(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593441
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月30日
(54)【発明の名称】電子材料用の洗浄剤組成物、洗浄剤原液、及び電子材料の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/32 20060101AFI20191021BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20191021BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20191021BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20191021BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20191021BHJP
【FI】
C11D7/32
C11D7/26
C11D17/08
H01L21/304 647A
B08B3/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-537334(P2017-537334)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2016088131
(87)【国際公開番号】WO2017110885
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2017年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-254252(P2015-254252)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井内 洋介
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−515246(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/060379(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/005068(WO,A1)
【文献】
特開2015−218295(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101412950(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102827708(CN,A)
【文献】
特開2014−049521(JP,A)
【文献】
特開2013−157516(JP,A)
【文献】
特開2012−186470(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2013−0068903(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/32
B08B 3/08
C11D 7/26
C11D 17/08
H01L 21/304
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と共沸性を示す3級アミン(A)及び水(B)を含む洗浄剤組成物であって、
前記3級アミン(A)の沸点が、1気圧下で130〜250℃であり、
前記3級アミン(A)が、一般式(3):
(R4)R5N−C2H4−Z−C2H4−NR6(R7)
(式(3)中、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ同一または異なる炭素数1〜3のアルキル基を示し、Zは−CH2−、−(CH2)2−、−O−、−NH−、または−N(CH3)−を示す。)で表されるポリアミン(A2)(但し、式(3)中、R4、R5、R6及びR7がメチル基を示し、かつZが−N(CH3)−を示す化合物を除く)であり、
前記洗浄剤組成物における前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の3級アミン(A)の重量割合(%)が、3級アミン(A)及び水(B)からなる共沸混合物中の3級アミン(A)の重量割合以下であり、
さらに、水と共沸性を示す一般式(1):
R1−O−[CH2−CH(X)−O]n−H
(式(1)中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3を示し、Xは水素又はメチル基を示す。)で表されるグリコール系溶剤(C)を含み、
前記グリコール系溶剤(C)の沸点が、1気圧下で120〜275℃であり、
前記洗浄剤組成物における前記グリコール系溶剤(C)と前記水(B)の合計中のグリコール系溶剤(C)の重量割合(%)が、グリコール系溶剤(C)及び水(B)からなる共沸混合物中のグリコール系溶剤(C)の重量割合以下であることを特徴とする電子材料用の洗浄剤組成物(但し、ジメチルスルホキシドおよびフッ化物を含む洗浄剤組成物を除く)。
【請求項2】
前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の前記3級アミン(A)の重量割合(A/(A+B))が、1/100000以上である請求項1記載の電子材料用の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記3級アミン(A)と前記水(B)と前記グリコール系溶剤(C)の合計中の前記3級アミン(A)と前記グリコール系溶剤(C)の合計の重量割合((A+C)/(A+B+C))が、1/100000以上である請求項1または2記載の電子材料用の洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子材料用の洗浄剤組成物を調製するための前記3級アミン(A)、前記水(B)および前記グリコール系溶剤(C)を含む洗浄剤原液。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の電子材料用の洗浄剤組成物を用いた電子材料の洗浄工程を含むことを特徴とする電子材料の洗浄方法。
