具体例の後進第2段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図8図2の第1具体例の後進第1段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図9図2の第1具体例の後進第1〜5段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図10図2の第1具体例の後進第1〜5段形成時における係合要素が受けるトルクの分担比を示す図である。
図11図1の第1実施形態の第2具体例の概略構成を模式的に示すスケルトン図である。
図12図1の第1実施形態の第3具体例の概略構成を模式的に示すスケルトン図である。
図13図1の第1実施形態の第4具体例の概略構成を模式的に示すスケルトン図である。
図14図1の第1実施形態の第5具体例の概略構成を模式的に示すスケルトン図である。
図15】本発明の車両用自動変速機の第2実施形態の具体例の概略構成を模式的に示すスケルトン図である。
図16図15の具体例の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
図17】従来の第1の車両用自動変速機のスケルトン図である。
図18図17の第1の車両用自動変速機の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
図19図17の第1の車両用自動変速機の後進変速段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
図20】従来の第2の車両用自動変速機のスケルトン図である。
図21図20の第2の車両用自動変速機の各変速段におけるブレーキ及びクラッチの作動状態を示す図である。
図22図20の第2の車両用自動変速機の後進変速段形成時におけるプラネタリ機構を構成する各要素の回転速度比を示す速度線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の車両用自動変速機の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、車両用自動変速機は、車両に搭載されたエンジンが出力する回転駆動力を変速する装置として用いられる。車両は、車両用自動変速機により変速された回転駆動力が差動装置などを介して駆動輪に伝達され、車両用自動変速機において成立した所定の変速段で前進または後進するように構成される。
【0030】
<第1実施形態>
本発明の車両用自動変速機の第1実施形態は、種々の構成が考えられるが、先ず、それらを包括した構成を示す図1のレバーダイアグラムを参照して説明する。この車両用自動変速機1は、入力軸N、出力軸T、シングルピ二オン式又はダブルピ二オン式の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4を備える。第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、入力軸Nに沿って順不同に配置される。なお、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、入力軸Nの軸線に直角な方向に向かって順不同に配置、すなわち入力軸Nの軸線に順不同に平行に配置することも可能である。
【0031】
各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、第1要素N11,N21,N31,N41、第2要素N12,N22,N32,N42、第3要素N13,N23,N33,N43を有している。第1要素N11,N21,N31,N41、第2要素N12,N22,N32,N42、第3要素N13,N23,N33,N43は、プラネタリ機構を構成するサンギヤ、キャリア、リングギヤのいずれかとなる。
そして、車両用自動変速機1は、7つの係合要素(第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4及び第1、第2、第3ブレーキB1,B2,B3)を備える。この車両用自動変速機1は、上記7つの係合要素のうち、3つの係合要素を係合することによって11個の前進変速段及び5個の後進変速段を形成する。
【0032】
第1プラネタリ機構P1の第1要素N11は、第1ブレーキB1により固定部材Kとの連結を選択可能であり、また第2クラッチCL2により第1連結部材J1及び第4連結部材J4を介して第2プラネタリ機構P2の第3要素N23との連結を選択可能である。第1プラネタリ機構P1の第2要素N12は、入力軸Nと連結しており、また第1クラッチCL1により第1連結部材J1及び第4連結部材J4を介して第2プラネタリ機構P2の第3要素N23との連結を選択可能である。第1プラネタリ機構P1の第3要素N13は、第2連結部材J2を介して第3プラネタリ機構P3の第1要素N31と連結している。
【0033】
第2プラネタリ機構P2の第1要素N21は、第3連結部材J3を介して第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と連結している。第2プラネタリ機構P2の第2要素N22は、第3クラッチCL3により第2連結部材J2と連結を選択可能であり、また第4クラッチCL4により第3プラネタリ機構P3の第2要素N32と連結を選択可能である。
第3プラネタリ機構P3の第2要素N32は、第5連結部材J5を介して第4プラネタリ機構P4の第2要素N42と連結している。第3プラネタリ機構P3の第3要素N33は、第6連結部材J6を介して第4プラネタリ機構P4の第1要素N41と連結している。
第4プラネタリ機構P4の第1要素P41は、第2ブレーキB2により固定部材Kとの連結を選択可能である。第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、出力軸Tと連結している。第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、第3ブレーキB3により固定部材Kとの連結を選択可能である。
【0034】
第1連結部材J1は、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2とを連結する。第2連結部材J2は、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13と第3プラネタリ機構P3の第1要素N31とを連結する。第3連結部材J3は、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21と第3プラネタリ機構P3の第3要素N33とを連結する。第4連結部材J4は、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23と第1連結部材J1とを連結する。第5連結部材J5は、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32と第4プラネタリ機構P4の第2要素N42とを連結する。第6連結部材J6は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と第4プラネタリ機構P4の第1要素N41とを連結する。
