(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるように、チャックハンド等を用いてワークを保持して搬送する場合には、チャックハンドが、あるワークを保持している状態では、他のワークに対して、そのチャックハンドで何らかの操作を行うことができない。つまり、搬送装置が、あるワークを受け取り、所定の位置まで移動させ、相手方装置等に受け渡すという一連の工程を完了するまでは、他のワークを受け取る操作を開始することができない。よって、あるワークの搬送が完了してから次のワークを搬送するというように、ワークを逐次的に搬送することになる。これでは、多数のワークを搬送するのに長い時間を要してしまう。特に、上流に設けられた装置等から、ワークが次々と連続的に供給される場合には、ワークの搬送に要する時間が、ワークの供給速度を制限してしまう可能性がある。
【0005】
複数のワークの搬送を、逐次的に行うのではなく、時間差を設けながら並行して行うことができれば、多数のワークを効率的に搬送できるはずである。特に、ワークが、リング状等、貫通孔を有する形状である場合には、その形状を利用して、効率的な搬送方法を考案する余地があると考えられる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、貫通孔を有する対象物を、時間差を設けて複数同時に搬送することができる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる搬送装置は、回転軸を中心に軸回転する回転部と、前記回転軸に平行に軸を向け、前記回転軸を中心として相互に異なる角度位置において、前記回転部に基端を固定された、複数の串状の保持部材と、前記保持部材のうち1本が、第一の回転位置にある状態において、貫通孔を有する対象物を、前記貫通孔において該1本の保持部材に掛ける導入部と、前記保持部材のうち1本が、前記第一の回転位置と異なる第二の回転位置にある状態において、該1本の保持部材に掛けられた前記対象物を抜き取る排出部と、を有するものである。
【0008】
ここで、前記保持部材は、前記対象物を複数掛けられる長さを有し、前記排出部は、前記対象物が複数掛けられた前記保持部材から、該複数の対象物を一度に外すことができるとよい。
【0009】
前記搬送装置は、前記保持部材が第二の回転位置から第一の回転位置まで回転される経路の途中で、前記保持部材に冷媒を接触させる冷却部をさらに有するとよい。
【0010】
前記搬送装置は、前記保持部材に掛けられた前記対象物を前記保持部材から脱落させる脱落部をさらに有するとよい。
【0011】
前記保持部材は軸を水平にして配置され、前記導入部は、前記保持部材の基端に向かって前記対象物を押し込む押し込み手段を有するものであるとよい。
【0012】
前記保持部材は軸を水平にして配置され、前記排出部は、前記保持部材に掛けられた前記対象物を前記保持部材の先端側に押し出す押し出し手段を有するものであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
上記発明にかかる搬送装置においては、複数の保持部材が回転軸を中心として回転され、第一の回転位置と第二の回転位置において、対象物の導入と排出がそれぞれ行われる。第一の回転位置において、導入部によって、ある保持部材(第一の保持部材)に掛けられた対象物は、その保持部材が第二の回転位置まで回転した時に、排出部によって、対象物から外される。第一の保持部材と異なる保持部材(例えば第二の保持部材)は、第一の保持部材と時間差をもって第一の回転位置に到達し、対象物を掛けられる。そして、第二の保持部材と時間差をもって第二の回転位置に到達し、対象物を外される。このようにして、第一の回転位置から第二の回転位置への対象物の搬送を、複数の対象物に対して時間差を設けて行うことができる。第一の回転位置で対象物を保持部材に掛ける操作と、第二の回転位置で対象物を保持部材から外す操作を、並行して行うこともできる。保持部材は、串状に形成されているので、貫通孔を有する対象物に対して、簡便な操作で掛け外しを行うことができる。これらの結果として、上記搬送装置を用いて、多数の対象物を効率的に搬送することができる。特に、対象物が上流の装置から次々と連続的に供給される場合にも、上流の装置を停止させることなく、下流の装置へと円滑に対象物を移動させることができる。
【0014】
ここで、保持部材が、対象物を複数掛けられる長さを有し、排出部が、対象物が複数掛けられた保持部材から、該複数の対象物を一度に外すことができる場合には、複数の対象物をまとめて1本の保持部材で搬送することができるので、搬送の効率を一層高めることができる。
