(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593135
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 35/077 20060101AFI20191010BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20191010BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
F16C35/077
F16C33/58
F16C19/06
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-235698(P2015-235698)
(22)【出願日】2015年12月2日
(65)【公開番号】特開2017-101749(P2017-101749A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 豊
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−029196(JP,A)
【文献】
特開2015−094383(JP,A)
【文献】
特開2015−102138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/077
F16C 19/06
F16C 33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、軸方向の端部外周部に小径段部が設けられた外輪と、前記内外輪間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
前記小径段部の周囲を覆う保持孔、及び各締結部材をそれぞれ挿通又は螺合可能な複数の取付孔が形成される固定プレートと、
を備え、
前記小径段部には、外周面に円周方向に延びる係止溝が形成され、
前記固定プレートは、前記保持孔を画成する前記固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、前記係止溝に係止する複数の係止爪を備え、
前記複数の係止爪が前記係止溝に係止されることで、前記外輪と前記固定プレートとが不分離に、且つ、相対回転可能に組み合わされる軸受装置であって、
前記保持孔は、前記外輪と前記固定プレートとの相対回転を案内する案内部と、円周方向の位相が前記各取付孔と一致する部分に、それぞれ所定の円周方向長さを持って形成され、前記小径段部の段部外周面から径方向外方に延びる段差面と接触する部分の最外径よりも径方向外側に位置する切り欠き部と、前記案内部よりも径方向外側、且つ、前記段差面と接触する部分の最外径よりも径方向内側で、前記係止爪に対して円周方向両側に位置する逃げ部と、を有し、
前記切り欠き部と前記逃げ部とは、円周方向に隣接または重複して形成されていることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記逃げ部と前記切り欠き部とは、円周方向に重複して形成されており、
前記逃げ部は、前記切り欠き部の所定の円周方向長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記固定プレートの内周部の軸方向一側面に形成された凹部によって構成され、
前記切り欠き部よりも径方向内側には、前記凹部の底面から軸方向に突出し、前記凹部の周囲の平面と同一の高さを有する凸部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関し、より詳細には、例えば、トランスミッションやデファレンシャルギア装置におけるギヤなどの回転支持部に用いられる軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用変速機のプーリやギヤなどが設けられた回転軸を支持する軸受は、ハウジングと、ハウジングにボルトにより固定される固定プレートとで挟持されて、ハウジングに強固に固定される(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図9は、従来から知られている軸受装置100の1例を示している。回転軸101の端部は、ラジアル転がり軸受102を介してハウジング103に回転自在に支持されている。ラジアル転がり軸受102は、内周面に外輪軌道104を有する外輪105と、外周面に内輪軌道106を有する内輪107と、外輪軌道104と内輪軌道106との間に転動自在に設けられた複数の玉108とを備える。ラジアル転がり軸受102の外輪105は、ハウジング103に形成された保持凹部109に内嵌している。固定プレート110は、保持孔113が外輪105の軸方向一端部外周面に形成された小径段部112に回動可能に外嵌し、固定プレート110の複数の通孔114(
図10参照)をそれぞれ挿通する複数のねじによりハウジング103に固定されて、外輪105が保持凹部109から抜け出すことを防止している。
【0004】
ところで、従来の固定プレート110は、
図10及び
図11に示すように、円周方向に等間隔で形成された3箇所の通孔114を挿通するねじによりハウジング103に固定されるため、各ねじの締め付けに伴って、固定プレート110から外輪105の小径段部112の段差面115に加わる押圧力が、円周方向に関して不均一になる。具体的には、通孔114に近い部分は段差面115に加わる押圧力が大きく、通孔114から離れるに従って段差面115に加わる押圧力が小さくなる。このように、外輪105の段差面115に加わる押圧力が、円周方向に関して不均一になると、外輪105が歪み、外輪軌道104の真円度が損なわれる虞がある。
