特許第6593237号(P6593237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593237発光素子の製造方法、及び発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593237
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】発光素子の製造方法、及び発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/44 20100101AFI20191010BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20191010BHJP
【FI】
   H01L33/44
   H01L33/50
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-57610(P2016-57610)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-174909(P2017-174909A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
(72)【発明者】
【氏名】土屋 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】川岡 あや
(72)【発明者】
【氏名】石田 真
【審査官】 小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−046124(JP,A)
【文献】 特開2014−053609(JP,A)
【文献】 特開2014−165320(JP,A)
【文献】 特開2012−164902(JP,A)
【文献】 特開平11−163403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板とその上に形成された複数の発光部からなるウェハの前記透明基板の前記複数の発光部が形成された面と反対側の面に、蛍光体含有層を含む樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜を形成する前又は後に、スクライビングにより前記透明基板の前記複数の発光部が形成された面に分離予定面に沿ってスクライビングラインを形成する工程と、
前記スクライビングラインを形成する前又は後に、前記分離予定面に沿って前記樹脂膜を切断する工程と、
前記スクライビングラインを形成し、かつ前記樹脂膜を切断した後、ブレイキングにより前記分離予定面に沿って前記透明基板を分離する工程と、
を含む、発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂膜が、前記蛍光体含有層上のクリア層有する、
請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記クリア層が、前記蛍光体含有層の上面及び側面を覆うように形成される、
請求項2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記クリア層の屈折率が前記蛍光体含有層の屈折率よりも低い、
請求項2又は3に記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法により製造された発光素子を基板上にフリップチップ実装する工程と、
フリップチップ実装された前記発光素子の側面を覆うように白色の側壁を形成する工程と、
を含む、発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の製造方法、及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、個々のLEDチップの上に直接又は封止樹脂を介して蛍光体を含む樹脂シートを設ける発光装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、従来、複数のLEDチップを1枚の蛍光体シートで封止する発光装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
また、従来、支持シート上の複数のLEDチップを1枚の蛍光体シートで封止した後、蛍光体シートを切断して分割し、蛍光体シートに覆われた個々のLEDチップを支持シートから剥離して、基板上に設置する発光装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
また、従来、1枚の基板上の複数のLEDチップの各々の上に蛍光体層を設けた後、基板を分割して個片化する発光装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献6参照)。
【0006】
また、従来、複数のLEDチップとなる領域を有するウエハの底面上に蛍光体を含む樹脂層を形成した後、ウエハ及び樹脂層を切断して、複数のLEDチップに分割する発光装置の製造方法が知られている(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−258209号公報
【特許文献2】特開2014−22704号公報
【特許文献3】特開2014−112724号公報
【特許文献4】特開2014−192326号公報
【特許文献5】特開2014−168036号公報
【特許文献6】特開2010−245515号公報
【特許文献7】特開2002−261325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献7に記載の発光装置の製造方法によれば、スクライバーを用いてウエハ及び樹脂層を切断するとされているが、実際には、スクライバーにより樹脂層を切断することは困難である。
