特許第6593165号(P6593165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6593165-水分付着防止治具 図000002
  • 6593165-水分付着防止治具 図000003
  • 6593165-水分付着防止治具 図000004
  • 6593165-水分付着防止治具 図000005
  • 6593165-水分付着防止治具 図000006
  • 6593165-水分付着防止治具 図000007
  • 6593165-水分付着防止治具 図000008
  • 6593165-水分付着防止治具 図000009
  • 6593165-水分付着防止治具 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593165
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】水分付着防止治具
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   F17C13/02 302
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-256274(P2015-256274)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120100(P2017-120100A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄介
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−043030(JP,A)
【文献】 特開昭58−028099(JP,A)
【文献】 米国特許第4498304(US,A)
【文献】 特開平11−141799(JP,A)
【文献】 特開平03−223600(JP,A)
【文献】 特開昭62−297599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温容器のノズルを含む所定空間を覆うと共に、一端が前記ノズルに装着され、かつ、他端が前記ノズルから前記低温容器内に挿入された物体のケーブルが引出される可撓性シートと、
該可撓性シートの前記一端を閉塞する第1閉塞部材と、
前記可撓性シートの前記他端を閉塞する第2閉塞部材とを備え、
前記所定空間内に前記物体が収容されると、前記第1閉塞部材によって前記一端を閉塞し、かつ、第2閉塞部材によって前記他端を閉塞することを特徴とする水分付着防止治具。
【請求項2】
前記可撓性シートは、離間配置された一対の開口を備え、
前記一対の開口に各々設けられた一対の開閉弁と、
前記一対の開閉弁の一方に接続される置換ガス供給源とをさらに備え、
前記一対の開閉弁の一方を介して前記可撓性シート内に置換ガスを供給すると共に、前記一対の開閉弁の他方を介して前記可撓性シート内の空気を外部に排気することを特徴とする請求項1記載の水分付着防止治具。
【請求項3】
前記第1閉塞部材及び前記第2閉塞部材は、
前記所定空間を囲むように前記可撓性シートに所定距離を隔てて設けられた一対の環状部材と、
該一対の環状部材の周方向における位置関係を固定する固定部材と
を備えることを特徴とする請求項1または2記載の水分付着防止治具。
【請求項4】
前記可撓性シートは、前記所定空間を囲むように前記可撓性シートに所定間隔を空けて設けられた複数の弾性ワイヤを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の水分付着防止治具。
【請求項5】
前記可撓性シートは、一方の対向辺が前記一端と前記他端とを各々形成する矩形状であり、前記所定空間を覆うように他方の対向辺を互いに接続させる接続部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の水分付着防止治具。
【請求項6】
前記低温容器は、低温タンクであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の水分付着防止治具。
【請求項7】
前記物体は、低温タンクの内部を撮像する撮像装置であることを特徴とする請求項6に記載の水分付着防止治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分付着防止治具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、低温庁槽の内部を観察する内部観察装置が開示されている。この内部観察装置は、ITVカメラ及び照明装置等の撮像装置を低温庁槽の屋根に設けられたノズルから内部に吊り下げ、LNGに浸漬させた状態で旋回させることにより内槽の各部位の状態を観察するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−043030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LNGは周知のように極低温液体であり、よって上記内部観察装置における撮像装置は、LNGに浸漬さることによって極低温まで冷却される。このような冷却状態の撮像装置は、使用後に低温庁槽の内部から回収されて常温まで温度上昇(ホットアップ)する。