(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記精米手法決定手段は、前記入力手段に設定した原料玄米の標準の精米手法から変化させて、前記記憶手段に記憶した精白米精品の性状や特性の最適領域にシフトさせるように精米手法を決定してなる請求項1記載の自動精米装置。
前記原料玄米の性状や特性を分析する原料分析手段が、原料の品位を測定する穀粒判別機、原料の水分値を測定する水分計、原料の食味値を測定する食味計及び/又は原料の色差を測定する分光測色計である請求項1記載の自動精米装置。
前記精白米精品の性状や特性が、米の硬さ値、米の粘り値、L*a*b*表色系における明度、L*a*b*表色系における色度及び/又は米の食味値であり、これら精白米精品の性状や特性と前記原料玄米の性状や特性との間に、各値の間で相互に相関関係を規定した補正手段が前記制御手段に備えられてなる請求項3記載の自動精米装置。
前記精米後の精白米精品の用途が、家庭向け白ご飯用、業務用向けすし飯用、業務用向けカレー用、業務用向けおにぎり用、業務用向け冷凍米飯用、業務用向け弁当用である請求項1から4のいずれかに記載の自動精米装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点にかんがみ、消費者が喫食するご飯の品質から精米手法を確定し、商品品質を損なうことのない自動精米装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、種々の精米手法を備えた精米手段と、該精米手段に供する原料玄米の品種の設定及び精米後の精白米精品の用途を設定する入力手段と、該入力手段に設定した原料玄米の品種の性状や特性を分析する原料分析手段と、前記入力手段に設定した精米後の精白米精品の用途ごとに消費者が求める精白米精品の性状や特性をデータベース化して記憶した記憶手段と、前記原料分析手段により分析された原料玄米の性状や特性が、前記記憶手段に記憶した精白米精品の性状や特性に近づくように精米手法を決定する精米手法決定手段と、該精米手法決定手段に基づき、種々の精米手法の中から特定の精米手法を選択して精米を実行する制御手段とを備える、という技術的手段を講じた。
【0009】
また、前記精米手法決定手段は、前記入力手段に設定した原料玄米の標準の精米方式又は精米手法から変化させて、前記記憶手段に記憶した精白米精品の性状や特性の最適領域にシフトさせるように精米手法を決定するようにした。
【0010】
さらに、前記原料玄米の性状や特性を分析する原料分析手段は、原料の品位を測定する穀粒判別機、原料の水分値を測定する水分計、原料の食味値を測定する食味計及び/又は原料の色差を測定する分光測色計であることとした。
【0011】
そして、前記精白米精品の性状や特性は、米の硬さ値、米の粘り値、L*a*b*表色系における明度、L*a*b*表色系における色度及び/又は米の食味値であり、これら精白米精品の性状や特性と前記原料玄米の性状や特性との間に、各値の間で相互に相関関係を規定した補正手段が前記制御部に備えられるようにした。
【0012】
また、前記精米後の精白米精品の用途は、家庭向け白ご飯用、業務用向けすし飯用、業務用向けカレー用、業務用向けおにぎり用、業務用向け冷凍米飯用、業務用向け弁当用とするとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、消費者が喫食するご飯の品質、すなわち、精白米精品の用途ごとに消費者が求める精白米精品の性状や特性が、あらかじめ記憶部のデータベースに登録されている。そして、オペレータが、入力手段に精米前の原料玄米の品種を設定するとともに、精米後の精白米精品の用途を設定すると、原料分析手段により原料玄米の性状や特性が分析され、かつ、データベースから目的とする精白米精品の性状や特性が抽出される。精米手法決定手段では、前記原料玄米の性状や特性と、前記精白米精品の性状や特性とが比較され、原料玄米の性状や特性が、前記精白米精品の性状や特性に近づくように精米手法が決定される。制御手段では、決定した精米手法に基づき、種々の精米手法の中から特定の精米手法を選択して精米を実行するので、精米手法が自動的に確定し、商品品質を損なうといった不利益が解消される。
