特許第6593078号(P6593078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593078
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】リード部材及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/06 20060101AFI20191010BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20191010BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20191010BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20191010BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01M2/06 K
   H01M2/30 D
   H01G11/74
   H01G11/78
   H01M2/26 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-195707(P2015-195707)
(22)【出願日】2015年10月1日
(65)【公開番号】特開2017-69120(P2017-69120A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153110
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100131037
【弁理士】
【氏名又は名称】坪井 健児
(74)【代理人】
【識別番号】100099069
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岡田 智之
(72)【発明者】
【氏名】福田 豊
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 友多佳
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−123710(JP,A)
【文献】 特開2014−123445(JP,A)
【文献】 特開2005−174825(JP,A)
【文献】 特開2002−134074(JP,A)
【文献】 特開2014−120390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00−2/08、2/20−2/34
H01G 11/00−11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔により構成されるリード導体に、該リード導体の両面から樹脂フィルムが貼られたリード部材であって、
前記樹脂フィルムの幅は、前記リード導体の幅よりも広く、前記リード導体の幅方向の両端から幅方向に突出し、該幅方向に突出した領域で、前記リード導体の両面から貼られた前記樹脂フィルム同士が貼り合わされ、前記樹脂フィルムの長さは、前記リード導体の長さよりも短く、前記リード導体の長さ方向の両端部には、前記樹脂フィルムが貼り合されてなく、
前記樹脂フィルムは、2層以上の積層構成を有し、前記リード導体に接する層は、前記樹脂フィルムの樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上の酸化亜鉛が添加されており、
該酸化亜鉛のD50(メジアン径)が、10μm以上〜30μm以下である、リード部材。
【請求項2】
請求項に記載のリード部材が電極に接続され、該電極と電解液が封入体に封入され、前記リード部材が前記封入体に密封封止され、前記リード部材の一部が前記封入体の外に出ている蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やキャパシタ等の蓄電デバイスに用いられるリード部材及びそのリード部材を有する蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池などの非水電解質電池には、多層フィルムからなる封入体に、正極板、負極板及び非水電解質(電解液)を封入し、正極板、負極板に接続したリード部材(絶縁リード)が上記封入体内から外部に露出するように密封封止した構造のものがある。非水電解質としてはLiPF6、LiBF4などのフッ素を含有するリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの非水有機溶媒に溶解した電解液が使用されている。
【0003】
封入容器としては、電解液やガスの透過、外部からの水分の浸入を防止する必要性から、通常、アルミニウム箔などの金属層を樹脂で被覆したラミネートフィルムを熱融着することにより袋状とした封入容器を使用している。
封入容器の一端を開口部とし、正極板及び負極板の一端が接続されたリード部材を封入容器の内部から開口部を通じて外部へ延びるように配置して、開口部をヒートシール(熱融着)することで、封入容器とリード部材とを接着して開口部を封止する。この最後に熱融着される部分をシール部と呼ぶ。シール部には封入容器の金属層と、リード部材の金属層(リード導体)との短絡を発生させることなく、シール性(密封性)を維持できることが求められる。
【0004】