このホットアップは一般に冷却状態の撮像装置を大気中に放置することにより行われるが、このホットアップ時には撮像装置の表面で大気中の水分が結露し、さらに当該水分が氷となる。撮像装置を再使用するためには、このように表面に付着した水分を完全に除去する(乾燥させる)必要があるが、撮像装置は光学装置であり、また構造が比較的複雑なため、撮像装置からの水分除去(乾燥)には比較的長い時間が必要になる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、冷却雰囲気にあった物体を常温雰囲気に移動させた際の水分付着を簡易的に抑制あるいは防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、水分付着防止治具に係る第1の解決手段として、低温容器のノズルを含む所定空間を覆うと共に、一端が前記ノズルに装着され、かつ、他端が前記ノズルから前記低温容器内に挿入された物体のケーブルが引出される可撓性シートと、該可撓性シートの一端を閉塞する第1閉塞部材と、前記可撓性シートの他端近傍部位を閉塞する第2閉塞部材とを備え、前記所定空間内に前記物体が収容されると、前記第1閉塞部材によって前記一端を閉塞し、かつ、第2閉塞部材によって前記他端を閉塞する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、水分付着防止治具に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記可撓性シートは、離間配置された一対の開口を備え、前記一対の開口に各々設けられた一対の開閉弁と、前記一対の開閉弁の一方に接続される置換ガス供給源とをさらに備え、前記一対の開閉弁の一方を介して前記可撓性シート内に置換ガスを供給すると共に、前記一対の開閉弁の他方を介して前記可撓性シート内の空気を外部に排気する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、水分付着防止治具に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記第1閉塞部材及び前記第2閉塞部材は、前記所定空間を囲むように前記可撓性シートに所定距離を隔てて設けられた一対の環状部材と、該一対の環状部材の周方向における位置関係を固定する固定部材とを備える、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、水分付着防止治具に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記可撓性シートは、前記所定空間を囲むように前記可撓性シートに所定間隔を空けて設けられた複数の弾性ワイヤを備える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、水分付着防止治具に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記可撓性シートは、一方の対向辺が前記一端と前記他端とを各々形成する矩形状であり、前記所定空間を覆うように他方の対向辺を互いに接続させる接続部材を備える、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、水分付着防止治具に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記低温容器は、低温タンクである、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、水分付着防止治具に係る第7の解決手段として、上記第6の解決手段において、前記物体は、低温タンクの内部を撮像する撮像装置である、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、可撓性シートで低温容器のノズルを含む所定空間を覆った状態において、所定空間内に物体が収容されると、第1閉塞部材によって一端近傍部位を閉塞し、かつ、第2閉塞部材によって他端近傍部位を閉塞するので、冷却雰囲気にあった物体を常温雰囲気に移動させた際の水分付着を簡易的に抑制あるいは防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の全体構成を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第1の模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第2の模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第3の模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第4の模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第5の模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第6の模式図である。
図8】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第7の模式図である。
