特許第6593209号(P6593209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593209
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20191010BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20191010BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20191010BHJP
   H01F 17/02 20060101ALI20191010BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01F27/00 S
   H01F17/00 B
   H01G4/40 321A
   H01F17/02
   H03H7/075 A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-21119(P2016-21119)
(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公開番号】特開2017-139422(P2017-139422A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】大倉 遼
(72)【発明者】
【氏名】工藤 敬実
(72)【発明者】
【氏名】西山 健次
【審査官】 鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−100006(JP,U)
【文献】 特開2006−157738(JP,A)
【文献】 特開平08−330517(JP,A)
【文献】 特開平07−066043(JP,A)
【文献】 特開2008−172075(JP,A)
【文献】 特開2002−299986(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3093578(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 17/00
H01F 17/02
H01G 4/40
H03H 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられたコンデンサ用下部電極と、
前記下部電極を覆うように前記基板上に設けられた無機誘電体層と、
前記無機誘電体層上に直接設けられ、前記無機誘電体層を介して前記下部電極に対向するコンデンサ用上部電極と、
前記無機誘電体層上に設けられ、前記下部電極または前記上部電極に電気的に接続されたコイルと
を備え、
前記無機誘電体層は、前記下部電極の形状に追従して、形成され、前記無機誘電体層における前記下部電極の側方の部分の上面は、前記無機誘電体層における前記下部電極と前記上部電極の間の部分の上面よりも、低く、
前記無機誘電体層における前記下部電極の側方の部分の厚みは、前記無機誘電体層における前記下部電極と前記上部電極の間の部分の厚みよりも、厚い、電子部品。
【請求項2】
前記コイルを構成するコイル導体の少なくとも一部の厚みは、前記下部電極の厚みよりも、厚い、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記コイル導体の少なくとも一部の厚みは5μm以上で、かつ、15μm以下であり、
前記下部電極の厚みは1μm以下である、請求項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としては、特開2008−34626号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この電子部品は、基板と、基板上に設けられたコンデンサ用下部電極と、基板上に設けられたコイルと、コイル、基板および下部電極を覆う無機誘電体層と、無機誘電体層上に設けられ、無機誘電体層を介して下部電極に対向するコンデンサ用上部電極とを有する。無機誘電体層の厚みは、一定であり、無機誘電体層は、コイル、基板および下部電極の形状に追従して、形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−34626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の電子部品を実際に製造して使用しようとすると、次の問題があることを見出した。コイルは、無機誘電体層で覆われているので、コイル(インダクタ)の配線間の浮遊容量が、無機誘電体層において増加する。これにより、コイルの性能が悪化する。
【0005】
そこで、本発明の課題は、コイルの性能の低下を抑制できる電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の電子部品は、
基板と、
前記基板上に設けられたコンデンサ用下部電極と、
