(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0012】
(粘着シート)
本発明は、180°方向に300mm/minの速度でポリカーボネート基材から剥離した時の粘着力をRとし、180°方向に20mm/minの速度でポリカーボネート基材から剥離した時の粘着力をSとした場合、S/Rで表される値が1以上である粘着シートに関する。本発明の粘着シートは、上記構成を有するものであるため、優れた耐発泡性を発揮することができる。また、本発明では、粘着シートをポリカーボネート基材に貼合し、高温条件下に置いた場合であっても、粘着シートの発泡が抑制される。通常、ポリカーボネート基材は、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れた樹脂板であるため、光学部材として多用されているが、粘着シートを貼合した際には粘着シートに気泡を生じさせるため、問題となっていた。特に高温条件下においては、気泡の発生が多いという問題があった。本発明の粘着シートは、ポリカーボネート基材といった発泡を引き起こすと考えられている樹脂板に貼合した場合であっても優れた耐発泡性を発揮することができる。
【0013】
180°方向に300mm/minの速度でポリカーボネート基材から剥離した時の粘着力をRとし、180°方向に20mm/minの速度でポリカーボネート基材から剥離した時の粘着力をSとした場合、S/Rで表される値は、1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、2.5以上であることがさらに好ましい。S/Rで表される値を上記範囲内とすることにより、より効果的に耐発泡性を高めることができる。
従来の粘着シートにおいては、180°方向に300mm/minの速度でポリカーボネート基材から剥離した時の粘着力Rに比べて、180°方向に20mm/minの速度でポリカーボネート基材から剥離した時の粘着力Sが小さい値であることが常識であると考えられていた。本発明においては、S/R表される値を上記範囲内とすることに成功したものであり、それにより耐発泡性を高め得ることを見出したものである。
【0014】
ここで、各引き剥がし速度における粘着力は、JIS Z 0237の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定することができる。まず、粘着シートを、23℃、相対湿度50%の環境下で、被着体であるポリカーボネート基材(JIS Z 0237に準じて処理済)に貼合し、2kgロールを1往復させて圧着する。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置し、その環境下で180°方向に300mm/minの速度、もしくは、20mm/minの速度で粘着シートをポリカーボネート基材から剥離して粘着力を測定する。
【0015】
本発明では、上記測定方法で測定したポリカーボネート基材と粘着シートの23℃における180°粘着力であって、300mm/minの速度で粘着シートをポリカーボネート基材から剥離した際の粘着力は、1N/25mm以上であることが好ましく、4N/25mm以上であることがより好ましい。また、20mm/minの速度で粘着シートをポリカーボネート基材から剥離した際の粘着力は、5N/25mm以上であることが好ましく、8N/25mm以上であることがより好ましい。
【0016】
本発明の粘着シートは、上記構成を有するものであり、優れた耐発泡性を有するものであるから、樹脂板貼合用粘着シートとして有用である。樹脂板を構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、(メタ)アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、アクリロニトリルとスチレンの共重合体、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンの共重合体などが挙げられ、これらの混合物でもよい。中でも、樹脂板を構成する樹脂がポリカーボネート(PC樹脂)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA樹脂)又はアクリロニトリルとブタジエンとスチレンの共重合体(ABS樹脂)である場合は、気泡を発生させやすいため、本発明の粘着シートを貼合することが有効である。特に、ポリカーボネート基材に粘着シートを貼合した場合は気泡が発生しやすいが、本発明の粘着シートを用いることで気泡の発生を抑制することができる。すなわち、本発明の粘着シートは、ポリカーボネート基材用粘着シートとして有用である。
【0017】
本発明の粘着シートが、ポリカーボネート基材貼合用粘着シートである場合、ポリカーボネート基材としては、例えば、帝人化成(株)製のPC−1151等を挙げることができる。
【0018】
本発明の粘着シートは、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)を含む基材であってもよい。このような基材としては、例えば、ポリカーボネート基材の少なくとも一方の面上にハードコート層が積層された積層基材や、ポリカーボネート基材の少なくとも一方の面上にポリメタクリル酸メチル(PMMA)基材が積層された積層基材を挙げることができる。積層基材としては、例えば、三井ガス化学(株)製、ユーピロンMR58U等を挙げることができる。なお、積層基材は、各樹脂層を共押出しすることによって形成されたものであってもよい。
本発明の粘着シートは、ポリカーボネート基材に直接貼合する用途に用いられる粘着シートであることが好ましいが、ポリカーボネート基材に間接的に貼合する用途で用いられてもよい。例えば、ポリカーボネート樹脂とポリメタクリル酸メチル樹脂の共押出しフィルムのポリメタクリル酸メチル樹脂側に本発明の粘着シートが貼合されてもよい。
【0019】
本発明の粘着シートは、粘着剤層を有する。粘着シートは、粘着剤層のみから構成される単層の粘着シートであってもよい。本発明の粘着シートは、片面粘着シートであっても両面粘着シートであってもよいが、両面粘着シートであることが好ましい。
【0020】
片面粘着シートとしては、支持体上に粘着剤層が積層した多層シートが挙げられる。また、支持体と粘着剤層との間には他の層が設けられていてもよい。
