(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
半導体ウエハが載置されるウエハ載置面を備えた円板状のウエハ載置台と、前記ウエハ載置台を支持する円板状の支持板と、前記ウエハ載置台と前記支持板との間に挟持された円形薄膜状の発熱モジュールとを有するウエハ加熱用ヒータユニットであって、
前記発熱モジュールは前記ウエハ載置面に平行に延在する複数の発熱回路と、これら複数の発熱回路を挟み込む耐熱性絶縁シートとで構成され、前記複数の発熱回路によって前記ウエハ載置面に画定される複数の加熱ゾーンは、各々その中心位置に測温センサーを有しており、前記測温センサーは前記ウエハ載置台の下面側に設けられており、前記ウエハ載置面の半径方向において互いに隣接するいずれの加熱ゾーン同士においても、それらの両中心位置の離間距離が其々の加熱ゾーンの中心位置から前記加熱ゾーンの境界までの最長距離の50%以上であるウエハ加熱用ヒータユニット。
前記複数の加熱ゾーンは、円形中央部を周方向に3等分した中央部扇状加熱ゾーンと、環状周縁部を周方向に6等分した周縁部扇状加熱ゾーンと、前記円形中央部と前記環状周縁部との間の環状中間部を周方向に6等分した中間部扇状加熱ゾーンとからなる、請求項1に記載のウエハ加熱用ヒータユニット。
前記複数の加熱ゾーンのうち周方向に隣接する加熱ゾーン同士の間及び/又は半径方向に隣接する加熱ゾーン同士の間に前記半導体ウエハのリフトピン用の挿通孔が設けられている、請求項1又は請求項2に記載のウエハ加熱用ヒータユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。本発明のウエハ加熱用ヒータユニットの実施形態は、半導体ウエハが載置されるウエハ載置面を備えた円板状のウエハ載置台と、前記ウエハ載置台を支持する円板状の支持板と、前記ウエハ載置台と前記支持板との間に挟持された円形薄膜状の発熱モジュールとを有するウエハ加熱用ヒータユニットであって、前記発熱モジュールは前記ウエハ載置面に平行に延在する複数の発熱回路を有しており、前記複数の発熱回路によって前記ウエハ載置面に画定される複数の加熱ゾーンは、前記ウエハ載置面の半径方向において互いに隣接するいずれの加熱ゾーン同士においても、前記各加熱ゾーンの中心位置の離間距離が其々の加熱ゾーンの中心位置から前記加熱ゾーンの境界までの最長距離の50%以上であることを特徴としている。これにより、ウエハ載置面上に画定される複数の加熱ゾーンの各々において温度を適切に検出して制御することができるので、該ウエハ載置面の均熱性を高めることが可能になる。
【0012】
上記本発明のウエハ加熱用ヒータユニットの実施形態においては、前記複数の加熱ゾーンは、前記発熱モジュールにおいて、円形中央部を周方向に3等分した中央部扇状加熱ゾーンと、環状周縁部を周方向に6等分した周縁部扇状加熱ゾーンと、前記円形中央部と前記環状周縁部との間の環状中間部を周方向に6等分した中間部扇状加熱ゾーンとからなるのが好ましい。これにより半導体ウエハが載置される載置面の均熱性をより一層高めることができる。また、上記本発明のウエハ加熱用ヒータユニットの実施形態においては、前記複数の加熱ゾーンのうち周方向に隣接する加熱ゾーン同士の間及び/又は半径方向に隣接する加熱ゾーン同士の間に前記半導体ウエハのリフトピン用の挿通孔が設けられているのが好ましい。これにより、リフトピン用の挿通孔による載置面の均熱性への悪影響を抑えることができる。
【0013】
次に、本発明のウエハ加熱用ヒータユニットの一具体例について説明する。
図1に示すように、この本発明の一具体例のウエハ加熱用ヒータユニット10は、半導体ウエハWを載置するウエハ載置面11aを上面に備えた円板形状のウエハ載置台11と、このウエハ載置台11とほぼ同等の外径を有する円板形状からなり、該ウエハ載置台11をその下面側から全面に亘って支持する支持板12と、これらウエハ載置台11と支持板12との間に電気的絶縁状態で挟持され、このウエハ載置台11とほぼ同等の外径を有する円形薄膜状の発熱モジュール13とを有している。このウエハ加熱用ヒータユニット10は、支持板12の下面側に設けられた複数の柱状の脚部20によって支持されている。