【0035】
そして、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する。第2ブレーキB2は、第4プラネタリ機構P4の第1要素N41を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する。第3ブレーキB3は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する。第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係脱可能な係合により連結する。第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係脱可能な係合により連結する。第3クラッチCL3は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2連結部材J2とを係脱可能な係合により連結する。第4クラッチCL4は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第3プラネタリ機構P3の第2要素N32とを係脱可能な係合により連結する。
【0036】
<第1実施形態の第1具体例>
次に、図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第1具体例の概略構成について図2を参照して説明する。なお、図2においては、図1に示す車両用自動変速機1の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付す。
【0037】
この車両用自動変速機11は、入力側(図2の左側)から出力側(図2の右側)に向かって軸方向に並設された4つのシングルピニオン式の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4と、各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4を構成する要素同士を選択的に係脱可能に連結する4つの第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と、所定の要素をハウジングH(固定部材)に係脱可能に固定する3つの第1、第2、第3ブレーキB1,B2,B3とを備える。
【0038】
さらに、車両用自動変速機11は、第1、第2、第3、第4、第5、第6連結部材J1,J2,J3,J4,J5,J6と、第1、第2、第3、第4クラッチ連結部材W1,W2,W31,W32,W41,W42と、第1、第2,第3ブレーキ連結部材V1,V2,V3と、入力軸Nと、出力軸Tと、入力軸連結部材U1と、出力軸連結部材U2とを備える。
【0039】
また、この車両用自動変速機11は、車両の制御ECU2による制御信号に基づいて各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、各ブレーキB1,B2,B3からなる係合要素の作動状態を制御される。そして、本実施形態においては、上記の係合要素のうち3つの係合要素を作動させることによって、入力軸Nから入力される回転駆動力を、前進11速段及び後進5速段の何れかに変速して、出力軸Tから出力可能な構成となっている。車両用自動変速機11おける係合要素の作動状態と成立する変速段に関する詳細については後述する。
【0040】
入力軸N及び出力軸Tは、ハウジングHに対し、回転軸線L周りに回転可能に支承されている。入力軸Nは、図略のクラッチ装置などを介してエンジンの回転駆動力を車両用自動変速機11に入力する軸部材である。出力軸Tは、入力軸Nと同軸上に配置され、変速された回転駆動力を図略の差動装置などを介して駆動輪に出力する軸部材である。
【0041】
各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、キャリアC1,C2,C3,C4に回転可能に支持されたピニオンギヤQ1,Q2,Q3,Q4がサンギヤS1,S2,S3,S4及びリングギヤR1,R2,R3,R4に噛合するシングルピニオン式であり、入力側から順に第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4と称する。そして、各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の各要素は、第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4、第1、第2、第3、第4キャリアC1,C2,C3,C4、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4と称する。
【0042】
なお、この車両用自動変速機11においては、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、シングルピニオン式であるため、第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4が図1の第1要素N11,N21,N31,N41に相当し、第1、第2、第3、第4キャリアC1,C2,C3,C4が図1の第2要素N12,N22,N32,N42に相当し、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4が図1の第3要素N13,N23,N33,N43に相当する。
【0043】
第1プラネタリ機構P1は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、及び第1サンギヤS1と第1リングギヤR1とに噛合する第1ピ二オンQ1を支承する第1キャリアC1で構成される。
第2プラネタリ機構P2は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、及び第2サンギヤS2と第2リングギヤR2とに噛合する第2ピ二オンQ2を支承する第2キャリアC2で構成される。
第3プラネタリ機構P3は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、及び第3サンギヤS3と第3リングギヤR3とに噛合する第3ピ二オンQ3を支承する第3キャリアC3で構成される。
第4プラネタリ機構P4は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、及び第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とに噛合する第4ピ二オンQ4を支承する第4キャリアC4で構成される。
【0044】
