(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の平版印刷版原版は、基板上に少なくともシリコーンゴム層と感熱層を有する平版印刷版原版である。前記感熱層には、少なくとも、カーボネート構造を有するポリウレタンを含有することを特徴とする。本発明の平版印刷版原版は、水なし平版印刷版原版として用いられる。ここで、水なし平版印刷版原版とは、湿し水を用いずに印刷が可能な平版印刷版原版を指し、また、直描型水なし平版印刷版原版とは、レーザー光を用いてコンピューターで作成されたデジタルデータを直接平版印刷版原版に書き込むことができる水なし平版印刷版原版を指す。
【0021】
本発明の平版印刷版原版について、以下に説明する。
【0022】
基板としては、従来印刷版の基板として用いられてきた寸法的に安定な公知の紙、金属、ガラス、フィルムなどを使用することができる。具体的には、紙、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などの金属板、ソーダライム、石英などのガラス板、シリコンウエハー、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックのフィルム、上記金属がラミネートまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムは透明でも不透明でもよい。検版性の観点からは、不透明のフィルムが好ましい。
【0023】
これら基板のうち、アルミニウム板は寸法的に安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。また、軽印刷用の柔軟な基板としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0024】
基板の厚みは特に限定されず、平版印刷に使用される印刷機に対応した厚みを選択すればよい。
【0025】
次に、本発明に好ましく用いることができる感熱層について説明する。感熱層としては、レーザー描画により物性が変化する層および/またはレーザー描画によりシリコーンゴム層との接着力が低下する層が好ましい。例えば、(1)ノボラック樹脂、(2)有機錯化合物、(3)光熱変換物質および(4)ポリウレタンの各成分を含む溶液を必要に応じて加熱、乾燥して得られる層が好ましい例として挙げられる。
【0026】
本発明の平版印刷版原版は、感熱層にカーボネート構造を有するポリウレタンを含有することを特徴とする。
【0027】
特許文献1に記載されるような直描型水なし平版印刷版原版は、バインダーポリマーであるポリウレタンを含有することで感熱層組成物を含む溶液の塗工時のハジキを抑制し、耐刷性を向上する効果が得られるが、一方で微小網点再現性が低下する。
【0028】
本発明の平版印刷版原版は、感熱層にカーボネート構造を有するポリウレタンを含有することにより、感熱層の微小網点再現性、耐刷性に優れた平版印刷版原版が得られる。
【0029】
以下に感熱層を構成する各成分について説明をする。
(1)ノボラック樹脂
本発明の平版印刷版原版において、感熱層に好ましく用いられるノボラック樹脂の例としては、下記に例示するフェノール類と、下記に例示するアルデヒド類とを酸性触媒下で反応させて得られるノボラック樹脂が挙げられる。
【0030】
前記フェノール類としては、例えば、フェノール;m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール等のクレゾール類;2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類;アルキルフェノール類;アルコキシフェノール類;イソプロペニルフェノール類;アリルフェノール類;ポリヒドロキシフェノール類等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、また2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらのフェノール類の中では、フェノールまたはo−クレゾールが好ましい。
【0031】
前記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルデヒド類の中では、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0032】
前記酸性触媒としては、塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸等を使用することができる。
【0033】
上記のノボラック樹脂の中では、フェノールノボラック樹脂またはo−クレゾールノボラック樹脂が好ましい。
【0034】
ノボラック樹脂の重量平均分子量は、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましい。重量平均分子量が5000以下のノボラック樹脂を用いることで、レーザー照射時の架橋切断が容易となり、感熱層の感度をより向上させることができる。一方、ノボラック樹脂の重量平均分子量は、500以上が好ましく、800以上がより好ましい。重量平均分子量が500以上のノボラック樹脂を用いることで、感熱層とシリコーンゴム層の接着性が向上する。なお、本発明において、ノボラック樹脂の重量平均分子量は、GPC(gel permeation chromatography)法により求めたものを言う。ただし、GPC法で測定されるのは相対的な分子量分布および重量平均分子量であり、本発明における重量平均分子量とは、標準物質であるポリスチレンに換算された分子量である。
【0035】
ノボラック樹脂の含有量は、塗工性の観点から感熱層の全固形分中20〜95質量%が好ましい。下限は50質量%以上がより好ましく、また、上限は90質量%以下がより好ましい。
(2)有機錯化合物
本発明の平版印刷版原版において、感熱層に好ましく用いられる有機錯化合物は、金属と有機化合物からなり、活性水素を有するポリマーの架橋剤として、および/または、熱硬化反応の触媒として機能する。有機錯化合物が架橋剤として機能する場合であっても、感熱層にさらに他の架橋剤を含有してもよい。
【0036】
本発明において感熱層に好ましく用いられる有機錯化合物としては、金属に有機配位子が配位した有機錯塩、金属に有機配位子および無機配位子が配位した有機無機錯塩、金属と有機分子が酸素を介して共有結合している金属アルコキシド類などが挙げられる。これらの中でも、配位子が2個以上のドナー原子を有し、金属原子を含む環を形成するような金属キレート化合物が、有機錯化合物自身の安定性や感熱層組成物溶液の安定性などの面から好ましく用いられる。
【0037】
有機錯化合物を形成する主な金属としては、Al(III)、Ti(IV)、Mn(II)、Mn(III)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Ni(II)、Ni(IV)、Cu(I)、Cu(II)、Zn(II)、Ge、In、Sn(II)、Sn(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)が好ましい。Al(III)は感度向上効果が得られやすい点から特に好ましく、Ti(IV)は印刷インキやインキ洗浄剤に対する耐性が発現しやすい点から特に好ましい。
【0038】
また、配位子としては、酸素、窒素、硫黄などをドナー原子として有する配位基を有する化合物が挙げられる。配位基の具体例としては、酸素をドナー原子とするものとしては、−OH(アルコール、エノールおよびフェノール)、−COOH(カルボン酸)、>C=O(アルデヒド、ケトン、キノン)、−O−(エーテル)、−COOR(エステル、ここでRは脂肪族または芳香族炭化水素を表す)、−N=O(ニトロソ化合物)、−NO
2(ニトロ化合物)、>N−O(N−オキシド)、−SO
3H(スルホン酸)、−PO
3H
2(亜リン酸)などが挙げられる。窒素をドナー原子とするものとしては、−NH
2(1級アミン、アミド、ヒドラジン)、>NH(2級アミン、ヒドラジン)、>N−(3級アミン)、−N=N−(アゾ化合物、複素環化合物)、=N−OH(オキシム)、−NO
2(ニトロ化合物)、−N=O(ニトロソ化合物)、>C=N−(シッフ塩基、複素環化合物)、>C=NH(アルデヒド、ケトンイミン、エナミン類)、−NCS(イソチオシアナート)などが挙げられる。硫黄をドナー原子とするものとしては、−SH(チオール)、−S−(チオエーテル)、>C=S(チオケトン、チオアミド)、=S−(複素環化合物)、−C(=O)−SH、−C(=S)−OH、−C(=S)−SH(チオカルボン酸)、−SCN(チオシアナート)などが挙げられる。
【0039】
上記のような金属と配位子から形成される有機錯化合物のうち、好ましく用いられる化合物としては、Al(III)、Ti(IV)、Fe(II)、Fe(III)、Mn(III)、Co(II)、Co(III)、Ni(II)、Ni(IV)、Cu(I)、Cu(II)、Zn(II)、Ge、In、Sn(II)、Sn(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)などの金属のβ−ジケトン類、アミン類、アルコール類、カルボン酸類との錯化合物が挙げられる。さらにはAl(III)、Fe(II)、Fe(III)、Ti(IV)、Zr(IV)のアセチルアセトン錯体、アセト酢酸エステル錯体などが特に好ましい有機錯化合物として挙げられる。
【0040】
このような有機錯化合物の具体例としては、例えば以下の化合物を挙げることができる。アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(プロピルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ブチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキシルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ノニルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(ヘキサフルオロペンタジオネート)、アルミニウムトリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(アセチルアセトネート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムビス(プロピルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ブチルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ヘキシルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(ノニルアセトアセテート)モノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジブトキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(アセチルアセトネート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウム−s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジ−s−ブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