特許第6593316号(P6593316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593316
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】物品搬送車
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20191010BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20191010BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B65G1/04 541
   B25J9/06 E
   B25J13/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-242798(P2016-242798)
(22)【出願日】2016年12月15日
(65)【公開番号】特開2018-95438(P2018-95438A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 博史
【審査官】 土田 嘉一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−308986(JP,A)
【文献】 特開2008−169006(JP,A)
【文献】 特開2001−225909(JP,A)
【文献】 実開平04−004313(JP,U)
【文献】 特開2002−284499(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/133205(WO,A1)
【文献】 実開平07−003987(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 − 1/20
B25J 1/00 − 21/02
B66F 9/00 − 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行レールに沿って走行自在な走行台車と、前記走行台車に設けられて物品を載置支持するフォーク部と、前記物品の移載位置に対して前記フォーク部を出退移動させるフォーク移動手段と、前記フォーク部及び前記フォーク移動手段を水平面内において旋回可能とする旋回手段と、を備え、前記物品を前記移載位置に移載する物品搬送車であって、
前記走行レールに対する前記走行台車の姿勢を検出する姿勢検出手段を備え、
前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記フォーク部の出退移動量又は旋回量を補正すること
を特徴とする物品搬送車。
【請求項2】
前記旋回手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記走行台車に対する前記フォーク部及び前記フォーク移動手段の旋回量を補正すること
を特徴とする請求項1に記載の物品搬送車。
【請求項3】
前記フォーク移動手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記移載位置に対する前記フォーク部の出退移動の距離を補正すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の物品搬送車。
【請求項4】
前記姿勢検出手段は、前記走行台車の走行方向に対して水平に直交する方向の前記走行台車の一方側に設けられ、
前記フォーク移動手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記走行台車の走行方向に対して水平に直交する方向の前記走行台車の両側方に設けられる前記移載位置に対して前記フォーク部を出退移動させること
を特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の物品搬送車。
【請求項5】
前記姿勢検出手段が、前記走行台車と前記走行レールとの距離を計測するレーザー距離計により構成されること
を特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の物品搬送車。
【請求項6】
前記姿勢検出手段が、
前記走行台車の走行方向に対して前側に設けられ、前記走行レールに対する前記走行台車の前側の姿勢を検出する第1検出部と、
前記走行台車の走行方向に対して後側に設けられ、前記走行レールに対する前記走行台車の後側の姿勢を検出する第2検出部と、
から構成され、
前記第1検出部の検出値と、前記第2検出部の検出値と、の差分により、前記走行レールに対する前記走行台車全体の姿勢を検出すること
