特許第6593341号(P6593341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6593341カロテノイド産生生物有機体からのカロテノイドの単離プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593341
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】カロテノイド産生生物有機体からのカロテノイドの単離プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/58 20060101AFI20191010BHJP
   C07C 67/62 20060101ALI20191010BHJP
   C07C 69/16 20060101ALI20191010BHJP
   C12P 5/00 20060101ALI20191010BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20191010BHJP
   C12P 1/02 20060101ALN20191010BHJP
   A61K 31/122 20060101ALN20191010BHJP
【FI】
   C07C67/58
   C07C67/62
   C07C69/16
   C12P5/00
   A61P3/02
   !C12P1/02 D
   !A61K31/122
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-559601(P2016-559601)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公表番号】特表2017-516750(P2017-516750A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015056594
(87)【国際公開番号】WO2015144831
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2018年1月19日
(31)【優先権主張番号】14162365.2
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】トレガノワン, ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】サントス, カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ケスラー, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】グレンフェル‐リー, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トニアート, クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】シャファー, クリスチャン
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/018896(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/077105(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0161826(US,A1)
【文献】 米国特許第06504067(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/58
A61P 3/02
C07C 67/62
C07C 69/16
C12P 5/00
A61K 31/122
C12P 1/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程
(i)少なくとも1種の溶媒(I)によるバイオマスからのカロテノイドの抽出、および
(ii)任意選択で、前記溶媒(I)と混和性でない少なくとも1種の溶媒(II)を用いる少なくとも1つの洗浄工程、および
(iii)任意選択で、前記カロテノイドを含む得られた溶液の乾燥
を含むカロテノイド産生生物有機体からのカロテノイドの単離のためのプロセスであって、前記工程(i)の後にブレンステッド酸の水溶液を用いる少なくとも1つの洗浄工程が実施される(工程(i’))こと、ならびに、前記ブレンステッド酸が、クエン酸、酒石酸およびマレイン酸からなる群から選択されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記ブレンステッド酸の水溶液の濃度が、前記水溶液の総重量に基づき0.5〜10重量%(wt%)の間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プロセスが、バッチ式または連続式で実施される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記抽出(工程(i))が、通常、前記溶媒の沸点未満の温度で実施される、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