【0015】
搬送装置が、保持部材が第二の回転位置から第一の回転位置まで回転される経路の途中で、保持部材に冷媒を接触させる冷却部をさらに有する場合には、加熱された対象物を搬送するに際し、対象物からの熱で保持部材が加熱されたとしても、第二の回転位置で対象物を外された保持部材を、第一の回転位置で再び対象物を掛けられるまでの間に、冷却することができる。これにより、保持部材への熱の影響が軽減される。
【0016】
搬送装置が、保持部材に掛けられた対象物を保持部材から脱落させる脱落部をさらに有する場合には、排出部や下流の装置に生じた問題等の要因で、第二の回転位置で支障なく対象物を保持部材から排出できなかった場合でも、保持部材に残存した対象物を脱落部で脱落させることで、保持部材を空け、次に第一の回転位置で対象物を掛けられるのに備えることができる。これにより、上流の装置から対象物が連続的に供給される場合でも、排出部や下流の装置の問題に連動して、上流の装置を停止させる事態を回避しやすくなる。
【0017】
保持部材が軸を水平にして配置され、導入部が、保持部材の基端に向かって対象物を押し込む押し込み手段を有するものである場合には、保持部材に導入すべき対象物を保持部材の先端側に配置し、押し込み部材で対象物を保持部材の基端に向かって押し込む簡便な操作で、対象物を保持部材に導入することができる。
【0018】
保持部材が軸を水平にして配置され、排出部が、保持部材に掛けられた対象物を保持部材の先端側に押し出す押し出し手段を有するものである場合には、押し出し手段で対象物を保持部材の先端側に押し出す簡便な操作で、対象物を保持部材から抜き取ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかる搬送装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
[搬送装置の構成]
まず、本発明の一実施形態にかかる搬送装置1の全体構成およびその動作について、
図1〜3を参照しながら説明する。
【0022】
本発明の一実施形態にかかる搬送装置1は、貫通孔W1を有するワーク(対象物)Wを搬送するものである。ワークWは、貫通孔W1を有していれば、どのような形状を有していても、また、どのような材料よりなってもかまわない。ここでは、鋼材よりなり、熱間鍛造を受けた直後の状態にある円筒状(リング状)のワークWを扱う。
【0023】
ワークWは、熱間鍛造を受けた後、高温の状態で、図示しない鍛造装置から、供給装置80で1つずつ搬送されて本搬送装置1に供給される。そして、本搬送装置1において搬送された後、高温の状態のままで、受け取り装置90に受け渡される。受け取り装置90は、搬送装置1から受け取ったワークWを、図示しない熱処理炉に搬送する。
【0024】
本発明の実施形態にかかる搬送装置1は、回転部2と、モータ3と、4本の保持部材4と、シュータ部5と、導入部6と、排出部7と、を有している。また、図示を省略するが、空気流Aを噴出することができる冷却部を有している。
【0025】
回転部2は、略十字形状を有する板状の部材である。回転部2は、十字の交点を通る仮想的な回転軸21を中心として、モータ3によって回転可能である。回転部2およびモータ3は、回転軸21が略水平となるように配置されている。
【0026】
回転部2には、十字の各枝の端部近傍に、4本の保持部材4が立設されている。4本の保持部材4は、同じ径と長さを有する串状の金属材よりなっている。4本の保持部材4は、回転部2の回転軸21から等距離で、回転軸21を中心に90°ずつ隔たった位置に、軸を回転軸21に平行に向けて立設され、基端において回転部2に固定されている。保持部材4の長さは、ワークWの厚さ(貫通孔W1の軸に沿った方向の寸法)の5倍以上とされ、少なくとも5個のワークWを掛けることができる。保持部材4の外径は、少なくともワークWの貫通孔W1の内径よりも小さく設定され、さらに、後述する供給装置80の支持軸対84および受け取り装置90の受け取り軸91と、それぞれ同時にワークWの貫通孔W1に挿入できる太さに設定されることが好ましい。保持部材4は、少なくとも、搬送対象である熱間鍛造直後のワークWの温度において、変形や変質を実質的に受けない程度の耐熱性を有する材料よりなることが好ましい。
【0027】
回転部2の回転方向は、
図2,3に矢印Rで示すように、保持部材4の先端側から見て左回りとなる方向に設定している。回転部2は、所定角度だけ回転すると回転を停止し、所定時間が経過した後に再度回転を開始する間欠運転によって制御される。具体的には、
