特許第6593274号(P6593274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593274
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】多層基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/16 20060101AFI20191010BHJP
   H05K 3/20 20060101ALI20191010BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20191010BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   H05K1/16 E
   H05K3/20 Z
   H05K3/46 Q
   H01F27/28 104
   H01F27/28 176
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-153085(P2016-153085)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-22778(P2018-22778A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2018年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】モイセエフ セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】川辺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 佳孝
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/027792(WO,A1)
【文献】 特開2005−102485(JP,A)
【文献】 特開2004−335933(JP,A)
【文献】 特開2008−85314(JP,A)
【文献】 特開2008−300734(JP,A)
【文献】 特開2011−146459(JP,A)
【文献】 特開2011−228321(JP,A)
【文献】 特開2011−228464(JP,A)
【文献】 特開2012−114164(JP,A)
【文献】 特開2013−149821(JP,A)
【文献】 特開2014−93508(JP,A)
【文献】 特開2015−88689(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/145490(WO,A1)
【文献】 米国特許第3264152(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F17/00−19/00,27/00,27/28,27/32,30/06−30/16,41/04−41/12
H02M3/00−3/44
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイルを形成する第1の金属板と、
前記第1の金属板にコイルの巻回軸方向に対向し、第2のコイルを形成する第2の金属板と、
前記第1の金属板を内蔵する第1の絶縁層と、
前記第2の金属板を内蔵する第2の絶縁層と、
を備え、
前記第1の金属板には複数のビアホールを介して金属箔が接続され、
前記金属箔に形成されたパターンには前記第1の絶縁層に内蔵された電子部品が実装されていることを特徴とする多層基板。
【請求項2】
前記第1の絶縁層は、前記第2の絶縁層よりも放熱部材側に配置され、
前記金属箔は、前記第1の金属板および前記第2の金属板よりも放熱部材側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記第2の絶縁層に受動部品が内蔵されていることを特徴とする請求項2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記第1の絶縁層に内蔵された前記電子部品はパワー素子であることを特徴とする請求項2または3に記載の多層基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の多層プリント基板においては、4以上の偶数層から成り、厚みの薄い薄導体が形成された、外部に露出する少なくとも1つの外層と、厚みの厚い厚導体が形成された、外部に露出しない少なくとも1つの内層と、を備え、内層に形成された厚導体により、コイルパターンが形成され、外層に形成された薄導体に、電子部品が表面実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−88689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第1のコイルを内蔵する絶縁層と第2のコイルを内蔵する絶縁層とを積層した場合においては、コイルと電子部品を積層して配置すると積層方向の大型化を招いてしまう。また、投影面積の小型化を図りたいという要求がある。
