(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側正方領域におけるLTIRを前記外側正方領域におけるLTVで除した値は、0.8以上1.2以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の炭化珪素単結晶基板。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の説明]
半導体装置のフォトリソグラフィ工程においては、炭化珪素単結晶基板の一方の主面が、たとえば真空チャックに固定された状態で、他方の主面上にマスクパターンが形成される。たとえば径方向における炭化珪素単結晶基板の厚みが異なると、炭化珪素単結晶基板の一方の主面がチャックの表面に固定される際、他方の主面の平坦性が悪化する。そのため、他方の主面上に形成されるマスクパターンの位置が、所望の位置からずれる場合がある。
【0009】
炭化珪素単結晶基板の主面は、通常、回転する定盤を用いて研磨される。定盤の外周側における周速度は、中央側の周速度よりも速い。そのため、炭化珪素単結晶基板の外周側の研磨レートは、中央側の研磨レートよりも高くなる。結果として、中央側から外周側に向かうにつれて炭化珪素単結晶基板の厚みが小さくなりやすい。フォトリソグラフィ工程において、中央側から外周側に向かうにつれて厚みが小さくなる炭化珪素単結晶基板の一方の主面がチャックの表面に固定されると、特に、他方の主面の外周側において平坦性が悪化する。そのため、特に、他方の主面の外周側において、マスクパターンの位置ずれが顕著になりやすい。
【0010】
(1)実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10は、第1主面10aと、第1主面10aと反対側の第2主面10bとを備えている。第1主面10aは、炭化珪素単結晶基板10の重心Gを通りかつ炭化珪素単結晶基板10の厚み方向TDに平行な直線L1と第1主面10aとの交点O1を中心とする正方形に囲まれた中央正方領域1と、第1主面10aの外縁10c上のある位置と交点O1とを繋ぐ直線L2に対して垂直な直線と平行な辺を有しかつある位置から交点に向かって10.5mm離れた位置を中心O2とする正方形に囲まれた外側正方領域2とを含む。厚み方向TDから見た場合、中央正方領域1および外側正方領域2の双方の一辺の長さは15mmである。第1主面10aの最大径Wは、100mm以上である。炭化珪素単結晶基板10のTTVは、5μm以下である。中央正方領域1におけるLTIRを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、0.8以上1.2以下である。外側正方領域2におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、1以上3以下である。
【0011】
上記(1)に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、中央正方領域におけるLTIRを中央正方領域におけるLTVで除した値は0.8以上1.2以下である。後述するように、LTIRはLTVと基準面が異なる。そのため、LTIRは小さいがLTVは大きい場合と、LTIRが大きいがLTVが小さい場合等があり得る。そのため、どちらか一方のパラメータだけでは、平坦性を精度良く判断することは困難である。そこで、LTIRとLTVとの比を計算し、当該比を上述の範囲内に制御することにより、中央正方領域における平坦性を精度良く制御することができる。また外側正方領域におけるLTVを中央正方領域におけるLTVで除した値は1以上3以下である。外側正方領域における平坦性を、中央正方領域と同程度に制御することにより、外側正方領域における平坦性を良好にすることができる。結果として、フォトリソグラフィ工程におけるマスクパターンの位置ずれを抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)に係る実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10において、最大径Wは、150mm以上であってもよい。
【0013】
(3)上記(2)に係る実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10において、最大径Wは、200mm以上であってもよい。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに係る実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10において、第1主面10aには、厚み方向TDにおける深さが0.5nm以上の傷が形成されていてもよい。傷の面密度は、0.085個/cm
2以下であってもよい。
【0015】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに係る実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10において、外側正方領域2におけるLTIRを外側正方領域2におけるLTVで除した値は、0.8以上1.2以下である。後述するように、LTIRはLTVと基準面が異なる。そのため、LTIRは小さいがLTVは大きい場合と、LTIRが大きいがLTVが小さい場合等があり得る。そのため、どちらか一方のパラメータだけでは、平坦性を精度良く判断することは困難である。そこで、LTIRとLTVとの比を計算し、当該比を上述の範囲内に制御することにより、外側正方領域における平坦性を精度良く制御することができる。
【0016】
(6)実施の形態に係る炭化珪素半導体装置100は、上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶基板10を備えている。
