(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱交換部、及び前記拘束枠の少なくとも一方には、前記第1の貫通孔と対向する位置に、前記拘束部材が貫通する第2の貫通孔が形成されている、請求項1に記載の化学蓄熱反応器。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1乃至
図11にしたがって、本発明の第1実施形態に係る化学蓄熱システム10を説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0022】
(全体構成)
図1(A)、(B)に示すように、本実施形態に係る化学蓄熱システム10は、水の蒸発、水蒸気(反応媒体の一例)Wの凝縮が行われる蒸発凝縮器12と、化学蓄熱反応器の一例としての反応器20と、蒸発凝縮器12と反応器20とを連通する連通路14とを含んで構成されている。
【0023】
(蒸発凝縮器)
蒸発凝縮器12は、貯留した水を蒸発させて反応器20に供給する(水蒸気Wを生成する)蒸発部、反応器20から受け取った水蒸気Wを凝縮する凝縮部、及び水蒸気Wが凝縮された水を貯留する貯留部、としての各機能を備えている。
【0024】
また、蒸発凝縮器12は、内部に水が貯留される容器16を備えており、この容器16内には、水蒸気Wを凝縮する、又は水を蒸発するのに用いる熱媒流路17の一部が配置されている。さらに、熱媒流路17は、容器16内における少なくとも気相部16Aを含む部分で熱交換を行うように配置されている。そして、凝縮時には低温媒体、蒸発時には中温媒体が、熱媒流路17を流れるようになっている。
【0025】
(連通路)
連通路14は、蒸発凝縮器12(容器16)と反応器20(後述する反応容器22)との連通、非連通を切り替えるための開閉弁19を備えている。そして、容器16、反応容器22、連通路14、及び開閉弁19は、互いの接続部位が気密に構成されており、これらの内部空間が予め真空脱気されている。
【0026】
(反応器20)
反応器20は、
図2に示すように、反応容器22と、反応容器22の内部に配置されて発熱又は蓄熱する蓄熱材反応部30と、蓄熱材反応部30に積層されている熱交換部の一例としての熱流動部50と備えている。そして、蓄熱材反応部30と熱流動部50とを含んで積層体60が構成され、この積層体60は、反応容器22内に複数積層されており、本実施形態では、積層体60を複数積層したものを積層ユニット90と呼んでいる。
【0027】
(反応容器)
反応容器22は、直方体状とされ、上方側が開放される箱状の本体部22Aと、蓋部材22Bとを備えている。そして、反応容器22の内部は、水蒸気(反応媒体の一例)が流れる反応媒体流動部26とされ、前述したように内部が真空脱気されている。
【0028】
(積層ユニットにおける蓄熱材反応部の全体構成)
蓄熱材反応部30は、反応容器22の内部に封入され、
図3に示すように、蓄熱材層32と、蓄熱材層32に上方側から積層されるフィルタ34と、フィルタ34に上方側から積層される反応媒体拡散層36とを備えている。
【0029】
そして、蓄熱材層32、フィルタ34、及び反応媒体拡散層36は、装置上下方向から見て同様の矩形状とされ、本実施形態においては、装置上下方向に並んで非接合状態(溶接などで固定されていない状態)で積層されている(所謂積層構造)。
【0030】
(蓄熱材反応部の蓄熱材層の構成)
蓄熱材層32は、
図4(A)、(B)に示されるように、ブロック状の蓄熱材成形体40と、蓄熱材成形体40が内部に配置される枠状の拘束枠の一例としてのフレーム部材44とを備えている。
【0031】
蓄熱材成形体40には、一例として、アルカリ土類金属の酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO:蓄熱材の一例)の成形体が用いられている。この成形体は、例えば、酸化カルシウム粉体をバインダ(例えば粘土鉱物等)と混練し、焼成することで、略矩形ブロック状に形成されている。
【0032】
ここで、蓄熱材成形体40は、水和に伴って膨張して放熱(発熱)し、脱水に伴って蓄熱(吸熱)するものであり、以下に示す反応で放熱、蓄熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0033】
CaO + H2O ⇔ Ca(OH)2
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
CaO + H2O → Ca(OH)2 + Q
