特許第6593199号(P6593199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593199
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】リーチ式フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/10 20060101AFI20191010BHJP
   B66F 9/075 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B66F9/10 A
   B66F9/075 C
   B66F9/075 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-14577(P2016-14577)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-132598(P2017-132598A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸田 裕己
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特公平04−055889(JP,B2)
【文献】 実開昭53−143018(JP,U)
【文献】 特開平05−139335(JP,A)
【文献】 特開平05−139334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーチレグに支持されている車輪を操舵可能とし、かつ車体の収納部に収納されるバッテリを前方へ引き出し可能としたリーチ式フォークリフトにおいて、
前記リーチレグは、前記車体の前面から前方に延出された一対の箱状の部材であり、前記リーチレグ同士が車幅方向において向き合う側を内側とし、その反対側を外側とすると、前記リーチレグは、当該リーチレグの内側から外側へ車幅方向に凹ませた凹部と、ローラを転動可能に支持するレールとを有し、
前記凹部は、前記バッテリを前記収納部から引き出すとき及び前記収納部に収納するときに当該バッテリの下面と対向する対向部分と、当該対向部分から立設された第1壁部及び第2壁部とによって前記バッテリの移動経路となる経路部を構成し、
前記第1壁部は、前記経路部による前記バッテリの移動方向における前記バッテリの正面に位置しており、
前記第2壁部は、前記バッテリの移動方向に沿って位置するとともに、前記バッテリの側面と対向しており、
前記車輪の操舵機構にはリーチレグ内に配置された減速機構を含み、
前記減速機構を構成する少なくとも一部の構成要素は、前記対向部分の下側に配置されていることを特徴とするリーチ式フォークリフト。
【請求項2】
前記減速機構は、前記経路部と並設され、当該経路部よりも前記リーチレグの外側に配置されている請求項1に記載のリーチ式フォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーチ式フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
リーチ式フォークリフトには、リーチレグに支持されている車輪(前輪)に操舵機構を設けることによって全方向に移動可能としたフォークリフトがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のリーチ式フォークリフトでは、リーチレグ内に前輪の操舵機構が配置されている。前輪の操舵機構は、例えばモータや当該モータに連結される減速機構などによって構成されている。
【0003】
また、バッテリを動力源としたリーチ式フォークリフトでは、バッテリの保守や点検などの作業性を向上させるために、リーチシリンダを利用してバッテリを車両の前方に引き出す装置を搭載することが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−80087号公報
【特許文献2】特開2002−3194公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のリーチ式フォークリフトにおいてバッテリは、左右一対のリーチレグに沿って前方に引き出される。このため、特許文献1の全方向に移動可能としたフォークリフトにバッテリの引き出し装置を採用する場合は、リーチレグ内に配置されているモータや減速機構と前方に引き出されるバッテリとの干渉を考慮する必要がある。このような干渉を回避する方法としては、例えばリーチレグ間の距離を車幅方向に広げることが考えられる。しかしながら、フォークリフトは、幅狭な通路での荷役や走行が要求されていることから、リーチレグ間の距離を広げる方法は好ましいとは言えない。