記バイオマスからのカロテノイドの抽出が、少なくとも1種の水不混和性溶媒において実施される、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記バイオマスからのカロテノイドの抽出が、CHCl、クロロホルム、n−ヘプタンおよびn−ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒において実施される、請求項に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも洗浄工程(工程(ii))が、工程(i)の後ならびに工程(i’)の前および/または後に実施される、請求項1〜のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、カロテノイド産生生物有機体からカロテノイドを単離するための改善されたプロセス、およびそのようなカロテノイドを含む製剤、および飼料製品(またはプレミックス)におけるそのような固体製剤の使用に関する。
【0002】
カロテノイドは、光合成生物(例えば、植物、藻類、シアノバクテリア)および一部の真菌を含む特定の生物有機体によって天然に産生される、黄から赤の色の範囲にある有機色素である。カロテノイドは、ニンジンの橙色、ならびにフラミンゴおよびサケにおける淡紅色、ならびにロブスターおよびシュリンプにおける赤色の原因である。しかしながら、動物はカロテノイドを産生し得ず、それらを食餌によって得なければならない。
【0003】
カロテノイド色素(例えば、β−カロテンおよびアスタキサンチン)は、食料および飼料原料の成分として工業的に使用されており、栄養機能を果たし、その上消費者受容性を高める。例えば、アスタキサンチンは、サケ養殖において、それらの野生の相当物に特徴的な淡紅色/赤色色素を与えるために広く使用されている。一部のカロテノイドは、例えばビタミンA前駆体または抗酸化剤として、潜在的な健康上の利益を提供する(例えば、Jyonouchi et al.,Nutr,Cancer 16:93,1991;Giovannucci et al.,/.Natl.Cancer Inst.87:1767,1995;Miki,Pure Appl.Chem 63:141,1991;Chew et al.,Anticancer Res.19:1849,1999;Wang et al.,Antimicrob.Agents Chemother.44:2452,2000を参照されたい)。一部のカロテノイド(例えば、アスタキサンチン、β−カロテン、リコペン、ルテインおよびゼアキサンチン)は、現在、栄養補給剤として販売されている。
【0004】
天然カロテノイドは、植物材料の抽出または微生物合成のいずれかによって得られ得るが、ほんの数種類の植物が商業的なカロテノイド生産のために広く使用されているにすぎず、これらの植物におけるカロテノイド合成の生産性は比較的低い。微生物によるカロテノイドの生産の方が、魅力的な生産経路である。カロテノイド産生微生物(=生物有機体)の例としては、藻類(Cyanotech Corp.,Kailua−Kona,Hi.によりNatuRose(商標)という商品名で販売されているヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis);ドナリエラ属種(Dunaliella sp.);トラウストキトリウム属種(Thraustochytrium sp.))、酵母(キサントフィロミセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous)と最近改名されたファフィア・ロドジマ(Phaffia rhodozyma);;ラビリンツラ属種(Labyrinthula sp.);サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)およびヤロウィア・リポリティカ(yarrowia lipolytica))、および細菌(パラコッカス・マークシイ(Paracoccus marcusii)、ブラジリゾビウム属(Bradyrhizobium)、ロドバクター属種(Rhodobacter sp.)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、エスケリキア・コリ(Escherichia coli)およびメチロモナス属種(Methylomonas sp.))が挙げられる。加えて、カロテノイド生合成に関与する遺伝子はよく知られており、種々の宿主細胞(例えば、エスケリキア・コリ(E.coli)、カンジダ・ウティリス(Candida utilis)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、メチロモナス属種(Methylomonas sp.))におけるその異種発現も行われてきたことから、カロテノイドの組換え生産も可能である。これまでのところ、これらの実例うち、工業的用途のために費用効果的に著しい量でカロテノイド生成物を生産するのに適するものは僅かである。
【0005】
