特許第6593338号(P6593338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593338磁性を有する2−シアノアクリレート系組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593338
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】磁性を有する2−シアノアクリレート系組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/04 20060101AFI20191010BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20191010BHJP
   C09J 9/00 20060101ALI20191010BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20191010BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   C09J4/04
   C09J11/04
   C09J9/00
   C08L33/14
   C08K3/08
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-554028(P2016-554028)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】JP2015076942
(87)【国際公開番号】WO2016059952
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210656(P2014-210656)
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】及川 宏習
(72)【発明者】
【氏名】安藤 裕史
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第95/020609(WO,A1)
【文献】 特開平02−142875(JP,A)
【文献】 特開昭63−137979(JP,A)
【文献】 特表昭60−502106(JP,A)
【文献】 特開平02−028275(JP,A)
【文献】 特開昭61−155482(JP,A)
【文献】 特開昭60−110774(JP,A)
【文献】 特開平08−124421(JP,A)
【文献】 特公昭47−012860(JP,B1)
【文献】 特開昭60−195174(JP,A)
【文献】 WANG,Z. et al.,Magnetic retraction of bowel by intraluminal injectable cyanoacrylate-based magnetic glue,BioMed Research International,2013年,Article ID 526512,p.1-8
【文献】 ZHAO,L. et al.,Development of the powder reaction moulding process,Journal of Chemical Technology and Biotechnology,2009年,Vol.84, No.3,p.454-460
【文献】 BIRKINSHAW,C. et al.,Reaction molding of metal and ceramic powders,Journal of Chemical Technology & Biotechnology,1996年,Vol.66, No.1,p.19-24
【文献】 JFEテクノリサーチ株式会社,平成23年度ナノマテリアル安全対策調査事業報告書,2012年 3月,p.33-40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08F 6/00−246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数3以下のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステル(a)と、前記2−シアノアクリル酸エステルに分散可能な磁性粉末(b)とを含有し、
前記磁性粉末(b)の含有量は、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100重量 部に対し、5〜500重量部であり、
前記磁性粉末(b)が、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、 オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、及び析出硬化ステンレス鋼からなる群よ り選択される少なくとも1種のステンレス鋼であり、
前記ステンレス鋼の体積基準のメジアン径が、20〜200μmである、磁性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項2】
前記ステンレス鋼の体積基準のメジアン径が、55〜75μmである請求項1に記載の 磁性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【請求項3】
