特許第6593224号(P6593224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593224
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/28 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
   B60K17/28 C
   B60K17/28 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-34565(P2016-34565)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-149322(P2017-149322A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2018年11月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−166337(JP,A)
【文献】 特開平08−104149(JP,A)
【文献】 特開昭56−099822(JP,A)
【文献】 特開2013−247904(JP,A)
【文献】 特開2011−218951(JP,A)
【文献】 特開2015−150927(JP,A)
【文献】 特開2013−043561(JP,A)
【文献】 実開昭57−069739(JP,U)
【文献】 特開2001−018671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)の前側に、ラジエータ(22)とバッテリ(17)とエンジン(E)とを内装するボンネット(2)を備え、
前記エンジン(E)の左右両側を支持し、前記走行車体(1)の前部まで延びる少なくとも左右に略平行な機体フレーム(8)を有し、前記エンジン(E)の動力を前方に伝動する伝動軸(11)と、該伝動軸(11)に連結して回転数を変速するギヤを内装するギヤケース(12)と、前記ギヤケース(12)に連結して前記走行車体の前側に突出するフロントPTO軸(13)と、を備え、前記伝動軸(11)を前記機体フレーム(8)の間に設け、前記ギヤケース(12)の上部を、前記機体フレーム(8)を構成する左右のプレート(9L),(9R)と横方向に繋いで設ける前部のプレート(9F)とに囲まれる空間で支持し、前記ギヤケース(12)の後部をケースステー(20)に固定し、前記ケースステー(20)を前記左右のプレート(9L),(9R)ボルト固定する構成で支持し、
前記フロントPTO軸(13)を前記前部のプレート(9F)の下方に設け、更に前方に突出させ、
前記ギヤケース(12)の下部をアクスルケースブラケット(14)より下方位置に突出させ、前記ギヤケース(12)下部の前面に前記フロントPTO軸(13)を突設し、
前記フロントPTO軸(13)には左右及び上方を覆う保護カバー(16)を設け、
前記前部のプレート(9F)には牽引用のヒッチ(19)を取り付け、前記牽引用のヒッチ(19)は前記保護カバー(16)の上方に設け、
前記ギヤケース(12)は、前記バッテリ(17)を載置するバッテリベースプレート(18)の下方に設け、前記バッテリベースプレート(18)を着脱自在に構成し、
前記バッテリベースプレート(18)は、下面をフラットに形成し、前記伝動軸(11)が、前記バッテリベースプレート(18)の直下方を通過する構成とし、
前記伝動軸(11)は、前後に自在継手(11a)を設けており、中間部で2分割して角スプライン嵌合して長手方向に伸縮自在に構成することを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
前記伝動軸(11)は、前記アクスルケースブラケット(14)に形成した切り欠き部(15)を通過させる構成としてあることを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントPTO軸を備えたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボンネット内のエンジンの動力を車体前方に伝動軸を延ばし、ケースに収容されるベルト伝動及びクラッチ装置を経て車体前部から前方にフロントPTO軸を突出させる構成である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−216833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術によると、ケースを機体フレームの前側に別途取り付ける構造であり、複雑な構造になっている。
【0005】
本発明は、構造を簡単にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1記載の本発明は、走行車体(1)の前側に、ラジエータ(22)とバッテリ(17)とエンジン(E)とを内装するボンネット(2)を備え、
前記エンジン(E)の左右両側を支持し、前記走行車体(1)の前部まで延びる少なくとも左右に略平行な機体フレーム(8)を有し、前記エンジン(E)の動力を前方に伝動する伝動軸(11)と、該伝動軸(11)に連結して回転数を変速するギヤを内装するギヤケース(12)と、前記ギヤケース(12)に連結して前記走行車体の前側に突出するフロントPTO軸(13)と、を備え、前記伝動軸(11)を前記機体フレーム(8)の間に設け、前記ギヤケース(12)の上部を、前記機体フレーム(8)を構成する左右のプレート(9L),(9R)と横方向に繋いで設ける前部のプレート(9F)とに囲まれる空間で支持し、前記ギヤケース(12)の後部をケースステー(20)に固定し、前記ケースステー(20)を前記左右のプレート(9L),(9R)ボルト固定する構成で支持し、
