(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593151
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】梱包材
(51)【国際特許分類】
B65D 77/26 20060101AFI20191010BHJP
B65D 85/86 20060101ALI20191010BHJP
B65D 5/50 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
B65D77/26 P
B65D85/86
B65D5/50 101B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-247715(P2015-247715)
(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公開番号】特開2017-109787(P2017-109787A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美
(72)【発明者】
【氏名】坂本 明
【審査官】
蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−255975(JP,A)
【文献】
特開平08−198378(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1383396(KR,B1)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0010365(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/26
B65D 5/50
B65D 85/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールを所定形状に打ち抜き、さらに所定形状に折り曲げて形成される梱包材であって、
板状の被梱包物の少なくとも一辺を、段ボールを少なくとも1回折り重ねて形成された側壁部で係合保持するように、前記側壁部の折り重ねられた部分のそれぞれに、前記被梱包物の厚み方向において異なる位置に略矩形のスリットが形成されており、前記それぞれのスリットの短尺方向の寸法は、前記被梱包物の厚みより大きく、前記段ボールを折り重ねたときに前記それぞれのスリットは、短尺方向に一部重複し、前記重複部分の寸法が、前記被梱包物の厚みにほぼ等しくなるように構成されていることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
1枚の段ボールを所定形状に打ち抜き、さらに所定形状に折り曲げて形成される梱包材であって、
板状の被梱包物を保持した状態において、前記被梱包物と略平行となるベース部と、前記ベース部に対して略垂直であって、前記被梱包物を係合保持する、互いに対抗する1組の側壁部とを備え、
前記1組の側壁部はそれぞれ前記段ボールを少なくとも1回折り重ねて形成され、折り重ねられた部分には、それぞれ前記ベース部に対して略垂直な方向において異なる位置に略矩形のスリットが形成されており、前記ベース部に対して略垂直な方向における前記スリットの重複部分の寸法が、前記被梱包物の厚みにほぼ等しくなるように構成されていることを特徴とする梱包材。
【請求項3】
前記ベース部は、第1方向において、前記被梱包物と略等しい幅を有し、前記第1方向に直交する第2方向における前記スリットの長さは、同方向における前記被梱包物の長さに略等しいことを特徴とする請求項2に記載の梱包材。
【請求項4】
前記1組の側壁部は、それぞれ
前記第1方向における前記ベース部の両端部に位置し、前記第1方向に直交する第2方向に平行な第1折り曲げ線に沿って前記ベース部に対して略垂直に折り曲げられ、前記第1方向において第1所定寸法を有する第1側壁と、
前記第1方向における前記第1側壁の前記ベース部とは反対側の端部に位置し、前記第2方向に平行な第2折り曲げ線に沿って前記第1側壁に対して略垂直に折り曲げられ、前記第1方向において前記段ボールの厚みとほぼ等しい第2所定寸法を有するスペーサ部と、
前記第1方向における前記スペーサ部の前記第1側壁とは反対側の端部に位置し、前記第2方向に平行な第3折り曲げ線に沿って前記第1側壁に対して略平行に折り曲げられ、前記第1方向において前記第1所定寸法と略等しい寸法を有する第2側壁と、
前記第1方向における前記第2側壁の前記スペーサ部とは反対側の端部に位置し、前記第2方向に平行な第4折り曲げ線に沿って前記第1側壁に対して略平行に折り曲げられ、前記第1側壁と前記第2側壁の間に挟持され、前記第1の方向において前記第1所定寸法と略等しい寸法を有する第3側壁とを備え、