【請求項6】
すすぎ工程を含まないことを特徴とする、請求項5記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項7】
電子材料のパーティクルの除去工程を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の電子材料の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料用の洗浄剤組成物、洗浄剤原液、及び電子材料の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス業界では、情報化、省エネルギー化、低炭素化社会への変遷に伴い、電子部品の小型化、高性能化が急速に進展している。そして、その背景には、研磨、平坦化の技術が大きく関与している。
【0003】
例えば、半導体関連の分野では、CMOSやTTL等のデジタルIC製造時のリソグラフィ工程において、微細な回路パターンを正確かつ高効率で転写する目的で、シリコンウエハ上に形成された酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、リン化ケイ酸ガラス(PSG)等の絶縁薄膜の研磨、平坦化が行なわれている。また、ハードディスク(Hard disk Drive、HDD)等の磁気ディスクを扱う分野では、ディスク表面と磁気ヘッドの間隔をナノオーダーで制御し、記録密度と信頼性を両立させるために、ディスク表面の研磨、平坦化が行なわれている。更に、半導体照明(LED)等の光デバイスや、大電力用ダイオード、トランジスタ等のパワーデバイスを扱う分野では、研磨工程により、サファイア(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などの基板表面の凹凸、変質、汚染箇所を除去し、製品の性能や歩留まりを向上させている。
【0004】
上記研磨方法としては、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)又はセリア(CeO
2)等の微粒子を水系溶媒等に分散させた研磨剤(スラリー)を使用した化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing、CMP)及びダイヤモンド等の硬質粒子を散りばめた、ブラシ、パッド、ホイール等により機械的に研磨する方法等がある。
【0005】
しかしながら、いずれの方法においても、研磨後の電子材料には大量の砥粒や研磨屑など(以下、パーティクルと記載する。)が付着し、性能や歩留まりの低下を招く。従って、それらを除去する洗浄工程が必要不可欠であり、パーティクルを機能的かつ効率的に除去する洗浄剤組成物の開発が急務となっている。このような洗浄剤組成物として、例えば、下記の洗浄剤組成物が開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の洗浄剤組成物は、フッ素系陰イオン性界面活性剤と第4級アンモニウム水酸化物を含有しており、任意成分としてアルカノールアミンを含む。同文献によると、この洗浄剤組成物は半導体ウエハ表面のパーティクルの除去に適していることが示されている。しかし、この洗浄剤組成物には不揮発性の界面活性剤等が含まれており、洗浄工程の後、それらを洗い落とすためのすすぎ工程が必須であると考えられる。
【0007】
特許文献2に記載の洗浄剤組成物は、アルキルアミン類、芳香族ジアミン類、尿素類、チオ尿素類、アゾ化合物、含窒素複素環化合物及び特定のアミノ酸類を含有している。同文献によると、この洗浄剤組成物は銅配線が施された半導体表面の酸化銅、及びパーティクルの除去に好適であることが示されている。しかし、この洗浄剤組成物には不揮発性の酸(例えば、グリシン)等が含まれており、洗浄工程の後、それらを洗い落とすためのすすぎ工程が必須であると考えられる。
【0008】
特許文献3に記載の洗浄剤組成物は、グリシン、アクリル酸系重合体、特定の非イオン性化合物及び水を含む。同文献によると、この洗浄剤組成物は化学機械研磨(CMP)用のスラリーに由来するパーティクルの除去に適していることが示されている。しかし、この洗浄剤組成物には不揮発性の酸(例えば、グリシン)や重合体等が含まれており、洗浄工程の後、それらを洗い落とすためのすすぎ工程が必須であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3624809号公報
【特許文献2】特許第4821082号公報
【特許文献3】特開2008−147449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、非常に少量(低濃度)の使用でも、洗浄対象物に付着するパーティクルを除去することができ、なおかつ洗浄剤成分を洗い落とすためのすすぎ工程がなくても、洗浄剤の残渣が残らない電子材料用の洗浄剤組成物、その原液、及び電子材料の洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、水と共沸性を示す3級アミン(A)及び水(B)を特定比率で用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記項1〜9である。
【0012】
項1.水と共沸性を示す3級アミン(A)及び水(B)を含む洗浄剤組成物であって、前記3級アミン(A)の沸点が、1気圧下で130〜250℃であり、前記洗浄剤組成物における前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の3級アミン(A)の重量割合(%)が、3級アミン(A)及び水(B)からなる共沸混合物中の3級アミン(A)の重量割合以下であることを特徴とする電子材料用の洗浄剤組成物。
【0013】
項2.さらに、水と共沸性を示す一般式(1):R
1−O−[CH
2−CH(X)−O]