各ブレーキB1,B2,B3は、ハウジングHに設けられ、所定の要素の回転を制動する係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と同様に、ハウジングHに形成された油路から供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各ブレーキB1,B2,B3は、例えば制御ECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから油圧を供給されると、図示しないディスクにパッドを押圧して、対象とする所定の要素の回転を制動する。そして、油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、ディスクからパッドを離間させて、所定の要素の回転を許容する。
【0045】
各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、複数の要素同士を選択的に連結可能な係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、常開型であり、供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、例えば制御ECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから入力軸NやハウジングHに形成された油路を介して油圧を供給されると、図示しない複数のクラッチ板を接触させて、対象の要素間で駆動力が伝達されるように要素同士を連結する。そして、上記の油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、クラッチ板同士を離間させて、対象の要素間で駆動力が伝達されないように要素同士を離脱させる。
【0046】
次に、車両用自動変速機11における連結状態について説明する。
第1連結部材J1は、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2とを連結する。第2連結部材J2は、第1リングギヤR1と第3サンギヤS3とを連結する。第3連結部材J3は、第2サンギヤS2と第3リングギヤR3とを連結する。第4連結部材J4は、第2リングギヤR2と第1連結部材J1とを連結する。第5連結部材J5は、第4キャリアC4と出力軸Tとを連結する。第6連結部材J6は、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とを連結する。
入力軸Nは、第1リングギヤR1の外側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材U1を介して第1キャリアC1に連結されている。
出力軸Tは、出力軸連結部材U2を介して第3キャリアC3に連結されている。
【0047】
第1ブレーキB1は、第1ブレーキ連結部材V1に連結されている第1サンギヤS1の回転を、第1ブレーキ連結部材V1を介して制動する。
第2ブレーキB2は、第2ブレーキ連結部材V2及び第3連結部材J3を介して連結されている第2サンギヤS2の回転、第2ブレーキ連結部材V2に連結されている第3リングギヤR3の回転、並びに第2ブレーキ連結部材V2及び第6連結部材J6を介して連結されている第4サンギヤS4の回転を、第2ブレーキ連結部材V2を介して制動する。
第3ブレーキB3は、第3ブレーキ連結部材V3に連結されている第4リングギヤR4の回転を、第3ブレーキ連結部材V3を介して制動する。
【0048】
第1クラッチCL1の一方は、第4連結部材J4に連結された第1連結部材J1に連結され、第1クラッチCL1の他方は、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に延在する第1クラッチ連結部材W1を介して第1キャリアC1に連結される。第1クラッチCL1は、第2リングギヤR2と第1キャリアC1とを係脱可能に連結する。
第2クラッチCL2の一方は、第1ブレーキ連結部材V1に連結された第2クラッチ連結部材W2を介して第1サンギヤS1に連結され、第2クラッチCL2の他方は、第4連結部材J4に連結された第1連結部材J1に連結される。第2クラッチCL2は、第2リングギヤR2と第1サンギヤS1とを係脱可能に連結する。
【0049】
第3クラッチCL3の一方は、第3クラッチ連結部材W31を介して第2キャリアC2に連結され、第3クラッチCL3の他方は、第3クラッチ連結部材W32を介して第2連結部材J2に連結される。第3クラッチCL3は、第2キャリアC2と、第1キャリアC1及び第3サンギヤS3とを係脱可能に連結する。
第4クラッチCL4の一方は、第4クラッチ連結部材W41を介して第3キャリアC3に連結され、第4クラッチCL4の他方は、第4クラッチ連結部材W42を介して第3クラッチ連結部材W31に連結される。第4クラッチCL4は、第3キャリアC3と第2キャリアC2とを係脱可能に連結する。
【0050】
以上のように構成された車両用自動変速機11は、第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、第1、第2、第3ブレーキB1,B2,B3を選択的に作動して第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の要素の回転を規制することにより、前進11段、後進5段の変速段を形成することができる。車両用自動変速機11は、係合表に示すように、係合状態にする3つの係合要素のうち1つを切り換えることによって、隣り合う変速段に移行可能としている。
【0051】
一般的に、シングルピ二オン式プラネタリ機構においては、サンギヤの回転数Ns、キャリアの回転数Nc、リングギヤの回転数Nrとプラネタリ機構のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρとの関係は、下記式(1)で示され、各変速段におけるギヤ比は、式(1)に基づいて算出される。車両用自動変速機11の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4の歯数をZs1,Zs2,Zs3,Zs4、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4の歯数をZr1,Zr2,Zr3,Zr4とすると、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4のギヤ比ρ1,ρ2,ρ3,ρ4は、ρ1=Zs1/Zr1,ρ2=Zs2/Zr2,ρ3=Zs3/Zr3,ρ4=Zs4/Zr4である。
Ns=(1+1/ρ)・Nc−1/ρ・Nr・・・(1)
【0052】
車両用自動変速機11において5つの後進変速段(Rev.5,Rev.4,Rev.3,Rev.2,Rev.1)形成時の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の各要素の回転速度比は、図4図8に示す速度線図のようになる。速度線図は、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4、第1、第2、第3、第4キャリアC1,C2,C3,C4、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4からなる各要素を横軸方向にギヤ比ρ1,ρ2,ρ3,ρ4に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその回転速度比を取ったものである。
