特許第6593162号(P6593162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593162複合部品の製造装置及び複合部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593162
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】複合部品の製造装置及び複合部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/08 20060101AFI20191010BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B23P19/08
   B23P21/00 306C
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-255703(P2015-255703)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-119312(P2017-119312A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 龍二
(72)【発明者】
【氏名】古川 朋紀
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−157934(JP,A)
【文献】 特開昭49−032278(JP,A)
【文献】 特開昭62−292331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00−21/00
B65G 47/00−47/20;47/84−47/86;
47/90−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転し、筒状体及び軸体を該軸方向に収容する貫通孔が形成された回転部と、
該回転部の回転により、該筒状体に該軸体が挿入された状態の複合部品が構成されるように、一列に連なった状態で収容される該筒状体及び一列に連なった状態で収容される該軸体を1個ずつ供給する供給部と、
該回転部の回転により、該貫通孔中の該複合部品を排出させる排出孔が形成された排出部と、
を有し、
該回転部は、該供給部が備える支持部と該排出部との間に挟まれ、かつ該軸が該支持部及び該排出部に支持されており、
該支持部には、該回転部の回転により該貫通孔に該筒状体又は該軸体を供給させる貫通穴が形成されており、
該排出部には、該軸体及び該筒状体の少なくともいずれか一つの端部が該貫通孔に挿入された状態で移動可能な円弧形状の溝であって、該貫通孔の中で最も上に位置する該筒状体又は該軸体の上端と、該回転部の上端とを一致させる深さである溝が形成されてい
複合部品の製造装置。
【請求項2】
該回転部には、複数の貫通孔が該軸を中心に等角度で形成されている請求項1に記載の複合部品の製造装置。
【請求項3】
該回転部は、駆動装置により回転される請求項1又は2に記載の複合部品の製造装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項の何れか一項に記載の製造装置を用いた複合部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部品の製造装置及び複合部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機用のコア部付軸体の製造方法が開示されている。ここで、特許文献1には、以下が記載されている。すなわち、コア部付軸体は、コア部と、コア部を固定して保持する軸体と、軸体とコア部とを固定するために用いられるキーピースを含んで構成されている。このコア部付軸体の製造方法には、コア部を軸体の軸方向に沿って挿入する挿入工程を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−46521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、回転する回転部の貫通孔の中で筒状体と軸体との複合部品を組み立てることができる複合部品の製造装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の複合部品の製造装置は、軸周りに回転し、筒状体及び軸体を該軸方向に収容する貫通孔が形成された回転部と、該回転部の回転により、該筒状体に該軸体が挿入された状態の複合部品が構成されるように、一列