n−H(式(1)中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3を示し、Xは水素又はメチル基を示す。)で表されるグリコール系溶剤(C)を含み、前記グリコール系溶剤(C)の沸点が、1気圧下で120〜275℃であり、前記洗浄剤組成物における前記グリコール系溶剤(C)と前記水(B)の合計中のグリコール系溶剤(C)の重量割合(%)が、グリコール系溶剤(C)及び水(B)からなる共沸混合物中のグリコール系溶剤(C)の重量割合以下であることを特徴とする前項1記載の電子材料用の洗浄剤組成物。
【0014】
項3.前記3級アミン(A)が、一般式(2):(R
2)R
3N−CH
2−CH(Y)−OH(式(2)中、R
2及びR
3はそれぞれ同一または異なる炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは水素又はメチル基を示す。)で表されるモノアミン(A1)、及び一般式(3):(R
4)R
5N−C
2H
4−Z−C
2H
4−NR
6(R
7)(式(3)中、R
4、R
5、R
6及びR
7はそれぞれ同一または異なる炭素数1〜3のアルキル基を示し、Zは−CH
2−、−(CH
2)
2−、−O−、−NH−、または−N(CH
3)−を示す。)で表されるポリアミン(A2)のいずれか1つ以上であることを特徴とする前項1又は2記載の電子材料用の洗浄剤組成物。
【0015】
項4.前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の前記3級アミン(A)の重量割合(A/(A+B))が、1/100000以上である前項1〜3のいずれかに記載の電子材料用の洗浄剤組成物。
【0016】
項5.前記3級アミン(A)と前記水(B)と前記グリコール系溶剤(C)の合計中の前記3級アミン(A)と前記グリコール系溶剤(C)の合計の重量割合((A+C)/(A+B+C))が、1/100000以上である前項2〜4のいずれかに記載の電子材料用の洗浄剤組成物。
【0017】
項6.前項1〜5のいずれかに記載の電子材料用の洗浄剤組成物を調製するための前記3級アミン(A)および前記水(B)を含む洗浄剤原液。
【0018】
項7.前項1〜5のいずれかに記載の電子材料用の洗浄剤組成物を用いた電子材料の洗浄工程を含むことを特徴とする電子材料の洗浄方法。
【0019】
項8.すすぎ工程を含まないことを特徴とする、前項7記載の電子材料の洗浄方法。
【0020】
項9.電子材料のパーティクルの除去工程を含むことを特徴とする前項7又は8の電子材料の洗浄方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、非常に少量(低濃度)の使用でも、電子材料に付着するパーティクルを除去することができ、なおかつ洗浄剤成分を洗い落とすためのすすぎ工程がなくても、洗浄剤の残渣が残らない電子材料用の洗浄剤組成物、その原液及び電子材料の洗浄方法を提供することができる。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物は、水と共沸性を示す3級アミン(A)及び水(B)を含み、前記洗浄剤組成物における前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の3級アミン(A)の重量割合(%)が、3級アミン(A)及び水(B)からなる共沸混合物中の3級アミン(A)の重量割合以下であるため、例えば、50℃〜150℃程度条件下、数分〜数十分の短時間での乾燥時でも、洗浄剤の残渣が残らないという作用効果を奏するため、安全性や生産性に優れている。
【0023】
また、本発明の洗浄剤組成物が、さらに、水と共沸性を示す一般式(1):R
1−O−[CH
2−CH(X)−O]
n−H(式(1)中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3を示し、Xは水素又はメチル基を示す。)で表されるグリコール系溶剤(C)を含む場合、前記洗浄剤組成物における前記グリコール系溶剤(C)と前記水(B)の合計中のグリコール系溶剤(C)の重量割合(%)が、グリコール系溶剤(C)及び水(B)からなる共沸混合物中のグリコール系溶剤(C)の重量割合以下であるため、例えば、50℃〜150℃程度条件下、数分〜数十分の短時間での乾燥時でも、洗浄剤の残渣が残らないという作用効果を奏するため、安全性や生産性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】洗浄剤組成物のパーティクル除去方法を示した一例による説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の洗浄剤組成物は、水と共沸性を示す3級アミン(A)(以下、(A)成分ともいう。)及び水(B)(以下、(B)成分ともいう。)を含み、3級アミンの沸点が1気圧下(常圧下、標準大気圧下)で130〜250℃であり、前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の3級アミン(A)の重量割合(%)が、3級アミン(A)及び水(B)からなる共沸混合物中の3級アミン(A)の重量割合以下(3級アミンの配合割合が水との共沸混合物の組成比以下)である。第3級アミン(A)の沸点が1気圧下で130℃未満であると、当該洗浄剤組成物の原液に引火の危険性が生じ、輸送、保管等の取り扱いが困難となる。一方、第3級アミン(A)の沸点が1気圧下で250℃を超えると、水との共沸混合物を形成し難く、乾燥性が悪くなる。従って、引火性及び乾燥性の点で好ましくは、140〜240℃程度、より好ましくは、150〜230℃程度である。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物は、前記3級アミン(A)と前記水(B)の合計中の3級アミン(A)の重量割合(%)が、3級アミン(A)及び水(B)からなる共沸混合物中の3級アミン(A)の重量割合以下である。当該3級アミン(A)及び水(B)からなる共沸混合物は、3級アミン(A)及び水(B)からなる混合物が共沸混合物(定沸点混合物)を形成する組成物を意味する。当該3級アミン(A)及び水(B)からなる混合物が共沸混合物を形成するときの、共沸混合物中の(A)の重量割合は、例えば、混合溶液を多段蒸留することにより得られる沸点100℃以下の留分を、ガスクロマトグラフィーにより分析し、絶対検量線法に従い定量することにより求められる。