【0017】
(7)実施の形態に係る炭化珪素半導体装置100は、以下の工程を備えている。上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の炭化珪素単結晶基板10が準備される。炭化珪素単結晶基板10が加工される。
[実施形態の詳細]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。また、本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また、負の指数については、結晶学上、”−”(バー)を数字の上に付けることになっているが、本明細書中では、数字の前に負の符号を付けている。
(実施の形態1:炭化珪素単結晶基板)
まず、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板の構成について説明する。
【0018】
図1および
図2に示されるように、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板10は、第1主面10aと、第1主面10aと反対側の第2主面10bとを有している。炭化珪素単結晶基板10は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。第1主面10aは、たとえば{0001}面または{0001}面から4°以下程度オフした面である。第1主面10aおよび第2主面10bは、それぞれ(0001)面または(0001)面から4°以下程度オフした面および(000−1)面または(000−1)面から4°以下オフした面であってもよい。代替的に、第1主面10aおよび第2主面10bは、それぞれ(000−1)面または(000−1)面から4°以下程度オフした面および(0001)面または(0001)面から4°以下オフした面であってもよい。
【0019】
図1に示されるように、第1主面10aは、たとえば略円形を有している。第1主面10aは、中央正方領域1と、外側正方領域2とを含んでいる。中央正方領域1は、炭化珪素単結晶基板10の重心G(
図2参照)を通りかつ炭化珪素単結晶基板10の厚み方向TDに平行な直線L1と第1主面10aとの交点O1を中心とする正方形に囲まれた領域である。中央正方領域1は、厚み方向TDから第1主面10aを見た場合に、交点O1を回転対称中心とする正方形に囲まれた領域である。外側正方領域2は、第1主面10aの外縁10c上のある位置C2と交点O1とを繋ぐ直線L2に対して垂直な直線と平行な辺を有しかつある位置C2から交点に向かって10.5mm離れた位置を中心O2とする正方形に囲まれた領域である。外側正方領域2は、厚み方向TDから第1主面10aを見た場合に、中心O2を回転対称中心とする正方形に囲まれた領域である。
【0020】
厚み方向TDとは、第2主面10bから第1主面10aに向かう方向である。第1主面10aが平面である場合、厚み方向TDは、第1主面10aに対して垂直な方向である。第1主面10aが曲面である場合、厚み方向TDは、たとえば第1主面10aの最小二乗平面に対して垂直な方向であってもよい。なお最小二乗平面とは、観測された物体の表面上の位置を表す座標(x
i,y
i,z
i)と、ある平面(ax+by+cz+d=0)との最短距離の二乗の和が最小になるようにa、b、cおよびdが決定された平面のことである。
【0021】
厚み方向TDから見た場合、中央正方領域1および外側正方領域2の双方の一辺の長さは15mmである。厚み方向TDから見た場合、中央正方領域1は、直線L2に平行な辺と、直線L2および直線L1の双方に対して垂直な辺とを有する。同様に、厚み方向TDから見た場合、外側正方領域2は、直線L2に平行な辺と、直線L2および直線L1の双方に対して垂直な辺とを有する。
【0022】
厚み方向TDから見た場合、第1主面10aの最大径Wは、100mm以上である。最大径Wは、150mm以上であってもよいし、200mm以上であってもよい。最大径Wは、第1主面10aの周縁上の異なる2点間の最長直線距離である。
(TTV:Total Thickness Variation)
TTV=|T1−T2| ・・・(数1)
TTVは、たとえば以下の手順で測定される。まず、平坦な吸着面に炭化珪素単結晶基板10の第2主面10bが全面吸着される。次に、第1主面10a全体の画像が光学的に取得される。
図3および数1に示されるように、TTVとは、平坦な吸着面に第2主面10bを全面吸着させた状態で、第2主面10bから第1主面10aの最高点A1までの高さT1から、第2主面10bから第1主面10aの最低点A2までの高さT2を差し引いた値である。言い換えれば、TTVは、第2主面10bに対して垂直な方向において、第2主面10bと第1主面10aとの最長距離から、第2主面10bと第1主面10aとの最短距離を差し引いた値である。つまり、TTVは、最高点A1を通りかつ第2主面10bと平行な平面L3と、最低点A2を通りかつ第2主面10bと平行な平面L4との距離である。本実施の形態における炭化珪素単結晶基板10のTTVは、5μm以下である。TTVは、好ましくは、3μm以下であり、より好ましくは、1.5μm以下である。
(LTIR:Local Total Indicated Reading)
LTIR=|T3|+|T4| ・・・(数2)
LTIRは、たとえば以下の手順で測定される。まず、平坦な吸着面に炭化珪素単結晶基板10の第2主面10bが全面吸着される。次に、ある局所的な領域(たとえば中央正方領域1および外側正方領域2など)における第1主面10aの画像が光学的に取得される。次に、第1主面10aの最小二乗平面L5が計算により求められる。