Ca(OH)2 + Q → CaO + H2O
となる。
【0034】
なお、一例として、蓄熱材成形体40の1kg当たりの蓄熱容量は、1.86[MJ/kg]とされている。
【0035】
また、本実施形態において、蓄熱材成形体40を構成する蓄熱材の粒径とは、蓄熱材が粉体の場合はその平均粒径、粒状の場合は造粒前の粉体の平均粒径とする。これは、粒が崩壊する場合、前工程の状態に戻ると推定されるためである。
【0036】
また、フレーム部材44は、装置上下方向から見て矩形枠状とされており、蓄熱材成形体40は、フレーム部材44内に配置されるようになっている。これにより、蓄熱材成形体40における水平方向(板厚方向に対して直交する直交方向)の動きは、フレーム部材44によって拘束されるようになっている。そして。フレーム部材44の装置上下方向の寸法(厚み寸法)は、水和反応に伴って蓄熱材成形体40が膨張した際の密度が、予め決められた蓄熱材成形体40の設定密度になるように決められている。
【0037】
フレーム部材44の装置幅方向に延びる一対の板部材44Aにおいて、装置幅方向の両端側の部分には、後述するボルト110が締め込まれるネジ穴45が、外側を向いて形成されている。
【0038】
(蓄熱材反応部、フィルタ)
フィルタ34は、
図3に示すように、反応媒体拡散層36と蓄熱材層32との間に挟まれ、一例としてφ200〔μm〕の微小貫通孔(図示せず)が、フィルタ全面に多数形成されたエッチングフィルターである。
【0039】
そして、フィルタ34は、蓄熱材成形体40(
図4参照)を構成する蓄熱材の平均粒径より小さいろ過精度を有している。これにより、フィルタ34は、蓄熱材成形体40を構成する蓄熱材の平均粒径より小さい流路を水蒸気が通過するのを許容する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限するようになっている。
【0040】
なお、ろ過精度とは、ろ過効率が50〜98%となる粒子径のことであり、ろ過効率とは、ある粒子径の粒子に対する除去効率である。
【0041】
(蓄熱材反応部の反応媒体拡散層)
反応媒体拡散層36は、
図5(A)に示すように、矩形状の天板37と、天板37に固定される複数の流路部材38とを備えている。流路部材38は、水蒸気が流れる装置幅行方向に延び、装置奥行方向に間隔をあけて並んでいる(
図5(B)参照)。
【0042】
夫々の流路部材38は、
図5(B)に示すように、天板37に対して下方側に配置され、装置幅方向から見てフィルタ34(
図3参照)側が開放されたU字状とされている。そして、上壁38Bが天板37の下面に溶接されている。
【0043】
これにより、流路部材38の内側、及び隣り合う流路部材38の間に、蓄熱材層32の
蓄熱材成形体40へ供給される水蒸気、又は蓄熱材層32の蓄熱材成形体40から排出される水蒸気が装置幅方向に沿って流れるようになっている。
【0044】
(熱流動部)
熱流動部50は、
図3に示すように、下方側から蓄熱材反応部30に積層されている。熱流動部50は、
図6(A)、(B)に示すように、装置上下方向から見て矩形状の本体部52を備えている。また、本体部52の内部には、熱媒体が流れる流路54が、本体部52の側壁に沿うように形成されている。そして、流路54の両方の流路端54A、54Bは、本体部52において、装置奥行方向の手前側を向いた側面52Aで開放されている。また、一方の流路端54Aと、他方の流路端54Bとは、装置幅方向に並んでいる。
【0045】
図7に示すように、蓄熱材反応部30と熱流動部50とを含む積層体60は、直方体状とされ、反応器20には、積層体60が、積層体60の積層方向(本実施形態では装置上下方向)に3個積層されている。そして、本実施形態では、3個の積層体60によって積層ユニット90が構成されている。
【0046】
(熱媒体流路)
熱媒が流れる熱媒体流路70は、
図1、及び
図8に示すように、反応容器22を構成する蓋部材22Bを貫通するように装置上下方向に延びる一対の配管70A、70Bと、配管70A、70Bと熱流動部50の流路54とを連通させる複数の連通部材70Cとを備えている。
【0047】
具体的には、連通部材70Cが、間隔をあけて配管70A、70Bに取り付けられている。そして、夫々の連通部材70Cが、図示せぬ固定具を用いて、流路端54A、54Bに取り付けられることで、配管70A、70Bと熱流動部50の流路54とが連通するようになっている。
【0048】
(他の部材)
図7、及び
