(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のインク経路のうち、前記インクジェットヘッドの前記出口と前記第2のポンプとの間に、減衰部が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
図16の構成には、次のような課題がある。
【0006】
第1の課題は、インクタンクと第1のタンクとの間でインクを循環することができないことである。インクの経路に滞留部が存在するので、粒子を含む顔料系インクを用いた場合、インクの粒子が沈降するという問題が発生する。
【0007】
第2の課題は、インクジェットヘッドを動かさないため、印刷タクトが遅くなってしまうことである。インクジェットヘッドが動く分も、印刷ステージを動かさないといけなくなるので、印刷タクトが遅くなる。
【0008】
第3の課題は、インクジェットヘッドを動かすとインクの吐出が不安定になることである。インクジェットヘッドを動かす場合、第2のタンクは動かさず、インクジェットヘッドと第2のタンクの間を柔らかい配管でつなぐことが想定される。インクジェットヘッドを動かすと、インクジェットヘッドと第2のタンクとの間の配管が変形し、内部のインクに圧力がかかり、インクの吐出が不安定になる。第3の課題は、インクジェットヘッドを動かすように構成しようとして新たに発見された課題であり、課題自体が新しい。
【0009】
第4の課題は、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすことが困難であることである。すなわち、第3の課題を解決するため、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かそうとすると、第2のタンク内のインクが揺れて波打ち、インクの液面が水平な状態から乱れる場合がある。液面が乱れている状態ではセンサの検出値が変動し、この誤った検出値を基にインク循環の制御がされると、インクの吐出が不安定になる。また、第2のタンクは、インクジェットヘッドがいずれの位置にいる場合であっても、インクジェットヘッドのノズルからインクが垂れたりノズルに気体が流入したりすることのない位置に設けなければならない。この制約のため、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすことは困難になる。第4の課題は、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすように構成しようとして新たに発見された課題であり、課題自体が新しい。
【0010】
第5の課題は、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出ることである。第5の課題は、新たに発見された課題であり、課題自体が新しい。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑み、少なくとも第1乃至第3の課題を解決するため、すべてのインクが循環し、インクジェットヘッドを動かすことができ、インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくいインクジェット印刷装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成したインクジェット印刷装置
を提供する。
【0013】
インクジェット印刷装置は、(a)インクの入口及び出口を有し、印刷ステージと独立して移動するインクジェットヘッドと、(b)第1の注入口及び第1の排出口を有する第1のタンクと、(c)柱状のタンクであって、軸方向一端が重力方向上側になり軸方向他端が重力方向下側になるように配置され、前記軸方向一端側に第2の注入口を有し、前記軸方向他端側に、前記インクジェットヘッドの前記入口に直接又は配管を介して接続された第2の排出口を有し、前記インクジェットヘッドとの相対位置を固定されて前記インクジェットヘッドと一緒に移動する第2のタンクと、(d)前記第2のタンク内の前記インクの液面を検出する液面センサと、(e)前記第1のタンクの前記第1の排出口と、前記第2のタンクの前記第2の注入口とを繋げる第1のインク経路と、(f)前記第1のインク経路に設けられ、前記インクを前記第1のタンクから前記第2のタンクに向けて流動させる第1のポンプと、(g)前記インクジェットヘッドの前記出口と前記第1のタンクの前記第1の注入口とを繋げる第2のインク経路と、(h)前記第2のインク経路に設けられ、前記インクを前記インクジェットヘッドから前記第1のタンクに向けて流動させる第2のポンプと、を備える。
【0014】
上記構成において、インクを、第1のタンク、第1のポンプ、第2のタンク、インクジェットヘッド、第2のポンプの順番に、循環させることができる。
【0015】
上記構成によれば、すべてのインクが循環し、インクの経路に滞留部が存在しないように構成し、インク内の粒子の沈降を防ぐことができ、第1の課題が解消する。インクジェットヘッドは印刷ステージと独立して移動するため、インクジェットヘッドが固定され、印刷ステージだけが移動する場合に比べ、印刷タクトを速くすることができ、第2の課題が解消する。インクジェットヘッドと第2のタンクとは一緒に移動するので、第2のタンクの第2の排出口とインクジェットヘッドの入口とを繋ぐ配管の変形を防ぐことによって、又は、この配管自体をなくすことによって、インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくくすることができ、第3の課題が低減する。
【0016】
インクジェット印刷装置は、(i)前記第2のタンク内において前記インクの前記液面に接している気体の圧力を検出する気圧センサと、(j)前記気体の前記圧力を調整する気圧調整部と、をさらに備える。
【0017】
この場合、気圧センサと気圧調整部とを用いて、第2のタンク内の気体の圧力を、第2のタンク内のインクの液面とインクジェットヘッドとの高低差に応じて調整し、インクジェットヘッド内のインクの圧力を最適化できるため、第2のタンクの設置位置をより自由に設定することができる。その結果、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすことが容易になり、第4の課題が解消する。
【0018】
そして、前記液面センサ
は、静電容量式のセンサである。
【0019】
この場合、インクジェットヘッドの移動に伴って第2のタンク内のインクの液面が揺れたり波打ったりしたとき、フロート式のセンサに比べ、液面センサの検出値の乱れを生じにくい。その結果、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすことが容易になり、第4の課題が解消する。
