(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パイプ拡管部材は、前記パイプの内径より所定量だけ外形が大きく、前記パイプ貫通穴よりも長い円筒形状の拡径部と、前記拡径部に一体に形成されたカシメ部とを備え、
前記第2工程において、前記拡径部の全体を前記パイプ貫通穴に挿入することで前記拡管部を形成するとともに、前記拡管端部が前記カシメ部と前記テーパ内面に密着するまで前記パイプ拡管部材を挿入することを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器のベース板及びパイプの接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す第1実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
[電磁接触器のカプセル構造部について]
図1は、本発明に係る電磁接触器の第1実施形態のガス密閉型構造(以下、カプセル構造部13)を示す断面図であり、
図2は、
図1で示したカプセル構造部13の外観斜視図である。
図1に示す第1実施形態において、下端面を開放した例えばセラミックスを焼成して一体形成した桶状の消弧室1と、この消弧室1の上側側壁面に一対の例えば銅製の固定接触子2が所定間隔を保って貫通してろう付により接合されている。
【0011】
固定接触子2をろう付した消弧室1の開口端部1aに、第1の接続部材4の延伸した凸状に形成された筒部4aがろう付により接合されることで、消弧室接合部6が組立てられる。これら消弧室1に対する固定接触子2及び第1の接続部材4の筒部4aの接合は、同時にろう付することにより一体化することができる。このとき、消弧室1には、固定接触子2及び第1の接続部材4の筒部4aのろう付位置に、メタライズ処理を行って金属層又は金属膜を形成し、その金属層又は金属膜にNiめっきを施して置く。
組立てられた消弧室接合部6は、第1の接続部材4の筒部4aに一体に連結されたフランジ部4bを鉄製のベース板7に密着させてシール溶接により接合する。
また、鉄製のベース板7には、銅製のパイプ3がベース板7を貫通した状態で接合されている。
【0012】
一端が封止された有底筒状のキャップ8は、第2の接続部材5の延伸した凸状をなす筒部5aがキャップ8の開口端部8aにシール溶接にて接合されることでキャップ接合部12が組み立てられる。このキャップ接合部12をベース板7に取り付けるには、第2の接続部材5に設けたフランジ部5bをベース板7に密着させてシール溶接する。
その際、消弧室接合部6とキャップ接合部12とが、ベース板7に設けた挿通穴7aを介して互いに連通するように取り付ける。これにより、電磁接触器のカプセル構造部13が組み立てられる。
【0013】
消弧室接合部6の消弧室1と固定接触子2と第1の接続部材4を接合する方法は、炉中ろう付によって同時に行える。第1及び第2の接続部材4,5は低膨張率の材料、ベース板7は磁性材料、キャップ8は非磁性材料を用いて形成することが好ましい。
カプセル構造部13を組み立てる際には、
図1では示していないが、例えば特許文献1の
図5に示した部品を配置する。すなわち、ベース板7の第1面(消弧室1を向く面)7bに、消弧室1内に配置される可動接点を有する可動接触子、この可動接触子を支持する可動軸、この可動軸の周りに配置された可動接点を固定接触子2の固定接点に押圧するための接触バネを配置し、ベース板7の第2面(キャップ接合部12が接続する面)7cに、挿通穴7aを貫通して延長される可動軸に連結された可動鉄心及び復帰バネを配置しておく。
【0014】
そして、ベース板7に、可動接触子、可動軸、接触バネを覆うように消弧室接合部6を配置するとともに、可動軸、可動鉄心及び復帰バネを覆うようにキャップ接合部12を配置して、これら消弧室接合部6及びキャップ接合部12をベース板7にシール溶接する。
電磁接触器のカプセル構造部13を組み立てると、ベース板7に接合したパイプ3にガス排気装置(不図示)を接続してカプセル構造部13の内部のガスを真空排気するとともに、ガス供給部(不図示)から封入ガス(水素ガス、窒素ガス、水素と窒素の混合ガス、或いはエア)が、パイプ3を介してカプセル構造部13の内部に封入される。そして、カプセル構造部13の内部へのガス封入が完了すると、パイプ3を潰して溶接することでパイプ3を封止する。
【0015】
[第1実施形態のパイプを塑性変形させるパイプ拡管部材について]
次に、ベース板7にパイプ3を接合する際に使用するパイプ拡管部材について説明する。
図3に示すように、鉄製のベース板7は、消弧室1を向く第1面7bからキャップ接合部12が接続する第2面7cに貫通する内径d1のパイプ貫通穴7dが形成されており、図示しないベース支持台で支持されている。
ベース板7のパイプ貫通穴7dの第1面7b側には、開口端面に向かうに従い徐々に拡径して開口部を内径d2(d2>d1)としたテーパ内面15が形成されている。このテーパ内面15は、パイプ貫通穴7dの中心軸に対して45°の角度で傾斜している円錐面である。
【0016】
銅製のパイプ3は、パイプ貫通穴7dの内径d1より僅かに小さな外径d3(d3>d1)、内径d4の円筒中空管であり、パイプ下端がダイス16上に載って保持されながらベース板7のパイプ貫通穴7dに挿入され、パイプ上端がベース板7の第1面7bに面一に配置されている。
パイプ拡管部材は、パイプ3を内管から塑性変形させる中実円筒部材であり、例えばポンチ17を用いる。
