特許第6593429号(P6593429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイキン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6593429-流体装置 図000002
  • 特許6593429-流体装置 図000003
  • 特許6593429-流体装置 図000004
  • 特許6593429-流体装置 図000005
  • 特許6593429-流体装置 図000006
  • 特許6593429-流体装置 図000007
  • 特許6593429-流体装置 図000008
  • 特許6593429-流体装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593429
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】流体装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 15/04 20060101AFI20191010BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20191010BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20191010BHJP
   H02P 101/10 20150101ALN20191010BHJP
【FI】
   F03B15/04 Z
   G01M99/00 A
   H02P9/04 A
   H02P101:10
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-244362(P2017-244362)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-115086(P2019-115086A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2018年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】須原 淳
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−111599(JP,A)
【文献】 特開2016−017424(JP,A)
【文献】 特開昭62−043538(JP,A)
【文献】 特許第5573983(JP,B2)
【文献】 特開平10−077948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 15/04
G01M 99/00
H02P 9/04
H02P 101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力機械(11)と、
前記水力機械(11)に連結された回転電気機械(12)と、
前記回転電気機械(12)からの電力を変換する電力変換制御装置(13,14)と、
を有し、
正常状態では、通常動作を継続する正常運転を実施し、
動作を停止して停止状態を継続する異常状態と異なる警告状態では、時限的な継続を延長するように又は前記警告状態を解消するように非常運転を実施する、
流体装置。
【請求項2】
前記警告状態を検出する検出部(63)を有し、前記警告状態の検出を通知する、
請求項1に記載の流体装置。
【請求項3】
前記警告状態に応じて、発生時刻、点検許容期間、対象箇所、保守部品、設置場所の少なくとも1つを通知する、
請求項2に記載の流体装置。
【請求項4】
次回の点検予定日までの点検待ち期間を取得し、点検待ち期間が点検許容期間より大きい場合は、点検待ち期間を点検許容期間以下とするように点検の実施を通知する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の流体装置。
【請求項5】
警告状態が検出されてからの経過時間を計測する計時部(63)を有し、
前記計時部で計測した経過時間が点検許容期間を超えた場合に動作を停止する、
請求項2〜4の何れか1項に記載の流体装置。
【請求項6】
前記回転電気機械(12)を冷却する冷却器(36,37)と、
前記回転電気機械(12)の温度を検出するように配置された温度センサ(53b)と、
を有し、
前記電力変換制御装置(13,14)は、前記回転電気機械(12)に熱伝達するように構成され、
前記温度センサ(53b)は、前記電力変換制御装置(13,14)から離れるように配置される、
請求項1〜5の何れか1項に記載の流体装置。
【請求項7】
前記電力変換制御装置(13,14)の温度を検出するように配置された温度センサ(54,55)をさらに備え、
前記温度センサ(53b)により検出される前記回転電気機械(12)の温度前記温度センサ(54,55)により検出される前記電力変換制御装置(13,14)の温度の少なくとも1つが所定値を越えた場合に、前記水力機械(11)の有効落差(H)を増加するように前記非常運転の動作点を変更することによって、前記冷却器(36,37)に流入する冷却用の流体の流量を増加させる
請求項6に記載の流体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体装置として、例えば水車と発電機を有する水力発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5573983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の流体装置では、定期的な点検が実施されている。しかし、流体装置に異常が発生した場合、異常の流体装置は停止されるため、上記の定期的な点検とは別に、臨時の点検作業によって流体装置を再稼働させる必要がある。このため、点検工数が増加し、メンテナンス費用が増加する。
