(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記アクティブ負荷変調信号の位相を所定の位相方向に所定の値だけ変化させた後、前記アクティブ負荷変調信号が前記リーダライタに届かなかったと判断される場合に、さらに、前記アクティブ負荷変調信号の位相を、前記所定の位相方向とは逆方向に所定の値だけ変化させる
請求項1に記載の受信装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.負荷変調を用いる通信システムの概要および課題(
図1〜
図6)
1.第1の実施の形態(
図7〜
図10)
1.1 構成
1.2 動作
1.3 効果
2.第2の実施の形態(
図11〜
図12)
3.第3の実施の形態(
図13)
4.第4の実施の形態(
図14〜
図15)
5.その他の実施の形態
【0015】
<0.負荷変調を用いる通信システムの概要および課題>
まず、NFC等に適用される負荷変調を用いる通信システムの概要および課題を説明する。
【0016】
まず、
図1および
図2を参照して、パッシブ負荷変調を用いる通信システムの概要を説明する。この通信システムでは、リーダライタ10と受信装置としてのトランスポンダとの間で双方向の通信を行う。トランスポンダは、非接触ICカード等のカード20である。
図1は、リーダライタ10からカード20への信号送信の概念を模式的に示している。
図2は、カード20からリーダライタ10への信号送信の概念を模式的に示している。
【0017】
リーダライタ10は、検出回路11と、送信情報生成部12と、キャリア信号生成部13と、変調器14と、送信アンプ15と、抵抗16と、キャパシタ17と、アンテナコイル18とを有している。
【0018】
カード20は、検出回路21と、アンテナコイル22と、キャパシタ23と、抵抗24と、負荷変調部25と、送信情報生成部26とを有している。
【0019】
キャリア信号生成部13は例えば13.56MHzのキャリア周波数のキャリア信号を生成する。アンテナコイル18とアンテナコイル22は一対のトランスである。カード20とリーダライタ10との間では、アンテナコイル18とアンテナコイル22とにおける結合係数kの磁気結合による無線通信がなされる。
【0020】
図1を参照して、リーダライタ10からカード20へのデータ送信処理について説明する。
図1に示すようにリーダライタ10は、212kbpsの送信情報(信号S1b)を13.56MHzのキャリア信号(信号S1a)に載せた変調信号(信号S1c)を変調器14によって生成する。変調方式としてはASK変調方式が用いられる。変調器14から出力された変調信号は、送信アンプ15、抵抗16、キャパシタ17、およびアンテナコイル18を介してカード20に送信される。カード20は、アンテナコイル22、キャパシタ23、および抵抗24を介してリーダライタ10からの信号S1dを受信する。
【0021】
図2を参照して、カード20からリーダライタ10へのデータ送信処理について説明する。
図2に示すようにリーダライタ10は、13.56MHzのキャリア信号(信号S2a)を、送信アンプ15、抵抗16、キャパシタ17、およびアンテナコイル18を介してカード20に送信する。カード20は、キャリア信号に応答して、212kbpsの送信情報(信号S2b)を負荷変調部25で変調して生成した送信信号(信号S2c)を、抵抗24、キャパシタ23、およびアンテナコイル22を介してリーダライタ10に送信する。リーダライタ10はアンテナ
コイル18を介してカード20からの信号S2dを受信する。
【0022】
カード20からリーダライタ10への通信においては、パッシブ負荷変調が用いられる。パッシブ負荷変調では、負荷変調部
25において負荷をオン/オフすることにより反磁界を発生させる。その変化をリーダライタ10で読み取る(検波する)ことにより変調を確認することができる。
【0023】
パッシブ負荷変調では、アンテナの小型化が困難である等の問題から、近年、アクティブ負荷変調による通信技術が注目されている。
【0024】
図3は、アクティブ負荷変調を用いる通信システムの概念を模式的に示している。
この通信システムでは、リーダライタ100と受信装置としての非接触ICカード等のカード200との間で双方向の通信を行う。
【0025】
リーダライタ100は、送信系101と、受信系102とを備えている。送信系101は、アンテナコイル111と、キャリア信号生成部112とを有している。受信系102は、アンテナコイル111を有している。
【0026】
カード200は、アンテナコイル211と、キャパシタ212と、送信情報生成部214を含む負荷変調部213とを有している。
【0027】
リーダライタ100において、キャリア信号生成部112は例えば13.56MHzのキャリア周波数のキャリア信号S1を生成する。アンテナコイル111とアンテナコイル211は一対のトランスである。カード200とリーダライタ100との間では、アンテナコイル111とアンテナコイル211とにおいて結合係数kの磁気結合による無線通信がなされる。