【0027】
上記(A)成分としては、水と共沸性を示し、1気圧下で沸点が130〜250℃程度の3級アミンであれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、パーティクルの除去力と乾燥性の点から、下記一般式(2)で表されるモノアミン(A1)(以下、(A1)成分ともいう。)、及び下記一般式(3)で表されるポリアミン(A2)(以下、(A2)成分ともいう。)が特に好ましい。(A)成分は、(A1)成分又は(A2)成分のいずれか1成分でもよいし、両方の成分を含んでもよい。
【0028】
一般式(2):(R
2)R
3N−CH
2−CH(Y)−OH
(式(2)中、R
2及びR
3はそれぞれ同一または異なる炭素数1〜3のアルキル基を示し、Yは水素又はメチル基を示す。)
【0029】
一般式(3):(R
4)R
5N―C
2H
4―Z―C
2H
4―NR
6(R
7)
(式(3)中、R
4、R
5、R
6、及びR
7はそれぞれ同一または異なる炭素数1〜3のアルキル基を示し、Zは−CH
2−、−(CH
2)
2−、−O−、−NH−、または−N(CH
3)−を示す。)
【0030】
前記一般式(2)中、R
2及びR
3のアルキル基は、炭素数2〜3が好ましく、2がより好ましい。また、Yは、水素が好ましい。
【0031】
前記一般式(3)中、R
4、R
5、R
6、及びR
7のアルキル基は、炭素数1〜2が好ましく、1がより好ましい。また、Zは、−CH
2−、−(CH
2)
2−、または−O−が好ましく、−CH
2−または−(CH
2)
2−がより好ましい。
【0032】
上記(A1)成分としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)エタノール、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール、2−(ジ−n−プロピルアミノ)エタノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、1−ジエチルアミノ−2−プロパノール、1−ジイソプロピルアミノ−2−プロパノール及び1−ジ−n−プロピルアミノ−2−プロパノール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、パーティクルの除去力の点及び引火の危険性の低さの点より、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−(ジイソプロピルアミノ)エタノール及び1−ジエチルアミノ−2−プロパノールからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0033】
上記(A2)成分としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−n−プロピルペンタメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−n−プロピルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジイソプロピルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジ−n−プロピルアミノエチル)エーテル、1,1,7,7−テトラメチルジエチレントリアミン、1,1,7,7−テトラエチルジエチレントリアミン、1,1,7,7−テトライソプロピルジエチレントリアミン、1,1,7,7−テトラ−n−プロピルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、4−メチル−1,1,7,7−テトラエチルジエチレントリアミン、4−メチル−1,1,7,7−テトライソプロピルジエチレントリアミン及び4−メチル−1,1,7,7−テトラ−n−プロピルジエチレントリアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特に、パーティクルの除去力の点及び引火の危険性の低さの点より、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル及びN,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0034】
上記(B)成分としては、超純水、純水、精製水、蒸留水、イオン交換水及び水道水等が挙げられる。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(A)成分と(B)成分の合計中の3級アミン(A)の重量割合(A/(A+B))が、1/100000以上であることが、パーティクルの除去性の点で好ましい。より好ましくは、1/80000以上であり、さらに好ましくは、1/20000以上であり、よりさらに好ましくは、1/5000以上である。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物は、パーティクル除去性の点で、水と共沸性を示す一般式(1):R
1−O−[CH
2−CH(X)−O]
n−H(式(1)中、R
1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3を示し、Xは水素又はメチル基を示す。)で表されるグリコール系溶剤(C)(以下、(C)成分ともいう。)を含み、前記グリコール系溶剤(C)の沸点が、1気圧下で120〜275℃であり、前記洗浄剤組成物における前記グリコール系溶剤(C)と前記水(B)の合計中のグリコール系溶剤(C)の重量割合(%)が、グリコール系溶剤(C)及び水(B)からなる共沸混合物中のグリコール系溶剤(C)の重量割合以下含むことが好ましい。
【0037】
上記のグリコール系溶剤(C)及び水(B)からなる共沸混合物は、(C)及び(B)からなる混合物が共沸混合物(定沸点混合物)を形成する組成物を意味する。当該グリコール系溶剤(C)及び水(B)からなる混合物が共沸混合物を形成するときの、共沸混合物中の(C)の重量割合は、例えば、混合溶液を多段蒸留することにより得られる沸点100℃以下の留分を、ガスクロマトグラフィーにより分析し、絶対検量線法に従い定量することにより求められる。