【0014】
上記のウエハ載置台11は、ウエハ載置面11aの全面に亘って極めて高い温度均一性、すなわち高い均熱性を実現すべく熱伝導率の高い材質からなるのが好ましく、例えば銅やアルミニウムなどの金属がより好ましい。ウエハ載置台11の材質は、炭化珪素、窒化アルミニウム、Si−SiC、Al−SiCなどの剛性(ヤング率)の高いセラミックスやセラミックス複合体でもよく、これによりウエハ載置面11aの平坦性を常時維持することが可能になるうえ、ウエハ載置面11aの反り防止を目的としてウエハ載置台11を分厚くする必要がなくなるので熱容量を小さくでき、よって昇降温速度を速めることが可能になる。
【0015】
支持板12の材質も、剛性(ヤング率)の高い炭化珪素、窒化アルミニウム、Si−SiC、Al−SiCなどのセラミックスやセラミックス複合体を用いることが好ましい。特に、ウエハ載置台11の材質が金属の場合、後述するように発熱モジュール13を挟んでウエハ載置台11と支持板12とを重ね合わせて機械的に結合することで、ウエハ載置面11aの反りを抑えることができるので、ウエハ載置面11aにおいて高い均熱性と平坦性を兼ね備えたヒータユニット10を実現することができる。
【0016】
これらウエハ載置台11と支持板12とはネジ止めになどによって互いに機械的に結合することが好ましい。特に、ウエハ載置台11と支持板12とが互いに異なる材質からなる場合は、ウエハ載置台11及び支持板12が其々の温度に応じてウエハ載置面11aの方向に自由に熱膨張できるように、例えば支持板12に厚み方向に貫通したネジ孔(図示せず)に下側から雄ネジ(図示せず)を挿通し、ウエハ載置台11の下面側に設けた雌ネジ部(図示せず)に螺合させると共に、該雄ネジの座面とその当接部となる支持板12の下面との間に例えばベアリング(図示せず)を介在させることが好ましい。なお、この場合は発熱モジュール13においても、上記支持板12のネジ孔に対応する位置に上記雌ネジ部の挿通孔が設けられることになる。
【0017】
ここで、上記ネジ止め部は後述の発熱回路の有効径外に配置することが好ましい。このようにすることで、局所的なクールスポットがほとんど生じない温度均一性の高い載置台を実現することができる。また、上記ネジ止め部を発熱回路の有効径内に配置する場合は、複数の加熱ゾーンのうち周方向に隣接する加熱ゾーン同士の間及び/又は半径方向に隣接する加熱ゾーン同士の間に配置し、且つこの配置位置を通るウエハ載置面の半径方向の線分に関して上記区分パターンが線対称となるようにすることが好ましく、これにより上記ネジ止め部による温度均一性の悪化を抑えることができる。上記のネジ止め部は、前述のリフトピン挿通孔と同一の該半径方向の線分上に位置し且つ該線分に関して上記区分パターンが線対称であるのが更に好ましい。上記のように、載置台、発熱ユニット、支持板のいずれか又は全てに干渉する機械部品や電装部品などの特異点が存在する場合は、これら特異点を、発熱回路の有効径外に配置するか、あるいは有効径内の場合は隣接する加熱ゾーンの間であって且つ区分パターンの対称線となる位置に配することで、温度均一性を損なうことなく所望の機能を発揮させることができる。なお、発熱回路の有効径とは、ウエハ載置面11aのうち、後述する発熱回路13aが真下に配されている円形領域の直径である。
【0018】
上記のウエハ載置台11と支持板12との間に挟持される発熱モジュール13は、上記のウエハ載置面11aに平行な面上に延在する複数の発熱回路13aを有している。これら複数の発熱回路13aは、上記のウエハ載置台11及び支持板12から電気的に絶縁状態となるように絶縁体で覆われており、このような形態の発熱モジュール13は、例えばステンレス箔等の導電性金属箔にエッチングやレーザー加工でパターニング加工を施すことで複数の発熱回路13aを形成した後、これを上下から例えばポリイミドシート等の耐熱性絶縁シートで挟み込むことで作製することができる。