両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シート、支持体の片面に粘着剤層が積層し、他方の面に他の粘着剤層が積層した多層の粘着シートが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
本発明の粘着シートは上述した中でも、ノンキャリアタイプが好ましく、粘着剤層からなる単層の粘着シート、又は粘着剤層を複数積層した多層の粘着シートが好ましく、粘着剤層からなる単層の両面粘着シートが特に好ましい。
【0021】
本発明の粘着シートが支持体を有している場合、支持体としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース等のプラスチックフィルム;反射防止フィルム、電磁波遮蔽フィルム等の光学フィルム;等が挙げられる。
【0022】
本発明の粘着剤層の表面は剥離シートによって覆われていることが好ましい。すなわち、本発明は剥離シート付き粘着シートであってもよい。本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合、粘着剤層の両面に剥離シートを有することが好ましい
【0023】
剥離シートとしては、剥離シート用基材と該剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO
2単位と(CH
3)
3SiO
1/2単位あるいはCH
2=CH(CH
3)SiO
1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
【0024】
剥離シートを剥離しやすくするために、粘着シートの一方の面側に設けられる第1の剥離シートと粘着シートの他方の面側に設けられる第2の剥離シートとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。つまり、一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。
【0025】
粘着剤層の厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、粘着剤層の厚みは、500μm以下であることが好ましく、350μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、ポリカーボネート基材等に貼合した場合であっても粘着剤層から気泡が発生することを十分に抑制することができる。また、粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、被着体が段差を有する部材である場合に段差追従性を十分に確保することができる。さらに、粘着剤層の厚さを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの製造が容易となる。
【0026】
本発明の粘着シートは、アクリル系粘着剤層を有することが好ましく、アクリル系粘着剤層からなるものであってもよい。アクリル系粘着剤層は、アクリル酸エステル共重合体を含むものであることが好ましく、アクリル酸エステル共重合体は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位を含有するものであることが好ましい。なお、本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸およびメタクリル酸の双方、または、いずれかを表す。
【0027】
(粘着剤組成物)
本発明の粘着シートは、後述する粘着剤組成物を塗工し、硬化させることによって形成することが好ましい。粘着剤組成物は、少なくともアクリル酸エステル共重合体(A)を含む。
【0028】
(アクリル酸エステル共重合体(A))
アクリル酸エステル共重合体(A)は、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有するものであることが好ましい。アクリル酸エステル共重合体は、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。
【0029】
非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0030】
架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)としては、ヒドロキシ基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位、グリシジル基含有単量体単位、カルボキシ基含有単量体単位等が挙げられる。これら単量体単位は1種でもよいし、2種以上でもよい。
ヒドロキシ基含有単量体単位は、ヒドロキシ基含有単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体単位は、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
グリシジル基含有単量体単位は、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
カルボキシ基含有単量体単位は、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0031】
アクリル酸エステル共重合体(A)における架橋性アクリル単量体単位(a2)の含有量は0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
なお、アクリル酸エステル共重合体(A)は、カルボキシ基含有単量体単位を含むものであることが好ましい。カルボキシ基含有単量体単位の含有量は、0.01質量%以上40質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。なお、カルボキシ基含有単量体単位の含有量は、用途によっては、3質量%以下とすることも好ましい。カルボキシ基含有単量体単位の含有量を上記範囲内とすることにより、均一な架橋構造が発現するため粘着性能が向上し、20mm/minといった低速度剥離条件での粘着力をより高めることができる。
【0033】
アクリル酸エステル共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位(a3)をさらに含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位は、炭素数1〜4のアルキル基を含有するものであることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又はブトキシ基を有するものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ブトキシエチル等が挙げられる。