前記ステンレス鋼中の硫黄含有量は0.03重量%以下であり、前記ステンレス鋼中の ニッケル含有量は0.6重量%以下であり、かつ、前記ステンレス鋼中のマンガン含有量 は0.5重量%以下である請求項1又は2に記載の磁性を有する2−シアノアクリレート 系接着剤組成物。
【請求項4】
さらにヒュームドシリカを含有し、前記ヒュームドシリカの含有量は、前記2−シアノ アクリル酸エステル(a)100重量部に対し、1〜30重量部である請求項1〜3のい ずれか1項に記載の磁性を有する2−シアノアクリレート系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2−シアノアクリル酸エステル及び磁性粉末を含有する2−シアノアクリレート系組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2−シアノアクリル酸エステルを含有する2−シアノアクリレート系組成物は、そのアニオン重合性により、被着体表面に付着する僅かな水分等の微弱なアニオンによって重合を開始し、各種材料を短時間で強固に接合することができる。そのため、所謂、瞬間接着剤として、工業用、医療用及び家庭用等の広範な分野において用いられている。従来、2−シアノアクリレート系組成物には、要求される機能を付与するために、安定剤、硬化促進剤、増粘剤、及び可塑剤等の各種成分が配合されているが、前記のアニオン重合性のため、配合可能な成分は限定されている。そのため、接合部分に磁性を持たせるためには、例えば特許文献1のように、予め該接合部分に磁性粉体を充填し、これに2−シアノアクリレート系組成物を塗布して被着体を固定する必要があった。
一方、磁性を有する接着剤組成物としては、従来から各種の接着剤組成物が提案されており、電子部品等の接合部分に磁性を付与するためなどに使用されている。例えば、特許文献2にはエポキシ樹脂にFe、及びFe−Si等の強磁性粉末を配合した強磁性接着剤が開示されている。また、特許文献3には、二液からなるアクリル系接着剤の一方の液に、鉄粉などの強磁性体粉末を配合した接着剤組成物が開示されている。更に、特許文献4には、熱硬化型シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、湿気硬化型樹脂、アクリル樹脂、紫外線硬化型樹脂の少なくとも1種と、Mn−Znフェライト磁性粉末とからなる磁性接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−215476号公報
【特許文献2】特開平1−289883号公報
【特許文献3】特開昭59−91165号公報
【特許文献4】特開平8−120234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の固定方法では、磁性粉末と2−シアノアクリレート系組成物を別々に塗布しなければならず、作業性が悪いうえ、壁面などは磁性粉末を充填することができないという問題がある。特許文献2〜4に開示されるエポキシ樹脂、アクリル樹脂などは、二液硬化型のため混合作業が必要となる。また、特許文献4に開示される熱硬化型シリコーン樹脂や、紫外線硬化型樹脂は、加熱装置や紫外線照射装置が必要となる。特許文献4には、湿気硬化型樹脂も記載されているが、2−シアノアクリレート系組成物に適した磁性粉末については何ら開示されていない。
【0005】
本発明は、前記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、磁性を有する一液常温硬化型の2−シアノアクリレート系組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の磁性粉末を2−シアノアクリル酸エステルに配合することにより、貯蔵安定性が良好な2−シアノアクリレート系組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、その一局面によれば、2−シアノアクリル酸エステル(a)と、前記2−シアノアクリル酸エステルに分散可能な磁性粉末(b)とを含有し、前記磁性粉末(b)の含有量は、前記2−シアノアクリル酸エステル(a)100重量部に対し、5〜500重量部である、磁性を有する2−シアノアクリレート系組成物を提供する。
本発明の好ましい態様によれば、上記磁性粉末(b)は、ステンレス鋼である。
本発明の別の好ましい態様によれば、上記ステンレス鋼は、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、及び析出硬化ステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも1種である。
本発明の更に別の好ましい態様によれば、上記ステンレス鋼の体積基準のメジアン径は、1〜200μmである。
本発明の更に別の好ましい態様によれば、上記磁性を有する2−シアノアクリレート系組成物は、さらにヒュームドシリカを含有し、前記ヒュームドシリカの含有量は、上記2−シアノアクリル酸エステル(a)100重量部に対し、1〜30重量部である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の2−シアノアクリレート系組成物は、2−シアノアクリル酸エステルと、特定の磁性粉末とを含有しているため、製造時の安定性及び貯蔵安定性が良好である。また、前記磁性粉末が、特定のステンレス鋼である場合には、製造時の安定性及び貯蔵安定性がより優れた2−シアノアクリレート系組成物とすることができる。2−シアノアクリレート系組成物が、更にヒュームドシリカを含有する場合は、磁性粉末の沈降を防止することができる。この磁性を有する2−シアノアクリレート系組成物を用いて、様々な被着体に極めて簡便に磁性部を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の2−シアノアクリレート系組成物について詳しく説明する。本発明の2−シアノアクリレート系組成物は、2−シアノアクリル酸エステル(a)と、前記2−シアノアクリル酸エステルに分散可能な磁性粉末(b)とを含有し、前記磁性粉末(b)の含有量は、2−シアノアクリル酸エステル(a)100重量部に対し、5〜500重量部である。