、アルミニウムジイソプロポキシドモノ(−9−オクタデセニルアセトアセテート)、チタニウムトリイソプロポキシドモノ(アリルアセトアセテート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(トリエタノールアミン)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(トリエタノールアミン)、チタニウムジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムジ−n−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリ−n−ブトキシドモノ(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリイソプロポキシドモノ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)、チタニウムオキサイシドビス(アセチルアセトネート)、チタニウムテトラ(2−エチル−3−ヒドロキシヘキシルオキサイド)、チタニウムジヒドロキシビス(ラクテート)、チタニウム(エチレングリコーレート)ビス(ジオクチルフォスフェート)、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(ヘキサフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムテトラキス(トリフルオロペンタンジオネート)、ジルコニウムトリ−n−プロポキシドモノ(メタクリルオキシエチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、トリグリコラートジルコン酸、トリラクテートジルコン酸、鉄(III)アセチルアセトネート、ジベンゾイルメタン鉄(II)、トロポロン鉄、トリストロポロノ鉄(III)、ヒノキチオール鉄、トリスヒノキチオロ鉄(III)、アセト酢酸エステル鉄(III)、鉄(III)ベンゾイルアセトネート、鉄(III)ジフェニルプロパンジオネート、鉄(III)テトラメチルヘプタンジオネート、鉄(III)トリフルオロペンタンジオネートなど。これらを2種以上含有してもよい。
【0041】
有機錯化合物の含有量は、感熱層の全固形分中0.5〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。有機錯化合物の含有量を0.5質量%以上とすることによって、上記のような、活性水素を有するポリマーの架橋剤として機能する効果、および/または、熱硬化反応の触媒として機能する効果、感度向上効果、印刷インキやインキ洗浄剤に対する耐性をより高める効果を得ることができる。一方、50質量%以下とすることによって、印刷版の高い耐刷性を維持することができる。
(3)光熱変換物質
本発明の平版印刷版原版において、感熱層に好ましく用いられる光熱変換物質としては、レーザー光を吸収するものであれば特に限定されるものではなく、赤外線または近赤外線を吸収する顔料、染料が好ましい。例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、アニリンブラック、シアニンブラックなどの黒色顔料、フタロシアニン、ナフタロシアニン系の緑色顔料、結晶水含有無機化合物、鉄、銅、クロム、ビスマス、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、コバルト、バナジウム、マンガン、タングステンなどの金属粉、またはこれら金属の硫化物、水酸化物、珪酸塩、硫酸塩、燐酸塩、ジアミン化合物錯体、ジチオール化合物錯体、フェノールチオール化合物錯体、メルカプトフェノール化合物錯体などを挙げることができる。
【0042】
また、赤外線または近赤外線を吸収する染料としては、エレクトロニクス用や記録用の染料で、最大吸収波長が700nm〜1500nmの範囲にあるシアニン系染料、アズレニウム系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、アゾ系分散染料、ビスアゾスチルベン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、ペリレン系染料、フタロシアニン系染料、ナフタロシアニン金属錯体系染料、ポリメチン系染料、ジチオールニッケル錯体系染料、インドアニリン金属錯体染料、分子間型CT染料、ベンゾチオピラン系スピロピラン、ニグロシン染料などが好ましく使用される。
【0043】
これらの染料のなかでも、モル吸光度係数εの大きなものが好ましく使用される。具体的には、εは1×10
4以上が好ましく、より好ましくは1×10
5以上である。εが1×10
4以上であれば、初期感度をより向上させることができる。
【0044】
これらの光熱変換物質を2種以上含有してもよい。吸収波長の異なる2種以上の光熱変換物質を含有することにより、発信波長の異なる2種以上のレーザーに対応させることができる。
【0045】
これらのなかでも、光熱変換率、経済性および取り扱い性の面から、カーボンブラック、赤外線または近赤外線を吸収する染料が好ましい。
【0046】
これら光熱変換物質の含有量は、感熱層の全固形分中0.1〜70質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜40質量%である。光熱変換物質の含有量を0.1質量%以上とすることで、レーザー光に対する感度をより向上させることができる。一方、70質量%以下とすることで、印刷版の高い耐刷性を維持することができる。
(4)ポリウレタン
本発明の平版印刷版原版において、感熱層に用いられるポリウレタンの例としては、下記に例示する、ポリイソシアネートと多価アルコールより得られるポリウレタンを挙げることができる。ポリウレタンは直鎖でも分岐していてもよく、また、水酸基などの種々の官能基を有してもよい。これらを2種以上含有しても良い。ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートを使用できる。
【0047】
芳香族ポリイソシアネートとしては、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−または2,6−トルイレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等が例示される。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
脂環族ポリイソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添m−キシレンジイソシアネート等であり、これらはそれぞれ単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0049】
また、本発明では、前記ポリイソシアネートの変性体、誘導体等を用いることができる。このような変性体または誘導体としては、例えば、ポリイソシアネートとアルコールとの反応物であるウレタン変性体;2個あるいは3個のポリイソシアネートの反応物としての二量体(別名ウレチジオン)または三量体(別名イソシアヌレート);脱炭酸ガスにより生成するポリカルボジイミド;あるいはポリイソシアネート、アルコール、アミン化合物などとの反応物であるアロハネート変性体、ビュレット変性体、ウレア変性体など;さらにはブロックドイソシアネートなどが挙げられる。
【0050】
多価アルコールとしては、熱による分解性が高いことからポリカーボネートポリオールが好ましい、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、エチレンカーボネートの開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0051】
本発明の平版印刷版原版において、感熱層に含まれるポリウレタンは、カーボネート構造を有することを特徴とする。感熱層は、レーザー照射をした際に光熱変換層が発生する熱で分解をすることがこれまでに判明している。しかし、これまで感熱層に含まれるポリウレタンの分解については考えられておらず、感熱層に含まれるカーボネート構造を有するポリウレタンを使用することで、熱に分解しやすくなるため、優れた微小網点再現性が得られる。
【0052】
本発明の平版印刷版原版において、ポリウレタンを含有する感熱層は、マクロ熱重量測定装置TGA−50((株)島津製作所製)(以下、TGA)にて熱に対する分解性を容易に測定することが可能である。測定は以下の手順にて温度上昇を行い、重量減少率(100−(所定の温度での重量/初期重量)*100)が30%以上となる温度(以下、熱分解温度)を測定した。
【0053】
TGAの温度を20℃/minの加熱温度で温度上昇し、100℃の状態で20minホールドし、その後20℃/minの加熱温度で温度上昇し、200℃の状態で20minホールドした。さらに、10℃/minの加熱温度で温度上昇し、590℃の状態で1minホールドした(測定条件:圧空下、20℃、20ml(mL/min))。TGAの温度を上昇させた時に、熱分解温度が低い程分解性が良好であり、微小網点再現性に優れる。熱分解温度は320℃以下が好ましく、より好ましくは310℃以下であり、さらに好ましくは300℃以下である。一方、耐溶剤性が不足するため、重量減少率が30%以上となる温度は270℃以上が好ましい。より好ましくは280℃以上である。
【0054】
また、本発明の平版印刷版原版において、感熱層に含まれるカーボネート構造を有するポリウレタンに、炭素数が6以上のアルキル鎖を含むポリウレタンを選択する場合、局所的な凝集力がさらに得られ、熱に分解しやすくな
る。
【0055】
感熱層において、カーボネート構造を有するポリウレタンの含有量は、感熱層組成物を含む溶液の塗工時のハジキの抑制および耐刷性が得られることから、感熱層の全固形分中10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。一方、優れた微小網点再現性を維持する観点から、感熱層の全固形分中50質量%以下が好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
また、本発明の平版印刷版原版において、感熱層は必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。例えば、塗布性を改良するためにシリコーン系界面活性剤やフッ素系界面活性剤などを含有してもよい。また、シリコーンゴム層との接着性を強化するためにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などを含有してもよい。これら添加剤の含有量はその使用目的によって異なるが、一般的には感熱層の全固形分中0.1〜30質量%である。
【0057】
感熱層の膜厚は、耐刷性と生産性の観点から0.1〜10g/m
2が好ましい。膜厚の下限は0.5g/m
2以下がより好ましく、また、上限は7g/m
2以下がより好ましい。
【0058】
感熱層を加熱乾燥する場合、感熱層の加熱乾燥温度は微小網点再現性、耐溶剤性の観点から30℃以上、190℃以下であることが好ましい、加熱乾燥温度の下限は50℃以上がより好ましく、また、上限は150℃以下がより好ましい。
【0059】
本発明の平版印刷版原版は、基板と感熱層間の接着性向上、光ハレーション防止、検版性向上、断熱性向上、耐刷性向上等を目的に、基板と感熱層の間にプライマー層を有してもよい。プライマー層としては、例えば特開2004−199016号公報等に記載されたプライマー層を挙げることができる。