本発明は、カロテノイド産生生物有機体からカロテノイドを単離するための改善されたプロセス、およびそのようなカロテノイドを含む製剤、および飼料製品(またはプレミックス)におけるそのような固体製剤の使用に関する。
【0006】
通常、これらの生物有機体は、カロテノイド、レチノール化合物または他の小分子親油性物質を産生して、その乾燥細胞重量の1%以上まで産生化合物を蓄積する。
【0007】
現在、カロテノイドは次のように得られている:
生物有機体がカロテノイドの産生を終了した後に、そのカロテノイドを単離し、洗浄し、次いで、所望の適用形態にさらに製剤化する。
【0008】
驚くべきことに、我々は、単離されたカロテノイドがブレンステッド酸の水溶液を用いる洗浄工程で少なくとも1回処理される場合に、得られるカロテノイドがより優れた特性(例えば、当該プロセスからの所望されない親油性残留物がより少ないことによる、より優れた製剤(安定したエマルジョン)を結果としてもたらす結晶形態の純度)を有することを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、以下の工程
(i)少なくとも1種の溶媒(I)によるバイオマスからのカロテノイドの抽出、および
(ii)任意選択で、溶媒(I)と混和性でない少なくとも1種の溶媒(II)を用いる少なくとも1つの洗浄工程、および
(iii)任意選択で、カロテノイドを含む得られた溶液の乾燥
を含むカロテノイド産生生物有機体からのカロテノイドの単離のためのプロセス(P)であって、工程(i)の後にブレンステッド酸の水溶液を用いる少なくとも1つの洗浄工程が実施される(工程(i’))ことを特徴とするプロセス(P)に関する。
【0010】
ブレンステッド酸がリン酸および有機酸からなる群から選択されるプロセスが好ましい。
【0011】
より好ましくは、ブレンステッド酸は、有機酸である。
【0012】
より好ましくは、ブレンステッド酸は、クエン酸、酒石酸およびマレイン酸からなる群から選択される。
【0013】
したがって、本発明は、ブレンステッド酸がリン酸および有機酸からなる群から選択されるプロセス(P)である、プロセス(P)に関する。
【0014】
したがって、本発明は、ブレンステッド酸が有機酸であるプロセス(P)である、プロセス(P)に関する。
【0015】
したがって、本発明は、ブレンステッド酸がクエン酸、酒石酸およびマレイン酸からなる群から選択されるプロセス(P)である、プロセス(P)に関する。
【0016】
本発明に従うプロセスにおけるブレンステッド酸の水溶液の濃度は様々であり得る。ブレンステッド酸の水溶液の濃度は、通常、水溶液の総重量に基づき10重量%(wt%)までである。通常、ブレンステッド酸の濃度は水溶液の総重量に基づき少なくとも0.01wt%であり、好ましくは、ブレンステッド酸の濃度は0.01〜10wt%であり、より好ましくは1〜5wt%である。
【0017】
したがって、本発明は、ブレンステッド酸の水溶液の濃度が水溶液の総重量に基づき0.01〜10重量%(wt%)の間、好ましくは水溶液の総重量に基づき1〜5wt%の間であるプロセス(P)、(P)、(P)または(P)である、プロセス(P)に関する。
【0018】
本発明に従うプロセスは、バッチ式でも連続式でも実施され得る。そのような柔軟性もまた、大きな利点である。
【0019】
得られる結晶は、先行技術に従うプロセスによって得られるものよりも優れた特性を確かに有する。
【0020】
抽出(工程(i))は、通常、周囲温度(20〜25℃)で実施される。しかし、このプロセスは、(任意選択で加圧下において)より高いまたはより低い温度でも実施され得るであろう。
【0021】
好ましくは、このプロセスは、抽出のために使用される溶媒の沸点未満の温度で実施される。
【0022】
好ましくは、バイオマスからのカロテノイドの抽出は、少なくとも1種の溶媒において実施される(工程(i))。この溶媒または溶媒混合物は、好ましくは水不混和性である。
【0023】
工程(i)に好適な溶媒は、例えば、CHCl、クロロホルム、n−ヘプタンおよびn−ヘキサンである。
【0024】
したがって、本発明は、バイオマスからのカロテノイドの抽出が、水不混和性の少なくとも1種の溶媒において実施される(工程(i))プロセス(P)、(P)、(P)、(P)または(P)である、プロセス(P)に関する。
【0025】
したがって、本発明は、バイオマスからのカロテノイドの抽出が、CHCl、クロロホルム、n−ヘプタンおよびn−ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒において実施される(工程(i))プロセス(P)、(P)、(P)、(P)、(P)または(P)である、プロセス(P)に関する。
【0026】
抽出(工程(i))は、通常、周囲温度(20〜25℃)で実施される。しかし、このプロセスは、(任意選択で加圧下において)より高いまたはより低い温度でも実施され得るであろう。
【0027】
好ましくは、このプロセスは、(圧力の使用を必要としないようにするために)抽出のために使用される溶媒の沸点未満の温度で実施される。
【0028】
バイオマスは、そのままで抽出されることもできるし、バイオマスは、最初に粉砕され(かつ任意選択で乾燥され)、次いで抽出されることもできるし、バイオマスは、乾燥され(かつ任意選択で粉砕され)、次いで抽出されることもできるし、バイオマスは、粉砕されると同時に抽出されることもできる。これらの手順のうちの任意のものを組み合わせることも可能である。