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、リーチレグに支持されている車輪を操舵可能とした構成としても、バッテリを前方に引き出し可能としたリーチ式フォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するリーチ式フォークリフトは、リーチレグに支持されている車輪を操舵可能とし、かつ車体の収納部に収納されるバッテリを前方へ引き出し可能としたリーチ式フォークリフトにおいて、前記リーチレグは、前記バッテリを前記収納部から引き出すとき及び前記収納部に収納するときに当該バッテリの下面と対向する対向部分に前記バッテリの移動経路となる経路部を有し、前記車輪の操舵機構にはリーチレグ内に配置された減速機構を含み、前記減速機構を構成する少なくとも一部の構成要素は、前記経路部の下側に配置されていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、減速機構の少なくとも一部の構成要素をバッテリの経路部の下側に配置しているので、減速機構を配置する領域をリーチレグの上下方向に確保することができる。つまり、バッテリと減速機構との干渉を防止するために減速機構を配置する領域をリーチレグの車幅方向に広げる必要がなく、リーチレグ間の距離が車幅方向に広がらない。このため、幅狭な通路での荷役や走行と言ったフォークリフトに要求される事柄を満たしつつ、リーチレグに支持されている車輪を操舵可能とした構成としても、バッテリを前方に引き出すことができる。
【0009】
上記リーチ式フォークリフトにおいて、前記経路部は、前記リーチレグを内側から外側へ車幅方向に凹ませて形成されており、前記減速機構は、前記経路部と並設され、当該経路部よりも前記リーチレグの外側に配置されているとよい。この構成によれば、リーチレグの外側に減速機構を配置していることで、バッテリの移動経路を十分に確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リーチレグに支持されている車輪を操舵可能とした構成としても、バッテリを前方に引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】リーチ式フォークリフトの概略を示す側面図。
図2】前輪の操舵機構を示す一部断面図。
図3】操舵機構の構成要素であるモータと減速機構を示す一部断面図。
図4】リーチレグ及び前輪を示す正面図。
図5】バッテリと減速機構の位置関係を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、リーチ式フォークリフトを具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、リーチ式フォークリフト10は、車体11の前面下部から前方に延びる左右一対のリーチレグ12を有している。また、リーチ式フォークリフト10は、車体11の前方にマスト装置13を有しており、そのマスト装置13は左右一対のマスト14とフォーク15とを備えている。各マスト14の下端部は、リーチレグ12に沿って移動可能なマストキャリッジ16に連結されている。これにより、各マスト14は、車体11に搭載されているリーチシリンダ17の伸縮動作によって前後移動、すなわちリーチ動作を行う。
【0013】
各リーチレグ12の先端部には、車輪としての前輪18が支持されている。また、車体11の下部には、後輪19が支持されている。この実施形態のリーチ式フォークリフト10は、全方向に移動可能としたフォークリフトであり、前輪18及び後輪19の何れもが操舵を可能とした操舵輪である。なお、後輪19は、駆動輪を兼ねている。
【0014】
車体11の後部は立席タイプの運転室20となっており、運転室20にあるインストルメントパネル21には荷役操作のための荷役操作レバー22や、前後進操作のためのアクセル操作レバー23が設けられている。また、運転室20には、ステアリングホイール24が設けられている。
【0015】
また、車体11の前部には、バッテリ25を収納する収納部26を有する。この実施形態のリーチ式フォークリフト10は、バッテリ25の電力を動力源として走行する電気式のフォークリフトである。なお、バッテリ25には、多数のバッテリセルと、これらのバッテリセルを収納するバッテリケースと、を含む。そして、バッテリ25には、当該バッテリ25を収納部26に固定するための必要な機能部品のほか、前出し用の機能部品が設けられている。前出し用の機能部品は、収納部26に収納されているバッテリ25を前方へ引き出すための部品や、前方に引き出したバッテリ25を収納部26に収納するための部品である。例えば、マスト14とバッテリ25とを連結するための部品である。
【0016】