【0038】
前記一般式(1)中、R
1のアルキル基は、炭素数1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。また、Xは、メチル基が好ましい。また、nは、2〜3が好ましく、3がより好ましい。
【0039】
上記(C)成分としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせても良い。これらの中でも特に、パーティクルの除去力の点及び引火の危険性の低さの点より、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0040】
また、(C)成分は、乾燥性が良好となる点及び洗浄剤原液の引火を抑制できる点でその1気圧下の沸点が120〜275℃程度、好ましくは130〜260℃程度、一層好ましくは140〜250℃程度である。
【0041】
なお、(C)成分を加える場合、本発明の洗浄剤組成物は、上記(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計中の(A)成分と(C)成分の重量割合((A+C)/(A+B+C))が、1/100000以上であることが、パーティクルの除去性の点で好ましい。より好ましくは、1/80000以上であり、さらに好ましくは、1/20000以上であり、よりさらに好ましくは、1/5000以上である。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物中の(A)成分及び(B)成分の合計割合、あるいは、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、98重量%以上がよりさらに好ましく、100重量%がよりさらに好ましい。
【0043】
本発明の洗浄剤組成物は、(A)成分及び(B)成分、必要に応じて(C)成分を各種公知の手段で混合することにより調製する。
【0044】
本発明の洗浄剤組成物は、電子材料の洗浄剤として用いられる。電子材料としては、例えば、フォトマスク、光学レンズ、真空放電管、タッチパネル、表示デバイス用ガラス等のガラス加工品、メタルマスク、パレット、リードフレーム、磁気ディスク、ヒートシンク等の金属加工品、ガラスエポキシ基板、ポリイミド基板、紙フェノール基板、プラスチックモールド部品等の樹脂加工品、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンド(C)、窒化ガリウム(GaN)、燐化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、燐化インジウム(InP)等のウエハ及びそれらの、切断(スライシング、ダイシング等)、研削(バックグラインド、ブラスト等)、面取り(ベベリング、バレル等)、研磨(ラッピング、ポリシング、バフ等)加工品、更には、それらの物品を加工、実装、溶接、洗浄、搬送する際に使用する治具、キャリア、マガジン等が含まれる。
【0045】
また、電子材料としては、プリント回路基板、フレキシブル配線基板、セラミック配線基板、半導体素子、半導体パッケージ、磁気メディア、パワーモジュール及びカメラモジュール等の電子部品、更には、それらの物品を加工、実装、溶接、洗浄、搬送する際に使用する治具、キャリア、マガジン等が挙げられる。
【0046】
本発明の洗浄剤組成物は、乾燥性に影響しない範囲で、各種公知の添加剤を配合してもよい。添加剤として、具体的には、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子型界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤、防錆剤、封孔処理剤、pH調整剤及び消泡剤等が挙げられる。
【0047】
水で希釈することにより、上記電子材料用の洗浄剤組成物を調製することができる洗浄剤原液もまた本発明の1つである。本発明の洗浄剤原液には、パーティクルの洗浄に有効な成分が濃縮されており、効率の良い輸送、保管が可能となる。また、この洗浄剤原液は少量でも優れた洗浄性を発現するため、使用時に水で希釈する際、水の重量比率を高めることができ、コスト、環境負荷が低減される点でも優れている。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物を用いた電子材料の洗浄工程を含む洗浄方法もまた本発明の1つである。洗浄工程は、本発明に係る洗浄剤組成物をパーティクルが付着した電子材料に接触させ、パーティクルを洗い落とす工程である。当該洗浄方法は、各種公知のリンス剤により電子材料から洗浄剤成分を洗い落とすためのすすぎ工程を含まなくてもよい。これにより、すすぎ工程に掛かるコスト及び時間の削減が可能となる。洗浄対象となるパーティクルは特に限定されないが、代表的なものとして、例えば、化学機械研磨(CMP)及び機械的研磨に使用される、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、セリア(CeO
2)等の微粒子、ダイヤモンド、ガーネット、ステンレス、鋼、鉄、銅、亜鉛、アルミ、セラミック、ガラス、珪砂、プラスチック等の硬質粒子及び上記電子材料を、切断(スライシング、ダイシング等)、研削(バックグラインド、ブラスト等)、面取り(ベベリング、バレル等)、研磨(ラッピング、ポリシング、バフ等)加工する際に発生する、切り粉、破片、研磨屑、更には、上記電子材料及び電子部品を加工、実装、溶接、洗浄、搬送する際に生じる有機物残渣、無機物残渣などが挙げられる。
【0049】
その他のパーティクルとしては、例えば、上記電子材料及び電子部品の製造工程全般において、物品に付着する塵、埃等が挙げられる。
【0050】
本発明の洗浄剤組成物をパーティクルが付着した物品に接触させ、物品を洗浄する手段は限定されず、洗浄手段としては、例えば、浸漬洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、超音波洗浄、液中ジェット洗浄、直通式洗浄(ダイレクトパス(登録商標))等が挙げられる。また、公知の洗浄装置として、例えば、特開平7−328565号公報、特開2000−189912号公報、特開2001−932号公報、特開2005−144441号公報等が挙げられる。なお、本発明の洗浄剤組成物および洗浄剤原液は、非危険物であるため燃焼しない。そのため防爆設備も不要となることから、シャワー洗浄やスプレー洗浄にも好適である。