【0005】
本発明の目的は、点検工数の増加を抑制可能とする流体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点に係る流体装置は、水力機械(11)と、前記水力機械(11)に連結された回転電気機械(12)と、前記回転電気機械(12)からの電力を変換する電力変換制御装置(13,14)と、を有し、通常動作を継続する正常状態及び動作を停止して停止状態を継続する異常状態と異なる警告状態では、非常運転を実施する。
【0007】
前記第1の観点の流体装置によれば、運転を継続できるので、点検等の工数増加を抑制できる。
第2の観点に係る流体装置は、前記警告状態を検出する検出部(63)を有し、前記警告状態の検出を通知する。
【0008】
前記第2の観点の流体装置によれば、警告状態となったことを把握でき、点検することで異常状態になる事を事前に抑制できる。
第3の観点に係る流体装置は、前記警告状態に応じて、発生時刻、点検許容期間、対象箇所、保守部品、設置場所の少なくとも1つを通知する。
【0009】
前記第3の観点の流体装置によれば、警告状態を詳細に把握でき、点検の際の工数を低減できる。
第4の観点に係る流体装置は、次回の点検予定日までの点検待ち期間を取得し、点検待ち期間が点検許容期間より大きい場合は、点検待ち期間を点検許容期間以下とするように点検の実施を通知する。
【0010】
前記第4の観点の流体装置によれば、非常運転で対応できる場合には点検を実施せずに済むので、点検回数を低減できる。
第5の観点に係る流体装置は、警告状態が検出されてからの経過時間を計測する計時部(63)を有し、前記計時部で計測した経過時間が点検許容期間を超えた場合に動作を停止する。
【0011】
前記第5の観点の流体装置によれば、非常運転し続けるのを防止できる。
第6の観点に係る流体装置は、前記回転電気機械(12)を冷却する冷却器(36,37)と、前記回転電気機械(12)の温度を検出するように配置された温度検出器と、を有し、前記電力変換制御装置(13,14)は、前記回転電気機械(12)に熱伝達するように構成され、前記温度検出器(53b)は、前記電力変換制御装置(13,14)から離れるように配置される。
【0012】
前記第6の観点の流体装置によれば、温度検出器(53b)により検出した温度(温度変化)により、過熱箇所(回転電気機械(12)を冷却する冷却器か電力変換制御装置(13,14)か)を特定できる。
【0013】
第7の観点に係る流体装置は、前記回転電気機械(12)と前記電力変換制御装置(13,14)の少なくとも1つの温度が所定値を越えた場合に、前記水力機械(11)の有効落差(H)を増加するように前記非常運転の動作点を変更する。
【0014】
前記第7の観点の流体装置によれば、水力機械(11)の有効落差(H)を増加(動作点の変更)により、電流・トルク・発電電力を低下して温度低下(発熱の抑制)できる。また、冷却器を流れる流量の増加により冷却性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】流体装置の概略正面図。
図2】流体装置の概略側面図。
図3】流体装置の概略平面図。
図4】流体装置の制御系及び電力系統を示すブロック図。
図5】流体装置の制御にかかる特性マップを示す説明図。
図6】流体装置の制御にかかる特性マップを示す説明図。
図7】流体装置の温度変化を示す波形図。
図8】流体装置の温度変化を示す波形図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る流体装置について説明する。なお、本発明は、以下に記載する例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0017】
図1に示すように、流体装置10の水車11は、水平方向に延びる水流の流入管21と、水流の流出管22を有している。流入管21は、配管継手23を介して、水車11に流体としての水を供給する水供給管101に接続されている。流出管22は、配管継手24を介して、水車11からの水を排出する水排出管102に接続されている。水供給管101及び水排出管102は、水車11に水を流通させる主管である。本実施形態の流体装置10は、水供給管101、流入管21、流出管22、及び水排出管102とで形成する水流の流入経路と流出経路とが一直線上に配置されたインライン型である。
【0018】
水車11は、羽根車25aを内蔵するケーシング25を有している。羽根車25aは、流入管21と流出管22とで形成する水流経路の途中に配設されている。羽根車25aは、上下方向に配置された回転軸26の下端に接続され、その回転軸26が接続される中心部に渦巻状に配置された複数枚のブレードを有している。羽根車25aは、流入管21からの水流により複数枚のブレードが受ける圧力により回転して、回転軸26を回転させる。この羽根車25aとしては、例えば渦巻きポンプのインペラを用いることができる。そして、流入管21、流出管22、回転軸26に取着された羽根車25a、回転軸26の周囲を囲む中空の台座、及びケーシング25により、水流を受けて回転軸26を回転駆動する水車(水力機械)11を構成する。
【0019】
水車11の上方には、その上下方向に配置された回転軸26の上端に接続される発電機(回転電気機械)12が配置されている。この発電機12の下方に配置されたフロントカバー27と水車11の回転軸26の周囲を囲む中空の台座28とがボルト等の締結具により締結されて、水車と発電機とが取り外し可能に連結固定されている。本流体装置10は、水車11と発電機12とが上下方向に配置された縦型となっている。