【0005】
本発明の目的は、投影面積の小型化を図るとともに積層方向の大型化を抑制することができる多層基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、第1のコイルを形成する第1の金属板と、前記第1の金属板にコイルの巻回軸方向に対向し、第2のコイルを形成する第2の金属板と、前記第1の金属板を内蔵する第1の絶縁層と、前記第2の金属板を内蔵する第2の絶縁層と、を備え、前記第1の金属板には複数のビアホールを介して金属箔が接続され、前記金属箔に形成されたパターンには前記第1の絶縁層に内蔵された電子部品が実装されていることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、金属箔をパターニングして電子部品を実装するため、第1の金属板をパターンニングして実装する場合に比べて、パターンを微細化できて投影面積を小型化可能となる。また、電子部品と第1の金属板とを第1の絶縁層に内蔵するため、電子部品と第1の金属板とを別々の絶縁層に内蔵してそれらを積層するよりも、積層方向の大型化を抑制可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の多層基板において、前記第1の絶縁層は、前記第2の絶縁層よりも放熱部材側に配置され、前記金属箔は、前記第1の金属板および前記第2の金属板よりも放熱部材側に配置されることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、金属箔における電子部品の熱の放熱性能は第1の金属板での放熱性能に比べて劣るが、放熱部材側に金属箔を配置するためその分放熱性が向上し、放熱性が低下することを抑制可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の多層基板において、前記第2の絶縁層に受動部品が内蔵されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、放熱の必要性が低い受動部品を第2の絶縁層に内蔵可能となる。
【0011】
請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の多層基板において、前記第1の絶縁層に内蔵された前記電子部品はパワー素子であることを要旨とする。
請求項4に記載の発明によれば、放熱の必要性が高いパワー素子の放熱性に優れている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、投影面積の小型化を図るとともに積層方向の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における絶縁型DC−DCコンバータの回路図。
図2】(a)は多層基板、磁性コア、放熱部材の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図。
図3図2(a)のB−B線での縦断面図。
図4】(a)は多層基板における第2の絶縁層(第2の金属板)の配置部分の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図。
図5】(a)は多層基板における第1の絶縁層(第1の金属板)の配置部分の平面図、(b)は(a)のA−A線での縦断面図。
図6】多層基板における第1の絶縁層(第1の金属板)の配置部分の下面図(図5(b)のC矢視図)。
図7】別例の多層基板の下面図。
図8】別例の多層基板の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、絶縁型DC−DCコンバータに具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電力変換装置としての絶縁型DC−DCコンバータ10は、フォワード形DC−DCコンバータであって、トランス11を備えている。トランス11は1次側コイル(巻線)11aと2次側コイル(巻線)11bを備えている。絶縁型DC−DCコンバータ10は自動車用であり、車両に搭載される。絶縁型DC−DCコンバータ10は、トランス11の1次側の入力電圧を降圧してトランス11の2次側に出力する。