図8に示すように、積層ユニット90は、積層ユニット90を構成する反応媒体拡散層36、フィルタ34、蓄熱材層32、及び熱流動部50の装置上下方向の位置ずれを拘束する上下方向位置ずれ抑制機構100と、積層ユニット90の捻じれを抑制する捻じれ抑制機構140と、
図3、及び
図10に示す水平方向位置ずれ抑制機構(面方向位置ずれ抑制機構)198とを備えている。
【0049】
図2に示すように、積層ユニット90の下側には、積層ユニット90を下方から支持する円柱状の4個(
図2では2個のみ示す)の支持部材72が設けられている。
【0050】
(上下方向位置ずれ抑制機構)
図7、及び
図8に示すように、上下方向位置ずれ抑制機構100は、装置上下方向(積層方向)に延びる4個の連結部材の一例としての柱部材102と、積層ユニット90を装置上下方向から挟む一対の挟持プレート106と、ボルト110とを備えている。
【0051】
夫々の柱部材102は、断面矩形状とされ、積層ユニット90の四隅に配置されている。そして、2個の柱部材102で、積層ユニット90の装置幅方向の一方側(図中左側)の部分が装置奥行方向から挟まれ、他の2個の柱部材102で、積層ユニット90の装置幅方向の他方側(図中右側)の部分が装置奥行方向から挟まれるようになっている。
【0052】
さらに、夫々の柱部材102には、装置上下方向において間隔をあけて複数の貫通孔102Aが形成されている。
【0053】
また、一対の挟持プレート106は、装置上下方向から見て、積層ユニット90と同様の外形とされ、矩形状とされている。そして、夫々の挟持プレート106の装置奥行方向を向いた端面106Aにおいて装置幅方向の両端側の部分には、後述するボルト110が締め込まれるネジ穴108が形成されている。また、フレーム部材44の装置幅方向に延びる一対の板部材44Aにおいて、装置幅方向の両端側の部分には、後述するボルト110が締め込まれるネジ穴45が形成されている(
図4(B)参照)。
【0054】
具体的には、ネジ穴108は、挟持プレート106の四隅側に形成され、ネジ穴45は、フレーム部材44の四隅側に形成されている。
【0055】
この構成において、ボルト110を柱部材102の貫通孔102Aに通してフレーム部材44(蓄熱材層32)のネジ穴45に締め込む。これにより、夫々の蓄熱材層32の間に積層されている各部材について、蓄熱材成形体40が膨張した際に、積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。なそ、積層方向の間隔とは、積層方向のピッチであって、一の部材の中央部と、一の部材の隣りに配置されている部材の中央部との距離である。
【0056】
また、ボルト110を柱部材102の貫通孔102Aに通して挟持プレート106のネジ穴108に締め込む。これにより、最も上方側に配置されている蓄熱材層32と上方側の挟持プレート106との間の反応媒体拡散層36について、蓄熱材成形体40が膨張した際に、積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。さらに、最も下方側に配置されている蓄熱材層32と下方側の挟持プレート106との間の熱流動部50について、蓄熱材成形体40が膨張した際に、積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。
【0057】
具体的には、
図9、乃至
図11に示すように、夫々の挟持プレート106及び蓄熱材層32のフレーム部材44は、ボルト110を介して柱部材102に取り付けられている(連結されている)。
【0058】
さらに、最も上方側に配置されている蓄熱材層32と上方側の挟持プレート106との間に挟まれている反応媒体拡散層36は、下面の外周部分が蓄熱材層32のフレーム部材44と装置上下方向で接触し、上面が挟持プレート106と接触している。このため、蓄熱材成形体40が膨張した際に、反応媒体拡散層36と蓄熱材層32との積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。
【0059】
また、最も上方側に配置されている蓄熱材層32と上方側から二番目に配置されている蓄熱材層32と間に挟まれている熱流動部50及び反応媒体拡散層36は、上面及び下面の外周部分が蓄熱材層32のフレーム部材44と装置上下方向で接触している。このため、蓄熱材成形体40が膨張した際に、各部材の積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。
【0060】