【0005】
特許文献1に記載の軸受装置では、外輪の押圧力が円周方向に関して不均一となる課題に対処するため、固定プレートに形成した保持孔の内周縁部のうちで、通孔の径方向内側部分に切り欠き部を形成し、切り欠き部の周縁を、外輪の外周面よりも径方向外側に位置させて、ねじの締め付けに伴う固定プレートによる外輪の押圧力を、円周方向に関してほぼ均一にし、外輪の真円度の悪化を防止している。
【0006】
また、特許文献2に記載の軸受装置では、固定プレートの保持孔の周縁部の複数箇所に大径部(逃げ部)を設ける。これにより、外輪の小径段部に固定プレートを内嵌した状態で、大径部の周囲部分をパンチにより押圧し、係止爪を塑性変形によって形成する際、外輪に損傷を与える変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−132495号公報
【特許文献2】特開2010−249214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載のように、固定プレートの保持孔に切り欠き部が設けられる場合、切り欠き部の円周方向両側には面取り部が形成されるため、案内部となる保持孔の最内径の領域が短くなる。固定プレートは、プレス形成にて製造されることが多く、案内部が短いと、成形時の内径真円度が低下しやすく、変形の仕方次第で固定プレートによる保持ができなくなる可能性が高まる。
そして、固定プレートの保持孔に、上記切り欠き部に加えて、特許文献2に記載のような大径部を設けた場合、案内部がさらに短くなる可能性があり、外輪の小径段部と固定プレートの内周部との間でガタが多くなり、係止爪が軸受から外れやすくなる可能性がある。
【0009】
特許文献2では、
図12に示すような固定プレート120において、特許文献1に記載のような切り欠き部121を、周方向に関する位相が各取付け孔122と一致する部分に形成し、各切り欠き部121を大径部として利用することが記載されているが、具体的な構成においてさらなる改良が求められていた。
【0010】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、固定プレートの保持孔に切り欠き部及び逃げ部を設けた場合でも、外輪との案内部を十分に確保しつつ、固定プレートの内径真円度を良好に保ち、外輪を確実にハウジングに固定することができる軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 内輪と、軸方向の端部外周部に小径段部が設けられた外輪と、前記内外輪間に転動自在に配設された複数の転動体と、を備える転がり軸受と、
前記小径段部の周囲を覆う保持孔、及び各締結部材をそれぞれ挿通又は螺合可能な複数の取付孔が形成される固定プレートと、
を備え、
前記小径段部には、外周面に円周方向に延びる係止溝が形成され、
前記固定プレートは、前記保持孔を画成する前記固定プレートの内周部から径方向内側に突出して設けられ、前記係止溝に係止する複数の係止爪を備え、
前記複数の係止爪が前記係止溝に係止されることで、前記外輪と前記固定プレートとが不分離に、且つ、相対回転可能に組み合わされる軸受装置であって、
前記保持孔は、前記外輪と前記固定プレートとの相対回転を案内する案内部と、円周方向の位相が前記各取付孔と一致する部分に、それぞれ所定の円周方向長さを持って形成され、前記小径段部の段部外周面から径方向外方に延びる段差面と接触する部分の最外径よりも径方向外側に位置する切り欠き部と、前記案内部よりも径方向外側、且つ、前記段差面と接触する部分の最外径よりも径方向内側で、前記係止爪に対して円周方向両側に位置する逃げ部と、を有し、
前記切り欠き部と前記逃げ部とは、円周方向に隣接または重複して形成されていることを特徴とする軸受装置。
(2) 前記逃げ部と前記切り欠き部とは、円周方向に重複して形成されており、
前記逃げ部は、前記切り欠き部の所定の円周方向長さよりも短いことを特徴とする(1)に記載の軸受装置。
(3) 前記切り欠き部は、前記固定プレートの内周部の軸方向一側面に形成された凹部によって構成され、
前記切り欠き部よりも径方向内側には、前記軸方向一側面から軸方向に突出し、前記凹部の周囲の平面と同一の高さを有する凸部が形成されることを特徴とする(2)に記載の軸受装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軸受装置によれば、保持孔は、外輪と固定プレートとの相対回転を案内する案内部と、円周方向の位相が各取付孔と一致する部分に、それぞれ所定の円周方向長さを持って形成され、小径段部の段部外周面から径方向外方に延びる段差面と接触する部分の最外径よりも径方向外側に位置する切り欠き部と、案内部よりも径方向外側、且つ、段差面と接触する部分の最外径よりも径方向内側で、係止爪に対して円周方向両側に位置する逃げ部と、を有し、逃げ部と切り欠き部とは、円周方向に隣接または重複して形成されている。これにより、固定プレートの保持孔に切り欠き部及び逃げ部を設けた場合でも、外輪との案内部を十分に確保しつつ、固定プレートの内径真円度を良好に保ち、外輪を確実にハウジングに固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る軸受装置の正面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図である。