図1〜3に示すように、4本の保持部材4のうち対向する2本が上下方向に配置され、他の対向する2本が水平方向に配置された状態を停止位置として、1つの停止位置から次の停止位置まで、90°回転して、所定の停止時間の間だけ停止される。ここで、停止時間は、後に説明する保持部材4へのワークWの導入および保持部材4からのワークWの排出の操作を行うことができるだけの長さを有しており、導入部6および排出部7に設けたセンサで、ワークWの導入および排出がともに完了したのを検知して、終了される。そして、停止時間の終了後に、再度回転部2が90°回転して、次の停止位置において停止される。このように、90°回転→停止→90°回転→停止→…の間欠回転が繰り返される。
【0028】
次に、特に
図3を参照しながら、回転部2の間欠回転を含んだ搬送装置1の動作について説明する。ここで、
図2に示すように、各保持部材4の回転位置について、回転部2が停止位置に停止している状態で保持部材4の先端側から見て、右側の位置を第一の回転位置P1、上側の位置を第二の回転位置P2、左側の回転位置を第三の回転位置P3、下側の回転位置を第四の回転位置P4と称する。
【0029】
回転部2が停止位置にある状態において、第一の回転位置P1に配置された、ワークWが掛けられていない保持部材4(便宜的に保持部材4aと称する)に、導入部6によって、供給装置80からワークWが導入される。導入方法の詳細については後述するが、
図3中に矢印a1で示すように、供給装置80からワークWが1つずつ順に保持部材4aの先端近傍の位置に供給され、導入部6によって、貫通孔W1に保持部材4aの軸が挿通される位置まで、ワークWが移動される。これにより、保持部材4aにワークWが掛けられる。この操作が5回繰り返され、5個のワークWが保持部材4aに掛けられる。5個全てのワークWが保持部材4aに掛けられ、停止時間が終了すると、モータ3が回転部2を90°回転させる。第一の回転位置P1でワークWを掛けられた保持部材4aは、第二の回転位置P2に移動する。
【0030】
第二の回転位置P2に到達した保持部材4(便宜的に保持部材4bと称する)には、ワークWが5個掛けられている。詳細については後述するが、
図3中に矢印a2で示すように、保持部材4bに掛けられた5個のワークWは、排出部7によって、一度に、保持部材4bから抜き取られ、受け取り装置90の受け取り軸91に移動される。これにより、保持部材4bは、ワークWが掛けられていない空の状態になる。5個全てのワークWが保持部材4bから排出され、停止時間が終了すると、モータ3が回転部2を90°回転させる。第二の回転位置P2で空にされた保持部材4bは、第三の回転位置P3に移動する。
【0031】
第三の回転位置P3に達した保持部材4(便宜的に保持部材4cと称する)は、第一の回転位置P1から第二の回転位置P2に至る間、熱間鍛造を経て高温に加熱されたワークWを掛けていたために、高温となっている。第三の回転位置P3において、保持部材4cは、保持部材4cの温度よりも低温の空気流Aを吹き付けられる。これにより、保持部材4cが冷却される。この状態で、停止時間が経過すると、モータ3が回転部2を90°回転させる。第三の回転位置P3で冷却された保持部材4cは、第四の回転位置P4に移動する。
【0032】
第二の回転位置P2においてワークWの排出が正常に行われていれば、第四の回転位置P4に到達した保持部材4(便宜的に保持部材4dと称する)は、ワークWを1つも掛けられていない状態にある。この場合には、第四の回転位置P4においては、保持部材4dに対して何の操作も行われない。停止時間が経過するまでの間、第四の回転位置P4で待機した後、再度第一の回転位置P1に移動し、供給装置80から新しいワークWの供給を受ける。
【0033】
一方、排出部7や受け取り装置90、あるいはさらに下流の装置の不具合により、第二の回転位置P2におけるワークWの排出が、正常に完了されなかった場合には、第四の回転位置P4に到達した保持部材4dにワークWが残存している可能性がある。この場合には、
図3中に点線および矢印a3で示すように、残存しているワークWが、保持部材4dからシュータ部5に向かって脱落される。ワークWの脱落は、図示を省略した脱落部によって行われる。具体的な脱落部の構成としては、後に説明する排出部7と同様の機構を有するもの、つまり、保持部材4dに掛けられたワークWを、保持部材4dの基端側から先端側に向かって押し出すプッシャを有するものを例示することができる。シュータ部5に落下されたワークWは、シュータ部5に設けられた傾斜を滑り降り、シュータ部5の下方に適宜設けられた集積容器に集積される。第四の回転位置P4において残存していたワークWを除去された保持部材4dは、停止時間の終了後、再度第一の回転位置P1に移動し、供給装置80から新しいワークWの供給を受ける。