に連なった状態で収容される該筒状体及び一列に連なった状態で収容される該軸体を1個ずつ供給する供給部と、該回転部の回転により、該貫通孔中の該複合部品を排出させる排出孔が形成された排出部と、を有し、該回転部は、該供給部が備える支持部と該排出部との間に挟まれ、かつ該軸が該支持部及び該排出部に支持されており、該支持部には、該回転部の回転により該貫通孔に該筒状体又は該軸体を供給させる貫通穴が形成されており、該排出部には、該軸体及び該筒状体の少なくともいずれか一つの端部が該貫通孔に挿入された状態で移動可能な円弧形状の溝であって、該貫通孔の中で最も上に位置する該筒状体又は該軸体の上端と、該回転部の上端とを一致させる深さである溝が形成されている。
第1態様の複合部品の製造装置は、軸周りに回転し、筒状体及び軸体を該軸方向に収容する貫通孔が形成された回転部と、該回転部の回転により、該筒状体に該軸体が挿入された状態の複合部品が構成されるように、該貫通孔に該筒状体及び該軸体を1個ずつ供給する供給部と、該回転部の回転により、該貫通孔中の該複合部品を排出させる排出孔が形成された排出部と、を有している。
【0006】
請求項2の複合部品の製造装置では、該回転部には、複数の貫通孔が該軸を中心に等角度で形成されている。
【0007】
第2態様の複合部品の製造装置では、該回転部には、複数の貫通孔が該軸を中心に等角度で形成されている。
態様の複合部品の製造装置では、該回転部は、該供給部が備える支持部と該排出部との間に挟まれ、かつ該軸が該支持部及び該排出部に支持されており、該支持部には、該回転部の回転により該貫通孔に該筒状体又は該軸体を供給させる貫通穴が該筒状体の数と該軸体の数を合わせた数だけ形成されている。
【0008】
態様の複合部品の製造装置では、該排出部には、該軸体及び該筒状体の少なくともいずれか一つの端部が挿入された状態で移動可能な円弧形状の溝が形成されている。
【0009】
請求項の複合部品の製造装置では、該回転部は、駆動装置により回転される。
【0010】
請求項の複合部品の製造方法は、請求項1〜請求項の何れか一項に記載の製造装置を用いたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、回転する回転部の貫通孔の中で筒状体と軸体との複合部品を組み立てることができる。また、請求項1に係る発明によれば、回転部の貫通孔の中で最も上に位置する部品の上端と、回転部の上端とが一致しない場合と比して、支持部の貫通穴に部品を連続して収容させても、回転部の貫通孔には部品が一個ずつ供給される。
第1態様に係る発明によれば、回転する回転部の貫通孔の中で筒状体と軸体との複合部品を組み立てることができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、1の貫通孔で複合部品を組み立てる場合と比して、数多くの複合部品が効率よく製造される。
【0013】
第2態様に係る発明によれば、1の貫通孔で複合部品を組み立てる場合と比して、数多くの複合部品が効率よく製造される。
態様に係る発明によれば、支持部に単一の貫通穴が形成されている場合と比して、貫通孔中で全ての部品を不足なく、順序を間違うことなく組み立てられる。
【0014】
態様に係る発明によれば、排出部に溝を設けていない場合と比して、回転部の軸方向の長さを軸体及び筒状体の長さ以下にすることができる。
【0015】
請求項に係る発明によれば、自動的に貫通孔中で複合部品が順次組み立てられる。
【0016】
請求項に係る発明によれば、回転する回転部の貫通孔の中で筒状体と軸体との複合部品を組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態の複合部品の製造装置及び部品の供給装置の概略図(正面図)である。
図2】本実施の形態の複合部品の製造装置の後方斜視図である。
図3】本実施の形態の複合部品の製造装置の分解斜視図(後方斜視図)である。
図4】本実施の形態の複合部品の製造装置を構成する支持部の平面断面図(図1のA−A断面図)である。
図5】本実施の形態の複合部品の製造装置を構成する回転部の平面端面図(図1のB−B断面図)である。
図6】本実施の形態の複合部品の製造装置を構成する排出部の平面端面図(図1のC−C断面図)である。
図7】本実施の形態の複合部品の製造装置を構成する排出部の平面断面図(図1のD−D断面図)である。
図8】本実施の形態の複合部品の製造装置の側面断面図(図2のE−E断面図)である。