前記フロントPTO軸(13)を前記前部のプレート(9F)の下方に設け、更に前方に突出させ、
前記ギヤケース(12)の下部をアクスルケースブラケット(14)より下方位置に突出させ、前記ギヤケース(12)下部の前面に前記フロントPTO軸(13)を突設し、
前記フロントPTO軸(13)には左右及び上方を覆う保護カバー(16)を設け、
前記前部のプレート(9F)には牽引用のヒッチ(19)を取り付け、前記牽引用のヒッチ(19)は前記保護カバー(16)の上方に設け、
前記ギヤケース(12)は、前記バッテリ(17)を載置するバッテリベースプレート(18)の下方に設け、前記バッテリベースプレート(18)を着脱自在に構成し、
前記バッテリベースプレート(18)は、下面をフラットに形成し、前記伝動軸(11)が、前記バッテリベースプレート(18)の直下方を通過する構成とし、
前記伝動軸(11)は、前後に自在継手(11a)を設けており、中間部で2分割して角スプライン嵌合して長手方向に伸縮自在に構成することを特徴とするトラクタである。
請求項2記載の本発明は、前記伝動軸(11)は、前記アクスルケースブラケット(14)に形成した切り欠き部(15)を通過させる構成としてあることを特徴とする請求項1記載の本発明のトラクタである。
第1の本発明に関連する発明は、走行車体(1)の前側にエンジン(E)を内装するボンネット(2)を備え、前記エンジン(E)の左右両側を支持し、前記走行車体(1)の前部まで延びる少なくとも左右に略平行な機体フレーム(8)を有し、前記エンジン(E)の動力を前方に伝動する伝動軸(11)と、該伝動軸に連結して回転数を変速するギヤを内装するギヤケース(12)と、前記ギヤケースに連結して前記走行車体の前側に突出するPTO軸(13)を備え、前記伝動軸(11)を前記機体フレーム(8)の間に設け、前記ギヤケース(12)を前記機体フレームの左右のプレート(9L),(9R)と横方向に繋いで設ける前部のプレート(9F)で支持し、前記PTO軸(13)を前記前部のプレート(9F)の下方に設け、更に前方に突出させてあることを特徴とする。
機体フレーム(8)の形状を効率よく利用してエンジン(E)やギヤケース(12)を支持し、伝動軸(11)、PTO軸(13)等をバランス良く配置することができる。
【0008】
の本発明に関連する発明は、の本発明に関連する発明において、前記前部のプレート(9F)には牽引用のヒッチ(19)を取り付け、前記牽引用のヒッチ(19)は前記PTO軸(13)の上方に設けてあることを特徴とする。
【0009】
上記構成によると、牽引ヒッチ(19)は、機体フレームである左右プレートの前部を繋ぐ前部プレート(9F)に取り付けるものであり、構成が強固であって、PTO軸の上方に効率よく取り付けることができる。
【0010】
の本発明に関連する発明は、1又はの本発明に関連する発明において、前記PTO軸(13)にはこの左右及び上方を覆う保護カバー(16)を設けてあることを特徴とする。
【0011】
上記構成によると、PTO軸(13)の下方を除く周囲をカバー(16)によって覆うため、PTO軸を効果的に安全に保護することができる。
【0012】
の本発明に関連する発明は、1又は2又はの本発明に関連する発明において、前記ギヤケース(12)は、バッテリ(17)を載置するバッテリベースプレート(18)の下方に設置してあることを特徴とする。
【0013】
上記構成によると、バッテリベースプレート(18)は着脱自在又はバッテリ載置部に切り欠きを設けることで、ギヤケース(12)のメンテナンスの容易化を図ることができる。
【0014】
の本発明に関連する発明は、1又は2又は3又はの本発明に関連する発明において、前記伝動軸(11)は、アクスルケースブラケット(14)の切り欠き部(15)を通る構成としてあることを特徴とする。
【0015】
上記構成によると、アクスルケースブラケット(14)の切り欠き部(15)によって伝動軸(11)を通すことができるので、伝動軸の配置スペースが小さくて済み、省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上要するに、本発明によれば、従来からの機体フレームの形状を効率よく利用して、エンジンやギヤケースを支持でき、伝動軸、フロントPTO軸等バランス良く配置することができる。
の本発明に関連する発明によれば、従来からの機体フレームの形状を効率よく利用して、エンジンやギヤケースを支持でき、伝動軸、フロントPTO軸等バランス良く配置することができる。
【0017】
の本発明に関連する発明によれば、の本発明に関連する発明の効果に加えて、機体フレームに牽引用ヒッチを効率よく取り付けることできる。
【0018】
の本発明に関連する発明によれば、1又はの本発明に関連する発明の効果に加えて、フロントPTO軸をカバーによって覆い効果的、安全に保護することができる。
【0019】
の本発明に関連する発明によれば、1又は2又はの本発明に関連する発明の効果に加えて、バッテリベースプレートの着脱自在構成等によってギヤケースのメンテナンスを容易に行うことができる。
【0020】