を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の物品搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収納棚等の物品の移載位置との間で物品を移載する物品搬送車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の物品搬送車は、液晶ディスプレイ或いはプラズマディスプレイに用いられるガラス板を積層状態に収納した容器等を物品として、物品収納棚等の物品の移載位置との間で物品を移載するように構成されている。例えば、特許文献1の物品搬送車は、車体(走行台車)に搭載される旋回テーブルと、旋回テーブルに搭載される昇降台と、昇降台に搭載され、下部の第1アームと、上部の第2アームと、第2アームの先端に設けられるハンドと、からなるスカラーアーム(フォーク部)と、車体に設けられる荷台と、から構成され、ステーション(物品の移載位置)に載置されるワーク(物品)をハンド(フォーク部)で下から保持して荷台に移載する。
このような物品搬送車においては、物品の大型化に伴い、物品を移載するフォーク部の長さが長くなる。そのため、ステーションに対して車体が少し傾いた場合であってもフォーク部の先端ではそのズレ量が大きくなる。それゆえに、一つのステーション内で同一の物品を何度も装置間搬送する場合には、同じ物品搬送車が物品を搬送しているにも関わらず、ステーションに載置される物品の位置が徐々にズレるという問題があった。
そこで、特許文献1の物品搬送車においては、ステーションに対する距離及び角度を求めるためのセンサが旋回テーブルに設けられ、上記センサにより求めた上記距離に応じてスカラーアームを伸縮させ、上記センサにより求めた上記角度に応じて旋回テーブルとハンドを逆向きにほぼ同じ角度だけ回動させることにより、ステーションに対するフォーク部のズレを補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−308986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す物品搬送車においては、上記センサがステーションの前面に設けられたターゲットとの距離を検出することにより、ステーションに対する距離及び角度を求めるため、ステーションに特定のターゲットを設ける必要がある。また、特許文献1に示す物品搬送車においては、ステーションに対する距離及び角度を求めるために、走行台車を上記センサによる上記ターゲットの検出が可能な位置まで移動させる必要があるため、スカラーアームの伸縮及び旋回テーブルの回動までに時間を要するという問題があった。なお、上記ターゲットを設けずに、上記センサがステーションの前面との距離を直接測定する場合であっても、走行台車を上記センサが検出可能な位置まで移動させなければならないため、同様に時間を要する。
【0005】
そこで、本発明は、物品の移載位置との距離を検出するためのターゲットを移載位置側に設けずに、物品の移載位置に対するフォーク部のズレの補正に要する時間を短縮可能な物品搬送車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、本発明の物品搬送車は、走行レールに沿って走行自在な走行台車と、前記走行台車に設けられて物品を載置支持するフォーク部と、前記物品の移載位置に対して前記フォーク部を出退移動させるフォーク移動手段と、前記フォーク部及び前記フォーク移動手段を水平面内において旋回可能とする旋回手段と、を備え、前記物品を前記移載位置に移載する物品搬送車であって、前記走行レールに対する前記走行台車の姿勢を検出する姿勢検出手段を備え、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記フォーク部の出退移動量又は旋回量を補正するものである。
上記構成では、物品の移載位置に対して一定の距離に設けられる走行レールに対する走行台車の姿勢を検出する姿勢検出手段の検出結果に基づいて、フォーク部の出退移動量又は旋回量が補正される。
【0008】
本発明の物品搬送車は、上記物品搬送車において、前記旋回手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記走行台車に対する前記フォーク部及び前記フォーク移動手段の旋回量を補正するものである。
上記構成では、姿勢検出手段の検出結果に基づいて、走行台車に対するフォーク部及び前記フォーク移動手段の旋回量が補正される。
【0009】
本発明の物品搬送車は、上記物品搬送車において、前記フォーク移動手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記移載位置に対する前記フォーク部の出退移動の距離を補正するものである。