インクジェット印刷装置は、(k)前記第2のポンプの流量を一定にしながら、前記液面センサの出力に基づき、前記第1のポンプの流量を制御する制御部を、さらに備える。前記制御部は、前記第2のポンプの流量が一定になるように前記第2のポンプの出力を設定した状態で、(i)前記第2のタンク内の前記インクの前記液面が所定位置に達し又は前記所定位置を超えていることを前記液面センサが検出したとき、前記第1のポンプの流量が前記第2のポンプの流量と等しくなるように、前記第1のポンプの流量を制御する第1の手順と、(ii)前記第2のタンク内の前記インクの前記液面が前記所定位置に達し又は前記所定位置を超えていることを、前記液面センサが継続して第1の所定時間以上検出したとき、前記第1のポンプの流量がゼロになるように、前記第1のポンプの流量を制御する第2の手順と、(iii)前記第2のタンク内の前記インクの前記液面が前記所定位置に達していないことを、前記液面センサが継続して第2の所定時間以上検出したとき、前記第1のポンプの流量が前記第2のポンプの流量より多くなるように、前記第1のポンプの流量を制御する第3の手順と、を実行する。
【0020】
好ましくは、前記第2のインク経路のうち、前記インクジェットヘッドの前記出口と前記第2のポンプとの間に、前記インクの脈動を減衰する減衰部が設けられている。
【0021】
この場合、第2のポンプによりインクジェットヘッドに伝わる脈動を低減できる。その結果、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出る第5の課題が低減する。
【0022】
好ましくは、前記第2の注入口が、前記第2のタンク内の前記インクから離れるように構成されている。
【0023】
この場合、第1のポンプによりインクジェットヘッドに伝わる脈動を低減することができる。その結果、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出る第5の課題が低減する。
【0024】
前述したように、インクジェット印刷装置は、(k)
前記第2のポンプの流量を一定にしながら、前記液面センサの出力に基づき、前記第1のポンプの流量を制御する制御部を、さらに備える。
【0025】
この場合、第2のタンク内のインクの液面の位置が一定になるように、第1のポンプの流量を制御することによって、第2のタンク内のインクの液面の位置変化し、流量が変化することによって発生する脈動を、インクジェットヘッドにより伝えにくくすることができる。その結果、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出る第5の課題が低減する。
【0027】
また、本発明は、以下のように構成した印刷物を形成する方法を提供する。
【0028】
印刷物を形成する方法は、(a)インクの入口及び出口を有し、印刷ステージと独立して移動するインクジェットヘッドと、(b)第1の注入口及び第1の排出口を有する第1のタンクと、(c)柱状のタンクであって、軸方向一端が重力方向上側になり軸方向他端が重力方向下側になるように配置され、前記軸方向一端側に第2の注入口を有し、前記軸方向他端側に、前記インクジェットヘッドの前記入口に直接又は配管を介して接続された第2の排出口を有し、前記インクジェットヘッドとの相対位置を固定されて前記インクジェットヘッドと一緒に移動する第2のタンクと、(d)前記第2のタンク内の前記インクの液面を検出する液面センサと、(e)前記第1のタンクの前記第1の排出口と、前記第2のタンクの前記第2の注入口とを繋げる第1のインク経路と、(f)前記第1のインク経路に設けられ、前記インクを前記第1のタンクから前記第2のタンクに向けて流動させる第1のポンプと、(g)前記インクジェットヘッドの前記出口と前記第1のタンクの前記第1の注入口とを繋げる第2のインク経路と、(h)前記第2のインク経路に設けられ、前記インクを前記インクジェットヘッドから前記第1のタンクに向けて流動させる第2のポンプと、(i)前記第2のポンプの流量を一定にしながら、前記液面センサの出力に基づき、前記第1のポンプの流量を制御する制御部と、を備えたインクジェット印刷装置を用いて、印刷物を形成する。印刷物を形成する方法は、前記第1のタンク、前記第1のポンプ、前記第2のタンク、前記インクジェットヘッド、前記第2のポンプの順番に、前記インクを循環させ、前記印刷ステージ上で、前記インクジェットヘッドを移動させながら、前記インクジェットヘッドから前記インクを吐出することにより、前記印刷物を形成する工程、を備える。前記
印刷物を形成する工程において、前記第2のポンプの流量を一定にしながら、前記液面センサの出力に基づき、前記第1のポンプの流量を制御する。すなわち、前記制御部は、前記第2のポンプの流量が一定になるように前記第2のポンプの出力を設定した状態で、(i)前記第2のタンク内の前記インクの前記液面が所定位置に達し又は前記所定位置を超えていることを前記液面センサが検出したとき、前記第1のポンプの流量が前記第2のポンプの流量と等しくなるように、前記第1のポンプの流量を制御する第1の手順と、(ii)前記第2のタンク内の前記インクの前記液面が前記所定位置に達し又は前記所定位置を超えていることを、前記液面センサが継続して第1の所定時間以上検出したとき、前記第1のポンプの流量がゼロになるように、前記第1のポンプの流量を制御する第2の手順と、(iii)前記第2のタンク内の前記インクの前記液面が前記所定位置に達していないことを、前記液面センサが継続して第2の所定時間以上検出したとき、前記第1のポンプの流量が前記第2のポンプの流量より多くなるように、前記第1のポンプの流量を制御する第3の手順と、を実行する。
【0029】
上記方法によれば、インク内の粒子の沈降を防ぐことができ、第1の課題が解消する。印刷タクトを速くすることができ、第2の課題が解消する。インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくくすることができ、第3の課題が低減する。第2のタンク内のインクの液面の位置を一定にするための流量変化による脈動を、インクジェットヘッドに伝えにくくすることができ、第5の課題が低減する。
【0030】
好ましくは、前記印刷物は、電子部品の一部又は全部である。
【0031】
この場合、インクジェット印刷装置を用いて電子部品を製造することができる。
【0032】
また、本発明は、上述した印刷物を形成する方法により、電子部品を製造する電子部品の製造方法を提供する。
【0033】
電子部品の製造方法は、上述した印刷物を形成する方法の前記
印刷物を形成する工程において、前記インクとして、絶縁材料を含む第1のインクと、電極材料を含む第2のインクとを用い、前記絶縁材料を含む層と、前記電極材料を含む層とを有する未焼成の前記印刷物を形成する。電子部品の製造方法は、未焼成の前記印刷物の前記絶縁材料と前記電極材料とを一緒に焼成す
る工程を備える。
【0034】
上記方法によれば、インクジェット印刷装置を用いて、電子部品の全部又は一部を形成することができる。
【0035】
さらに、本発明は、上述した印刷物を形成する方法により、電子部品を製造する電子部品の製造方法を提供する。
【0036】
電子部品の製造方法は、上述した印刷物を形成する方法の前記
印刷物を形成する工程において、電極材料を含む前記インクを用いて、絶縁材料を含む未焼成のシートに、前記印刷物を形成する。電子部品の製造方法は、(
i)前記印刷物が形成された未焼成の前記シートを含む未焼成の積層体を形成す
る工程と、(
ii)未焼成の前記積層体の前記電極材料と前記絶縁材料とを一緒に焼成す
る工程と、を備える。
【0037】
上記方法によれば、インクジェット印刷装置を用いて、電子部品の全部又は一部を形成することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、すべてのインクが循環し、インクジェットヘッドを動かすことができ、インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくい。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