【0014】
特に、前記精米手法決定手段は、前記入力手段に設定した原料玄米の標準の精米手法から変化させて、前記データベースに登録した精白米精品の性状や特性の最適領域にシフトさせるように精米手法を決定するようにしたので、精白米精品の用途ごとに原料玄米の品種を変更することなく、精米手法の変更のみによって精白米精品の用途ごとに適合する性状や特性に加工することができるようになった。
【0015】
さらに、前記原料玄米の性状や特性を分析する原料分析手段は、原料の品位を測定する穀粒判別機、原料の水分値を測定する水分計、原料の食味値を測定する食味計及び/又は原料の色差を測定する分光測色計であるので、原料玄米の性状や特性を詳細に分析することができる。
【0016】
そして、前記精白米精品の性状や特性は、米の硬さ値、米の粘り値、L*a*b*表色系における明度、L*a*b*表色系における色度及び/又は米の食味値であり、これら精白米精品の性状や特性と前記原料玄米の性状や特性との間に、各値の間で相互に相関関係を規定した補正手段が前記制御部に備えられているので、精白米精品の性状や特性と原料玄米の性状や特性との間に、関連性を持たせて評価できるようになった。
【0017】
また、前記精米後の精白米精品の用途は、家庭向け白ご飯用、業務用向けすし飯用、業務用向けカレー用、業務用向けおにぎり用、業務用向け冷凍米飯用、業務用向け弁当用としたので、様々な用途に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明における精米装置全体構成のブロック図であり、
図2は精米装置の回路構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように本実施形態の自動精米装置1は、研削式精米機と摩擦式精米機とを様々に組み合わせた複数の複合精米機2A,2B,2C(精米手段)と、該複合精米機2A,2B,2Cに隣接した研削式又は摩擦式からなる単体精米機3(精米手段)と、原料玄米を揚穀する揚穀機4と、揚穀された原料玄米を一時貯留する貯留タンク5と、これから搗精を行おうとする原料玄米の重量を計量する計量器6と、前記複合精米機2A〜2C又は単体精米機3のいずれの精米機で搗精を行うのがよいか決定されるまでの間、原料を待機させる待機タンク7と、該待機タンク7からいずれの前記精米機2A〜2C,3に搬送するかを切り換える分岐弁8,9,10と、該分岐弁8,9,10を切り換え制御するとともに、各精米機の精米出口の抵抗蓋の圧力などを調節する制御装置11(制御手段)と、前記貯留タンク5からの原料サンプルを採取するサンプル採取器12と、該サンプル採取器12により採取した原料の品位を測定する穀粒品位計、水分値を測定する水分計、食味値を推定する食味計又は原料の色の色差を計測する分光測色計からなる各種測定器13(原料分析手段)とから主要部が構成される。
【0021】
図1の揚穀機4の下部には、玄米張込ホッパー14が設けられていて、張り込まれた原料玄米は、揚穀機4により上方に搬送され、一時貯留タンク5に収容される。このとき、サンプル採取器12によって原料玄米の一部が採取され、各種測定器13によって、原料玄米の分析が行われる。この各種測定器13では、例えば、原料の品位、原料の水分値、原料の食味値、原料の色(色差)などが測定される。そして、制御装置11では、各種測定器13に基づいて、原料の分析が行われ、白ご飯、すし飯用米、カレー用米、おにぎり用米、冷凍米飯用米又は弁当用米などの各用途に適した米に搗精加工が可能か否かが判定される。
【0022】