図9】本発明の一実施形態に係る水分付着防止治具の使用方法を示す第8の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る水分付着防止治具Aは、LNGタンク(低温タンク)の内部を撮像する撮像装置(物体)を適用対象とし、当該撮像装置への水分付着を防止あるいは抑制するための簡易的な治具である。
【0016】
詳細については後述するが、LNGタンクの屋根には、上記撮像装置をLNGタンクの内部に送り込むためのノズル(開口部)が設けられている。上記撮像装置は、このノズルからケーブルによって吊下げられた状態でLNGタンク内に挿入され、低温液体であるLNGに浸漬された状態でLNGタンクの内面を撮像する。なお、以下では、本実施形態に係る水分付着防止治具Aを単に本水分付着防止治具Aという。また、上記LNGタンクは、本発明における低温容器に相当する。
【0017】
本水分付着防止治具Aは、図1に示すように、可撓性シート1、接続部材2、複数の弾性ワイヤ3、第1閉塞部材4、第2閉塞部材5、第1パージ弁6(第1開閉弁)、第2パージ弁7(第2開閉弁)及び窒素供給源8を備えている。
【0018】
詳細については後述するが、可撓性シート1は、上記ノズルを含む所定空間を覆うと共に、一端1aがノズルに装着され、撮像装置のケーブルが他端1bから引出されるシート部材である。この可撓性シート1は、例えば可撓性を有する樹脂あるいは布から形成された矩形状のものであり、上記一端1aと他端1bとが一方の対向辺を構成し、また当該一方の対向辺とは異なる他方の対向辺を左端1cと右端1dとが構成する。
【0019】
接続部材2は、上記左端1cに設けられた第1接続部材2aと、上記右端1dに設けられた第2接続部材2bとを備えている。この接続部材2は、例えばファスナー(ジッパー)あるいはマジックテープ(登録商標)であり、上記第1接続部材2aと第2接続部材2bとが噛み合うことにより可撓性シート1の左端1cと右端1dとを開閉自在に接続する。すなわち、上記可撓性シート1は、接続部材2によって左端1cと右端1dとが互いに接続されることによって、環状の形状になる。
【0020】
複数の弾性ワイヤ3は、上記可撓性シート1において、一端1aと他端1bとの対峙方向(軸線方向)に所定間隔で、また左端1cと右端1dとの間に延在するように設けられたワイヤである。すなわち、これら弾性ワイヤ3は、接続部材2によって左端1cと右端1dとが接続されることによって可撓性シート1によって形成される空間(内部空間)を囲むように可撓性シート1の軸線方向に所定間隔を空けて設けられたワイヤである。このような弾性ワイヤ3は、機械的な弾性を有する弾性材料、例えば金属あるいは樹脂から形成されている。
【0021】
第1閉塞部材4は、上記可撓性シート1における一端1aの近傍部位に設けられた一対の環状部材4a,4bと、当該一対の環状部材4a,4bの周方向における位置関係を固定する固定部材4cとを備えている。この第1閉塞部材4は、上記可撓性シート1において一端1aの近傍部位を閉塞するためのものである。
【0022】
一対の環状部材4a,4bは、各々に2つの円弧状部材の一端を開閉自在に接続したものであり、可撓性シート1の軸線方向に所定距離を隔てた状態で可撓性シート1に取り付けられている。すなわち、一対の環状部材4a,4bは、複数の弾性ワイヤ3と略平行な姿勢で可撓性シート1の一端1aの近傍部位に設けられている。弾性ワイヤ3固定部材4cは、一対の環状部材4a,4bの一方に回動自在に取り付けられ、先端部が一対の環状部材4a,4bの他方に係合することにより一対の環状部材4a,4bの周方向における位置関係を固定する。
【0023】
第2閉塞部材5は、可撓性シート1における他端1bの近傍部位に設けられた一対の環状部材5a,5bと、当該一対の環状部材5a,5bの周方向における位置関係を固定する固定部材5cとを備えている。一対の環状部材5a,5bは、各々に2つの円弧状部材の一端を開閉自在に接続したものであり、可撓性シート1の軸線方向に所定距離を隔てた状態で可撓性シート1に取り付けられている。すなわち、一対の環状部材5a,5bは、一対の環状部材4a,4b及び複数の弾性ワイヤ3と略平行な姿勢で可撓性シート1の他端1bの近傍部位に設けられている。
【0024】
固定部材5cは、一対の環状部材5a,5bの一方に回動自在に取り付けられ、先端部が一対の環状部材5a,5bの他方に係合することにより一対の環状部材5a,5bの周方向における位置関係を固定する。詳細については後述するが、このような第2閉塞部材5は、可撓性シート1の内部空間内に撮像装置が収容した状態で、可撓性シート1の他端1bの近傍部位を閉塞するためのものである。
【0025】
なお、上述した一対の環状部材4a,4bと固定部材4cとからなる第1閉塞部材4の構成、また一対の環状部材5a,5bと固定部材5cとからなる第2閉塞部材5の構成はあくまで一例である。第1閉塞部材4及び第2閉塞部材5については、上述した構成以外の構成を適用してもよい。
【0026】
第1パージ弁6は、上記可撓性シート1における一端1aの近傍部位に設けられた手動開閉弁である。可撓性シート1における一端1aの近傍部位には開口(第1開口)が形成されており、第1パージ弁6は、上記第1開口に装着されている。このような第1パージ弁6は、後述する窒素供給源8(置換ガス供給源)に接続され、当該窒素供給源8から供給された窒素ガス(置換ガス)の可撓性シート1内の空間への供給を規制する。この窒素ガス(置換ガス)は、水分が十分に除去されたドライ窒素である。