【0009】
本発明の目的の一つは、複数の発光素子間の発光色のばらつきが小さく、製造コストの低い発光素子の製造方法、及び発光装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[4]の発光素子の製造方法、及び下記[5]の発光装置の製造方法を提供する。
【0011】
[1]透明基板とその上に形成された複数の発光部からなるウェハの前記透明基板の前記複数の発光部が形成された面と反対側の面に、蛍光体含有層を含む樹脂膜を形成する工程と、前記樹脂膜を形成する前又は後に、スクライビングにより前記透明基板の前記複数の発光部が形成された面に分離予定面に沿ってスクライビングラインを形成する工程と、前記スクライビングラインを形成する前又は後に、前記分離予定面に沿って前記樹脂膜を切断する工程と、前記スクライビングラインを形成し、かつ前記樹脂膜を切断した後、ブレイキングにより前記分離予定面に沿って前記透明基板を分離する工程と、を含む、発光素子の製造方法。
【0012】
[2]前記樹脂膜が、前記蛍光体含有層上のクリア層を有する、上記[1]に記載の発光素子の製造方法。
【0013】
[3]前記クリア層が、前記蛍光体含有層の上面及び側面を覆うように形成される、上記[2]に記載の発光素子の製造方法。
【0014】
[4]前記クリア層の屈折率が前記蛍光体含有層の屈折率よりも低い、上記[2]又は[3]に記載の発光素子の製造方法。
【0015】
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の発光素子の製造方法により製造された発光素子を基板上にフリップチップ実装する工程と、フリップチップ実装された前記発光素子の側面を覆うように白色の側壁を形成する工程と、を含む、発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の発光素子間の発光色のばらつきが小さく、製造コストの低い発光素子の製造方法、及び発光装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程を概略的に表す斜視図である。
図2図2(a)〜(e)は、第1の実施の形態に係る発光素子の製造工程を表す垂直断面図である。
図3図3(a)〜(e)は、第2の実施の形態に係る発光素子の製造工程を表す垂直断面図である。
図4図4(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る発光装置の製造工程を表す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施の形態〕
図1(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る発光素子1の製造工程を概略的に表す斜視図である。
【0019】
まず、図1(a)に示されるように、複数の発光素子構造を含むウエハ10を準備する。
【0020】
次に、図1(b)に示されるように、ウエハ10の表面上に樹脂膜20を形成する。樹脂膜20は、例えば、スキージを用いた塗布、スプレーコート、又はスピンコートにより形成される。
【0021】
スキージを用いた塗布により樹脂膜20を形成する場合は、厚さの均一性を高くすることができる。スピンコートにより樹脂膜20を形成する場合は、コストを低く抑えることができる。また、スプレーコートにより樹脂膜20を形成する場合は、ウエハ10の反りの影響を受けにくく、樹脂膜20を薄く形成することができるため、材料の無駄が少ない。
【0022】
次に、図1(c)に示されるように、ウエハ10と樹脂膜20を切断して、複数の発光素子1に分割する。
【0023】
次に、部分的に拡大された断面図を用いて、より具体的に発光素子1の製造工程を説明する。
【0024】
図2(a)〜(e)は、第1の実施の形態に係る発光素子1の製造工程を表す垂直断面図である。
【0025】
図2(a)に示されるように、ウエハ10は1枚の透明基板11と、その表面に形成された複数の発光部12とを含む。
【0026】
透明基板11は、例えば、サファイア基板である。発光部12は、典型的には、発光層13と、発光層13を挟むn型クラッド層14とp型クラッド層15、n型クラッド層14とp型クラッド層15にそれぞれ接続されたn側電極16とp側電極17から構成される。
【0027】
図2(b)に示されるように、樹脂膜20は、ウエハ10の透明基板11側の面(透明基板11の発光部12が形成された面の反対側の面)上に形成される。樹脂膜20は蛍光体含有層21を含み、また、クリア層22を含んでもよい。蛍光体含有層21とクリア層22厚さは、例えば、それぞれ150μm、50μmである。図2(b)の直線30は、分離予定面の位置を示す。
【0028】
蛍光体含有層21は、粒子状の蛍光体を含む透明な膜状の樹脂からなる。蛍光体含有層21を構成する樹脂としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の透明樹脂を用いることができる。蛍光体の蛍光色は特に限定されず、例えば、黄色系の蛍光体粒子としては、BOS(バリウム・オルソシリケート)系蛍光体や、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体が用いられる。例えば、発光部12の発光色が青色であり、蛍光体の蛍光色が黄色である場合は、後述する発光装置1の発光色は白色になる。また、複数の種類の蛍光体を混合して用いてもよい。
【0029】
クリア層22は、蛍光体を含まない透明な膜状の樹脂からなり、蛍光体含有層21の保護膜として機能する。クリア層22を構成する樹脂としては、蛍光体含有層21を構成する樹脂と同じものを用いることができるが、蛍光体含有層21からクリア層22への光の透過率を向上させるため、蛍光体含有層21を構成する樹脂よりも屈折率が小さいことが好ましい。また、クリア層22には、酸化チタン(TiO)等の拡散剤又はシリカ(SiO)等の分散剤を添加してもよい。
