特許第6593076号(P6593076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593076スチールコード、並びに、空気入りタイヤ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593076
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】スチールコード、並びに、空気入りタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20191010BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20191010BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20191010BHJP
   B60C 9/20 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   B60C9/00 L
   B29D30/06
   D07B1/06 A
   !B60C9/20 E
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-194231(P2015-194231)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-65537(P2017-65537A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 健太
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−263312(JP,A)
【文献】 実開昭52−139371(JP,U)
【文献】 特開平06−017387(JP,A)
【文献】 特開平01−213487(JP,A)
【文献】 特開平03−135801(JP,A)
【文献】 特開平06−305302(JP,A)
【文献】 特開平06−297908(JP,A)
【文献】 特開2002−002219(JP,A)
【文献】 特開平05−031825(JP,A)
【文献】 特開昭58−039438(JP,A)
【文献】 特開2005−248375(JP,A)
【文献】 特開昭63−295780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00
B29D 30/06
D07B 1/06
B60C 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記スチールコードが前記スチール素線に当接しながら該スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備し、前記糸の破断強度が1N〜5Nであることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記糸が前記スチールコードの周囲に巻き付けられた状態にあることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記糸が前記スチールコードを構成するスチール素線と共に撚り合わされた状態にあることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記糸が合成繊維又は天然繊維から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記糸の総繊度が25dtex〜170dtexであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を成形し、該補強層を備えたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫するようにした空気入りタイヤの製造方法において、前記補強層を成形する際に、前記スチールコードが前記スチール素線に当接しながら該スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備するように前記スチールコードを前記コートゴム中に埋設し、前記糸の破断強度が1N〜5Nであることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記糸が前記スチールコードの周囲に巻き付けられた状態にあることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記糸が前記スチールコードを構成するスチール素線と共に撚り合わされた状態にあることを特徴とする請求項6に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記糸が合成繊維又は天然繊維から構成されることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記糸の総繊度が25dtex〜170dtexであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項11】
撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードにおいて、前記スチール素線に当接しながら前記スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備し、前記糸の破断強度が1N〜5Nであることを特徴とするスチールコード。
【請求項12】
前記糸が前記スチールコードの周囲に巻き付けられた状態にあることを特徴とする請求項11に記載のスチールコード。
【請求項13】
前記糸が前記スチールコードを構成するスチール素線と共に撚り合わされた状態にあることを特徴とする請求項11に記載のスチールコード。
【請求項14】
前記糸が合成繊維又は天然繊維から構成されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のスチールコード。
【請求項15】
前記糸の総繊度が25dtex〜170dtexであることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載のスチールコード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチールコード、並びに、該スチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を備えた空気入りタイヤ及びその製造方法に関し、更に詳しくは、スチールコードを含む補強層における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することを可能にしたスチールコード、並びに、空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを加硫する際にブリスター故障と呼ばれる加硫故障を生じることがある。ブリスター故障は、ゴム中に含まれる水分や残留エアのほか、タイヤ成形時にタイヤ構成部材の端部に形成される段差に残留するエアが加硫時に局所的に集められ、それによって生じた気泡が加硫中に分散しきらずにブリスターとなってタイヤ内に残存した状態となる故障である。ゴム中に含まれる水分や残留エアは、加硫初期において無数に発泡するものの、その気泡の多くは加硫中にミクロ分散して消滅する。しかしながら、ミクロ分散時に加圧力が弱い部位では気泡が集約され、加硫終了後に再発泡してブリスターを形成することがある。