【0028】
図3において、カード200からリーダライタ100へのデータ送信処理について説明する。リーダライタ100は、13.56MHzのキャリア信号S1をアンテナコイル111を介してカード200に送信する。カード200は、キャリア信号S1に応答して、送信情報を負荷変調部213で変調して生成した送信信号を、キャパシタ212、およびアンテナコイル211を介してリーダライタ100に送信する。リーダライタ100はアンテナコイル111を介してリーダライタ100からの送信信号を受信する。
【0029】
カード200からリーダライタ100への通信においては、アクティブ負荷変調が用いられる。アクティブ負荷変調では、パッシブ負荷変調のようにある負荷(抵抗)をオン/オフするわけではなく、リーダライタ100からのキャリア信号S1に同期したキャリア信号S1と同じ周波数のアクティブ負荷変調信号S2を、リーダライタ100側に返信することにより、ある期間における磁束を変化させる。例えば、キャリア信号S1に同期したクロック信号CLKにおけるオンの期間にアクティブ負荷変調信号S2を返信する。パッシブ負荷変調と比較して、直接アンテナコイル211に電流を流すため、アンテナコイル211とアンテナコイル111との間の磁束を大きく変化させることができるという特徴がある。そのため、パッシブ負荷変調よりも通信性能を出すことができ、言い換えればアンテナコイル211とアンテナコイル111とを小型化しても、パッシブ負荷変調と同等の通信性能を保つことができる可能性がある。
【0030】
しかしながら、アクティブ負荷変調には大きな課題がある。
図4は、リーダライタ100からカード200への信号送信の概念を模式的に示している。リーダライタ100からカード200へのキャリア信号S1の送信は、ASK変調により行われる。一方、
図5には、カード200からリーダライタ100への信号送信の概念を模式的に示す。カード200からリーダライタ100へのアクティブ負荷変調信号S2の送信は、アクティブ負荷変調により行われる。アクティブ負荷変調では、キャリア信号S1とアクティブ負荷変調信号S2との合成信号S3が生成される。アクティブ負荷変調では、正弦波の合成定理により合成信号S3の振幅が変化して変調がつくというメカニズムとなっている。そのため、キャリア信号S1とアクティブ負荷変調信号S2との位相差によって変調度が大きく変化する。次の式(1)に正弦波の合成定理を示す。
【0032】
式(1)より、Aはリーダライタ100の送信信号(キャリア信号S1)の振幅、Bはアクティブ負荷変調信号S2の振幅、θはリーダライタ100の送信信号を基準としたときのアクティブ負荷変調信号S2の位相である。すなわち、次の式(2)となる場合は、アクティブ負荷変調信号S2が合成されても振幅が全く変化しない、すなわち振幅での変調が全く見えなくなることを意味する。
【0034】
これを簡単化すると、次の式(3)で示す条件で振幅NULLが発生すると言える。
【0036】
このように、アクティブ負荷変調では、位相関係によって変調度が大きく変化することが分かる。
【0037】
ここで、アンテナコイル111,211からなる結合係数kの共振回路300における位相関係のメカニズムを図
6に示す。図
6において、リーダライタ100からの送信信号(キャリア信号S1)を信号A、共振回路300を経た後のキャリア信号S1を信号A’とする。また、カード200からのアクティブ負荷変調信号S2を信号B、共振回路300を経た後の合成信号S3を信号B’とする。
【0038】
リーダライタ100から共振回路300を経た後の信号A’は、位相がX°進む(または遅れる)。カード200側では、共振回路300の位相進み(遅れ)をX°としたときに、X°進んだ位相を基準としてアクティブ負荷変調信号S2を生成する。この場合、共振回路300を経てリーダライタ100側で信号が合成された後の合成信号S3の段階で、元のキャリア信号S1に対して位相が2*X°進んでいることとなる。もしこの位相変化Xが固定であれば,式(2)より常に変調が大きな位相を選択するようにカード200側は調整することができる。例えば信号周波数と共振周波数とが一致している理想的な並列共振回路では位相Xは90°である。
【0039】
しかしながら、NFCによる通信システムでは、共振回路300は理想的な並列共振回路ではない。リーダライタ100とカード200との位置関係により結合係数kは変化し、各々の共振周波数も製造ばらつきや対向時の筐体金属影響で変化する。例えば簡易な並列共振モデルでシミュレーションを行うと、結合係数kが0.01のときに位相遅れは約90°であるが、結合係数kが0.5では位相遅れが53°であった。また、受信側(カード側)共振周波数が±1MHzずれると±10°の位相変化が見られた。送受信側で±1MHz共振周波数がずれると位相変化は±20%、つまり幅で40%という大きな変化幅になり得る。この場合、一部のリーダライタ100では固定位相で対応できる可能性がある。しかしながら、世界には多くのリーダライタ100があるため意図的に共振周波数をずらすような特殊なリーダライタ100があった場合に、固定位相では適切でない位相関係となってしまい、所望の通信特性が得られない可能性がある。