【0034】
本搬送装置1においては、4本全ての保持部材4が順番に、第一の回転位置P1におけるワークWの導入→第二の回転位置P2におけるワークWの排出→第三の回転位置P3における冷却→第四の回転位置P4での必要に応じたワークWの落下→一の回転位置P1におけるワークWの導入→…と、4つの操作を繰り返して受ける。これにより、各保持部材4(および各保持部材4に掛けられたワークW)に対して、4つの処理が、それぞれ時間差をもって実施される。上記各操作は、同時並行で行われる。
【0035】
[導入部におけるワークの導入]
ここで、第一の回転位置P1において保持部材4aにワークWを導入する方法の具体例について、
図4を参照しながら説明する。
【0036】
ワークWを供給する供給装置80は、搬送装置1の保持部材4aの軸に垂直な供給方向a4に沿って、ワークWを搬送し、保持部材4aの先端の外側に配置する。この際、ワークWは、貫通孔W1の軸を保持部材4aの軸に平行にし、保持部材4aの軸の延長線が貫通孔W1に重なるようにして、保持部材4aの先端のすぐ近くに配置される。以降、このワークWの位置および配置を、導入時状態Piと称する。導入時状態Piを取ったワークWは、導入部6によって、供給装置80から保持部材4aに移動される。
【0037】
導入時状態PiへのワークWの供給を連続的に行うことが可能な供給装置80の構成としては、2本の長尺状の移動体81,82が供給方向a4に沿って配置され、移動体81,82の長手方向に沿って等間隔の複数の箇所に、支持軸83と支持軸対84の組が設けられた構成を挙げることができる。保持部材4aの基端側に配置された第一移動体81には支持軸83が、保持部材4aの先端側に配置された第二移動体82には2本の軸よりなる支持軸対84が、それぞれの移動体81,82の長手方向軸から突出されて設けられている。支持軸83および支持軸対84は、対向する方向からワークWの貫通孔W1に挿入されることで、ワークWを回転および揺動しない状態で保持することができる。移動体81,82は、図示しないレールに沿って、長手方向に沿って移動される。移動体81,82の移動によって、支持軸83および支持軸対84に保持されたワークWを供給方向a4に搬送することができる。ここで、第二移動体82は、保持部材4aの軸の延長上の位置まで移動することができ、支持軸対84に支持されたワークWを導入時状態Piに配置することができるが、第一移動体81は、供給方向a4に沿って保持部材4aよりも手前の、保持部材4aと干渉しない終端位置までしか移動することができない。第一移動体81を移動させるレールおよび供給装置80の下面を構成する基材も、保持部材4aとの干渉を避けるために、この終端位置までしか設けられていない。
【0038】
搬送装置1の導入部6としては、押し込み手段として、プッシャ61を有するものを挙げることができる。プッシャ61は、シリンダに駆動されて、保持部材4aの軸に平行に進退運動可能である(
図1中運動m1)。プッシャ61の先端には、押し出し板62が設けられている。プッシャ61が後退した状態では、押し出し板62が供給装置80の支持軸対84に保持されて導入状態PiにあるワークWよりも後方に退避することができ、そこからプッシャ61が前進することで、押し出し板62によって、導入状態Piにて支持軸対84に支持されているワークWを保持部材4aに向かって押すことができる。押し出し板62は、支持軸対82を避けて、供給装置80から供給されたワークWを押し出せるように、略コの字形の形状を有している(
図1参照)。
【0039】
供給装置80において、ワークWを支持軸83および支持軸対84で支持した状態で、移動体81,82を供給方向a4に移動させることで、ワークWが搬送される。ワークWが第一移動体81の終端位置に達すると、支持軸83が後退し、ワークWの貫通孔W1を脱する。この後、支持軸対84のみによって支持されたワークWが、導入時状態Piに達すると、後退していた導入部6の押し出し板62が、プッシャ61によって前進され(
図4中、破線→実線)、ワークWを押す。これにより、ワークWは、支持軸対84を離れ、保持部材4aの基端側に押し込まれる。このようにして、ワークWが供給装置80から保持部材4aに移動され、搬送装置1に導入される。
【0040】