図4および数2に示されるように、LTIRは、平坦な吸着面に第2主面10bを全面吸着させた状態で、最小二乗平面L5から第1主面10aの最高点A4までの高さT4と、最小二乗平面L5から第1主面10aの最低点A3までの高さT3とを足した値である。最低点A3とは、最小二乗平面L5に対して第2主面10b側に位置する第1主面10aの領域において、最小二乗平面L5に対して垂直な方向に沿った最小二乗平面L5と第1主面10aとの距離が最大となる位置である。最高点A4とは、最小二乗平面L5に対して第2主面10b側とは反対側に位置する第1主面10aの領域において、最小二乗平面L5に対して垂直な方向に沿った最小二乗平面L5と第1主面10aとの距離が最大となる位置である。つまり、LTIRは、最高点A4を通りかつ最小二乗平面L5と平行な平面L6と、最低点A3を通りかつ最小二乗平面L5と平行な平面L7との距離である。中央正方領域1におけるLTIRは、たとえば1μm以下であり、好ましくは0.5以下である。外側正方領域2におけるLTIRは、たとえば1μm以下であり、好ましくは0.7以下である。
(LTV:Local Thickness Variation)
LTV=|T6−T5| ・・・(数3)
LTVは、たとえば以下の手順で測定される。まず、平坦な吸着面に炭化珪素単結晶基板10の第2主面10bが全面吸着される。次に、ある局所的な領域(たとえば中央正方領域1および外側正方領域2など)における第1主面10aの画像が光学的に取得される。
図5および数3に示されるように、LTVとは、平坦な吸着面に第2主面10bを全面吸着させた状態で、第2主面10bから第1主面10aの最高点A6までの高さT6から、第2主面10bから第1主面10aの最低点A5までの高さT5を差し引いた値である。言い換えれば、LTVは、第2主面10bに対して垂直な方向において、第2主面10bと第1主面10aとの最長距離から、第2主面10bと第1主面10aとの最短距離を差し引いた値である。つまり、LTVは、最高点A6を通りかつ第2主面10bと平行な平面L9と、最低点A5を通りかつ第2主面10bと平行な平面L10との距離である。中央正方領域1におけるLTVは、たとえば1μm以下であり、好ましくは、0.5μm以下である。外側正方領域2におけるLTVは、たとえば1μm以下であり、好ましくは、0.8μm以下である。
【0023】
上記、TTV、LTIRおよびLTVは、炭化珪素単結晶基板10の第1主面10aの平坦度を定量的に示す指標である。上記指標は、たとえばCorning Tropel社製の「Tropel FlatMaster(登録商標)」を用いることにより測定可能である。
【0024】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、中央正方領域1におけるLTIRを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、0.8以上1.2以下である。好ましくは、中央正方領域1におけるLTIRを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、0.9以上1.1以下である。
【0025】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、外側正方領域2におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、1以上3以下である。好ましくは、外側正方領域2におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、1以上2以下である。
【0026】
本実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、外側正方領域2におけるLTIRを外側正方領域2におけるLTVで除した値は、0.8以上1.2以下である。好ましくは、外側正方領域2におけるLTIRを外側正方領域2におけるLTVで除した値は、0.9以上1.1以下である。
【0027】
図6に示されるように、第1主面10aは、第2の外側正方領域3と、第3の外側正方領域4と、第4の外側正方領域5とをさらに有していてもよい。第3の外側正方領域4は、中央正方領域1から見て、外側正方領域2の反対側に位置している。第3の外側正方領域4は、第1主面10aの外縁10c上のある位置C4と交点O1とを繋ぐ直線に対して垂直な直線と平行な辺を有しかつある位置C4から交点O1に向かって10.5mm離れた位置を中心O4とする正方形に囲まれた領域である。
【0028】
第2の外側正方領域3および第4の外側正方領域5は、厚み方向TDから見て、中心O2と中心O4とを通る直線に対して垂直な直線と交差する。第2の外側正方領域3は、第1主面10aの外縁10c上のある位置C3と交点O1とを繋ぐ直線に対して垂直な直線と平行な辺を有しかつある位置C3から交点O1に向かって10.5mm離れた位置を中心O3とする正方形に囲まれた領域である。同様に、第4の外側正方領域5は、第1主面10aの外縁10c上のある位置C5と交点O1とを繋ぐ直線に対して垂直な直線と平行な辺を有しかつある位置C5から交点O1に向かって10.5mm離れた位置を中心O5とする正方形に囲まれた領域である。第2の外側正方領域3、第3の外側正方領域4および第4の外側正方領域5の一辺は15mmである。
【0029】
第2の外側正方領域3におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1以上2以下である。同様に、第3の外側正方領域4におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1以上2以下である。同様に、第4の外側正方領域5におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は、好ましくは1以上3以下であり、より好ましくは1以上2以下である。