【0040】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 構成]
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る通信システムの一構成例を示している。
本実施の形態に係る通信システムは、キャリア信号S1を送信するリーダライタ1と、キャリア信号S1に応答して変調信号をリーダライタ1に返信する受信装置とを備えている。受信装置は、非接触ICカード等のカード2であってもよい。
【0041】
リーダライタ1は、アンテナコイル31と、キャリア信号生成部41と、アンプ部42と、キャパシタ43と、復調回路44とを有している。
【0042】
カード2は、アンテナコイル32と、負荷変調部50と、キャパシタ51と、復調回路52と、制御部53とを有している。負荷変調部50は、CDR(Clock Data Recovery)回路54と、位相調整部55と、アンプ部56と、スイッチング部57とを有している。
【0043】
リーダライタ1において、キャリア信号生成部41は例えば13.56MHzのキャリア周波数のキャリア信号S1を生成するようになっている。アンテナコイル31とアンテナコイル32は一対のトランスであり、
図6と略同様の共振回路300を構成している。カード200とリーダライタ100との間では、アンテナコイル31とアンテナコイル32において結合係数kの磁気結合による無線通信がなされる。
【0044】
図7において、カード2からリーダライタ1へのデータ送信処理を行う際には、リーダライタ1は、13.56MHzのキャリア信号S1を、アンプ部42、キャパシタ43、およびアンテナコイル31を介してカード2に送信する。カード2は、キャリア信号S1に応答して、送信情報を負荷変調部50で変調して生成した送信信号を、キャパシタ51、およびアンテナコイル32を介してリーダライタ1に送信する。リーダライタ1はアンテナコイル31を介して
カード2からの送信信号を受信し、復調回路44で応答信号として復調する。
【0045】
リーダライタ1からカード2へのキャリア信号S1の送信は、ASK変調により行われる。カード2からリーダライタ1への通信においては、アクティブ負荷変調が用いられる。負荷変調部50では、リーダライタ1からのキャリア信号S1に同期したキャリア信号S1と同じ周波数のアクティブ負荷変調信号S2を、リーダライタ1側に返信することにより、ある期間における磁束を変化させる。例えば、キャリア信号S1に同期したクロック信号CLKにおけるオンの期間にアクティブ負荷変調信号S2を返信する。アクティブ負荷変調の原理は、
図5を用いた上記説明の通りである。
【0046】
制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断される場合に、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を変化させた後に、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行うよう、負荷変調部50を制御するようになっている。制御部53は例えば、アクティブ負荷変調信号S2の位相を所定の値、例えば90°だけ変化させるようになっている。
【0047】
制御部53は例えば、リーダライタ1からの再送要求を受信した場合、またはリーダライタ1からのアクティブ負荷変調信号S2に対する応答が一定時間無かった場合に、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断するようになっている。
【0048】
負荷変調部50において、CDR回路54は、キャリア信号S1に同期したクロック信号CLKを生成するようになっている。位相調整部55は、制御部53からの制御に基づいて、アクティブ負荷変調信号S2の位相を可変するようになっている。なお、CDR回路54は、キャリア信号S1との同期をとるための回路の一例であり、これに限るものではない。例えばPLL(Phase Locked Loop)回路であってもよい。また、位相調整部55は、例えば可変遅延(variable delay)回路であってもよいが、位相を可変するものであれば、これには限らない。
【0049】
[1.2 動作]
図8を参照して、本実施の形態に係る通信システムにおいて、カード2からリーダライタ1へデータ送信する場合の処理動作の一例を説明する。
【0050】