【0053】
ここで、課題で説明したように、従来の4つのプラネタリ機構を備える車両用自動変速機では、図22に示すように、後進変速段形成時に、第2サンギヤS42が高速回転(回転速度比Hb)に晒されるので、第1ブレーキB11及び第2クラッチCL12は、相対回転速度が大きくなって急激な温度上昇等が発生し易くなる等の問題がある。
しかし、本実施形態の車両用自動変速機11では、図4に示すように後進第5段Rev.5形成時に、第1ブレーキB1、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4を係合状態にして第1サンギヤS1及び第2リングギヤR2を固定することにより、第2キャリアC2に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第2キャリアC2から第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。
【0054】
第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転速度比は、第2プラネタリ機構P2に着目して算出すると、第2リングギヤR2が固定され、第2キャリアC2が出力回転であるので、ギヤ比ρ2(=第2サンギヤS2の歯数/第2リングギヤR2の歯数)の逆数+1と、出力回転速度比とを積算した値h1となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、後進第5段Rev.5形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0055】
また、車両用自動変速機11では、後進第5段(Rev.5)形成時に、第1キャリアC1は、入力軸Nの回転が入力され、第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1により固定されているので、第1リングギヤR1は、増速の回転を得ており、前進段のうち5,7,9〜11速段を構成しているときと同じ回転を得ているため、後進変速時特有の特異な回転を生じない。
【0056】
次に、図5に示すように、後進第4段Rev.4形成時は、第3ブレーキB3、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸Tに出力される。
第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転速度比は、第4プラネタリ機構P4に着目して算出すると、第4リングギヤR4が固定され、第4キャリアC4が出力回転であるので、ギヤ比ρ4(=第4サンギヤS4の歯数/第4リングギヤR4の歯数)の逆数+1と、出力回転速度比とを積算した値h2となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、後進第4段Rev.4形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0057】
次に、図6に示すように、後進第3段Rev.3形成時は、第3ブレーキB3、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸Tに出力される。この場合も図5の説明と同様に、第2サンギヤS2の回転速度比はh3となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、後進第3段Rev.3形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0058】
次に、図7に示すように、後進第2段Rev.2形成時は、第3ブレーキB3、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸Tに出力される。この場合も図5の説明と同様に、第2サンギヤS2の回転速度比はh4となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、後進第2段Rev.2形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0059】
次に、図8に示すように、後進第1段Rev.1形成時は、第3ブレーキB3、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、出力軸Tに出力される。
第3サンギヤS3及び第1リングギヤR1は、同一回転で回転し、第1サンギヤS1は、高速回転となる。しかし、第1サンギヤS1の回転速度比は、第1プラネタリ機構P1に着目して算出すると、第1リングギヤR1の回転速度比が1より小さいが0より大きく、第1キャリアC1が入力回転であるので、ギヤ比λ1(=第1サンギヤS1の歯数/第1リングギヤR1の歯数)の逆数+1と、入力回転速度比とを積算した値h5となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、後進第1段Rev.1形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0060】
図9は、各後進変速段Rev.5,Rev.4,Rev.3,Rev2,Rev1における回転速度比を纏めて示す図である。この図から明らかなように、後進変速段を出力ギヤ比が大きくなる側に追加しても、図8に示す第1サンギヤS1の回転が最高回転速度であり、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、後進変速段Rev.5,Rev.4,Rev.3,Rev.2,Rev.1形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0061】
また、車両用自動変速機11によると、第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4をハウジングHに係脱可能な第2ブレーキB2は、相対回転速度が大きくならないので急激な温度上昇等の発生を抑制することができる。また、第2サンギヤS2を支持している軸受等は、耐久性が向上する。また、第2サンギヤS2に連結している軸に油路を形成している場合は、軸上に設置されているシーリングの耐久性も向上する。
【0062】
ところで、車両用自動変速機11が後進第5段Rev.5形成のときは、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1には、出力の反力が掛かることになる。すなわち、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4のギヤ比ρ1,ρ2,ρ3.ρ4で表されるトルク分担比で反力を受ける必要があり、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1が大型化する。具体的には、図10に示すように、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比は大きい値となる。なお、図10では、後進第5〜1段Rev.5,Rev.4,Rev.3,Rev2,Rev1の順に図の左側から右側に向けて示す。