【0030】
第2の外側正方領域3におけるLTIRを第2の外側正方領域3におけるLTVで除した値は、好ましくは0.8以上1.2以下であり、より好ましくは0.9以上1.1以下である。第3の外側正方領域4におけるLTIRを第3の外側正方領域4におけるLTVで除した値は、好ましくは0.8以上1.2以下であり、より好ましくは0.9以上1.1以下である。第4の外側正方領域5におけるLTIRを第4の外側正方領域5におけるLTVで除した値は、好ましくは0.8以上1.2以下であり、より好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0031】
図7に示されるように、第1主面10aに傷6が形成されていてもよい。傷6は、第1主面10aを研磨する際に、ダイヤモンド砥粒により第1主面10aの一部が削られることにより形成されたスクラッチであってもよい。
図6に示されるように、厚み方向TDから見て、傷6は、第1主面10aが延在する方向に沿って伸長する線状の傷であってもよい。炭化珪素単結晶基板10の厚み方向TDにおける傷6の深さは、たとえば0.5nm以上である。第1主面10aにおける当該傷の面密度は、たとえば0.085個/cm
2以下である。厚み方向TDにおける傷6の寸法は、第1主面10aに沿った方向における傷6の寸法よりも小さくてもよい。傷6の面密度は、たとえば微分干渉顕微鏡を用いて測定することができる。
【0032】
なお、第1主面10aは、炭化珪素単結晶基板10を用いて炭化珪素半導体装置を製造する際に、エピタキシャル層が形成される面である。第1主面10aと第2主面10bとの中間位置から見て、第1主面10a側に、たとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの炭化珪素半導体装置のゲート酸化膜36(
図12参照)が形成される。炭化珪素半導体装置の詳細は後述する。
【0033】
次に、実施の形態に係る炭化珪素単結晶基板の製造方法について説明する。
たとえば昇華法により製造された炭化珪素単結晶からなるインゴットがワイヤーソーによりスライスされることにより、炭化珪素単結晶基板10が準備される。炭化珪素単結晶基板10は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板10は、第1主面10aと、第1主面10aの反対側の第2主面10bとを有する。第1主面10aは、たとえば{0001}面または{0001}面から4°以下程度オフした面である。たとえば第1主面10aおよび第2主面10bが研削された後、第1主面10aおよび第2主面10bに対して機械研磨およびCMP(Chemical Mechanical Polishing)が行われる。
【0034】
図8および
図9を参照して、研磨装置の構成について説明する。研磨装置30は、たとえばCMP装置である。
図8および
図9に示されるように、研磨装置30は、外側ギア11と、キャリア12と、内側ギア13と、上定盤23と、下定盤24、研磨布21、22と、軸25、26とを主に有している。キャリア12は、内側ギア13と外側ギア11の間に設けられている。キャリア12には、複数のポケット12aが形成されている。研磨布21は、上定盤23に固定されている。上定盤23は、軸25に固定されている。研磨布22は、下定盤24に固定されている。下定盤24は、軸26に固定されている。
【0035】
研磨布21、22として、たとえば不織布が使用可能である。研磨布21、22のAsker−C硬度は、たとえば70以上90以下である。Asker−C硬度は、日本ゴム協会標準規格(SRIS)0101に規定されているAsker−C硬度計により測定される硬度である。研磨布21、22の圧縮率は、たとえば2%以上6%以下である。圧縮率は、「JIS L 1096」に準拠して測定される。上定盤23および下定盤24として、たとえばステンレスなどの金属が使用可能である。研磨布21、22のAsker−C硬度が70以上90以下であり、かつ研磨布21、22の圧縮率が2%以上6%以下であると、研磨布21、22が炭化珪素単結晶基板10の表面(つまり第1主面10aおよび第2主面10b)の形状に沿ってあまり変形しない。そのため、研磨布21、22は、表面の凸部にのみ点接触し、凹部にはほとんど接触しない。結果として、表面の凸部が凹部よりも優先的に研磨されるため、表面が平坦になりやすいと考えられる。
【0036】
図8および
図9に示されるように、複数のポケット12aの各々に、炭化珪素単結晶基板10が配置される。
図10に示されるように、第1主面10aが研磨布21に対面し、かつ第2主面10bが研磨布22に対面する。
図8に示されるように、外側ギア11が回転方向R2に回転し、内側ギア13が回転方向R1に回転する。これにより、キャリア12が自転しながら、内側ギア13の周りを回転方向R3に公転する。キャリア12の移動につれて、炭化珪素単結晶基板10が内側ギア13の周りに回転する。
【0037】
第1主面10aと研磨布21との間および第2主面10bと研磨布22との間に、スラリーが供給される。スラリーは、たとえばダイヤモンド砥粒と溶液とを含む。溶液は、溶媒と分散剤とを含む。溶媒は、たとえばエチレングリコールである。分散剤により、溶液のpHと屈折率とが調整され得る。
【0038】
図11は、ダイヤモンド砥粒の粒径と頻度との関係を示す図である。ダイヤモンド砥粒の数を小さい粒径のものから順番に積算していった場合に、ダイヤモンド砥粒の総数の50%(半分)の数になったときのダイヤモンド砥粒の粒径をD
50とする。同様に、総数の95%の数になったときのダイヤモンド砥粒の粒径をD
95とする。本実施の形態においては、D
50が1μm以下でありかつD
95が1.8μm以下となるようにダイヤモンド砥粒の粒径が調整される。ダイヤモンド砥粒の粒径を小さくすることで、表面に傷6(