図9】本実施の形態の複合部品の製造装置の側面断面図(図2のF−F断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態の一例を図面に基づき説明する。なお、図面において、示される矢印UPは、複合部品の製造装置及び供給装置の上方を示している。
【0019】
<複合部品の製造装置及び供給装置の全体構成>
図1は本実施の形態に係る複合部品の製造装置10と、この複合部品の製造装置10に部品を供給する供給装置60と、が示されている。複合部品の製造装置10は、供給部20と、回転部40と、排出部50と、を有している。複合部品の製造装置10の上方には、複合部品の製造装置10の供給部20に部品を供給する装置の一例として供給装置60が配置されている。複合部品の製造装置10は、供給部20に収容されている部品であるスプリングX、ワッシャーY及びボルトSを組み合わせて完成品Pを製造する機能を有している。ここで、スプリングX及びワッシャーYは筒状体の一例である。また、ボルトSは軸体の一例である。なお、本実施の形態のボルトSは雄ねじである。完成品Pは複合部品の一例である。
【0020】
<供給装置の構成>
供給装置60は、ボルトSを供給管22に定められた姿勢で供給する機能を有する。本実施の形態における定められた姿勢は、ボルトSの頭部が上方にねじ部が下方にある姿勢である。供給装置60は、図1に示されるように、円筒形状の容器61と、容器61の内壁に設けられた羽根62と、容器61の中心を貫くシャフト63と、供給装置60を支持する支持部64と、を含んで構成されている。
【0021】
容器61は、供給管22に供給するボルトSを収容する機能を有する。容器61は、一端が開口し、他端が閉口する円筒形状の容器である。この容器61は、図示しない駆動装置によりシャフト63の周りを回転する。
【0022】
羽根62は、容器61とともに回転することで、容器61内のボルトSをシャフト63よりも上方まで運ぶ機能を有する。この羽根62は、容器61の筒状部分の内壁に設けられたものである。この羽根62は、シャフト63の下方に位置する場合にボルトSをすくい上げ、シャフト63の上方に位置する場合にボルトSをシャフト63に向けて落下させる。
【0023】
シャフト63は、容器61の閉口部分の中心を貫くとともに、容器61を回転可能に支持する機能を有する。このシャフト63は、図1に示すように、高さ方向(又は水平方向)に対して傾斜した状態で配置されている。また、シャフト63の上端はボルトSの頭部の高さよりも大きく凹んだ平面となっている。さらに、この平面部分には、軸方向にわたって上向きに開口する長尺な溝が形成されている。この溝の幅はボルトSのねじ部の外径よりも若干大きく、この溝の深さはボルトSの軸の長さよりも若干長い。すなわち、シャフト63は、ボルトSを保持しつつ軸方向に移動可能に形成されている。
【0024】
支持部64は、図1に示すように、シャフト63を傾斜した状態で支持する機能を有する。支持部64は、L字状に曲がった部材であって、シャフト63における容器61の外側の部分に固定されている。なお、供給装置60の容器61内には、複数のボルトSが収容されるようになっているが、ボルトSの数量に関わらず、支持部64は、容器61及びシャフト63が傾斜した状態で支持するように設定されている。
【0025】
<複合部品の製造装置の構成>
複合部品の製造装置10は、スプリングX、ワッシャーY及びボルトSを組み合わせて完成品Pを製造する機能を有している。図2に示すように、複合部品の製造装置10は、供給部20と、回転部40と、排出部50と、を有している。供給部20は、さらに支持部30を有している。支持部30及び排出部50は、複合部品の製造中に動かないように架台などに固定される。一方、回転部40は、支持部30と排出部50との間に挟まれるとともに、回転部40の中心を貫く軸11は、支持部30及び排出部50に支持されている。回転部40は、支持部30及び排出部50と密接した状態で回転可能に形成されている。
【0026】
(供給部)
供給部20は、回転部40の回転により、スプリングX及びワッシャーYにボルトSが挿入された状態の複合部品が構成されるように、後述する貫通孔42にスプリングX、ワッシャーY及びボルトSを1個ずつ供給する機能を有する。図2に示すように、供給部20は、支持部30と、供給管22と、プランジャー21(図3参照)と、を有している。支持部30は円柱形状の部材である。この支持部30の詳細については後述する。
【0027】
供給管22はスプリングX、ワッシャーY、又はボルトSをそれぞれ輸送するためのものである。この供給管22は、樹脂製ホースなどの可撓性のホースを採用することができる。また供給管22は、その上端が供給装置60やその他の供給装置に接続され、その下端が支持部30に接続されている。ここで、供給管22は、スプリングXを輸送する第1管23と、ワッシャーYを輸送する第2管24と、ボルトSを輸送する第3管25と、を含む。プランジャー21は、回転部40の回転位置を検出するためのものである。