【0063】
そこで、車両用自動変速機11では、後進第4段Rev.4形成時は、第1ブレーキB1は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定し、第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1と第2リングギヤR2とを連結するとともに、第4クラッチCL4を係合状態にして第2キャリアC2と第3キャリアC3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0064】
これにより、図10に示すように、第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進第5段Rev.5と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0065】
また、後進第3段Rev.3形成時は、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定し、第1クラッチCL1を係合状態にして第1キャリアC1と第2リングギヤR2とを連結するとともに、第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1と第2リングギヤR2とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0066】
これにより、図10に示すように、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進第5段Rev.5と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0067】
また、後進第2段Rev.2形成時は、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定し、第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを連結するとともに、第3クラッチCL3を係合状態にして第1リングギヤR1と第2キャリアC2と第3サンギヤS3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0068】
これにより、図10に示すように、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進第5段Rev.5と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0069】
また、後進第1段Rev.1形成時は、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定し、第1クラッチCL1を係合状態にして第1キャリアC1と第2リングギヤR2とを連結するとともに、第3クラッチCL3を係合状態にして第1サンギヤS1と第2キャリアC2と第3サンギヤS3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0070】
これにより、図10に示すように、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進第5段Rev.5と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0071】
<第1実施形態の第2具体例>
次に、図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第2具体例の概略構成について図2に対応させて示す図11を参照して説明する。なお、図11においては、図2に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機12は、入力軸Nを第1プラネタリ機構P1の内径側から連結している点で第1具体例の車両用自動変速機11と異なる構成となっている。すなわち、入力軸Nは、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材U1を介して第1キャリアC1に連結されている。このような構成の車両用自動変速機12においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
【0072】
<第1実施形態の第3具体例>
次に、図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第3具体例の概略構成について図2に対応させて示す図12を参照して説明する。なお、図12においては、図2に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機13は、第2プラネタリ機構P2と第3プラネタリ機構P3とを入れ替えた点で第1具体例の車両用自動変速機11と異なる構成となっている。すなわち、車両用自動変速機13は、入力側(図1の左側)から出力側(図1の右側)に向かって軸方向に、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3、第2プラネタリ機構P2、第4プラネタリ機構P4の順に並設した構成となっている。そして、入力軸Nは、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材U1を介して第1キャリアC1に連結されている。このような構成の車両用自動変速機13においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
【0073】
<第1実施形態の第4具体例>
次に、図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第4具体例の概略構成について図2に対応させて示す図13を参照して説明する。なお、図13においては、図2に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機14は、第1プラネタリ機構P1と第2プラネタリ機構P2とを入れ替えた点、及び入力軸Nと出力軸Tを同一方向に配置した点で第1具体例の車両用自動変速機11と異なる構成となっている。すなわち、車両用自動変速機14は、入力側(図1の左側)から出力側(図1の右側)に向かって軸方向に、第2プラネタリ機構P2、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3、第4プラネタリ機構P4の順に並設した構成となっている。そして、出力側から伸びる入力軸Nは、第4、第3サンギヤS4,S3の内側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材U1を介して第1キャリアC1に連結されている。このような構成の車両用自動変速機14においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