<実施例1> 実施例1のインクジェット印刷装置10について、
図1〜
図6を参照しながら説明する。
【0042】
図1は、インクジェット印刷装置10の全体構成図である。
図1に示すように、インクジェット印刷装置10には、ワーク2を載せる印刷ステージ12と、インクを吐出するインクジェットヘッド20とが、不図示の基台に対して移動可能に配置され、間隔を設けて互いに対向している。印刷ステージ12は駆動装置14によって駆動され、インクジェットヘッド20は駆動装置16によって駆動される。印刷ステージ12とインクジェットヘッド20とは、互いに異なる方向に独立して移動することが可能である。制御装置18は、駆動装置14,16の動作と、インクジェットヘッド20のインクの吐出とを制御する。
【0043】
インクジェット印刷装置10は、矢印4xで示す方向にインクが循環するように構成されている。すなわち、第1のタンク30の第1の排出口30tと第2のタンク32の第2の注入口32sとを繋げる第1のインク経路31に、インクを第1のタンク30から第2のタンク32に向けて流動させる第1のポンプ34が設けられている。インクジェットヘッド20の出口21bと第1のタンク30の第1の注入口30sとを繋げる第2のインク経路35に、インクをインクジェットヘッド20から第1のタンク30に向けて流動させる第2のポンプ36が設けられている。第2のタンク32の第2の排出口32tが、第3のインク経路33を介して、又は直接、インクジェットヘッド20の入口21aに繋がれている。
【0044】
鎖線で囲まれたインクジェットヘッド20と第2のタンク32と液面センサ32aとは、相対位置一定で動く。すなわち、第2のタンク32及び液面センサ32aは、インクジェットヘッド20との相対位置を固定されてインクジェットヘッド20と一緒に動く。第2のタンク32は移動するため、第1のタンク30よりも小さくすることが好ましい。第1のタンク30はメインタンクであり、第2のタンク32はサブタンクである。
【0045】
制御部38は、第2のタンク32内のインクの液面を検出する液面センサ32aの検出値に基づき、第1のポンプ34と第2のポンプ36の流量を制御する。
【0046】
図2は、印刷ステージ12及びインクジェットヘッド20の構成を示す説明図である。
図2に示すように、印刷ステージ12は、矢印8で示すX方向に移動し、インクジェットヘッド20は、矢印9で示すY方向に移動する。印刷ステージ12とインクジェットヘッド20とが相対移動する間に、インクジェットヘッド20からインク7を吐出させて、印刷ステージ12に載せたワーク2に印刷する。
【0047】
図2では、インクジェットヘッド20に、インク7を吐出するノズルが1つだけ形成されている場合を図示しているが、インクジェットヘッド20には、複数のノズルを1列に、又は複数列に形成することが好ましい。ノズル列の方向は、X方向でも、Y方向でも、XY平面上の任意の方向でも構わない。
【0048】
なお、インクジェットヘッド20は、複数個を備えてもよい。インクの種類が異なるインクジェットヘッド20を組み合わせてもよい。一つのインクジェットヘッドから種類の異なるインクが吐出するように構成してもよい。この場合、インクの種類ごとにインクジェットヘッド内に独立した流路を形成し、別々のインク経路と接続される。
【0049】
ワーク2は、インクジェットヘッド20の移動方向と交差(好ましくは、直交)する方向に送られる長尺のシート状でもよい。この場合、印刷ステージ12の代わりに、ベルトやロール等を用いてワークを搬送してもよい。曲げることが容易なワークの場合、ロールにワークを沿わせ、ワークの搬送経路を曲げてもよい。
【0050】
例えば、インクジェットヘッド20は、最高移動速度が100mm/s以上、かつ200mm/s以下で往復移動し、2s以上、かつ3s以下で1往復する。
【0051】
ワーク2とインクジェットヘッド20の両方が移動している間に印刷すると、静止しているインクジェットヘッド20に対してワーク2が移動している間に印刷する場合よりも、印刷タクトを速くすることができる。
【0052】
図3は、インクジェットヘッド20の構成を概念的に示す断面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド20は、互いに結合されたマニホールド22とアクチュエータユニット24との間に、フィルタ23xで区画されたプレフィルタチャンバ23a及びポストフィルタチャンバ23bを有する。マニホールド22の両端部にインクポート21a,21bが設けられている。一方のインクポート21aはインクの入口であり、プレフィルタチャンバ23aの一方の端部に連通する孔が形成されている。他方のインクポート21bはインクの出口であり、プレフィルタチャンバ23aの他方の端部に連通する孔が形成されている。
【0053】
インクポート21aからプレフィルタチャンバ23aに入ったインクの全部又は大部分は、プレフィルタチャンバ23aを流れてインクポート21bから出る。例えば、プレフィルタチャンバ23aの流路断面(
図3において紙面垂直方向の断面)の面積は、20mm
2以上、かつ30mm
2以下であり、プレフィルタチャンバ23aの容量は、2mL以上、かつ3mL以下である。
【0054】
アクチュエータユニット24には、一端がポストフィルタチャンバ23bに連通する複数のアクチュエータチャンバ25が形成され、アクチュエータチャンバ25の他端は、ノズルプレート26で覆われている。ノズルプレート26には、各アクチュエータチャンバ25に対向する位置に、ノズルプレート26を貫通する不図示のノズルが形成されている。
【0055】
アクチュエータユニット24に設けられた圧電素子や加熱手段によって、アクチュエータチャンバ25内のインクが押し出され、ノズルプレート26のノズルからインク7が吐出する。例えば、1ノズルの1回あたりのインクの吐出量、すなわち、ノズルから吐出される1滴のインク7の量は、数〜数百pL(ピコリットル)である。
【0056】
ノズルの数は、数十本から千数百本程度が好ましい。ノズル間のピッチは、広くても1mm程度までである。ノズルの配列は1列であっても複数列であっても良く、すべてが連続して配列されている必要はない。
【0057】
図4は、第1のタンク30の構成を概念的に示す説明図である。
図4(a)に示すように、第1のタンク30は、円筒形の密閉可能な金属のタンク本体30aの上部から2本のパイプをタンクに差し込み、第1の注入口30s及び第1の排出口30tを形成している。タンク本体30aの材質は、ステンレスであることが好ましい。タンク本体30aには、例えば、内径180mm、高さ200mm、容量5リットルのものを用いる。
【0058】
図4(b)に示すように、タンク本体30bの上部から、第1の注入口30sを形成するパイプを差し込み、タンク本体30bの下部に第1の排出口30tを設けてもよい。
【0059】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1のタンク30のタンク本体30a,30bの上部には、インク4が減った分の気体を外部から吸い込むチェックバルブ30cが設置されている。チェックバルブ30cの先端には、タンク本体30a,30b内のクリーン度を保つために、エアフィルタ30fが取り付けられているのがよい。