【0010】
前記「2−シアノアクリル酸エステル(a)」としては、この種の2−シアノアクリレート系組成物に一般に使用される2−シアノアクリル酸エステルを特に限定されることなく用いることができる。この2−シアノアクリル酸エステルとしては、2−シアノアクリル酸のメチル、エチル、クロロエチル、n−プロピル、i−プロピル、アリル、プロパギル、n−ブチル、i−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、フェニル、テトラヒドロフルフリル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、2−オクチル、n−ノニル、オキソノニル、n−デシル、n−ドデシル、メトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソプロピル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル、2,2,2−トリフルオロエチル及びヘキサフルオロイソプロピル等のエステルが挙げられる。これらの2−シアノアクリル酸エステルは1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの2−シアノアクリル酸エステルのうち、硬化性に優れることから、炭素数3以下のアルキル基を有する2−シアノアクリル酸エステルが好ましく、2−シアノアクリル酸エチル、2−シアノアクリル酸n−プロピル、又は2−シアノアクリル酸i−プロピルがより好ましい。
【0011】
上記「磁性粉末(b)」は、2−シアノアクリル酸エステルに分散可能な磁性粉末であればよく、特に限定されない。ここで、2−シアノアクリル酸エステルに分散可能とは、磁性粉末を2−シアノアクリル酸エステルに添加した2−シアノアクリレート系組成物が、室温(15〜30℃)で12時間後に流動性を有していることをいう。この磁性粉末としては、鉄粉以外の金属及び合金類、フェライトに代表される金属酸化物などの微粉末が挙げられる。これらの中でも、2−シアノアクリル酸エステルへの分散性の点から、ステンレス鋼が好ましい。更に、強磁性を有することから、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト二相ステンレス鋼、及び析出硬化ステンレス鋼からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。前記ステンレス鋼以外のオーステナイト系ステンレス鋼であっても、加工を繰り返すことにより組織がマルテンサイト化し、磁性を有したステンレス鋼であれば用いることができる。
【0012】
上記ステンレス鋼は鉄を主成分とし、クロム、ニッケル、マンガン、及び硫黄等を含む合金鋼であるが、ステンレス鋼中の硫黄含有量は0.03重量%以下であり、かつ、ニッケル含有量は0.6重量%以下であることが好ましい。また、マンガンは0.5重量%以下であることが好ましい。ステンレス鋼中の硫黄、ニッケル及びマンガンは、2−シアノアクリル酸エステルの重合を促進させる元素であり、できるだけ少ない方が好ましい。ステンレス鋼中の硫黄、ニッケル及びマンガン含有量が前記範囲内であれば、ステンレス鋼を2−シアノアクリル酸エステルに添加した時の分散性や、2−シアノアクリレート系組成物の貯蔵安定性が良好となる。
【0013】
磁性粉末の粒子径は、レーザー回折式粒度分布計で定義することができ、脱イオン水中に分散させた状態で測定し、体積基準で解析したメジアン径を粒子径の代表値として用いることができる。磁性粉末として用いる場合、あまり粒子径が小さいと、2−シアノアクリル酸エステルへの分散性が悪く、また組成物の粘度も高くなり過ぎて扱いにくくなる場合がある。一方、あまり粒子径が大きいと、組成物中で沈降し易くなるため、メジアン径で1〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、20〜100μmであることが更に好ましく、55〜75μmであることが特に好ましい。磁性粉末のメジアン径が55〜75μmの範囲内であると、硬化物がより強力な磁性を発現する。
【0014】
2−シアノアクリレート系組成物における磁性粉末の含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100重量部とした場合に、5〜500重量部である。磁性粉末の含有量は、7〜450重量部であることが好ましく、10〜420重量部であることがより好ましい。磁性粉末の含有量が5重量部未満であると、硬化部分に十分な磁性を持たせることができない。一方、磁性粉末の含有量が500重量部を超えると、2−シアノアクリレート系組成物の流動性が悪く、作業性が低下する傾向にある。また、当該組成物の貯蔵安定性が悪くなる場合がある。
【0015】