【0019】
あるいは、発熱回路13aの回路パターンのライン幅が細かったり、発熱回路13aに用いる導電性金属箔の厚みが薄かったり等の理由により発熱回路13aを取り扱うのが困難な場合は、パターニング加工前の導電性金属箔と電気絶縁のためのポリイミドシート等の耐熱絶縁シートとを予め重ね合わせて熱圧着し、この熱圧着後に導電性金属箔のみをエッチングなどでパターニング加工することで、ベースとなる全面ポリイミドフィルムとパターン箔(すなわち箔状の発熱回路13a)とを一体化させ、この一体化された箔状の発熱回路13aの上から更にポリイミドフィルムを重ね合わせて熱圧着することで上記の発熱モジュール13を作製してもよい。
【0020】
このように、ウエハ載置面11aに平行に延在する複数の発熱回路13aを発熱モジュール13内に設けることによって、ウエハ載置面11aを複数の加熱ゾーンに区分することができる。これら複数の発熱回路13aによって画定される複数の加熱ゾーンの区分パターンには特に限定はないが、円板形状のウエハ載置台11は一般的に中央部よりも表面積の広い周縁部からの放熱が多いため、定常状態では当該周縁部が局所的に低温になりやすい。一方で、半導体ウエハが載置台に載置されると、一般にウエハ径よりも載置台の外径が大きいため、載置台には中央部が外周部よりも低温の同心円状のセンタークール型の温度分布が生じる。その後、載置台の温度は制御系の働きにより所定の温度まで昇温するが、上記の温度分布の影響を受けるので半導体ウエハの過渡的な温度分布も同心円状のセンタークールとなる。このようなセンタークール型の温度分布を補正するため、加熱ゾーンの区分パターンは半径方向に同心円状に分割することが好ましい。また、ヒータユニット10が搭載される真空チャンバーの壁面にはロードロック等が設けられているためウエハ載置台11の周囲の環境は周方向に均等ではない。そこで
図2に示すように、ウエハ載置面11aを同心円状に分割したうえで更に周方向に均等に分割した区分パターンが好ましい。
【0021】
すなわち、この
図2に示す複数の加熱ゾーンの区分パターンでは、ウエハ載置面11aが円形中央部Aと、該円形中央部Aの外側の環状中間部Bと、該環状中間部Bの外側の環状周縁部Cとに同心円状に区分されており、更に、該円形中央部Aは中央部扇状加熱ゾーンA1〜A3として周方向に3等分されており、該環状中間部Bは中間部扇状加熱ゾーンB1〜B6として周方向に6等分されており、該環状周縁部Cは周縁部扇状加熱ゾーンC1〜C6として周方向に6等分されている。
【0022】
更に、本発明の一具体例のヒータユニット10においては、上記のようにして区分された15ゾーンからなる加熱ゾーンは、ウエハ載置面11aの半径方向において互いに隣接するいずれの加熱ゾーン同士においても、それらの両中心位置の離間距離が、其々の加熱ゾーンの中心位置からゾーン境界までの最長距離の50%以上になっている。ここで加熱ゾーンの中心位置とは、円形や三角形等の一般的な形状の場合は幾何学的な中心点と定義することができ、線対称な形状の場合はその対称軸となる対称線分の中間点と定義することができる。例えば
図2に示すような扇状の加熱ゾーンの場合は、その周方向の中間角度位置であって且つ半径方向の中間地点が中心位置となる。
【0023】
上記の隣接する加熱ゾーン同士における両中心位置の離間距離と、各加熱ゾーンの中心位置からゾーン境界までの最長距離との関係について、
図3を参照しながらより詳細に説明する。先ずウエハ載置面11aの半径方向において互いに隣接する円形中央部Aと環状中間部Bとの関係について検討する。円形中央部Aのうち中央部扇状加熱ゾーンA1が半径方向に隣接する加熱ゾーンは、中間部扇状加熱ゾーンB1及びB2の2つである。
【0024】
これらのうち、中央部扇状加熱ゾーンA1と中間部扇状加熱ゾーンB1との関係では、中央部扇状加熱ゾーンA1の中心位置O
A1及び中間部扇状加熱ゾーンB1の中心位置O
B1の離間距離は線分L
A1B1の距離である。そして、中央部扇状加熱ゾーンA1では、その中心位置O