まず、ASK変調により、リーダライタ1からキャリア信号S1のデータ送信が行われる(ステップS11)。リーダライタ1は、キャリア信号S1がカード2において正しく受信されたか否かを判断する(ステップS12)。リーダライタ1は、キャリア信号S1が正しく受信されなかったと判断した場合(ステップS12;N)、ステップS11の処理に戻る。
【0051】
キャリア信号S1がカード2側において正しく受信された場合(ステップS12;
Y)、次に、カード2側からアクティブ負荷変調による返信が行われる(ステップS13)。このときのキャリア信号S1に対するアクティブ負荷変調信号S2の位相のずれをA°とする。このときの位相A°は、事前に調整された、もしくはモニタした値を基にした値であってもよい。
【0052】
次に、制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたか否かを判断する(ステップS14)。制御部53は例えば、リーダライタ1からの再送要求を受信した場合、またはリーダライタ1からのアクティブ負荷変調信号S2に対する応答が一定時間無かった場合に、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断する。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたと判断した場合(ステップS14;N)、処理を終了する。
【0053】
制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断した場合(ステップS14;Y)、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を上記位相A°からさらに所定の値(+B°)だけ変化させた後に、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行うよう、負荷変調部50を制御する。これにより、カード2側から返信として、位相が上記位相A°からさらに所定の値(+B°)だけずれたアクティブ負荷変調信号S2が再送される(ステップS15)。
【0054】
次に、制御部53は、ステップS14と同様にして、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたか否かを判断する(ステップS16)。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたと判断した場合(ステップS16;N)、処理を終了する。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断した場合(ステップS16;Y)、ステップS15の処理に戻る。
【0055】
ここで、具体的な位相変化の数値について述べる。
図9に、キャリア信号S1に対するアクティブ負荷変調信号S2の位相と変調レベルとの関係の一例を示す。
図9には具体的な数値として、キャリア信号S1およびアクティブ負荷変調信号S2の振幅(V)と、アクティブ負荷変調信号S2の位相(°)と、キャリア信号S1とアクティブ負荷変調信号S2との合成信号S3の振幅(V)と、合成信号S3の変調レベル(V)とを示す。
【0056】
図9では、アクティブ負荷変調の必要な遠方(リーダライタ1とカード2との距離が大きい場合)を想定しているため、合成信号S3の振幅がアクティブ負荷変調信号S2の振幅よりもかなり大きいことが想定される。このような場合は、
図9に示したように、アクティブ負荷変調信号S2の位相が90°および270°のときに変調レベルが小さくなる。また位相が90°おきに変調レベルが最大になったり最小になったりしているのが分かる。これは上記式(3)からも明らかである。
【0057】
図10は、カード2からリーダライタ1へデータ送信する場合に、上記
図9の数値例に基づいてアクティブ負荷変調信号S2の位相を変更する場合の処理動作の一例を示している。
【0058】
図10において、ステップS11〜ステップS14までの処理は、上記
図8と同様である。
図10の処理動作では、
図8におけるステップS15に代えてステップS15Aの処理を行う。ステップS15Aでは、制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を上記位相A°からさらに所定の値として+90°だけ変化させた後に、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行うよう、負荷変調部50を制御する。これにより、カード2側から返信として、位相が上記位相A°からさらに+90°だけずれたアクティブ負荷変調信号S2が再送される。
【0059】