【0029】
本発明に従うプロセスはまた、1つ以上のさらなる洗浄工程も含み得る。これは、本発明の不可欠な特徴ではないが、これは、得られるカロテノイドの品質をさらに改善し得る。
【0030】
そのような洗浄工程(工程(ii))は、工程(i)の後ならびに工程(i’)の前および/または後に実施される。
【0031】
この洗浄工程は、工程(i)で使用される溶媒(I)と混和性でない少なくとも1種の溶媒(II)を用いて実施される。
【0032】
したがって、本発明は、1つ以上の洗浄工程(工程(ii))が工程(i)の後ならびに工程(i’)の前および/または後に実施されるプロセス(P)、(P)、(P)、(P)、(P)、(P)または(P)である、プロセス(P)に関する。
【0033】
最後に、工程(iii)で、製剤は、乾燥形態のカロテノイドを得るために乾燥され得る。しかし、溶媒中の(または抽出溶媒に分散させた)カロテノイドを使用することも可能である。
【0034】
抽出工程(工程(i))の後に、さらなる工程で溶媒を除去することも可能である。これは、単離プロセス全体が例えば2つの異なる場所で実施される場合に、および/または次の工程の前に抽出物質を貯蔵するために、有用であり得るであろう。輸送および貯蔵は、いかなる溶媒も含まれていない方が簡単である。
【0035】
生物有機体は、カロテノイド(またはさらにレチノール化合物もしくは他の小分子親油性物質)を産生して、その乾燥細胞重量の1%以上まで産生化合物を蓄積する。
【0036】
「生物有機体」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、動物、哺乳動物、昆虫、植物、真菌、酵母、藻類、細菌、シアノバクテリア、古細菌および原生動物の生物有機体を包含する。
【0037】
カロテノイドを産生する生物有機体は、(自然界で見られるように)天然のものでもよく、または、改変されたものであってもよい。
【0038】
好適な生物有機体は、先行技術から、すなわち、国際公開第2006/102342号パンフレットから知られている。
【0039】
「カロテノイド」という用語は、イソプレノイド経路の中間体から誘導される構造的に多様なクラスの色素を意味すると当該技術分野において理解される。カロテノイド生合成におけるコミットメントステップは、ゲラニルゲラニルピロリン酸からのフィトエンの形成である。カロテノイドは、非環式であることもできるし環式であることもでき、かつ酸素を含有していても含有していなくてもよいので、カロテノイドという用語は、カロテンおよびキサントフィルの両方を含む。一般的に、カロテノイドは、5炭素化合物であるIPPから形式的に誘導される共役ポリエン炭素骨格を有する炭化水素化合物(トリテルペン(C30ジアポカロテノイド)およびテトラテルペン(C40カロテノイド)ならびにそれらの酸素化誘導体、ならびに長さが例えばC35、C50、C60、C70、C80であるまたは他の長さである他の化合物を含む)である。多くのカロテノイドは、強い吸光特性を有しており、長さがC200を超える範囲にあり得る。C30ジアポカロテノイドは、典型的には、イソプレノイド単位の配置が、2個の中央メチル基が1,6−位置関係にあり、残りの非末端メチル基が1,5−位置関係にあるように分子の中央で逆転するような形で連結された、6個のイソプレノイド単位からなる。そのようなC30カロテノイドは、(i)水素化、(ii)脱水素、(iii)環化、(iv)酸化、(v)エステル化/グリコシル化、またはこれらのプロセスの任意の組み合わせにより、共役二重結合の長い中心鎖を有する非環式C3042構造から形式的に誘導され得る。C40カロテノイドは、典型的には、イソプレノイド単位の配置が、2個の中央メチル基が1,6−位置関係にあり、残りの非末端メチル基が1,5−位置関係にあるように分子の中央で逆転するような形で連結された、8個のイソプレノイド単位からなる。そのようなC40カロテノイドは、(i)水素化、(ii)脱水素、(iii)環化、(iv)酸化、(v)エステル化/グリコシル化、またはこれらのプロセスの任意の組み合わせにより、共役二重結合の長い中心鎖を有する非環式C4056構造から形式的に誘導され得る。C40カロテノイドのクラスには、炭素骨格の再配置から生じるか、またはこの構造の一部の(形式的)除去によって生じる特定の化合物も含まれる。600種を超える異なるカロテノイドが自然界で確認されている。
【0040】