【0020】
発電機12は、水車11の回転軸26に連結されている。発電機12は、羽根車25aにより回転駆動され、所定の交流電力(例えば三相交流電力)を発生する。
発電機12の一側方(図2の左側方)には、発電機コントローラ13(第1の電力変換制御装置)が配置されている。発電機コントローラ13は、発電機12で発電された電力、又は電源からの電力を変換、又は制御する。この発電機コントローラ13は、例えば、発電機12で発電した三相交流電力を直流に変換する交流直流変換器(コンバータ部)を含む。
【0021】
また、発電機12の他側方(図2の右側方)には、系統連系インバータ(以下、単にインバータ)14(第2の電力変換制御装置)が配置されている。インバータ14は、発電機コントローラ13で変換又は制御された電力を、更に変換又は制御する。このインバータ14は、例えば、発電機コントローラ13により変換された直流電力を交流電力に変換する直流交流変換装置である。発電機コントローラ13により変換された交流電力は、例えば図4に示す電力系統16に供給される。
【0022】
発電機コントローラ13は、電力変換用の複数の半導体素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)を有する。インバータ14は、電力変換用の複数の半導体素子(例えば、IGBT)を有する。これらの半導体素子は、その動作に伴い発熱する。また、発電機12は、発電動作に応じて発熱する。これらのため、流体装置10は、発電機コントローラ13とインバータ14と発電機12とを冷却する冷却系統30を有している。
【0023】
図1及び図2に示すように、冷却系統30は、冷却流入配管31,33と冷却流出配管32,34と、冷却器35,36,37とを有している。
冷却流入配管31は、配管継手23と冷却器35との間に配設されている。冷却流入配管31は、カプラ41aにより配管継手23に設けられたバルブ23aに接続されるとともに、カプラ41bにより冷却器35に接続されている。冷却流出配管32は、冷却器35と配管継手24との間に配設されている。冷却流出配管32は、カプラ42bにより冷却器35に接続されるとともに、カプラ42aにより配管継手24のバルブ24aに接続されている。カプラ41a,41b,42a,42bは、例えばワンタッチカプラであり、流体装置10における各配管の接続を容易にする。バルブ23a,24aは、例えば手動開閉弁であり、例えば施工時やメンテナンス時に閉操作され、試験運転や運転時に開操作される。
【0024】
冷却流入配管33は、配管継手23と図2に示す冷却器36,37との間に配設されている。冷却流入配管33は、カプラ43aにより配管継手23に設けられたバルブ23bに接続される。冷却流入配管33は、共用配管33aと、共用配管33aから分岐されて冷却器36,37(図2参照)に接続される分岐配管33b,33cを有している。分岐配管33b,33cは、それぞれカプラ43b,43cにより冷却器36,37に接続されている。冷却流出配管34は、図2に示す冷却器36,37と配管継手24との間に配設されている。冷却流出配管34は、カプラ44b,44cにより冷却器36,37に接続される分岐配管34b,34cと、分岐配管34b,34cを合流する共用配管34aと、を有し、共用配管34aはカプラ44aにより配管継手24のバルブ24bに接続されている。カプラ43a〜43c,44a〜44cは、例えばワンタッチカプラであり、流体装置10における各配管の接続を容易にする。バルブ23b,24bは、例えば手動開閉弁であり、例えば施工時やメンテナンス時に閉操作され、試験運転や運転時に開操作される。
【0025】
なお、図1及び図2では、冷却器35は発電機12の上に配設しているように示されているが、例えば、発電機12の周囲に蛇行して配設された冷却管により構成される。冷却流入配管31は、水供給管101に流れる水の一部を冷却用の流体(冷却流体)として冷却器35に供給する。冷却流出配管32は、冷却器35からの水を水排出管102に戻す(排出する)。この冷却用の流体により、発電機12を冷却する。
【0026】
冷却器36は、発電機コントローラ13と発電機12との間に配設されている。冷却器37は、インバータ14と発電機12との間に配設されている。冷却流入配管33は、水供給管101に流れる水の一部を冷却用の流体(冷却流体)として冷却器36,37に供給する。冷却流出配管34は、冷却器35,36からの水を水排出管102に戻す(排出する)。この冷却用の流体により、発電機12と発電機コントローラ13とインバータ14とを冷却する。
【0027】
次に、流体装置10の制御に係る構成を説明する。
図4に示すように、流入管21には、流量計51が配設されている。流量計51は、水車11に供給される流体(水)の流量Qを測定する。
【0028】
水車11の流入側には圧力センサ52aが設けられ、水車11の流出側には圧力センサ52bが設けられている。圧力センサ52aは、水車11の一次圧力p1を測定する。圧力センサ52bは、水車11の二次圧力p2を測定する。
【0029】
図1図2及び図3に示すように、発電機12には、発電機12の温度を検出する温度センサ53a,53bが配設されている。図1に示す温度センサ53aは、例えば、回転軸26を支持するベアリング(図示略)の温度を検出するように配置されている。図2に示す温度センサ53bは、発電機12の巻線の温度を検出するように配置されている。本実施形態において、この温度センサ53bは、図3に示すように、発電機コントローラ13と、インバータ14とから離れた位置に配置される。例えば、発電機12の中心を通り、発電機コントローラ13とインバータ14とが配置される方向と直交する方向であって、発電機12の周辺に配置される。