供給装置80には、移動体81,82の長手方向軸に沿って支持軸83と支持軸対84の組が複数設けられているので、複数のワークWを所定の時間間隔で次々と搬送し、導入時状態Piにもたらすことができる。その都度、導入時状態PiにあるワークWを、導入部6の押し出し板62を介してプッシャ61で押すことで、複数のワークWを保持部材4aに掛けることができる。既にワークWが保持部材4aに掛けられている状態で、次のワークWをプッシャ61で押すと、プッシャ61から加えられた力が、既に保持部材4aに掛けられているワークWにも伝搬され、既に掛けられているワークWが保持部材4aの基端側に移動する。このようにして、所定数(ここでは5個)のワークWを保持部材4aに順次掛けることができる。
【0041】
[排出部におけるワークの排出]
次に、第二の回転位置P2において保持部材4bからワークWを排出する方法の具体例について、
図5を参照しながら説明する。
【0042】
保持部材4bに掛けられたワークWは、排出部7によって受け取り装置90へ移動される。排出部7は、押し出し手段として、プッシャ71を有している。プッシャ71には、側方に突出されて、押し出し板72が設けられている。プッシャ71は、シリンダに駆動されて、進退可能であり(
図1中運動m2)、これにより、押し出し板72が、第二の回転位置P2にある保持部材4bの軸に沿って進退可能となっている。押し出し板72は、第二回転位置P2における保持部材4bの後端側に設けられており、保持部材4bと干渉しないように、切欠き72aを有している。プッシャ71が後退した状態では、押し出し板72が保持部材4bに掛けられたワークWと干渉しない状態となる。そこから、押し出し板72が、プッシャ71によって前進される際に(
図2中、実線→破線)、保持部材4bに掛けられた5個のワークWのうち、最も基端側に配置されたワークWの基端側の面に接触し、このワークWに保持部材4bの先端に向かう力を印加することができる。
【0043】
保持部材4bからワークWを受け取る受け取り装置90は、串状の受け取り軸91を有している。受け取り軸91は、ワークWの厚さの5倍以上の長さを有し、5個のワークWを同時に掛けることができる。受け取り軸91は、図示しないロボットアームに結合され、自在に姿勢および位置を変更することができる。さらに受け取り装置90には、受け取り軸91に掛けたワークWの径方向外側に相当する位置に、受け取り軸91と平行に設けられた支柱93を有しており、支柱93の先端に、支柱93の軸に対して回転可能な板片として、脱落防止部材92が設けられている。脱落防止部材92は、受け取り軸91側に回転させた状態において、受け取り軸91に掛けられたワークWと干渉することで、受け取り軸91からのワークWの脱落を防止することができる。
【0044】
第二の回転位置P2に配置された保持部材4bからワークWを排出するに際し、受け取り装置90は、ロボットアームを用いて、受け取り軸91を、5個のワークWが掛けられた保持部材4bの軸に平行に配置し、受け取り軸91と保持部材4bの相互の先端面の少なくとも一部を突き合わせる。この状態で、後退させていた押し出し板72を、プッシャ71によって前進させる。すると、押し出し板72から、保持部材4bの最も基端側に配置されたワークWに、保持部材4bの先端側に向かって押し出す力が加えられる。この力が保持部材4bに掛けられたすべてのワークWに伝搬されることで、全てのワークWが一度に受け取り軸91に移動され、保持部材4bから排出される。この後、プッシャ71および受け取り板72によってワークWの群を受け取り軸91の基端側に押し付けた後、受け取り装置90の脱落防止部材92が受け取り軸91側に回転される。そして、脱落防止部材92でワークWの脱落を防止した状態で、ロボットアームによって受け取り軸91が移動され、熱処理炉へと移される。
【0045】
[搬送装置による搬送効率向上の効果]
本実施形態にかかる搬送装置1においては、以上の構成を有することにより、以下のような作用効果が奏される。本搬送装置1においては、回転軸21の周りに複数本の保持部材4が設けられ、回転軸21を中心に回転されることで、各保持部材4が順に、第一の回転位置P1に達し、さらに第二の回転位置P2に移動する。第一の回転位置P1では、供給装置80から導入部6によって保持部材4にワークWが導入され、第二の回転位置P2では、排出部7によって受け取り装置90へとワークWが排出される。ワークWの導入と排出を、第一の回転位置P1と第二の回転位置P2という別の回転位置において、導入部6と排出部7という別の部材を用いて行うことで、両操作を同時に並行して進めることができる。