2−シアノアクリレート系組成物にはヒュームドシリカを含有させることもできる。このヒュームドシリカは、超微粉(一次粒子径が500nm以下、特に1〜200nm)の無水シリカであり、この無水シリカは、例えば、四塩化ケイ素を原料とし、高温の炎中において気相状態での酸化により生成する超微粉(一次粒子径が500nm以下、特に1〜200nm)の無水シリカであって、親水性の高い親水性シリカと、疎水性の高い疎水性シリカとがある。このヒュームドシリカとしては、いずれも用いることができるが、2−シアノアクリル酸エステルへの分散性がよいため疎水性シリカが好ましい。
【0016】
親水性シリカとしては市販の各種の製品を用いることができ、例えば、アエロジル50、130、200、300及び380(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である)等が挙げられる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ50±15m2/g、130±25m2/g、200±25m2/g、300±30m2/g、380±30m2/gである。また、市販の親水性シリカとしては、レオロシールQS−10、QS−20、QS−30及びQS−40(以上、商品名であり、トクヤマ社製である)等を用いることができる。これらの親水性シリカの比表面積は、それぞれ140±20m2/g、220±20m2/g、300±30m2/g、380±30m2/gである。この他、CABOT社製等の市販の親水性シリカを用いることもできる。親水性シリカの比表面積は、20〜600m2/gであることが好ましい。
【0017】
更に、疎水性シリカとしては、親水性シリカを表面処理して疎水化することにより生成する製品を用いることができる。この親水性シリカの表面の処理は、例えば、親水性シリカの表面に存在するヒドロキシ基と反応して、該表面に疎水基の層を形成し得る化合物、又は親水性シリカの表面に吸着されて、該表面に疎水性の層を形成し得る化合物と、親水性シリカとを溶媒の存在下又は不存在下に接触させ、好ましくは加熱することで行うことができる。
【0018】
親水性シリカを表面処理して疎水化するのに用いる化合物としては、n−オクチルトリアルコキシシラン等の疎水基を有するアルキル、アリール、アラルキル系の各種のシランカップリング剤、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン等のシリル化剤、ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル、ステアリルアルコール等の高級アルコール、及びステアリン酸等の高級脂肪酸などが挙げられる。疎水性シリカとしては、いずれの化合物を用いて疎水化された製品を用いてもよい。
【0019】
市販の疎水性シリカとしては、例えば、シリコーンオイルで表面処理され、疎水化されたアエロジルRY200、R202、ジメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルR974、R972、R976、n−オクチルトリメトキシシランで表面処理され、疎水化されたアエロジルR805、トリメチルシリル化剤で表面処理され、疎水化されたアエロジルRX200、R812(以上、商品名であり、日本アエロジル社製である)及びメチルトリクロロシランで表面処理され、疎水化されたレオロシールMT−10(商品名であり、トクヤマ社である)等が挙げられる。これらの疎水性シリカの比表面積は、それぞれ100±20m2/g、100±20m2/g、170±20m2/g、110±20m2/g、250±25m2/g、150±20m2/g、150±20m2/g、260±20m2/g、120±10m2/gである。疎水性シリカの比表面積は、20〜400m2/gであることが好ましい。
【0020】
2−シアノアクリレート系組成物におけるヒュームドシリカの好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステルを100重量部とした場合に、1〜30重量部である。このヒュームドシリカの更に好ましい含有量は、2−シアノアクリル酸エステルの種類、及びヒュームドシリカの種類等にもよるが、1〜25重量部であり、特に好ましい含有量は2〜20重量部である。ヒュームドシリカの含有量が1〜30重量部であれば、2−シアノアクリレート系組成物の硬化性や接着強さ等を損なうことなく、磁性粉末の沈降を防止することができ、作業性が良好な組成物とすることができる。
【0021】
本発明の2−シアノアクリレート系組成物には、上記成分の他に、従来、2−シアノアクリル酸エステルを含有する組成物に配合して用いられているアニオン重合促進剤、安定剤、増粘剤、可塑剤、着色剤、香料、溶剤、強度向上剤等を、目的等に応じて、組成物の硬化性及び接着強さ等を損なわない範囲で適量配合することができる。
【0022】