前記一時貯留タンク5の米は、シャッタ15を開放することで下方の計量器6に投入され、計量済みの原料玄米は搗精前に一定量が待機タンク7に待機されることになる。前記制御装置11では、原料分析の結果から、各用途にふさわしい米となるよう、精米方法に変化を与え、複合精米機2A〜2B又は単体精米機3のいずれの精米機で搗精するのがよいのかが搗精手法決定手段16によって決定される。そして、搗精手法決定手段16からは前記分岐弁8,9,10に対して電気的に連絡されている(符号16−1,16−2,16−3の信号線)。例えば、待機タンク7の原料玄米を複合精米機2Bに至らしめて搗精を行おうとするときは、経路が待機タンク7、分岐弁8、流路18、分岐弁9及び流路19となるよう、搗精手法決定手段16から分岐弁8及び分岐弁9に電気信号を送って切り換え制御する。また、待機タンク7の原料玄米を単体精米機3に至らしめて搗精を行おうとするときは、経路が待機タンク7、分岐弁8、流路18、分岐弁9、流路20、分岐弁10及び流路22となるよう、搗精手法決定手段16から分岐弁8、分岐弁9及び分岐弁10に電気信号を送って切り換え制御するとよい。一方で、制御装置11からは各精米機の精米出口の抵抗蓋の圧力などを調節するために各精米機に対して電気的に連絡されている(符号11−1,11−2)。
【0023】
複合精米機2A,2B,2Cにおいては、原料玄米が研削式及び摩擦式の各精米機に順次供給される長行程精米となし、精品は抵抗蓋に抗して排出口から排出され、精品排出樋23,24,25を経て精品タンク26,27,28に貯留される。一方、単体精米機3においては、原料玄米が研削式又は摩擦式の精米機に供給される短行程精米となし、精品は抵抗蓋に抗して排出口から排出され、精品排出樋29を経て精品タンク30に貯留される。そして、各精品タンク26乃至30に貯留された精米をサンプルとして、適正な搗精が行われたか否かを検証することとなる。
【0024】
図2は、
図1の装置の制御系の概略ブロック図である。原料玄米の分析を行う各種測定器13としては、原料の品位を測定する機器としての穀粒判別機31、原料の水分値を測定する機器としての水分計32、原料の食味値を測定する機器としての食味計33、原料の色、すなわち、色差などを測定する機器としての分光測色計34が配置されており、各測定機器31,32,33,34からの信号は、A/D変換器11aを経て制御部11bに送られる。制御部11bは、例えば、シーケンサ、CPU、プログラマブルコントローラ等にて構成され、前述した搗精手法決定手段16も内装されている。記憶部11c(記憶手段)には、白ご飯、すし飯用米、カレー用米、おにぎり用米、冷凍米飯用米及び弁当用米などの各用途に適した米に搗精加工が可能な精米パターンが記憶されている。また、各種設定手段(入力手段)として、精米工場のオペレータが原料玄米の品種を設定するための原料品種設定手段36と、精米工場のオペレータがどんな用途に適した米とするか、その数量はいくらとするか等を設定する精品用途設定手段37とが設けられる。これら原料品種設定手段36及び精品用途設定手段37からの設定値は、入力部11dにおいて信号処理され、制御部11bに送られる。また、制御部11bでは、各種測定器13からの信号から原料玄米の性状が分析され、該原料玄米の性状と、前記各種設定手段36,37からの設定値との数値から、前記記憶部11cに記憶された精米パターンのうち、どの精米パターンが最適かを、搗精手法決定手段16により分析する。この分析結果に基づき、搗精手法決定手段16からの指令が出力駆動回路11eに送られ、それに応じて出力駆動回路11eによって分岐弁8,9,10を駆動して流路を切り換えて最適な精米機を決定し、かつ、当該精米機の精米出口の抵抗蓋の圧力などの調節が行われる。
【0025】
次に、
図3のフローチャートに基づき上記構成の作用を説明する。まず、精米工場のオペレータが原料品種設定手段37によって玄米張込ホッパー14に張り込んだ原料玄米の品種を設定すると(ステップ101)、サンプル採取器12によって原料玄米の一部を採取して原料玄米の分析が各種測定器13によって行われる(ステップ102)。そして、制御装置11では、原料の分析が行われる(ステップ103)。原料品種設定手段37では、原料の品種として、例えば、コシヒカリ、ヒノヒカリ、あきたこまち、日本晴、きらら397の5品種を選択することができる。
【0026】