前記下部電極を覆うように前記基板上に設けられた無機誘電体層と、
前記無機誘電体層上に直接設けられ、前記無機誘電体層を介して前記下部電極に対向するコンデンサ用上部電極と、
前記無機誘電体層上に設けられ、前記下部電極または前記上部電極に電気的に接続されたコイルと
を備える。
【0007】
本発明の電子部品によれば、コイルは、無機誘電体層上に設けられているので、コイル(インダクタ)の配線間の浮遊容量が、無機誘電体層において増加せず、コイルの性能の低下を抑制できる。
【0008】
また、電子部品の一実施形態では、前記無機誘電体層における前記下部電極の側方の部分の厚みは、前記無機誘電体層における前記下部電極と前記上部電極の間の部分の厚みよりも、厚い。
【0009】
前記実施形態によれば、無機誘電体層における下部電極の側方の部分の厚みは、無機誘電体層における下部電極と上部電極の間の部分の厚みよりも、厚い。これにより、少なくとも下部電極の下側のエッジ部を、膜厚の厚い無機誘電体層で覆うことができる。したがって、無機誘電体層による下部電極のエッジ部のカバレッジの悪化を防止できて、熱歪等が生じても、無機誘電体層における下部電極のエッジ部を覆う部分のクラック等の構造欠陥を防止できる。したがって、品質の信頼性の低下を抑制することができる。
【0010】
また、電子部品の一実施形態では、前記無機誘電体層の上面は、平坦である。
【0011】
ここで、平坦であるとは、表面凹凸形状における凹部と凸部の最大高さが1μm以下であることをいう。
【0012】
前記実施形態によれば、無機誘電体層の上面は、平坦であるので、無機誘電体層は、下部電極に沿った形状とならない。これにより、下部電極の上下のエッジ部を、膜厚の厚い無機誘電体層で覆うことができる。したがって、無機誘電体層における下部電極の上下のエッジ部を覆う部分の構造欠陥を防止できる。
【0013】
また、電子部品の一実施形態では、前記コイルは、水平方向において、前記下部電極と対向しないで離隔している。
【0014】
前記実施形態によれば、コイルは、水平方向において、下部電極と対向しないで離隔しているので、コイルと下部電極の間の無機誘電体層において浮遊容量を低減できる。
【0015】
また、電子部品の一実施形態では、前記コイルを構成するコイル導体の少なくとも一部の厚みは、前記下部電極の厚みよりも、厚い。
【0016】
前記実施形態によれば、コイルを構成するコイル導体の少なくとも一部の厚みは、下部電極の厚みよりも、厚い。これにより、コイルの直流抵抗値を小さくでき、コイル特性を向上できる。
【0017】
また、電子部品の一実施形態では、前記コイル導体の少なくとも一部の厚みは、5μm以上で、かつ、15μm以下であり、前記下部電極の厚みは、1μm以下である。
【0018】
前記実施形態によれば、コイル導体の少なくとも一部の厚みは、5μm以上で、かつ、15μm以下であり、下部電極の厚みは、1μm以下であるので、SAP(Semi Additive Process)工法により、直流抵抗値の小さな電子部品を形成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子部品によれば、コイルの配線間の浮遊容量が無機誘電体層において増加せず、コイルの性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の電子部品の第1実施形態を示す断面図である。
図2A図1のA−A断面図である。
図2B図1のB−B断面図である。
図2C図1のC−C断面図である。
図3】電子部品の等価回路図である。
図4A】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図4B】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図4C】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図4D】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図4E】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図4F】電子部品の製造方法を説明する説明図である。
図5】ガラス材料の比率と、無機誘電体層の断面空隙率および誘電率との関係を示すグラフである。
図6】本発明の電子部品の第2実施形態を示す断面図である。
図7】本発明の電子部品の第3実施形態を示す断面図である。
図8】本発明の電子部品の第4実施形態を示す断面図である。
図9】本発明の電子部品の第5実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の電子部品の第1実施形態を示す断面図である。図2Aは、図1のA−A断面図である。図2Bは、図1のB−B断面図である。図2Cは、図1のC−C断面図である。図3は、電子部品の等価回路図である。
【0023】