A1からそのゾーン境界までの最長の直線距離は、中心位置O
A1と扇形の角部に該当するP
A1とを結ぶ線分L
A1の距離である。一方、中間部扇状加熱ゾーンB1では、その中心位置O
B1からそのゾーン境界までの最長の直線距離は、中心位置O
B1と扇形の角部に該当するP
B1とを結ぶ線分L
B1の距離である。
【0025】
図3から分かるように、線分L
A1の距離と両中心位置の離間距離である線分L
A1B1の距離とを比べると、上記の線分L
A1の距離の50%の長さは、上記の線分L
A1B1の距離よりも短くなっている。また、線分L
B1の距離と両中心位置の離間距離である線分L
A1B1の距離とを比べると、上記の線分L
B1の距離の50%の長さは、上記の線分L
A1B1の距離よりも短くなっている。なお、
図3に示す区分パターンは中間部扇状加熱ゾーンB1とB2との境界線を対称線として線対称になっており、よって互いに隣接する中央部扇状加熱ゾーンA1と間部扇状加熱ゾーンB2との関係も、上記した中央部扇状加熱ゾーンA1と中間部扇状加熱ゾーンB1との関係と同様である。また、中央部扇状加熱ゾーンA2と間部扇状加熱ゾーンB3及びB4との関係、及び中央部扇状加熱ゾーンA3と間部扇状加熱ゾーンB5及びB6との関係も上記した中央部扇状加熱ゾーンA1と中間部扇状加熱ゾーンB1との関係と同様である。
【0026】
上記の関係は、ウエハ載置面11aの半径方向において互いに隣接する環状中間部Bと環状周縁部Cとの関係においても同様のことがいえる。すなわち、環状中間部Bのうちの中間部扇状加熱ゾーンB1が隣接する加熱ゾーンは周縁部扇状加熱ゾーンC1である。中間部扇状加熱ゾーンB1の中心位置O
B1及び周縁部扇状加熱ゾーンC1の中心位置O
C1の離間距離は線分L
B1C1の距離である。そして、中間部扇状加熱ゾーンB1では、前述したように、その中心位置O
B1からそのゾーン境界までの最長の直線距離は、中心位置O
B1と扇形の角部に該当するP
B1とを結ぶ線分L
B1の距離である。一方、周縁部扇状加熱ゾーンC1では、その中心位置O
C1からそのゾーン境界までの最長の直線距離は、中心位置O
C1と扇形の角部に該当するP
C1とを結ぶ線分L
C1の距離である。
【0027】
図3から分かるように、線分L
B1の距離と両中心位置の離間距離である線分L
B1C1の距離とを比べると、上記の線分L
B1の距離の50%の長さは、上記の線分L
B71C1の距離よりも短くなっている。また、線分L
C1の距離と両中心位置の離間距離である線分L
B1C1の距離とを比べると、上記の線分L
C1の距離の50%の長さは、上記の線分L
B1C1の距離よりも短くなっている。なお、中間部扇状加熱ゾーンB2と周縁部扇状加熱ゾーンC2との関係、中間部扇状加熱ゾーンB3と周縁部扇状加熱ゾーンC3との関係、中間部扇状加熱ゾーンB4と周縁部扇状加熱ゾーンC4との関係、中間部扇状加熱ゾーンB5と周縁部扇状加熱ゾーンC5との関係、及び中間部扇状加熱ゾーンB6と周縁部扇状加熱ゾーンC6との関係のいずれにおいても、上記した中間部扇状加熱ゾーンB1と周縁部扇状加熱ゾーンC1との関係と同様である。
【0028】
本発明の一具体例のウエハ加熱用ヒータユニット10は、上記の区分パターンを有することにより、載置面11aをより精密に温度制御することが可能になる。なお、本発明の一具体例のウエハ加熱用ヒータユニット10は、上記の複数の加熱ゾーンのうち周方向に隣接する加熱ゾーン同士の間に半導体ウエハのリフトピン用の挿通孔が設けられていてもよい。例えば
図2には、中央部扇状加熱ゾーンA1とA2との間、A2とA3との間、及びA3とA1との間に3個のリフトピン用挿通孔Q1〜Q3が其々設けられた例が示されている。このように周方向に隣接する加熱ゾーン同士の間にリフトピン用挿通孔を設けることで、当該挿通孔による載置面11aへの均熱性の悪影響を抑えることができる。あるいは、リフトピン用挿通孔は半径方向に隣接する加熱ゾーン同士の間に設けても良いし、周方向に隣接する加熱ゾーン同士の間であって且つ半径方向に隣接する加熱ゾーン同士の間に設けても良い。