【0060】
第1のタンク30に、タンク本体30a,30b内のインク4を撹拌するための撹拌翼などを用いた撹拌装置30mを取り付けてもよい。タンク本体30a,30bの内側の汚れを防止する目的や、少量のインクを循環させる目的で、タンク本体30a,30bの内部に別の内容器を入れてもよい。
【0061】
図5は、第2のタンク32及びインクジェットヘッド20の構成を概念的に示す説明図である。
図5に示すように、第2のタンク32は、柱状、好ましくは円筒形のタンクであって、軸方向一端が重力方向上側になり軸方向他端が重力方向下側になるように配置され、軸方向一端に第2の注入口32sを有し、軸方向他端に第2の排出口32tを有している。第2のタンク32は、第2のタンク32の軸方向が重力方向と平行になるように配置されることが好ましいが、重力方向に対して斜めに配置されてもよい。
【0062】
第2のタンク32は、インク4の液面5の想定位置から第2の排出口32tに向かって、第2のタンク32の内部空間の水平断面が、同じ形状・寸法か、狭くなる形状であれば、インク4が滞留する部分がないため、望ましい。ただし、第2のタンク32に収容されるインクの全体量に対して十分に少ない量のインクが滞留する部分があったとしても問題ない。
【0063】
第2のタンク32の材質は、インクの成分に耐性のあることが好ましい。例えば、第2のタンク32には、内径25mm、全長100mm、内容量20mL(ミリリットル)のポリプロピレン製のタンクを用いる。
【0064】
第2のタンク32には、第2のタンク32の内部のインク4の液面5を検出する液面センサ32aが設けられている。第2のタンク32の第2の排出口32tと、インクジェットヘッド20の入口21a(
図3参照)との間は、配管33pで接続されている。配管33pは、第3のインク経路33(
図1参照)である。
【0065】
本実施例では、インクジェットヘッド20と第2のタンク32の相対位置を固定して、軟質の配管33pを用いて最短距離で接続することによって、配管33pが動かないように固定している。
【0066】
図6は、第2のタンク32及びインクジェットヘッド20のイメージ図である。
図6に示すように、インクジェットヘッド20が固定されたベース部材27に、サポート部材28が結合されている。サポート部材28には、第2のタンク32が固定されている。ベース部材27は、駆動装置14(
図1参照)によって駆動され移動し、同時に、第2のタンク32は、インクジェットヘッド20との相対位置を固定されてインクジェットヘッド20と一緒に動く。
【0067】
配管33pは、インク4の成分に耐性があれば材質は問わない。配管33pが軟質の場合には、配管33pは、インクジェットヘッド20と第2のタンク32が一体となって動く際に変形しないように固定されている必要がある。配管33pが変形しないように、硬質の樹脂や金属の配管を用いてもよい。
【0068】
第2のタンク32〜配管33p〜インクジェットヘッド20の間にインクの流れが澱む部分がなければ、第2のタンク32はインクジェットヘッド20と一体化されていてもよい。第2のタンク32の第2の排出口32tとインクジェットヘッドの入口21aとが直接接続されてもよい。
【0069】
図1に示した第1のポンプ34、第2のポンプ36として、本実施例ではチューブポンプを用いる。チューブポンプの駆動源としてはステッピングモータを用いる。ポンプの流量は、例えば20mL/min以上であり、インクジェットヘッド20のノズルから気体を吸い込まないように、インクの種類・インクの吐出量に合わせて設定する。ポンプは、例えば1s以内に所定の設定流量に追従できる応答性を有するものを用いる。上記の性能を満たしていれば、ポンプの種類は回転ポンプ、往復ポンプなど種類は問わない。また、ポンプの動力源として上記の性能を満たしていれば、電動モータ、圧縮空気など、ポンプの駆動源の種類は問わない。
【0070】
第1のポンプ34、第2のポンプ36を駆動してインクの循環を行う。インクの循環を行う際に、制御部38は、第2のタンク32に設けた液面センサ32aの検出値をフィードバックしながら、第1のポンプ34と第2のポンプ36の流量に差をつけるように制御することで、インクを吐出している間、第2のタンク32内のインクの液面高さを一定範囲内に保ち、インクジェットヘッド20内のインクにかかる圧力を一定範囲内に保つ。本実施例では、第2のタンク32内のインク4の液面5の高さを、例えば設定値±3mmの範囲で維持する。
【0071】
図1に示した第1のインク経路31や第2のインク経路35は、インクの成分に耐性のあるチューブを用いて構成する。例えば、内径が2mm以上、かつ6mm以下のチューブを用いる。
【0072】
以上のように、実施例1のインクジェット印刷装置10は、すべてのインクが循環し、インクの経路に滞留部が存在しないように構成し、インク内の粒子の沈降を防ぐことができ、第1の課題が解消する。インクジェットヘッド20は印刷ステージ12と独立して移動するため、インクジェットヘッド20が固定され、印刷ステージ12だけが移動する場合に比べ、印刷タクトを速くすることができ、第2の課題が解消する。インクジェットヘッド20と第2のタンク30とは一緒に移動するので、第2のタンク32の第2の排出口32tとインクジェットヘッド20の入口21aとを繋ぐ配管33pの変形を防ぐことによって、又は、この配管33p自体をなくすことによって、インクジェットヘッド20を動かしてもインクの吐出が不安定になりにくくすることができ、第3の課題が低減する。
【0073】
<実施例2> 実施例2のインクジェット印刷装置について、
図7を参照しながら説明する。実施例2のインクジェット印刷装置は、第2のタンク32内の気体3の圧力を調整する圧力調整機構を備えている。他の構成は実施例1と同じである。以下、実施例2以降において、実施例1と同じ構成には同じ符号を用い、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0074】
図7は、第2のタンク32の圧力調整機構33の説明図である。
図7に示すように、気密に構成された第2のタンク32の内部空間に、気圧センサ32bと気圧調整部32cの調整部32nとが、配管32uを介して接続されている。気圧センサ32bは、第2のタンク32内においてインク4の液面5に接している気体3の圧力を検出する。
【0075】
気圧調整部32cの制御部32mは、矢印32xで示すように気圧センサ32bからフィードバックされた気体3の圧力の測定値と、矢印32yで示すように上位システム11から指示された圧力目標値とが入力され、両者を比較して、矢印32zで示すように調整部32nに制御信号を出力する。調整部32nは、制御信号に応じて、圧力源32pと第2のタンク32とを接続し、第2のタンク32内の気体3の圧力を調整する。
【0076】
気圧センサ32bは、第2のタンク32内の気体3の圧力(ゲージ圧)が検出できればよく、歪ゲージ式、半導体ピエゾ抵抗式、静電容量式、シリコンレゾナント式など、検出の原理を問わない。
【0077】
第2のタンク32内の気体3の圧力は、例えばゲージ圧で−1kPa以下、かつ−5kPa以上の負圧状態に維持される。第2のタンク32内の気体3の圧力は、インクの比重や、インクジェットヘッド20のノズルプレート26の高さから第2のタンク32の液面までの高さ(水頭差)によって決まる。