【0034】
アクリル酸エステル共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位(a3)の含有量は1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、アクリル酸エステル共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位(a3)の含有量は60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましく、40質量%以下であることが特に好ましい。なお、上記含有量は、アクリル酸エステル共重合体(A)を製造する際の単量体の仕込み量であるが、アクリル酸エステル共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位(a3)の含有量と同等である。アクリル酸エステル共重合体(A)における(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単位(a3)の含有量を上記範囲内とすることにより、より耐発泡性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0035】
アクリル酸エステル共重合体(A)は、必要に応じて、上記単量体単位以外の他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上記単量体単位と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。
【0036】
アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、10万以上であることが好ましく、30万以上であることがより好ましく、50万以上であることがさらに好ましく、60万以上であることが特に好ましい。また、アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、200万以下であることが好ましく、180万以下であることがより好ましく、160万以下であることがさらに好ましい。アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、粘着シートは優れた耐発泡性を発揮しやすくなる。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフイー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。ゲルパーミエションクロマトグラフイー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工(株)製を4本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI−2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI−2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/min
注入量:10μl
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工(株)製)Mw=1320〜2,500,000迄の10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
(重合開始剤(B))
粘着剤組成物は、重合開始剤を含むものであることが好ましい。重合開始剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合に用いられる。重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等の過酸化物系重合開始剤などの油溶性重合開始剤を挙げることができる。
【0040】
重合開始剤(B)の含有量は、アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。重合開始剤(B)としては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0041】
(架橋剤(C))
粘着剤組成物は、架橋剤(C)を含むものであることが好ましい。架橋剤(C)は、アクリル酸エステル共重合体(A)が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。これらの中でも、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物やエポキシ化合物が好ましい。例えば、架橋性官能基としてヒドロキシ基を含む場合は、ヒドロキシ基の反応性から、イソシアネート化合物を用いることがより好ましい。
【0042】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0043】
粘着剤組成物中の架橋剤(C)の含有量は、所望とする粘着物性等に応じて適宜選択されるが、アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。架橋剤(C)としては1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0044】
(溶剤(D))
粘着剤組成物は溶剤(D)を含むものであることが好ましい。すなわち、粘着剤組成物は溶剤型粘着剤組成物であることが好ましく、本発明の粘着シートは溶剤型粘着剤組成物を塗工した後に、溶剤を揮発させて形成されるものであることが好ましい。本発明においては、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着シートを溶剤型粘着シートと呼ぶこともできる。なお、本発明においては、粘着シートが溶剤型粘着シートである場合、光重合開始剤の添加量は粘着剤組成物の全質量に対して1質量%以下であることが好ましい。
【0045】
溶剤(D)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0046】