【0074】
<第1実施形態の第5具体例>
次に、図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第5具体例の概略構成について図2に対応させて示す図14を参照して説明する。なお、図14においては、図2に示す車両用自動変速機11の構成部と同一の構成部は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機15は、シングルピ二オン式の第2プラネタリ機構P2をダブルピ二オン式の第2プラネタリ機構P2に変更した点で図2に示す車両用自動変速機11と異なる構成となっている。
この第5具体例においては、ダブルピニオン式の第2プラネタリ機構P2を用いているため、第2プラネタリ機構P2の各要素は、第2サンギヤS2が本発明の「第1要素」に相当し、第2リングギヤR2が本発明の「第2要素」に相当し、第2キャリアC2が本発明の「第3要素」に相当する。
【0075】
この車両用自動変速機15では、第2サンギヤS2は、第3、第1連結部材J3,J1を介して第1、第2クラッチCL1,CL2に連結され、第2キャリアC2は、第4連結部材J4を介して第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4に連結され、第2リングギヤR2は、第3、第4クラッチ連結部材W31,W42を介して第3、第4クラッチCL3,CL4に連結されている。このような構成の車両用自動変速機15においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
なお、ダブルピニオン式の第2プラネタリ機構P2を用いた場合、第2プラネタリ機構P2の各要素を、第2キャリアC2を本発明の「第1要素」、第2リングギヤR2を本発明の「第2要素」、第2サンギヤS2を本発明の「第3要素」となるように構成してもよい。
【0076】
<第2実施形態>
本発明の車両用自動変速機の第2実施形態の具体例を、図2に対応させて示す図15を参照して説明する。なお、図15においては、図2に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機21は、図2の車両用自動変速機11において、第5クラッチCL5を追加し、連結部材、クラッチ、ブレーキの繋ぎは概略据え置いた構成である。
【0077】
この車両用自動変速機21では、第5クラッチCL5の一方は、第5クラッチ連結部材W51を介して第1連結部材J1及び第2リングギヤR2に連結され、第5クラッチCL5の他方は、第5クラッチ連結部材W52を介して第2キャリアC2に連結される。第5クラッチCL5は、第2リングギヤR2と第2キャリアC2とを係脱可能に連結する。図16に示すように、この車両用自動変速機21では、第1クラッチCL1、第1ブレーキB1及び第5クラッチCL5を係合状態にすることにより、第1実施形態の車両用自動変速機11における8速段と9速段との間に新たな9速段を追加して前進12段とすることができる。
【0078】
すなわち、第1クラッチCL1、第1ブレーキB1及び第5クラッチCL5を係合状態では、第1クラッチCL1及び第5クラッチCL5により、第1キャリアC1、第2リングギヤR2及び第2キャリアC2が一体回転する。第1キャリアC1から出力された入力軸Nの回転駆動力は、第1サンギヤS1が第1ブレーキB1により固定されているので、増速されて第1リングギヤR1から第3サンギヤS3に伝達される。そして、第3キャリアC3は、第3サンギヤS3に伝達された回転駆動力及び第3リングギヤR3に伝達された回転駆動力に基づいて、出力軸連結部材4を介して出力軸Tに新たな変速段(図16における9変速段)の回転駆動力を伝達する。
【0079】
なお、第1、第4、第5クラッチCL1,CL4,CL5を係合状態にすることにより、第1、第3、第4クラッチCL1,CL3,CL4を係合状態にして第8変速段を構成するときと同様の第8変速段を構成することができる。また、第4、第5クラッチCL4,CL5及び第1ブレーキB1、又は第3、第5クラッチCL3,CL5及び第1ブレーキB1を係合状態にすることにより、第3、第4クラッチCL3,CL4及び第1ブレーキB1を係合状態にして第10変速段を構成するときと同様の第10変速段を構成することができる。
【0080】
上述の第2実施形態では、第5クラッチCL5は、第2リングギヤR2と第2キャリアC2とを係脱可能に連結する構成としたが、第2リングギヤR2と第3リングギヤR3とを係脱可能に連結する構成としてもよい。また、第1クラッチCL1を通って伝達される入力回転を第3リングギヤR3に伝達できる位置に配置する構成としてもよい。
以上のように構成された第2実施形態の車両用自動変速機21においては、第1実施形態の車両用自動変速機11〜15と同様に第1〜第5クラッチCL1〜CL5、第1、第2、第3ブレーキB1,B2,B3を選択的に作動して第1〜第4プラネタリ機構P1〜P4の要素の回転を規制することにより、前進12段、後進5段の変速段を成立することができる。そして、第2実施形態の車両用自動変速機21においても、第1実施形態の車両用自動変速機11〜15と同様の効果を得ることができる。
【0081】
(効果)
第1実施形態(第1〜第5具体例を含む)の車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)は、第1要素N11,N21,N31,N41、第2要素N12,N22,N32,N42及び第3要素N13,N23,N33,N43をそれぞれ有する第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4と、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と連結する入力軸Nと、第4プラネタリ機構P4の第2要素N42と連結する出力軸Tと、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3及び第4クラッチCL4並びに第1ブレーキB1、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3の7つの係合要素と、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2とを連結する第1連結部材J1と、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13と第3プラネタリ機構P3の第1要素N31とを連結する第2連結部材J2と、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21と第3プラネタリ機構P3の第3要素N33とを連結する第3連結部材J3と、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23と第1連結部材J1とを連結する第4連結部材J4と、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32と第4プラネタリ機構P4の第2要素N42とを連結する第5連結部材J5と、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と第4プラネタリ機構P4の第1要素N41とを連結する第6連結部材J6と、を備える。