【0027】
第2パージ弁7は、上記可撓性シート1における他端1bの近傍部位に設けられた手動開閉弁である。可撓性シート1における他端1bの近傍部位には開口(第2開口)が形成されており、第2パージ弁7は、上記第2開口に装着されている。この第2パージ弁7は、上記窒素ガスの可撓性シート1内への供給に伴う可撓性シート1内の空気の外部への排気を規制する。すなわち、可撓性シート1には第1開口と第2開口とが離間配置されており、第1開口には第1パージ弁6が、また第2開口には第2パージ弁7がそれぞれ設けられている。
【0028】
窒素供給源8は、所定量の窒素ガス(置換ガス)を貯留するタンクであり、第1パージ弁6に接続されている。この窒素供給源8は、第1パージ弁6を介して可撓性シート1の内部空間に窒素ガス(置換ガス)を供給する。本水分付着防止治具Aでは、窒素供給源から第1パージ弁6を介して可撓性シート1内に窒素ガスが置換ガスとして供給され、また上記窒素ガス(置換ガス)の供給に伴って可撓性シート1内の空気が第2パージ弁7を介して外部へ排気されることによって、可撓性シート1内の空気は窒素ガスに置換される。
【0029】
次に、このように構成された本水分付着防止治具Aの使用方法について、図2図9を参照して詳しく説明する。
【0030】
図2は、LNGタンクの内部検査の前後における撮像装置Wの状態(初期状態及び回収状態)を示している。この図2に示すように、撮像装置Wを用いてLNGタンクの内部検査を行う場合、LNGタンクの屋根に設けられた円筒状のノズルNには、同じく円筒状の開閉弁B(ボール弁あるいはゲート弁)、短管S及び締付けフランジFが同軸状に取り付けられる。
【0031】
そして、撮像装置Wは、締付けフランジFを経由して短管S内に一時的に収容され、その上で開閉弁Bを閉状態から開状態に操作されることにより、ケーブルCで吊り下げられた状態で短管S内からLNGタンク内に降ろされる。そして、撮像装置Wは、LNGタンク内のLNGに浸漬された状態でLNGタンクの内部を撮影することにより検査を行い、当該検査が終了すると、図2に示すように短管S内に一時的に収容される。
【0032】
そして、このように撮像装置Wが短管S内に収容された状態、また締付けフランジF及び第1、第2パージ弁6,7が閉状態において、上記締付けフランジFには、図3に示すように本水分付着防止治具Aが装着される。すなわち、本水分付着防止治具Aは、可撓性シート1の左端1cと右端1dとが乖離した状態つまり可撓性シート1が開いた状態で可撓性シート1の一端1a側が締付けフランジFの側方にあてがわれ、その後に可撓性シート1の左端1cと右端1dとを接続部材2で接続する、つまり可撓性シート1を開いた状態から閉じた状態とすることにより、略円筒状の可撓性シート1の他端1bからケーブルCが外部に突き出る状態で締付けフランジFに装着される。
【0033】
なお、この状態において、可撓性シート1に取り付けられた一対の環状部材4a,4b及び一対の環状部材5a,5bは、接続部材2による可撓性シート1の左端1cと右端1dとの接続に従って、開いた状態から閉じた状態(環状状態)となるが、周方向における位置関係は、固定部材4c及び固定部材5cによって固定されておらず、自由な状態である。また、この状態において、可撓性シート1の一端1a側は、ゴムバンドGが巻回されることにより締付けフランジFの外周面に密着した状態となる。
【0034】
この状態において、図3に示すように、第2閉塞部材5の一対の環状部材5a,5bのうち、可撓性シート1のより他端1b側に位置する環状部材5bを周方向に回動させることにより、可撓性シート1における他端1bの近傍部位を閉塞状態とする。すなわち、一対の環状部材5a,5bは、可撓性シート1の軸線方向に所定間隔を隔てて取り付けられており、また可撓性シート1は可撓性を有しているので、環状部材5bを回動させると、当該一対の環状部材5a,5bの間の可撓性シート1が捩れて一対の環状部材5a,5bの距離が近づき、最終的に可撓性シート1によって形成される開口がケーブルCの外径に等しくなる。したがって、第2閉塞部材5によれば、可撓性シート1の他端1bの近傍部位をケーブルCに密着させ、可撓性シート1とケーブルCとの隙間を閉塞させることができる。
【0035】
そして、可撓性シート1とケーブルCとの隙間を閉塞させた状態で、図4に示すように一対の環状部材5a,5bの周方向における位置関係を固定部材5cで固定する。この結果、可撓性シート1の他端1bの近傍部位における可撓性シート1の閉塞状態が保持される。なお、この他端1bの閉塞保持状態では、図4に示すように第1閉塞部材4と第2閉塞部材5との間の可撓性シート1が軸線方向において折りたたまれた状態、つまり可撓性シート1の軸線方向における長さが短くなった状態、また締付けフランジFが閉状態である。
【0036】
そして、この状態において、締付けフランジF及び第2パージ弁7を開状態とし、また開閉弁Bを微開状態とし、図5に示すようにケーブルCをさらに巻き上げると、可撓性シート1が軸線方向において折りたたまれた状態から軸線方向に延びた状態となると共に短管S内の撮像装置Wが可撓性シート1内に移動する。この撮像装置Wの移動の際に、可撓性シート1内の空気は、開閉弁B、短管S及び締付けフランジFを介してノズルNから浸入するBOG(Boil Off Gas)によって置換される。