【0030】
図2に示すように、発電機コントローラ13とインバータ14にはそれぞれ、温度センサ54,55が配設される。温度センサ54は、発電機コントローラ13に含まれるパワーデバイス(IGBT等)の温度を検出するように配置されている。温度センサ55は、インバータ14に含まれるパワーデバイス(IGBT等)の温度を検出するように配置されている。
【0031】
水車11には、水位センサ56が配設されている。水位センサ56は、水車11における漏水等による水位の変化を検出するように配置されている。水車11において、例えば、羽根車25aが取着された回転軸26とケーシング25との間をシールするOリング等のシール部材の劣化による漏水が生じる場合がある。このため、水位センサ56による検出により、漏水等による水位の変化を検出する。
【0032】
図4に示すように、インバータ14の出力側には電力計57が配設されている。電力計57は、インバータ14の出力電力、つまり発電電力を検出する。なお、電力計57に替えて、電圧計と電流計とが配設されてもよい。
【0033】
次に、発電機コントローラ13の構成例を説明する。
図4に示すように、発電機コントローラ13(第1の電力変換制御装置)は、AC/DCコンバータ部(以下、単にコンバータ部)61と、コンバータ部61を制御する発電機制御部62を有している。コンバータ部61は、発電機12により発電された交流電力を、直流電力に変換する。その直流電力は、インバータ14に供給される。インバータ14は、解列部15を介して電力系統16に接続される。電力系統16は、例えば商用電源である。解列部15は、インバータ14と電力系統16との間を開閉する。この解列部15は、例えば電磁リレーが用いられる。
【0034】
図5は、発電機制御部62に予め記憶された特性マップMを示す。発電機制御部62は、この特性マップMに基づいて、コンバータ部61を制御する。この特性マップMは、縦軸を水車11の有効落差(H)、横軸を水車11に供給される流量(Q)としている。この特性マップMにおいて、発電機12に負荷をかけずトルク零値(T=0)とした場合の無拘束速度曲線と、回転数零値(N=0)の等速度曲線との間の領域を水車11が水流により回転する水車領域とする。発電機12は、この水車領域において、水車11により回転駆動されるのを基本とする。
【0035】
水車領域において、複数の等トルク曲線は、無拘束速度曲線(T=0)に沿い、マップ上、流量Qの増大に応じてトルク値も増大する。また、複数の等速度曲線は回転数零値(N=0)の等速度曲線に沿い、有効落差Hが大きくなるほど回転数も上昇する。更に、破線で示した等発電電力曲線は下に凸な二次曲線であって、有効落差H及び流量Qの増大に応じて発電電力も増大する。この複数の等発電電力曲線の頂点を結ぶ曲線(最大電力曲線(E))は、発電機12にて最高発電電力又は最大効率を得る最大発電電力・効率曲線である。
【0036】
そして、特性マップMには、予め測定し作成した総落差−管路抵抗曲線(システムロスカーブS)が流動抵抗曲線として記録されている。このシステムロスカーブSは、流体装置10が接続された管路の抵抗に応じた曲線であって、流量Q=0のとき有効落差Hが総落差Hoであり、流量Qの増大に応じて有効落差Hが二次曲線的に減少する特性を持つ。システムロスカーブSの曲率は、流体装置10が接続された配管系統に固有の値を持つ。流体装置10の水車11は、このシステムロスカーブS上の点を運転点として動作する。
【0037】
発電機制御部62は、流量指令決定部71、流量制御器72、トルク指令決定部73、トルク制御器74、PWM制御器75を有している。流量指令決定部71は、目標流量QT*と状態検出部63で検出した流体装置10の運転状態とに基づいて流量指令値Q*を生成する。流量制御器72は、流量指令値Q*に基づいて、目標トルクを設定する。トルク指令決定部73は、目標トルクと状態検出部63で検出した流体装置10の運転状態とに基づいて、トルク指令値T*を生成する。トルク制御器74は、発電機12のトルクTをトルク指令決定部73からのトルク指令値T*となるように、トルク制御を行う。これにより、発電機12には、所定の負荷がかかることになる。PWM制御器75は、トルク制御器74の出力と状態検出部63で検出した流体装置10の運転状態とに基づいて、コンバータ部61に含まれる半導体素子(例えばIGBT)に供給するゲート信号を生成する。例えば、PWM制御器75は、所定のキャリア周波数に基づいて半導体素子を間欠的にオンオフするようにゲート信号を生成する。
【0038】
また、発電機コントローラ13は、状態検出部63(計時部)、使用時間積算部64、表示部65を有している。
状態検出部63は、流体装置10の運転状態を検出する。流体装置10の運転状態としては、正常状態、警告状態、異常状態が設定される。正常状態は、流体装置10に異常が無い状態である。つまり、流体装置10の継続的な運転が可能な状態にある。異常状態は、流体装置10に動作の継続が不可能な異常が有る状態である。つまり、流体装置10は、運転を非常停止する状態にある。警告状態は、正常状態と異常状態の何れでも無い状態である。例えば、警告状態は、流体装置10に異常があるが、運転の時限的な継続が可能な状態を指す。つまり、警告状態は、将来的に停止しなければならなくなる異常が流体装置10に発生している状態である。時限的な継続は、例えば、異常を発見してから、停止しなければならないまでの期間である。
【0039】