【0082】
そして、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定し、第2ブレーキB2は、第4プラネタリ機構P4の第1要素N41を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定し、第3ブレーキB3は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係脱可能な係合により連結し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係脱可能な係合により連結し、第3クラッチCL3は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2連結部材J2とを係脱可能な係合により連結し、第4クラッチCL4は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第3プラネタリ機構P3の第2要素N32とを係脱可能な係合により連結し、7つの係合要素のうちの3つの係合要素を係合することにより、前進11段速及び後進5段速を形成する。
【0083】
そして、この車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)は、後進第1段形成Rev.1時、第3ブレーキB3は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係合により固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係合により連結し、第3クラッチCL3は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2連結部材J2とを係合により連結し、後進第2段形成Rev.2時、第3ブレーキB3は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係合により固定し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、第3クラッチCL3は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2連結部材J2とを係合により連結し、後進第3段形成Rev.3時、第3ブレーキB3は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係合により固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係合により連結し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、後進第4段形成Rev.4時、第3ブレーキB3は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係合により固定し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、第4クラッチCL4は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第3プラネタリ機構P3の第2要素N32とを係合により連結し、後進第5段形成Rev.5時、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と固定部材K(H)とを係合により固定し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、第4クラッチCL4は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第3プラネタリ機構P3の第2要素N32とを係合により連結することを要旨とする。
【0084】
この構成の車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)では、後進第1段形成Rev.1時は、第3ブレーキB3、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。第3サンギヤS3及び第1リングギヤR1は、同一回転で回転し、第1サンギヤS1は、高速回転となる。しかし、第1サンギヤS1の回転は、第1リングギヤR1の回転速度比が1より小さいが0より大きく、第1キャリアC1が入力回転であるので、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42のような高速回転に達することはない。さらに、後進第1段形成Rev.1時は、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。
【0085】
また、後進第2段Rev.2形成時は、第3ブレーキB3、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転は、第4リングギヤR4が固定され、第4キャリアC4が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42のような高速回転に達することはない。さらに、後進第2段Rev.2形成時は、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。
【0086】
また、後進第3段Rev.3形成時は、第3ブレーキB3、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転は、第4リングギヤR4が固定され、第4キャリアC4が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42のような高速回転に達することはない。さらに、後進第3段Rev.3形成時は、第1ブレーキB1及び第4クラッチCL4は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。
【0087】
また、後進第4段Rev.4形成時は、第3ブレーキB3、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4を係合状態にして第4リングギヤR4を固定することにより、第4キャリアC4に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。第2サンギヤS2、第3リングギヤR3及び第4サンギヤS4は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転は、第4リングギヤR4が固定され、第4キャリアC4が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42のような高速回転に達することはない。さらに、後進第4段Rev.4形成時は、第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。