アニオン重合促進剤としては、ポリアルキレンオキサイド類、クラウンエーテル類、シラクラウンエーテル類、カリックスアレン類、シクロデキストリン類及びピロガロール系環状化合物類等が挙げられる。ポリアルキレンオキサイド類とは、ポリアルキレンオキサイド及びその誘導体であって、例えば、特公昭60−37836号、特公平1−43790号、特開昭63−128088号、特開平3−167279号、米国特許第4386193号、米国特許第4424327号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、(1)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンオキサイド、(2)ポリエチレングリコールモノアルキルエステル、ポリエチレングリコールジアルキルエステル、ポリプロピレングリコールジアルキルエステル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル等のポリアルキレンオキサイドの誘導体などが挙げられる。クラウンエーテル類としては、例えば、特公昭55−2236号、特開平3−167279号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、トリベンゾ−18−クラウン−6、asym−ジベンゾ−22−クラウン−6、ジベンゾ−14−クラウン−4、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、シクロヘキシル−12−クラウン−4、1,2−デカリル−15−クラウン−5、1,2−ナフト−15−クラウン−5、3,4,5−ナフチル−16−クラウン−5、1,2−メチルベンゾ−18−クラウン−6、1,2−tert−ブチル−18−クラウン−6、1,2−ビニルベンゾ−15−クラウン−5等が挙げられる。シラクラウンエーテル類としては、例えば、特開昭60−168775号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、ジメチルシラ−11−クラウン−4、ジメチルシラ−14−クラウン−5、ジメチルシラ−17−クラウン−6等が挙げられる。カリックスアレン類としては、例えば、特開昭60−179482号、特開昭62−235379号、特開昭63−88152号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、5,11,17,23,29,35−ヘキサ−tert−butyl−37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサヒドロオキシカリックス〔6〕アレン、37,38,39,40,41,42−ヘキサ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔6〕アレン、25,26,27,28−テトラ−(2−オキソ−2−エトキシ)−エトキシカリックス〔4〕アレン等が挙げられる。シクロデキストリン類としては、例えば、公表平5−505835号等で開示されているものが挙げられる。具体的には、α−、β−又はγ−シクロデキストリン等が挙げられる。ピロガロール系環状化合物類としては、特開2000−191600号等で開示されている化合物が挙げられる。具体的には、3,4,5,10,11,12,17,18,19,24,25,26−ドデカエトキシカルボメトキシ−C−1、C−8、C−15、C−22−テトラメチル[14]−メタシクロファン等が挙げられる。これらのアニオン重合促進剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、安定剤としては、(1)二酸化イオウ、メタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル、HBF4及びトリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤、(2)ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、カテコール及びピロガロール等のラジカル重合禁止剤などが挙げられる。これらの安定剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル−2−シアノアクリル酸エステル及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。これらの増粘剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
可塑剤としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソトリデシル、フタル酸ジペンタデシル、テレフタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジイソノニル、トルイル酸デシル、ショウノウ酸ビス(2−エチルヘキシル)、2−エチルヘキシルシクロヘキシルカルボキシレート、フマル酸ジイソブチル、マレイン酸ジイソブチル、カプロン酸トリグリセライド、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、2−シアノアクリル酸エステルとの相溶性が良く、かつ可塑化効率が高いという点から、アセチルクエン酸トリブチル、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、安息香酸2−エチルヘキシル、ジプロピレングリコールジベンゾエートが好ましい。これらの可塑剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、可塑剤の含有量は特に限定されないが、2−シアノアクリル酸エステルを100重量部とした場合に、3〜120重量部であることが好ましく、10〜100重量部であることがより好ましい。可塑剤の含有量が3〜120重量部であれば、2−シアノアクリレート系組成物の硬化物に適度な柔軟性を付与することができる。
【0026】