図1図2A図2C図3に示すように、電子部品10は、コイル2およびコンデンサ3を有するLC複合型の電子部品である。電子部品10は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載される。電子部品10は、例えば、低域透過フィルタ、高域透過フィルタ、帯域透過フィルタ、トラップフィルタ等のLCフィルタとして用いられる。
【0024】
電子部品10は、基板1と、基板1上に設けられ互いに電気的に接続されたコイル2およびコンデンサ3と、コイル2およびコンデンサ3を覆う絶縁体4とを有する。コイル2の一端は、第1端子61に接続される。コイル2の他端は、第2端子62に接続される。コンデンサ3の一端は、コイル2の他端および第2端子62に接続される。コンデンサ3の他端は、第3端子63に接続される。
【0025】
基板1は、セラミックやガラス、半導体、有機材料と無機材料のコンポジット材などで構成される。この実施形態では、基板1は、例えば、アルミナを主体とするセラミック基板を用いる。
【0026】
コイル2は、2層の第1コイル導体21および第2コイル導体22を含む。第1、第2コイル導体21,22は、下層から上層に順に、配置される。第1、第2コイル導体21,22は、積層方向に電気的に接続されている。第1、第2コイル導体21,22は、それぞれ、平面においてスパイラル状に形成されている。第1、第2コイル導体21,22は、例えば、Cu、Ag、Auなどの低抵抗な金属によって構成される。好ましくは、後述するセミアディティブ(SAP:Semi Additive Process)工法によって形成されるCuめっきを用いることで、低抵抗でかつ狭ピッチなスパイラル配線を形成できる。
【0027】
第1、第2コイル導体21,22は、同一軸を中心として、配置されている。第1コイル導体21と第2コイル導体22とは、軸方向(積層方向)からみて、同一方向に巻き回されている。
【0028】
第1コイル導体21は、内周端部21aと外周端部21bとを有する。第2コイル導体22は、内周端部22aと外周端部22bとを有する。第1コイル導体21の内周端部21aと第2コイル導体22の内周端部22aとは、積層方向に延在するビア配線23を介して、電気的に接続される。第1コイル導体21の外周端部21bは、第2端子62に電気的に接続される。第2コイル導体22の外周端部22bは、第1端子61に電気的に接続される。
【0029】
コンデンサ3は、2層の下部電極31および上部電極32を含む。下部電極31および上部電極32は、下層から上層に順に、配置される。下部電極31と上部電極32は、積層方向に離隔して配置される。下部電極31および上部電極32は、それぞれ、平板状に形成されている。下部電極31および上部電極32は、例えば、第1、第2コイル導体21,22と同じ材料から構成される。下部電極31および上部電極32の厚みは、第1、第2コイル導体21,22の厚みと略同じである。
【0030】
下部電極31は、平面方向に延在する引出配線24を介して、第3端子63に電気的に接続される。上部電極32は、平面方向に延在する引出配線24を介して、第2端子62に電気的に接続される。
【0031】
絶縁体4は、3層の第1〜第3絶縁層41〜43を含む。第1〜第3絶縁層41〜43は、下層から上層に順に、配置される。第1〜第3絶縁層41〜43は、例えば、エポキシやフェノール、ポリイミド、ビスマレイミド、LCPなどを主たる成分とする有機材料や、ガラス、窒化珪素などの無機材料により構成される。この実施形態では、例えば、第1絶縁層41にガラスを用い、第2、第3絶縁層42,43にポリイミド樹脂を用いる。
【0032】
第1絶縁層41と第2絶縁層42との間には、無機誘電体層5が設けられている。無機誘電体層5は、好ましくは、無機誘電体材料と、無機誘電体材料の軟化点よりも低い軟化点を有するガラス材料とを含む。無機誘電体層5に含まれるガラス材料の比率は、好ましくは、15wt%以上で、かつ、35wt%以下である。
【0033】
無機誘電体材料は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム及びジルコン酸チタン酸鉛等である。ガラス材料は、例えば、ホウ硅酸ガラス等の軟化点700℃以下の低軟化点ガラスである。
【0034】
この実施形態では、例えば、無機誘電体層5に、チタン酸バリウム(Ba,Ti,O)とホウ硅酸ガラス(B,Si,Ba,O)を含んだ材料を用いる。また、ガラス材料の比率は、例えば、20wt%である。
【0035】
基板1上に、第1絶縁層41が設けられ、第1絶縁層41上に、コンデンサ用下部電極31が設けられる。下部電極31を覆うように、第1絶縁層41上に、無機誘電体層5が設けられる。
【0036】
無機誘電体層5上に、コンデンサ用上部電極32が直接設けられ、上部電極32は、無機誘電体層5を介して下部電極31に対向する。このように、下部電極31と、上部電極32と、下部電極31と上部電極32との間の無機誘電体層5とが、コンデンサ3を構成する。
【0037】