図4は、原料玄米の品種を5種類選択し、この5種類の玄米を標準的に搗精して精白米となし、該精白米を炊飯した白ご飯をサンプルとして、横軸に白ご飯の硬さ値(kgf)を、縦軸に白ご飯の粘り値(kgf)をそれぞれプロットしたときの関係を示すグラフである(硬さ値及び粘り値は株式会社サタケ社製の硬さ粘り計(型式:RHS1A)によって測定した。)。
図4のグラフから、コシヒカリのご飯は、硬さ値が低く、粘り値が高い傾向にあり、一方で、きらら397のご飯は、硬さ値が高く、粘り値が低い傾向にあることを知ることができる。硬さ値及び粘り値は、炊飯した白ご飯をサンプルとしてしているため、搗精前の原料玄米から推測することは難しい。そこで、統計的な観点から穀粒判別機31により測定した整粒に対する未熟粒の割合などである程度推測可能なことが経験値として分かっている(整粒割合が高い…硬さ値が高く、粘り値が低い。未熟粒割合が高い…硬さ値が低く、粘り値が高い。)。このことから、本実施形態では、原料玄米の硬さ値及び粘り値について、穀粒判別機31を使用して推定することとした。これら精白米を炊飯したご飯の性状や特性と、原料玄米の性状や特性との間で、各値の間で相互に相関関係を規定した補正回路(補正手段)を制御装置11内に備えると、玄米と炊飯米との間で関連性を持たせて、玄米を加工しなくても、炊飯した場合の性状や特性を簡便に評価することができる。
【0027】
図5は標準の精米手法から精米手法を変化させた場合に、硬さ値及び粘り値が変化するか否かを検証した図である。
【0028】
図5(a)は、品種をコシヒカリとし、研削+摩擦+摩擦の3連座精米機にて搗精したとき(標準精米)を「コシヒカリ標準嗜好の位置」としてプロットしている。
図5(a)の破線矢印のように摩擦工程を拡大したり、研削工程を縮小することによって、硬さ値及び粘り値に変化を与える可能性がある。
【実施例1】
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示すように、品種をコシヒカリとして、研削+摩擦+摩擦の標準的な3連座精米機で搗精すると、硬さ値が3.0、粘り値が0.6であった。これに対し、摩擦工程を拡大し、摩擦+摩擦+摩擦の3連座精米機で搗精すると、硬さ値が4.5に変化し、粘り値が0.4に変化した。また、研削工程を拡大し、研削+研削+摩擦の3連座精米機で搗精すると、硬さ値が2.6に変化し、粘り値が0.8に変化した。これにより、精米手法を変えることにより、硬さ値及び粘り値に変化を与えることができることが分かった。
【0031】
図5(b)は、品種をきらら397としたほかは、
図5(a)と同じ内容の図である。品種をきらら397に変更したときも、摩擦工程を縮小したり、研削工程を拡大することによって、硬さ値及び粘り値に変化を与える可能性がある。
【実施例2】
【0032】
【表2】
【0033】
表2に示すように、品種をきらら397として、研削+摩擦+摩擦の標準的な3連座精米機で搗精すると、硬さ値が5.0、粘り値が0.5であった。これに対し、摩擦工程を拡大し、摩擦+摩擦+摩擦の3連座精米機で搗精すると、硬さ値が5.5に変化し、粘り値が0.4に変化した。また、研削工程を拡大し、研削+研削+摩擦の3連座精米機で搗精すると、硬さ値が4.5に変化し、粘り値が0.6に変化した。これにより、精米手法を変えることにより、硬さ値及び粘り値に変化を与えることができることが分かった。
【0034】
図3のフローチャートに戻り、説明を続ける。ステップ103の原料の分析の工程では、精米手法を変えることで、硬さ値及び粘り値が変化した(
図4、
図5、表1及び表2)。そこで、以下の工程では、ご飯の各用途(白ご飯、すし飯用米、カレー用米、おにぎり用米、冷凍米飯用米及び弁当用米など)に適した米の精米手法を検討することとなる。
【0035】
図3のステップ104では、精米工場のオペレータが精品用途設定手段37によってどんな用途の米とするか、その数量はいくらとするか等を設定する。次に、ステップ101で設定した原料玄米の品種、ステップ102及び103の原料玄米の分析・結果及びステップ104で設定した精品の用途に基づき、どの精米手法がよいのか否か精米パターンを探索することになる(ステップ105)。