上記構成では、姿勢検出手段の検出結果に基づいて、移載位置に対するフォーク部の出退移動の距離が補正される。
【0010】
本発明の物品搬送車は、上記物品搬送車において、前記姿勢検出手段は、前記走行台車の走行方向に対して水平に直交する方向の前記走行台車の一方側に設けられ、前記フォーク移動手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、前記走行台車の走行方向に対して水平に直交する方向の前記走行台車の両側方に設けられる前記移載位置に対して前記フォーク部を出退移動させるものである。
上記構成では、姿勢検出手段の検出結果に基づいて、フォーク部が、走行台車の走行方向に対して水平に直交する方向の走行台車の両側方に設けられる移載位置に対して出退移動する。
【0011】
本発明の物品搬送車は、上記物品搬送車において、前記姿勢検出手段が、前記走行台車と前記走行レールとの距離を計測するレーザー距離計により構成されるものである。
上記構成では、走行台車と走行レールとの距離を計測するレーザー距離計により、走行レールに対する走行台車の姿勢を検出する。
【0012】
本発明の物品搬送車は、上記物品搬送車において、前記姿勢検出手段が、前記走行台車の走行方向に対して前側に設けられ、前記走行レールに対する前記走行台車の前側の姿勢を検出する第1検出部と、前記走行台車の走行方向に対して後側に設けられ、前記走行レールに対する前記走行台車の後側の姿勢を検出する第2検出部と、から構成され、前記第1検出部の検出値と、前記第2検出部の検出値と、の差分により、前記走行レールに対する前記走行台車全体の姿勢を検出するものである。
上記構成では、走行台車の走行方向に対して前側に設けられる第1検出部の検出値と、走行台車の走行方向に対して後側に設けられる第2検出部の検出値と、の差分により、走行レールに対する走行台車全体の姿勢が検出される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の物品搬送車によれば、物品の移載位置に対して一定の距離に設けられる既存の走行レールに対する走行台車の姿勢を検出することによりフォーク部の出退移動量又は旋回量の補正を行うことから、物品の移載位置との距離の検出を、当該移載位置側に設けられるターゲットにより行う必要がなく、また、物品の移載位置との距離の検出を行うために、走行台車を当該距離の検出が可能な位置まで移動させる必要がない。そのため、当該距離を検出するためのターゲットを移載位置側に別途設ける必要がなく、走行台車が物品の移載位置に到着する前に、走行レールに対する走行台車の姿勢を検出してフォーク部の出退移動量又は旋回量の補正を行うことができ、物品の移載位置に対するフォーク部のズレの補正に要する時間を短縮することができる。ゆえに、走行台車が物品の移載位置に到着した時点で、フォーク部が物品の移載位置に対して常に一定位置で出退移動できる状態となり、フォーク部による物品の位置ズレを防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る物品搬送車の背面図である。
図2】本発明に係る物品搬送車の側面図である。
図3】本発明に係る物品搬送車の平面図であり、(a)は、フォークを収縮移動させた場合であり、(b)は、フォークを伸長移動させた場合である。
図4】本発明に係る物品搬送車の平面図であり、(a)は、フォークを補正して伸長移動させた場合であり、(b)は、フォークを伸長移動させた場合である。
図5】本発明に係る物品搬送車の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る物品搬送車10について説明する。なお、以下においては、物品搬送車10の走行方向(物品搬送車10の長手方向)を前後方向、物品搬送車10の走行方向に対して水平方向に直交する方向(物品搬送車10の幅方向)を左右方向、物品搬送車10の走行方向に対して鉛直方向に直交する方向(物品搬送車10の高さ方向)を上下方向として説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、物品搬送車10は、半導体製品或いは液晶表示素子等の製品の仕掛かり品等の板状体を収納する容器90(「物品」の一例)を、容器90を保管するための自動倉庫95へ搬入し、又は容器90を自動倉庫95から搬出するものである。物品搬送車10は、自動倉庫95へ搬入した容器90を、自動倉庫95内の物品保管棚97に収納し、又は物品保管棚97に保管されている容器90を物品保管棚97から取り出して自動倉庫95から搬出する。