無機誘電体層5における下部電極31の側方の部分の厚みT51は、無機誘電体層5における下部電極31と上部電極32の間の部分の厚みT52よりも、厚い。無機誘電体層5の上面5aは、平坦である。ここで、平坦であるとは、表面凹凸形状における凹部と凸部の最大高さが1μm以下であることをいう。
【0038】
無機誘電体層5上に、第1コイル導体21が直接設けられ、第1コイル導体21は、上部電極32に電気的に接続される。上部電極32および第1コイル導体21を覆うように、無機誘電体層5上に、第2絶縁層42が設けられる。第2絶縁層42上に、第2コイル導体22が設けられ、第2コイル導体22を覆うように、第2絶縁層42上に、第3絶縁層43が設けられる。
【0039】
コイル2(第1、第2コイル導体21,22)は、水平方向において、下部電極31と対向しないで離隔している。水平方向とは、上下方向に直交する方向である。コイル2は、水平方向からみて、下部電極31と重なっていない。
【0040】
次に、電子部品10の製造方法について説明する。
【0041】
図4Aに示すように、基板1上に第1絶縁層41を積層する。この実施形態では、基板1は、アルミナを主とするセラミックス基板であり、第1絶縁層41は、ホウ硅酸ガラスとバインダとの混合ペースト材料を印刷工法により基板1に塗膜したのち、およそ800℃の焼成プロセスにより焼付けて、形成される。なお、無機誘電体層5の形成時の焼成温度が高い場合、焼成プロセスにより結晶化するガラス材料を選択し、再溶融温度を高温化するのが望ましい。
【0042】
その後、図4Bに示すように、第1絶縁層41上に、コンデンサ用下部電極31を設ける。この実施形態では、TiおよびCuからなるメッキ給電膜(シード層)をスパッタ工法により成膜したのち、感光性フォトレジストにより、Cu配線のパターニングを行う。そして、パターン部に選択的に電解Cuメッキを施したのち、感光性レジストの剥離、シード膜のエッチングを実施し、下部電極31を形成する。以後、この配線形成工程を、SAP(Semi Additive Process)工法という。
【0043】
その後、図4Cに示すように、下部電極31を覆うように、第1絶縁層41上に、無機誘電体層5を設ける。この実施形態では、ホウ硅酸ガラスとTiBaO、焼結助剤、バインダから構成されたペーストを印刷工法により塗膜し、およそ900℃〜1000℃の焼成プロセスにより焼付けて、無機誘電体層5を構成する。印刷時および焼成時に生じる無機誘電体層5の厚みのレベリングにより、下部電極31による第1絶縁層41上の凹凸が平坦化され、基板1に対し平坦な無機誘電体層5が形成される。すなわち、下部電極31上の無機誘電体層5の厚みよりも、それ以外の部位の無機誘電体層5の厚みを厚く形成することが可能となる。必要に応じて、グラインド加工やポリッシング、ラッピング加工などにより、機械的に下部電極31上の無機誘電体層5を選択的に薄化、平坦化してもよい。
【0044】
その後、図4Dに示すように、無機誘電体層5上に、コンデンサ用上部電極32および第1コイル導体21を設ける。この実施形態では、上部電極32および第1コイル導体21をSAP工法により形成する。
【0045】
その後、図4Eに示すように、上部電極32および第1コイル導体21を覆うように、無機誘電体層5上に、第2絶縁層42を設ける。この実施形態では、ポリイミドを塗布後キュアして、第2絶縁層42を形成する。
【0046】
その後、図4Fに示すように、第2絶縁層42上に、第2コイル導体22を設ける。このとき、第2絶縁層42にレーザ加工などによりビアホールを形成し、ビアホールにビア配線23を形成する。これにより、第2コイル導体22は、ビア配線23を介して、第1コイル導体21に電気的に接続される。第2コイル導体22およびビア配線23は、SAP工法により形成される。
【0047】
そして、第2コイル導体22を覆うように、第2絶縁層42上に、第3絶縁層43を設ける。この実施形態では、ポリイミドを塗布後キュアして、第3絶縁層43を形成する。
【0048】
その後、基板1を部品サイズで、ダイシングやスクライブにより個片化して、図1に示す電子部品10を形成する。
【0049】
前記電子部品10によれば、コイル2は、無機誘電体層5上に設けられているので、コイル2(インダクタ)の配線間の浮遊容量が、無機誘電体層5において増加せず、コイル2の性能の低下を抑制できる。
【0050】
前記電子部品10によれば、無機誘電体層5における下部電極31の側方の部分の厚みT51は、無機誘電体層5における下部電極31と上部電極32の間の部分の厚みT52よりも、厚く、無機誘電体層5の上面5aは、平坦である。つまり、無機誘電体層5は、下部電極31に沿った形状とならない。
【0051】
これにより、無機誘電体層5における下部電極31の下エッジ部31aおよび上エッジ部31bを覆う部分の膜厚を厚くすることができる。したがって、無機誘電体層5による下部電極31の上下エッジ部31a,31bのカバレッジの悪化を防止できて、熱歪等が生じても、無機誘電体層5における下部電極31の上下エッジ部31a,31bを覆う部分のクラック等の構造欠陥を防止できる。したがって、品質の信頼性の低下を抑制することができる。