【0078】
負圧の圧力源32pの他に、圧縮気体による正圧の圧力源を設け、調整部32nで流路を切替えることで、第2のタンク32に正圧の圧力源を接続し、第2のタンク32とインクジェットヘッド20のインクを排出する機能を備えるように構成してもよい。
【0079】
気圧調整部32cによって第2のタンク32内の気体3の圧力を調整し、インク4にかかる圧力を制御することによって、インクの吐出の安定性を向上させ、インクジェットヘッドのノズルからのインクの垂れや気体の吸い込みを防止することができる。
【0080】
第2のタンク32内の気体3の圧力を、第2のタンク32とインクジェットヘッドとの高低差に応じて調整し、インクジェットヘッド内のインクの圧力を最適化できるため、第2のタンク32の設置位置をより自由に設定することができる。その結果、第2のタンク32とインクジェットヘッドを一緒に動かすことが容易になり、第4の課題が解消する。
【0081】
<実施例3> 実施例3のインクジェット印刷装置について、
図8を参照しながら説明する。実施例3のインクジェット印刷装置は、第2のタンク32に設ける液面センサが、静電容量式の液面センサ50である。他の構成は、実施例1又2と同じである。
【0082】
図8は、静電容量式の液面センサ50の模式図である。
図8(a)に示すように、液面センサ50は、検出電極52と参照電極54とが、第2のタンク32の外側に互いに対向するように取り付けられ、検出電極52と参照電極54の間に、容量Cの平板コンデンサが構成される。
【0083】
比誘電率εのインク4を第2のタンク32に入れた際に、
図8(b)に示すように、液面センサ50は、電極56間に気体3が配置された静電容量Caの平板コンデンサと、電極58間にインク4が配置された静電容量Cbの平板コンデンサとが並列に接続された等価回路と考えることができる。静電容量式の液面センサ50は、検出電極52と参照電極54が互いに対向する領域にインク4が無いときの平板コンデンサの容量Cと、検出電極52と参照電極54が互いに対向する領域にインク4が入ったときのCaとCbの合成容量とを比較することによって、液面5の高さを検出する。
【0084】
静電容量式の液面センサ50では、検出電極52と参照電極54とが互いに対向する領域内に存在する比誘電率εのインク4の量に対応付して、インク4の液面5の高さを検出する。この検出原理から、検出電極52と参照電極54とが互いに対向する領域内にインク4の液面5があれば、液面5が揺れたり波打ったりしても、検出電極52と参照電極54とが互いに対向する領域内に存在するインク4自体の量が変化しない場合には、検出する合成容量、つまり液面高さの検出値は変化しない。
【0085】
第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすと、第2のタンク内のインクの液面が揺れたり波打ったりすることがある。フロート式のセンサは、液面の揺れによって検出値が変動しやすい。そのため、インク循環の制御が不安定になりやすい。
【0086】
これに対し、静電容量式の液面センサ50は、第2のタンク内のインクの液面が揺れたり波打ったりしたときに、フロート式のセンサに比べ、検出値の乱れを生じにくいため、インク循環の制御が不安定になりにくい。その結果、第2のタンクとインクジェットヘッドを一緒に動かすことが容易になり、第4の課題が解消する。
【0087】
<実施例4> 実施例4のインクジェット印刷装置について、
図9及び
図10を参照しながら説明する。実施例4のインクジェット印刷装置は、減衰部が追加されている。他の構成は、実施例1、2又は3と同じである。
【0088】
図9は、減衰部の構成を示す模式図である。減衰部として一般的に、
図9(a)に示すエアチャンバ60や、
図9(b)に示すアキュームレータ62が使われる。これらの装置60,62は、液体61の入口60aから出口60bまでの流路の途中に、液体61が貯まる部分が接続されている。実施例4の減衰部として、これらの装置60,62を用いてもよい。
【0089】
しかし、
図9(a)に示したエアチャンバ60は、液体61に接する気体63が、液体61に溶けて少なくなるため、エアチャンバ60内に気体63を定期的に補充することが必要である。
【0090】
図9(b)に示したアキュームレータ62は、液体61と気体63がゴム膜62xで仕切られているため、気体63が液体61に溶けることはない。しかし、ゴム膜62xが液体61により劣化する。
【0091】
これに対し、配管抵抗により脈動を減衰する配管抵抗式の減衰装置は、メンテナンスが不要であり、劣化しにくいため、実施例4の減衰部として、より好ましい。
【0092】
図10は、配管抵抗式の減衰部64の構成を示す模式図である。
図10に示すように、減衰部64は、液体の入口64aと出口64bとの間をつなぐ配管66が、ケース65に収納されている。ケース65内の配管66は、ジグザグに折り返され、あるいは、らせん状や渦巻き状に巻かれており、配管抵抗が大きくなるように構成されている。
【0093】
液体が入口64aから出口64bまで流れる間に、配管66の折り返し部や巻かれた屈曲部を通過するときの配管抵抗によって、配管66を流れる流体を介して伝搬する脈動を減衰することができる。
【0094】
配管66に、インクジェット印刷装置の配管と同じ素材のもの、すなわちインクの成分に耐性のある素材のものを使用すると、インクの成分による劣化が発生しない。配管66は軟質、硬質など、どのようなものでもかまわないが、軟質の配管を使うと配管の厚さが薄い場合にはアキュームレータのゴム膜のような効果も期待できる可能性がある。
【0095】
図9又は
図10の減衰部は、第2のインク経路35のうち第2のポンプ36とインクジェットヘッド20の出口21bとの間や第3のインク経路33に(
図1参照)、設ける。これにより、第2のポンプによりインクジェットヘッドに伝わる脈動を低減できる。その結果、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出る第5の課題が低減する。
【0096】
<実施例5> 実施例5のインクジェット印刷装置について、
図11を参照しながら説明する。実施例5では、第2の注入口が、第2のタンク内のインクから離れるように構成する。その他の構成は、実施例1、2、3又は4と同じである。
【0097】
図11は、第2のタンク32の構成を概念的に示す説明図である。
図11に示すように、第2の注入口32sが、第2のタンク32内のインク4の液面5から離れ、第2のタンク32の第2の注入口32sが、第2のタンク32内のインク4に接していないように構成されている。
【0098】
そのため、第1のポンプから第2のタンク32の第2の注入口32sまで送られたインクと、第2のタンク32内のインク4とが一度切り離され、第1のポンプ34の脈動による圧力変動が、第2のタンク32内のインク4に直接伝わることがなくなる。
【0099】
さらに、第2のタンク32を気密に構成する。これにより、第2のタンク32内の気体3が、
図9(a)のエアチャンバ60の気体63と同様の効果を発揮することにより、インクジェットヘッド内のインクに伝わる脈動を減衰することができる。
【0100】
第2のタンク32を気密に構成すると、