物品保管棚97は、容器90を収納する物品保管部98(「移載位置」の一例)を備え、容器90を出し入れする前面を対向させた状態で間隔を隔てて左右に並ぶ形態で配置される。物品保管部98は、物品保管棚97の横幅方向及び上下高さ方向に沿って並んだ状態で設けられる。
一対の物品保管棚97の間には、容器90を搬送するための物品搬送用空間99が形成され、物品搬送用空間99に物品搬送車10の軌道である一対の走行レール96が設けられる。走行レール96は、一対の物品保管棚97に、物品搬送車10の走行方向の左右側から挟まれるように、一対の物品保管棚97に沿って設けられる。走行レール96は、物品保管棚97に対して、物品搬送車10の走行方向の左右方向に一定の間隔を保持して配置される。すなわち、走行レール96と、容器90の移載位置である物品保管棚97の物品保管部98と、の間隔は、常に一定の距離で保持されている。
【0017】
走行レール96を走行する物品搬送車10は、走行レール96に沿って走行自在な走行台車14と、容器90を物品保管棚97の物品保管部98に移載する移載装置20と、移載装置20を支持する昇降台11と、走行台車14に立設されて昇降台11を昇降自在に案内し支持する一対の昇降マスト12と、を主に備える。
物品搬送車10は、走行台車14の両端部であって物品搬送車10の走行方向の同一直線上に一対の昇降マスト12が配置される。昇降マスト12は、互いの上端部が上部フレーム13により接続されるとともに、その間において昇降台11を昇降自在に案内し支持する。昇降台11は、昇降用電動モータ12aを備え、昇降用電動モータ12aの駆動により昇降してフォーク22を目標となる物品保管棚97の物品保管部98まで搬送する。
【0018】
走行台車14は、一対の走行レール96に沿って走行自在な台車である。走行台車14は、走行用電動モータ14aを備え、走行用電動モータ14aの駆動により走行して昇降台11を目標となる物品保管棚97まで搬送する。走行台車14は、その前後端部に昇降マスト12を支持する。走行台車14には、走行台車14を走行レール96上で走行させるための車輪14bが、走行台車14の前後端部の左右両側にそれぞれ設けられる。
【0019】
図3及び図4に示すように、移載装置20は、昇降台11に旋回自在に装着した旋回台21(「旋回手段」の一例)と、容器90を載置支持し且つ旋回台21に対して出退移動するフォーク22と、旋回台21を旋回させる旋回用電動モータ21aと、フォーク22を出退移動させる出退用電動モータ22aと、を備える旋回可能なフォーク式の移載装置である。移載装置20は、走行台車14に対して360°の範囲で旋回台21を旋回させ、物品搬送車10の走行方向に対して直交する方向を容器90の移載方向としてフォーク22を出退移動させることで、容器90を旋回台21と物品保管棚97の物品保管部98との間で移載する。
旋回台21は、昇降台11の中央部に昇降台11に対して上下軸芯Pを中心に旋回可能に設けられるとともに、その上部にフォーク22を支持する。旋回台21は、旋回用電動モータ21aの駆動により昇降台11に対して旋回する。
フォーク22は、旋回台21にその一端側を取り付けた伸縮式のリンク機構23(「フォーク移動手段」の一例)と、リンク機構23の他端側に支持されリンク機構23の伸縮により旋回台21に対して出退するフォーク部24と、から構成される。
リンク機構23は、物品保管棚97に向けてフォーク部24を出退移動させる手段であり、基端部が旋回台21に上下軸芯P周りに回動自在に連結された一対の操作リンク23aと、基端部が操作リンク23aの先端部に上下軸芯P周りに回動自在に連結され且つ先端部がフォーク部24の基端部に上下軸芯P周りに回動自在に連結された一対の揺動リンク23bと、を備える。リンク機構23は、出退用電動モータ22aにより一対の操作リンク23aを同期させた状態で回動させることで、リンク機構23の全体を伸縮させる。つまり、移載装置20は、図3(a)に示すように、リンク機構23の収縮移動によりフォーク部24が旋回台21上に移動した状態となり、図3(b)に示すように、リンク機構23の伸長移動によりフォーク部24が物品保管棚97の物品保管部98に移動した状態となるように切り換え可能に構成されている。また、移載装置20は、図3(b)及び図4(a)に示すように、旋回台21の上下軸芯P周りの旋回によりフォーク部24の出退方向を一対の物品保管棚97のうちの一方側又は他方側の物品保管部98に切り換え可能に構成されている。
フォーク部24は、容器90を載置支持する部材であり、容器90の底面を載置可能に構成される。
【0020】
物品搬送車10は、前側レーザー距離計31(「姿勢検出手段」「レーザー距離計」「第1検出部」の一例)及び後側レーザー距離計32(「姿勢検出手段」「レーザー距離計」「第2検出部」の一例)を備える。