図7参照)が形成されることを抑制することができる。
【0039】
スラリーの溶液の屈折率は、たとえば1.36以上1.37以下である。屈折率は、たとえば株式会社アタゴ製のデジタル屈折計(型番:RX−5000α−Plus)により測定することができる。一般的に、屈折率の高い溶液は、密度が高くなり、すべりが悪くなる。本実施の形態では、比較的高い硬度の研磨布21、22が用いられているため、表面に傷が形成されやすい。そのため、すべりの良い(言い換えれば屈折率の低い)溶液を用いることにより、表面に傷が形成されることを抑制することが望ましい。
【0040】
溶液のpH(水素イオン指数)は、たとえば7.0以上8.5以下である。砥粒の質量(グラム)を溶液の体積(リットル)で除することにより求められる砥粒濃度は、たとえば3.60g/L以上4.00g/Lである。本実施の形態では、比較的粒径の小さいダイヤモンド砥粒が用いられているため、研磨レートが低くなる。そのため、砥粒濃度を高くすることにより、研磨レートを高めることが望ましい。
【0041】
図10に示されるように、研磨布21が第1主面10aに押し付けられ、かつ研磨布22が第2主面10bに押し付けられながら、キャリア12が自転しつつ公転することにより、第1主面10aおよび第2主面10bが同時に研磨される。第1主面10aおよび第2主面10bに加えられる荷重は、たとえば300g/cm
2である。上定盤23および研磨布21は、たとえば停止していてもよいし、軸25の周りをたとえば回転方向R4に回転していてもよい。下定盤24および研磨布22は、軸26の周りをたとえば回転方向R5に回転する。上定盤23および下定盤24は、双方とも回転していてもよいし、一方だけ回転して他方は停止していてもよい。たとえば、上定盤23および研磨布21が停止しており、キャリア12が10rpmで回転しておりかつ下定盤24および研磨布22が30rpmで回転している場合、炭化珪素単結晶基板10に対する上定盤23に対する相対回転速度は10rpmであり、炭化珪素単結晶基板10に対する下定盤24の相対回転速度は20rpm(30rpm−10rpm)である。
【0042】
炭化珪素単結晶基板10に対する研磨布21の相対速度(つまり第1主面10aに対する上定盤23の相対速度)は、炭化珪素単結晶基板10に対する研磨布22の相対速度(つまり第2主面10bに対する下定盤24の相対速度)よりも遅い方が望ましい。これにより、第1主面10aに形成される傷6(
図7参照)を低減することができる。また第1主面10aの粗さを低減することができる。炭化珪素単結晶基板10に対する上定盤23の相対速度は、炭化珪素単結晶基板10に対する下定盤24の相対速度のたとえば1/2以下であることが望ましい。
【0043】
次に、実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板の作用効果について説明する。
実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、中央正方領域1におけるLTIRを中央正方領域1におけるLTVで除した値は0.8以上1.2以下である。LTIRはLTVと基準面が異なる。そのため、LTIRは小さいがLTVは大きい場合と、LTIRが大きいがLTVが小さい場合等があり得る。そのため、どちらか一方のパラメータだけでは、平坦性を精度良く判断することは困難である。そこで、LTIRとLTVとの比を計算し、当該比を上述の範囲内に制御することにより、中央正方領域1における平坦性を精度良く制御することができる。また外側正方領域2におけるLTVを中央正方領域1におけるLTVで除した値は1以上3以下である。外側正方領域2における平坦性を、中央正方領域1と同程度に制御することにより、外側正方領域2における平坦性を良好にすることができる。結果として、フォトリソグラフィ工程におけるマスクパターンの位置ずれを抑制することができる。
【0044】
また実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、最大径Wは、150mm以上である。
【0045】
さらに実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、最大径Wは、200mm以上である。
【0046】
さらに実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、第1主面10aには、厚み方向TDにおける深さが0.5μm以上の傷6が形成されている。傷の面密度は、0.085個/cm
2以下である。
【0047】
さらに実施の形態1に係る炭化珪素単結晶基板10によれば、外側正方領域2におけるLTIRを外側正方領域2におけるLTVで除した値は、0.8以上1.2以下である。LTIRはLTVと基準面が異なる。そのため、LTIRは小さいがLTVは大きい場合と、LTIRが大きいがLTVが小さい場合等があり得る。そのため、どちらか一方のパラメータだけでは、平坦性を精度良く判断することは困難である。そこで、LTIRとLTVとの比を計算し、当該比を上述の範囲内に制御することにより、外側正方領域2における平坦性を精度良く制御することができる。
(実施の形態2:炭化珪素半導体装置)
次に、実施の形態2に係る炭化珪素半導体装置100の一例としてのMOSFETの構成について説明する。
【0048】
図12に示されるように、実施の形態2に係るMOSFET100は、炭化珪素基板70と、ゲート酸化膜36と、ゲート電極40と、層間絶縁膜60と、ソース電極41と、表面保護電極42と、ドレイン電極45と、裏面保護電極47とを主に有している。炭化珪素基板70は、たとえば炭化珪素単結晶基板10と、炭化珪素エピタキシャル層35とを有している。炭化珪素単結晶基板10の構成は、実施の形態1で説明した通りである。