さらに、上方側から二番目に配置されている蓄熱材層32と最も下方側に配置されている蓄熱材層32と間に挟まれている熱流動部50及び反応媒体拡散層36は、上面及び下面の外周部分が蓄熱材層32のフレーム部材44と装置上下方向で接触している。このため、蓄熱材成形体40が膨張した際に、各部材の積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。
【0061】
また、最も下方側に配置されている蓄熱材層32と下方側の挟持プレート106との間に挟まれている熱流動部50は、上面の外周部分が蓄熱材層32のフレーム部材44と装置上下方向で接触し、下面が挟持プレート106と接触している。このため、蓄熱材成形体40が膨張した際に、熱流動部50と蓄熱材層32との積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。
【0062】
さらに、柱部材102は、フレーム部材44の四隅側でフレーム部材44と連結されるようになっている。これにより、柱部材102が、フレーム部材44の一箇所だけでフレーム部材44と連結されている場合と比して、蓄熱材成形体40が膨張した際に、各部材の積層方向の間隔が変化しまうのが抑制されるようになっている。
【0063】
(捻じれ抑制機構)
図9に示すように、捻じれ抑制機構140は、装置上下方向から見て、柱部材102を外側から囲み、柱部材102の相対位置関係の変化を制限する押付部材の一例としての拘束ベルト144を備えている。
【0064】
拘束ベルト144は、3個設けられている。そして、柱部材102を拘束する前の状態で、
図8に示すように、夫々の拘束ベルト144は、装置奥行方向に分割されている。具体的には、拘束ベルト144は、装置奥行方向の手前側(図中左側)の分割部材144Aと、装置奥行方向の奥側(図中右側)の分割部材144Bとに分割されるようになっている。
【0065】
分割部材144A、144Bは、装置上下方向から見て、互いに対向する側が開放された形状とされている。そして、分割部材144Aの両端側の部分には、台形状の凸部146が夫々形成され、分割部材144Bの両端側の部分には、凸部146と係合する短辺が開放された台形状の溝部148が夫々形成されている。
【0066】
この構成において、
図9に示すように、分割部材144Aの凸部146と、分割部材144Bの溝部148とを係合させる。これより、拘束ベルト144は、4個の柱部材102を外側から囲み、夫々の柱部材102を積層ユニット90に押し付けるようになっている。これより、拘束ベルト144は、柱部材102の相対位置関係の変化を制限するようになっている。
【0067】
(水平方向位置ずれ抑制機構)
水平方向位置ずれ抑制機構198は、フィルタ34の面方向、言い換えれば、積層方向と交差する方向(水平方向)のずれ、即ち、フィルタ34と蓄熱材層32との積層方向と交差する方向の相対的なずれを抑制するものである。
図3、及び
図10に示すように、水平方向位置ずれ抑制機構198は、積層ユニット90の積層体60を積層方向に貫通する断面矩形状とされた角柱状の拘束部材200を備えている。拘束部材200は、金属等の耐熱性の高い部材で形成されている。
【0068】
図3に示すように、蓄熱材層32には、フレーム部材44の四隅付近に拘束部材200を挿通させる貫通孔204が形成されている。
フィルタ34には、四隅付近に拘束部材200を挿通させる矩形の貫通孔202が形成されている。
反応媒体拡散層36には、四隅付近に拘束部材200を挿通させる貫通孔206が形成されている。
また、熱流動部50には、四隅付近に拘束部材200を挿通させる貫通孔208が形成されている。
【0069】
図3、及び
図10に示すように、拘束部材200は、蓄熱材層32の貫通孔204、フィルタ34の貫通孔202、反応媒体拡散層36の貫通孔206、及び熱流動部50の貫通孔208を貫通しているため、これら蓄熱材層32、フィルタ34、反応媒体拡散層36及び熱流動部50は、拘束部材200の長手方向と交差する方向である水平方向、言い換えれば、積層方向と交差する方向に相対移動できないように拘束される。
【0070】
なお、フィルタ34の貫通孔202と拘束部材200との間には、粉体化した蓄熱材が漏れ出ないように出来る限り隙間を生じさせないことが好ましく、貫通孔202と拘束部材200とを密着させておくことが好ましい。
【0071】