状態検出部63は、流体装置10の運転状態が、上述の正常状態、異常状態、警告状態の何れであるかを検出する。そして、状態検出部63は、検出した運転状態を出力する。状態検出部63が出力する流体装置10の運転状態は、警告状態、異常状態の要因、要因の状態を示す値を含む。
【0040】
発電機制御部62は、状態検出部63の検出した運転状態に応じて、コンバータ部61を制御する。上述したように、運転状態は、正常状態、警告状態、異常状態を含む。
正常状態の場合、発電機制御部62は、現在の運転(正常運転)を継続する。正常運転は、例えば、図4に示す特性マップMにおいて最大発電電力を得るように設定した動作点にて流体装置10を運転することである。なお、正常運転として、所定圧力を得るように動作点を設定した圧力制御を行うようにしてもよい。また、正常運転として、所定流量を得るように動作点を設定した流量制御を行うようにしてもよい。
【0041】
異常状態の場合、発電機制御部62は、流体装置10の運転を停止して停止状態を継続する。
警告状態の場合、発電機制御部62は、正常運転より機能的に低い非常運転を行う。非常運転は、警告状態の要因において、時限的な継続を延長するように又は警告状態を解消するように、コンバータ部61等を制御する。例えば、温度上昇により警告状態になった場合、温度上昇を緩和させるように又は温度を低減させるように流体装置10を制御する。
【0042】
流体装置10を非常運転していると、流体装置10の運転状態が変化する場合がある。状態検出部63は、継続して流体装置10の運転状態を検出し、運転状態を出力する。発電機制御部62は、状態検出部63の検出した運転状態に応じて、流体装置10を制御する。
【0043】
運転状態が警告状態から正常状態へと変化した、つまり正常状態に戻った場合、状態検出部63は、流体装置10の運転状態(正常状態)を出力する。また、状態検出部63は、警告状態の経過時間をリセットする。発電機制御部62は、その運転状態に基づいて、正常運転にて流体装置10を制御する。運転状態が警告状態から異常状態へと変化した場合、状態検出部63は、流体装置10の運転状態(異常状態)を出力する。発電機制御部62は、その運転状態に基づいて、流体装置10を停止する。
【0044】
運転状態が警告状態のまま継続する場合、状態検出部63は、警告状態と判断してからの経過時間に基づいて、流体装置10の制御を決定する。例えば、状態検出部63は、点検許容期間を記憶している。点検許容期間は、例えば、非常運転が許可される期間、点検を行うことなく運転を継続できる期間である。警告状態の経過時間が点検許容期間より小さい(経過時間<点検許容期間)場合、状態検出部63は、非常運転を継続するとともに、次の点検(例えば、月次の定期点検)にて点検を行うよう、運転状態(例えば、警告状態にて運転中)を外部へ通知する。一方、警告状態の経過時間が点検許容期間よりも大きい(経過時間>点検許容期間)場合、状態検出部63は、流体装置10の運転を停止するよう運転状態(異常状態)を出力するとともに、運転状態(例えば、警告状態の後に運転停止)を外部へ通知する。なお、外部へ通知するときは、警告状態の内容や異常状態の内容を、運転状態と併せて通知してもよい。
【0045】
通知する運転状態は、発生時刻、点検許容期間、対象箇所、保守部品、設置場所、の少なくとも1つを含む。発生時刻は、異常又は警告が発生した時刻、つまり状態検出部63が異常状態又は警告状態を検出した時刻である。点検許容期間は、点検を行うことなく運転を継続できる期間である。対象箇所は、異常又は警告が発生した箇所であり、保守部品は、その異常又は警告が発生した箇所を交換、修繕するための部品である。設置場所は、流体装置10を設置した場所である。これらのうちの少なくとも1つを含む運転状態を通知することで、単なる異常又は警告の発生のみを通知する場合と比べ、運転状態をより詳細に把握することができ、点検修理の工数を削減できる。
【0046】
使用時間積算部64は、流体装置10の使用時間を積算し、その使用時間を出力する。また、使用時間積算部64は、状態検出部63のリセット信号に応答して使用時間をリセット(0クリア)し、そのクリアした時間(=0)から、流体装置10の使用時間を積算する。
【0047】
表示部65は、状態検出部63から通知された流体装置10の運転状態を表示する。表示部65としては、例えば、複数の表示灯(例えば、LED)、LCD等の表示パネル、等を用いることができる。複数の表示灯の場合、流体装置10の運転状態に応じた表示灯を点灯、または運転状態に応じた色にて点灯する。表示パネルの場合、運転状態を、文字,色にて表示する。
【0048】
上述したように、状態検出部63は、外部へ流体装置10の運転状態を通知する。例えば、状態検出部63は通信機能を有し、外部の通信回線(有線式又は無線式)と接続され、その通信回線を介して流体装置10の運転状態を外部へ送信する。通信回線は、例えば、監視装置に接続される。監視装置は、通信回線を介して運転状態を受信し、流体装置10の運転状態を表示器に表示する。なお、通信回線を介して例えば保守員の端末に流体装置10の運転状態が送信されてもよい。
【0049】
次に、状態検出の詳細を説明する。
流体装置10の運転状態は、警告状態、異常状態の要因、要因の状態を示す値を含む。状態検出部63は、流体装置10の所定位置に設置された各種の検出器(センサ)に基づいて、流体装置10の運転状態を検出する。
【0050】
次に、状態検出部63が検出する警告状態の例と、対応する非常運転の方法(動作点の変更)について説明する。
[ベアリング過熱]
状態検出部63は、図1に示す温度センサ53aにより検出した温度に基づいて、ベアリング過熱を検出する。例えば、状態検出部63は、温度センサ53aにより検出した温度としきい値温度とを比較し、ベアリング過熱を検出する。この場合、非常運転としては、図1に示す水車11(羽根車25a)の回転数を下げることがあげられる。例えば、図5に示す特性マップMにおいて、回転数Nを小さくするように動作点を変更する。これは、回転数の低下により、ベアリングの温度を低下させるように作用する。