【0015】
1次側コイル11aの一方の端子は入力端子と接続され、入力端子はバッテリ12の正極端子と接続される。1次側コイル11aの他方の端子は1次側スイッチング素子14を介して接地されている。1次側スイッチング素子14としてパワーMOSFETが用いられている。
【0016】
入力端子とトランス11の1次側コイル11aとの間には平滑コンデンサ13の正極が接続され、平滑コンデンサ13の負極は接地されている。平滑コンデンサ13には電解コンデンサが使用される。平滑コンデンサ13によりトランス11の1次側電圧が平滑される。
【0017】
トランス11の2次側コイル11bにはダイオード16,17よりなる整流回路が接続されている。ダイオード16は、トランス11の2次側のグランドにアノードが接続され、トランス11の2次側コイル11bの一方端にカソードが接続される。ダイオード17は、ダイオード16のアノードにアノードが接続され、トランス11の2次側コイル11bの他方端にカソードが接続される。
【0018】
さらに、コンデンサ19がダイオード17に並列接続されている。コイル18が、トランス11の2次側コイル11bとコンデンサ19との間に設けられている。コイル18とコンデンサ19とでフィルタ回路を構成している。
【0019】
1次側スイッチング素子14のゲート端子に制御IC15が接続されている。制御IC15から1次側スイッチング素子14のゲート端子にパルス信号が出力され、このパルス信号により1次側スイッチング素子14がスイッチングされる。1次側スイッチング素子14がオンしているときに1次側の電源からエネルギーを2次側へ供給する。1次側スイッチング素子14がオフしているときにコイル18に溜め込んだエネルギーを出力へ放出する。詳しくは、直流電圧が平滑コンデンサ13を通してトランス11の1次側コイル11aに供給され、制御IC15により、1次側スイッチング素子14がオン/オフ制御され、このオン/オフ動作における、1次側スイッチング素子14のオン期間において1次側コイル11aに1次電流が流れ、トランス11の起電力で2次電流が流れる。1次側スイッチング素子14がオフしているときにコイル18の電流がコイル18の逆起電力でダイオードD17経由で出力に流れる。
【0020】
制御IC15には検出回路20が接続され、検出回路20により出力電圧Voutが検出される。検出回路20による出力電圧Voutの測定結果が制御IC15に送られる。制御IC15は検出回路20による出力電圧Voutの測定結果をフィードバック信号として出力電圧Voutが所望の一定値となるように1次側スイッチング素子14のデューティを制御する。
【0021】
絶縁型DC−DCコンバータ10の駆動に伴いトランス11、1次側スイッチング素子14等が発熱する。
以下、トランス11および1次側スイッチング素子14の具体的構造について説明する。トランス11および1次側スイッチング素子14は多層基板を用いて構成されている。多層基板は、導電層(配線パターン)と絶縁層(樹脂層)とを交互に積層して構成されている。
【0022】
図2(a)に、多層基板30、磁性コア63、放熱部材70の平面を、図2(b)に、図2(a)のA−A線での縦断面を、図3に、図2(a)のB−B線での縦断面を示す。
図2(a),(b)に示すように、多層基板30は、第1の金属板31と、第2の金属板32と、第1の絶縁層33と、第2の絶縁層34と、第1の金属箔35と、第2の金属箔36と、第3の金属箔37と、第4の金属箔38と、第3の絶縁層39と、電子部品50と、電子部品55を備える。第1の金属板31は銅板であり、第2の金属板32は銅板である。第1の金属箔35は銅箔であり、第2の金属箔36は銅箔であり、第3の金属箔37は銅箔であり、第4の金属箔38は銅箔である。第1の金属箔35により第1の導電層L1が形成され、第2の金属箔36により第2の導電層L2が形成され、第3の金属箔37により第3の導電層L3が形成され、第4の金属箔38により第4の導電層L4が形成される。
【0023】
第1の金属板31及び第2の金属板32の厚さは、例えば500μm程度である。第1の金属板31及び第2の金属板32は打ち抜きによりパターニングされ、大電流が流せる。一方、第1の金属箔35、第2の金属箔36、第3の金属箔37及び第4の金属箔38の厚さは、第1の金属板31及び第2の金属板32の厚さよりも薄く、例えば100μm以下である。第1の金属箔35、第2の金属箔36、第3の金属箔37及び第4の金属箔38はエッチングでパターニングされ、大電流を流すパターンでは幅広となり、制御電流を流すパターンでは幅狭となっている。
【0024】