【0028】
図3に示すように、このプランジャー21は円柱形状の部品であって、外周部分が雄ねじに形成され、下端部にはボールが保持されている。このボールはプランジャー21の内部に設けられたコイルスプリングによって下方に押し付けられており、ボールはコイルスプリングの弾性力に反して上方に移動可能である。そして、プランジャー21は、支持部30の固定孔36の下部に設けられた雌ねじ部分にねじ込むことで支持部30に固定される。
【0029】
(支持部)
支持部30は、供給部20を構成する部材であって、回転部40の貫通孔42に部品を供給するとともに、回転部40の軸11を支持する機能を有している。図3及び図4に示すように、支持部30は円柱形状の部材であって、支持部30の円状面の中心OAには軸方向に貫通する軸穴31が形成されており、この軸穴31に軸11が挿入される。また、支持部30の中心OAの周囲には、軸方向に貫通する貫通穴32と軸方向に貫通する固定孔36とが形成されている。
【0030】
貫通穴32は、回転部40の貫通孔42に部品を供給するものである。この貫通穴32は、供給される筒状体の数と軸体の数を合わせた数、すなわち、筒状体であるスプリングX及びワッシャーYの数と軸体であるボルトSの数を合わせた計3個が形成されている。ここで、貫通穴32は、第1管23と接続されている第1貫通穴33と、第2管24と接続されている第2貫通穴34と、第3管25と接続されている第3貫通穴35と、を含む。つまり、貫通穴32は、スプリングXを収容する第1貫通穴33と、ワッシャーYを収容する第2貫通穴34と、ボルトSを収容する第3貫通穴35と、を含む。第1貫通穴33の直径は、スプリングXの外径よりも若干大きく、第2貫通穴34の直径はワッシャーYの外径よりも若干大きく、第3貫通穴35の直径はボルトSの外径よりも若干大きいものである。
【0031】
また、固定孔36は上述のとおりプランジャー21をねじ込んで固定するためのものであって、内面には雌ねじが形成されている。
【0032】
図4に示すように、3つの貫通穴32及び固定孔36は中心OAから同心円上に配置されている。また、第2貫通穴34は第1貫通穴33から反時計回りに90度ずれた位置に配置されている。さらに、第3貫通穴35は第2貫通穴34からさらに反時計回りに90度ずれた位置に配置されている。固定孔36は第1貫通穴33から時計回り、換言すると第2貫通穴34とは逆方向に45度ずれた位置に配置されている。
【0033】
(回転部)
回転部40は、軸11周りに回転することにより、スプリングX、ワッシャーY及びボルトSからなる完成品Pを組み立てる機能を有している。図3及び図5に示すように、回転部40は円柱形状の部材であって、その高さHはスプリングXの高さに等しい(図8参照)。また、回転部40の円状面の中心OBには軸方向に貫通する軸穴41が形成されており、この軸穴41に軸11が挿入される。そして、回転部40の中心OBの周囲には、軸方向に貫通する4つの貫通孔42と上方に開口された4つの位置決め穴43とが形成されている。
【0034】
貫通孔42は、供給部20からスプリングX、ワッシャーY及びボルトSの順で供給を受けて完成品Pを組み立てる機能を有している。また、貫通孔42はスプリングX、ワッシャーY及びボルトSを軸方向に収容するものである。詳しくは、貫通孔42は部品を収容した場合に、部品が傾いたり横を向いたりしないものであって、その直径は、スプリングX及びワッシャーYの外径よりも若干大きいものである。
【0035】
貫通孔42及び位置決め穴43は4つずつ形成されており、図5に示すように、中心OBから同心円上に配置されている。また、4つの貫通孔42は90度おきに中心OBから等角度で配置されている。さらに、4つの位置決め穴43は90度おきに中心OBから等角度で配置され、かつ貫通孔42とは45度ずれて配置されている。すなわち、回転部40では、貫通孔42と位置決め穴43が45度おきに交互に配置されている。
【0036】
位置決め穴43は、上述したプランジャー21の下端に設けられたボールの下端部が嵌るものである。回転部40が回転し、位置決め穴43にプランジャー21のボールの先端が嵌った場合、貫通孔42と貫通穴32とが水平面上で重なる。さらに詳しくは、図8に示すように、1番目の貫通孔42と第1貫通穴33とが連続する状態となる。また、図9に示すように、1番目の貫通孔42から反時計回りに90度進んだ位置にある2番目の貫通孔42と第2貫通穴34とが連続する状態となる。さらに、図8に示すように、2番目の貫通孔42から反時計回りに90度進んだ位置にある3番目の貫通孔42と第3貫通穴35とが連続する状態となる。