図9(a)のエアチャンバ60と同様に、気体を定期的に補充する必要がある。
【0101】
そこで、実施例3と同様に、第2のタンク32の上部に配管32uを設け、第2のタンク32内の気体3の圧力を調整する圧力調整機構33(
図7参照)を設ける。この配管32uから第2のタンク32内の気体3の圧力(負圧)を一定に保つのに必要な気体が供給されるので、気体を定期的に補充する必要がなくなる。
【0102】
本実施例では、例えば、容量20mLの第2のタンク32を用い、インク10mL、気体10mLの割合になるようにする。
【0103】
以上のように構成すると、第1のポンプによりインクジェットヘッドに伝わる脈動を低減することができる。その結果、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出る第5の課題が低減する。
【0104】
<実施例6> 実施例1、2、3、4又は5のインクジェット印刷装置において、制御部が、第2のポンプの流量を一定にしながら、液面センサの出力に基づき、第1のポンプの流量を制御する実施例6について、
図12を参照しながら説明する。
【0105】
図12は、制御部の動作を示すフローチャートである。
図12に示すように、制御部は、まず、第2のポンプを起動する。このとき、第2のポンプの流量Q2が一定になるように、第2のポンプの出力を設定する(S10)。
【0106】
次いで、タイマーをリセットした後(S12)、液面センサがONであるか否かを判定する(S14)。液面センサは、第2のタンク内のインクの液面が所定位置に達し、又は所定位置を超えているときに、ONになる。
【0107】
液面センサがONであれば(S14でY)、第1のポンプの流量Q1が第2のポンプの流量Q2と同じになるように、第1のポンプの出力を設定し(S16)、タイマーが第1の所定時間T1に達するまで(S18で<)、ステップS14に戻り、液面センサのONが継続するかを監視する(S14)。
【0108】
すなわち、第2のタンク内のインクの液面が所定位置に達し又は所定位置を超えていることを液面センサが検出したとき(S14でY)、第1のポンプの流量Q1が第2のポンプの流量Q2と等しくなるように、第1のポンプの流量を制御する(S16)。これは、制御部が実行する第1の手順である。
【0109】
タイマーが第1の所定時間T1を経過すると(S18で≧)、第1のポンプの流量Q1がゼロになるように、第1のポンプの流量を制御し(S20)、ステップS12に戻る。
【0110】
すなわち、第2のタンク内のインクの液面が所定位置に達し又は所定位置を超えていることを、液面センサが継続して第1の所定時間T1以上検出したとき(S18で≧)、第1のポンプの流量Q1がゼロになるように、第1のポンプの流量を制御する(S20)。これは、制御部が実行する第2の手順である。
【0111】
ステップS14において、液面センサがONでないと判定すれば(S14でN)、タイマーをリセットした後(S22)、液面センサがONであるか否かを判定し(S23)、タイマーが第2の所定時間T2に達するまで(S24で<)、液面センサのONが継続するかを監視する(S23)。監視中に液面センサがONになれば(S23でY)、ステップS12に戻る。タイマーが第2の所定時間T2を経過すると(S24で≧)、第1のポンプの流量Q1が第2のポンプの流量Q2より増えるように、第1のポンプの出力を設定する(S26)。
【0112】
すなわち、第2のタンク内のインクの液面が所定位置に達していないことを、液面センサが継続して第2の所定時間T2以上検出したとき(S24で≧)、第1のポンプの流量が第2のポンプの流量より多くなるように、第1のポンプの流量を制御する(S26)。これは、制御部が実行する第3の手順である。
【0113】
次いで、タイマーをリセットし(S28)、タイマーが第3の所定時間T3に達するまで(S32で
<)、液面センサがONでない状態が継続するかを監視する(S30)。監視中に液面センサがONになれば(S30でY)、ステップS12に戻る。タイマーが第3の所定時間T3に達したときには(S32でY)、漏液警告表示を発する(S34)。例えば、インクジェット印刷装置に設けた警告灯を点灯あるいは点滅し、上位システムに警告信号を送信する。
【0114】
上記のように制御することによって、第2のタンク内の液面は、液面センサのON/OFFが切り替わる所定位置に対して上下に変動する幅を所定範囲内に制限することができる。すなわち、第2のタンクからインクが溢れたり、第2のタンクが空になりインクジェットヘッドに気体が混入したりすることを防ぐことができる。
【0115】
液面高さを制限する場合、一般には、上限用と下限用の合計2個の液面センサを用いるところを、1個の液面センサだけを用いて、インクの液面高さの変動を所定範囲内に制限することができる。
【0116】
以上のように、第2のタンク内のインクの液面の位置が一定になるように、第1のポンプの流量を制御することによって、第2のポンプの流量を制御する必要がなくなり、第2のポンプの流量が変化することによって発生する脈動が、インクジェットヘッドに伝わる機会を削減することができる。その結果、インクの供給や回収にポンプを使用した場合に、ポンプの脈動がインクジェットヘッドに伝わり、インクの吐出に悪影響が出る第5の課題が低減する。
【0117】
<実施例7> 実施例7のインクジェット印刷装置10aについて、
図13を参照しながら説明する。実施例7は、実施例1に、実施例2〜6を組み合わせた構成である。
【0118】
図13は、インクジェット印刷装置10aの全体構成図である。
図13に示すように、第2のタンク32は、実施例2と同様に、第2のタンク32内の気体の圧力を調整するための気圧センサ32b及び気圧調整部32cが追加され、実施例5と同様に、第2の注入口は第2のタンク内のインクから離れるように構成されている。第2のタンク32には、実施例3と同様に、静電容量式の液面センサ50が設けられている。第1のインク経路35には、実施例4と同様に、減衰部35xが設けられている。
【0119】
さらに、第3のインク経路33にも、減衰部33xが設けられている。この減衰部33xは、実施例4の減衰部と同様のものである。
【0120】
制御部38は、実施例6と同様に、第2のポンプの流量を一定にしながら、第1のポンプ34の流量を制御する。
【0121】
実施例7のインクジェット印刷装置は、実施例1〜5の構成要素を組み合わせることで、インクの澱む部分の無い流路と、インクジェットヘッド20を動かしながらの印刷とを実現できる。また、実施例1〜6の構成要素を組み合わせることで、ポンプによりインクを循環させても、インクジェットヘッド20に伝わるポンプによる脈動を低減できる。
【0122】
<実施例8> 実施例8の電子部品の製造法について、
図14及び
図15を参照しながら説明する。実施例8では、実施例1〜7と同様に構成された1台又は2台以上のインクジェット印刷装置を用いて、電子部品の全部又は一部を形成する。実施例1に、実施例2〜6の2つ以上の特徴部分を組み合わせたインクジェット印刷装置を用いても構わない。
【0123】
図14及び
図15は、電子部品80の製造工程を模式的に示す断面図である。インクジェット印刷装置を用いて
図15(g)に示す未焼成の積層体70を作製し、作製した未焼成の積層体70を焼成することによって、