溶剤(D)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。粘着剤組成物中における溶剤(D)の含有量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、25質量部以上500質量部以下とすることができ、30質量部以上400質量部以下とすることができる。
【0047】
(その他の成分)
粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分、例えば酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤等の中から必要に応じて選択できる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール系樹脂を挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。
【0048】
さらに、粘着剤組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、無官能性アクリル重合体を用いることができる。無官能性アクリル重合体とは、アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位のみからなる重合体、又はアクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位と官能基を有しない非アクリル単量体単位とからなる重合体を意味する。
アクリレート基以外の官能基を有しないアクリル単量体単位としては、例えば非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と同様のものが挙げられる。
官能基を有しない非アクリル単量体単位としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
【0049】
(粘着シートの製造方法)
粘着シートは、上述した粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成し、該塗膜を加熱して硬化物とすることにより得られる粘着剤層を含む。例えば、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成し、該塗膜を加熱して硬化物とすることにより得られる。塗膜の加熱により、アクリル酸エステル共重合体(A)および架橋剤(C)の反応が進行して硬化物(粘着剤層)が形成される。
【0050】
粘着剤層を形成する粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0051】
塗工工程では、乾燥後の塗工量が10μm/m
2以上となるように塗工することが好ましく、20μm/m
2以上となるように塗工することがより好ましい。また、乾燥後の塗工量が500μm/m
2以下となるように塗工することが好ましく、300μm/m
2以下となるように塗工することがより好ましい。
【0052】
塗膜の加熱乾燥工程は、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いて実施できる。例えば、50℃以上150℃以下の空気循環式恒温オーブンで10秒以上10分以下乾燥させる。
【0053】
加熱乾燥工程の後には、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理工程を設けることが好ましい。エージング処理工程は例えば、23℃、相対湿度50%の条件下で7日間静置して行うことができる。
【0054】
(積層体)
本発明は、上述した粘着シートの少なくとも一方の面に被着体を有する積層体に関するものでもある。本発明の積層体は、上述した粘着シートと、粘着シートの少なくとも一方の面上にポリカーボネート基材と、を有する積層体に関するものであることが好ましい。
【0055】
図1は、本発明の積層体100の構成を説明する断面図である。
図1に示されているように、積層体100は、粘着シート10と、粘着シート10の上に接した状態で積層された樹脂板20を有する。樹脂板20は、ポリカーボネート基材であってもよい。
【0056】
本発明の積層体は、上述した粘着シートを介してポリカーボネート基材と、光学部材を貼合した積層体に関するものであることが好ましい。
図2に示されているように、積層体100は、粘着シート10を介して、樹脂板20と、光学部材30を貼合したものであることが好ましい。積層体100においては、粘着シート10の一方の面上に樹脂板が接した状態で積層されており、粘着シート10の他方の面上に光学部材30が接した状態で積層されている。なお、このような積層体100においても樹脂板20は、ポリカーボネート基材であってもよい。
【0057】
光学部材30としては、例えば、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶モジュールを挙げることができる。液晶モジュールとしては、具体的には反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムが挙げられる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0059】
<アクリル酸エステル共重合体(A−1)の合成>
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)70質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)3.0質量部、アクリル酸(AA)0.1質量部、2−メトキシエチルアクリレート(2MTA)26.9質量部アセトン150質量部、及び、メチルエチルケトン(MEK)50質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行なった。反応終了後、固形分が20質量%となるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、重量平均分子量150万の(メタ)アクリル系共重合体(A−1)を含む粘着剤溶液を得た。なお、(メタ)アクリル系共重合体(A−1)の重量平均分子量Mwは、THF(テトラヒドラフラン)を溶解した試料をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
【0060】
<アクリル酸エステル共重合体(B−1)の合成>