次に、制御部53は、ステップS14と同様にして、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたか否かを判断する(ステップS16)。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたと判断した場合(ステップS16;N)、処理を終了する。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断した場合(ステップS16;Y)、リーダライタ1側においてタイムアウトが発生し、通信が失敗したとみなし(ステップS17)、処理を終了する。
【0060】
リーダライタ1側のタイムアウトの時間の関係で、カード2側における位相の変更を時間的に1回しか変更できないことが想定される場合、
図9に示した値の関係から、位相を+90°だけ変化させるのがよい。そうすれば振幅NULLのようなワーストケースを回避することができる。
【0061】
[1.3 効果]
以上のように、本実施の形態によれば、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断される場合に、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を変化させて再送するようにしたので、通信特性を向上させることができる。
【0062】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。以降の他の実施の形態についても同様である。
【0063】
<2.第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態について説明する。以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成および作用を有する部分については、適宜説明を省略する。
【0064】
本実施の形態における通信システムの基本構成は、
図7と略同様であってもよい。本実施の形態では、制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたと判断されるまで、アクティブ負荷変調信号S2の位相を所定のステップで複数回、変化させるよう、負荷変調部50を制御する。
【0065】
図11を参照して、本実施の形態に係る通信システムにおいて、カード2からリーダライタ1へデータ送信する場合の処理動作の一例を説明する。
【0066】
図11において、ステップS11〜ステップS14までの処理は、上記
図8と同様である。
図11の処理動作では、
図8におけるステップS15に代えてステップS15Bの処理を行う。ステップS15Bでは、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を上記位相A°からさらに所定の値として所定のステップ(+90°/C)だけ変化させた後に、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行う(Cは所定の分割数)。これにより、カード2側から返信として、位相が上記位相A°からさらに所定のステップ(+90°/C)だけずれたアクティブ負荷変調信号S2が再送される。その後、
図8におけるステップS16と同様の処理を行う。
【0067】
カード2側においてアクティブ負荷変調信号S2の位相を複数回変化させることができる余裕がある場合は、
図10のステップS15Aの処理のように位相を1回で+90°変更するのではなく、位相をある所定のステップで変更していき、最大で90°変化させることが効率がよい。例えば位相を3回変更できる場合(C=3の場合)は、位相を30°ずつ変化させていくのがよい。
【0068】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態について説明する。以下では、上記第1の実施の形態または上記第2の実施の形態と同様の構成および作用を有する部分については、適宜説明を省略する。
【0069】
本実施の形態における通信システムの基本構成は、
図7と略同様であってもよい。本実施の形態では、制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2の位相を所定の位相方向に所定の値だけ変化させた後、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断される場合に、さらに、アクティブ負荷変調信号S2の位相を、所定の位相方向とは逆方向に所定の値だけ変化させるよう、負荷変調部50を制御する。
【0070】
図13を参照して、本実施の形態に係る通信システムにおいて、カード2からリーダライタ1へデータ送信する場合の処理動作の一例を説明する。
【0071】
図13において、ステップS11〜ステップS14までの処理は、上記
図8と同様である。
図13の処理動作では、