特許文献1には、金属層を有する封入容器と、その封入容器の内部から外部に延びるリード導体とを有し、封入容器とリード導体とがシール部で熱融着されてなる電気部品であって、シール部の少なくとも一部において、金属層とリード導体との間であってリード導体と接する部分に、縮合リン酸アルミニウムを含有する熱融着層を有するものが開示されている。この構成により、水分との反応により生じたフッ化水素酸によりリード導体が腐食され、シール部でリード導体金属と熱融着層とが剥れることが抑制され、非水電解質電池の耐久性が向上するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−186007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、電解液中にあってもリード部材のリード導体と樹脂フィルムとの剥離を防止し、高いシール性を付与したリード部材、およびそのリード部材を有する蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるリード部材は、金属箔により構成されるリード導体に、該リード導体の両面から樹脂フィルムが貼られたリード部材であって、前記樹脂フィルムの幅は、前記リード導体の幅よりも広く、前記リード導体の幅方向の両端から幅方向に突出し、該幅方向に突出した領域で、前記リード導体の両面から貼られた前記樹脂フィルム同士が貼り合わされ、前記樹脂フィルムの長さは、前記リード導体の長さよりも短く、前記リード導体の長さ方向の両端部には、前記樹脂フィルムが貼り合されてなく、前記樹脂フィルムは、2層以上の積層構成を有し、前記リード導体に接する層は、前記樹脂フィルムの樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上の酸化亜鉛が添加されており、該酸化亜鉛のD50(メジアン径)が10μm以上〜30μm以下である、リード部材である。
【0008】
本発明における蓄電デバイスは、上記のリード部材が電極に接続され、該電極と電解液が封入体に封入され、前記リード部材が前記封入体に密封封止され、前記リード部材の一部が前記封入体の外に出ている蓄電デバイスである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シール部の耐電解液性を向上させ、電解液中にあってもリード部材のリード導体と樹脂フィルムとの剥離を防止し、高いシール性を付与したリード部材およびそのリード部材を有する蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明によるリード部材および蓄電デバイスの構成例を示す図である。
図2】リード部材の取り出し状態を説明する図である。
図3】非水電解質電池のリード部材の構成をより具体的に示す図である。
図4】リード部材の電解液への浸漬日数に応じた剥離強度の保持率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
(1)本願のリード部材に係る発明は、金属箔により構成されるリード導体に、該リード導体の両面から樹脂フィルムが貼られたリード部材であって、前記樹脂フィルムの幅は、前記リード導体の幅よりも広く、前記リード導体の幅方向の両端から幅方向に突出し、該幅方向に突出した領域で、前記リード導体の両面から貼られた前記樹脂フィルム同士が貼り合わされ、前記樹脂フィルムの長さは、前記リード導体の長さよりも短く、前記リード導体の長さ方向の両端部には、前記樹脂フィルムが貼り合されてなく、前記樹脂フィルムは、2層以上の積層構成を有し、前記リード導体に接する層は、前記樹脂フィルムの樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上の酸化亜鉛が添加されており、該酸化亜鉛のD50(メジアン径)が10μm以上〜30μm以下である、リード部材である。電解液中にあってもリード部材のリード導体と樹脂フィルムとの剥離を防止し、高いシール性を付与したリード部材である。
【0014】
)本発明の蓄電デバイスに係る発明は、上記のリード部材が電極に接続され、該電極と電解液が封入体に封入され、前記リード部材が前記封入体に密封封止され、前記リード部材の一部が前記封入体の外に出ている蓄電デバイスである。電解液中にあるリード部材のリード導体と樹脂フィルムとの剥離を防止し、高いシール性を有する蓄電デバイスである。
【0015】
(本願発明の実施形態の詳細)
図1は、本発明によるリード部材および蓄電デバイスの構成例を示す図で、図1(A)は、蓄電デバイスの一例である非水電解質電池の組み立てを説明する図、図1(B)は非水電解質電池の斜視外観を示す図であり、図2は、リード部材の取り出し状態を説明する図である。図中、1は封入体、2は積層電極群、3,4はリード部材、5,6はリード導体、7は樹脂フィルム(絶縁フィルム)、8はシール部、10は非水電解質電池である。
【0016】
蓄電デバイスは、リチウムイオン電池などの非水電解質電池、電気二重層コンデンサ(EDLC)やリチウムイオンキャパシタなどのキャパシタなどを含む。
非水電解質電池10は、正極板及び負極板がセパレータを介して複数積層された積層電極群2を有し、積層電極群2と電解液が封入体1に収納されている。封入体1の内部では、リード部材3の一端側が正極板に接続され、リード部材4の一端側が負極板に接続される。そしてリード部材3,4の他端側は、密封封止された状態でシール部8から外部に取り出されている。
【0017】
封入体1は、非水電解質電池10の外装ケースをなし、金属箔層の両面に樹脂フィルム(内層フィルム、外層フィルム)を貼り合わせた多層フィルムで形成されている。シール部8は、多層フィルムの周縁部に位置し、熱融着により密封される。