図15(h)に示す電子部品80を得る。以下、電子部品80がセラミック電子部品である場合を例に挙げて、詳しく説明する。
【0124】
(1)まず、
図14(a)に示すように、インクジェット印刷装置の絶縁材料用インクジェットヘッド70aと基材78が載置された印刷ステージとを相対移動させながら、絶縁材料用インクジェットヘッド70aから絶縁材料インク70xを吐出させ、基材78上に1層目の絶縁材料パターン72aを形成する。
【0125】
(2)次いで、
図14(b)に示すように、インクジェット印刷装置の外部電極用インクジェットヘッド70bと基材78が載置された印刷ステージとを相対移動させながら、外部電極用インクジェットヘッド70bから外部電極用インク70yを吐出させて、絶縁材料パターン72aの両端部に隣接する基材78上の領域(絶縁材料パターン72aが形成されていない領域)に、絶縁材料パターン72aの両端部に接するように、1層目の一対の外部電極パターン74aを形成する。
【0126】
(3)次いで、
図14c(c)に示すように、インクジェット印刷装置の絶縁材料用インクジェットヘッド70aと基材78が載置された印刷ステージとを相対移動させながら、絶縁材料用インクジェットヘッド70aから絶縁材料インク70xを吐出させて、1層目の絶縁材料パターン72aに重なる2層目の絶縁材料パターン72bを形成する。
【0127】
(4)次いで、
図14(d)に示すように、インクジェット印刷装置の外部電極用インクジェットヘッド70bと印刷ステージ上の基材78とを相対移動させながら、外部電極用インクジェットヘッド70bから外部電極用インク70yを吐出させて、1層目の外部電極パターン74aの上に、2層目の絶縁材料パターン72bの両端部に接するように、2層目の外部電極パターン74bを形成する。
【0128】
(5)次いで、
図15(e)に示すように、インクジェット印刷装置の内部電極用インクジェットヘッド70cと基材78が載置された印刷ステージとを相対移動させながら、内部電極用インクジェットヘッド70cから内部電極用インク70zを吐出させて、2層目の絶縁材料パターン72bの所定の領域に、2層目の外部電極パターン74bの一方(図において左側)に接続され、2層目の外部電極パターン74bの他方(図において右側)から離れるように、1層目の内部電極パターン76aを形成する。1層目の内部電極パターン76aは、絶縁材料パターン72a,72bや外部電極パターン74a,74bの厚みよりも薄く形成する。また、内部電極パターン76aは、絶縁材料パターン72a,72bの幅方向(
図15(e)における紙面垂直方向)の両端縁よりも内側に形成する。
【0129】
(6)次いで、
図15(f)に示すように、インクジェット印刷装置の絶縁材料用インクジェットヘッド70aと基材78が載置された印刷ステージとを相対移動させながら、絶縁材料用インクジェットヘッド70aから絶縁材料インク70xを吐出させて、2層目の絶縁材料パターン72bに重なり、内部電極パターン76aを覆うように、3層目の絶縁材料パターン72cを形成する。
【0130】
(7)以下、同様に、3層目の外部電極パターン74c、3層目の外部電極パターン74cの他方(
図15において左側)に接続する内部電極パターン76b、4層目の絶縁材料パターン72d、4層目の外部電極パターン74d、5層目の絶縁材料パターン72e、5層目の外部電極パターン74eを順に形成して、
図15(g)に示す未焼成の積層体70を得る。
【0131】
(8)次いで、積層体70を基材78から分離し、未焼成の積層体70全体を同時に焼成する。
【0132】
焼成後、
図15(h)に示す電子部品80が得られる。
図15(h)に示すように、電子部品80は積層セラミックコンデンサであり、積層構造体であるセラミック素体82の両端に一対の外部電極84a,84bが形成され、セラミック素体82の内部には、一方の外部電極84aに接続された内部電極86aと、他方の外部電極84bに接続された内部電極86bとが、間隔を設けて形成されている。
【0133】
上記(2)〜(6)の工程を必要回数繰り返すことにより、意図する積層数の積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0134】
なお、パターンを形成する順序を変更しても構わない。たとえば、1層目と2層目の絶縁材料パターン72a,72bを形成し、次いで、1層目と2層目の外部電極パターン74a,74bを形成しても構わない。また、形成したパターンを乾燥させた後に、その上に次のパターンを形成してもよい。
【0135】
内部電極用インク70zは、(a)顔料体積濃度が、70%以上、かつ95%以下の金属顔料インクが好ましく、(b)固形分濃度が、9vol%以上、かつ20.5vol%以下が好ましく、(c)内部電極の電極材料として、Ni、Fe、Al、Ag、W、Pd、Au、Cu、Cなどの少なくとも一つを含むものや、これらを主成分とする合金が好ましく、(d)金属顔料の平均粒径を200nmから300nmとするのが好ましい。内部電極パターン76a〜76bの各層の成形厚は、1μm以上、かつ25μm以下が好ましい。
【0136】
絶縁材料インク70xは、(a)顔料体積濃度(Pigment Volume Concentration)が、60%以上、かつ95%以下が好ましく、(b)固形分濃度が、10vol%以上、かつ27vol%以下が好ましく、(c)顔料は、CaTi,ZrO
3、SrZrO
3、BaTiO
3、BaTi,CaO
3、BaTi,ZrO
3のうち少なくとも一つを主成分とするものが好ましく、(d)平均粒径を120nmから400nm程度とするのが好ましい。絶縁材料パターン72a〜72eの各層の成形厚は、1μm以上、かつ25μm以下が好ましい。なお、製造する電子部品の種類によっては、絶縁材料インク70xに含まれる絶縁材料として、例えば、フェライトなどの磁性体材料、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電体材料を用いることできる。
【0137】
外部電極用インク70yは、内部電極用インク70zと同じものが好ましいが、内部電極用インク70zと異なるものでも構わない。外部電極パターン74a〜74eの各層の成形厚は、1μm以上、かつ25μm以下が好ましい。
【0138】
上記(8)において未焼成の積層体70を焼成する際には、例えば、280℃で有機成分を除去する脱脂を行い、次いで、セラミック素体82と内部電極86aを焼結させるために約1300℃で焼成する。脱脂時間は、例えば、13.5時間である。
【0139】
内部電極用インク70zに含まれる内部電極材料の粒径をより小さくすると、ナノサイズ効果で融点が下がってしまう。内部電極材料の融点が下がってしまうと、ボールアップにより被覆率が下がる等の問題が発生し、内部電極材料をセラミック材料と一緒に焼成することが難しくなる。セラミック材料と一緒に焼成する場合、内部電極材料の粒径は、ある程度大きくせざるを得ないため、内部電極用インク内で内部電極材料の粒子の沈降が発生し易くなる。このような場合に、本発明のようなインク沈降抑制策が必要となる。
【0140】
なお、外部電極パターンがなく、絶縁材料パターンと内部電極パターンとを有する未焼成の積層体を作製し、未焼成の積層体の絶縁材料と内部電極材料とを一緒に焼成しても、電子部品を製造することができる。この場合、外部電極は、焼成前の積層体に形成しても、焼成後の積層体に形成しても構わない。