【0036】
精米パターンは、制御装置11の記憶部11cに記憶され、各精品用途に応じた最適な形質と、硬さ値及び粘り値とがデータベース化されて登録されている。例えば、
図6に示すように、ご飯の用途ごとに(
図6では白ご飯、すし飯用米、カレー用米、おにぎり用米、冷凍米飯用米及び弁当用米の6項目)求められる最適な形質と、硬さ値及び粘り値とが登録されている。
図6の「カレー用米」を例に挙げれば、形質としては「飯質がしっかりとしている、粘りが極力少ない」、硬さ値及び粘り値としては「硬さ値は中心値よりも比較的高い領域、粘り値は中心値よりも比較的低い領域」が最適領域であることが分かる。ステップ104で精米工場のオペレータが「カレー用米」を指定すれば、ステップ105ではこの項目が抽出されることになる。
【0037】
次に、
図3のステップ106に至り、マッチング可能か否かが判断される。例えば、ステップ101で原料玄米の品種を「コシヒカリ」に設定し、ステップ102,103の原料玄米の分析・結果において
図5(a)の標準位置がプロットされているとき、ステップ104で「カレー用米」と指定した場合に、精米を変化させることで、
図5(a)の標準位置を
図6の「カレー用米」の最適領域にシフトすることができるか否かを判断する。
【0038】
そして、研削+摩擦+摩擦の標準位置では「弁当用米」の最適領域に属しているが、摩擦工程を拡大し、研削工程を縮小して、精米を変化させることで、「カレー用米」の最適領域にシフトすることができるので、
図3のステップ107において摩擦+摩擦+摩擦の3連座精米とすることに決定する(
図1の複合精米機2Bに決定)。一方、最適位置にシフトできなければ、再度ステップ104の用途設定の手順にリターンする。
【0039】
ステップ108では、ステップ107の精米手法に基づき、複合精米機2Bを選択し、分岐弁8,9(
図1)を切り換える。そして、精米出口の抵抗蓋の圧力などを調節し、テスト精米を開始する(ステップ109)。
【0040】
テスト精米を開始して得られた精品は、精品排出樋24を経て精品タンク27に貯留される。そして、精品が
図5(a)の標準位置から
図6の「カレー用米」にシフトしているか否かが検証され(ステップ110)、適合していれば本精米に移行することになり(ステップ111)、適合していなければ、再度ステップ104の用途設定の手順にリターンする。
【0041】
別の実施例として、
図3のステップ101で原料玄米の品種を「きらら397」と設定すれば、ステップ102及び103の原料玄米の分析・結果として、
図5(b)の標準位置がプロットされる。
【0042】
そして、
図3のステップ104で精品用途を「白ご飯」と設定した場合、どの精米手法がよいのか否か精米パターンを探索することになる(ステップ105)。
【0043】
精米パターンは、
図6の「白ご飯」が抽出され、形質としては「つや、粒ぞろいがよい」、硬さ値及び粘り値としては「硬さ値は全領域、粘り値は中心値よりも比較的高い領域」が最適領域であることが抽出される。
【0044】
ステップ106に至り、マッチング可能か否かが判断される。
図5(b)、表2から、研削+摩擦+摩擦の標準位置では「カレー用米」「冷凍米飯用米」の最適領域に属しているが、研削工程を拡大し、摩擦工程を縮小して、精米を変化させることで、「白ご飯」の最適領域にシフトすることができるので、
図3のステップ107において研削+研削+摩擦の3連座精米とすることに決定する(
図1の複合精米機2Cに決定)。
【0045】
ステップ108では、ステップ107の精米手法決定に基づき、複合精米機2Cを選択し、分岐弁8,9,10(
図1)を切り換える。そして、精米出口の抵抗蓋の圧力などを調節し、テスト精米を開始する(ステップ109)。
【0046】
テスト精米を開始して得られた精品は、精品排出樋25を経て精品タンク28に貯留される。そして、精品が
図5(b)の標準位置から
図6の「白ご飯」にシフトしているか否かが検証され(ステップ110)、適合していれば本精米に移行することになる(ステップ111)。