【0029】
各加熱ゾーン内に設けられている図示しない発熱回路の回路パターンについては特に限定はなく、様々な回路パターンを有することができる。例えば、同心円状の複数の湾曲導電部と、これら湾曲導電部の隣接するもの同士を接続する直線導電部とで一筆書き状に形成された回路パターンにすることができる。この場合、発熱回路の両端部に其々2つの電極端子(図示せず)が接続されることになる。
【0030】
なお、複数の発熱回路は、加熱ゾーンごとに発熱密度が異なるようにしてもよい。例えば前述したように、一般にウエハ径よりも載置台の外径が大きいため、半導体ウエハが載置台に載置されると当該載置台には中央部が外周部よりも低温の同心円状のセンタークール型の温度分布が生じる。その後、載置台の温度は制御系の働きにより所定の温度まで昇温するが、上記の温度分布の影響を受けるので半導体ウエハの過渡的な温度分布も同心円状のセンタークールとなる。このようなセンタークール型の温度分布を補正するため、中央部扇状加熱ゾーンA1〜A3の発熱密度を高く設計することで、ウエハ載置時の過渡的な温度均一性を一層向上することができる。発熱密度を高くする方法としては、発熱回路の回路パターンのピッチを狭くしたり発熱体回路を構成する導電線の幅を細くしたりすることで実現できる。
【0031】
なお、発熱モジュール13においては、ウエハ載置面11aに平行な全面積に対して発熱回路の有効面積(すなわち、発熱モジュール13の上記全面積から、互いに隣接する加熱ゾーン同士の離間スペース、ネジ孔やリフトピンの挿通孔、測温センサー設置部位等の発熱がないスペースを引いたもの)の比率、すなわち有効発熱領域の比率が80%以上であるのが好ましい。
【0032】
本発明の一具体例のウエハ加熱用ヒータユニット10は、複数の加熱ゾーンの各々において例えば抵抗値が調整された測温素子からなる測温センサー(図示せず)を前述した中心位置に該当する位置に設けると共に、各測温センサーの検出値に基づいて当該加熱ゾーン内の発熱回路を個別に制御するのが好ましい。これにより載置面11aを局所的に加熱することができるので、例えばロードロックの開閉等により載置面11aが部分的に冷却されるような場合であっても均熱性を良好に維持することが可能になる。上記の測温センサーは例えばウエハ載置台11の下面側に測温センサーが収まる大きさのザグリ穴を設け、その底面に接着剤を塗布して測温センサーを接着固定することで各加熱ゾーンの温度を良好に検知することができる。
【0033】
再度
図1に戻ると、本発明の一具体例のウエハ加熱用ヒータユニット10は、支持板12の下方に冷却ユニット30が設けられている。この冷却ユニット30は、一点鎖線で示すように支持板12の下面側に当接する当接位置と、実線で示すように支持板12から離間する離間位置との間で往復動可能な可動式冷却板31と、この可動式冷却板31が上記離間位置にある時に当接する固定式冷却ステージ32とを有している。これら可動式冷却板31及び固定式冷却ステージ32の材質は、熱伝導性が高い銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、チタン、若しくはこれらの少なくともいずれかを主成分とする合金又はステンレスからなる群から選択することが好ましい。
【0034】
この固定式冷却ステージ32は、図示しないチラーなどの冷却装置で冷却されたフッ素系冷媒等の不凍液、空気、汎用的な水等の冷媒が循環する冷媒流路32aを有している。この冷媒流路の形態は特に限定はなく、例えば金属製の板状部材の下面側に冷媒流路としてCuなどの金属製のパイプを沿わせ、この金属製パイプの両端にステンレス製の継ぎ手を取り付けると共に、金属製パイプを押さえ板で板状部材に押さえつけた状態で該押さえ板と板状部材とをネジなどにより機械的に結合する構造にすることができる。
【0035】