第2の絶縁層34の一方の面である上面には第1の金属箔35が配置されているとともに第2の絶縁層34の他方の面である下面には第2の金属箔36が配置されている。同様に、第1の絶縁層33の一方の面である上面には第3の金属箔37が配置されているとともに第1の絶縁層33の他方の面である下面には第4の金属箔38が配置されている。
【0025】
第1の金属箔35が所望の配線形状にパターニングされ、図4(a)に示すように、パターン35a,35b,35cが形成されている。第2の金属箔36が所望の配線形状にパターニングされ、図4(a)に示すように、パターン36aが形成されている。第3の金属箔37が所望の配線形状にパターニングされ、図5(a)に示すように、パターン37a,37bが形成されている。第4の金属箔38が所望の配線形状にパターニングされ、図6に示すように、パターン38a,38bが形成されている。
【0026】
図2(b)に示すように、第1の絶縁層33の上に第2の絶縁層34が薄い第3の絶縁層39を介して積層されている。つまり、第3の金属箔37の上に薄い第3の絶縁層39を介して第2の金属箔36が配置されている。
【0027】
図5(a),(b)に示すように、第1の絶縁層33において第1の金属板31が内蔵されている。図4(a),(b)に示すように、第2の絶縁層34において第2の金属板32が内蔵されている。
【0028】
第1の金属板31が所望のコイル形状にパターニングされ、図5(a)及び図6に示すように、1次側コイル(巻線)としての第1のコイル31aが形成されている。第2の金属板32が所望のコイル形状にパターニングされ、図4(a)に示すように、2次側コイル(巻線)としての第2のコイル32aが形成されている。
【0029】
図5(a)及び図5(b)に示すように、第1のコイル31aは渦巻き状をなし、ターン数が「2」である。図4(a)及び図4(b)に示すように、第2のコイル32aはCの字状をなし、ターン数が「1」である。第1の金属板31による第1のコイル31aと第2の金属板32による第2のコイル32aとは、上下方向において重なるように配置されている。つまり、第1の金属板31による第1のコイル31aと、第2の金属板32による第2のコイル32aとは、上下方向、即ち、コイルの巻回軸方向に対向している。
【0030】
このように、多層基板30は、1次側コイル(巻線)としての第1のコイル31aを形成する第1の金属板31と、第1の金属板31にコイルの巻回軸方向に対向し、2次側コイル(巻線)としての第2のコイル32aを形成する第2の金属板32と、第1の金属板31を内蔵する第1の絶縁層33と、第2の金属板32を内蔵する第2の絶縁層34と、を備える。
【0031】
図6に示すように、第1の金属板31による第1のコイル31aの内周側端部は複数のビアホール40を介して第4の金属箔38によるパターン38aが接続されており、より詳しくは、第1のコイル31aの内周側端部とパターン38aとが複数のビアホール40の導体により相互に電気的に導通している。図5(a)に示すように、第1のコイル31aの外周側端部は複数のビアホール41を介して第3の金属箔37によるパターン37aが接続されており、より詳しくは、第1のコイル31aの外周側端部とパターン37aとが複数のビアホール41の導体により相互に電気的に導通している。
【0032】
図4(a)に示すように、第2の金属板32による第2のコイル32aの一端部は複数のビアホール42を介して第2の金属箔36によるパターン36aが接続されており、より詳しくは、第2のコイル32aの一端部とパターン36aとが複数のビアホール42の導体により相互に電気的に導通している。同じく図4(a)に示すように、第2のコイル32aの他端部は複数のビアホール43を介して第1の金属箔35によるパターン35aが接続されており、より詳しくは、第2のコイル32aの他端部とパターン35aとが複数のビアホール43の導体により相互に電気的に導通している。
【0033】
図5(a),(b)に示すように、第1の絶縁層33には電子部品50が内蔵されている。電子部品50は、例えば図1の1次側スイッチング素子14、即ち、パワー素子(能動部品)である。なお、第1の絶縁層33に内蔵された電子部品50は1次側スイッチング素子14以外のパワー素子、例えば、図1のダイオード16,17等であってもよい。電子部品50は複数のビアホール51を介して第4の金属箔38によるパターン38bが接続されており、より詳しくは、電子部品50の電極(例えばドレイン電極)とパターン38bとが複数のビアホール51の導体により相互に電気的に導通している。電子部品50は複数のビアホール52を介して第3の金属箔37によるパターン37bが接続されており、より詳しくは、電子部品50の電極(例えばソース電極)とパターン37bとが複数のビアホール52の導体により相互に電気的に導通している。このように、第4の金属箔38に形成されたパターン38bには第1の絶縁層33に内蔵された電子部品50が実装されている。