【0051】
[パワーデバイス過熱]
状態検出部63は、図2に示す温度センサ54,55により検出した温度に基づいて、パワーデバイス(IGBT等)の過熱を検出する。例えば、状態検出部63は、温度センサ54,55により検出した温度と、しきい値温度とを比較し、パワーデバイス過熱を検出する。この場合、非常運転としては、例えば、電流、トルク、又は発電電力を下げることがあげられる。例えば、図5に示す特性マップMにおいて、トルクTを小さくするように動作点を変更する。また、非常運転として、PWM制御器75において、キャリア周波数を下げることや、変調方式を変更(三相変調から二相変調)するようにしてもよい。これらは、パワーデバイスの温度を低下させるように作用する。
【0052】
また、非常運転として、有効落差Hを増加させるように動作点を変更してもよい。有効落差Hは、図4に示す圧力センサ52aにより検出した一次圧力p1と、圧力センサ52bにより検出した二次圧力p2との差(=p1−p2)により得られる。この場合、図1に示す冷却流入配管33に流入する流量を増加させ、冷却器36,37の冷却能力を高くする。これにより、パワーデバイスを冷却する。
【0053】
[発電機過熱]
状態検出部63は、図2に示す温度センサ53bにより検出した温度に基づいて、発電機12の過熱(巻線の過熱)を検出する。例えば、状態検出部63は、検出した温度としきい値温度とを比較し、発電機過熱を検出する。この場合、非常運転としては、上述のパワーデバイス過熱と同様に、例えば、電流、トルク、又は発電電力を下げることがあげられる。また、非常運転として、鉄損を下げる、例えば、回転数を下げることや、キャリア周波数を下げる。また、上述のパワーデバイス過熱と同様に、非常運転として、有効落差Hを増加させるように動作点を変更してもよい。
【0054】
[漏水]
状態検出部63は、流体装置10の使用期間、又は水位センサ56により検出した水位に基づいて、漏水を検出する。漏水は、例えば、Oリング等のシール部材の劣化により生じる。この場合、非常運転としては、有効落差Hを下げる、流量Qを下げるように動作点を変更することがあげられる。
【0055】
[冷却配管の詰まり]
状態検出部63は、図2に示す温度センサ53b,54,55により検出した温度に基づいて、冷却配管の詰まりを検出する。例えば、状態検出部63は、冷却不良しきい値を記憶する。この冷却不良しきい値は、上述の過熱を検出するためのしきい値(過熱保護用しきい値)より低い値に設定される。状態検出部63は、検出した温度と冷却不良しきい値とを比較し、冷却配管の詰まりを検出する。この場合、非常運転としては、上述の[パワーデバイス過熱][発電機過熱]と同じ対応があげられる。
【0056】
[発電電力上限値の超過]
状態検出部63は、図4に示す電力計57により検出した電力に基づいて、発電電力上限値の超過を検出する。なお、電圧計と電流計とにより電力を得るようにしてもよい。この場合、非常運転としては、上述のパワーデバイス過熱と同様に、例えば、電流、トルク、又は発電電力を下げるように動作点を変更することがあげられる。
【0057】
[発電機の過トルクしきい値の超過]
状態検出部63は、発電機12の出力に基づいてトルクを検出し、検出したトルクに基づいて、発電機の過トルクしきい値の超過を検出する。この場合、非常運転としては、上述のパワーデバイス過熱と同様に、例えば、電流、トルク、又は発電電力を下げるように動作点を変更することがあげられる。
【0058】
[流量上限値の超過]
状態検出部63は、図4に示す流量計51により検出した流量Qに基づいて、流量上限値の超過を検出する。この場合、非常運転としては、流量Qを下げるように動作点を変更することがあげられる。
【0059】
[寿命]
状態検出部63は、図4に示す使用時間積算部64により積算した使用時間に基づいて、ベアリングやシール部材等の寿命を検出する。この場合、非常運転としては、有効落差Hを下げる、流量Qを下げるように動作点を変更することがあげられる。
【0060】
次に、警告状態と非常運転の一例として、上述の[冷却配管の詰まり]について詳述する。
上述したように、状態検出部63は、図2に示す温度センサ53b,54,55により検出した温度に基づいて、冷却配管の詰まりを検出する。なお、温度センサ53b,54,55により検出する温度、つまり、発電機12と発電機コントローラ13とインバータ14の温度上昇は、冷却配管(冷却流入配管31,33と冷却流出配管32,34)における異物の詰まりと、冷却配管に流体(水)が流れないことにより生じる。つまり、流体装置10の施工時に、冷却配管の施工不良(接続不良、バルブ23a,23b,24a,24bの開操作ミス)も、この[冷却配管の詰まり]として検出できる。例えば、稼動前のテスト動作において、上述の[冷却配管の詰まり]を検出することで、施工不良を検出できる。また、稼働後において、[冷却配管の詰まり]を検出することで、異物の詰まりを検出できる。なお、[冷却配管の詰まり]は、流体が供給される冷却器35,36,37における配管の詰まりも含む。
【0061】
検出方法としては、例えば時間あたりの温度変化(dT/dt)を用いてもよい。この場合、dT/dtが冷却不良しきい値より大きくなった場合、[冷却配管の詰まり]と判定することができる。
【0062】