前記スリットは、それぞれ前記第2側壁及び前記第3側壁に設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の梱包材。
【請求項5】
前記第1方向において、前記第2側壁には、前記第4折り曲げ線を基準として前記第3側壁とは反対側に前記第4折り曲げ線から第3所定寸法だけ離れた位置に、前記第1方向における第5所定寸法、前記第2方向における前記被梱包物の長さとほぼ同じ第6所定寸法を有する略矩形の第1スリットが形成されており、
前記第1方向において、前記第3側壁には、前記第4折り曲げ線を基準として前記第2側壁とは反対側に前記第4折り曲げ線から第4所定寸法だけ離れた位置に、前記第1スリットと略等しい寸法を有する略矩形の第2スリットが形成されており、
前記第2側壁と前記第3側壁を折り重ねた状態で、前記第1方向における前記第1スリットと前記第2スリットの重複する部分の寸法が前記被梱包物の厚みとほぼ等しいことを特徴とする請求項4に記載の梱包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包材、特に、電子部品が実装された回路基板など厚みの薄い板材を梱包するための梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電気機器を梱包するために、例えば特許文献1などに記載されているように、段ボール製の外装箱及び外装箱の内部で電気機器を保持するための段ボール製の梱包材が用いられている。段ボール製の梱包材の場合、抜き型を上下方向に移動させて所定の位置に折り曲げ線を付けたり、所定形状に打ち抜いたりすることが行われている。周知のように、段ボールは、断面が波形になるように形成された中芯を上下からライナーで補強した複合材であり、最も薄いものでも1mm程度、一般的には3〜5mm程度の厚みを有している。また、抜き型に取り付けられた刃が波形に形成された中芯のどの部分を突き抜けるかによって切断条件が変わるため、一定寸法(例えば3mm)より小さい穴又は狭いスリットを打ち抜くことができない。
【0003】
一方、外装箱に収納されて販売等される電気機器の中には、電子部品が実装された回路基板など筐体の内部に固定されていない部品等も含まれる。回路基板の厚みは、一般的には1〜2mm程度である。上記特許文献1では、梱包材の側壁に回路基板の厚みよりも大きな係合孔を形成し、回路基板を包装する樹脂製の緩衝材などによって係合孔と回路基板の隙間を埋めている。
【0004】
一方、最も基本的な従来の梱包材110は、
図5に示すように、例えば外装箱100の内側の高さとほぼ等しい幅を有するベース材(段ボール製)111の上に、複数枚の段ボール片をその厚み方向(図中左右方向)に接着剤で貼り合わせた2つのブロック112を、回路基板101の厚みに合わせた隙間113を空けてさらに接着して形成されている。回路基板101を収納するにあたっては、2つの梱包材110を用いて、隙間113に回路基板101の両端部を差し込み、回路基板101が略水平でベース材111が略垂直になるように、外装箱100の内部に収納する。
【0005】
このような従来の梱包材110は、ブロック112の接着位置を調節することにより様々な厚みの回路基板に対応することができるけれども、製造工程が複雑であり、製造コストが高くなる。さらに、外装箱とは異なり、開梱後に折りたたむことができないため、梱包材110がそのままゴミ箱に投入され、リサイクルされにくいという問題点を有している。
【0006】
そこで、本出願人は、従来の梱包材110の問題点を解決するべく、
図6〜9に示すような改良された従来の梱包材120を提案している。
図6は梱包材120の構成を示す斜視図、
図7は梱包材120の展開図、
図8及び
図9は被梱包物(回路基板101)を保持した状態で梱包材120を外装箱100に収納する手順を示す図である。
【0007】
この梱包材120は、1枚の段ボールを折り曲げて形成され、
図6、
図8及び
図9に示すように、正面視で略H状の断面を有している。
図7は、矢印A方向(裏側)から見た展開図であり、実線は完全切断線、太い破線は表側からの半切断線(山折線)、細い破線は裏側からの半切断線(谷折線)を表す。まず、ベース部121に対して、谷折線121aに沿って第1側壁122を略垂直となるように折り曲げる。次に、山折線122aに沿って第2側壁123を第1側壁122とほぼ重なるように折り曲げる。さらに、山折線123aに沿って第3側壁124を第2側壁123とほぼ重なるように第1側壁122側に折り曲げる。反対側の各側壁についても同様に折り曲げる。そうすると、
図6、
図8及び
図9に示すように、正面断面が略H状の梱包材120が完成する。なお、第1側壁122の一方の端部は第3側壁124よりも内側に位置し、後述するスリット126に回路基板101を差し込む際のストッパ125として機能する。
【0008】
図6、