【0088】
また、後進第5段Rev.5形成時に、第1ブレーキB1、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4を係合状態にして第1サンギヤS1及び第2リングギヤR2を固定することにより、第2キャリアC2に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第2キャリアC2から第3キャリアC3を介して出力軸Tに出力される。第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3は、同一回転で第3キャリアC3の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第2サンギヤS2の回転は、第2リングギヤR2が固定され、第2キャリアC2が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42のような高速回転に達することはない。
【0089】
よって、車両用自動変速機11では、後進変速段(Rev.5,Rev.4,Rev.3,Rev.2,Rev.1)形成時、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。さらに、後進変速段(Rev.4,Rev.3,Rev.2,Rev.1)形成時、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0090】
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、入力軸Nに沿って順不同に配置される。これにより、回転軸線Lと直角な方向にコンパクトな車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)の構成の自由度が高まる。
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、入力軸Nの軸線に直角な方向に向かって順不同に配置される。これにより、回転軸線L方向にコンパクトな車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)の構成の自由度が高まる。
【0091】
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ二オン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4の各第1要素N11,N21,N31,N41はサンギヤであり、各第2要素N12,N22,N32,N42はキャリアであり、各第3要素N13,N23,N33,N43はリングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)は、シングルピ二オン式プラネタリ機構のみで構成することができる。
【0092】
また、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ二オン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2は、ダブルピ二オン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(11,12,13,14,15)は、3つのシングルピ二オン式プラネタリ機構と1つのダブルピ二オン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0093】
第2実施形態の具体例の車両用自動変速機21は、第2プラネタリ機構P2を一体回転させることができ、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21と第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21と第2プラネタリ機構P2の第3要素N23の何れかを係脱可能に係合する第5クラッチCL5を備え、追加の前進変速段形成時、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と固定部材K(H)とを係合により固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係合により連結し、第5クラッチCL5は、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2プラネタリ機構P2の第3要素N23とを係合により連結する。
【0094】
この構成の車両用自動変速機21では、第1クラッチCL1、第1ブレーキB1及び第5クラッチCL5を係合状態では、第1クラッチCL1及び第5クラッチCL5により、第1キャリアC1、第2リングギヤR2及び第2キャリアC2が一体回転する。第1キャリアC1から出力された入力軸Nの回転駆動力は、第1サンギヤS1が第1ブレーキB1により固定されているので、増速されて第1リングギヤR1から第3サンギヤS3に伝達される。そして、第3キャリアC3は、第3サンギヤS3に伝達された回転駆動力及び第3リングギヤR3に伝達された回転駆動力に基づいて、出力軸Tに新たな変速段の回転駆動力を伝達することができる。
【0095】
なお、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。
【符号の説明】
【0096】
1,11,12,13,14,15,21:車両用自動変速機、 U1:入力軸連結部材、 U2:出力軸連結部材、 H(K):ハウジング(固定部材)、 N:入力軸、 T:出力軸、 L:回転軸線、 CL1:第1クラッチ、 CL2:第2クラッチ、 CL3:第3クラッチ、 CL4:第4クラッチ、 CL5:第5クラッチ、 B1:第1ブレーキ、 B2:第2ブレーキ、 B3:第3ブレーキ、 P1:第1プラネタリ機構、 P2:第2プラネタリ機構、 P3:第3プラネタリ機構、 P4:第4プラネタリ機構、 N11,N21,N31,N41:第1要素、 N12,N22,N32,N42:第2要素、 N13,N23,N33,N43:第3要素、 S1:第1サンギヤ、 S2:第2サンギヤ、 S3:第3サンギヤ、 S4:第4サンギヤ、 C1:第1キャリア、 C2:第2キャリア、 C3:第3キャリア、 C4:第4キャリア、 R1:第1リングギヤ、 R2:第2リングギヤ、 R3:第3リングギヤ、 R4:第4リングギヤ、 V1,V2:第1、第2ブレーキ連結部材、 J1,J2,J3,J4,J5,J6:第1、第2、第3、第4、第5、第6連結部材
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