【0052】
また、下部電極31と上部電極32の間の無機誘電体層5の厚みを薄くできて、コンデンサ3の容量の低下を防止できる。したがって、コンデンサ3の容量の低下による性能の劣化を防止できる。
【0053】
前記電子部品10によれば、コイル2は、水平方向において、下部電極31と対向しないで離隔しているので、コイル2と下部電極31の間の無機誘電体層5において浮遊容量を低減できる。
【0054】
前記電子部品10によれば、好ましくは、無機誘電体層5は、無機誘電体材料と、無機誘電体材料の軟化点よりも低い軟化点を有するガラス材料とを含む。これにより、無機誘電体層5の製造時(印刷時および焼成時)に、無機誘電体材料が焼結する前にガラス材料が軟化することにより、無機誘電体層5の流動性がよくなる。これにより、無機誘電体層5のレベリング性が向上して、無機誘電体層5の上面5aが平滑に形成される。
【0055】
前記電子部品10によれば、好ましくは、無機誘電体層5に含まれるガラス材料の比率は、15wt%以上で、かつ、35wt%以下であるので、無機誘電体層5の誘電率が向上する。これに対して、ガラス材料の比率が小さいと、流動性が低下し、焼結性が低下して、誘電率が低下する。一方、ガラス材料の比率が大きいと、無機誘電体材料の比率が低下して、誘電率が低下する。
【0056】
図5は、ガラス材料の比率と、無機誘電体層の断面空隙率および誘電率との関係を示す。横軸にガラス材料の比率[wt%]を示し、左側の縦軸に断面空隙率[%]を示し、右側の縦軸に誘電率εを示す。実線は、ガラス材料の比率と無機誘電体層の断面空隙率との関係を示し、点線は、ガラス材料の比率と無機誘電体層の誘電率との関係を示す。
【0057】
断面空隙率[%]は、無機誘電体層を研磨やイオンミリング等により断面を露出させ、SEM等の高倍率観察が可能な設備で観察し、画像解析により試料断面の無機誘電体材料部と空隙部の面積を算出し、観測領域の空隙比率を断面空隙率とした。
【0058】
誘電率εは、無機誘電体層の上下表面に電極材料を形成し、電圧・周波数を印加して電極間に蓄えられる電気容量を測定することで算出した比誘電率に真空の誘電率を乗算した値である。
【0059】
図5の実線に示すように、ガラス材料の比率が小さくなると、無機誘電体層の断面空隙率は大きくなる。つまり、無機誘電体層の断面空隙率が大きくなると、無機誘電体層の流動性が低下する。また、図5の点線に示すように、ガラス材料の比率が一定値よりも小さく、または、大きくなると、無機誘電体層の誘電率は小さくなる。したがって、ガラス材料の比率が、15wt%以上で、かつ、35wt%以下であると、無機誘電体層の誘電率を高くできる。
【0060】
ここで、ガラス材料の比率と無機誘電体層の誘電率との関係において、誘電率の最大値は、無機誘電体材料の種類に応じて異なるが、誘電率の最大値は、無機誘電体材料の種類に関わらず、ガラス材料の比率の15wt%〜35wt%の範囲に存在する。
【0061】
(第2実施形態)
図6は、本発明の電子部品の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、コイル導体とコンデンサ用電極の厚みが相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0062】
図6に示すように、第2実施形態の電子部品10Aにおいて、コイル2の第1コイル導体21の厚みT21は、コンデンサ3の下部電極31の厚みT31よりも、厚い。これにより、コイル2の直流抵抗値を小さくでき、コイル特性を向上できる。言い換えると、第1コイル導体21は、下部電極31と同一層に設けられていないので、下部電極31の厚みT31を薄く形成することができる。これに対して、第1コイル導体21を下部電極31と同一層に設けるとき、下部電極31の厚みT31を薄く形成すると、第1コイル導体21の厚みT21も薄くなり、インダクタの直流抵抗が増加する。
【0063】
上部電極32の厚みT32は、第1コイル導体21の厚みT21と同じである。なお、第2コイル導体の厚みは、第1コイル導体21の厚みT21と同じであってもよく、または、薄くてもよい。つまり、コイル2の少なくとも一部が、下部電極31の厚みT31よりも、厚い。
【0064】
この実施形態では、コイル2(第1、第2コイル導体21,22)の厚みは、5μm以上で、かつ、15μm以下であり、下部電極31の厚みT31は、1μm以下である。これにより、SAP工法により、直流抵抗値の小さな電子部品を形成できる。
【0065】
SAP工法でコイル2を作製すると、コイル2の配線において、L(配線幅)/S(配線スペース(配線ピッチ))/t(配線厚み)は、例えば、8/5/7μm、5/5/10μm、8/5/12μm、または、10.3/5.6/7.4μmとなる。このように、コイル2の厚みを、5μm以上で、かつ、15μm以下とすると、コイル2をSAP工法で作製できる範囲となる。また、下部電極31の厚みT31を、1μm以下とすることで、SAP工法により制御可能な厚みに設定できる。
【0066】