図10に示すように、拘束部材200の長手方向両端には、挟持プレート106に形成された孔210を貫通したボルト212が捩じ込まれる螺子孔(雌螺子)214が形成されている。積層ユニット90を貫通した拘束部材200の上端は上側の挟持プレート106の下面に当接しており、該挟持プレート106に形成された孔210を貫通したボルト212が螺子孔214に捩じ込まれることで、拘束部材200が上側の挟持プレート106に固定されている。
【0072】
また、積層ユニット90を貫通した拘束部材200の下端は下側の挟持プレート106の上面に当接しており、該挟持プレート106に形成された孔210を貫通したボルト212が螺子孔214に捩じ込まれることで、拘束部材200が下側の挟持プレート106に固定されている。
【0073】
(化学蓄熱システムの作用、効果)
次に、化学蓄熱システム10の作用、効果について説明する。
化学蓄熱システム10において反応器20に蓄熱された熱を蓄熱材層32から発熱(放熱)させる際には、
図1(B)に示すように、切替部材76により熱媒体流路70の連通先が熱利用対象物96に切り替えられる。さらに、開閉弁19を開放し、この状態で、蒸発凝縮器12の熱媒流路17に中温媒体を流し、液相部16Bの水を蒸発させる。そして、生成された水蒸気Wが連通路14内を矢印D方向に移動して、反応容器22内に供給される。
【0074】
続いて、反応容器22内では、供給された水蒸気Wが反応媒体流動部26を通り、反応媒体拡散層36を流れる。そして、水蒸気Wがフィルタ34を通過して蓄熱材層32の蓄熱材成形体40と接触することにより、蓄熱材層32の蓄熱材成形体40は、水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。この熱は、熱流動部50の流路54内を流れる熱媒体によって、熱利用対象物96に輸送される。
【0075】
一方、化学蓄熱システム10において蓄熱材層32の蓄熱材成形体40に熱を蓄熱させる際には、
図1(A)に示すように、切替部材76により熱媒体流路70の連通先が熱源94に切り替えられる。さらに、開閉弁19を開放し、この状態で、熱流動部50の流路54内に熱源94によって加熱された熱媒体が流れる。そして、流路54を流れる熱媒体の熱によって蓄熱材成形体40が脱水反応を生じ、この熱が蓄熱材成形体40に蓄熱される。
【0076】
さらに、蓄熱材成形体40から離脱された水蒸気Wは、フィルタ34から反応媒体拡散層36に流れ込む。反応媒体拡散層36に流れ込んだ水蒸気Wは、反応媒体流動部26を通り、
図1(A)に示すように、連通路14を矢印E方向に流れて蒸発凝縮器12内に流れ込む。
【0077】
そして、蒸発凝縮器12の気相部16Aにおいて、熱媒流路17を流れる冷媒によって水蒸気Wが冷却され、凝縮された水が容器16の液相部16Bに貯留される。
【0078】
本実施形態の積層ユニット90においては、前述したように、ボルト110が柱部材102の貫通孔102Aに通されてフレーム部材44(蓄熱材層32)のネジ穴45に締め込まれている。これにより、蓄熱材成形体40が膨張した際に、蓄熱材層32と蓄熱材層32との間に積層されている各部材の積層方向の間隔が変化しまうのを抑制することができ、蓄熱材反応部30と熱流動部50との間での熱交換効率が低下するのを抑制することができる。
【0079】
積層ユニット90においては、ボルト110が柱部材102の貫通孔102Aに通されて挟持プレート106のネジ穴108に締め込まれている。これにより、挟持プレート106と蓄熱材層32との間の各部材について、蓄熱材成形体40が膨張した際に、積層方向の間隔が変化しまうのを抑制することができ、蓄熱材反応部30と熱流動部50との間での熱交換効率が低下するのを抑制することができる。
【0080】
また、積層ユニット90においては、拘束ベルト144が柱部材102を外側から囲むことで、夫々の柱部材102が積層ユニット90に押し付けられている。これより、拘束ベルト144は、蓄熱材成形体40が膨張した際に、柱部材102の相対位置関係の変化を制限することができ、蓄熱材成形体40が膨張した際に、積層方向(装置上下方向)を軸とした積層ユニット90の捻じれを抑制することができる。そして、積層ユニット90の捻じれが抑制されることで、蓄熱材反応部30と熱流動部50との間での熱交換効率が低下するのを抑制することができる。
【0081】
さらに、積層ユニット90においては、挟持プレート106に固定され、蓄熱材層32、反応媒体拡散層36、及び熱流動部50を貫通した拘束部材200が、フィルタ34の貫通孔204を貫通しているので、フィルタ34は、蓄熱材層32に対して水平方向にずれることが抑制され、蓄熱材層32のフレーム部材44に密着した状態でフレーム部材44の内側に配置された蓄熱材成形体40を常に覆うことができる。