【0051】
本発明の洗浄剤組成物は、乾燥工程において容易に揮発させることが可能であるため、洗浄後の物品に残渣が残存しない。そのため、物品のすすぎ工程を省略できる。ただし、必要に応じ、本発明と同一の洗浄剤又は各種公知のリンス剤ですすぐことができる。該リンス剤としては、純水及びイオン交換水等の水、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明方法を更に詳しく説明するが、本発明がこれらに限定されないことはもとよりである。なお、実施例中、部または%は重量基準である。また、以下の洗浄剤原液に使用した各種3級アミン(A)およびグリコール系溶剤(C)について、その構造、1気圧下での沸点、水との共沸混合物の組成比(重量割合)について、表2、表3に示す。
【0053】
[共沸混合物の組成比]
200mlのナス型フラスコに、(A)成分25重量部、イオン交換水100重量部を入れ、マグネチックスターラーにより十分に混合し、(A)成分を含む水溶液を調製した。次いで、当該ナス型フラスコに理論段数N=10に相当する蒸留カラム、ト字管、温度計及びリービッヒ冷却器を接続した。次いで、1気圧下、当該ナス型フラスコをオイルバスで加熱し、混合溶液を沸騰させることにより、沸点100℃以下の留分のみを採取した。
【0054】
次に、当該留分における前記(A)成分を、ガスクロマトグラフィー6850 Network GC System(Agilent Technologies社製)において、絶対検量線法に従い、定量した。また(C)成分についても(A)成分に変えて同様の方法で定量した。
【0055】
1.洗浄剤原液の調製
調製例1
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分として2−(ジエチルアミノ)エタノール(DEAE)20重量部、前記(C)成分としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGMME)80重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0056】
調製例2
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてDEAE20重量部、前記(C)成分としてトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPGMME)80重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0057】
調製例3
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてN,N,N’,N’,−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)20重量部、前記(C)成分としてTPGMME80重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0058】
調製例4
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてTMHMDA20重量部、前記(C)成分としてジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DEGMBE)80重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0059】
調製例5
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(BDMAEE)20重量部、前記(C)成分としてDEGMBE80重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0060】
調製例6
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてDEAE100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0061】
調製例7
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてTMHMDA100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0062】
調製例8
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてBDMAEE100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0063】
比較調製例1
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてN−ブチルジエタノールアミン(BDEA)20重量部、前記(C)成分としてテトラエチレングリコールモノメチルエーテル(TEGMME)80重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0064】
比較調製例2
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてBDEA100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0065】
比較調製例3
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分として2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール(AEAE)100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0066】