このポンチ17は、ポンチ本体18と、ポンチ本体18の下部に一体形成され、パイプ3の内径d4より所定量だけ大きな外径d5を有し、パイプ貫通穴7dよりも長い円筒形状の拡径部19と、拡径部19の先端側に向かうに従い徐々に縮径して形成された挿入案内部20と、拡径部19の基端から連続して形成され、拡径部19から離間するに従い徐々に拡径して形成されたカシメ部21と、を備えている。カシメ部21は、ポンチ17の中心軸に対して45°の角度で傾斜している円錐面である。
【0017】
[第1実施形態のベース板にパイプを接合する方法について]
次に、ベース板7にパイプ3を接合する方法について、
図4から
図6を参照して説明する。
先ず、
図4に示すように、ベース板7の第1面7b側からポンチ17を下降していくと、拡径部19がパイプ3の内周面に接触してパイプ3を拡管状態に塑性変形させ、パイプ3の外周面とベース板7のパイプ貫通穴7dの内周面が隙間無く密着した拡管部22aを形成する。
そして、ポンチ17をさらに挿入し、拡径部19に一体に形成されたカシメ部21によって拡管部22aの開口端をさらに径方向外方に塑性変形させ、拡管部22aの開口端の外周面とベース板17のテーパ内面15が完全に密着した拡管端部22bが形成される。
【0018】
次いで、
図5に示すように、ベース板7の第1面7b及び第2面7cの上下を逆転させ、ベース板7のパイプ貫通穴7dからパイプ3が立ち上がった状態に配置する。
そして、パイプ3の周囲の第2面7c上に、円環状のろう材23を配置する。
次いで、
図6に示すように、円環状のろう材23をパイプ3の周囲に配置したベース板7を加熱炉24の内部に配置し、加熱炉24の熱でろう材23が溶融することで、ベース板7の第2面7c側のパイプ貫通穴7dの開口周縁とパイプ3の外周とがろう付により接合される。
【0019】
次に、上述した第1実施形態の効果について説明する。
パイプ貫通穴7dの内周面とパイプ3の外周面を密着させた拡管部22aを形成することにより、パイプ貫通穴7dとパイプ3の間にろう材23が流れ込まないので、パイプ7及びパイプ3の接合部は、ろう材23の内部に発生するボイドの影響を受けることなく接合部の気密性を高めることができ、かつ、ろう付による接合強度も有することができる。
また、ポンチ17は拡径部19とカシメ部21が一体に形成されているので、パイプ2に拡管部22aを形成する工程と、パイプ3の一端をテーパ内面15に密着させた拡管端部22bを形成する工程を連続して行うことができ、パイプ3を塑性変形させる作業を容易に行うことができる。
【0020】
また、ベース板7に固定されたパイプ3は、他の部材で支持しなくても単独で加熱炉24内に配置することができるので、ろう材23を溶融するための加熱作業の簡略化も図ることができる。
さらに、第1実施形態では、
図1に示すように、ろう材23によるベース板7及びパイプ3のろう付に加えて、パイプ貫通穴7dにパイプ3を密着させ、第1面7b側に拡管端部22bが形成されているので、
図1の矢印で示す方向の引抜き力に十分に耐えることが可能なパイプ3の引抜き強度を増大させることができる。
【0021】
上述した第1実施形態では、パイプ3の外径d3の寸法を4mm、パイプ3の内径d4の寸法を2mmに設定し、ポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法を2.2mmに設定した。
なお、ポンチ17のカシメ部21は、ポンチ17の中心軸に対して45°の角度で傾斜し、このカシメ部21に対応するテーパ内面15も、パイプ貫通穴7dの中心軸に対して45°の角度で傾斜するものとして説明したが、カシメ部21及びテーパ内面15は、15°〜60°の範囲で傾斜して形成されていればよい。
【0022】
ここで、
図7は、ベース板に接合されたパイプの引き抜き強度を、従来と本発明とで比較したグラフである。
図7の横軸に示している比較例1は、前述の発明が解決しようとする課題の欄で説明した、溶融したろう材がベース板のパイプ外周面及びパイプ挿入穴の間に流れ込みボイドが発生しやすいベース板とパイプの接合部材である。
また、比較例2〜4は、ベース板7のパイプ貫通穴7dに挿入されたパイプ3が拡管状態で塑性変形される部材であるが、ベース板7及びパイプ3のろう付による接合をしていない部材である。ここで、比較例2はポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法が2.22mmに設定され、比較例3はポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法が2.26mmに設定され、比較例4はポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法が2.30mmに設定されている。
【0023】
そして、発明1は、ポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法が2.22mmに設定されているとともに、ベース板7及びパイプ3がろう材23で接合されている部材である。
また、発明2は、ポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法が2.26mmに設定されているとともに、ベース板7及びパイプ3がろう材23で接合されている部材である。
さらに、発明3は、ポンチ17の拡径部19の外径d5の寸法が2.30mmに設定されているとともに、ベース板7及びパイプ3がろう材23で接合されている部材である。
【0024】
この
図7から明らかなように、比較例2〜4で示したベース板7のパイプ貫通穴7dに挿入されたパイプ3を密着させただけでは、従来構造の比較例1より大きな引き抜き強度を発生することができない。
これに対して、発明1〜3で示したように、ベース板7のパイプ貫通穴7dに挿入されたパイプ3を密着させるとともに、ベース板7及びパイプ3をろう材23で接合することで、従来構造の比較例1より大きな引き抜き強度を発生することがわかる。