【0034】
図4(a),(b)に示すように、第2の絶縁層34には電子部品55が内蔵されている。電子部品55は、例えば図1のコンデンサ19、即ち、受動部品である。電子部品55は複数のビアホール56を介して第1の金属箔35によるパターン35bが接続されており、より詳しくは、電子部品55の電極(例えば正極電極)とパターン35bとが複数のビアホール56の導体により相互に電気的に導通している。また、電子部品55は複数のビアホール57を介して第1の金属箔35によるパターン35cが接続されており、より詳しくは、電子部品55の電極(例えば負極電極)とパターン35cとが複数のビアホール57の導体により相互に電気的に導通している。
【0035】
図2(a)、図2(b)、図3に示すように、多層基板30にはコア用貫通孔60,61,62が形成されている。多層基板30にはEI型磁性コア63が組み付けられる。EI型磁性コア63はE型磁性コア64とI型磁性コア65よりなる。詳しくは、多層基板30におけるコイルの中心部(巻線の中心)には円形の貫通孔60が形成されている。多層基板30におけるコイルの外径側(巻線パターンの外周端)には貫通孔61及び貫通孔62が形成されている。多層基板30における一方の面からE型磁性コア64が、貫通孔60に中央脚部64aが通るとともに貫通孔61及び貫通孔62に両側脚部64b,64cが通るように配置される。多層基板30における他方の面にI型磁性コア65が、E型磁性コア64の中央脚部64aの先端面および両側脚部64b,64cの先端面が突き当たるように配置される。
【0036】
EI型磁性コア63が組み付けられた多層基板30は、放熱部材(ヒートシンク)70の上に配置される。放熱部材70は平板状をなしている。放熱部材70の上面に、EI型磁性コア63が組み付けられた多層基板30が熱的に接合する状態で配置される。
【0037】
多層基板30における第1の絶縁層33は、第2の絶縁層34よりも放熱部材70側に配置されている。また、多層基板30における第4の金属箔38は、第1の金属板31および第2の金属板32よりも放熱部材70側に配置されている。
【0038】
次に、作用について説明する。
図2(a),(b)、図3に示すように、1次側コイルとしての第1のコイル31aが形成された第1の金属板31と、2次側コイルとしての第2のコイル32aが形成された第2の金属板32とが多層基板30に埋め込まれ、内蔵化されている。よって、第1の金属板31(第1のコイル31a)と第2の金属板32(第2のコイル32a)との間のスペースが小さくなる。
【0039】
具体的には、導電層L1と導電層L2との間に、第2の金属板32(第2のコイル32a)が内蔵されている。また、導電層L3と導電層L4との間に第1の金属板31(第1のコイル31a)が内蔵されている。第1の金属板31(第1のコイル31a)と第2の金属板32(第2のコイル32a)とが絶縁層39で絶縁されている。また、導電層L1,L2,L3,L4とそれぞれの金属板31,32(コイル31a,32a)との間で接続が行われている。
【0040】
このようにすることにより、交流抵抗の低減が図られる。また、回路との接続性に優れている。
つまり、基板の一方の面に1次側コイルを配置するとともに基板の他方の面に2次側コイルを配置したものに磁性コアを組み付けた構成とすると、1次側コイルと2次側コイルの間に基板の厚み分のスペースが発生し、漏れインダクタンスが増加したり、コイルの損失が増加したり、磁性コアの高さ、体格が増加する懸念がある。
【0041】
これに対し本実施形態では、多層基板に1次側コイルと2次側コイルを積層した状態で内蔵することにより、1次側コイルと2次側コイルとの間の距離を短くでき、トランスの損失が低減できるとともにトランスの小型化が図られる。
【0042】
また、多層基板30は放熱部材(ヒートシンク)70の上に配置されており、絶縁型DC−DCコンバータ10の駆動に伴いトランス11、1次側スイッチング素子14等が発熱すると、その熱は放熱部材70から逃がされる。
【0043】
つまり、第1の金属板31による第1のコイル31aに発生した熱は放熱部材70に伝播して放熱部材70において大気中に逃がされる。また、第2の金属板32による第2のコイル32aに発生した熱は放熱部材70に伝播して放熱部材70において大気中に逃がされる。ここで、第1のコイル31aと第2のコイル32aとの間の距離を短くでき、放熱性が向上してトランスの温度上昇が低減される。同様に、電子部品50,55に発生した熱は放熱部材70に伝播して放熱部材70において大気中に逃がされる。ここで、電子部品50は放熱部材70に対し近くに配置され、放熱性に優れている。