【0037】
回転部40には、円筒面に歯車45が形成されている。この歯車45は、図示しない駆動装置の歯車と噛み合うものである。そして、回転部40は駆動装置から動力を受けることにより回転される。本実施の形態の回転部40では、反時計回りに回転するように形成されている。なお、回転部40が駆動装置から動力を受けて回転する場合、駆動装置において回転部40の回転位置を検出できれば、プランジャー21及び位置決め穴43は必ずしも設置する必要はない。
【0038】
(排出部)
排出部50は、回転部40からスプリングX、ワッシャーY及びボルトSを組み合わせた完成品Pを排出させるとともに、回転部40の軸11を支持する機能を有している。図3に示すように、排出部50は円柱形状の部材であって、図6及び図7に示すように、円状面の中心OCには軸方向に貫通する軸穴51が形成されており、この軸穴51に軸11が挿入される。また、排出部50の中心OCの周囲には、軸方向に貫通する排出孔52と、排出部50の上面部分であって排出孔52から円弧形状に延びる溝53が形成されている。排出孔52は、完成品Pを排出させる機能を有しており、その直径は、貫通孔42の直径よりも若干大きいものである。また、中心OCから排出孔52の中心までの距離と、中心OCから溝53の円弧の中心線までの距離は等しい。
【0039】
溝53は、軸体及び筒状体の少なくともいずれか一つの端部が挿入された状態で移動可能に形成されたものである。本実施の形態の溝53は、貫通孔42に収容しきれないスプリングX及びボルトSの端部が挿入されるものである。また溝53は、端部が挿入されたスプリングX及びボルトSが回転部40の回転に合わせて移動することを可能とする機能を有している。ここで溝53には、形状の違いによって第1溝54、第2溝55、及び第3溝56がある。具体的には図6に示すように、第3溝56は、排出孔52の時計回り90度の位置に開けたボルトSのねじ部が通る程の直径で、かつ深さh3(図8参照)の穴を反時計回りで排出孔52まで移動させた場合の軌跡に相当する。また、第2溝55は、排出孔52の時計回り90度の位置に開けた貫通孔42と同等の直径でかつ深さh2(図8参照)の穴を、反時計回りで排出孔52まで移動させた場合の軌跡に相当する。さらに、第1溝54は、排出孔52の時計回り180度の位置に開けた貫通孔42と同等の直径でかつ深さh1(図9参照)の穴を、反時計回りで第2溝55の端部まで移動させた場合の軌跡に相当する。なお、溝53の深さh1〜h3についての説明は後述する。
【0040】
なお排出部50は、支持部30の第2貫通穴34と第1溝54の端部とが水平面上で重なる位置関係に、第3貫通穴35と第2溝55の端部とが水平面上で重なる位置関係に固定される。そして、回転部40が回転し、位置決め穴43にプランジャー21のボールの先端が嵌った場合には、いずれの貫通穴32とも連続していない4番目の貫通孔42が排出孔52と連続する状態となる(図9参照)。
【0041】
排出孔52の下端には、排出管12が接続されている。排出管12の先には完成品Pを取り出す取出部(図示せず)が設けられている。なお、排出管12に替えて、排出孔52の下端から取出部に至るまで、左右に壁を有するガイドを設けてもよい。
【0042】
<供給装置の作用>
軸体であるボルトSを供給装置60を用いて複合部品の製造装置10に供給する場合の作用について、以下のとおり説明する。なお、図1では図示されていないが、ボルトS以外のスプリングXやワッシャーYについても供給装置60と同様の装置を用いて複合部品の製造装置10に供給してもよい。
【0043】
作業者は、図1に示されるように、供給装置60の容器61内に複数のボルトSを収容させる。次いで、作業者は、供給装置60用の駆動装置を作動させて容器61を回転させる。容器61内の複数のボルトSは、容器61の回転に伴い回転する羽根62によりシャフト63よりも上方に運ばれる。羽根62によりシャフト63よりも上方に運ばれた複数のボルトSは、自重により落下する。そして、落下するボルトSのうち幾つかは、シャフト63の軸方向に形成された溝に保持される。シャフト63は容器61の外側の方が低くなるように傾斜しているため、シャフト63に保持されたボルトSは、自重により容器の61の外側に移動する。ここで、シャフト63の外側の端部には上下方向に貫通する穴が形成されている。この穴の直径は、ボルトSの頭部の直径よりも大きい。また、この穴の下端には、第3管25が接続されている。したがって、ボルトSがシャフト63の端部に到達すると、シャフト63の穴から落下し、そのまま第3管25に導かれる。