前側レーザー距離計31は、走行台車14と走行レール96との距離を計測するレーザー距離計であり、具体的には、前側レーザー距離計31が配置されている走行台車14の前側の位置から走行レール96の内側側面までの距離であって、走行台車14の走行方向に対して水平方向に直交する方向(走行レール96の長手方向に対して水平方向に直交する方向)の距離を計測するものである。前側レーザー距離計31は、走行台車14の走行台車14の前側(走行台車14の走行方向に対して前側)であって、走行台車14の長手方向の中心軸Nに対して一方側(例えば、走行台車14の走行方向に対して右側)に設けられる。なお、前側レーザー距離計31は、一対の走行レール96のうちの一方の走行レール96(例えば、走行台車14の走行方向に対して右側の走行レール96)の内側側面について計測する。
後側レーザー距離計32は、走行台車14と走行レール96との距離を計測するレーザー距離計であり、具体的には、後側レーザー距離計32が配置されている走行台車14の後側の位置から走行レール96の内側側面までの距離であって、走行台車14の走行方向に対して水平方向に直交する方向(走行レール96の長手方向に対して水平方向に直交する方向)の距離を計測するものである。後側レーザー距離計32は、走行台車14の走行台車14の後側(走行台車14の走行方向に対して後側)であって、走行台車14の長手方向の中心軸Nに対して一方側(例えば、走行台車14の走行方向に対して右側)に設けられる。すなわち、前側レーザー距離計31と、後側レーザー距離計32と、は走行台車14の長手方向の中心軸Nに対して同じ側に設けられる。なお、後側レーザー距離計32は、一対の走行レール96のうちの一方の走行レール96であって、前側レーザー距離計31が計測している走行レール96と同じ走行レール96の内側側面について計測する。
【0021】
次に、物品搬送車10の制御構成について説明する。
図5に示すように、物品搬送車10は、地上側コントローラ80からの指示に基づいて、物品搬送車10の運転を制御するクレーン制御装置17を備える。
地上側コントローラ80は、クレーン制御装置17に対して、物品保管棚97の複数の物品保管部98のいずれかに容器90を搬入する搬入指示と、物品保管棚97の複数の物品保管部98のいずれかに収納されている容器90を搬出する搬出指示と、を行う。
クレーン制御装置17は、走行用ロータリエンコーダ14cと、昇降用ロータリエンコーダ12b、前側レーザー距離計31と、後側レーザー距離計32とに接続され、走行用ロータリエンコーダ14c、昇降用ロータリエンコーダ12b、前側レーザー距離計31、及び後側レーザー距離計32からの検出情報が入力される。クレーン制御装置17は、走行台車14の走行を制御する走行制御部18と、昇降台11の昇降を制御する昇降制御部19と、移載装置20の動作を制御する出退制御部26と、を備える。
走行制御部18は、走行用ロータリエンコーダ14cの検出情報に基づいて、走行用電動モータ14aの駆動を制御し、目標の物品保管部98まで走行台車14を走行させる。
昇降制御部19は、昇降用ロータリエンコーダ12bの検出情報に基づいて、昇降用電動モータ12aの駆動を制御し、フォーク22が出退移動を行う目標の物品保管部98まで昇降台11を昇降させる。
出退制御部26は、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の検出情報に基づいて、旋回用電動モータ21a及び出退用電動モータ22aの駆動を制御し、旋回台21の旋回、及びフォーク22の出退移動を行う。
【0022】
クレーン制御装置17においては、地上側コントローラ80の搬入指示に基づいて、走行制御部18が走行台車14の走行制御を行い、昇降制御部19が昇降台11の昇降制御を行い、出退制御部26が旋回台21の旋回制御及びフォーク22の出退移動制御を行う。これにより、目標の物品保管部98まで走行台車14が走行し、フォーク22が出退移動を行う目標の物品保管部98まで昇降台11が昇降し、フォーク部24が目標の物品保管部98に向けて伸長移動が可能な位置まで旋回台21が旋回し、容器90を載置支持するフォーク22が旋回台21から目標の物品保管部98まで伸長移動を行い、容器90が目標の物品保管部98に降ろされた後、フォーク22が目標の物品保管部98から旋回台21まで収縮移動を行う。
同様に、クレーン制御装置17においては、地上側コントローラ80の搬出指示に基づいて、目標の物品保管部98まで走行台車14が走行し、フォーク22が出退移動を行う目標の物品保管部98まで昇降台11が昇降し、フォーク部24が目標の物品保管部98に向けて伸長移動が可能な位置まで旋回台21が旋回し、フォーク22が旋回台21から目標の物品保管部98まで伸長移動を行い、目標の物品保管部98に収納される容器90がフォーク22により掬われた後、容器90を載置支持するフォーク22が目標の物品保管部98から旋回台21まで収縮移動を行う。