【0030】
次に、図2(c)に示されるように、レーザースクライビングにより透明基板11の表面に分離予定面に沿ってスクライビングラインを形成する。スクライビングラインは、線状に並んだ窪み18の集合であり、窪み18の開口部は透明基板11の表面にドットラインを形成する。
【0031】
なお、スクライビングラインの形成は、樹脂膜20をウエハ10の表面上に形成する前に実施してもよい。
【0032】
次に、図2(d)に示されるように、分離予定面に沿って樹脂膜20を切断する。樹脂膜20の切断には、超音波カッター等を用いることができる。
このとき、樹脂膜20を完全に切断するため、透明基板11を僅かに削る程度の位置まで刃を入れることが好ましい。
【0033】
なお、樹脂膜20の切断は、スクライビングラインの形成よりも前に実施してもよい。
【0034】
次に、図2(e)に示されるように、ブレイキングにより分離予定面に沿って透明基板11を分離し、複数の発光素子1を得る。ブレイキングとは、基板に外力を加え、曲げ応力や水平応力等の応力を発生させて、スクライビングラインを起点に基板を分断することをいう。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、クリア層が蛍光体含有層の側面を覆うように形成される点において、第1の実施の形態と異なる。なお、第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0036】
図3(a)〜(e)は、第2の実施の形態に係る発光素子2の製造工程を表す垂直断面図である。
【0037】
まず、図3(a)に示されるように、ウエハ10の透明基板11側の面上に蛍光体含有層21を形成した後、分離予定面に沿って蛍光体含有層21を切断する。蛍光体含有層21の切断には、超音波カッター等を用いることができる。このとき、蛍光体含有層21を完全に切断するため、透明基板11を僅かに削る程度の位置まで刃を入れることが好ましい。
【0038】
次に、図3(b)に示されるように、蛍光体含有層21上にクリア層22を形成する。クリア層22を形成する前に蛍光体含有層21が切断されているため、蛍光体含有層21の上面のみならず側面もクリア層22に覆われる。
【0039】
次に、図3(c)に示されるように、分離予定面に沿ってクリア層22を切断する。クリア層22の切断には、超音波カッター等を用いることができる。このとき、クリア層22を完全に切断するため、透明基板11を僅かに削る程度の位置まで刃を入れることが好ましい。また、蛍光体含有層21の側面を覆うクリア層22を残すため、図3(a)に示される蛍光体含有層21の切断幅よりもクリア層22の切断幅を狭くする。
【0040】
次に、図3(d)に示されるように、レーザースクライビングにより透明基板11の表面に分離予定面に沿ってスクライビングラインを形成する。なお、スクライビングラインの形成は、蛍光体含有層21を形成する前からクリア層22を切断する後までの間の任意のタイミングで行うことができる。
【0041】
次に、図3(e)に示されるように、ブレイキングにより分離予定面に沿って透明基板11を分離し、複数の発光素子2を得る。
【0042】
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、第1、2の実施の形態に係る発光素子を有する発光装置についての形態である。なお、第1、2の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する。
【0043】
図4(a)、(b)は、第3の実施の形態に係る発光装置3の製造工程を表す垂直断面図である。
【0044】
まず、図4(a)に示されるように、発光素子1を基板31上にフリップチップ実装する。基板31は、例えば、その表面に配線32を有する配線基板であり、発光素子1のn側電極16、p側電極17と配線32がはんだボール33により電気的に接続される。なお、基板31はリードフレームインサート基板であってもよい。
【0045】
次に、図4(b)に示されるように、発光素子1の側面を覆うように白色の側壁34を形成する。白色の側壁34は、例えば、酸化チタン等の白色染料を含むシリコーン系樹脂やエポキシ系樹脂等の樹脂からなる。側壁34の上面の高さは、図4(b)に示されるようにクリア層22の上面の高さより高くてもよいし、クリア層22の上面の高さと等しくてもよい。
【0046】
発光装置3は、光を反射する側壁34にその側面を覆われているため、高い指向性を有する。また、発光素子1の透明基板11は、その製法上、蛍光体含有層21との界面に近い位置に露出した段差19を有する。この段差19によりアンカー効果が働き、発光素子1と側壁34の密着性が向上する。
【0047】
なお、図4(a)、(b)に示される例では第1の実施の形態に係る発光素子1が用いられているが、代わりに第2の実施の形態に係る発光素子2を用いてもよい。
【0048】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係る発光装置によれば、複数の発光素子に含まれる蛍光体含有層を一括して形成するため、発光素子間の発光色のばらつきが小さい。また、個片化された発光素子の各々に蛍光体含有層を貼り付ける場合のように接着剤を使用する必要がないため、製造コストを低減することができる。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。例えば、切削加工によりスクライビングラインを形成してもよい。
【0050】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0051】
1、2 発光素子
3 発光装置
10 ウエハ
11 透明基板
12 発光部
20 樹脂膜
21 蛍光体含有層
22 クリア層
31 基板
34 側壁
図1
図2
図3
図4