【0060】
本発明の平版印刷版原版において、シリコーンゴム層としては、付加反応型シリコーンゴム層組成物または縮合反応型シリコーンゴム層組成物を塗布して得られる層、これらの組成物の溶液を塗布し、必要に応じて加熱、乾燥して得られる層が挙げられる。
【0061】
付加反応型のシリコーンゴム層組成物は、少なくともビニル基含有オルガノポリシロキサン、SiH基含有化合物(付加反応型架橋剤)および硬化触媒を含むことが好ましい。さらに、反応抑制剤を含有してもよい。
【0062】
ビニル基含有オルガノポリシロキサンは、下記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中にビニル基を有するものである。中でも主鎖末端にビニル基を有するものが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0063】
−(SiR
1R
2−O−)
n− (I)
式中、nは2以上の整数を示し、R
1およびR
2は同じであっても異なっていてもよく、炭素数1〜50の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。炭化水素基は直鎖状でも枝分かれ状でも環状でもよく、芳香環を含んでいてもよい。
【0064】
上記式中、R
1およびR
2は全体の50%以上がメチル基であることが、印刷版のインキ反発性の面で好ましい。また、取扱い性や印刷版のインキ反発性、耐傷性の観点から、ビニル基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量は1万〜60万が好ましい。
【0065】
SiH基含有化合物としては、例えば、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーが挙げられ、好ましくはオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。これらを2種以上含有してもよい。
【0066】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、環状、分岐状、網状の分子構造を有し、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ポリメチルハイドロジェンシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R
3SiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:R
2HSiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R
2HSiO
1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:RHSiO
2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO
3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO
3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体などが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンを2種以上用いてもよい。上記式中、Rはそれぞれ独立にアルケニル基以外の一価の炭化水素基であり、炭化水素基に含まれる水素原子が他の基で置換されていてもよい。一価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのアリル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基などのハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0067】
ジオルガノハイドロジェンシリル基を有する有機ポリマーとしては、例えば、ジメチルハイドロジェンシリル(メタ)アクレート、ジメチルハイドロジェンシリルプロピル(メタ)アクリレートなどのジメチルハイドロジェンシリル基含有(メタ)アクリル系モノマーと、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル、酢酸アリルなどのモノマーとを共重合したオリゴマーなどが挙げられる。
【0068】
SiH基含有化合物の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0069】
反応抑制剤を用いることもシリコーンゴム層の硬化速度を調整することができるので好ましい。好ましい反応抑制剤としては、含窒素化合物、リン系化合物、不飽和アルコールなどが挙げられ、アセチレン基含有アルコールが好ましく用いられる。これらを2種以上含有してもよい。反応抑制剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0070】
硬化触媒を用いることもシリコーンゴム層の硬化速度を促進することができるので好ましい。好ましい硬化触媒は公知のものから選ばれる。好ましくは白金系化合物であり、具体的には白金単体、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位白金、白金のアルコール変性錯体、白金のメチルビニルポリシロキサン錯体などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0071】
また、これらの成分の他に、水酸基含有オルガノポリシロキサンや加水分解性官能基含有シラン(もしくはシロキサン)、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤、接着性を向上させる目的で公知のシランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、アルコキシシラン類、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類などが好ましく、特にビニル基やアリル基を有するものが好ましい。
【0072】
縮合反応型のシリコーンゴム層組成物は、少なくとも水酸基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤および硬化触媒を含むことが好ましい。
【0073】
水酸基含有オルガノポリシロキサンは、前記一般式(I)で表される構造を有し、主鎖末端もしくは主鎖中に水酸基を有するものである。中でも主鎖末端に水酸基を有するものが好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0074】
架橋剤としては、下記一般式(II)で表される、脱酢酸型、脱オキシム型、脱アルコール型、脱アセトン型、脱アミド型、脱ヒドロキシルアミン型などのケイ素化合物を挙げることができる。
【0075】
(R
3)
4−mSiX
m(II)
式中、mは2〜4の整数を示し、R
3は同一でも異なってもよく、炭素数1以上の置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはこれらの組み合わされた基を示す。Xは同一でも異なってもよく、加水分解性基を示す。加水分解性基としては、アセトキシ基などのアシロキシ基、メチルエチルケトオキシム基などのケトオキシム基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、イソプロペノキシ基などのアルケニルオキシ基、アセチルエチルアミノ基などのアシルアルキルアミノ基、ジメチルアミノキシ基などのアミノキシ基などが挙げられる。上記式において、加水分解性基の数mは3または4であることが好ましい。
【0076】
具体的な化合物としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシランなどのアセトキシシラン類、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、アリルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシミノ)シラン、テトラキス(メチルエチルケトキシミノ)シランなどのケトキシミノシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどのアルコキシシラン類、ビニルトリスイソプロペノキシシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシメチルシランなどのアルケニルオキシシラン類、テトラアリロキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中では、シリコーンゴム層の硬化速度、取扱い性などの観点から、アセトキシシラン類、ケトキシミノシラン類が好ましい。これらを2種以上含有してもよい。
【0077】
架橋剤の含有量は、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層の強度や印刷版の耐傷性の観点から、シリコーンゴム層組成物中20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0078】
硬化触媒としては、有機カルボン酸、酸類、アルカリ、アミン、金属アルコキシド、金属ジケテネート、錫、鉛、亜鉛、鉄、コバルト、カルシウム、マンガンなどの金属の有機酸塩などが挙げられる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0079】
硬化触媒の含有量は、シリコーンゴム層の硬化性、接着性の観点から、シリコーンゴム層組成物中0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層組成物やその溶液の安定性の観点から、シリコーンゴム層組成物中15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0080】
また、本発明における水なし平版印刷版原版のシリコーンゴム層中には微小網点再現性、地汚れ開始温度を向上させる目的で、シリコーンオイルを含有することが好ましい。前記シリコーンオイルの添加により、前処理液のシリコーン層への浸透性が早くなるため、感熱層表面をより溶解させ、微小網点再現性が良好となる。また、印刷時にシリコーンゴム層表面にシリコーンオイルが表出し、インキの剥離を助けるためインキ反発性が向上し、地汚れ開始温度を上昇させることができる。また、前記シリコーンオイルの1気圧における沸点は150℃以上が好ましい。沸点が150℃以上であれば、水なし平版印刷版原版を製造時に揮発することが少なく、インキ反発性を失うことがない。インキ反発層中に上記液体を含むことでインキ反発性は向上するが、シリコーンゴム層中への添加量は10質量%以上35質量%以下が好ましい。10質量%以上であれば微小網点再現性、インキ反発性が顕著に向上し、35質量%以下であればシリコーンゴム層の強度は十分確保できるため、耐刷性や、耐傷性を維持することができる。
【0081】
耐傷性とは現像時、または取り扱い時にシリコーン層に傷が入り印刷物に欠点が発生する現象に対する耐性である。
【0082】