リード部材3,4のそれぞれには、封入体1からの取り出し部分に樹脂フィルム7が貼り付けられる。樹脂フィルム7は、封入体1の内側の内層フィルムに融着してシール性の低下を防止すると共に、封入体1の金属箔層とリード部材3,4との電気的な短絡を防止する機能を有している。
【0018】
図3は、非水電解質電池のリード部材の構成をより具体的に示す図で、図3(A)は、リード部材の平面図、図3(B)は、リード部材を取り付けた非水電解質電池の要部断面図である。
リード部材3,4は、帯状のリード導体5,6を有している。リード導体5,6は、厚さが例えば0.05mm〜1.0mm程度の薄い導体箔を、導体幅dが例えば1〜100mm程度で、長さlが10〜60mmの長方形にカットして形成されている。
【0019】
リード導体5,6は、例えば、アルミニウム、ニッケル、またはニッケルめっき銅、あるいはニッケルクラッド銅などで形成される。なお、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタでは、正極側のリード導体にはアルミニウムが使用され、負極側のリード導体にはニッケルやニッケルめっきを施した銅などが使用される。電気二重層コンデンサでは、正極側及び負極側のリード導体にもアルミニウムが使用される。
【0020】
リード部材3,4は、リード導体5,6の長さ方向の中間部分を覆う樹脂フィルム7を有している。この樹脂フィルム7には、その長さLがリード導体5,6の長さlよりも短いものが用いられ、樹脂フィルム7の幅Dが導体幅dより広いものが用いられる。樹脂フィルム7の長さLは、例えば2〜10mmであり、その幅Dは例えば3〜110mmとされる。
【0021】
樹脂フィルム7は、リード導体5,6の幅方向に突出するようにリード導体5、6の両面側に設置され、突出した樹脂フィルム7同士が貼り合わされる。また、樹脂フィルム7は、リード部材3,4の長さ方向両端部を除く領域に貼られ、このときリード部材3,4の両端で、それぞれ長さ方向に例えば5mm以上のリード導体5,6が露出する。
【0022】
樹脂フィルム7のベース樹脂としては、ヒートシール時の熱によって溶融して、封入体1とリード導体5,6とが接着可能な樹脂を用いる。この樹脂フィルム7のベース樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、酸変性スチレン系エラストマーなどが使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィンなどが例示される。特にマレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等で変性されて接着性の官能基を持つ酸変性ポリオレフィンが好ましい。なかでもマレイン酸変性ポリプロピレン樹脂はリード導体の金属との接着性があり、シール性にすぐれているため、本実施形態では、マレイン酸変性ポリプロピレンを好適に使用することができる。これにより、リード部材3,4のリード導体5,6と、封入体1の内層フィルム1aとの熱融着性および密封性を確保する。
【0023】
本発明に係る実施形態では、樹脂フィルム7は、リード導体5,6に熱融着するベース樹脂の内部に、酸化亜鉛からなる粒子20を添加して分散させ、フィルム状に成形したものである。特に、樹脂フィルム7がリード導体5、6に接する界面部分は、少なくとも樹脂フィルム7のベース樹脂となる樹脂成分に酸化亜鉛が添加された状態とする。この場合、樹脂フィルム7を2層以上の多層構成としてもよく、この場合に、樹脂フィルムの多層構成のうち、リード導体5、6に接する層を少なくとも酸化亜鉛を添加した層とする。これにより樹脂フィルムを多層構成にすることができ、多層構成にした場合でもリード部材に接する層に酸化亜鉛を添加することで、リード部材のリード導体と樹脂フィルムとの剥離を防止し、高いシール性を付与したリード部材を提供することができる。
【0024】
酸化亜鉛の平均粒子径は、特に限定しないが、0.1μm〜50μmの範囲とすることが、粒子の分散性と透明性との点から好ましく、0.1μm〜30μmの範囲とすることがより好ましい。またこのときに、さらなる透明性とハンドリング性からD50(メジアン径)を10μm以上〜30μm以下とすることが好ましい。
また樹脂フィルム7のベース樹脂となる樹脂成分に対する酸化亜鉛の添加量は、樹脂成分100質量部に対しして0.1質量部以上とする。さらに均一分散の安定性を考慮して、酸化亜鉛の添加量は、樹脂成分100質量部に対して0.5質量部以上とすることが好ましく、上限としては成形性と導体接触性とを考慮し、30質量部以下とすることが好ましい。
【0025】
また、ベース樹脂となる樹脂材料に酸化亜鉛を添加する方法としては、バッチ式(一定量のバッチごとに酸化亜鉛をベース樹脂に添加して混合する)、あるいは連続式(連続的に樹脂成分に酸化亜鉛を添加しながら、一定量の酸化亜鉛をベース樹脂に添加して混合をする)のいずれであってもよい。
樹脂成分に対する酸化亜鉛の分散度合いについては、例えば酸化亜鉛を樹脂成分に1.0質量部添加して50μm厚さのフィルムを成形したときに、目視にて透明であると判断することができ、酸化亜鉛の凝集粒子が見られない状態とすることが好ましいが、凝集粒子が有ったとしても耐電解液性向上効果は発現させることができる。樹脂フィルム7には、上記のベース樹脂となる樹脂成分と、酸化亜鉛の他、必要に応じて、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、着色剤等の各種添加剤を混合することが可能である。
【0026】