また、発電機12の温度センサ53bは、図2及び図3に示すように、発電機コントローラ13と、インバータ14とから離れた位置に配置される。このため、温度センサ53bは、発電機コントローラ13とインバータ14の温度変化の影響を受けにくい。また、発電機コントローラ13とインバータ14の温度センサ54,55は、それぞれパワーデバイスの近傍に配置され、発電機12の温度変化の影響を受けにくい。従って、温度センサ53b,54,55それぞれの温度変化により、冷却流入配管31,33と冷却流出配管32,34のいずれが施工不良又は異物の詰まりがあるかを判定することができる。なお、異物の詰まりが原因の場合、非常運転として、有効落差Hを増加させるように動作点を変更することで、冷却流入配管33に流入する流量を増加させて冷却流入配管33を洗浄でき、異物を除去できる場合がある。
【0063】
状態検出部63は、使用時間積算部64が積算した使用時間と、各種検出器の出力等とに基づいて、運転状態を検出する。流体装置10は、定期的な点検(例えば、月次点検、年次点検、等)の実施が求められる。状態検出部63は、点検の時期(点検の周期)を記憶している。状態検出部63は、使用時間と点検の周期に基づいて、次の点検が実施されるまでの期間(点検待ち期間)を得る。そして、点検待ち期間が点検許容期間(例えば、1週間)よりも長い場合、状態検出部63は、異常状態を発電機制御部62と外部とに通知する。発電機制御部62は、通知された異常状態に基づいて、発電を停止する。
【0064】
また、点検待ち期間が点検許容期間(例えば、1週間)よりも短い場合、状態検出部63は、警告状態を発電機制御部62と外部とに通知する。発電機制御部62は、通知された警告状態に基づいて、非常運転を実施する。
【0065】
なお、状態検出部63は、点検待ち期間が点検許容期間よりも長い場合、点検待ち期間を点検許容期間以下とするように、点検の実施を促すように通知してもよい。この場合、慌てて点検を行う必要がなく、流体装置10の点検計画を立てることができ、例えば、定期点検の時期をずらすことで、点検の回数の増加を抑制できる。また、近くに配設された他の流体装置10と合わせて行うように計画することで、点検の工数(点検実施のための移動や人員)を低減できる。そして、経過時間が点検許容期間を超えた場合、状態検出部63は、異常状態を示す運転状態を通知する。この通知により、流体装置10が停止する。これにより、非常運転し続けることを防止できる。
【0066】
次に、発電機12の温度センサ53bの変化を一例として、非常運転について、説明する。
図7は、温度センサ53bにより検出した温度の変化、つまり発電機12の温度変化を示す。温度が上昇して冷却不良しきい値を超えると、上述の状態検出部63は、警告状態として例えば[発電機過熱]を検出し、警告状態を示す運転状態を通知する。発電機制御部62は、通知された運転状態(警告状態)に基づいて、例えば、電流を低下させ、発電電力を抑制する。例えば、正常運転時の発電電力の定格値を22kWとした場合、非常運転時には発電電力を11kWに低下させる。発電電力の抑制により、発電機12の温度が低下する。
【0067】
そして、温度が発電電力復帰しきい値より低くなると、状態検出部63は、警告状態から正常状態へと変化した、つまり正常状態に復帰したと判定し、その正常状態を示す運転状態を通知する。発電機制御部62は、通知された運転状態(正常状態)に基づいて所定の動作点にて流体装置10を制御し、発電電力を復帰させる。
【0068】
その後、温度が上昇して冷却不良しきい値を超えると、上述の状態検出部63は、警告状態として例えば[発電機過熱]を検出し、警告状態を示す運転状態を通知する。さらに、温度が発電電力復帰しきい値より低くなると、状態検出部63は、警告状態から正常状態へと変化した、つまり正常状態に復帰したと判定し、その正常状態を示す運転状態を通知する。
【0069】
このように、発電電力の抑制により、発電機12の温度が低下する場合、正常状態よりも発電電力は低くなるものの、発電を継続することができる。このため、温度上昇により流体装置10を停止する場合と比べ、積算の発電電力量を増加させることができる。また、この非常運転により、流体装置10に対する臨時点検を行わなくてよいため、臨時点検の頻度を低減できる。
【0070】
別の例として、図8に示すように、温度が上昇して冷却不良しきい値を超えると、上述の状態検出部63は、警告状態として例えば[発電機過熱]を検出し、警告状態を示す運転状態を通知する。発電機制御部62は、通知された運転状態(警告状態)に基づいて、例えば、電流を低下させ、発電電力を抑制する。
【0071】
非常動作における設定値によっては、温度が低下しない場合がある。例えば、正常運転時の発電電力の定格値を22kWとし、それより低い発電電力、例えば21kWとすると、図8に示すように、温度が上昇する。この場合、温度が上昇して過熱保護用しきい値に達する。このような場合は、異常状態となって、流体装置10は運転を停止する。このため、非常運転が継続する時間が短くなる。従って、非常運転では、温度が上昇しないように発電電力を設定することが好ましく、温度が低下するように発電電力を設定することがより好ましい。
【0072】
状態検出部63は、運転状態として異常状態を検出し、この運転状態を通知する。発電機制御部62は、その運転状態(異常状態)に基づいて、流体装置10の運転を停止する。このように、運転状態に応じて、流体装置10を停止させることができる。
【0073】
次に、発電機コントローラ13,インバータ14と冷却器36,37における異常の検出について説明する。
発電機コントローラ13は冷却器36を介して発電機12と接続され、インバータ14は冷却器37を介して発電機12と接続されている。従って、発電機コントローラ13の熱は、冷却器36を介して発電機12へと伝達し、インバータ14の熱は、冷却器37を介して発電機12へと伝達する。発電機12の温度センサ53bは、発電機12の温度と、冷却器36,37を介して発電機コントローラ13,インバータ14より伝わる温度とを検出する。