本発明において、シリコーンオイルとは、インキ反発層の架橋に携わらないポリシロキサン成分のことを指す。従って、末端ジメチルポリジメチルシロキサン、環状ポリジメチルシロキサン、末端ジメチル-ポリジメチル−ポリメチルフェニルシロキサンコポリマー、末端ジメチル−ポリジメチル−ポリジフェニルシロキサンコポリマーなどのジメチルシリコーンオイル類、またアルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アミド変性シリコーンオイル、カルバナ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどの分子中のメチル基の一部に各種有機基を導入した変性シリコーンオイル類を用いることができる。さらには、付加重合型のシリコーンゴム層組成物においては、架橋に携わらないと言う観点から末端水酸基のポリジメチルシロキサンを用いることができる。一方、縮合重合型のシリコーンゴム層組成物においてはメチルハイドロジェンシリコーンオイルも用いることができる。これらシリコーンオイルの分子量としては、重量平均分子量Mwは数100〜10万のものが好ましい。
【0083】
また、これらの成分の他に、ゴム強度を向上させる目的でシリカなどの公知の充填剤を含有してもよい。
【0084】
また、現像後の平版印刷版に検版性を付与する目的で、シリコーンゴム層中に有色顔料を含有することが好ましい。ここで、有色顔料とは、可視光波長域(380〜780nm)における何れかの光を吸収する顔料をいう。
【0085】
一般に、顔料は水や脂肪族炭化水素などの溶剤に不溶であるため、顔料を含むことにより、水や溶剤に可溶な染料を含む場合に比べて、現像工程において用いられる水や有機薬液、印刷工程において用いられるインキ中の溶剤や各種洗浄剤などによる色素抽出が格段に抑えられる。
【0086】
現像後の平版印刷版の検版性としては、目視による目視検版性、網点面積率測定装置による機器検版性が挙げられる。一般的に、機器検版性は目視検版性よりも画像識別能が低いため、機器検版性が良好な版印刷版は目視検版性もまた良好である場合が多い。
【0087】
一般的な網点面積率測定装置は、印刷版上に形成された網点部分に、青色光(波長400〜500nm)、緑色光(波長500〜600nm)、赤色光(波長600〜700nm)、または白色光(波長400〜700nm)の何れかの光を照射し、画線部/非画線部間の反射光量差から網点面積率を算出する。このため、画線部/非画線部間の反射光量差が小さい場合や、反射光量差がない場合は、網点面積率測定が困難となり、機器検版性が低下する。平版印刷版原版の断熱層や感熱層を構成する有機化合物の多くは青色光を吸収するため、青色光を吸収する黄色や橙色などの有色顔料で着色したシリコーンゴム層を用いた場合、画線部/非画線部間の反射光量差が小さくなり、機器検版性が低下する。さらに、目視検版性も低下する場合がある。このような理由から、緑色光または赤色光を吸収する有色顔料を用いることが、機器検版性や目視検版性の観点から好ましい。さらに、緑色光または赤色光を吸収する有色顔料の中でも、密度3g/cm
3以下の有色顔料が、シリコーンゴム層組成物やその溶液における分散性の観点から好ましい。緑色光または赤色光を吸収する有色顔料の中で、密度が3g/cm
3以下の有色顔料としては、コバルトブルー、紺青、含水硅酸塩、群青、カーボンブラック、体質顔料(炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、アスベスト、クレー、シリカ粉、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、アルミナホワイト)にローダミン、メチルバイオレット、ピーコックブルー、アルカリブルー、マラカイトグリーン、アリザリンなどの染料を染め付けた捺染系顔料、アルカリブルー、アニリンブラック、リソールレッド、レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B、ウォッチヤングレッド、ボルドー10B、パラレッド、レーキレッド4R、ナフトールレッド、クロモフタルスカーレットRN、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、フタロシアニングリーン、アントラキノン系顔料、ペリレンレッド、チオインジゴレッド、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、ナフトールグリーンBなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0088】
本発明の平版印刷版原版において、シリコーンゴム層中に有色顔料を含有させる場合、有色顔料の含有量は、シリコーンゴム層中の0.1体積%以上が好ましく、0.2体積%以上がより好ましい。また、シリコーンゴム層のインキ反発性を維持する観点から、20体積%以下が好ましく、10体積%以下がより好ましい。
【0089】
シリコーンゴム層中における有色顔料の分散性を向上させるために、シリコーンゴム層組成物に顔料分散剤を含有することが好ましい。顔料分散剤を含有することにより、シリコーンゴム層組成物を溶剤により希釈する際や、シリコーンゴム層組成物またはその溶液中で経時により発生する有色顔料の凝集を抑制することができる。顔料分散剤としては、顔料表面をよく濡らし、かつオルガノポリシロキサンや、後述する有色顔料含有シリコーン液の希釈に用いられる溶剤などの低極性化合物との親和性が良好な顔料分散剤が好ましい。そのような顔料分散剤であれば公知の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は界面活性剤や表面改質剤などの名称で用いられることもある。顔料分散剤としては、金属と有機化合物から形成される有機錯化合物、アミン系顔料分散剤、酸系顔料分散剤、ノニオン界面活性剤などを挙げることができる。中でも、金属と有機化合物から形成される有機錯化合物、またはアミン系顔料分散剤が好ましい。
【0090】
有機錯化合物を形成するための金属および有機化合物としては、感熱層の架橋剤として先に例示した金属錯化合物を形成するための金属および有機化合物が挙げられる。中でも、有機化合物としては、カルボン酸やリン酸、スルホン酸などの酸化合物や、金属との間でキレート環を形成できるジケトンやケトエステル、ジエステル化合物が金属との配位力の点から好ましい。
【0091】
顔料分散剤として用いられる最も単純な有機錯化合物は、上記有機化合物と金属アルコキシドを室温下または加熱下で撹拌し、配位子を交換することにより得ることができる。1つの金属に対し上記有機化合物を1分子以上配位させることが好ましい。
【0092】
市販されている金属と有機化合物から形成される有機錯化合物の例を以下に挙げる。アルミニウム系としては、“オクトープ”(登録商標)Al、“オリープ”AOO、AOS(以上、ホープ製薬(株)製)、“プレンアクト”(登録商標)AL−M(味の素ファインテクノ(株)製)など。チタニウム系としては、“プレンアクト”KR−TTS、KR46B、KR55、KR41B、KR38S、KR138S、KR238S、KR338X、KR9SA(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、“KEN−REACT”(登録商標)TTS−B、5、6、7、10、11、12、15、26S、37BS、43、58CS、62S、36B、46B、101、106、110S、112S、126S、137BS、158DS、201、206、212、226、237、262S(以上、KENRICH PETROCHEMICALS社製)など。
【0093】
上記有機錯化合物は、特に付加反応型シリコーンゴム層に好適に使用できる。中でも、分子中に1級または2級のアミン、リン、硫黄を含まない有機錯化合物は白金触媒の触媒毒として作用しないため、白金触媒を用いて硬化を促進する付加反応型のシリコーンに用いる際に極めて好適である。
【0094】
一方、アミン系顔料分散剤としては、その分子中に1個のアミノ基を有するモノアミンタイプ、分子中に複数個のアミノ基を有するポリアミンタイプがあり、何れも好適に使用できる。具体的には、“ソルスパース”(登録商標)9000、13240、13650、13940、17000、18000、19000、28000(以上、LUBRIZOL社製)などを挙げることができる。
【0095】
顔料分散剤は、顔料の表面積に対して、2〜30mg/m
2含有することが好ましい。言い換えると、例えば、比表面積50m
2/gの顔料を10g含有する場合、顔料分散剤の含有量は、1〜15gが好ましい。
【0096】
本発明の平版印刷版原版において、シリコーンゴム層の平均膜厚は0.5〜20μmが好ましい。シリコーンゴム層の平均膜厚を0.5μm以上とすることで印刷版のインキ反発性や耐傷性、耐刷性が十分となり、20μm以下とすることで経済的見地から不利とならず、現像性、インキマイレージの低下が起こりにくい。ここで、シリコーンゴム層の平均膜厚は、TEM観察により求めることができる。より詳しくは、平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を作製し、加速電圧100kV、直接倍率2000倍の条件でTEM観察を行うことで膜厚を測定することができる。シリコーンゴム層からランダムに選んだ10箇所について膜厚を計測し、その数平均値を算出することにより、平均膜厚を求めることができる。
【0097】
本発明の平版印刷版原版は、シリコーンゴム層保護の目的で保護フィルムおよび/または合紙、また、例えば特開2013−221045号公報に記載されたような保護膜をシリコーン層上部に形成することもできる。
【0098】
保護フィルムとしては、露光光源波長の光を良好に透過する厚み100μm以下のフィルムが好ましい。代表例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セロファンなどを挙げることができる。また、曝光による原版の感光を防止する目的で、特開平2−063050号公報に記載されたような種々の光吸収剤や光退色性物質、光発色性物質を保護フィルム上に有してもよい。
【0099】
合紙としては、坪量30〜120g/m
2のものが好ましく、より好ましくは30〜90g/m
2である。坪量30g/m
2以上であれば機械的強度が十分であり、120g/m
2以下であれば経済的に有利であるばかりでなく、平版印刷版原版と紙の積層体が薄くなり、作業性が有利になる。好ましく用いられる合紙の例として、例えば、情報記録原紙40g/m
2(名古屋パルプ(株)製)、金属合紙30g/m
2(名古屋パルプ(株)製)、未晒しクラフト紙50g/m
2(中越パルプ工業(株)製)、NIP用紙52g/m
2(中越パルプ工業(株)製)、純白ロール紙45g/m
2(王子製紙(株)製)、クルパック73g/m
2(王子製紙(株)製)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0100】
次に、本発明の平版印刷版原版の製造方法について説明する。本発明の平版印刷版原版の製造方法は、基板上に、感熱層を形成する工程およびシリコーンゴム層を形成する工程を少なくとも含む。さらに他の工程を設けてもよい。例えば、感熱層を形成する工程を、(a)断熱層を有してもよい基板上に、感熱層組成物または感熱層組成物溶液を塗布し、必要により乾燥することにより感熱層を形成する工程としてもよい。また、シリコーンゴム層を形成する工程を、(b)感熱層上に、シリコーンゴム層組成物またはシリコーンゴム層組成物溶液を塗布し、必要により乾燥することによりシリコーンゴム層を形成する工程としてもよい。
【0101】