【0047】
図4のように、ご飯の特性を、硬さ値及び粘り値を消費者の嗜好特徴としたが、これに限定されることはなく、ご飯を目視したときの白さ、つやの評価となる色差の関係を利用することもできる。
【0048】
図7は、原料玄米の品種をコシヒカリときらら397の2種類を選択し、この2種類の玄米を標準的に搗精して精白米となし、該精白米を炊飯した白ご飯をサンプルとして、横軸に白ご飯のL値(L*a*b*表色系における明度)を、縦軸に白ご飯のb*値(L*a*b*表色系における色度)をそれぞれプロットしたときの関係を示すグラフである(L値及びb*値はコニカミノルタ社製の分光測色計(型式:CM−700d)によって測定した。
【0049】
図7のグラフから、コシヒカリのご飯は、見た目の色として、L値が高く(明るい)、b*が若干低い傾向にあり、一方、きらら397のご飯は、L値が低く(わずかに暗い)、b*が若干高い傾向にあることを知ることができる。L値及びb*値は、炊飯した白ご飯のサンプルとしているため、搗精前の原料玄米から推測することは難しい。しかし、標準的な精米手法との比較では明確に差が表れるので、推定値として使用することとした。
【0050】
図8は、標準の精米手法から精米手法を変化させた場合に、L値及びb*値が変化するか否かを検証した図である。
【0051】
図8(a)は、品種をコシヒカリとし、研削+摩擦+摩擦の3連座精米機にて搗精したとき(標準精米)を「コシヒカリ標準嗜好の位置」としてプロットしている。
図8(a)の破線矢印のように摩擦工程を拡大したり、研削工程を縮小することによって、L値及びb*値に変化を与える可能性がある。
【実施例3】
【0052】
【表3】
【0053】
表3に示すように、品種をコシヒカリとして、研削+摩擦+摩擦の標準的な3連座精米機で搗精すると、L値が72、b*値が0.8であった。これに対し、摩擦工程を拡大し、摩擦+摩擦+摩擦の3連座精米機で搗精すると、L値が68に変化し、b*値が1.8に変化した。また、研削工程を拡大し、研削+研削+摩擦の3連座精米機で搗精すると、L値が73に変化し、b*値が0.7に変化した。これにより、精米手法を変えることにより、L値及びb*値に変化を与えることができることが分かった。
【0054】
図8(b)は、品種をきらら397としたほかは、
図8(a)と同じ内容の図である。品種をきらら397に変更したときも、摩擦工程を縮小したり、研削工程を拡大することによって、L値及びb*値に変化を与える可能性がある。
【実施例4】
【0055】
【表4】
【0056】
表4に示すように、品種をきらら397として、研削+摩擦+摩擦の標準的な3連座精米機で搗精すると、L値が65、b*値が2.5であった。これに対し、摩擦工程を拡大し、摩擦+摩擦+摩擦の3連座精米機で搗精すると、L値が62に変化し、b*値が3.2に変化した。また、研削工程を拡大し、研削+研削+摩擦の3連座精米機で搗精すると、L値が71に変化し、b*値が1.8に変化した。これにより、精米手法を変えることにより、L値及びb*値に変化を与えることができることが分かった。
【0057】
このご飯の見た目の色を利用した実施例として、
図3のステップ101で原料玄米の品種を「コシヒカリ」と設定すれば、ステップ102及び103の原料玄米の分析・結果として、色差により
図8(a)の標準位置がプロットされる。
【0058】
そして、
図3のステップ104で精品用途を「カレー用米」と設定した場合、どの精米手法がよいのか否か精米パターンを探索することになる(ステップ105)。
【0059】
精米パターンは、
図9の「カレー用米」が抽出され、形質としては「飯質がしっかりとしている、粘りが極力少ない」、L値及びb*値としては「L値は中心値よりも比較的低い領域、b*値としては全領域」が最適領域であることが抽出される。
【0060】
次に、ステップ106に至り、マッチング可能か否かが判断される。