ベース樹脂となる樹脂成分に酸化亜鉛を添加し、さらに所望の添加剤を配合した組成物を、オープンロール、加圧ニーダー、単軸混合機、2軸混合機などの既知の混合装置を用いて混合した後、押出成形などによって樹脂フィルム7を作製する。樹脂フィルム7の厚みはリード導体5,6の厚みに依存するが、通常、30μm〜200μmが好ましい。
【0027】
封入体1は、例えば、内層フィルム1a、金属箔層1b、および外層フィルム1cによる少なくとも3層の多層フィルムで形成されている。
内層フィルム1aには、例えば、ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性低密度ポリエチレンまたはポリプロピレン)等が用いられ、電解液で溶解されない材料が選択されている。金属箔層1bは、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス等の薄い金属箔が用いられ、電解液に対する密封性が高められている。外層フィルム1cは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、6,6−ナイロン、6−ナイロンなどのポリアミド樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられ、金属箔層1bを保護している。
【0028】
樹脂フィルム7は、予め熱融着によりリード導体5,6に密着させて一体化してリード部材3、4を形成し、リード導体5,6と樹脂フィルム7との界面における良好な密封封止を形成しておく。そして、リード導体5,6に樹脂フィルム7を貼り合せたリード部材3,4と、封入体1とを熱融着させることで、リード部材3,4を挿通させた状態で封入体1を密封封止する。
【0029】
リード導体5,6に樹脂フィルム7を両面から貼り合してなるリード部材3,4において、リード導体5、6と樹脂フィルム7とが接する部分で、樹脂フィルム7の樹脂成分に対して酸化亜鉛を添加することにより、電解液に浸漬された状態であってもリード導体5,6と樹脂フィルム7との間の剥離を防止し、高いシール性を付与したリード部材を得ることができ。この場合、リード導体5,6の表面処理(例えばクロメート処理)することにより極性基を形成させて接着性を向上させる処理を行う必要なく、樹脂フィルム7と金属製のリード導体5、6と接着性を向上させることができる。電解液中であっても、リード導体5,6と樹脂フィルム7とが剥離しないようにすること(耐電解質液性)が向上する。具体的には、水分との反応により生じたフッ化水素酸により、リード導体が腐食されることがなく、シール部でリード導体5,6と樹脂フィルム7とが剥がれることが抑制され、非水電解質電池の耐久性が向上する。
【0030】
尚、以上の説明は、リチウムイオン電池に代表される非水電解質電池を例に説明したが、本発明の電子部品は非水電解質電池に限定せず、シール部において、導体に対して強度な接着性を要し、且つ耐フッ化水素酸性が求められる他の蓄電デバイスも包含する。
【0031】
(実施例)
リード導体と樹脂フィルムからなるリード部材を作成し、電解液に浸漬させて、経過時間に応じたリード導体と樹脂フィルムとの間の剥離強度を測定することで、リード部材の耐電解質液性を評価した。
評価サンプルとしては、図3の構成のリード部材3,4の単体において、
(1)樹脂フィルム7に酸化亜鉛を添加しない添加無サンプル
(2)樹脂フィルム7の樹脂成分に酸化亜鉛(ZnO)を0.5質量部添加したサンプル
(3)樹脂フィルム7の樹脂成分に酸化亜鉛(ZnO)を1.5質量部添加したサンプル
を作成し、電解液に浸漬させた。リード導体5,6には、純ニッケルを使用した。
そして電解液への浸漬前、浸漬後7日経過後、及び浸漬後14日経過後に、リード部材3,4のリード導体5,6と樹脂フィルム7との間の剥離強度(N/5mm)を測定し、これに基づき剥離強度の保持率を計算した。剥離強度は、作製したリード部材3,4、を5mm幅に切断し、樹脂フィルム7とリード導体5,6とを180°の方向に剥離させるときの力の最大値とした。このときの引張速度は100mm/分とした。酸化亜鉛は、粒子径が0.1〜30μm、かつD50(メジアン径)が10〜30μmのものを使用した。
【0032】
図4は、リード部材3,4の電解液への浸漬日数に応じた剥離強度の保持率を示す図である。図4に示すように、樹脂フィルム7に酸化亜鉛を添加しない無添加サンプルにおいては、リード部材3,4を電解液に浸漬した後、ほぼ直線的に剥離強度が低下し、浸漬後14日後には剥離強度の保持率はゼロになった。
【0033】
また図4に示すように、樹脂フィルム7に酸化亜鉛を添加したサンプルにおいては、リード部材3,4を電解液に浸漬させた後も剥離強度が低下しにくく、酸化亜鉛を0.5質量部添加したサンプル(ZnO/0.5部)においては、剥離強度の保持率は、浸漬後14日経過しても80%以上のレベルが保たれた。また、酸化亜鉛を1.5質量部添加したサンプル(ZnO/1.5部)においては、剥離強度の保持率は、浸漬後14日経過しても110%以上のレベルが保たれた。
このように、リード導体5,6に樹脂フィルム7を両面から貼り合してなるリード部材3,4において、リード導体5、6と樹脂フィルム7とが接する部分で、樹脂フィルム7の樹脂成分に対して酸化亜鉛を添加することにより、電解液に浸漬された状態であってもリード導体5,6と樹脂フィルム7との間の剥離を防止し、高いシール性を付与したリード部材を得ることができた。
【符号の説明】
【0034】
1…封入体、1a…内層フィルム、1b…金属箔層、1c…外層フィルム、2…積層電極群、3…リード部材、4…リード部材、5…リード導体、6…リード導体、7…樹脂フィルム、8…シール部、20…粒子。
図1
図2
図3
図4