【
図2】
図1の軸受装置を背面側から見た斜視図である。
【
図3】
図1の軸受装置において、係止爪加工後の固定プレートの斜視図である。
【
図4】(a)は本発明の第2実施形態に係る軸受装置の正面図であり、(b)は係止爪加工後の固定プレートの斜視図である。
【
図5】(a)は本発明の第3実施形態に係る軸受装置の背面側の正面図であり、(b)は(a)のV−V線に沿った断面図である。
【
図6】(a)は、
図5の軸受装置において、係止爪加工後の固定プレートの表面側の斜視図であり、(b)は、(a)の裏面側の斜視図である。
【
図8】(a)は本発明の第4実施形態に係る軸受装置における、固定プレートの背面側の正面図であり、(b)は(a)のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【
図9】従来の軸受装置の1例を示す部分断面図である。
【
図12】他の従来の軸受装置の固定プレートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態に係る軸受装置について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る軸受装置について、
図1〜
図3を参照して説明する。
軸受装置10は、ラジアル転がり軸受30と、ラジアル転がり軸受30をハウジング103(
図9参照)に固定する固定プレート40と、を備える。ラジアル転がり軸受30と固定プレート40とは、後述するように不分離に組み付けられている。
【0016】
図1(b)に示すように、ラジアル転がり軸受30は、内周面に外輪軌道32を有する外輪31と、外周面に内輪軌道34を有する内輪33と、保持器(図示せず)に保持されて外輪軌道32と内輪軌道34との間に転動自在に配設された複数の転動体である玉35とを備える。外輪31の軸方向一端部の外周部には、外輪31の外径より小径の段部外周面37aと、段部外周面37aの基端部から径方向外方に延びる段差面37bとからなる小径段部37が形成されている。段部外周面37aには、係止溝37cが円周方向全周に沿って形成されている。また、外輪31の軸方向両端部には、外輪31と内輪33との間に封止部材38が配設されており、ラジアル転がり軸受30を封止している。
【0017】
図1〜
図3に示すように、固定プレート40は、短辺40aと長辺40bとを円周方向に関して交互に配置した略六角形状の板状部材であり、中央には外輪31が内嵌する保持孔41が形成されている。また、短辺40aに対応する円周方向等間隔の3箇所には、それぞれ固定プレート40の表面44側に突出するボス部42(
図5(b)参照)が形成されている。ボス部42には、軸受装置10をハウジング103に固定するための締結部材としての締結ねじ(図示せず)が螺合又は挿通する取付孔43が形成されている。
【0018】
また、保持孔41は、外輪31の小径段部37に固定プレート40の保持孔41を嵌合させた後、保持孔41を画成する固定プレート40の内周部を裏面45から潰し加工により軸方向に押圧して形成される複数(本実施形態では3箇所)の係止爪49を有する。複数の係止爪49は、固定プレート40の内周部から径方向内側に突出し、外輪31の係止溝37cとそれぞれ係止する。これにより、ラジアル転がり軸受30と固定プレート40とが不分離、且つ相対回転可能な状態に組み付けられる。
なお、係止溝37cは、円周方向全周に亙って形成されていなくてもよく、係止爪49と対応する位置に少なくとも形成されていればよい。
【0019】
ここで、保持孔41は、外輪31と固定プレート40との相対回転を案内する案内部46と、円周方向の位相が各取付孔43と一致する部分に、それぞれ所定の円周方向長さを持って形成される複数(本実施形態では、3箇所)の切り欠き部47と、係止爪49に対して円周方向両側に位置する複数(本実施形態では、3箇所)の逃げ部48と、を有する。
【0020】
切り欠き部47は、外輪31の真円度改善の観点から、小径段部37の段差面37bと接触する部分の最外径Dよりも径方向外側に位置する必要がある。一方、逃げ部48は、プレス成形時に係止爪49となる部分が小径段部37の段部外周面37aと干渉しないように、案内部46よりも径方向外側に形成されているが、係止爪の潰し加工時のバックアップ面を確保するため、小径段部37の段差面37bと接触する部分の最外径Dよりも径方向内側に位置する必要がある。
【0021】
そして、本実施形態では、切り欠き部47と逃げ部48とは、円周方向に隣接して形成されている。このため、切り欠き部47と逃げ部48とを離間して形成した場合に比べて、切り欠き部47と逃げ部48との間に形成される面取り部の数を減らすことができ、案内部46の長さを長く確保することができる。したがって、逃げ部48は、固定プレート40の保持孔41と長辺40bとの間の径方向寸法が短くなる薄肉部A(
図1参照)を避けて形成することができる。
なお、本実施形態の場合、切り欠き部47と逃げ部48とは、円周方向に隣接して形成されているので、締結ねじを締め付けたときの締め付け力で発生する応力によって、逃げ部48が影響を受けにくい。したがって、係止爪49と係止溝37cとのクリアランスを必要以上に大きくせず、また、高い加工精度を要求することなく、係止爪49と係止溝37cとの接触が防止されるので、安全で低コストな設計となる。
【0022】