【0003】
ブリスター故障を抑制するために、タイヤ成形時にはタイヤ構成部材をステッチャーにより押圧してエアの分散を促進し、加硫時には金型内面に配設されたベントホールを介してエアの排出を行っているが、それだけではタイヤ内部に残留するエアを十分に排除することができない。
【0004】
これに対して、カーカス層とそれに隣接する部材との間にエア溜りが形成され易いという知見に基づいて、カーカス層の少なくとも一方の面にゴム被覆されていないエア吸収用の有機繊維コードを配置し、その有機繊維コードによりカーカス層とそれに隣接する部材との間に残留するエアを吸収し、加硫時にエア溜りが形成されるのを防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、上述のようにカーカス層の少なくとも一方の面にゴム被覆されていないエア吸収用の有機繊維コードを配置した場合、カーカス層とそれに隣接する部材との間に残留するエアを吸収することは可能であるものの、ブリスター故障を必ずしも効果的に抑制することができないのが現状である。特に、スチールコードを含むカーカス層のような補強層について、その補強層の表面に配置された有機繊維コードではスチールコード内の残留エアを十分に分散させることができず、エア溜まりを生じ易くなっている。また、カーカス層等の補強層の表面にゴム被覆されていないエア吸収用の有機繊維コードを配置した場合、その有機繊維コードがタイヤ成形工程において離脱したり、位置ずれを起こしたりする恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2013/035555号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、スチールコードを含む補強層における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することを可能にしたスチールコード、並びに、空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を備えた空気入りタイヤにおいて、前記スチールコードが前記スチール素線に当接しながら該スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備し、前記糸の破断強度が1N〜5Nであることを特徴とするものである。
【0009】
また、上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を成形し、該補強層を備えたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫するようにした空気入りタイヤの製造方法において、前記補強層を成形する際に、前記スチールコードが前記スチール素線に当接しながら該スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備するように前記スチールコードを前記コートゴム中に埋設し、前記糸の破断強度が1N〜5Nであることを特徴とするものである。
【0010】
更に、上記目的を達成するための本発明のスチールコードは、撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードにおいて、前記スチール素線に当接しながら前記スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備し、前記糸の破断強度が1N〜5Nであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を備えた空気入りタイヤにおいて、スチールコードがスチール素線に当接しながら該スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備することにより、スチールコード内の残留エアをこれに隣接する糸により効果的に分散させることができるので、スチールコードを含む補強層における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することができる。しかも、糸をスチールコードのスチール素線に当接するようにしてコートゴム中に配置する場合、タイヤ成形工程において糸が離脱したり、位置ずれを起こしたりすることはないので、タイヤ成形工程を円滑に行うことができるという利点もある。
【0012】
本発明において、糸はスチールコードの周囲に巻き付けられた状態にあることが好ましい。また、糸はスチールコードを構成するスチール素線と共に撚り合わされた状態にあることが好ましい。このようにしてスチールコードと糸との一体性を確保することにより、加硫時におけるエア分散性の改善効果を高めることができる。
【0013】
更に、本発明において、糸は合成繊維又は天然繊維から構成されることが好ましい。特に、糸の破断強度は1N〜5Nであることが好ましい。この糸はエア分散性の改善を目的とするものであって補強部材ではないので、その破断強度の上限値を規制することで補強層の挙動に対する影響を最小限に抑制することができる。
【0014】
本発明の空気入りタイヤを製造する場合、撚り合わされた複数本のスチール素線を含むスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層を成形する際に、スチールコードがスチール素線に当接しながら該スチールコードの長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸を具備するようにスチールコードをコートゴム中に埋設する。その後、上述のような補強層を備えたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫するようにすれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。
図2】本発明の空気入りタイヤに使用される補強層を示す平面図である。
図3図2の補強層に埋設されたスチールコード及びそれに付帯する糸を示す平面図である。
図4】本発明の空気入りタイヤの補強層に埋設されるスチールコード及びそれに付帯する糸の変形例を示す平面図である。
図5】本発明の空気入りタイヤの補強層に埋設されるスチールコード及びそれに付帯する糸の他の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、図2はその空気入りタイヤに使用される補強層を示し、図3はその補強層に埋設されたスチールコード及びそれに付帯する糸を示すものである。なお、図1はタイヤセンターラインCLの一方側の部分のみを示しているが、この空気入りタイヤはタイヤセンターラインCLの他方側にも対応する構造を有している。
【0017】
図1において、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含む2層のカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。ビードコア5の外周上には高硬度のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置され、該ビードフィラー6がカーカス層4により包み込まれている。
【0018】
トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
【0019】
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4やベルト層7に代表されるコード入りのタイヤ構成部材の少なくとも1つには、図2に示すような補強層10が使用されている。この補強層10は、引き揃えられた複数本のスチールコード11と、該スチールコード11を被覆するコートゴム12とを備えている。図3に示すように、各スチールコード11は撚り合わされた複数本のスチール素線11Aから構成されており、これらスチール素線11Aに当接しながら該スチールコード11の長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸13を具備している。より具体的には、糸13はスチールコード11の周囲に螺旋状に巻き付けられた状態にあり、これらスチールコード11と糸13との一体性が確保されている。なお、糸13は補強層10を構成する全てのスチールコード11に付設されることが好ましいが、少なくとも一部のスチールコード11に付設されていれば良い。
【0020】
本発明の空気入りタイヤを製造する場合、撚り合わされた複数本のスチール素線11Aを含むスチールコード11をコートゴム12で被覆してなる補強層10を成形する際に、スチールコード11がスチール素線11Aに当接しながら該スチールコード11の長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸13を具備するようにスチールコード11をコートゴム12中に埋設する。例えば、糸13が巻き付けられた複数本のスチールコード11(図3)をカレンダー装置に供給し、引き揃えられた複数本のスチールコード11をコートゴム12と共に一対のロール間で圧延することにより、スチールコード11と糸13を含む補強層10を成形することができる。
【0021】
このようにしてスチールコード11と糸13を含む補強層10を成形した後、その補強層10をカーカス層4やベルト層7として用いたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫することにより、上述した空気入りタイヤを得ることができる。
【0022】
上述のように構成される空気入りタイヤを加硫する場合、タイヤ成形工程を経て成形された未加硫状態のタイヤを金型内に投入し、ブラダーによりタイヤ内側から圧力を掛けながら加熱する。その際、加硫初期においてタイヤ内部に残留する水分やエアが発泡するが、その気泡の多くは加硫中にミクロ分散して消滅する。しかしながら、ミクロ分散時に加圧力が弱い部位では気泡が局所的に集まろうとする。特に、補強層10がスチールコード11を含む場合、スチールコード11内の残留エアがエア溜まりの要因となる。これに対して、スチールコード11がスチール素線11Aに当接しながら該スチールコード11の長手方向に沿って延在する少なくとも1本の糸13を具備することにより、スチールコード11内の残留エアを糸13に基づいて効果的に分散させることができるので、スチールコード11を含む補強層10における加硫時のエア分散性を改善し、ブリスター故障を効果的に抑制することができる。しかも、糸13をスチールコード11のスチール素線11Aに当接するようにしてコートゴム12中に配置する場合、タイヤ成形工程において糸13が離脱したり、位置ずれを起こしたりすることはないので、タイヤ成形工程を円滑に行うことができる。
【0023】
特に、図3に示すように、糸13がスチールコード11の周囲に巻き付けられた状態にある場合、スチールコード11と糸13との一体性が確保されるので、加硫時におけるエア分散性の改善効果を高めることができる
【0024】
図4は本発明の空気入りタイヤの補強層に埋設されるスチールコード及びそれに付帯する糸の変形例を示すものである。図4において、糸13はスチールコード11を構成するスチール素線11Aと共に撚り合わされた状態にある。この場合も、図3の例と同様にスチールコード11と糸13との一体性が確保されるので、加硫時におけるエア分散性の改善効果を高めることができる。
【0025】
図5は本発明の空気入りタイヤの補強層に埋設されるスチールコード及びそれに付帯する糸の他の変形例を示すものである。図5において、糸13はスチールコード11に沿って配置された状態にある。この場合、スチールコード11をコートゴム12で被覆してなる補強層10を成形する際に、スチールコード11のスチール素線11Aに当接するように糸13をスチールコード11に沿わせて圧延工程に供給すれば良い。また、必要であれば、接着剤や粘着剤を用いてスチールコード11に対して糸13を付着させることも可能である。
【0026】
上記空気入りタイヤにおいて、糸13の破断強度は100N以下であり、より好ましくは、1N〜5Nであると良い。この糸13はエア分散性の改善を目的とするものであって補強部材ではないので、その破断強度の上限値を規制することで補強層10の挙動に対する影響を最小限に抑制することができる。糸13の破断強度が大き過ぎるとタイヤ性能に対して意図しない影響を及ぼす恐れがある。
【0027】
糸13の構成材料は特に限定されるものではないが、例えば、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の合成繊維の他、綿等の天然繊維を使用することができる。また、糸13の総繊度は25dtex〜170dtexの範囲にあると良い。これにより、破断強度を低くすると共に、良好なエア分散性を確保することができる。
【0028】
上述した実施形態ではカーカス層4やベルト層7に補強層10を使用した場合について説明したが、本発明ではスチールコード11と糸13を含む補強層10を種々のタイヤ構成部材に適用することができる。そのようなタイヤ構成部材としては、例えば、ビード補強層やサイド補強層を挙げることができる。
【実施例】
【0029】
タイヤサイズ225/65R17の空気入りタイヤにおいて、複数本のスチールコードをコートゴムで被覆してなる補強層をベルト層として用い、その補強層のコートゴム中に糸付きのスチールコードを埋設した実施例1,2のタイヤを製作した。実施例1では糸がスチールコードの周囲に巻き付けられた状態にあるスチールコードを使用し、実施例2では糸がスチールコードを構成するスチール素線と共に撚り合わされた状態にあるスチールコードを使用した。糸としては、綿繊維からなり、総繊度が29.5dtexである糸を使用した。この糸の破断強度は1Nである。
【0030】
また、上記補強層のコートゴム中に糸を配置しなかったこと以外は実施例1,2と同じ構造を有する従来例1のタイヤを製作した。
【0031】
実施例1,2及び従来例1のタイヤをそれぞれ加硫した。その際、加硫時間を必要とされる加硫時間よりも短くし、ブリスター故障を生じ易い条件とした。加硫後、各タイヤを解体し、トレッド部におけるブリスターの発生個数を調べた。その結果、実施例1,2のタイヤでは、従来例1との対比において、ブリスター故障の発生が減少していた。特に、実施例1,2のタイヤにおけるブリスター発生個数は従来例1のタイヤにおけるブリスター発生個数の約半分となっていた。
【符号の説明】
【0032】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
10 補強層
11 スチールコード
11A スチール素線
12 コートゴム
13 糸
図1
図2
図3
図4
図5