あるいは、より高い熱効率を得るため、金属製の板状部材の下面側に例えば渦巻き状のザグリ溝を設け、このザグリ溝中に渦巻き状に成形した冷媒流通用の金属製パイプを設置した構造でもよい。この場合、金属製パイプと冷却板との良好な熱伝達を保つため、コーキング材、シーラント、接着剤などにより金属製パイプの表面とザグリ溝の内面とを接着固定するのが好ましい。あるいは、同じ材質の略同形状の2枚の板状部材を用意し、それらの一方又は両方の片面に機械加工で流路となる溝を形成し、この流路側の面が対向するように2枚の板状部材を重ね合わせて例えばロウ付けなどの結合法で一体化した構造でもよい。
【0036】
可動式冷却板31は、エアシリンダなどからなる昇降機構33に取り付けられている。これにより、昇降機構33を作動させることで固定式冷却板31を前述した当接位置と、離間位置との間で往復動させることが可能になる。なお、可動式冷却板31を使用せずに冷媒流路を有する冷却ステージ32自体を支持板12の下面側に当接する位置と該下面側から離間する位置との間で往復動させてもよい。
【0037】
上記の可動式冷却板31の上面や固定式冷却ステージ32の上面、及び/又は支持板12の下面には介在層(図示せず)を設けてもよい。この介在層は、厚み方向にクッション性(柔軟性)を有しているのが好ましく、また耐熱性を有しているのが好ましい。更に、例えば1W/m・K以上の高い熱伝導率を有していることが好ましい。このような材質としては、発泡金属、金属メッシュ、グラファイトシート、又はフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、若しくはシリコーン樹脂等の樹脂シートを挙げることができる。なお、上記の樹脂シートにカーボンなどの熱伝導性フィラーを含有することで、熱抵抗をより小さくすることが可能になる。なお、本発明の一具体例のウエハ加熱用ヒータユニット10及び冷却ユニット30は好適にはステンレスからなる容器40内に収められているのが好ましい。
【0038】
以上、本発明のウエハ加熱用ヒータユニットについて一実施形態を挙げて説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲の種々の態様で実施することが可能である。すなわち、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲及びその均等物に及ぶものである。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
図1に示すような下方に冷却ユニット30が設けられたウエハ加熱用ヒータユニット10を作製してそのウエハ載置面11aの均熱性を評価した。具体的には、先ずウエハ載置台11として直径320mm×厚み3mmの円板状の銅板を準備した。この銅板のウエハ載置面11aとなる面とは反対側の面の後述する中心位置に15個のザグリ穴を形成し、これらザグリ穴の各々に、セラミックス製(W2mm×D2mm×H1mm)の測温素子をシリコーン接着剤を用いて接着固定した。
【0040】
次に支持板12として直径320mm×厚み3mmの円板状のSi−SiC板を準備した。このSi−SiC板には、上記測温素子のリード線や、後述するネジなどの挿通用の貫通孔を設けた。次に発熱モジュール13の複数の発熱回路13aとなる抵抗発熱体として、厚さ20μmのステンレス箔に該複数の発熱回路13aの回路パターンをエッチングで形成し、それらの各々の両終端部に給電ケーブルを取り付けた後、この抵抗発熱体を上下両面から厚み50μmのポリイミドシートで覆って熱圧着し、直径320mmの円形フィルム状の発熱モジュール13を準備した。
【0041】
ここで、上記の発熱モジュール13の複数の発熱回路13aが其々設けられる複数の加熱ゾーンは、
図2の区分パターンとなるようにした。具体的には、円形の発熱モジュール13の中心点に対してφ120mm、φ246mm、φ302mmの3つの同心円で円形中央部Aと、環状中間部Bと、環状周縁部Cとに3区分し、更にφ120mmの円形中央部Aを周方向に3等分して中央部扇状加熱ゾーンA1〜A3とし、外径φ246mm、内径φ120mmの環状中間部Bを周方向に6等分して中間部扇状加熱ゾーンB1〜B6とし、外径φ302mm、内径φ246mmの環状周縁部Cを周方向に6等分して周縁部扇状加熱ゾーンC1〜C6とした。これら合計15区画の加熱ゾーンの其々に設けた15個の発熱回路13aが個別に制御されるように、上記測温素子は各区画の中心位置に配置した。なお、発熱回路の上記給電ケーブルも各区画ごとに引き出されることになる。