(a)断熱層を有してもよい基板上に、感熱層組成物または感熱層組成物溶液を塗布し、必要により乾燥することにより感熱層を形成する工程について説明する。
【0102】
感熱層組成物を塗布し感熱層を形成する場合、感熱層組成物は感熱層を形成する材料から構成される無溶剤の液体であり、前述の感熱層を構成する成分および必要に応じて他の成分を混合することにより調製できる。
【0103】
上記感熱層組成物または感熱層組成物溶液を、基板上に直接塗布してもよいし、必要により断熱層などの樹脂層を有する基板上に、感熱層組成物溶液を塗布してもよい。基板は塗布面を脱脂しておくことが好ましい。
【0104】
塗布装置の例としては、スリットダイコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、リバースロールコーター、ナチュラルロールコーター、エアーナイフコーター、ロールブレードコーター、バリバーロールブレードコーター、トゥーストリームコーター、ロッドコーター、ディップコーター、カーテンコーター、スピンコーターなどが挙げられる。塗膜精度や生産性およびコストの面で、スリットダイコーター、グラビアコーター、ロールコーターが特に好ましい。
【0105】
感熱層組成物溶液の塗布重量は、印刷版の耐刷性や希釈溶剤が揮散しやすく生産性で優れる点で乾燥後の重量で0.1〜10g/m
2の範囲が適当であり、好ましくは0.5〜7g/m
2の範囲である。感熱層組成物溶液の乾燥は非加熱下、または加熱下において実施される。加熱する場合には、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などを用いて、感熱層の加熱乾燥温度は微小網点再現性、耐溶剤性の観点から30℃以上、190℃以下であることが好ましい、加熱乾燥温度の下限は50℃以上がより好ましく、また、上限は150℃以下がより好ましく、30秒〜5分間乾燥することが好ましい。
【0106】
次に、(b)感熱層上にシリコーンゴム層組成物またはシリコーンゴム層組成物溶液を塗布し、必要により乾燥することによりシリコーンゴム層を形成する工程について説明する。ここで、シリコーンゴム層組成物はシリコーンゴム層を形成する材料から構成される無溶剤の液体であり、シリコーンゴム層組成物溶液はシリコーンゴム層組成物と溶剤とを含有する希釈液である。
【0107】
有色顔料の分散や、シリコーンゴム層組成物溶液に用いられる溶剤としては、例えば、脂肪族飽和炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル類などが挙げられる。これら溶剤の溶解度パラメーターは、17.0(MPa)
1/2以下が好ましく、15.5(MPa)
1/2以下がより好ましい。例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、イソオクタン、“アイソパー(登録商標)”C、“アイソパー”E、“アイソパー”G、“アイソパー”H、“アイソパー”K、“アイソパー”L、“アイソパー”M(エクソン化学(株)製)などの脂肪族飽和炭化水素、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンなどの脂肪族不飽和炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、トリフルオロトリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。経済性および安全性の点から、脂肪族および脂環族炭化水素が好ましい。これら脂肪族および脂環族炭化水素の炭素数は4〜20が好ましく、炭素数6〜15がより好ましい。
【0108】
以下に、(i)シリコーンゴム層組成物、(ii)シリコーンゴム層組成物溶液の具体的な作製方法を記載する。
【0109】
(i)シリコーンゴム層組成物(無溶剤)
例えば、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサンと、必要により有色顔料、顔料分散剤、微粒子を分散機で均一に分散混合することにより、シリコーンペーストを得る。分散機としては、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ディスパーサー、ホモジナイザー、アトライター、超音波分散機などが挙げられる。得られたシリコーンペースト中に、架橋剤、反応触媒、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤など)を添加し、撹拌して成分を均一とし、液中に混入した空気の泡を除去することで、シリコーンゴム層組成物を得る。脱泡は自然脱泡でも減圧脱泡でもよいが、減圧脱泡がより好ましい。
【0110】
(ii)シリコーンゴム層組成物溶液(溶剤含有)
例えば、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサンと、必要により有色顔料、顔料分散剤、微粒子を前述した分散機で均一に分散混合することにより、シリコーンペースト得て、これを撹拌しながら溶剤で希釈する。これを紙やプラスチック、またはガラスなどの一般的なフィルターを用いて濾過し、希釈液中の不純物(分散が不十分な有色顔料の巨大粒子など)を取り除くことが好ましい。濾過後の希釈液は、乾燥空気や乾燥窒素などによるバブリングにより系中の水分を除去することが好ましい。十分に水分の除去を行った希釈液に架橋剤、反応触媒、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤など)を添加し撹拌して成分を均一とし、液中に混入した空気の泡を除去する。脱泡は自然脱泡でも減圧脱泡でもよい。
【0111】
また、有色顔料を含有するシリコーンゴム層組成物溶液の他の作製方法としては、有色顔料分散液とシリコーン液、またはシリコーン希釈液を予め別々に作製しておき、後に両液を混合する方法が挙げられる。有色顔料分散液は、少なくとも顔料分散剤および溶剤を含有する溶液中に、有色顔料、必要により微粒子を添加し、上述の分散機で均一に分散混合することにより得られる。一方、シリコーン液は、水酸基またはビニル基含有オルガノポリシロキサン、架橋剤、反応触媒、および必要に応じてその他の添加剤(反応抑制剤など)を混合することにより得られる。また、得られたシリコーン液を溶剤で希釈することで、シリコーン希釈液を得ることができる。
【0112】
シリコーンゴム層組成物またはシリコーンゴム層組成物溶液を塗布する際、感熱層表面に付着した水分を可能な限り除去することが接着性の観点から好ましい。具体的には、乾燥ガスを充填、または、連続供給することで水分を除去した空間で、シリコーンゴム層組成物またはシリコーンゴム層組成物溶液を塗布する方法が挙げられる。塗布装置は、感熱層の塗布と同様の装置が使用できる。
【0113】
シリコーンゴム層組成物溶液を塗布する場合には、ついで、シリコーンゴム層組成物溶液を乾燥してシリコーンゴム層を形成する。乾燥や硬化のために加熱処理を行ってもよい。シリコーンゴム層組成物およびシリコーンゴム層組成物溶液は、塗布後、直ちに加熱されることが硬化性や対感熱層接着性の観点から好ましい。
【0114】
得られた平版印刷版原版上に、保護フィルムおよび/または合紙を設けて保管することが、版面保護の観点から好ましい。
【0115】
次に、本発明の平版印刷版原版から平版印刷版を製造する方法の例について説明する。
【0116】
ここで、平版印刷版は、画線部をインキ受容層、非画線部をインキ反発層として、画線部と非画線部とをほぼ同一平面に有し、インキ付着性の差異を利用して画線部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷するための平版印刷版である。
【0117】
水なし平版印刷版を用いた印刷では、地汚れ開始温度が高いほど厳密な温度管理が不溶となり、印刷時の温度管理が容易となる。地汚れとは、印刷版の非画線部にインキが残り、本来インキの付着を意図していない被印刷物の箇所にインキを転写してしまうことを指す。水なし印刷においては、版面温度が高くなるほど地汚れが発生しやすくなるが、地汚れが発生しなければ安定的な印刷が可能となる。水なし印刷は、特にプラスチックシート、表面処理紙等の非吸収性素材に印刷する場合、水の調節が不要なため水あり印刷よりも容易に印刷できると考えられる。地汚れ開始温度については印刷環境にもよるが、30℃以上が好ましく、より好ましくは32℃以上である。30℃以上であれば地汚れなく印刷が可能であり、32℃以上であれば厳密な温度管理が不要になるため、より印刷が容易となる。
【0118】
また、感熱層にポリウレタンを含有することによってクッション性が生まれ、より高い耐刷性が得られる。耐刷性とは、印刷し続けていくことによってシリコーン層が摩耗、またはシリコーン層が剥がれることによって、適切な印刷ができなくなることを指す。
【0119】
平版印刷版の製造方法は、本発明の上記平版印刷版原版に、レーザーを照射した後、物理刺激を与える工程を含むことを特徴とする。
【0120】
まず、レーザーを照射する工程について説明する。本発明の平版印刷版原版を、デジタルデータによって走査されるレーザービームにより、像に従って露光する。平版印刷版原版が保護フィルムを有する場合、保護フィルム上から露光してもよいし、保護フィルムを剥離して露光してもよい。露光工程で用いられるレーザー光源としては、発光波長領域が300nm〜1500nmの範囲にあるものが挙げられる。これらの中でも近赤外領域付近に発光波長領域が存在する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましく用いられる。具体的には、明室での版材の取扱い性などの観点から、780nm、830nm、1064nmの波長のレーザー光が露光に好ましく用いられる。
【0121】
次に、レーザー照射を行った平版印刷版原版に物理刺激を与える工程について説明する。物理刺激を与えることで、レーザー照射部のシリコーンゴム層を除去することができる。物理刺激としては、例えば、(i)現像液を含浸した不織布、脱脂綿、布、スポンジなどで版面を拭き取る方法、(ii)現像液で版面を前処理した後に水道水などをシャワーしながら回転ブラシで擦る方法、(iii)高圧の水や温水、または水蒸気を版面に噴射する方法などが挙げられる。
【0122】
また、本発明の平版印刷版原版に物理刺激を与える工程の前後に、レーザー照射後の平版印刷版原版を処理液で処理する工程を加えても良い。露光後の平版印刷版原版は、前処理液にて露光部の感熱層表面を溶解することができる。前処理液としては、例えば、水や水にアルコールやケトン、エステル、カルボン酸などの極性溶媒を添加したもの、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの少なくとも1種からなる溶媒に極性溶媒を添加したもの、あるいは極性溶媒が用いられる。また、上記の現像液組成には、公知の界面活性剤を添加することも自由に行われる。界面活性剤としては、安全性、廃棄する際のコストなどの点から、水溶液にしたときにpHが5〜8になるものが好ましい。界面活性剤の含有量は現像液の10質量%以下であることが好ましい。このような現像液は安全性が高く、廃棄コストなどの経済性の点でも好ましい。さらに、グリコール化合物あるいはグリコールエーテル化合物を主成分として用いることが好ましく、アミン化合物を共存させることがより好ましい。
【0123】