以下、図2図5にしたがって、リーチレグ12の構成、及び前輪18の操舵機構27について詳しく説明する。
図2に示すように、リーチレグ12は、車両の前後方向に延出された箱状の部材であり、その内部には操舵機構27を配置する空間28を有する。また、リーチレグ12は、図4及び図5に示すようにリーチレグ12を正面視したときに「C」形のレール29を有する。なお、リーチレグ12は、一対のリーチレグ12が車幅方向において向き合う側を内側とし、その反対側を外側とする。これにより、レール29は、リーチレグ12の内側に位置している。そして、レール29は、リーチレグ12と同様に、車両の前後方向に延出されている。レール29には、マストキャリッジ16のローラが転動可能に支持されている。これにより、マスト14は、マストキャリッジ16がレール29に沿って前後方向に案内されることによって移動する。また、図4及び図5に示すように、レール29の上面には、車両の前後方向に延出された溝状の摺動部29aが形成されている。摺動部29aには、バッテリ25を収納部26から前方に引き出すとき、及び収納部26に収納するときに、バッテリ25の下面25aに設けられたレールガイド30が摺動される。
【0017】
また、図2及び図5に示すように、リーチレグ12は、当該リーチレグ12を内側から外側へ車幅方向に凹ませた凹部31を有する。凹部31は、バッテリ25を収納部26から前方に引き出すとき、及び収納部26に収納するときにバッテリ25の下面25aと対向する対向部分31aを有する。この対向部分31aは、リーチレグ12の外郭をなす筐体の一部分である。この実施形態においてバッテリ25は、リーチレグ12の凹部31においてバッテリ25の下面25aの一部と凹部31の対向部分31aとが上下方向に重なるようにして移動する。
【0018】
なお、図2及び図5に示すように、凹部31は、対向部分31aから立設された壁部31b,31cを有する。壁部31bは、図2に矢示するバッテリ25の移動方向においてバッテリ25の正面に位置し、壁部31cは、バッテリ25の移動方向に沿って位置する。また、図5に示すように、凹部31の対向部分31aは、リーチレグ12の上面12aに対して下方に位置している。つまり、凹部31は、リーチレグ12の一部分を上下方向及び左右方向に切り欠いて形成されている。そして、この実施形態において凹部31は、バッテリ25の移動経路となる経路部として形成されている。
【0019】
図4に示すように、前輪18は、正面視略L形のブラケット32に固着された車軸33に回転自在に支持されている。ブラケット32は、上面部32aとその上面部32aから鉛直方向に延出された垂下部32bとを有する。車軸33は、その軸方向が車幅方向に沿うようにブラケット32の垂下部32bに固着されている。図2に示すように、ブラケット32の上面部32aには、その軸方向が鉛直方向に沿うようにステアリング軸34が固着されている。また、ブラケット32の上面部32aには、ステアリング軸34に回転力を伝達する第1歯車35が固着されている。
【0020】
第1歯車35は、図示しない回転軸に固着された第2歯車36と噛み合っており、その回転軸には第1タイミングプーリ37が固着されている。第1タイミングプーリ37は、前輪18の操舵力を発生させるモータ38に連結された減速機構39の構成要素である第2タイミングプーリ40とタイミングベルト41を介して連結されている。
【0021】
図3に示すように、減速機構39は、モータ38の回転軸38aと噛み合う第1減速歯車42と、第2タイミングプーリ40の回転軸43に固着された第2減速歯車44と、第1減速歯車42と第2減速歯車44との間に介在された中間歯車45と、を有する。これらの第1減速歯車42、第2減速歯車44、及び中間歯車45は、何れも減速機構39の構成要素である。また、第1減速歯車42、第2減速歯車44、及び中間歯車45は、ケース46に収納されており、このケース46も減速機構39の構成要素である。
【0022】
上記構成により、この実施形態の操舵機構27では、モータ38のトルクが、減速機構39を介して第1タイミングプーリ37に伝達される。そして、第1タイミングプーリ37にモータ38のトルクが伝達されると、そのトルクは第2歯車36を介して第1歯車35にさらに伝達され、ステアリング軸34に回転力が付与される。その結果、ブラケット32はステアリング軸34の軸線周りに回転し、その回転によって前輪18を操舵することができる。
【0023】
また、この実施形態のリーチ式フォークリフト10では、ブラケット32の上面部32aに、ステアリング軸34の回転量を検出するセンサ47が設けられている。前述したように前輪18は、ステアリング軸34の回転に伴って、その軸線周りに回転する。このため、センサ47の検出結果により、前輪18の操舵角を検出することができる。