図8及び
図9からわかるように、第1側壁122の中央部付近の上端面122bは、ベース121の上面(又は谷折線121a)よりも上方に突出しており、第3側壁124の下端面124aに対向している。高さ方向(
図7の左右方向)において、第1側壁122の高さ(谷折線122aから第1側壁122の中央部付近の上端面122bまでの寸法)をH1、第2側壁123の高さ(山折線122aから山折線123aまでの寸法)をH2、第3側壁124の高さ(山折線123aから第3側壁124の下端面124aまでの寸法)をH3とすると、第1側壁122の上端面122bと第3側壁124の下端面124aの間に形成されるスリット126の幅Stは、St=H2−(H1+H3)で表される。これら第1側壁122、第2側壁123及び第3側壁124の寸法を適宜選択することにより、回路基板101の厚みとほぼ同じ幅Stのスリット126を形成することができる。
【0009】
梱包材120を用いて回路基板101を外装箱100の内部に収納する場合、
図6に示すように、ストッパ125とは反対側からスリット126と平行に回路基板101をスリット126に挿入する。その際、
図8(a)に示すように、回路基板101がベース部121と平行になるように、左右両側の側壁122〜124の中央部を2本の指で挟む。そして、その状態のまま、回路基板101を保持した梱包材120を外装箱100の内部に収納する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平08−198378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この梱包材120は、ベース部121が底部ではなく、高さ方向の中央付近に設けられているので、例えば左右両側の側壁122〜124の上端部付近を2本の指で挟むと、側壁122〜124が内側に倒れ込んでしまう。そのため、
図8(a)に示すように、左右両側の側壁122〜124の中央部を2本の指で挟まなければならない。そうすると、
図8(b)に示すように、指が外装箱100の蓋や側壁と干渉するため、少しずつ指をずらさなければならず、作業性があまりよくない。このことは、指の代わりに専用の梱包機械を用いて連続的に作業する場合であっても解決されない。また、取り扱い説明書やその他の付属品などを予め外装箱の底面に載置しておかなければならず、取り扱い説明書などの位置がずれていると、梱包材120の側壁122〜124の下端部と干渉する虞があり、その場合には梱包作業をやり直さなければならなくなる。
【0012】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、段ボールを所定形状に打ち抜き、さらに所定形状に折り曲げて形成される梱包材において、容易に板材の厚みに応じた幅の狭いスリット状の保持部を形成することができ、且つ、回路基板などの被梱包物を安定した状態で保持することができ、外装箱に容易に収納することが可能な梱包材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、発明に係る梱包材は、段ボールを所定形状に打ち抜き、さらに所定形状に折り曲げて形成される梱包材であって、
板状の被梱包物の少なくとも一辺を、段ボールを少なくとも1回折り重ねて形成された側壁部で係合保持するように、前記側壁部の折り重ねられた部分
のそれぞれに、前記被梱包物の
厚み方向において異なる位置に略矩形のスリットが形成されており、前記
それぞれのスリットの短尺方向の寸法は、前記被梱包物の厚みより大きく、前記段ボールを折り重ねたときに前記それぞれのスリット
は、短尺方向に一部重複し、前記重複部分の寸法が、前記被梱包物の厚みにほぼ等しくなるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、発明に係る梱包材は、1枚の段ボールを所定形状に打ち抜き、さらに所定形状に折り曲げて形成される梱包材であって、
板状の被梱包物を保持した状態において、前記被梱包物と略平行となるベース部と、前記ベース部に対して略垂直であって、前記被梱包物を係合保持する、互いに対抗する1組の側壁部とを備え、
前記1組の側壁部はそれぞれ前記段ボールを少なくとも1回折り重ねて形成され、折り重ねられた部分には、それぞれ前記ベース部に対して略垂直な方向において異なる位置に略矩形のスリットが形成されており、前記ベース部に対して略垂直な方向における前記スリットの重複部分の寸法が、前記被梱包物の厚みにほぼ等しくなるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
前記ベース部は、第1方向において、前記被梱包物と略等しい幅を有し、前記第1方向に直交する第2方向における前記スリットの長さは、同方向における前記被梱包物の長さに略等しいことが好ましい。
【0016】