【0049】
炭化珪素基板70は、第3主面70aと、第3主面70aとは反対側の第2主面10bとを有している。第3主面70aは、{0001}面または{0001}面から4°以下程度オフした面である。好ましくは、第3主面70aは、(0001)面または(0001)面から4°以下程度オフした面であり、かつ第2主面10bは(000−1)面または(000−1)面から4°以下程度オフした面である。炭化珪素単結晶基板10は第2主面10bを構成し、かつ炭化珪素エピタキシャル層35は第3主面70aを構成している。
【0050】
炭化珪素エピタキシャル層35は、炭化珪素単結晶基板10上に設けられている。炭化珪素エピタキシャル層35は、たとえばドリフト領域31と、ボディ領域32と、ソース領域33と、コンタクト領域34とを有している。ドリフト領域31は、たとえばN(窒素)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ドリフト領域31が含むn型不純物の濃度は、炭化珪素単結晶基板10が含むn型不純物の濃度よりも低くてもよい。ボディ領域32は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型不純物を含んでおり、p型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域32が含むp型不純物の濃度は、ドリフト領域31が含むn型不純物の濃度よりも高くてもよい。
【0051】
ソース領域33は、たとえばP(リン)などの不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域33は、ボディ領域32によってドリフト領域31から隔てられている。ソース領域33は、第3主面70aの一部を形成する。第3主面70aに対して垂直な方向から見て、ソース領域33はボディ領域32に取り囲まれていてもよい。ソース領域33が含むn型不純物の濃度は、ドリフト領域31が含むn型不純物の濃度よりも高くてもよい。
【0052】
コンタクト領域34は、たとえばAl(アルミニウム)またはB(ホウ素)などのp型不純物を含んでおり、p型(第2導電型)の導電型を有する。コンタクト領域34は、ソース領域33を貫通し、第3主面70aおよびボディ領域32の双方に接するように設けられている。コンタクト領域34が含むp型不純物の濃度は、ボディ領域32が含むp型不純物の濃度よりも高くてもよい。
【0053】
ゲート酸化膜36は、炭化珪素基板70上に設けられている。ゲート酸化膜36は、第3主面70aにおいて、ソース領域33、ボディ領域32およびドリフト領域31の各々に接している。ゲート酸化膜36は、たとえば二酸化珪素により構成されている。
【0054】
ゲート電極40は、ゲート酸化膜36上に設けられている。ゲート電極40は、ソース領域33、ボディ領域32およびドリフト領域31の各々に対面している。ゲート電極40は、不純物が導入されたポリシリコンまたはAlなどの導電体から構成されている。
【0055】
ソース電極41は、第3主面70aにおいて、ソース領域33およびコンタクト領域34に接して設けられていてもよい。ソース電極41は、ゲート酸化膜36に接していてもよい。ソース電極41は、たとえばTi、AlおよびSiを含む材料により構成されている。ソース電極41は、たとえばソース領域33とオーミック接合している。好ましくは、ソース電極41は、コンタクト領域34とオーミック接合している。
【0056】
層間絶縁膜60は、ゲート電極40を覆っている。層間絶縁膜60は、ゲート電極40およびゲート酸化膜36と接している。層間絶縁膜60は、ゲート電極40とソース電極41とを電気的に絶縁している。表面保護電極42は、層間絶縁膜60を覆っている。表面保護電極42は、たとえばAlを含む材料から構成されている。表面保護電極42は、ソース電極41と電気的に接続されている。
【0057】
ドレイン電極45は、第2主面10bに接して設けられている。ドレイン電極45は、たとえばNiSiを含む材料からなる。ドレイン電極45は、たとえば炭化珪素単結晶基板10とオーミック接合している。裏面保護電極47は、ドレイン電極45に接している。裏面保護電極47は、たとえばAlを含む材料により構成されている。裏面保護電極47は、ドレイン電極45と電気的に接続されている。
【0058】
次に、炭化珪素半導体装置100の一例としてのMOSFETの製造方法について説明する。MOSFETの製造方法は、炭化珪素単結晶基板を準備する工程(S10:
図13)と、炭化珪素単結晶基板を加工する工程(S20:
図13)とを主に含んでいる。炭化珪素単結晶基板を準備する工程(S10:
図13)においては、実施の形態1で説明した炭化珪素単結晶基板10が準備される。
【0059】
次に、炭化珪素単結晶基板を加工する工程(S20:
図13)が実施される。たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素エピタキシャル層35が炭化珪素単結晶基板10の第1主面10a上にエピタキシャル成長する(
図14参照)。エピタキシャル成長においては、原料ガスとしてたとえばシラン(SiH
4)およびプロパン(C
3H
8)が用いられ、キャリアガスとして水素(H
2)が用いられる。エピタキシャル成長中における炭化珪素単結晶基板10の温度は、たとえば1400℃以上1700℃以下程度である。炭化珪素単結晶基板10および炭化珪素エピタキシャル層35は、炭化珪素基板70を構成する。
【0060】