【0082】
ところで、蓄熱材層32の蓄熱材成形体40を覆っているフィルタ34が水平方向にずれ、蓄熱材成形体40が露出すると、蓄熱材成形体40が粉体化している場合、粉体化した蓄熱材が、蓄熱材層32のフレーム部材44と反応媒体拡散層36との間を介して積層ユニット90の外側へ漏れ出る虞がある。蓄熱材層32から蓄熱材が漏れ出て、蓄熱材の密度や蓄熱材の量が減ると、蓄熱材反応部30と熱流動部50との間での熱交換効率が低下してしまう虞がある。
【0083】
しかしながら、本実施形態のようにフィルタ34が、蓄熱材層32のフレーム部材44に密着した状態でフレーム部材44の内側に配置された蓄熱材成形体40の全体を常に覆っていれば、仮に蓄熱材が粉体化しても、蓄熱材の漏れは抑制される。したがって、フィルタ34が水平方向にずれることを抑制することで、蓄熱材反応部30と熱流動部50との間での熱交換効率が低下するのを抑制することができる。
【0084】
このように、本実施形態の反応器20においては、各部材の積層方向の間隔が変化してしまうのが抑制されること、及び蓄熱材の漏れが抑制されることで、熱損失を抑制することができるので、本実施形態の化学蓄熱システム10は、効率的な高性能なものとなる。
【0085】
[第2実施形態]
次に、
図12、及び
図13にしたがって、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0086】
図12に示すように、本実施形態の水平方向位置ずれ抑制機構198は、積層体60の中央部を貫通する円柱状の拘束部材216を備えている。
図12、及び
図13に示すように、蓄熱材層32においては、フレーム部材44の中央部を横断する横断部44Bが設けられており、この横断部44Bの中央部に拘束部材216を挿通させる貫通孔218が形成されている。
なお、横断部44Bの厚さは、フレーム部材44の矩形の外周部分の厚さと同じ厚さであり、フレーム部材44、及び横断部44Bの上面は、積層したフィルタ34に密着する。
【0087】
また、蓄熱材層32においては、フレーム部材44の内側の形状に合わせた2つの蓄熱材成形体40が配置されている。
【0088】
フィルタ34には、中央部に拘束部材216を挿通させる矩形の貫通孔222が形成されている。
反応媒体拡散層36には、中央部に拘束部材216を挿通させる貫通孔224が形成されている。
また、熱流動部50には、中央部に拘束部材216を挿通させる貫通孔226が形成されている。
【0089】
拘束部材216の両端には、拘束部材216を挟持プレート106(
図12では図示せず)に固定するためのボルト212(
図12では図示せず)が捩じ込まれる螺子孔(雌螺子)228が形成されており、該挟持プレート106に形成された孔(
図12では図示せず)を貫通したボルト212が螺子孔228に捩じ込まれることで、拘束部材216が挟持プレート106に固定される。
【0090】
本実施形態では、拘束部材216が、蓄熱材層32の横断部44Bの貫通孔218、フィルタ34の貫通孔222、反応媒体拡散層36の貫通孔224、及び熱流動部50の貫通孔226を貫通している。このため、拘束部材216は、これら蓄熱材層32、フィルタ34、反応媒体拡散層36及び熱流動部50を、拘束部材216の長手方向と交差する方向である水平方向、言い換えれば、積層方向と交差する方向に相対移動できないように拘束することができる。
【0091】
本実施形態では、拘束部材216が1本であるため、拘束部材200を4本用いた第1実施形態に比較して部品点数を少なくすることができる。
なお、その他の、作用効果は第1の実施形態と同様である。
【0092】
[第3実施形態]
次に、
図14にしたがって、本発明の第3実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0093】
図14に示すように、本実施形態の水平方向位置ずれ抑制機構198は、第2の実施形態の円柱状の拘束部材216に代えて、円筒状の拘束部材230を用いている。
拘束部材230の両端には、拘束部材230を挟持プレート106(
図14では図示せず)に固定するためのボルト212(
図14では図示せず)が捩じ込まれる螺子孔(雌螺子)232が形成されており、該挟持プレート106に形成された孔(
図14では図示せず)を貫通したボルト212が螺子孔232に捩じ込まれることで、拘束部材230が挟持プレート106に固定される。
【0094】