【0023】
次に、物品搬送車10におけるフォーク部24の出退移動量及び旋回量の制御について説明する。
物品搬送車10には、走行レール96の左右の側面を転動するガイドローラ(図示せず)が設けられ、当該ガイドローラにより走行台車14の走行方向に対する左右方向の移動が規制される。しかしながら、当該ガイドローラの遊び或いは潰れにより走行台車14の左右方向の規制が弱まり、図4(b)に示すように、当該ガイドローラの遊び分或いは潰れ分だけ走行台車14が走行レール96に対して傾く。それにより、フォーク部24の伸長位置がばらつき、物品保管棚97の物品保管部98に対する容器90の移載位置が不安定となる。そこで、物品搬送車10においては、走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出し、その検出結果に基づいてフォーク部24の出退移動量及び旋回量を制御する。すなわち、走行レール96に対する走行台車14の傾きに応じてフォーク部24の出退移動量及び旋回量を補正する。
【0024】
図3(a)に示すように、走行レール96に対する走行台車14の姿勢は、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32により計測される走行台車14と走行レール96との距離に基づいて検出される。具体的には、前側レーザー距離計31が計測する走行台車14と走行レール96との距離の検出値と、後側レーザー距離計32が計測する走行台車14と走行レール96との距離の検出値と、の差分により走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出する。例えば、前側レーザー距離計31の検出値aと、後側レーザー距離計32の検出値bと、の間に差が無い場合(検出値a、bが同じ値の場合)、すなわち、走行台車14の前側における走行台車14と走行レール96との距離が、走行台車14の後側における走行台車14と走行レール96との距離と同じ場合、出退制御部26は、走行台車14が走行レール96に対して傾いていないと判断する。また、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32が走行台車14の走行方向に対して右側の走行レール96を計測している場合であって、前側レーザー距離計31の検出値aが後側レーザー距離計32の検出値bより大きい場合、すなわち、走行台車14の前側における走行台車14と走行レール96との距離が、走行台車14の後側における走行台車14と走行レール96との距離より長い場合、出退制御部26は、走行台車14が走行レール96(走行方向)に対して左側に傾いていると判断する。さらに、前側レーザー距離計31の検出値aが後側レーザー距離計32の検出値bより小さい場合、すなわち、走行台車14の前側における走行台車14と走行レール96との距離が、走行台車14の後側における走行台車14と走行レール96との距離より短い場合、出退制御部26は、走行台車14が走行レール96(走行方向)に対して右側に傾いていると判断する。
【0025】
出退制御部26は、走行台車14が走行レール96(走行方向)に対して傾いていると判断すると、前側レーザー距離計31の検出値aと後側レーザー距離計32の検出値bとの差分から、物品保管棚97の物品保管部98の棚中心Tに対するフォーク部24のズレ量K(図4(b))を算出する。出退制御部26は、算出したフォーク部24のズレ量Kに基づいて旋回台21の旋回量を算出し、当該旋回量に基づいて旋回用電動モータ21aを駆動させることで旋回台21を旋回させる。これにより、走行台車14に対するフォーク部24及びリンク機構23の旋回量が補正され、フォーク部24が物品保管棚97の物品保管部98の棚中心Tに対してズレることなく出退移動されるようにフォーク部24の方向が補正される。
また、出退制御部26は、前側レーザー距離計31の検出値a及び後側レーザー距離計32の検出値bにより、走行台車14の中心(上下軸芯P)から物品保管棚97の物品保管部98の前面までの距離を算出する。物品保管部98の前面から走行レール96までの距離、走行台車14の中心(上下軸芯P)から前側レーザー距離計31までの距離、及び走行台車14の中心(上下軸芯P)から後側レーザー距離計32までの距離は常に一定であるため、前側レーザー距離計31の検出値a及び後側レーザー距離計32の検出値bから、前側レーザー距離計31と走行レール96との距離及び後側レーザー距離計32と走行レール96との距離を算出することで、走行台車14の中心(上下軸芯P)から物品保管部98の前面までの距離を算出することができる。出退制御部26は、算出した走行台車14の中心(上下軸芯P)から物品保管部98の前面までの距離に基づいて、物品保管部98に対するフォーク部24の出退移動の距離を算出し、当該距離に基づいて出退用電動モータ22aを駆動させることでリンク機構23を駆動させ、フォーク部24を出退移動させる。これにより、フォーク部24の出退移動量が補正され、補正された距離でフォーク部が物品保管部98に対して出退移動する。