次に、イオン注入工程が実施される。たとえばAl(アルミニウム)イオンが、炭化珪素基板70の第3主面70aに対して注入されることにより、炭化珪素エピタキシャル層35内に導電型がp型のボディ領域32が形成される。次に、たとえばP(リン)イオンが、上記Alイオンの注入深さよりも浅い深さでボディ領域32内に注入されることにより、導電型がn型のソース領域33が形成される。次に、たとえばAlイオンが、ソース領域33に対してさらに注入されることにより、ソース領域33を貫通してボディ領域32に達し、かつ導電型がp型のコンタクト領域34が形成される。炭化珪素エピタキシャル層35において、ボディ領域32、ソース領域33およびコンタクト領域34のいずれも形成されない領域は、ドリフト領域31となる(
図15参照)。
【0061】
次に、活性化アニール工程が実施される。炭化珪素基板70が、たとえば1700℃の温度下で30分間程度加熱されることにより、イオン注入工程にて導入された不純物イオンが活性化される。これにより、不純物イオンが導入された領域において所望のキャリアが生成する。
【0062】
次に、ゲート酸化膜形成工程が実施される。たとえば酸素を含む雰囲気中において炭化珪素基板70が加熱されることにより、炭化珪素基板70の第3主面70a上に二酸化珪素を含むゲート酸化膜36が形成される。炭化珪素基板70は、たとえば1300℃程度の温度下において60分程度加熱される。ゲート酸化膜36は、第3主面70aにおいて、ドリフト領域31、ボディ領域32、ソース領域33およびコンタクト領域34の各々と接するように形成される。
【0063】
次に、ゲート電極形成工程が実施される。たとえばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、ゲート酸化膜36上に不純物を含むポリシリコンからなるゲート電極40が形成される。ゲート電極40は、ゲート酸化膜36は、ソース領域33、ボディ領域32およびドリフト領域31の各々と対面する位置に形成される(
図16参照)。
【0064】
次に、層間絶縁膜形成工程が実施される。たとえばプラズマCVD法により、ゲート電極40を覆い、かつゲート酸化膜36に接する層間絶縁膜60が形成される。層間絶縁膜60は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成される。次に、ソース電極形成工程が実施される。たとえばエッチングにより、ソース電極41を形成される領域における層間絶縁膜60およびゲート酸化膜36が除去される。これにより、ゲート酸化膜36が、ソース領域33およびコンタクト領域34が露出した領域が形成される。次に、たとえばスパッタリングにより、ソース領域33およびコンタクト領域34が露出した領域上に、たとえばTiAlSi(チタンアルミニウムシリコン)を含む金属層が形成される(
図17参照)。次に、上記金属層がたとえば1000℃程度に加熱されることにより、上記金属層の少なくとも一部がシリサイド化し、ソース領域33とオーミック接合するソース電極41が形成される。
【0065】
次に、表面保護電極形成工程が実施される。たとえばスパッタリング法により、ソース電極41に接し、かつ層間絶縁膜60を覆うように表面保護電極42が形成される。表面保護電極42は、たとえばアルミニウムを含む材料から構成されている。以上により、ソース電極41と、表面保護電極42とを含み、かつ炭化珪素基板70の第3主面70aに接する表面電極50が形成される。次に、第2主面10bに接するドレイン電極45が形成される。ドレイン電極45は、たとえばNiSiを含む。次に、ドレイン電極45に接して裏面保護電極47が形成される。裏面保護電極47は、たとえばアルミニウムを含む材料から構成されている。次に、炭化珪素基板70がダイシングされることにより、複数の半導体チップが形成される。
【0066】
なお炭化珪素単結晶基板10を加工する工程は、上述した工程に限定されない。炭化珪素単結晶基板10を加工する工程は、たとえば、炭化珪素単結晶基板10上に半導体層を形成する工程、炭化珪素単結晶基板10を切断する工程、炭化珪素単結晶基板10に電気的に接続される電極を形成する工程などであってもよい。
【0067】
また上記実施形態においては、第1導電型をn型とし、かつ第2導電型をp型として説明したが、第1導電型をp型とし、かつ第2導電型をn型としてもよい。上記実施形態においては、炭化珪素半導体装置がMOSFETである場合について説明したが、炭化珪素半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、SBD(Schottky Barrier Diode)、LED(Light Emitting Diode)またはJFET(Junction Field Effect Transistor)などであってもよい。
【実施例】
【0068】
グループ1〜5に係る研磨条件を用いて炭化珪素単結晶基板10が研磨される。具体的には、
図10に記載された研磨装置30が用いられ炭化珪素単結晶基板10が研磨される。上定盤23は固定され、下定盤24が回転する。表1に示されるように、グループ1、2、3、4および5に係る下定盤24の回転数(rpm)は、それぞれ30、40、20、20および20である。グループ1、2、3、4および5に係る定盤の相対速度比(上定盤:下定盤)は、それぞれ1:2、1:3、1:1、2:1および1:2である。
【0069】
グループ1、2、3、4および5に係る潤滑剤(スラリーの溶液)の屈折率は、それぞれ1.365、1.36、1.245、1.245および1.245である。グループ1、2、3、4および5に係る潤滑剤のpHは、それぞれ7.6、7.1、7.6、7.1および7.1である。グループ1、2、3、4および5に係る研磨布のアスカ―C硬度は、それぞれ82、82、82、52および60である。グループ1、2、3、4および5に係る上定盤および下定盤の荷重(g/cm2)は、それぞれ、300、300、200、300および200である。上記の研磨条件を用いて、炭化珪素単結晶基板10の第1主面10aおよび第2主面10bが研磨される。各グループにつき3枚の炭化珪素単結晶基板10が作製される。たとえば、サンプル1−1、サンプル1−2およびサンプル1−3は、グループ1の研磨条件により作製された炭化珪素単結晶基板10であり、サンプル2−1、サンプル2−2およびサンプル2−3は、グループ2の研磨条件により作製された炭化珪素単結晶基板10である。グループ3〜5についても同様である。全ての炭化珪素単結晶基板10の第1主面10aの最大径W(