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、2エチルヘキシルアクリレート(2EHA)65質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)15.0質量部、イソボルニルアクリレート(IBXA)20質量部、酢酸エチル(EtAc)150質量部、及び、メチルエチルケトン(MEK)50質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行なった。反応終了後、固形分が20質量%となるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、重量平均分子量95万の(メタ)アクリル系共重合体(B−1)を含む粘着剤溶液を得た。なお、(メタ)アクリル系共重合体(B−1)の重量平均分子量Mwは、THF(テトラヒドラフラン)を溶解した試料をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
【0061】
<アクリル酸エステル共重合体(B−2)の合成>
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、ブチルアクリレート(BA)84.9質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)15.0質量部、アクリル酸(AA)0.1質量部、酢酸エチル(EtAc)150質量部、及び、メチルエチルケトン(MEK)20質量部を仕込み、窒素ガスを導入しながら70℃に昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.05質量部を加え、窒素雰囲気下、70℃で8時間重合反応を行なった。反応終了後、固形分が20質量%となるよう酢酸エチル(EtAc)にて希釈し、重量平均分子量80万の(メタ)アクリル系共重合体(B−2)を含む粘着剤溶液を得た。なお、(メタ)アクリル系共重合体(B−2)の重量平均分子量Mwは、THF(テトラヒドラフラン)を溶解した試料をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。
【0062】
(実施例1)
<アクリル系粘着剤組成物の調製>
上記で得られたアクリル酸エステル共重合体(A−1)の固形分100質量部に対し、架橋剤としてコロネートL−55E(東ソー社製)0.9質量部を加え、固形分が15質量%の溶液となるように酢酸エチルにて希釈攪拌し、アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0063】
<粘着シートの作製>
上記のように作製した粘着剤組成物を、シリコーン系剥離剤で処理された剥離剤層を備えた厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離シート1)(王子エフテックス社製:38RL−07(2))の表面に、乾燥後の塗工量が100μm/m
2になるようにアプリケーターで均一に塗工した。その後、100℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥し、剥離シートの表面に粘着剤層を形成した。次いで、該粘着剤層の表面に厚さ38μmの剥離シート2(王子エフテックス社製:38RL−07(L))に貼合して、粘着剤層が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた剥離シート1/粘着剤層/剥離シート2の構成を備える粘着シートを得た。該粘着シートは、23℃、相対湿度50%の条件で7日間養生した。
【0064】
(比較例1)
アクリル酸エステル共重合体を(B−1)に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル系粘着剤組成物と粘着シートを得た。
【0065】
(比較例2)
アクリル酸エステル共重合体を(B−2)に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル系粘着剤組成物と粘着シートを得た。
【0066】
(評価)
(300mm/minの引き剥がし速度、もしくは20mm/minの引き剥がし速度における粘着力)
各引き剥がし速度における粘着力は、JIS Z 0237の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じて測定した。まず、粘着シートを、23℃、相対湿度50%の環境下で、被着体であるポリカーボネート基材(JIS Z 0237に準じて処理済)に貼合し、2kgロールを1往復させて圧着した。その後、23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置し、その環境下で180°方向に300mm/minの速度、もしくは、20mm/minの速度で粘着シートをポリカーボネート基材から剥離することで測定した。
【0067】
(耐発泡性)
実施例及び比較例で得た粘着シートの剥離シートを剥離して、一方の面を、厚み100μmのPETフィルムに貼合し、他方の面を厚み0.5mmのポリカーボネート樹脂(PC樹脂)を含む基材(三井ガス化学(株)製、ユーピロンMR58U)に貼合した。なお、MR58Uは、片面にハードコート層が設けられたPC(ポリカーボネート)基材であり、粘着シートの貼合面は非ハードコート面である。基材の面積は40cm
2(5cm×8cm)であった。その後、オートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30分)を実施した。次いで、(1)23℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置するか、もしくは(2)80℃、相対湿度50%の環境下に24時間静置した。その後、ポリカーボネート基材における気泡発生面積をキーエンス(株)製、VHX−5000で面積を測定した。なお、マイクロスコープを使用して観察した際に、略円形の空気層を目視で確認できるものについて、その空気層の面積を気泡発生面積とした。気泡発生面積は、以下の基準で評価した。評価○が実用上、合格レベルである。
○:気泡発生面積が、ポリカーボネート基材の全面積に対して1%以下(気泡の発生がない)。
△:気泡発生面積が、ポリカーボネート基材の全面積に対して1%より大きく5%以下(若干の気泡の発生がある)。
×:気泡発生面積が、ポリカーボネート基材の全面積に対して5%より大きい(気泡が多く発生している)。
【0068】
【表1】
【0069】
比較例に比べて実施例では、耐発泡性が良好である。