カロテノイドとしては、アンテラキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプソルブリン(capsorubrin)、β−クリプトキサンチン、α−カロテン、β−カロテン、δ−カロテン、ε−カロテン、エキネノン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、γ−カロテン、Ψ−カロテン、4−ケト−γ−カロテン、ζ−カロテン、α−クリプトキサンチン、デオキシフレキシキサンチン、ジアトキサンチン、7,8−ジデヒドロアスタキサンチン、ジデヒドロリコペン、フコキサンチン、フコキサンチノール、イソレニエラテン、β−イソレニエラテン、ラクツカキサンチン、ルテイン、リコペン、ミクソバクトン(myxobactone)、ミムラキサンチン、ネオキサンチン、ノイロスポレン、ヒドロキシノイロスポレン、ペリジニン、フィトエン、ロドピン、ロドピングルコシド、ロドキサンチン、4−ケト−ルビキサンチン、シホナキサンチン、スフェロイデン、スフェロイデノン、スピリロキサンチン、トルレン、4−ケト−トルレン、3−ヒドロキシ−4−ケト−トルレン、ウリオリド、ウリオリドアセテート、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン−β−ジグルコシド、ゼアキサンチン、およびC30カロテノイドが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、カロテノイド化合物には、これらの分子の誘導体が含まれ、それらは、ヒドロキシ、メトキシ、オキソ、エポキシ、カルボキシ、またはアルデヒド官能基を含み得る。さらに、含まれるカロテノイド化合物には、エステル(例えば、グリコシドエステル、脂肪酸エステル、アセチル化)およびスルフェート誘導体(例えば、エステル化されたキサントフィル)が含まれる。
【0041】
好ましくは、カロテノイドは、アスタキサンチン、アスタキサンチンの誘導体(例えば、エステル化されたアスタキサンチン)、ゼアキサンチンおよびゼアキサンチンの誘導体(例えば、エステル化されたゼアキサンチン)からなる群から選択される。
【0042】
本発明に従って製造されるカロテノイドは、例えばそれらの生物学的もしくは栄養学的特性(例えば、抗酸化剤など)および/またはそれらの色素特性を活かして、多様な用途のいずれかに利用され得る。例えば、カロテノイドは、製剤(例えば、Bertram,Nutr.Rev.57:182,1999;Singh et al.,Oncology 12:1643,1998;Rock,Pharmacol.Titer.75:185,1997;Edge et al,J.Photochem Photobiol 41:189,1997;米国特許出願公開第2004/0116514号明細書;米国特許出願公開第2004/0259959号明細書参照)、フードサプリメント(例えば、Koyama et al,J.Photochem Photobiol 9:265,1991;Bauernfeind,Carotenoids as colorants and vitamin A precursors,Academic Press,NY,1981;米国特許出願公開第2004/0115309号明細書;米国特許出願公開第2004/0234579号明細書参照)、電気光学用途、動物飼料添加物(例えば、Krinski,Pure Appl.Chem.66:1003,1994;Polazza et al.,Meth.Enzymol.213:403,1992参照)、化粧品(酸化防止剤としておよび/または化粧品(香料を含む)として;例えば、米国特許出願公開第2004/0127554号明細書参照)などにおいて使用され得る。本発明に従って製造されるカロテノイドは、他の化合物(例えば、ステロイドなど)の製造における中間体としても使用され得る。
【0043】
薬学的および/または健康用途の例として、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルが、炎症性疾患、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー、多発性骨髄腫、動脈硬化症、心血管疾患、肝疾患、脳血管疾患、血栓症、新脈管形成関連疾患(癌、リウマチ、糖尿病網膜症含む);黄斑変性および脳障害、高脂血症、腎虚血、糖尿病、高血圧症、腫瘍増殖および転移;ならびに代謝障害の処置において有用であり得る。加えて、カロテノイドおよびアスタキサンチンは、疲労の予防および処置、炎症性疾患からの腎症において腎臓機能を改善するため、ならびに他の生活習慣関連疾患の予防および処置において有用であり得る。なおさらに、アスタキサンチンは、種々の生物学的過程の阻害剤(インターロイキン阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、ホスホリパーゼA2阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、毛細血管内皮細胞増殖阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤を含む)としての役割を果たすことが見出された。