【0037】
すなわち、可撓性シート1内の空気は、LNGタンク内のLNGが気化することによって発生したBOG(Boil Off Gas)によってパージされる。したがって、短管S内でBOG雰囲気下にあった撮像装置Wは、BOG雰囲気のまま、つまり水分が十分に除去された状態のまま可撓性シート1内に移動する。なお、この状態では、撮像装置Wは、可撓性シート1において第1閉塞部材4の位置よりも上側に位置している。
【0038】
そして、第2パージ弁7を閉状態とし、また開閉弁Bを全閉状態とし、その上で締付けフランジFを閉状態とする。そして、この状態において、図6に示すように第1閉塞部材4の一対の環状部材4a,4bのうち、可撓性シート1のより一端1a側に位置する環状部材4aを周方向に回動させることにより、可撓性シート1における一端1aの近傍部位を閉塞状態とする。すなわち、上述した第2閉塞部材5の場合と同様に一対の環状部材4a,4bは可撓性シート1の軸線方向に所定間隔を隔てた状態で取り付けられており、また可撓性シート1は可撓性を有しているので、環状部材4aを回動させると、当該一対の環状部材4a,4bの間の可撓性シート1が捩れて一対の環状部材4a,4bの距離が近づき、最終的に可撓性シート1によって形成される開口が閉じる。したがって、第1閉塞部材4によれば、可撓性シート1の一端1aの近傍部位の開口を閉塞させることができる。
【0039】
ここまでの作業工程によって、撮像装置Wは、可撓性シート1の内部空間に略密閉状態で収容される。この状態において、図7に示すように、第1パージ弁6及び第2パージ弁7が開状態とされることによって、可撓性シート1の内部空間のBOGが窒素ガスに置換される。すなわち、BOGは可燃性ガスなので、安全面を考慮して、撮像装置Wの周囲雰囲気は、BOG雰囲気から窒素ガス雰囲気に変換される。
【0040】
そして、このように撮像装置Wの周囲雰囲気が十分に窒素雰囲気に変換されると、図8に示すように、第1パージ弁6及び第2パージ弁7が閉状態とされ、よって可撓性シート1の内部空間は再び略密閉状態となる。そして、この状態において、可撓性シート1からゴムバンドGが外されることにより、本水分付着防止治具Aと締付けフランジFとの仮止め状態が解除される。
【0041】
そして、撮像装置Wを内部空間に収容した状態の本水分付着防止治具Aは、図9に示すように横置きされ、撮像装置Wの温度が常温になるまで放置される。そして、撮像装置Wは、温度が常温になった段階で本水分付着防止治具Aから取り出される。
【0042】
このような本水分付着防止治具Aによれば、LNGタンク内のLNGに浸漬された状態つまり極低温雰囲気(冷却雰囲気)にあった撮像装置Wを常温雰囲気に移動させた際の水分付着を簡易的に抑制あるいは防止することができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、LNGタンク(低温タンク)の内部を撮像する撮像装置(物体)を適用対象としたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、LNGタンク(低温タンク)に関係しない物体あるいは撮像装置以外の物体にも適用可能である。
【0044】
(2)上記実施形態では、可撓性シート1内のBOGを窒素ガスに置換したが、本発明はこれに限定されない。可撓性シート1によって撮像装置Wを覆うだけでも可撓性シート1内への水分の浸入を防止あるいは抑制することができるので、状況に応じて窒素ガスによる置換を省略してもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、可撓性シート1に複数の弾性ワイヤ3を設けたが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて弾性ワイヤ3を削除してもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、可撓性シート1内の空気を窒素ガスによってある程度まで置換すると、第1パージ弁6及び第2パージ弁7を閉状態として窒素ガスによる置換を中止したが、本発明はこれに限定されない。可撓性シート1は、接続部材によって左端1cと右端1dとが接続され得ることにより略円筒状の形状となるが、接続部材による左端1cと右端1dとの接続は気密なものではなく、簡易的な気密性を備える程度である。したがって、窒素ガスによる置換を中止した後に水分が可撓性シート1内に浸入する場合もあり得る。このような懸念を払拭するためには、本水分付着防止治具Aを締付けフランジFから取り外して常温まで放置する間、窒素ガスによる置換を継続してもよい。
【符号の説明】
【0047】
A 水分付着防止治具
1 可撓性シート
1a 一端
1b 他端
1c 左端
1d 右端
2 接続部材
2a 第1接続部材
2b 第2接続部材
3 弾性ワイヤ
4 第1閉塞部材
4a,4b 環状部材
4c 固定部材
5 第2閉塞部材
5a,5b 環状部材
5c 固定部材
6 第1パージ弁(第1開閉弁)
7 第2パージ弁(第2開閉弁)
8 窒素供給源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9