比較調製例4
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(C)成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(POEAE)100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0067】
比較調製例5
ビーカーにイオン交換水100重量部、前記(A)成分としてジエチルアミン(DEA)100重量部及びスターラーピースを入れ、マグネチックスターラーにより十分に攪拌し、洗浄剤原液を調製した。
【0068】
比較調製例6
イオン交換水そのものを洗浄剤原液として使用した。
【0069】
2.洗浄剤原液の引火性
[引火性の評価方法]
各々の洗浄剤原液の引火点を、クリーブランド開放法(JIS K2265−4)に準拠して測定し、引火性を以下の基準で評価した。表1に結果を示す。
【0070】
[引火性の評価基準]
○:引火点無し、もしくは引火点が100℃以上
×:引火点が100℃未満
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
3.洗浄剤組成物のパーティクル除去性
[汚染液の調製]
スクリュー管(容量20mL)(A)にアセトン(和光純薬工業(株)製、純度99.5%以上)9.9gと結晶性シリカフィラー(商品名「クリスタライト VX−S2」、(株)龍森製、平均粒子径5μm)0.1gを入れ、よく振盪し、濃度1%の汚染液(A)を10g調製した。続いて、他のスクリュー管(A’)に汚染液(A)1gとアセトン9gを入れ、よく振盪し、濃度0.1%の汚染液(A’)を10g調製した。
【0075】
同様に、スクリュー管(B)にアセトン9.9gと球状シリカ(商品名「Sciqas」、堺化学工業(株)製、平均粒子径1μm)0.1gを入れ、よく振盪し、濃度1%の汚染液(B)を10g調製した。続いて、他のスクリュー管(B’)に汚染液(B)1gとアセトン9gを入れ、よく振盪し、濃度0.1%の汚染液(B’)を10g調製した。
【0076】
同様に、スクリュー管(C)にアセトン9.9gとアルミナ粒子(商品名「精密研磨用α−アルミナ」、和光純薬工業(株)製、平均粒子径0.5μm)0.1gを入れ、よく振盪し、濃度1%の汚染液(C)を10g調製した。続いて、他のスクリュー管(C’)に汚染液(C)1gとアセトン9gを入れ、よく振盪し、濃度0.1%の汚染液(C’)を10g調製した。
【0077】
[試験用ウエハの作製]
次に、汚染液(A)0.02gを高純度シリコンウエハ(アズワン(株)製、直径φ4inch)の中心に滴下し、自然乾燥させ、試験用ウエハ(A)を作製した。また、汚染液(B)、(C)及び(A’)〜(C’)、についても同様に高純度シリコンウエハに滴下し、自然乾燥させ、試験用ウエハ(B)、(C)及び(A’)〜(C’)をそれぞれ作製した。
【0078】
[パーティクル除去性の評価方法]
実施例1
図1に示すように、ビーカー(1)(容量1000mL、胴径φ110mm、高さ150mm)に調製例1の洗浄剤原液40.0g(2)、イオン交換水960.0g(3)及びスターラーピース(4)を入れ、マグネチックスターラー(5)により十分に攪拌し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/50となる洗浄剤組成物を調製した。続いて、マグネチックスターラーの回転速度を800rpmに調節し、溶液中に上記試験用ウエハ(A)(6)を入れ、ステンレスクリップ(7)及びステンレス棒(8)により固定しながら、室温下で10分間洗浄を行なった。その後、溶液から試験用ウエハ(A)を取り出し、温度80℃に設定した循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。また、上記試験用ウエハ(B)、(C)及び(A’)〜(C’)についても同様の手順で洗浄と乾燥を行なった。
【0079】
次に、光学顕微鏡(1000倍率)を使用し、洗浄と乾燥を終えた試験用ウエハ(A)の汚染箇所をランダムに5箇所観察し、残存するパーティクルの総数を求めた。一方で、これと同様の方法により、上記汚染液(A)で汚染された直後のウエハ表面に付着するパーティクルの総数も求めておき、次式によりパーティクル除去率を算出した。この評価を実施例1つにつき5回行ない、パーティクル除去率の平均値を求め、以下の評価基準に基づきパーティクル除去性を評価した。表4に結果を示す(以下同様)。
【0080】
パーティクル除去率(%)=(汚染直後のパーティクル総数−洗浄後に残存するパーティクル総数)/汚染直後のパーティクル総数×100
【0081】
[パーティクル除去性の評価基準]
◎:パーティクル除去率が90%以上
○:パーティクル除去率が70%以上90%未満
△:パーティクル除去率が50%以上70%未満
×:パーティクル除去率が50%未満
【0082】
また、洗浄と乾燥を終えた試験用ウエハ(B)、(C)及び(A’)〜(C’)についても同様の手順でパーティクル除去性を評価した。
【0083】
実施例2
図1に示すように、ビーカー(1)(容量1000mL、胴径φ110mm、高さ150mm)に調製例1の洗浄剤原液20.0g(2)、イオン交換水980.0g(3)及びスターラーピース(4)を入れ、マグネチックスターラー(5)により十分に攪拌し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/100となる洗浄剤組成物を調製した。続いて、マグネチックスターラーの回転速度を800rpmに調節し、溶液中に上記試験用ウエハ(A)(6)を入れ、ステンレスクリップ(7)及びステンレス棒(8)により固定しながら、室温下で10分間洗浄を行なった。その後、溶液から試験用ウエハ(A)を取り出し、温度80℃に設定した循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。また、上記試験用ウエハ(B)、(C)及び(A’)〜(C’)についても同様の手順で洗浄と乾燥を行なった。
【0084】
洗浄と乾燥を終えた試験用ウエハ(A)〜(C)及び(A’)〜(C’)について、実施例1と同等の評価基準に基づきパーティクル除去性を評価した。