図8におけるステップS15に代えてステップS15Cの処理を行う。ステップS15Cでは、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を上記位相A°からさらに所定の位相方向(+方向)に所定の値(D°)だけ変化させた後、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行う。これにより、カード2側から返信として、位相が上記位相A°からさらに+D°だけずれたアクティブ負荷変調信号S2が再送される。その後、
図8におけるステップS16と同様の処理を行う。
【0072】
制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたと判断した場合(ステップS16;N)、処理を終了する。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断した場合(ステップS16;Y)、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を上記位相A°からさらに所定の位相方向とは逆方向(−方向)に所定の値(D°)だけ変化させた後、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行う。これにより、カード2側から返信として、位相が上記位相A°からさらに−D°だけずれたアクティブ負荷変調信号S2が再送される(ステップS15D)。その後、処理を終了する。
【0073】
図12は、カード2側の共振周波数と位相との関係の一例を示している。
図12から、カード2側の共振周波数が13.56MHzを中心に逆に変化していることが分かる。共振周波数は、通信システムを構成する部品のばらつきによって変化する。通信システムを構成する部品のばらつきは一般的に±両方向にばらつく。このため、位相の変化が例えば80°になるのか100°になるのかは共振周波数のばらつき次第である。共振周波数がどちらに変化したかをNFC通信中に検知するのは難しい。そこで、上記した
図13の動作のように+方向と−方向とに位相を変化させることにより通信性能が向上する可能性がある。
【0074】
<4.第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態について説明する。以下では、上記第1ないし第3の実施の形態と同様の構成および作用を有する部分については、適宜説明を省略する。
【0075】
図14は、本開示の第4の実施の形態に係る通信システムの一構成例を示している。
本実施の形態における通信システムは、カード2が、
図7における負荷変調部50に代えて負荷変調部50Aを有している。
【0076】
本実施の形態では、カード2における負荷変調部50Aが、キャリア信号S1に応答して、パッシブ負荷変調によるパッシブ負荷変調信号S4を返信するパッシブ負荷変調部60をさらに含んでいる。パッシブ負荷変調
部60は、抵抗61と、スイッチ62とを有している。
【0077】
制御部53は、パッシブ負荷変調信号S4がリーダライタ1に届いたか否かを判断し、届かなかったと判断した場合に、アクティブ負荷変調信号S2による返信を行うよう、負荷変調部50Aを制御する。
【0078】
その他の構成は、
図7と略同様であってもよい。
【0079】
図15を参照して、本実施の形態に係る通信システムにおいて、カード2からリーダライタ1へデータ送信する場合の処理動作の一例を説明する。
【0080】
まず、ASK変調により、リーダライタ1からキャリア信号S1のデータ送信が行われる(ステップS21)。リーダライタ1は、キャリア信号S1がカード2において正しく受信されたか否かを判断する(ステップS22)。リーダライタ1は、キャリア信号S1が正しく受信されなかったと判断した場合(ステップS22;N)、ステップS21の処理に戻る。
【0081】
キャリア信号S1がカード2側において正しく受信された場合(ステップS22;
Y)、次に、カード2側からパッシブ負荷変調による返信が行われる(ステップS23)。このときのキャリア信号S1に対するパッシブ負荷変調の位相のずれをA°とする。このときの位相A°は、事前に調整された、もしくはモニタした値を基にした値であってもよい。
【0082】
次に、制御部53は、パッシブ負荷変調信号S4がリーダライタ1に届いたか否かを判断する(ステップS24)。制御部53は例えば、リーダライタ1からの再送要求を受信した場合、またはリーダライタ1からのパッシブ負荷変調信号S4に対する応答が一定時間無かった場合に、パッシブ負荷変調信号S4がリーダライタ1に届かなかったと判断する。制御部53は、パッシブ負荷変調信号S4がリーダライタ1に届いたと判断した場合(ステップS24;N)、処理を終了する。
【0083】
制御部53は、パッシブ負荷変調信号S4がリーダライタ1に届かなかったと判断した場合(ステップS24;Y)、次に、カード2側からアクティブ負荷変調による返信が行われるよう、負荷変調部50Aを制御する(ステップS25)。
【0084】