例えば、2006年1月26日公開の特開2006−022121号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301156号);2006年1月19日公開の特開2006−016408号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301155号);2006年1月19日公開の特開2006−016409号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301157号);2006年1月19日公開の特開2006−016407号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301153号);2006年1月12日公開の特開2006−008717号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301151号);2006年1月12日公開の特開2006−008716号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301150号);2006年1月12日公開の特開2006−008720号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301158号);2006年1月12日公開の特開2006−008719号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301154号);2006年1月12日公開の特開2006−008718号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301152号);2006年1月12日公開の特開2006−008713号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301147号);2006年1月12日公開の特開2006−008715号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301149号);2006年1月12日公開の特開2006−008714号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301148号);および2006年1月12日公開の特開2006−008712号公報(2005年10月17日出願の特願2005−301146号)を参照されたい。
【0044】
本発明に従うプロセスによって得られるような結晶形態のカロテノイドは、カロテノイドに典型的に適用される方法によってさらに製剤化され得る。
【0045】
例えば、それらは、液体、ゲル様または固体の製剤において使用され得る。それらは、エマルジョン/分散体または任意の他の一般的に知られている形態として製剤化され得る。
【0046】
したがって、本発明はまた、食品、飼料製品、薬学的製品および/またはパーソナルケア製品の製造における、上記のような本発明に従うプロセスによって得られるカロテノイドの使用に関する。
【0047】
さらに、本発明はまた、食品、飼料製品、薬学的製品および/またはパーソナルケア製品のためのプレミックスの製造における、少なくとも1種の上記のような固体製剤の使用に関する。
【0048】
さらに、本発明はまた、少なくとも1種の上記のような固体製剤を含む食品、飼料製品、薬学的製品および/またはパーソナルケア製品に関する。
【0049】
さらに、本発明はまた、少なくとも1種の上記のような固体製剤を含む(食品、飼料製品、薬学的製品および/またはパーソナルケア製品のための)プレミックスに関する。
【0050】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つものである。
【0051】
部および百分率は全て重量に関する。
【0052】
[実施例]
以下の実施例を、本明細書に記載されているように調製した。
【0053】
[実施例1:アセチル化アスタキサンチン]
バイオマス(ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))をCHClで抽出した。アセチル化アスタキサンチンを含むそうして得られた溶液を、およそ2倍の量の脱イオン水で洗浄した。水相を廃棄した。この洗浄工程を繰り返した。
【0054】
そうして得られた溶液を、クエン酸水溶液(3wt%)で洗浄した。
【0055】
その後、クエン酸溶液を廃棄した。
【0056】
そうして得られた溶液は、(溶液の総重量に基づき)約1.6wt%のアセチル化アスタキサンチンを含んでいた。
【0057】
この溶液を、(乳化剤としてリグニンスルホン酸塩を用いて)エマルジョンを形成するために使用した。このエマルジョンは、(有機)溶媒の除去および噴霧乾燥の後も安定していた。
【0058】
[実施例2 アセチル化アスタキサンチン]
バイオマス(ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))をCHClで抽出した。
【0059】
この溶液を3つに分け、それらを全てクエン酸で洗浄し、その後、溶液を組み合わせて再度クエン酸で洗浄した。
【0060】
この溶液を、(乳化剤としてリグニンスルホン酸塩を用いて)エマルジョンを形成するために使用した。このエマルジョンは、(有機)溶媒の除去および噴霧乾燥の後も安定していた。
【0061】
[実施例3(比較例)アセチル化アスタキサンチン]
バイオマス(ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))をCHClで抽出した。
【0062】
クエン酸洗浄工程を実施しなかった。
【0063】
そうして得られた溶液に(乳化剤としてリグニンスルホン酸塩を用いて)エマルジョンを形成させることが意図された。
【0064】
安定したエマルジョンは得られず、このエマルジョンをさらなる製剤化のために使用することは不可能であった。