【0026】
走行レール96に対する走行台車14の姿勢は、走行台車14が目標となる物品保管棚97の物品保管部98の前に到着するまでに検出される。具体的には、走行台車14が目標となる物品保管部98の前の停止位置から所定の距離で上流側に離れた位置から、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32により走行台車14と走行レール96との距離が計測される。そして、走行台車14が目標となる物品保管部98の前に到達するまでに、補正すべきフォーク部24の出退移動量及び旋回量が算出され、当該旋回量に基づいて旋回台21がフォーク22を旋回する。さらに、走行台車14が目標となる物品保管部98の前に到着した時点、或いは走行台車14が目標となる物品保管部98に向けて減速している際に、上記フォーク部24の出退移動量に基づいて、リンク機構23がフォーク部24を目標となる物品保管部98に伸長移動させる。
このように、物品搬送車10においては、走行台車14が目標となる物品保管部98の前に到着するまでに、走行レール96に対する走行台車14の姿勢が検出され、その検出結果に基づいて補正すべきフォーク部24の出退移動量及び旋回量が算出され、当該出退移動量及び旋回量に基づいて旋回台21がフォーク22を旋回し、リンク機構23がフォーク部24を伸長移動させる。そのため、走行台車14が目標となる物品保管部98の前に到着した時点で、物品保管部98に対するフォーク部24のズレが補正され、フォーク部24が物品保管部98に対して常に一定位置で出退移動できる状態となる。
【0027】
図3(b)及び図4(a)に示すように、物品搬送車10は、その走行方向の左右両側に配置される物品保管棚97に対して容器90の搬出入を行う。すなわち、移載装置20は、旋回台21を走行台車14に対して360°の範囲で旋回させ、物品搬送車10の走行方向の左右両側に配置される物品保管棚97に対してフォーク22を出退移動させる。そして、フォーク部24の出退移動量及び旋回量の補正は、フォーク22が出退移動される物品保管棚97の位置に関わらず、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の検出結果に基づいて行われる。すなわち、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32と、フォーク22の出退移動を行う物品保管棚97とが、走行台車14の走行方向に対して反対側に設けられる場合であっても、フォーク部24の出退移動量及び旋回量の補正は、常に、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の検出結果に基づいて行われる。
このように、物品搬送車10においては、走行台車14の走行方向の左右いずれ側の側方に設けられる物品保管棚97に対してフォーク部24を出退移動させる場合であっても、走行台車14の左右方向の一方側(例えば、右側)に設けられる前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の検出結果に基づいて、フォーク部24の出退移動量及び旋回量の補正を行う。そのため、走行台車14の走行方向に対して一方側に設けられる前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32のみで、走行台車14の走行方向の左右両側方に設けられる物品保管棚97に対するフォーク部24の出退移動を制御できることから、走行台車14の中心軸Nに対する両側にレーザー距離計を設ける必要がなく、走行台車14の構成を簡素化することができる。
【0028】
また、物品搬送車10においては、クレーン制御装置17の出退制御部26が、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の検出結果、及び当該検出結果に基づいて算出されたフォーク部24の出退移動量及び旋回量を、過去データとして記憶し、その記憶した当該過去データに基づいて、フォーク部24の出退移動量及び旋回量を算出し、フォーク部24の出退移動量及び旋回量の補正を行っても構わない。具体的には、記憶した当該過去データと同一の物品保管部98に対して再度フォーク部24の出退移動を行う場合に、記憶した当該過去データと、現在検出されている前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の検出結果と、を比較し、その比較結果に基づいてフォーク部24の出退移動量及び旋回量を算出し、フォーク部24の出退移動量及び旋回量の補正を行う。