【0044】
ボルトSは、第3貫通穴35の下端から第3管25にかけて一列に連なった状態で収容される。そして、最下端のボルトSが、回転部40の貫通孔42に供給される都度、上方のボルトSは、ボルトSの1つ分だけ下方に移動する。したがって、供給装置60は、第3管25内部のボルトSが少なくなった場合に作動させれば足りる。なお、第3管25の途中に透過式センサなどの検知センサを設置して、当該センサの設置部分にボルトSが無いことを確認した場合に、供給装置60を作動させるように形成してもよい。
【0045】
<複合部品の製造装置の作用>
次に、複合部品の製造装置10を用いて、スプリングX、ワッシャーY及びボルトSを組み立てる場合の作用について、以下のとおり説明する。
【0046】
上述のとおり、ボルトSは第3貫通穴35の下端部から第3管25にかけて一列に連なった状態で収容されている。そして、ボルトSと同様に、スプリングXは第1貫通穴33の下端部から第1管23にかけて、ワッシャーYは第2貫通穴34の下端部から第2管24の上方に向けて、それぞれ一列に連なった状態で収容されている。
【0047】
ここで、図示しない駆動装置により回転部40を回転させると、貫通孔42の内部では次の順序で完成品Pの組み立てが行われる。なお、以下の説明では支持部30、回転部40及び排出部50を上面視した場合の水平面における貫通穴32、貫通孔42及び排出孔52の位置関係を基準に説明する。上面視では回転部は反時計回りに回転することから、貫通孔42は、第1貫通穴33、第2貫通穴34、第3貫通穴35、排出孔52の順に水平面上で重なる。
【0048】
(1)排出孔から第1貫通穴まで
排出孔52から第1貫通穴33にかけては、排出部50の上部は回転部40の下面と接する平面であり、支持部30の下部は回転部40の上面と接する平面(ただし、プランジャー21の先端のボールが露出する部分がある)となっている。したがって、排出孔52において既に組み立てが完了した完成品Pが排出されると、第1貫通穴33に至るまで貫通孔42の内部には何も収容されていない状態となる。すなわち、排出孔52から第1貫通穴33にかけては何も移送されない。
【0049】
(2)第1貫通穴
貫通孔42が第1貫通穴33に達し、両者が水平面において重なると、図8に示すように、貫通孔42の内部に1個のスプリングXが落下する。ここで、スプリングXの高さは回転部40の高さHに等しい。そのため、第1貫通穴33の下端に控えているスプリングXが貫通孔42の内部に侵入することはない。また、貫通孔42に落下したスプリングXの上部が、第1貫通穴33の内部に突出していることもない。このため、回転部40はスプリングXに妨げられることなくさらに回転する。
【0050】
(3)第1貫通穴から第2貫通穴まで
第1貫通穴33から第2貫通穴34にかけて、排出部50の上部は回転部40の下面と接する平面であり、支持部30の下部は回転部40の上面と接する平面となっている。したがって、第1貫通穴33から第2貫通穴34に至るまで貫通孔42の内部にはスプリングXが収容された状態となっている。すなわち、第1貫通穴33から第2貫通穴34にかけてはスプリングXが移送される。
【0051】
(4)第2貫通穴
貫通孔42が第2貫通穴34に達し、両者が水平面において重なると、図9に示すように、スプリングXの下部が第1溝54の底面に落下するとともに、スプリングXの上に1個のワッシャーYが落下する。ここで、ワッシャーYの高さは第1溝54の深さh1に等しい。そのため、第2貫通穴34の下端に控えているワッシャーYが貫通孔42の内部に侵入することはない。また、貫通孔42に落下したワッシャーYの上部が、第2貫通穴34の内部に突出していることもない。このため、回転部40はワッシャーYに妨げられることなくさらに回転する。
【0052】
(5)第2貫通穴から第3貫通穴まで
第2貫通穴34から第3貫通穴35にかけて、排出部50の上部であって貫通孔42の通過位置には第1溝54の底面が露出しており、支持部30の下部は回転部40の上面と接する平面となっている。したがって、第2貫通穴34から第3貫通穴35に至るまで貫通孔42の内部にはスプリングX及びワッシャーYが収容された状態となっている。すなわち、第2貫通穴34から第3貫通穴35にかけてはスプリングX及びワッシャーYが組み合わされた状態で移送される。
【0053】
(6)第3貫通穴