前処理液、現像液としては、特開昭63−179361号公報、特開平4−163557号公報、特開平4−343360号公報、特開平9−34132号公報、特許第3716429号公報に記載された前処理液、現像液を用いることができる。前処理液の具体例としては、PP−1、PP−3、PP−F、PP−FII、PTS−1、PH−7N、CP−1、NP−1、DP−1、CP−Y(何れも東レ(株)製)などを挙げることができる。このような処理液によってレーザー照射部の感熱層表面を溶解する。
【0124】
また、画線部の視認性や網点の計測精度を高める目的から、これらの現像液にクリスタルバイオレット、ビクトリアピュアブルー、アストラゾンレッド等の染料を添加して現像と同時に画線部のインキ受容層の染色を行うこともできる。さらには、現像の後に上記の染料を添加した液によって染色することもできる。
【0125】
上記現像工程の一部または全部は、自動現像機により自動的に行うこともできる。自動現像機としては現像部のみの装置、前処理部、現像部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部がこの順に設けられた装置、前処理部、現像部、後処理部、水洗部がこの順に設けられた装置などを使用できる。このような自動現像機の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(何れも東レ(株)製)などや、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示されている自動現像機を挙げることができる。これらを組み合わせて使用してもよい。
【0126】
現像処理された平版印刷版を積み重ねて保管する場合には、版面保護の目的で、版と版の間に合紙を挟んでおくことが好ましい。
【0127】
現像処理された平版印刷版は、画線部と非画線部とをほぼ同一平面に存在させ、画線部をインキ受容性、非画線部をインキ反発性として、インキ付着性の差異を利用して画線部のみにインキを着肉させることできる。この際のインキは送風乾燥を行うインキ(油性インキ)だけでなく、活性エネルギー線の照射により硬化しうるインキ(UVインキ、LEDインキ)も使用することができる。活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などをあげることができるが、反応速度が速く、エネルギー線発生装置が比較的安価である観点から、紫外線を照射することが好ましい。紫外線は一般的に波長が100〜400nmの電磁波を指す。光源としては、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDなどが使用できるが、特に限定されない。光源の中でも消費電力の観点から波長域300nm〜450nmの照射を行う、UV−LEDが好ましい。着肉したインキを、紙などの被印刷体に直接転写する方法、またはブランケットを介して転写することで印刷するオフセット印刷を用いることで、被印刷体に任意の画像を形成し、印刷物を製造することができる。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。各実施例・比較例における評価は次の方法で行った。
【0129】
(1)平版印刷版原版のTEM観察
レーザー照射前の平版印刷版原版から超薄切片法によって試料を作製した。透過型電子顕微鏡:H−1700FA型((株)日立ハイテクノロジーズ製)を使用して、加速電圧100kV、倍率2000倍で感熱層断面を観察した。保護膜、シリコーンゴム層、感熱層、断熱層の平均膜厚は、以下に記載の方法により計測した。
【0130】
(1−1)保護膜、シリコーンゴム層、感熱層、断熱層の平均膜厚
超薄切片法により得られた平版印刷版原版の垂直断面のTEM写真において、ランダムに選んだ10箇所について保護膜、シリコーンゴム層、感熱層、断熱層の膜厚を計測し、その数平均値を平均膜厚とした。
【0131】
(2)感度の評価
(2−1)レーザー照射条件
得られた平版印刷版原版(1030×800mm)を、露光機“PlateRite”8800E(SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ製)に装着し、照射エネルギー 120mJ/cm
2、2400dpi(175線)の解像度でポジ画像:10μm×10μmを1ドットとする最小網点(0.5%)、0.5%の網点を横に2ドット繋げた網点(1.0%)、0.5%の網点を縦、横2ドット繋げた4ドットの網点(2.0%)を各100個レーザー照射した。ここでドット(%)は網点のサイズを表す。
【0132】
(2−2)自動現像機の条件
上述の(2−1)記載の方法により得られたレーザー照射後の平版印刷版原版を、自動現像機“TWL−1160F”(東レ(株)製)を使用し、下記条件で現像を行った。
【0133】
前処理液(45℃):CP−Y(東レ(株)製)
現像液(室温):水道水
後処理液(室温):PA−1(東レ(株)製)
通版速度:80cm/分の条件
ただし、実施例6のみ、下記条件で現像を行った。
【0134】
前処理液(45℃):CP−Y(東レ(株)製)
現像液(室温):水道水
後処理液(室温):水道水
通版速度:80cm/分
露光現像にて得られた印刷版において、各網点のシリコーンゴム層が剥がれている個数を確認し、シリコーンゴム層が剥がれている個数が多い程網点再現性に優れると判定し、4ドットの再現性100%以上にて実用可能と判断した。
【0135】
(3)印刷条件
(3−1)油性印刷
上述の(2−2)記載の方法により得られた印刷版をオフセット印刷機小森スプリント4色機((株)小森コーポレーション製)に取り付け、(株)T&K TOKA製“アルポ”(登録商標)GTを用いて印刷試験を行った。ベタ印刷部の反射濃度が1.8(墨)になるように油性インキの供給量を制御し、油性インキの転写した薄紙(コート紙)を送風乾燥を行うことで印刷物を得た。
【0136】
(3−2)UV印刷
(株)T&K TOKA製“UV171CT−TW”を用いて、印刷機“オリバー266EPZ”(桜井グラフィックシステムズ(株)製)の排紙部に、速度可変式コンベアを内蔵した紫外線照射装置を連結したもので印刷試験を行った。ベタ印刷部の反射濃度が1.8(墨)になるようにUVインキの供給量を制御し、UVインキの転写した薄紙(コート紙)に活性エネルギー線照射を行うことで印刷物を得た。
【0137】
(3−3)LEDUV印刷
内外インキ製造(株)製“リッチキュア WL LED”を用いて、印刷機“オリバー266EPZ”(桜井グラフィックシステムズ(株)製)の排紙部に、速度可変式コンベアを内蔵した波長300〜450nmの活性エネルギー線照射を行う照射装置を連結したもので印刷試験を行った。ベタ印刷部の反射濃度が1.8(墨)になるようにLEDUVインキの供給量を制御し、LEDUVインキの転写した薄紙(コート紙)に波長300〜450nmの活性エネルギー線照射を行うことで印刷物を得た。
【0138】
(4)地汚れ開始温度の測定
上記(3)の印刷において、チラーを用いてインキローラーの温度を制御し、水なし平版印刷版の版面温度を変更した。版面温度は非接触温度計で測定し、温度ごとに非画線部の地汚れを確認した。
【0139】
(5)耐刷の評価
上述の(3)の印刷において、墨、藍、紅、黄インキを用いて、上質紙(62.5g/菊)にて印刷を行った。印刷物の汚れおよび印刷終了後の版面のシリコーンゴム層及び感光層の損傷状態を目視観察することによって評価した。
【0140】
(6)感熱層の熱分解性評価
マクロ熱重量測定装置TGA−50((株)島津製作所製)(以下、TGA)にて熱に対する分解性の測定を行った。測定は以下の手順にて温度上昇を行い、重量減少率(100−(所定の温度での重量/初期重量)*100)が30%以上となる温度を測定した。(以下、熱分解温度)
TGAの温度を20℃/minの加熱温度で温度上昇し、100℃の状態で20minホールドした。その後20℃/minの加熱温度で温度上昇し、200℃の状態で20minホールドした。さらに、10℃/minの加熱温度で温度上昇し、590℃の状態で1minホールドした。(測定条件:圧空下、20℃、20(mL/min))
(7)傷耐性の評価
上記(3)の印刷にて得られた印刷物上非画線部欠点の有無を確認した。
【0141】
(合成例1)ポリウレタンAの合成
精留塔、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製丸底フラスコに、窒素ガスを導入しながら、ガラス製フラスコにエチレンカーボネートを100質量部、1,4−ブタンジオールを100質量部、1,6−ヘキサンジオールを20質量部仕込み、触媒としてチタンテトラブトキシド0.02質量部を加えながら室温で混ぜて系内均一にし、系内温度を150℃から160℃へ徐々にあげながら20時間反応を行った。その後、0.5kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートを留去しながら、170℃でさらに10時間反応し、主鎖を4とするポリカーボネートジオールA(数平均分子量2000)を得た。
【0142】
精留塔、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製丸底フラスコに、窒素ガスを導入しながら、ポリカーボネートジオールA200質量部、1,4−ブタンジオール(和光純薬工業(株)製)20質量部を仕込み、大気圧下で撹拌した。さらにメチルエチルケトン60質量部を室温で混ぜて系内均一にし、系内温度を50℃とした後、イソホロンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製)20質量部を仕込み、80℃で4時間反応を行い、さらに、メチルエチルケトン275質量部、シクロヘキサノン335質量部を加えた。結果、ポリカーボネートジオールA、ブタンジオールを多価アルコールとし、イソホロンジイソシアネートをポリイソシアネートとするポリウレタンB溶液(樹脂濃度30%)を得た。得られたポリウレタンA溶液をテトラヒドロフランにて樹脂濃度10%まで希釈し、熱風乾燥機150℃にて2時間乾燥し、ポリウレタンB(樹脂濃度100%)を得た。
【0143】
(合成例2)ポリウレタンBの合成
精留塔、撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたガラス製丸底フラスコに、窒素ガスを導入しながら、ETERNACOLL UH−200(1,6−ヘキサンジオールをベースとしたポリカーボネートジオール、数平均分子量2000)(宇部興産(株)製)200質量部、1,4−ブタンジオール(和光純薬工業(株)製)20質量部を仕込み、大気圧下で撹拌した。さらにメチルエチルケトン60質量部を室温で混ぜて系内均一にし、系内温度を50℃とした後、イソホロンジイソシアネート(和光純薬工業(株)製)20質量部を仕込み、80℃で4時間反応を行い、さらに、メチルエチルケトン275質量部、シクロヘキサノン335質量部を加えた。結果、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ブタンジオールを多価アルコールとし、イソホロンジイソシアネートをポリイソシアネートとするポリウレタンA溶液(樹脂濃度30%)を得た。得られたポリウレタンB溶液をテトラヒドロフランにて樹脂濃度10%まで希釈し、熱風乾燥機150℃にて2時間乾燥し、ポリウレタンA(樹脂濃度100%)を得た。
【0144】
(
参考例1)
感熱層組成物を含む感熱層組成物溶液を乾燥する工程を含む、以下の製造方法によって、平版印刷版原版を以下の方法で作製した。
【0145】
厚み0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミニウム(株)製)上に下記の断熱層組成物溶液を塗布し、断熱層を設けた。