(第3実施形態)
図7は、本発明の電子部品の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態は、第1実施形態とは、無機誘電体層の厚みが相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0067】
図7に示すように、第3実施形態の電子部品10Bにおいて、無機誘電体層5の厚みT50は、一定であり、無機誘電体層5は、下部電極31の形状に追従して、形成される。このような構成においても、第1実施形態と同様に、コイル2は、無機誘電体層5上に設けられているので、コイル2(インダクタ)の配線間の浮遊容量が、無機誘電体層5において増加せず、コイル2の性能の低下を抑制できる。
【0068】
(第4実施形態)
図8は、本発明の電子部品の第4実施形態を示す断面図である。第4実施形態は、第1実施形態とは、無機誘電体層の厚みが相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第4実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0069】
図8に示すように、第4実施形態の電子部品10Cにおいて、無機誘電体層5の上面5aは、平坦でなく、無機誘電体層5における下部電極31の側方の部分の厚みT51は、無機誘電体層5における下部電極31と上部電極32の間の部分の厚みT52よりも、厚い。
【0070】
これにより、無機誘電体層5における下部電極31の下エッジ部31aを覆う部分の膜厚を厚くすることができる。したがって、無機誘電体層5による下部電極31の上下エッジ部31a,31bのカバレッジの悪化を防止できて、熱歪等が生じても、無機誘電体層5における下部電極31の上下エッジ部31a,31bを覆う部分のクラック等の構造欠陥を防止できる。したがって、品質の信頼性の低下を抑制することができる。
【0071】
また、下部電極31と上部電極32の間の無機誘電体層5の厚みを薄くできて、コンデンサ3の容量の低下を防止できる。したがって、コンデンサ3の容量の低下による性能の劣化を防止できる。
【0072】
(第5実施形態)
図9は、本発明の電子部品の第5実施形態を示す断面図である。第5実施形態は、第4実施形態とは、コイル導体とコンデンサ用電極の厚みが相違する。この相違する構成を以下に説明する。なお、第5実施形態において、第4実施形態と同一の符号は、第4実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0073】
図9に示すように、第5実施形態の電子部品10Dにおいて、コイル2の第1コイル導体21の厚みT21は、コンデンサ3の下部電極31の厚みT31よりも、厚い。これにより、コイル2の直流抵抗値を小さくでき、コイル特性を向上できる。コイル2とコンデンサ3の厚みは、第2実施形態と同様であるので、その詳細な説明は、省略する。
【0074】
また、第4実施形態と同様に、無機誘電体層5における下部電極31の側方の部分の厚みT51を、無機誘電体層5における下部電極31と上部電極32の間の部分の厚みT52よりも、厚くし、かつ、第2実施形態と同様に、下部電極31の厚みT31を、第1コイル導体21の厚みT21よりも、薄くすることで、コイル2(第1、第2コイル導体21,22)を、水平方向において、下部電極31と対向しないで離隔できる。これにより、コイル2と下部電極31の間の無機誘電体層5において浮遊容量を低減できる。
【0075】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1から第5実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0076】
前記実施形態では、コイルを構成するコイル導体の数量は、2つであるが、1つまたは3つ以上でもよい。
【0077】
前記実施形態では、絶縁体は、第1〜第3絶縁層から構成されているが、第1絶縁層を省略してもよく、また、絶縁体は、1層、2層または4層以上から構成されてもよい。
【0078】
前記実施形態では、コイルは、上部電極に電気的に接続されているが、下部電極に電気的に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 基板
2 コイル
21 第1コイル導体
21a 内周端部
21b 外周端部
22 第2コイル導体
22a 内周端部
22b 外周端部
23 ビア配線
24 引出配線
3 コンデンサ
31 下部電極
31a 下エッジ部
31b 上エッジ部
32 上部電極
4 絶縁体
41〜43 第1〜第3絶縁層
5 無機誘電体層
5a 上面
10,10A〜10D 電子部品
61〜63 第1〜第3端子
21 第1コイル導体の厚み
31 下部電極の厚み
32 上部電極の厚み
50,T51,T52 無機誘電体層の厚み
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7
図8
図9