【0042】
このようにして作製した発熱モジュール13を上記のウエハ載置台11と支持板12との間に挟み込み、支持板12に予め設けておいた貫通孔にネジを挿通してウエハ載置台11に螺合した。これにより、発熱モジュール13を挟んでウエハ載置台11と支持板12とが互いに機械的に結合されたウエハ加熱用ヒータユニット10を作製した。なお、上記のネジには、熱膨張量差でウエハ載置台11や支持板12が変形しないように、座面にベアリングを備えた締結ネジを用いた。この締結ねじを、PCD120mmに3本、PCD310mmに6本設けた。また、測温素子のリード線からの熱逃げを抑制するため、支持板12から取り出した測温素子のリード線を支持板12に30mmの長さに渡り接触させた状態でシリコーン樹脂で接着固定した。
【0043】
次に、このウエハ加熱用ヒータユニット10の下方に設ける冷却ユニット30として、可動式冷却板31用の直径320mm×厚み12mmの円板状のアルミニウム合金板と、固定式冷却ステージ32用の直径320mm×厚み12mm の円板状のアルミニウム合金板とを準備した。可動式冷却板31用のアルミニウム合金板には、上記支持板12に当接する上面側に、支持板12と可動式冷却板31の全面が接触するように柔軟性を有したシリコーンシートを配置した。一方、固定式冷却ステージ32用のアルミニウム合金板の下面に、ねじを用いて冷媒流路32a用の外径6mm×肉厚1mmのリン脱酸銅パイプを取り付けた。そして、この銅パイプの両端に、冷媒を供給・排出するための継ぎ手を取り付けた。
【0044】
このようにして作製した冷却ユニット30としての両アルミニウム合金板に、上記給電ケーブル、測温素子のリード線、及び後述する容器40の底部から立設する脚部20が挿通する貫通孔を設けた。更に固定式冷却ステージ32用のアルミニウム合金板には、可動式冷却板31のエアシリンダからなる昇降機構33のロッドが挿通する貫通孔を設けた。上記の冷却ユニット30を肉厚1.5mmの側壁を有し且つ上部が開放されたステンレス製の容器40内に設置した。固定式冷却ステージ32の下側に昇降機構33を取り付け、そのロッドを上記したロッド挿通用の貫通孔に挿通させてその先端に可動式冷却板31を取り付けた。このようにして、冷却ユニット30を備えた試料1のウエハ加熱用ヒータユニット10を作製した。なお、昇降機構33のロッドが退避している時の支持板12の下面と可動式冷却板31の上面との離間距離は10mmであった。
【0045】
比較のため、ウエハ載置台11と支持板12との間に挟持させる発熱モジュールの区分パターンを
図2に代えて
図4(a)及び(b)の区分パターンにした以外は上記試料1と同様にして冷却ユニットを備えた試料2及び3のウエハ加熱用ヒータユニット作製した。すなわち、試料2のウエハ加熱用ヒータユニットの発熱モジュールにおいてはその中心点に対してφ95mm、φ246mm、φ302mmの3つの同心円で円形中央部Dと、環状中間部Eと、環状周縁部Fとに3分割し、円形中央部D及び環状中間部Eについては周方向に分割せずに其々そのまま円形加熱ゾーン及び環状加熱ゾーンとし、外径φ302mm、内径φ246mmの環状周縁部Fのみ周方向に4等分して周縁部扇状加熱ゾーンF1〜F4とした。これら合計6区画の加熱ゾーンの各々の中心位置に測温素子を設けた。但し、環状中間部Eについては、発熱モジュールの中心点に対してφ151mmの周上の1か所に測温素子を設けた。
【0046】