これにより、複数のワークWを、供給装置80から、搬送装置1を経由して、受け取り装置90へと、時間差を設けて、同時に搬送することができる。その結果、供給装置80から連続的に供給されるワークWを、滞らせることなく効率的に、第一の回転位置P1から第二の回転位置P2へと移動させ、さらに受け取り装置90へと受け渡すことができる。受け取り装置90へのワークWの受け渡しの速度によって、供給装置80やさらに上流の装置の運転速度を制限したり、それらの運転を間欠的に停止させたりすることは、必要とされない。特に、供給装置80からのワークWの導入と、受け取り装置90へのワークWの排出を、回転軸21を中心として回転角度が異なる第一の回転位置P1と第二の回転位置P2においてそれぞれ行うことで、導入部6によるワークWの導入と排出部7によるワークWの排出を、空間的な干渉を避けて、同時に進行させやすくなっている。
【0046】
さらに、本搬送装置1においては、保持部材4が、軸から突出したストッパ部等を有さない単純な串状の部材として構成され、軸を略水平にして配置されていることで、ワークWを保持部材4の軸に沿って基端側または先端側にスライドさせるような操作を行うだけで、保持部材4に対するワークWの掛け外しを行うことができる。これにより、導入部6および排出部7を簡素な構成としながら、ワークWの導入および排出を高速で行うことが可能となっている。特に、供給装置80側でワークWを受け渡す支持軸対84および受け取り装置90側でワークWを受け渡される受け取り軸91も保持部材4と同様に串状の部材として構成し、押し込み用および押し出し用のプッシャ61,71を用いて、保持部材4の軸に沿った力をワークWに対して加えられるようにしておくことで、保持部材4と供給装置80および受け取り装置90との間のワークWの移動を簡便に行うことができる。保持部材4を複数のワークWを掛けられる長さで構成しておけば、複数のワークWよりなる群を同時に1本の保持部材4で搬送することができ、搬送の効率を一層高めることができる。なお、保持部材4を串状に構成し、ワークWの貫通孔W1に挿通してワークWを保持する形態とすることには、ワークWの導入および排出の効率化以外に、ワークWと保持部材4の接触面積を小さく抑える効果もある。ワークWが熱間鍛造を受けた直後の金属材であり、高温の状態のまま本搬送装置1を経由して熱処理炉に移される場合には、本搬送装置1での搬送中にワークWができる限り高温に保たれることが好ましく、保持部材4とワークWとの間の接触面積を小さくすることで、保持部材4によるワークWからの不均一な抜熱を抑えることができる。
【0047】
上記実施形態の搬送装置1は、第二の回転位置P2においてワークWを排出された保持部材4が、第一の回転位置P1まで戻る経路の途中に、第三の回転位置P3が設けられ、冷媒としての空気流Aが保持部材4に接触される。ワークWが熱間鍛造を受けた直後の金属材である場合に、第一の回転位置P1から第二の回転位置P2に至る間に高温のワークWと接触していた保持部材4は、加熱を受けた状態となっている。空気流Aによって、この保持部材4を冷却してから、第一の回転位置P1における再度のワークWの導入に供することができる。保持部材4を冷却することで、熱影響によって保持部材4に変形や変質が生じるのを抑えることができる。なお、ワークWの局所的な冷却を避ける観点から、搬送装置1および供給装置80、受け取り装置90の各部に位置するワークWには空気流Aが接触しない方がよい。
【0048】
さらに、上記実施形態の搬送装置1においては、第二の回転位置P2で正常に保持部材4から排出できなかったワークWを、第四の回転位置P4で保持部材4から脱落させ、保持部材4を空にすることができる。これにより、受け取り装置90やさらに下流の装置の異常等により、第二の回転位置P2で正常に保持部材4からワークWを排出できなかった場合にも、次にその保持部材4が第一の回転位置P1に達した際に、供給装置80から連続的に供給されるワークWを正常に受け取ることができる。これにより、受け取り装置90や下流の装置に発生した問題が軽微なものであれば、供給装置80や鍛造装置等の上流に設けられた装置を、すぐに停止させずに済む。なお、上記実施形態においては、ワークWを脱落させる第四の回転位置P4を第二の回転位置P2と別に設定し、脱落部を排出部7と別に設けたが、排出部7を脱落部としても兼用し、第二の回転位置P2でワークWの脱落を行うようにしてもよい。また、脱落部によるワークWの脱落は、冷却部による保持部材4の冷却よりも前に行うようにしてもよい。
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。