図8(a)、表3から、研削+摩擦+摩擦の標準位置では「弁当用米」の最適領域に属しているが、研削工程を縮小し、摩擦工程を拡大して、精米を変化させることで、「カレー用米」の最適領域にシフトすることができるので、ステップ107において摩擦+摩擦+摩擦の3連座精米とすることに決定する(
図1の複合精米機2Bに決定)。
【0061】
ステップ108では、ステップ107の精米手法決定に基づき、複合精米機2Bを選択し、分岐弁8,9(
図1)を切り換える。そして、精米出口の抵抗蓋の圧力などを調節し、テスト精米を開始する(ステップ109)。
【0062】
テスト精米を開始して得られた精品は、精品排出樋24を経て精品タンク27に貯留される。そして、精品が
図8(a)の標準位置から
図9の「カレー用米」にシフトしているか否かが検証され(ステップ110)、適合していれば本精米に移行することになる(ステップ111)。
【0063】
他の実施例として、
図3のステップ101で原料玄米の品種を「きらら397」と設定すれば、ステップ102及び103の原料玄米の分析・結果として、色差により
図8(b)の標準位置がプロットされる。
【0064】
そして、
図3のステップ104で精品用途を「白ご飯」と設定した場合、どの精米手法がよいのか否か精米パターンを探索することになる(ステップ105)。
【0065】
精米パターンは、
図9の「白ご飯」が抽出され、形質としては「つや、粒ぞろいがよい」、L値及びb*値としては「L値は中心値よりも比較的高い領域、b*値は全領域」が最適領域であることが抽出される。
【0066】
ステップ106に至り、マッチング可能か否かが判断される。
図8(b)、表4から、研削+摩擦+摩擦の標準位置では「カレー用米」「冷凍米飯用米」の最適領域に属しているが、研削工程を拡大し、摩擦工程を縮小して、精米を変化させることで、「白ご飯」の最適領域にシフトすることができるので、
図3のステップ107において研削+研削+摩擦の3連座精米とすることに決定する(
図1の複合精米機2Cに決定)。
【0067】
ステップ108では、ステップ107の精米手法決定に基づき、複合精米機2Cを選択し、分岐弁8,9,10(
図1)を切り換える。そして、精米出口の抵抗蓋の圧力などを調節し、テスト精米を開始する(ステップ109)。
【0068】
テスト精米を開始して得られた精品は、精品排出樋25を経て精品タンク28に貯留される。そして、精品が
図8(b)の標準位置から
図9の「白ご飯」にシフトしているか否かが検証され(ステップ110)、適合していれば本精米に移行することになる(ステップ111)。
【0069】
なお、上述したように、精品の性状や特性の評価項目として、ご飯サンプルの硬さ値と粘り値(
図4)と、ご飯サンプルのL値とb*値(
図7)とを用いたが、これらを単独又は複合して用いてもよく、さらに食味値又は水分値などを考慮してもよい。また、このほかの評価項目を採用してもかまわない。
【0070】
以上のように本実施形態によれば、消費者が喫食するご飯の品質、すなわち、精品の用途ごとに消費者が求める精品の性状や特性が、あらかじめ記憶部11cにデータベースとして登録されている。精米工場などのオペレータは、精米前の原料玄米の品種を設定するとともに、精米後の精品の用途を設定すれば、各種測定器13により原料玄米の性状や特性が分析され、かつ、データベースから目的とする精品の性状や特性が抽出される。精米手法決定手段16では、原料玄米の性状や特性と、精品の性状や特性とが比較され、原料玄米の性状や特性が、精品の性状や特性に近づくように精米手法が決定される。制御装置11では、決定した精米手法に基づき、各種精米機2A,2B,2C,3の中から精米機を選択して精米を実行するので、精米手法が自動的に確定し、商品品質を損なうといった不利益が解消されるようになる。
【0071】
特に、精米手法決定手段16は、設定した原料玄米の標準の精米方式又は精米手法から変化させて、データベースに登録した精品の性状や特性の最適領域にシフトさせるように精米手法を決定するようにしたので、精品の用途ごとに原料玄米の品種を変更することなく、精米手法の変更のみによって精品の用途ごとに適合する性状や特性に加工することができるようになる。