【0085】
実施例3
図1に示すように、ビーカー(1)(容量1000mL、胴径φ110mm、高さ150mm)に調製例1の洗浄剤原液1.0g(2)、イオン交換水999.0g(3)及びスターラーピース(4)を入れ、マグネチックスターラー(5)により十分に攪拌し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/2000となる洗浄剤組成物を調製した。続いて、マグネチックスターラーの回転速度を800rpmに調節し、溶液中に上記試験用ウエハ(A)(6)を入れ、ステンレスクリップ(7)及びステンレス棒(8)により固定しながら、室温下で10分間洗浄を行なった。その後、溶液から試験用ウエハ(A)を取り出し、温度80℃に設定した循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。また、上記試験用ウエハ(B)、(C)及び(A’)〜(C’)についても同様の手順で洗浄と乾燥を行なった。
【0086】
洗浄と乾燥を終えた試験用ウエハ(A)〜(C)及び(A’)〜(C’)について、実施例1と同等の評価基準に基づきパーティクル除去性を評価した。
【0087】
実施例4
図1に示すように、ビーカー(1)(容量1000mL、胴径φ110mm、高さ150mm)に調製例1の洗浄剤原液0.2g(2)、イオン交換水999.8g(3)及びスターラーピース(4)を入れ、マグネチックスターラー(5)により十分に攪拌し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/10000となる洗浄剤組成物を調製した。続いて、マグネチックスターラーの回転速度を800rpmに調節し、溶液中に上記試験用ウエハ(A)(6)を入れ、ステンレスクリップ(7)及びステンレス棒(8)により固定しながら、室温下で10分間洗浄を行なった。その後、溶液から試験用ウエハ(A)を取り出し、温度80℃に設定した循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。また、上記試験用ウエハ(B)、(C)及び(A’)〜(C’)についても同様の手順で洗浄と乾燥を行なった。
【0088】
洗浄と乾燥を終えた試験用ウエハ(A)〜(C)及び(A’)〜(C’)について、実施例1と同等の評価基準に基づきパーティクル除去性を評価した。
【0089】
実施例5〜18、比較例1〜8
実施例1と同様の方法で、表4に示すように、各々の洗浄剤原液を配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が1/2000あるいは1/10000となるように希釈し、それぞれの洗浄剤組成物のパーティクル除去性を評価した。
【0090】
比較例9
比較調製例5の洗浄剤原液は、引火点が100℃未満のため、評価しなかった。
【0091】
比較例10
図1に示すように、ビーカー(1)(容量1000mL、胴径φ110mm、高さ150mm)にイオン交換水1000g(3)及びスターラーピース(4)を入れ、マグネチックスターラーの回転速度を800rpmに調節した。続いて、溶液中に上記試験用ウエハ(A)(6)を入れ、ステンレスクリップ(7)及びステンレス棒(8)により固定しながら、室温下で10分間洗浄を行なった。その後、溶液から試験用ウエハ(A)を取り出し、温度80℃に設定した循風乾燥機の中で10分間乾燥させた。また、上記試験用ウエハ(A’)〜(C’)についても同様の手順で洗浄と乾燥を行なった。
【0092】
洗浄と乾燥を終えた試験用ウエハ(A)〜(C)及び(A’)〜(C’)について、実施例1と同等の評価基準に基づきパーティクル除去性を評価した。
【0093】
4.洗浄剤組成物の乾燥性
[乾燥性の評価方法]
実施例1
スクリュー管(容量100mL)に調製例1の洗浄剤原液4.0g、イオン交換水96.0gを入れ、よく振盪し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/50となる洗浄剤組成物を調製した。次に、高純度シリコンウエハ(アズワン(株)製、直径φ4inch)の中心にこの洗浄剤組成物を0.05g滴下し、80℃に調節した循風乾燥機の中で20分間静置させた。そして、乾燥後のウエハ表面を目視観察し、以下の評価基準に基づき洗浄剤組成物の乾燥性を評価した。
【0094】
[乾燥性の評価基準]
○:洗浄剤組成物の残渣無し
×:洗浄剤組成物の残渣有り
【0095】
実施例2
スクリュー管(容量100mL)に調製例1の洗浄剤原液2.0g、イオン交換水98.0gを入れ、よく振盪し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/100となる洗浄剤組成物を調製した。以下、実施例1と同様の手順により、洗浄剤組成物の乾燥性を評価した。
【0096】
実施例3
スクリュー管(容量100mL)に調製例1の洗浄剤原液0.1g、イオン交換水99.9gを入れ、よく振盪し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/2000となる洗浄剤組成物を調製した。以下、実施例1と同様の手順により、洗浄剤組成物の乾燥性を評価した。
【0097】
実施例4
スクリュー管(容量100mL)に調製例1の洗浄剤原液0.02g、イオン交換水99.98gを入れ、よく振盪し、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が、1/10000となる洗浄剤組成物を調製した。以下、実施例1と同様の手順により、洗浄剤組成物の乾燥性を評価した。
【0098】
実施例5〜18、比較例1〜8
実施例1と同様の方法で、表4に示すように、各々の洗浄剤原液を配合割合[(A+C)/(A+B+C)]が1/2000あるいは1/10000となるように希釈し、それぞれの洗浄剤組成物の乾燥性を評価した。
【0099】
比較例10
イオン交換水を使用し、実施例1と同様の手順により、乾燥性を評価した。
【0100】
【表4】
【符号の説明】
【0101】
1 ビーカー
2 洗浄剤原液
3 イオン交換水
4 スターラーピース
5 マグネチックスターラー
6 試験用ウエハ
7 ステンレスクリップ
8 ステンレス棒