【0024】
図2に示すように、リーチレグ12には、凹部31に並設するようにしてモータ38及び減速機構39が配置されている。つまり、モータ38及び減速機構39は、ブラケット32や第1タイミングプーリ37など、操舵機構27の他の構成要素よりも、リーチレグ12において車幅方向に狭くなった空間28に配置されている。そして、リーチレグ12の凹部31はリーチレグ12の内側に位置していることから、モータ38及び減速機構39は、バッテリ25の経路部である凹部31よりもリーチレグ12の外側に配置されている。このため、第1タイミングプーリ37と第2タイミングプーリ40を連結するタイミングベルト41は、第1タイミングプーリ37がリーチレグ12の内側に位置していることにより、平面視において内側から外側に傾くように架け渡されている。
【0025】
また、図5に示すように、減速機構39の一部の構成要素は、凹部31の対向部分31aの下側に配置されている。具体的に言えば、この実施形態では、減速機構39の一部の構成要素として、第2減速歯車44の一部分及びケース46の一部分が、凹部31の対向部分31aの下側に配置されている。つまり、これらの減速機構39の一部の構成要素は、リーチレグ12の一部分をバッテリ25の移動経路としていることで、その移動経路を避けて配置されている。
【0026】
以下、この実施形態のリーチ式フォークリフト10の作用を説明する。
バッテリ25は、マスト14と連結された状態においてリーチシリンダ17を伸長動作、すなわちマスト14を前方に移動させるように動作させると、マスト14とともに前方に移動して収納部26から引き出される。このとき、バッテリ25は、その下面25aが凹部31の対向部分31aの上側を通過するように、リーチレグ12に沿って移動する。しかし、この実施形態では、減速機構39の一部の構成要素は、凹部31の対向部分31aよりも下側に配置されていることから、バッテリ25が前方に引き出されるとき、及び収納部26に収容されるときにおいてバッテリ25と干渉しない。
【0027】
したがって、この実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)減速機構39の一部の構成要素を凹部31の対向部分31aの下側に配置しているので、第2減速歯車44のように径の大きな歯車を用いてもリーチレグ間の距離を車幅方向に広げることなく、バッテリ25との干渉を回避した状態で減速機構39を配置することができる。このため、幅狭な通路での荷役や走行と言ったフォークリフトに要求される事柄を満たしつつ、リーチレグ12に支持されている前輪18を操舵可能とした構成としても、バッテリ25を前方に引き出すことができる。
【0028】
(2)つまり、上記構成により、全方向に移動可能としたリーチ式フォークリフト10においてバッテリ25の前出し機構を採用することができる。したがって、バッテリの横出し機構を採用したリーチ式フォークリフトに比べて、バッテリの保守や点検などの作業性を向上させることができる。
【0029】
(3)リーチレグ12の外側に減速機構39を配置していることで、バッテリ25の移動経路を十分に確保することができる。つまり、全方向に移動可能としたリーチ式フォークリフト10においてバッテリ25の前出し機構を採用することができる。
【0030】
(4)前輪18の操舵角を検出するセンサ47を、ステアリング軸34の回転量を検出するように配置したことで、モータ38や減速機構39の配置スペースを広く確保できる。
【0031】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 凹部31の対向部分31aの下側に配置される減速機構39の構成要素は、全ての構成要素が配置されていてもよい。また、一部の構成要素が配置される場合において、どの構成要素が配置されていてもよい。例えば、減速歯車の一部又は全部のみが配置されていてもよいし、ケース46の一部のみが配置されていてもよい。
【0032】
○ また、減速機構39の構成要素に加え、例えばモータ38の一部又は全部が、凹部31の対向部分31aの下側に配置されていてもよい。
○ 減速機構39の具体的な構成は実施形態の構成に限定されず、任意に変更可能である。例えば、歯車列は、ステアリング軸34に伝達すべき操舵力を得るために必要な減速比に応じて任意に設定することができる。
【0033】
○ 操舵機構27の具体的な構成は実施形態の構成に限定されず、任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…リーチ式フォークリフト、12…リーチレグ、25…バッテリ、25a…下面、26…収納部、27…操舵機構、31…凹部、31a…対向部分、39…減速機構、44…第2減速歯車、46…ケース。
図1
図2
図3
図4
図5