また、本実施形態の蓄熱材層32においては、蓄熱材成形体40の中央に、拘束部材230を貫通させる貫通孔234が形成されている。
【0095】
本実施形態では、拘束部材230は、蓄熱材層32の蓄熱材成形体40の貫通孔234、フィルタ34の貫通孔236、反応媒体拡散層36の貫通孔238、及び熱流動部50の貫通孔240を貫通している。このため、拘束部材230は、これら蓄熱材層32、フィルタ34、反応媒体拡散層36及び熱流動部50を、拘束部材230の長手方向と交差する方向である水平方向、言い換えれば、積層方向と交差する方向に相対移動できないように拘束することができる。
【0096】
なお、フィルタ34の貫通孔236と拘束部材230との間から粉体化した蓄熱材が漏れ出ないように、フィルタ34の貫通孔236と拘束部材230とを密着させることが好ましい。
【0097】
本実施形態も第2実施形態と同様に、拘束部材230が1本であるため、拘束部材200を4本用いた第1実施形態に比較して部品点数を少なくすることができる。
なお、その他の、作用効果は第1の実施形態と同様である。
【0098】
[第4実施形態]
次に、
図15にしたがって、本発明の第4実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0099】
第1実施形態のフィルタ34は、一例としてφ200〔μm〕の微小貫通孔(図示せず)が、フィルタ全面に多数形成されたエッチングフィルターであったが、本実施形態のフィルタ34は、外周部分に、微小貫通孔の形成されていない枠状の無孔領域246が設けられている。この無孔領域246は、蓄熱材層32のフレーム部材44(図示省略)と対向する位置に設けられている。また、フィルタ34の貫通孔202は、無孔領域246に形成されている。
【0100】
フィルタ34の無孔領域246は、微小貫通孔が複数形成された中央側の領域248に比較して強度(剛性)が相対的に高くなるため、拘束部材200(
図15では図示せず)との接触による貫通孔202の変形を抑制することができる。これにより、貫通孔202の変形によるフィルタ34のずれを抑制することができ、蓄熱材の漏れをより抑制できる。なお、他の作用については、第1実施形態と同様である。
【0101】
[第5実施形態]
次に、
図16にしたがって、本発明の第5実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0102】
図16に示すように、本実施形態のフィルタ34は、第2実施形態のフィルタ34の変形例であり、外周部分に、微小貫通孔の形成されていない枠状の無孔領域246が設けられ、貫通孔222の周囲に微小貫通孔の形成されていない環状の無孔領域254が設けられている。
【0103】
なお、中央の無孔領域254は、フレーム部材44の横断部44B(
図16では図示せず)と対向する位置に設けられている。
【0104】
フィルタ34の無孔領域254は、微小貫通孔が複数形成された領域248に比較して強度(剛性)が相対的に高くなるため、拘束部材216(
図16では図示せず。
図12参照。)との接触による貫通孔222の変形を抑制することができる。これにより、貫通孔222の変形によるフィルタ34のずれを抑制することができ、蓄熱材の漏れをより抑制できる。なお、他の作用については、第2実施形態と同様である。
【0105】
[第6実施形態]
次に、
図17にしたがって、本発明の第6実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0106】
図17に示すように、本実施形態のフィルタ34は、第5実施形態のフィルタ34の変形例であり、中央の無孔領域254に円筒部260が一体的に設けられている。本実施形態では、円柱状の拘束部材216(
図17では図示せず)が円筒部260に挿入されることで、フィルタ34のずれを抑制している。
【0107】
また、本実施形態のフィルタ34では、無孔領域254に円筒部260が一体的に設けられているため、円筒部260が設けられていない場合に比較して貫通孔222の周囲の強度(剛性)が高くなっており、貫通孔222の変形をより抑制することができる。
【0108】
なお、このフィルタ34は、
図18に示すように、円筒部260を下側に向けて積層することもでき、
図19に示すように、円筒部260を上側に向けて積層することもできる。
他の作用については、第5実施形態と同様である。
【0109】
[第7実施形態]
次に、
図20にしたがって、本発明の第7実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0110】