【0146】
<断熱層組成物溶液>
(a)ビスフェノールA型エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35質量部
(b)エステル構造ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製):75質量部
(c)アルミニウムトリスエチルアセトアセテート:ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10質量部
(d)炭化水素系界面活性剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製):0.1質量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株):30質量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:960質量部
(g)メチルエチルケトン:350質量部
次いで、下記の感熱層組成物溶液−1を前記断熱層上に塗布し、感熱層を設けた。
【0147】
<感熱層組成物溶液−1>
(a)シアニン化合物:YKR2016(山本化成(株)製):10質量部
(b)有機錯化合物:チタニウム−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製):10質量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):60質量部
(d)ポリウレタン:合成例1にて得られたポリウレタンA(樹脂濃度100%)、(カーボネート構造、主鎖の炭素数4):20質量部
(e)テトラヒドロフラン:900質量部
次いで、塗布直前に調製した下記のシリコーンゴム層組成物溶液を前記感熱層上に設けることで平版印刷版原版を得た。
【0148】
<シリコーンゴム層組成物溶液−1>
(a)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:“TF”22(重量平均分子量100,000、東レダウコーニング(株)製):90.0質量部
(b)シリコーンオイル:KF−96−50cs(粘度平均分子量:3,780、信越化学工業(株)製):0.0質量部
(c)メチルハイドロジェンシロキサンHMS305(GELEST社製):2.95質量部
(d)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:0.88質量部
(e)白金触媒SRX212(東レダウコーニング(株)製):6.17質量部
(f)“アイソパー”E(エクソンモービル社製):900質量部
下記(a)〜(c)をジルコニアビーズ(φ0.3mm)が充填されたビーズミル“スターミル”(登録商標)ミニツェア(アシザワ・ファインテック(株)製)で分散することで紺青分散液を得た。一方、(d)〜(h)を混合することでシリコーン希釈液を得た。紺青分散液を撹拌しながらシリコーン希釈液を加え、均一になるまでよく撹拌した。得られた液を自然脱泡した。
(a)N650紺青(大日精化(株)製):4質量部
(b)“プレンアクト”(登録商標)KR−TTS(味の素ファインテクノ(株)製):1.5質量部
(c)“アイソパー”(登録商標)G(エクソンモービル社製):83質量部
(d)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V52(重量平均分子量155000、GELEST Inc.製):83質量部
(e)メチルハイドロジェンシロキサンSH1107(東レダウコーニング(株)製):4質量部
(f)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3質量部
(g)白金触媒SRX212(東レダウコーニング(株)製):6質量部
(h)“アイソパー”E(エクソンモービル社製):817質量部。
【0149】
作製した平版印刷版原版を上述(2−1)の方法で露光を行い、上述(2−2)の方法で現像したところ0.5%の網点が0個、1.0%の網点が100個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。比較例1と比較し、熱分解温度が、20℃低くなっていることを確認した。また、1.0%の微小網点が100個多く再現し、2.0%の微小網点が40個多く再現していることを確認した。さらに、耐刷性が4.0万枚多く有していることを確認した。他は同様の評価結果が得られた。評価結果を表1に示す。
【0150】
(
参考例2)
感熱層組成物溶液−1中のノボラック樹脂を40質量部に、ポリウレタンを40質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を
作製し、評価した。
【0151】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が80個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較し、1.0%の微小網点が20個再現していないことを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0152】
(
参考例3)
感熱層組成物溶液−1中のノボラック樹脂を70質量部に、ポリウレタンを10質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製し、評価した。
【0153】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が100個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較したところ、同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0154】
(
参考例4)
感熱層組成物溶液−1中のノボラック樹脂を30質量部に、ポリウレタンを50質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製し、評価した。
【0155】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が50個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較し、1.0%の微小網点が50個再現していないことを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0156】
(
参考例5)
感熱層組成物溶液−1中のノボラック樹脂を75質量部に、ポリウレタンを5質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製
し、評価した。
【0157】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が80個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、1.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較し、1.0%の微小網点が20個再現していないことを確認した。また、耐刷性が1.0万枚であり、4.0万枚低いことを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0158】
(
参考例6)
シリコーンゴム組成物溶液−1を以下のシリコーンゴム層組成物溶液−2に変更したこと以外は
参考例5と同様にして、平版印刷版原版を得た。
下記(a)〜(c)をジルコニアビーズ(φ0.3mm)が充填されたビーズミル“スターミル”(登録商標)ミニツェア(アシザワ・ファインテック(株)製)で分散することで紺青分散液を得た。一方、(d)〜(h)を混合することでシリコーン希釈液を得た。紺青分散液を撹拌しながらシリコーン希釈液を加え、均一になるまでよく撹拌した。得られた液を自然脱泡した。
(a)N650紺青(大日精化(株)製):4質量部
(b)“プレンアクト”(登録商標)KR−TTS(味の素ファインテクノ(株)製):1.5質量部
(c)“アイソパー”(登録商標)G(エクソンモービル社製):83質量部
(d)α,ω−ジビニルポリジメチルシロキサン:DMS−V52(重量平均分子量155000、GELEST Inc.製):83質量部
(e)メチルハイドロジェンシロキサンSH1107(東レダウコーニング(株)製):4質量部
(f)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3質量部
(g)白金触媒SRX212(東レダウコーニング(株)製):6質量部
(h)“アイソパー”E(エクソンモービル社製):817質量部。
【0159】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が80個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、1.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較し、1.0%の微小網点が20個再現していないことを確認した。また、耐刷性が1.0万枚であり、4.0万枚低いことを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0160】
(
参考例7)
感熱層組成物溶液−1中のノボラック樹脂を20質量部に、ポリウレタンを60質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製し、評価した。
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が0個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ310℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較し、1.0%の微小網点が100個再現していないことを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0161】
(実施例
1)
感熱層組成物溶液−1を以下の感熱層組成物溶液−2に変更したこと以外は
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を得た。
【0162】
<感熱層組成物溶液−2>
(a)シアニン化合物:YKR2016(山本化成(株)製):10質量部
(b)有機錯化合物:チタニウム−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製):10質量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):60質量部
(d)ポリウレタン:合成例2にて得られたポリウレタンB(樹脂濃度100%)、(カーボネート構造、主鎖の炭素数4):20質量部
(e)テトラヒドロフラン:900質量部
<感熱層組成物溶液−2>
(a)シアニン化合物:YKR2016(山本化成(株)製):8質量部
(b)有機錯化合物:チタニウム−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製):3質量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”