前記1組の側壁部は、それぞれ
前記第1方向における前記ベース部の両端部に位置し、前記第1方向に直交する第2方向に平行な第1折り曲げ線に沿って前記ベース部に対して略垂直に折り曲げられ、前記第1方向において第1所定寸法を有する第1側壁と、
前記第1方向における前記第1側壁の前記ベース部とは反対側の端部に位置し、前記第2方向に平行な第2折り曲げ線に沿って前記第1側壁に対して略垂直に折り曲げられ、前記第1方向において前記段ボールの厚みとほぼ等しい第2所定寸法を有するスペーサ部と、
前記第1方向における前記スペーサ部の前記第1側壁とは反対側の端部に位置し、前記第2方向に平行な第3折り曲げ線に沿って前記第1側壁に対して略平行に折り曲げられ、前記第1方向において前記第1所定寸法と略等しい寸法を有する第2側壁と、
前記第1方向における前記第2側壁の前記スペーサ部とは反対側の端部に位置し、前記第2方向に平行な第4折り曲げ線に沿って前記第1側壁に対して略平行に折り曲げられ、前記第1側壁と前記第2側壁の間に挟持され、前記第1の方向において前記第1所定寸法と略等しい寸法を有する第3側壁とを備え、
前記スリットは、それぞれ前記第2側壁及び前記第3側壁に設けられていることが好ましい。
【0017】
前記第1方向において、前記第2側壁には、前記第4折り曲げ線を基準として前記第3側壁とは反対側に前記第4折り曲げ線から第3所定寸法だけ離れた位置に、前記第1方向における第5所定寸法、前記第2方向における前記被梱包物の長さとほぼ同じ第6所定寸法を有する略矩形の第1スリットが形成されており、
前記第1方向において、前記第3側壁には、前記第4折り曲げ線を基準として前記第2側壁とは反対側に前記第4折り曲げ線から第4所定寸法だけ離れた位置に、前記第1スリットと略等しい寸法を有する略矩形の第2スリットが形成されており、
前記第2側壁と前記第3側壁を折り重ねた状態で、前記第1方向における前記第1スリットと前記第2スリットの重複する部分の寸法が前記被梱包物の厚みとほぼ等しいことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、外装箱に梱包材を収納する際、ベース部が外装箱の底面側に位置し、被梱包物とベース部と1組の側壁で略四角形の断面を構成するので、1組の側壁部の上端部を2本の指で挟持したとしても、1組の側壁部は内側に倒れ込むことはない。そのため、被梱包物を梱包材で安定した状態で保持したまま、外装箱に収納することができる。さらに、被梱包物を保持した状態で梱包材を外装箱の内部に収納する際、指を少しずつずらす必要がなくなり、作業性が向上する。さらに、側壁部に形成されるスリットの位置をベース部に垂直な方向にずらすことによって、例えば段ボールの厚みよりも狭い所望する幅を有するスリットを簡単に形成することができるので、様々な厚みの板状の被梱包物を梱包することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る梱包材の構成を示す斜視図。
【
図3】上記実施形態に係る梱包材を外装箱に収納する手順を示す図。
【
図4】上記実施形態に係る梱包材を外装箱に収納する手順の続きを示す図。
【
図5】最も基本的な従来の梱包材の構成を示す正面断面図。
【
図6】改良された従来の梱包材の構成を示す斜視図。
【
図8】改良された従来の梱包材を外装箱の収納する手順を示す図。
【
図9】改良された従来の梱包材を外装箱に収納する手順の続きを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る梱包材について、
図1〜
図4を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る梱包材1の構成を示す斜視図、
図2は梱包材1の展開図、
図3及び
図4は被梱包物(回路基板101)を保持した状態で梱包材1を外装箱100に収納する手順を示す図である。
【0021】
本実施形態に係る梱包材1は、1枚の段ボールを所定形状に打ち抜き、さらに所定形状に折り曲げて形成される梱包材であって、略矩形板状のベース部11と、ベース部11に対して略垂直な互いに対抗する1組の側壁部12を有している。この実施形態では、側壁部12は段ボールを2回折り重ねて形成された3枚重ね構造である。
図2に示すように、板状の被梱包物である回路基板101を保持した状態において、ベース部11は回路基板101と略平行となる。1組の側壁部12は、ベース部11に対して略垂直な状態において回路基板101の両端部と係合し、回路基板101を略水平に保持する。
【0022】
図2の展開図は、
図1における矢印B方向(裏側)から見た状態を示し、実線は完全切断線、破線は裏側からの半切断線(谷折線))を示す。ベース部11は、切断される段ボール片の中央部に位置し、第1方向(図中横方向)における寸法Wは、同方向における回路基板101の幅とほぼ同じである。1組の側壁部12は、それぞれ第1方向においてベース部11の両側に配置されており、それぞれ同じ方向(内側)に折り曲げられる第1側壁13、スペーサ部14、第2側壁15及び第3側壁16を備えている。