【0044】
また、金属箔38のパターン38bに電子部品50が接続されており、パターン38bの微細化に伴い投影面積の小型化が図られる。
さらに、第1の絶縁層33において、第1のコイル31aが形成された第1の金属板31と、電子部品50と、が内蔵されている。また、第2の絶縁層34において、第2のコイル32aが形成された第2の金属板32と、電子部品55と、が内蔵されている。同一の絶縁層に金属板と電子部品を内蔵することにより積層方向における大型化が防止される。
【0045】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)多層基板30の構成として、第1のコイルを形成する第1の金属板31と、第1の金属板31にコイルの巻回軸方向に対向し、第2のコイルを形成する第2の金属板32と、第1の金属板31を内蔵する第1の絶縁層33と、第2の金属板32を内蔵する第2の絶縁層34と、を備え、第1の金属板31には複数のビアホール40を介して金属箔38が接続され、金属箔38に形成されたパターン38bには第1の絶縁層33に内蔵された電子部品50が実装されている。
【0046】
よって、金属箔38をパターニングして電子部品50を実装するため、第1の金属板31をパターンニングして実装する場合に比べて、パターンを微細化できて投影面積を小型化可能となる。また、電子部品50と第1の金属板31とを第1の絶縁層33に内蔵するため、電子部品50と第1の金属板31とを別々の絶縁層に内蔵してそれらを積層するよりも、積層方向の大型化を抑制可能となる。その結果、投影面積の小型化を図るとともに積層方向の大型化を抑制することができる。
【0047】
(2)第1の絶縁層33は、第2の絶縁層34よりも放熱部材70側に配置され、金属箔38は、第1の金属板31および第2の金属板32よりも放熱部材70側に配置される。よって、金属箔38における電子部品50の熱の放熱性能は第1の金属板31での放熱性能に比べて劣るが、放熱部材70側に金属箔38を配置するためその分放熱性が向上し、放熱性が低下することを抑制可能となる。
【0048】
(3)第2の絶縁層34に受動部品である電子部品55が内蔵されている。よって、放熱の必要性が低い受動部品(55)を第2の絶縁層34に内蔵可能となる。
(4)第1の絶縁層33に内蔵された電子部品50はパワー素子である。よって、放熱の必要性が高いパワー素子の放熱性に優れている。
【0049】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
図6に代わり図7に示す構成としてもよい。図7において、第4の金属箔38によるパターン90として、第1の金属板31による第1のコイル31aとの接続部(ビアホール40の配置部)から、渦巻き状の第1のコイル31aの配置領域に沿うように延長されている。即ち、Cの字状に延設されている。これにより第1のコイル31aの通電に伴い第1のコイル31aが発熱したときの熱が、延長された金属箔のパターン90を介して放熱部材70に容易に逃がすことができる。これによって放熱性の向上が図られる。
【0050】
・多層基板は導電層(配線パターン)と絶縁層(樹脂層)とを交互に積層して構成されるが、その層数は問わない。例えば、図8に示す、6つの金属箔121,122,123,124,125,126による導電層L1〜L6を有する多層基板としてもよい。図8において、第1の金属板111と、第2の金属板112と、第3の金属板113と、第1の絶縁層100と、第2の絶縁層101と、第3の絶縁層102と、第1の金属箔121と、第2の金属箔122と、第3の金属箔123と、第4の金属箔124と、第5の金属箔125と、第6の金属箔126と、第4の絶縁層103と、第5の絶縁層104と、電子部品130と、電子部品131と、電子部品132と、を備える。第3の絶縁層102の一方の面である上面には第1の金属箔121が配置されているとともに第3の絶縁層102の他方の面である下面には第2の金属箔122が配置されている。第2の絶縁層101の一方の面である上面には第3の金属箔123が配置されているとともに第2の絶縁層101の他方の面である下面には第4の金属箔124が配置されている。第1の絶縁層100の一方の面である上面には第5の金属箔125が配置されているとともに第1の絶縁層100の他方の面である下面には第6の金属箔126が配置されている。第1の絶縁層100の上に第2の絶縁層101が薄い第4の絶縁層103を介して積層されている。第2の絶縁層101の上に第3の絶縁層102が薄い第5の絶縁層104を介して積層されている。