一方、試料3のウエハ加熱用ヒータユニットの発熱モジュールにおいては、その中心点に対してφ95mm、φ171.5mm、φ246mm、φ302mmの4つの同心円で円形中央部Gと、内側環状中間部Hと、外側環状中間部Iと、環状周縁部Jとに4分割し、更に外径φ171.5mm、内径φ95mmの内側環状中間部Hを周方向に2等分して内側中間部扇状加熱ゾーンH1〜H2とし、外形φ246mm、内径φ171.5mmの外側環状中間部Iを周方向に4等分して外側中間部扇状加熱ゾーンI1〜I4とし、外径φ302mm、内径φ246mmの環状周縁部Jを周方向に8等分して周縁部扇状加熱ゾーンJ1〜J8とした。これら合計15区画の加熱ゾーンの各々の中心位置に測温素子を設けた。上記試料1〜3のヒータユニットにおける複数の加熱ゾーンの区分パターンをまとめたものを表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
上記にて作製した試料1〜3のヒータユニットに対して、先ずウエハ載置面11aの平面度を市販の三次元測定器にて測定した。次に、これら試料1〜3のヒータユニットの各々に対して複数の発熱回路13aに給電して常温から110℃まで昇温させた後、設定温度110℃で温度制御しながら1時間保持した。その後、測温センサーが埋設された市販のウエハ温度計をウエハ載置面11aに設置し、ウエハ載置面11a内の最大温度と最小温度の差である均熱レンジを計測した。その結果を下記表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
上記表2の結果から分かるように、試料2のヒータユニットでは均熱レンジが0.17℃となり、試料3のヒータユニットでは均熱レンジが0.21℃となった。詳細な温度分布によると、試料2では環状中間部Eの加熱ゾーンにおいて最大温度と最小温度が存在しており、ウエハ載置台11と支持板12とを締結しているボルト近傍が低温域となっていた。一方、試料3では外側環状中間部Iのうちの1か所の加熱ゾーンが高温域となっていた。
【0051】
試料3のヒータユニットの発熱回路への出力を確認すると、高温域となっていた上記外側環状中間部Iの1か所の加熱ゾーンでは出力がなく、これに隣接する内側環状中間部Hの加熱ゾーンへの出力が相対的に大きかった。これは、互いに隣接する加熱ゾーン同士の両中心位置が其々の加熱ゾーンの大きさに比べて近づきすぎており、具体的には、これら両中心位置の離間距離が其々の加熱ゾーンの中心位置からゾーン境界までの最長距離の50%未満となっているため、隣接する内側環状中間部Hの発熱回路の影響を大きく受けて外側環状中間部Iでは出力しなくても設定温度以上に到達していたことによるものと考えられる。すなわち、隣接する加熱ゾーン間で温度制御に干渉が生じたことが原因と推察される。
【0052】
一方、試料1のヒータユニットでは均熱レンジが0.06℃であり、これは、互いに隣接する加熱ゾーン同士の両中心位置の離間距離が其々の加熱ゾーンの中心位置からゾーン境界までの最長距離の50%以上であるため、上記の試料2や3で確認された局所的な温度低下や隣接する加熱ゾーン同士の温度制御の干渉による特異的な温度分布は確認されなかった。更に、ウエハ載置台11と支持板12とを締結する締結ボルト周辺の温度も特異的でなかった。これは、締結ボルトの位置を、円形中央部Aの加熱ゾーンとその外周側の環状中間部Bの加熱ゾーンとの境界上に配置したことにより、当該締結ボルトの影響を複数の加熱ゾーンで分散できたことによるものと推察される。
【0053】
[実施例2]
ウエハ載置台11の材質を銅に代えてSi−SiCにした以外は上記の実施例1の試料1〜3と同様にして其々試料4〜6のヒータユニットを製作し、実施例1と同様の評価を行った。その結果をウエハ載置台11の平面度と併せて下記表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
上記表3から実施例1と同様の傾向があることが分かる。また、実施例1に比べて試料4〜6のヒータユニットはいずれも若干の均熱性の向上が認められた。これは、ウエハ載置台11の材質を剛性の高いSi−SiCに代えたことで、ウエハ載置台11の平面度が安定し、よってウエハ載置面11aとウエハとの距離が全面に亘って均等になったことによるものと推察される。