【0023】
第1側壁13は、第1方向におけるベース部11の両端部に位置し、第1方向に直交する第2方向(図中上下方向)に平行な第1折り曲げ線21に沿ってベース部11に対して略垂直に折り曲げられる。第1方向における第1側壁13の寸法Hは、外装箱100の内側の収納スペースの高さと略等しい第1所定寸法を有している。第1所定寸法は、段ボールの折り曲げ方向の内側を基準にする場合、段ボール厚みを考慮して外装箱100の内側の収納スペースの高さよりも少し小さくする。スペーサ部14は、段ボールの厚みを考慮したものであり、第1方向において段ボールの厚みとほぼ等しい第2所定寸法Tを有しており、第1方向における第1側壁13のベース部11とは反対側の端部に配置されている。スペーサ部14は、第2方向に平行な第2折り曲げ線22に沿って第1側壁13に対して略垂直に折り曲げられ、ベース部11と略平行となる。第2側壁15は、第1方向におけるスペーサ部14の第1側壁13とは反対側の端部に位置し、第2方向に平行な第3折り曲げ線23に沿って第1側壁13に対して略平行に折り曲げられる。第2側壁15は、第1方向において上記第1所定寸法Hと略等しい寸法H’を有している。第3側壁16は、第1方向における第2側壁15のスペーサ部14とは反対側の端部に位置し、第2方向に平行な第4折り曲げ線24に沿って第1側壁13に対して略平行に折り曲げられ、第1側壁13と第2側壁15の間に挟持される。第3側壁16は、第1方向において上記第1所定寸法Hと略等しい寸法H”を有している。
【0024】
この梱包材1の組み立ては、
図2において、両端部の第3側壁16をそれぞれ第4折り曲げ線24に沿って谷折りし、第2側壁15に折り重ねる。次に、折り重ねられた第2側壁15及び第3側壁16を第3折り曲げ線23に沿って谷折りする。そうすると、第3側壁16がスペーサ部14の上に略垂直な状態で位置する。その状態で、折り重ねられた第2側壁15及び第3側壁16を第2折り曲げ線22に沿って谷折りする。そうすると、第2側壁15及び第3側壁16が第1側壁13の上に折り重ねられる。最後に、3枚重ねに折り重ねられた第1側壁13、第2側壁15及び第3側壁16を第1折り曲げ線21に沿って谷折りする。このように段ボールを折り重ねて形成された1組の側壁部12は段ボール3枚分の厚みを有しているため、
図1に示すように折り曲げた状態からそれ以上内側に倒れ込んでしまうことはなく、1組の側壁部12はそれぞれベース部11に対して略垂直になる。
【0025】
ベース部11に対して図中左右方向にそれぞれ配置された2つの第2側壁15には、それぞれ第2方向に細長い略矩形の第1スリット17が形成され、同様に2つの第3側壁16には第2方向に細長い略矩形の第2スリット18が形成されている。この実施形態では、2つの第1スリット17及び2つの第2スリット18はそれぞれ同一寸法であり、また第1スリット17と第2スリット18もそれぞれ同一寸法である。第1方向における第1スリット17及び第2スリット18の幅Sw(第5所定寸法)は、例えば段ボールの厚みに応じて開口可能な最小寸法又はその最小寸法に対して多少余裕を持たせた寸法である。一方、第2方向における第1スリット17及び第2スリット18の長さL(第6所定寸法)は、同方向における被梱包物である回路基板101の長さとほぼ同じである。但し、被梱包物である回路基板101が平面視で四角形ではなく、切り欠きなどが形成され左右側辺の長さが異なる場合、回路基板101の形状に合わせて、第2方向における左右の第1スリット17と第2スリット18の寸法を変えることはいうまでもない。
【0026】
また、第1方向において、第2側壁15の第1スリット17は、第4折り曲げ線24を基準として第3側壁16とは反対側に第4折り曲げ線24から第3所定寸法T1だけ離れた位置に形成されている。同様に、第3側壁16の第2スリット18は、第4折り曲げ線24を基準として第2側壁15とは反対側に第4折り曲げ線24から第4所定寸法T2だけ離れた位置に形成されている。ここで、第3所定寸法T1と第4所定寸法T2は異なる値であり、第2側壁15と第3側壁16を折り重ねた状態で、第1方向における第1スリット17と第2スリット18の重複部分の寸法が被梱包物である回路基板101の厚みとほぼ等しくなるように設定されている。回路基板101の厚みをtとすると、t≒Sw−|(T1−T2)|となる。
【0027】
次に、この梱包材1を用いて回路基板101を外装箱100に梱包する手順について説明する。
図1に示すように、左右両側の第1側壁13、第2側壁15及び第3側壁16を折り重ねて側壁部12をベース部11に対して略垂直となるように形成する。次に、