【0141】
上記のように、絶縁材料を含む第1のインクと、電極材料を含む第2のインクとを用いて、セラミック材料を含む層と電極材料を含む層とを有する未焼成の印刷物を形成し、次いで、未焼成の印刷物のセラミック材料と電極材料とを一緒に焼成することによって、種々の電子部品を製造することができる。
【0142】
例えば、セラミック材料を含む層の間に電極材料を含む層が挟まれた印刷物によって、積層タイプの電子部品(コンデンサ、コイル、圧電素子、サーミスタ、多層基板など)を製造することができる。また、セラミック材料を含む層の表面に電極材料を含む層が配置された印刷物によって、積層タイプ以外の電子部品(コンデンサ、コイル、圧電素子、サーミスタ、単層基板など)を製造することができる。これらの電子部品の非導電層を形成するため、誘電体、磁性体、ピエゾ、サーミスタ材料などの少なくとも1つを含むインクを用いる。また、内部電極や外部電極の導電層を形成するため、Ni、Ag、Pd、Au、Cuやこれらを主成分とする合金などの少なくとも1つを含むインクを用いる。インクの粘度は、1000s
−1で40mPa・s以下の低粘度が好ましく、特に10mPa・s以上、かつ25mPa・s以下の粘度が好ましい。
【0143】
実施例8は、インクジェット印刷装置を用いて、電子部品の全部又は一部を形成することができる。また、実施例1と同様に、インク内の粒子の沈降を防ぐことができ、印刷タクトを速くすることができ、インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくくすることができ、第2のタンク内のインクの液面の位置を一定にするための流量変化による脈動を、インクジェットヘッドに伝えにくくすることができる。そのため、特に絶縁材料と一緒に焼成する電極材料のような沈降しやすい粒子を含むインクを用いても、品質バラツキの小さい電子部品を安定して短期間に製造することができる。
【0144】
<実施例9> 実施例9の電子部品の製造方法について説明する。実施例9では、実施例1〜7と同様に構成されたインクジェット印刷装置を用いて、電子部品の一部を形成する。実施例1に、実施例2〜6の2つ以上の特徴部分を組み合わせたインクジェット印刷装置を用いても構わない。以下では、セラミック電子部品を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0145】
まず、絶縁材料としてセラミックグリーンシートを準備する。詳しくは、成膜装置を使用してセラミックシートを作製し、乾燥装置で乾燥させて、セラミックグリーンシートを得る。
【0146】
成膜装置は、セラミックスラリーを支持体に塗布することにより、セラミックシートを作製する。セラミックスラリーは、セラミック粉末に樹脂成分を添加し、有機溶媒(水系溶媒でも良い)で分散したものである。支持体には、長尺または短冊状の樹脂フィルム、金属ロール、金属ドラム、金属ベルト、もしくは、金属板等を用いることができる。成膜装置として、例えば、ダイコータ、ドクターブレード、ロールコータ、インクジェット型コータを適宜使用する。
【0147】
乾燥装置は、熱風、支持体の加熱、または、真空乾燥等の手法でセラミックシートを乾燥させる。セラミックシートを適度に乾燥させて、セラミックグリーンシートを得る。溶媒の性質に適した手法であれば、どのような手法で乾燥させても良い。セラミックグリーンシートは、支持体から剥離させて扱う場合もあれば、支持体に支持されたまま扱う場合もある。
【0148】
次いで、実施例1〜7のインクジェット印刷装置を用いて、セラミックグリーンシート(すなわち、セラミック材料を含む未焼成の絶縁材料シート)に、印刷物として内部電極パターンを印刷する。すなわち、インクジェット印刷装置の印刷ステージにセラミックグリーンシートを載せ、インクジェットヘッドと印刷ステージとを相対的に移動させながら、インクジェットヘッドから、内部電極を形成するための電極材料を含むインクを吐出させ、インクをセラミックグリーンシートに付着させる。
【0149】
次いで、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシート(すなわち、印刷物が形成された前記未焼成のシート)が積層された未焼成の積層体を作製する。詳しくは、内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層、圧着する。この工程では、一般的な積層機の他に、特開2005‐217278号公報や特開2011−258928号公報に記載の装置を使用すれば良い。なお、支持体は、未焼成の積層体が完成するまでの間の適宜なタイミングで、セラミックグリーンシートから剥離する。
【0150】
次いで、作製された未焼成の積層体を加圧プレスの後、所望のサイズにカットする。
【0151】
次いで、圧着されカットされた未焼成の積層体の電極材料とセラミック材料とを一緒に焼成する。
【0152】
次いで、焼成後の積層体に外部電極を形成し、必要に応じて外部電極のメッキを施すると、セラミック電子部品が完成する。
【0153】
以上のように、インクジェット印刷装置を利用し、電極材料を含むインクを用いて、絶縁材料を含む未焼成のシートに、印刷物を形成し、次いで、印刷物が形成された未焼成のシートを含む未焼成の積層体を形成し、次いで、未焼成の積層体の電極材料とセラミック材料とを一緒に焼成することによって、種々の電子部品を製造することができる。
【0154】
例えば、セラミック材料を含む層の間に電極材料を含む層が挟まれた印刷物によって、積層タイプの電子部品(コンデンサ、コイル、圧電素子、サーミスタ、多層基板など)を製造することができる。また、セラミック材料を含む層の表面に電極材料を含む層が配置された印刷物によって、積層タイプ以外の電子部品(コンデンサ、コイル、圧電素子、サーミスタ、単層基板など)を製造することができる。これらの電子部品の非導電層を形成するため、誘電体、磁性体、ピエゾ、サーミスタ材料などの少なくとも1つを含む未焼成のシートを用いる。また、内部電極や外部電極の導電層を形成するため、Ni、Ag、Pd、Au、Cuやこれらを主成分とする合金などの少なくとも1つを含むインクを用いる。インクの粘度は、1000s
−1で40mPa・s以下の低粘度が好ましく、特に10mPa・s以上、かつ25mPa・s以下の粘度が好ましい。
【0155】
実施例9は、インクジェット印刷装置を用いて、電子部品の一部を形成することができる。また、実施例1と同様に、インク内の粒子の沈降を防ぐことができ、印刷タクトを速くすることができ、インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくくすることができ、第2のタンク内のインクの液面の位置を一定にするための流量変化による脈動を、インクジェットヘッドに伝えにくくすることができる。
【0156】
<まとめ> 以上に説明したように、すべてのインクが循環し、インクジェットヘッドを動かすことができ、インクジェットヘッドを動かしてもインクの吐出が不安定になりにくいインクジェット印刷装置を提供することができる。
【0157】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更を加えて実施することが可能である。
【0158】
例えば、実施例1に、実施例2〜7の2つ以上の特徴部分を組み合わせても構わない。