【0074】
例えば、発電機コントローラ13が過熱し、冷却器36が正常な場合、発電機コントローラ13の熱は、発電機12へと伝達し難い。このため、発電機12に設けられた温度センサ53bにより検出される温度の変化は少ない。この場合、発電機コントローラ13の温度センサ54により、発電機コントローラ13の過熱(パワーデバイス過熱)を検出できる。一方、発電機コントローラ13が正常であって、冷却器36に異常が生じた場合、発電機コントローラ13の温度センサ54により検出される温度が上昇する。発電機コントローラ13の熱は、発電機12へと伝達するため、温度センサ53bにより検出される温度が上昇する。この場合、冷却器36の異常(冷却配管の詰まり)を検出できる。インバータ14及び冷却器37についても同様である。このように、異常箇所(発電機コントローラ13,インバータ14か、冷却器36,37か)を特定できる。
【0075】
次に、流量、圧力を制御する場合について説明する。
水車11としてポンプ逆転水車を用いた場合、図5に示す特性マップMにおいて、水車11は、システムロスカーブS上の動作点で動作する。このため、トルクTを下げる(上げる)こと、回転数Nを上げる(下げる)こと、流量Qを下げる(上げる)こと、有効落差Hを上げる(下げる)ことは、同じ意味となる。このため、警告状態として[パワーデバイス過熱]や[モータ過熱]を検出した場合、水車の動作点を変更することで、流量を下げることができる。このため、電動弁を用いることなく、発電電力を低下させることができる。
【0076】
なお、図4に破線で示すように、電動弁81を水車11の二次側又は一次側に配設し、発電機コントローラ13に電動弁制御部82を設け、電動弁81の開度を制御する。これにより、警告状態に応じた非常運転を行うことができる。例えば、警告状態として[漏水]や[寿命]を検出した場合、流量Qと有効落差Hとを同時に下げるように、複数の制御を同時に行うことが必要となる。この場合、電動弁81の開度を調整することにより、図6に示すように、システムロスカーブS1を変更できる。これにより、トルクTを下げることと、回転数Nを下げることと、流量Qを下げることと、有効落差Hを下げること、を同時に行うことができる。このため、複数の要因による非常動作において、発電電力を低下させた非常運転を行うことができる。
【0077】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)流体装置10は、水車11と、水車11に連結された発電機12と、発電機12からの電力を変換する発電機コントローラ13とを有している。発電機コントローラ13は、通常動作を継続する正常状態及び動作を停止して停止状態を継続する異常状態と異なる警告状態では、非常運転を実施する。非常運転により運転を継続できるため、点検等の工数の増加を抑制できる。また、非常運転により発電を継続できるため、積算の発電電力量を増加できる。
【0078】
(2)発電機コントローラ13の状態検出部63は、流体装置10の運転状態を検出し、通知する。この通知により、流体装置10の運転状態を把握できる。そして、運転状態として警告状態が通知された場合、点検を行うことで、異常状態になることを事前に抑制できる。
【0079】
(3)状態検出部63が通知する警告状態は、発生時刻、点検許容期間、対象箇所、保守部品、設置場所の少なくとも1つを含む。このため、警告状態を詳細に把握でき、点検の際の工数を低減できる。
【0080】
(4)状態検出部63は、点検の時期(点検の周期)を記憶している。状態検出部63は、使用時間と点検の周期に基づいて、次の点検が実施されるまでの期間(点検待ち期間)を得る。点検待ち期間が点検許容期間よりも長い場合、点検待ち期間を点検許容期間以下とするように、点検の実施を促すように通知する。この場合、例えば、定期点検の時期をずらすことで、臨時の点検を慌てて行うことがなくなり、点検の回数を低減できる。
【0081】
(5)発電機コントローラ13は冷却器36を介して発電機12と接続され、インバータ14は冷却器37を介して発電機12と接続されている。従って、発電機コントローラ13の熱は、冷却器36を介して発電機12へと伝達し、インバータ14の熱は、冷却器37を介して発電機12へと伝達する。発電機12の温度センサ53bは、発電機12の温度と、冷却器36,37を介して発電機コントローラ13,インバータ14より伝わる温度とを検出する。これにより、異常箇所(発電機コントローラ13,インバータ14か、冷却器36,37か)を特定できる。
【0082】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
図7に示すように、温度に応じて自動的に非常運転から正常運転に復帰するようにしたが、手動により正常運転に復帰するようにしてもよい。
【0083】
・非常運転において、段階的に発電電力を低下させるようにしてもよい。
・流量に替えて圧力を制御する構成としてもよい。
・発電機コントローラ13にコンバータ部61を含み、インバータ14とは別構成としたが、発電機コントローラ13とインバータ14とを一体構成としてもよい。
【0084】
・以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0085】
11 水車(水力機械)
12 発電機(回転電気機械)
13 発電機コントローラ(電力変換制御装置)
14 インバータ(電力変換制御装置)
53b 温度センサ(温度検出器)
36,37 冷却器
63 状態検出部(検出部、計時部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8