本発明の2−シアノアクリレート系組成物は、2−シアノアクリル酸エステル、及び磁性粉末の他、必要に応じて上記の成分を混合して、公知の方法で製造することができる。2−シアノアクリレート系組成物を製造後、保管すると、組成によっては磁性粉末が沈降する場合があるが、再度混合すれば使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、また、本発明の主旨を超えない限り、本発明に様々な改変や変更を行うことが可能である。尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、重量基準である。
【0028】
1.評価方法
(1)磁性粉末のメジアン径(d50)
レーザー回折式粒度分布計で測定し、結果を体積基準で解析した。磁性粉末の粒径d50の測定は、まず磁性粉末を脱イオン水に分散し、70Wの超音波で2分以上処理を行った後、レーザー回折式粒度分布計で測定し、結果を体積基準で解析した。
【0029】
(2)組成物の安定性
2−シアノアクリル酸エステルと磁性粉体を混合し、組成物製造時の安定性を評価した。また、この組成物20gをポリエチレン製容器に入れて、23℃、50%RH環境下で保管し、液の流動性(貯蔵安定性)を評価した。評価結果は、流動性が保持されている日数を示す。
【0030】
(3)磁性粉体の沈降
2−シアノアクリル酸エステルと磁性粉体を混合し、磁性粉体の沈降を目視で観察した。また、この組成物20gをポリエチレン製容器に入れて、23℃、50%RH環境下で保管し、液と磁性粉体の分離状態を評価した。評価結果は、目視で分離が見られない時間を示す。
【0031】
(4)磁性
ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂の板(縦50mm×横25mm×厚さ3mm)に、2−シアノアクリレート系組成物100mgを塗布し、室温(15〜30℃)下で硬化させた。この硬化物にネオジウム磁石(直径10mm×厚さ10mm)を近づけて、結合の有無を確認した。○は結合したものであり、×は結合しなかったものを示す。
【0032】
2.2−シアノアクリレート系組成物の製造方法
・実施例1
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を40ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100重量部とする)配合し、これにフェライト系ステンレス鋼(大同特殊鋼社製「SUS410L」、メジアン径61μm、Cr;12.57重量%、Ni;0.10重量%、Mn;0.14重量%、S;0.003重量%)100重量部を配合して、室温(15〜30℃)で1分間撹拌、混合して組成物を製造した。また、製造時の安定性及び貯蔵安定性、並びに磁性を評価した。結果は表1の通りである。
【0033】
・実施例2
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を40ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100重量部とする)配合し、これに増粘剤(ポリメタクリル酸メチル、分子量30万)10重量部を溶解した。この液に実施例1と同じフェライト系ステンレス鋼11重量部を配合して、室温(15〜30℃)で1分間撹拌、混合して組成物を製造した。また、製造時の安定性及び貯蔵安定性、並びに磁性を評価した。結果は表1の通りである。
【0034】
・実施例3〜5及び比較例1〜3
2−シアノアクリレート系組成物の組成を表1〜3のように代えた以外は、実施例1と同様にして組成物を製造して評価した。用いた磁性粉末は以下の通りであり、結果は表1〜3に示した。
SUS430:大同特殊鋼社製 フェライト系ステンレス鋼 メジアン径61μm
(Cr;16.15重量%、Ni;0.12重量%、Mn;0.16重量%、S;0.003重量%)
鉄粉:JFEスチール社製「TK-H」 メジアン径65μm
合金粉末:キンセイマティック社製「JEMK−S」 平均粒径25μm(カタログ値)
酸化二鉄(III)鉄(II):メジアン径76μm
【0035】
・実施例6
2−シアノアクリル酸エチルに、二酸化硫黄を40ppm、ハイドロキノンを1000ppm(2−シアノアクリル酸エチルを100重量部とする)配合し、これに5重量部のヒュームドシリカ[日本アエロジル社製「アエロジルRX200」(商品名)]をディスパーにより分散した。この液に実施例1と同じフェライト系ステンレス鋼100重量部を配合して、室温(15〜30℃)で1分間撹拌、混合して組成物を製造した。また、製造時の安定性及び貯蔵安定性、並びに磁性を評価した。結果は表2の通りである。
【0036】
・実施例7〜9
2−シアノアクリレート系組成物の組成を表2のように代えた以外は、実施例6と同様にして組成物を製造して評価した。結果は表2の通りである。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
表1、2の結果によれば、2−シアノアクリレート系組成物が、2−シアノアクリル酸エステルに分散可能な磁性粉末を含有する場合(実施例1〜9)は、貯蔵安定性が良好な組成物とすることができる。また、得られた2−シアノアクリレート系組成物の硬化物は、磁性を有することを確認した。一方、表3に示されるように、比較例1〜3の場合は、2−シアノアクリレート系組成物を製造する際に固化し、使用することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の2−シアノアクリレート系組成物は一液常温硬化型の組成物であり、様々な被着体に磁性を有する部分を簡単に形成することができる。そのため、各種産業界の広範な製品、及び技術分野において利用することができる。