の本発明に関連する発明によれば、1又は2又は3又はの本発明に関連する発明の効果に加えて、伝動軸をアクスルケースブラケットの切り欠き部を通すことによって伝動軸の配置スペースの省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】トラクタの側面図
図2】トラクタ要部の側面図
図3】同上要部の斜視図
図4】ボンネットを除いたトラクタ要部の側面図
図5】同上要部の斜視図
図6】同上要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
【0023】
図1は、トラクタの側面図を示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5に伝えるようにしている。後輪5はフェンダ5aで覆われており、後輪5で跳ね飛ばされた泥などが運転席7に飛散しない構成としている。
【0024】
エンジンEの後方に前輪4,4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。また、運転席7の後方には安全フレーム7aが設置されている。
【0025】
エンジンEの左右両側を支持し、走行車体1の前部まで延びる機体フレーム8を備えている。この機体フレーム8は、左右に略平行な左右プレート9L,9Rと前側を横方向に繋いで設ける前部フレーム9Fとからなり、平面視で略コの字型に形成されている。
【0026】
エンジンEの動力をクランクプーリ部から前方に向けて伝動する伝動軸11は、その前後に自在継手11aを設けており、中間部で2分割して角スプライン嵌合として長手方向に伸縮自在に構成してある。
【0027】
これにより、伝動軸11の径を小さくできる。そして、機体に負荷が生じても、伝動軸11は長手方向に伸縮するので、伝動軸11の損傷を防止できる。
【0028】
また、伝動軸11の周囲はカバーで覆う構成としているので、伝動軸11の角スプライン部に泥などが付着するのを防止できる。
【0029】
そして、その伝動軸11に連結して回転数を変速するギヤを内装するギヤケース12を機体の前部に構成している。伝動軸11の回転動力はギヤケース12に入力して変速され、その前面から走行車体前側に突出するフロントPTO軸13を駆動する構成としている。
【0030】
また、前記伝動軸11は、機体フレーム8を構成する左右プレート9L,9Rの間に設けられ、しかも、アクスルケースブラケット14の切り欠き部15を通した構成になっている。
【0031】
このように、アクスルケースブラケット14に切り欠き部15を形成し、この切り欠き部15に伝動軸11を通過させる構成としたので、上下方向をコンパクトに構成できる。
【0032】
ギヤケース12は、機体フレーム8の左右のプレート9L,9Rと横方向に繋ぐ前部のプレート9Fとによって囲まれる空間で支持される構成になっており、ボルトで固定されている。また、伝動軸11の折角度を少なくするために、即ち、伝動軸11をできるだけ前後方向に対して直線状に配置するために、ギヤケース12を前部のプレート9F直後に取り付けると、フロントPTO軸13をコンパクトに取り出せ、フロント装着作業機を本機に近接して装着でき、バランスの良い作業が可能となる。
【0033】
ギヤケース12の後部をケースステー20に固定し、ケースステー20は機体フレーム8を構成する左右のプレート9L,9Rに固定している。
【0034】
また、ギヤケース12は、バッテリ17を載せるバッテリベースプレート18の下方に設けられ、メンテナンスが容易に行えるようにしている。また、バッテリベースプレート18は、下面をフラットにし、前記伝動軸11がその下方ぎりぎりを通るようにしている。ギヤケース12の下部をアクスルブラケットの14の下方に突出させ、ケース下部の前面にフロントPTO軸13を突設した構成になっている。
【0035】
また、前記フロントPTO軸13は、前部のプレート9Fの下方に設けられ、更にその前方に突出した構成になっている。また、フロントPTO軸13には、この左右及び上方を覆う保護カバー16(保護カバー左部16a,保護カバー右部16b,保護カバー上部16c)がギヤケース12の前面に設けられ、フロントPTO軸13を安全に保護している。
【0036】
これにより、フロントPTO軸13に接触するのを防止できる。また、フロントPTO軸13が風雨にさらされるのを防止できる。
【0037】
前記前部プレート9Fには牽引用のヒッチ19が取り付けられ、牽引用ヒッチ19はフロントPTO軸13の上方に設けられている。牽引用ヒッチ19とフロントPTO軸13にはフロント作業機が容易に装着される。
【0038】
機体フレーム8の側面には、前後方向の力を受けるため、補強部材21が設けられている。
【0039】
これにより、ギヤケース12、伝動軸11、フロントPTO軸13の振動を抑制できる。
【0040】
また、エンジンEからの排気管23の排気口23aは、左のプレート9Lの側方であってボンネット2の下方に配置している。これにより、排気口23a内に雨などが進入するのを防止でき、デザイン性も向上する。
【0041】
なお、図中、22は、エンジンを冷却するラジエータを示す。
【符号の説明】
【0042】
E エンジン
1 走行車体
2 ボンネット
8 機体フレーム
9L 左プレート
9R 右プレート
9F 前部プレート
11 伝動軸
12 ギヤケース
13 フロントPTO軸
14 アクスルケースブラケット
15 切り欠き部
16 保護カバー
17 バッテリ
18 バッテリベースプレート
19 牽引用ヒッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6