図3(a)に示すように、左右いずれか一方又は両方の側壁部12を外側に拡げて、回路基板101の側部101aを一方の側壁部12の第1スリット17及び第2スリット18に挿入する。第1スリット17及び第2スリット18は、ベース部11に対して略垂直な方向における位置がずれているので、第1スリット17と第2スリット18の重複部分の幅は、上記のように回路基板101の厚みと略等しくなり、回路基板101の側部を係合保持することができる。その際、スリットが形成されていない第1側壁13が回路基板101の側部101aのストッパとして機能する。回路基板101の反対側の側部101bを他方の側壁部12の第1スリット17及び第2スリット18に挿入することにより、
図3(b)に示すように、1組の側壁部12の間に回路基板101を係合保持することができる。また、梱包材1で回路基板101を係合保持した状態では、回路基板101とベース部11と1組の側壁部12で略四角形の断面を構成し、さらに1組の側壁部12をそれぞれ構成する左右の第2側壁15及び第3側壁16がそれぞれベース部11の上面と当接している。そのため、1組の側壁部12の上端部を2本の指で挟持したとしても、側壁部12が内側に倒れ込むことはない。
【0028】
このように、1組の側壁部12の上端部を2本の指で挟持した状態で、
図4(a)に示すように、外装箱100の内部に回路基板101を保持した梱包材1を挿入することができる。その際、外装箱100の蓋と指が干渉しないので、指を少しずつずらす必要が無くなり、梱包作業をスムーズに行うことができる。さらに、梱包材1を外装箱100の内部に収納した状態で、ベース部11が外装箱100の底面と対向し、ほぼ全面で接触しているので、外装箱100の底面を補強する効果が得られる。さらに、取り扱い説明書102やその他の付属品などを予めベース部11上に載置しておくことができ、梱包作業をスムーズに行うことができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態では、第3側壁16で回路基板101の下面を支持し、第2側壁15で回路基板101の上面を支持するように構成しているが、第2側壁15で回路基板101の下面を支持し、第3側壁16で回路基板101の上面を支持するように構成してもよい。後者の場合、平面視で第2側壁15と重複する範囲にも回路基板101の上面の側端部付近に導電体パターンなどを配置することができ、回路基板101のデッドスペースを小さくすることができる。また、回路基板101の構造や導電体パターンなどに応じて、一方の側部101aでは、第3側壁16で回路基板101の下面を支持し、第2側壁15で回路基板101の上面を支持し、他方の側部101bでは、第2側壁15で回路基板101の下面を支持し、第3側壁16で回路基板101の上面を支持するように構成してもよい。さらに、上記実施形態では、ベース部11と1組の側壁部12を一体化した例を示したが、上記ベース部11も必ずしも必要ではなく、梱包材1が2つ以上の片に分離されていてもよい。例えば、板状の被梱包物の一辺を、段ボールを少なくとも1回折り重ねて形成された1組の側壁部で係合保持するように、折り重ねられた部分には、それぞれ被梱包物の板状部に対して略垂直な方向において異なる位置に略矩形のスリットが形成されており、同方向における前記スリットの重複部分の寸法が、前記被梱包物の厚みにほぼ等しくなるように構成されていればよく、折り重ね回数は特に限定されない。それによって、
図5に示す従来の梱包材110と同様の梱包材を、接着剤を用いて段ボール片を貼り合わせることなく実現することができる。また、スリットが形成されていない上記第1側壁13も、必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0030】
1 梱包材
11 ベース部
12 側壁部
13 第1側壁
14 スペーサ部
15 第2側壁
16 第3側壁
17 第1スリット
18 第2スリット
21 第1折り曲げ線
22 第2折り曲げ線
23 第3折り曲げ線
24 第4折り曲げ線
100 外装箱
101 回路基板(板状の被梱包物)
102 取り扱い説明書
W 第1方向におけるベース部の幅(被梱包物の幅)
H 第1側壁の寸法(第1所定寸法、外装箱収納スペースの高さと略等しい寸法)
T 第1方向におけるスペーサ部の寸法(第2所定寸法、段ボールの厚みと略等しい寸法)
H’ 第1方向における第2側壁の寸法(第1所定寸法に略等しい寸法)
H” 第1方向における第3側壁の寸法(第1所定寸法に略等しい寸法)
T1 第4折り曲げ線から第1スリットまでの距離(第3所定寸法)
T2 第4折り曲げ線から第2スリットまでの距離(第4所定寸法)
Sw 第1方向における第1及び第2スリットの幅(第5所定寸法)
L 第2方向における第1及び第2スリットの長さ(第6所定寸法:被梱包物の長さ)
t 回路基板(被梱包物)の厚み