図20に示すように、本実施形態では、フィルタ34を拘束部材200に溶接262にて接合している。このため、フィルタ34のずれをより一層抑制することができる。なお、溶接262に代えてフィルタ34を拘束部材200にろー付けで接合しても良い。
【0111】
[第8実施形態]
次に、
図21にしたがって、本発明の第8実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0112】
図21に示すように、本実施形態では、フィルタ34に拘束部材200を貫通させるとともに、フィルタ34を蓄熱材層32のフレーム部材44に溶接にて接合しているため、フィルタ34のずれをより一層抑制することができる。なお、溶接に代えてフィルタ34をフレーム部材44にろー付けで接合しても良い。
【0113】
[第9実施形態]
次に、
図22にしたがって、本発明の第9実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0114】
第1実施形態では、積層体60を構成している蓄熱材層32、フィルタ34、反応媒体拡散層36、及び熱流動部50の形状が装置上下方向から見て矩形状であったが、本実施形態では、
図22に示すように、装置上下方向から見た形状が円形状とされている。
【0115】
本実施形態の水平方向位置ずれ抑制機構198は、円柱状の拘束部材264を3本備えている。拘束部材264の両端には、挟持プレート106(
図22では図示せず)に固定するためのボルト212(
図22では図示せず)が捩じ込まれる螺子孔266が形成されている。
【0116】
蓄熱材層32には、拘束部材264を挿入する貫通孔268、フィルタ34には拘束部材264を挿入する貫通孔270、反応媒体拡散層36には拘束部材264を挿入する貫通孔272、熱流動部50には拘束部材264を挿入する貫通孔274が形成されている。また、フィルタ34の外周部分には、無孔領域276が設けられている。
【0117】
本実施形態では、3本の拘束部材264が蓄熱材層32、フィルタ34、反応媒体拡散層36、及び熱流動部50を貫通しており、これにより、フィルタ34の水平方向のずれが抑制されている。なお、作用については、第1実施形態と同様である。
【0118】
[第10実施形態]
次に、
図23にしたがって、本発明の第10実施形態について説明する。なお、前述した実施形態と同一部材等については、同一符号を付してその説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0119】
第9実施形態の水平方向位置ずれ抑制機構198は、円柱状の拘束部材264を3本備えていたが、本実施形態の水平方向位置ずれ抑制機構198は、
図23に示すように、円筒状の拘束部材278を1本備えている。拘束部材278の両端には、挟持プレート106(
図23では図示せず)に固定するためのボルト212(
図23では図示せず)が捩じ込まれる螺子孔280が2個形成されている。
【0120】
蓄熱材層32の蓄熱材成形体40の中央には、拘束部材278を挿入する貫通孔282、フィルタ34の中央には拘束部材278を挿入する貫通孔284、反応媒体拡散層36の中央には拘束部材278を挿入する貫通孔286、熱流動部50の中央には拘束部材278を挿入する貫通孔288が形成されている。
【0121】
本実施形態では、1本の拘束部材278が蓄熱材層32、フィルタ34、反応媒体拡散層36、及び熱流動部50を貫通することで、フィルタ34の水平方向のずれが抑制されている。なお、作用については、第1実施形態と同様である。
【0122】
[その他の実施形態]
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
【0123】
例えば、第1実施形態の積層ユニット90は、上下方向位置ずれ抑制機構100と、捻じれ抑制機構140とを備えていたが、フィルタ34の水平方向のずれを抑制するには、少なくとも水平方向位置ずれ抑制機構198が設けられていれば良く、上下方向位置ずれ、及び捻じれが抑制できていれば、上下方向位置ずれ抑制機構100、及び捻じれ抑制機構140は設けなくても良い。
【0124】
例えば、第1本実施形態の水平方向位置ずれ抑制機構198は、上下の挟持プレート106を拘束部材200で連結しているため、上下の挟持プレート106で積層体60を上下方向から挟持でき、積層体60の上下方向位置ずれを抑制することが可能である。その他の実施形態においても同様である。