(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):60質量部
(d)ポリウレタン:合成例2にて得られたポリウレタンB(樹脂濃度100%)、(カーボネート構造、主鎖の炭素数6):20質量部
(e)アイソパーM(エクソンモービル社製):10重量部
(e)テトラヒドロフラン:900質量部
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が50個、1.0%の網点が100個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。
参考例1と比較して、熱分解温度が、20℃低くなっていることを確認した。また、0.5%の微小網点が50個再現していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0163】
(実施例
2)
シリコーンゴム層組成物溶液−1中のα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンを80質量部に変更し、シリコーンオイルを10質量部に変更した以外は実施例
1と同様にして、平版印刷版原版を得た。
【0164】
実施例
1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が100個、1.0%の網点が100個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が35℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、10.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
1と比較して、0.5%の微小網点が50個再現していることを確認した。また、耐刷性が10.0万であり、5.0万枚向上していることを確認した。また、地汚れ開始温度が3℃向上していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0165】
(実施例
3)
シリコーンゴム層組成物溶液−1中のα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンを55質量部に変更し、シリコーンオイルを35質量部に変更した以外は実施例
1と同様にして、平版印刷版原版を得た。
【0166】
実施例
1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が100個、1.0%の網点が100個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が35℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、10.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
1と比較して、0.5%の微小網点が50個再現していることを確認した。また、耐刷性が10.0万であり、5.0万枚向上していることを確認した。また、地汚れ開始温度が3℃向上していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0167】
(実施例
4)
シリコーンゴム層組成物溶液−1中のα,ω−ジビニルポリジメチルシロキサンを40質量部に変更し、シリコーンオイルを50質量部に変更した以外は実施例
1と同様にして、平版印刷版原版を得た。
【0168】
実施例
1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が100個、1.0%の網点が100個、2.0%の網点が100個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が35℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、7.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点が見られた。実施例
1と比較して、0.5%の微小網点が50個再現していることを確認した。また、耐刷性が7.0万であり、2.0万枚向上していることを確認した。また、地汚れ開始温度が3℃向上していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0169】
(実施例
5)
実施例
1で得られた刷版に上述(3−2)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が30℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、5.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
1と比較して、地汚れ開始温度が2℃低下していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0170】
(実施例
6)
実施例
2で得られた刷版に上述(3−2)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が33℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、10.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
2と比較して、地汚れ開始温度が2℃低下していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0171】
(実施例
7)
実施例
3で得られた刷版に上述(3−2)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が33℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、10.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
3と比較して、地汚れ開始温度が2℃低下していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0172】
(実施例
8)
実施例
2で得られた刷版に上述(3−3)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、10.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
2と比較して、地汚れ開始温度が3℃低下していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0173】
(実施例
9)
実施例
3で得られた刷版に上述(3−3)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、10.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ290℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。実施例
3と比較して、地汚れ開始温度が3℃低下していることを確認した。他は同様の結果であった。評価結果を表1に示す。
【0174】
(比較例1)
感熱層組成物溶液−1を感熱層組成物溶液−3に変更した以外は
参考例1と同様にして平版印刷版原版を得た。
【0175】
<感熱層組成物溶液−3>
(a)赤外線吸収染料:YKR2016(山本化成(株)製):10質量部
(b)有機錯化合物:チタニウム−n−ブトキシドビス(アセチルアセトネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製):10質量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR53195(住友ベークライト(株)製):75質量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331(三洋化成(株)製、エステル構造、主鎖の炭素数4):5質量部
(e)テトラヒドロフラン:900質量部
参考例2と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が0個、2.0%の網点が60個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で印刷を行い、1.0万枚の耐刷性を有していることを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ330℃であった。さらに、上述(7)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。評価結果を表1に示す。
【0176】
(比較例2)
感熱層組成物溶液−3中のノボラック樹脂を20質量部に、ポリウレタンを60質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製し、評価した。
【0177】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が0個、2.0%の網点が10個の網点再現性が得られた。上述(3−1)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が32℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ330℃であった。さらに、上述(7)の方法で溶剤耐性を確認したところシリコーン層が欠落していないことを確認した。評価結果を表1に示す。
【0178】
(比較例3)
感熱層組成物溶液−3中のノボラック樹脂75質量部に、ポリウレタンを5質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製し、評価した。
【0179】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が0個、2.0%の網点が60個の網点再現性が得られた。上述(3−2)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が30℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ330℃であった。さらに、上述(7)の方法で溶剤耐性を確認したところシリコーン層が欠落していないことを確認した。評価結果を表1に示す。
【0180】
(比較例4)
感熱層組成物溶液−3中のノボラック樹脂20質量部に、ポリウレタンを60質量部にした以外は全て
参考例1と同様にして、平版印刷版原版を作製し、評価した。
【0181】
参考例1と同様の評価を行ったところ、0.5%の網点が0個、1.0%の網点が0個、2.0%の網点が10個の網点再現性が得られた。上述(3−3)の方法で印刷を行い、上述(4)の方法で地汚れ開始温度を評価したところ、地汚れ開始温度が29℃であることを確認した。また、上述(5)の方法で傷耐性を確認したところ、非画線部に欠点がないことを確認した。さらに、上述(6)の方法で感熱層の熱分解温度を測定したところ330℃であった。さらに、上述(7)の方法で溶剤耐性を確認したところシリコーン層が欠落していないことを確認した。評価結果を表1に示す。
【0182】
【表1】