【0029】
以上のように、物品搬送車10においては、物品保管部98に対して一定の距離に設けられる既存の走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出することによりフォーク部24の出退移動量又は旋回量の補正を行うことから、物品保管部98との距離の検出を、物品保管部98側に設けられるターゲットにより行う必要がなく、また、物品保管部98との距離の検出を行うために、走行台車14を当該距離の検出が可能な位置まで移動させる必要がない。そのため、当該距離を検出するためのターゲットを物品保管部98側に別途設ける必要がなく、走行台車14が物品保管部98に到着する前に、走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出してフォーク部24の出退移動量又は旋回量の補正を行うことができ、物品保管部98に対するフォーク部24のズレの補正に要する時間を短縮することができる。ゆえに、走行台車14が物品保管部98に到着した時点で、フォーク部24が物品保管部98に対して常に一定位置で出退移動できる状態となり、フォーク部24による容器90の位置ズレを防止することできる。
物品搬送車10においては、走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出する姿勢検出手段として、レーザー距離計である前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32を用いることにより、既存の走行レール96と、その上を走行する走行台車14との距離を、物品搬送車10の走行中に容易に計測することができる。そのため、走行台車14が物品保管部98に到着するまでに、物品保管部98に対するフォーク部24の位置補正を容易に行うことができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、物品搬送車を、地上に設けられる一対の走行レール96上を走行する物品搬送車10としているが、これに限定されるものではなく、走行レール上を走行する物品搬送車であれば、例えば、1本の走行レール上を走行する物品搬送車であっても構わない。また、天井に設けられる走行レール上を走行する天井搬送車であっても構わない。
本実施の形態においては、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32により走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出しているが、これに限定されるものではなく、走行レール96に対する走行台車14の姿勢を検出可能な方法であれば、例えば、走行台車14の上部に設けられたカメラ等の撮影手段により撮影された画像により走行台車14の姿勢を検出しても構わない。また、前側レーザー距離計31及び後側レーザー距離計32の2台のレーザー距離計により走行台車14の姿勢を検出しているが、これに限定されるものではなく、1台のレーザー距離計或いは3台以上のレーザー距離計により走行台車14の姿勢を検出しても構わない。
本実施の形態においては、前側レーザー距離計31と、後側レーザー距離計32と、が走行台車14に対して同じ側(例えば、走行台車14の走行方向に対して右側)に設けられているが、これに限定されるものではなく、前側レーザー距離計31と、後側レーザー距離計32と、が走行台車14に対して異なる側(例えば、前側レーザー距離計31を走行台車14の中心軸Nに対して右側、後側レーザー距離計32を走行台車14の中心軸Nに対して左側)に設けても構わない。
本実施の形態においては、旋回台21が昇降台11に旋回可能に設けられ、昇降台11の昇降により昇降するが、これに限定されるものではなく、例えば、旋回台21が走行台車14に旋回可能に設けられて昇降しない構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0031】
10 物品搬送車
14 走行台車
21 旋回台(旋回手段)
23 リンク機構(フォーク移動手段)
24 フォーク部
31 前側レーザー距離計(姿勢検出手段、第1検出部)
32 後側レーザー距離計(姿勢検出手段、第2検出部)
90 容器(物品)
96 走行レール
98 物品保管部(物品の移載位置)

図1
図2
図3
図4
図5