図1参照)は、100mmである。
【0070】
【表1】
【0071】
次に、各グループの研磨方法で研磨された炭化珪素単結晶基板10のTTV、LTVおよびLTIRが測定される。TTV、LTVおよびLTIRは、Corning Tropel社製の「Tropel FlatMaster(登録商標)」により測定される。TTV、LTVおよびLTIRの定義は、実施の形態で説明した通りである。第2主面10bの全面が真空チャックに吸着されて平面になった状態で、第1主面10aが光学的に観測され、TTV、LTVおよびLTIRが測定される。LTVおよびLTIRは、それぞれ第1主面10aの中央正方領域1および外側正方領域2において測定される。中央正方領域1および外側正方領域2の定義は、実施の形態で説明した通りである。
【0072】
表2および表3は、TTV、中央正方領域1におけるLTV(表2および表3ではLTV(中央)と記載されている)、外側正方領域2におけるLTV(表2および表3ではLTV(外側)と記載されている)、中央正方領域1におけるLTIR(表2および表3ではLTIR(中央)と記載されている)および外側正方領域2におけるLTIR(表2および表3ではLTIR(外側)と記載されている)の測定結果を示している。LTV(外側)/LTV(中央)は、LTV(外側)をLTV(中央)で除することにより算出される。LTIR(中央)/LTV(中央)は、LTIR(中央)をLTV(中央)で除することにより算出される。LTIR(外側)/LTV(外側)は、LTIR(外側)をLTV(外側)で除することにより算出される。
【0073】
【表2】
【0074】
表2は、グループ1および2の研磨条件により作製されたサンプルのTTV、LTV(外側)/LTV(中央)、LTIR(中央)/LTV(中央)およびLTIR(外側)/LTV(外側)を示している。表2に示されるように、サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のTTVは、1.15以上1.30以下である。つまり、サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のTTVは、5以下である。サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTV(外側)/LTV(中央)は、1.13以上2.33以下である。つまり、サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTV(外側)/LTV(中央)は、1以上3以下である。サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(中央)/LTV(中央)は、0.80以上0.87以下である。つまり、サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(中央)/LTV(中央)は、0.8以上1.2以下である。サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(外側)/LTV(外側)は、0.80以上0.87以下である。つまり、サンプル1−1〜サンプル2−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(外側)/LTV(外側)は、0.8以上1.2以下である。
【0075】
【表3】
【0076】
表3は、グループ3、4および5の研磨条件により作製されたサンプルのTTV、LTV(外側)/LTV(中央)、LTIR(中央)/LTV(中央)およびLTIR(外側)/LTV(外側)を示している。表3に示されるように、サンプル3−1〜サンプル5−3に係る炭化珪素単結晶基板10のTTVは、1.57以上4.33以下である。つまり、グループ3、4および5に係る研磨条件で作製された炭化珪素単結晶基板10のTTVは、グループ1および2に係る研磨条件で作製された炭化珪素単結晶基板10のTTVよりも大きい。
【0077】
サンプル3−2に係る炭化珪素単結晶基板10のLTV(外側)/LTV(中央)は、1未満である。サンプル3−1およびサンプル4−1に係る炭化珪素単結晶基板10のLTV(外側)/LTV(中央)は、3より大きい。サンプル3−1、サンプル3−2、サンプル3−3、サンプル4−2、サンプル4−3、サンプル5−1、サンプル5−2およびサンプル5−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(中央)/LTV(中央)は、0.8未満である。サンプル4−1に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(中央)/LTV(中央)は、1.2より大きい。サンプル3−1、サンプル3−2、サンプル3−3、サンプル4−1、サンプル4−2、サンプル4−3、サンプル5−2およびサンプル5−3に係る炭化珪素単結晶基板10のLTIR(外側)/LTV(外側)は、0.8未満である。
【0078】
以上の結果より、グループ1および2の研磨条件を用いることにより、LTIR(中央)/LTV(中央)が0.8以上1.2以下でありかつLTV(外側)/LTV(中央)が1以上3以下である炭化珪素単結晶基板10が製造可能である。
【0079】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。