貫通孔42が第3貫通穴35に達し、両者が水平面において重なると、図8に示すように、スプリングXの下部が第2溝55の上に落下する。そして、貫通孔42の内部では、ワッシャーYの上に1個のボルトSが落下する。ここで、第2溝55のさらに内側にはボルトSのねじ部を逃すための第3溝56が形成されている。この第3溝56の深さh3はボルトSの長さと回転部40の高さHの差以上あるため、ボルトSはそのねじ部が排出部50と接することなくワッシャーYの上に落下する。また、ボルトSの頭部の高さとワッシャーYの高さを合わせた高さは第2溝55の深さh2に等しい。そのため、第3貫通穴35の下端に控えているボルトSが貫通孔42の内部に侵入することはない。また、貫通孔42に落下したボルトSの頭部が、第3貫通穴35の内部に突出していることもない。このため、回転部40はボルトSに妨げられることなくさらに回転する。第3貫通穴35において、スプリングX、ワッシャーY及びボルトSが組み合わさることで完成品Pが完成する。
【0054】
(7)第3貫通穴から排出孔まで
第3貫通穴35から排出孔52にかけて、排出部50の上部であって貫通孔42の通過位置には第2溝55及び第3溝56の底面が露出しており、支持部30の下部は回転部40の上面と接する平面となっている。したがって、第3貫通穴35から排出孔52に至るまで貫通孔42の内部には完成品Pが収容された状態となっている。すなわち、第3貫通穴35から排出孔52にかけては完成品Pが移送される。
【0055】
(8)排出孔
貫通孔42が排出孔52に達し、両者が水平面において重なると、図9に示すように、完成品Pは、下部の支えが無くなるため、排出孔52内に落下し、排出される。そして完成品Pは、排出孔52に接続される排出管12を通じて複合部品の製造装置10の外部に排出され、作業者が完成品Pを手で掴む取出部で停止される。
【0056】
(まとめ)
以上のように、本実施の形態では、回転する貫通孔42に対し、貫通穴32から筒状体としてのスプリングX及びワッシャーY、並びに軸体としてのボルトSを順次供給することにより、貫通孔42の内部で複合部品としての完成品Pを組み立てられる。そして、貫通穴32から順次部品を供給することにより、ワッシャーなどの部品の組み付けを忘れることがない。また、部品の組み立て順序を間違うことがない。
【0057】
ここで、筒状体としては、スプリングXやワッシャーYの他、ナットや円筒形状のスペーサーなどが挙げられる。また、軸体としては、ボルトSの他、ピンや棒材などが挙げられる。なお、軸体は筒状体に挿入されるものであればよく、形式的には筒状体である中空の軸であってもよい。
【0058】
本実施の形態では、筒状体であるスプリングX及びワッシャーYに軸体であるボルトSを組み合わせることで完成品Pを製造する。しかしこれに限らず、本実施の形態は、弾性係数などの特性や外径などの寸法が異なる複数種類のスプリングを組み合わせる場合、スプリングの上下にスペーサーを設ける場合などにも対応する。すなわち、筒状体に軸体を挿入する組み合わせ方法であれば、完成品を構成する部品の種類や数は問わない。筒状体や軸体の数に合わせて、貫通穴32を設け、組み立てる順序で各部品を貫通穴32に収容すればよい。なお、完成品を構成する部品の種類や数の増減に対応すべく、組み合わせる筒状体の数と軸体の数を合わせた数以上の貫通穴32を予め形成してもよい。
【0059】
また、回転部40には複数の貫通孔42が形成されているため、1の貫通孔42で複合部品を組み立てる場合と比して、数多くの複合部品が効率よく製造される。また、本実施の形態では回転部40に4個の貫通孔42が等角度で形成されているため、貫通孔42が不等角度で形成されている場合と比して、回転部40を一定速度で回転させた場合に完成品Pが周期的に製造される。回転部40が1回転すれば、4個の完成品Pが製造されることになる。なお、回転部40に形成する貫通孔42の数は4個に限らず、4個未満でも4個より多くてもよい。そして、回転部40に形成する貫通孔42の数及び回転部40の回転速度を調整することにより、完成品Pの製造速度が調整される。
【0060】
また、排出部50に溝53を設けたことにより、回転部40の軸方向の長さ(高さH)を軸体であるボルトSや筒状体であるスプリングXなどの長さ以下にすることができる。すなわち、排出部50に溝を設けていない場合と比して、回転部40の軸方向の長さが短い小型の装置が提供される。
【0061】