また、このような保持孔41は、案内部46、切り欠き部47、及び逃げ部48を独立に成形せずに、一工程で打ち抜いて形成することができるため、工程の短縮や、案内部46の案内径に対する切り欠き部47及び逃げ部48の位置精度も向上する。また、切り欠き部47及び逃げ部48が案内部46を介して別々に設けられている場合でも、一工程での打ち抜きは可能であるが、本実施形態では、切り欠き部47及び逃げ部48と案内部46との間に不連続部が少なくなるため、1工程で打ち抜く型の作成が容易であり、型寿命が向上する。
【0023】
以上説明したように、本実施形態の軸受装置10によれば、保持孔41は、外輪31と固定プレート40との相対回転を案内する案内部46と、円周方向の位相が各取付孔43と一致する部分に、それぞれ所定の円周方向長さを持って形成され、段差面37bと接触する部分の最外径Dよりも径方向外側に位置する複数の切り欠き部47と、該案内部46よりも径方向外側、且つ、小径段部37の段差面37bと接触する部分の最外径Dよりも径方向内側で、係止爪49に対して円周方向両側に位置する複数の逃げ部48と、を有し、切り欠き部47と逃げ部48とは、円周方向に隣接して形成されている。これにより、固定プレート40の保持孔41に切り欠き部47及び逃げ部48を設けた場合でも、外輪31との案内部46を十分に確保しつつ、固定プレート40の内径真円度を良好に保ち、外輪31を確実にハウジング103に固定することができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る軸受装置について、
図4を参照して、説明する。
第1実施形態では、各切り欠き部47に対して逃げ部48を円周方向一方側にのみ隣接して形成していたが、本実施形態では、各切り欠き部47に対して一対の逃げ部48を円周方向両側に隣接して形成している。これにより、各逃げ部48が位置する固定プレート40の内周部を潰し加工することで、係止爪49がそれぞれ形成され、係止爪49の数も増加する。
【0025】
固定プレート40をプログレッシブ加工で成形した場合、材料の異方性で係止爪49の設置位置によって係止爪49の成形性が変わる場合がある。このような場合、本実施形態のように、係止爪49を増加することで、それぞれの係止爪49間で係止溝37cからの抜けを補い合うことができる。
また、本実施形態のように、一対の逃げ部48を切り欠き部47に対して隣接して形成することで、逃げ部48を増加しても案内部46の長さを十分に確保することができる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0026】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る軸受装置について、
図5〜
図7を参照して、説明する。
第1実施形態では、各切り欠き部47に対して逃げ部48を円周方向に隣接して形成していたが、本実施形態では、各切り欠き部47と各逃げ部48とは、円周方向に重複して形成されている。
【0027】
具体的に、切り欠き部47は、固定プレート40の内周部の表面44(軸方向一側面)に形成された凹部50によって構成される。ただし、この凹部50からなる切り欠き部47も、
図7に示すように、小径段部37の段差面37bと接触する部分の最外径Dよりも径方向外側に位置する。
【0028】
また、各逃げ部48は、各切り欠き部47と円周方向に重複し、各切り欠き部47の所定の円周方向長さよりも短く形成されている。したがって、保持孔41は、各逃げ部48と、表面44に凹部50が形成された部分の案内部46とが面取り部によって接続される一方、凹部50からなる切り欠き部47と案内部46との間には面取り部はなく、案内部46の円周方向長さをさらに確保することができる。
【0029】
また、切り欠き部47よりも径方向内側には、凹部50の底面から軸方向に突出し、凹部50の周囲の平面(即ち、表面44)と同一の高さを有する凸部51が形成される。これにより、係止爪49を潰し加工によって形成する際に、凸部51がパンチによる押圧力に対するバックアップ面を構成する。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0030】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る軸受装置について、
図8を参照して、説明する。
第3実施形態では、各切り欠き部47を凹部50によって形成して、各切り欠き部47と逃げ部48を円周方向に重複しているが、本実施形態では、各切り欠き部47の円周方向中間部を径方向内側に突出させて、逃げ部48を形成している。したがって、本実施形態でも、逃げ部48は、各切り欠き部47の所定の円周方向長さよりも短く形成されている。
この場合にも、各切り欠き部47と逃げ部48を円周方向に重複しているので、案内部46の長さを十分に確保することができ、また、案内部46、切り欠き部47、及び逃げ部48を備えた保持孔41を一工程で容易にプレス加工することができる。
その他の構成及び作用については、第3実施形態のものと同様である。
【0031】
尚、本発明は、前述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 軸受装置
30 転がり軸受
31 外輪
33 内輪
35 玉(転動体)
37 小径段部
37a 段部外周面
37b 段差面
37c 係止溝
40 固定プレート
41 保持孔
44 固定プレートの表面
45 固定プレートの裏面