次に、制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたか否かを判断する(ステップS26)。制御部53は例えば、リーダライタ1からの再送要求を受信した場合、またはリーダライタ1からのアクティブ負荷変調信号S2に対する応答が一定時間無かった場合に、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断する。制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届いたと判断した場合(ステップS26;N)、処理を終了する。
【0085】
制御部53は、アクティブ負荷変調信号S2がリーダライタ1に届かなかったと判断した場合(ステップS26;Y)、アクティブ負荷変調信号S2のキャリア信号S1に対する位相を上記位相A°からさらに所定の値(+90°)だけ変化させた後に、アクティブ負荷変調信号S2の再送を行うよう、負荷変調部50
Aを制御する。これにより、カード2側から返信として、位相が上記位相A°からさらに所定の値(+90°)だけずれたアクティブ負荷変調信号S2が再送される(ステップS27)。その後、処理を終了する。
【0086】
なお、以上の説明では、最初にパッシブ負荷変調による送信を行い、それに失敗した場合に、アクティブ負荷変調による送信を行うものとしたが、逆の切り替えを行ってもよい。すなわち、最初にアクティブ負荷変調による送信を行い、それに失敗した場合に、パッシブ負荷変調による送信を行うようにしてもよい。
【0087】
<5.その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0088】
例えば、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
リーダライタから送信されたキャリア信号に応答して、前記リーダライタにアクティブ負荷変調によるアクティブ負荷変調信号を返信する負荷変調部と、
前記アクティブ負荷変調信号が前記リーダライタに届いたか否かを判断し、届かなかったと判断した場合に、前記アクティブ負荷変調信号の前記キャリア信号に対する位相を変化させた後に、前記アクティブ負荷変調信号の再送を行うよう、前記負荷変調部を制御する制御部と
を備える受信装置。
(2)
前記制御部は、前記アクティブ負荷変調信号の位相を所定の値だけ変化させる
上記(1)に記載の受信装置。
(3)
前記所定の値は90°である
上記(1)または(2)に記載の受信装置。
(4)
前記制御部は、前記アクティブ負荷変調信号が前記リーダライタに届いたと判断されるまで、前記アクティブ負荷変調信号の位相を所定のステップで複数回、変化させる
上記(1)に記載の受信装置。
(5)
前記制御部は、前記アクティブ負荷変調信号の位相を所定の位相方向に所定の値だけ変化させた後、前記アクティブ負荷変調信号が前記リーダライタに届かなかったと判断される場合に、さらに、前記アクティブ負荷変調信号の位相を、前記所定の位相方向とは逆方向に所定の値だけ変化させる
上記(1)に記載の受信装置。
(6)
前記制御部は、
前記リーダライタからの再送要求を受信した場合、または前記リーダライタからの前記アクティブ負荷変調信号に対する応答が一定時間無かった場合に、前記アクティブ負荷変調信号が前記リーダライタに届かなかったと判断する
上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の受信装置。
(7)
前記負荷変調部は、
前記キャリア信号に応答して、パッシブ負荷変調によるパッシブ負荷変調信号を返信するパッシブ負荷変調部を含む
上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の受信装置。
(8)
前記制御部は、
前記パッシブ負荷変調信号が前記リーダライタに届いたか否かを判断し、届かなかったと判断した場合に、前記アクティブ負荷変調信号による返信を行うよう、前記負荷変調部を制御する
上記(7)に記載の受信装置。
(9)
キャリア信号を送信するリーダライタと、
前記キャリア信号に応答して変調信号を前記リーダライタに返信する受信装置と
を含み、
前記受信装置は、
前記リーダライタから送信された前記キャリア信号に応答して、前記リーダライタにアクティブ負荷変調によるアクティブ負荷変調信号を返信する負荷変調部と、
前記アクティブ負荷変調信号が前記リーダライタに届かなかったと判断される場合に、前記アクティブ負荷変調信号の前記キャリア信号に対する位相を変化させた後に、前記アクティブ負荷変調信号の再送を行うよう、前記負荷変調部を制御する制御部と
を備える通信システム。
【0089】
本出願は、日本国特許庁において2015年2月10日に出願された日本特許出願番号第2015−024053号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0090】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。