【0051】
第1の絶縁層100において第1の金属板111が内蔵されている。第2の絶縁層101において第2の金属板112が内蔵されている。第3の絶縁層102において第3の金属板113が内蔵されている。
【0052】
第1の金属板111が所望のコイル形状にパターニングされ、1次側コイル(巻線)としての第1のコイルが形成されている。第2の金属板112が所望のコイル形状にパターニングされ、2次側コイル(巻線)としての第2のコイルが形成されている。第3の金属板113が所望のコイル形状にパターニングされ、1次側コイル(巻線)としての第3のコイルが形成されている。
【0053】
第1の金属板111による1次側コイルの一端には複数のビアホール140を介して金属箔126に形成されたパターン126aが接続されている。第3の金属板113による1次側コイルの一端には複数のビアホール141を介して金属箔121に形成されたパターン121aが接続されている。第1の金属板111による1次側コイルの他端と第3の金属板113による1次側コイルの他端とはビアホール(図示略)を介して接続されている。
【0054】
第2の金属板112による2次側コイルの一端にはビアホール145を介して金属箔123に形成されたパターン123aが接続されている。また、第2の金属板112による2次側コイルの他端にはビアホール146を介して金属箔124に形成されたパターン124aが接続されている。
【0055】
このようにして、第1の金属板111(1次側コイル)、第2の金属板112(2次側コイル)、第3の金属板113(1次側コイル)が多層に積層された構造となっている。
また、金属箔126に形成されたパターン126bには第1の絶縁層100に内蔵された電子部品130がビアホール150を介して接続されている。また、金属箔125に形成されたパターン125aには電子部品130がビアホール151を介して接続されている。金属箔123に形成されたパターン123bには第2の絶縁層101に内蔵された電子部品131がビアホール152を介して接続されている。金属箔121に形成されたパターン121bには第3の絶縁層102に内蔵された電子部品132がビアホール153を介して接続されている。
【0056】
図2(b)では第1の金属板31はビアホールを介して金属箔37,38と接続されるとともに第2の金属板32はビアホールを介して金属箔35,36と接続されていたが、これに限るものではない。第1の金属板31はビアホールを介して金属箔35,36,37,38のいずれかと接続されていればよく、また、第2の金属板32もビアホールを介して金属箔35,36,37,38のいずれかと接続されていればよい。
【0057】
同様に、図2(b)では電子部品50はビアホールを介して金属箔37,38と接続されるとともに電子部品55はビアホールを介して金属箔35と接続されていたが、これに限るものではない。電子部品50はビアホールを介して金属箔35,36,37,38のいずれかと接続されていればよく、また、電子部品55もビアホールを介して金属箔35,36,37,38のいずれかと接続されていればよい。
【0058】
・第1のコイルと第2のコイルとでトランスを構成したがこれに限らない。第1のコイルと第2のコイルとでトランスを構成しなくてもよい。
・磁性コア63は、一般的なEI型磁性コアであったがこれに限らない。磁性コアの形状は問わない。
【0059】
・多層基板に内蔵する電子部品の種類は問わない。電子部品は能動部品でも受動部品でもよく、例えば、図1におけるパワーMOSFET(14)を制御する制御IC15も内蔵させてもよい。
【0060】
・金属板31,32は銅板であり、金属箔35,36,37,38は銅箔であったがこれに限られず、金属板31,32は銅板以外の金属板であってもよいし、金属箔35,36,37,38は銅箔以外の金属箔であってもよい。
【0061】
・多層基板の各導電層である金属箔35,36,37,38の厚さは同一でも異なっていてもよい。例えば、大電流(パワー電流)が流れる導電層は厚く、小電流(制御電流)が流れる導電層は薄くしてもよい。
【0062】
・放熱部材(ヒートシンク)は多層基板の片面に設けてもよいが、放熱部材(ヒートシンク)は多層基板の両面に設けてもよい。
・DC−DCコンバータに具体化したが、他の電力変換装置、例えばインバータに具体化してもよい。
【符号の説明】
【0063】
30…多層基板、31…第1の金属板、32…第2の金属板、33…第1の絶縁層、34…第2の絶縁層、38…第1の金属箔、38b…パターン、40…ビアホール、50…電子部品、55…電子部品、70…放熱部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8