さらに、本実施の形態では、貫通孔42に収容されている部品の上端と回転部40の上端とを一致させるように回転部40の高さと溝53の深さを設計している。具体的には、回転部40の高さHを最初に貫通孔42に収容されるスプリングXの長さに等しく設計することにより、スプリングXの上端と回転部40の上端とを一致させている。また、第1溝54の深さh1をスプリングXの上に位置するワッシャーYの高さに等しく設計することにより、スプリングXにワッシャーYを組み合わせた状態の上端と回転部40の上端とを一致させている。さらに、第2溝55の深さh2をワッシャーYとワッシャーYの上に位置するボルトSの頭部を合わせた高さに等しく設計することにより、スプリングXとワッシャーYにボルトSを組み合わせた状態の上端と回転部40の上端とを一致させている。なお、第2溝55によってボルトSの位置が規制されるため、第3溝56の深さh3は、ボルトSのねじ部を逃すだけの深さがあれば足りる。
【0062】
以上、貫通孔42に収容されている部品の上端と回転部40の上端とを一致させることで、貫通穴32に部品を連続して収容させても、貫通穴32と貫通孔42とにまたがって部品が存在しない。したがって、回転部40は供給される部品の妨げを受けずに回転する。また、貫通穴32に部品を連続して収容させても、部品を1個ずつ送り出すための弁機構などを別途設ける必要はない。本実施の形態によれば、部品の上端と回転部40の上端とが一致しない場合と比して、貫通穴32に部品を連続して収容させても、貫通孔42には部品が一個ずつ供給される。
【0063】
一方、部品を1個ずつ送り出すための弁機構を設けたり、部品の供給装置が部品を一個ずつ送り出すようにする、つまり、貫通穴32の内部には部品一個だけが収容されるように形成してもよい。貫通穴32から貫通孔42に向けて部品が連続して侵入することが無ければ、回転部40を回転させるために、貫通孔42に収容されている部品の上端と回転部40の上端とを一致させる必要が無くなる。すなわち、部品を供給するに際し、貫通穴32に部品一個だけが収容されるように形成することで、貫通穴32に部品が連続して収容される場合と比して、回転部40の高さの制約が無くなる。例えば、回転部40の高さをスプリングXやボルトSの長さ以上にしてもよいし、回転部40の高さをスプリングXの長さ以下にしてもよい。なお、回転部40の高さを低くする場合は、貫通孔42に収容しきれない部品の端部を挿入可能な溝53を設ける。回転部40の高さに制約が無くなれば、寸法の異なる完成品Pが一台の複合部品の製造装置10で組み立てられる。
【0064】
本実施の形態の複合部品の製造装置10は、部品を重力により貫通孔42の内部に落下させて供給することにより部品を組み立てるものである。しかしこれに限らず、空気圧を用いた圧送方法などにより貫通孔42に部品を供給して部品を組み立ててもよい。向きを問わずに貫通孔42に部品を供給することができれば、重力により部品を貫通孔42に供給する場合と異なり、複合部品の製造装置10の設置の向きに制約が無くなる。例えば、複合部品の製造装置10は横向きに設置可能となる。
【0065】
本実施の形態では、回転部40の円筒面に歯車45を設け、駆動装置の歯車から動力を受けることにより回転部40が回転する。この回転により、貫通孔42中で複合部品である完成品Pが順次組み立てられる。なお、排出管12の先の取出部には図示しない透過式センサなどの検知センサが設置されており、当該センサが取出部に完成品Pが無いことを検知した場合に駆動装置は作動する。回転部40の駆動方法は歯車駆動に限らない。例えば、回転部40の外周部分をプーリーとし、ベルトにより動力を伝達してもよい。
【0066】
なお、回転部40に対して駆動装置を設けずに手動で回転部40を回して完成品Pを組み立ててもよい。駆動装置を設けた場合に比して、簡素な複合部品の製造装置10を提供することができる。
【0067】
本実施の形態では、スプリングX、ワッシャーY、ボルトSの順序で部品を供給することにより完成品Pを組み立てるが、これらの部品を供給する順序、換言すると組み立て順序を逆にしてもよい。組み立て順序を逆にする場合は、まず、貫通孔42に対してボルトSを頭部が下にねじ部が上にくるように供給する。そして回転部40の回転に伴い、ワッシャーY、スプリングXの順で部品を供給することにより、本実施の形態と上下の向きを逆転させた完成品Pが組み立てられる。
【符号の説明】
【0068】
10 複合部品の製造装置
11 軸
20 供給部
30 支持部
32 貫通穴
40 回転部
42 貫通孔
45 歯車
50 排出部
52 排出孔
53 溝
60 供給装置
X スプリング(筒状体の一例)
Y ワッシャー(筒状体の一例)
S ボルト(軸体の一例)
P 完成品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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