(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロータの回転方向に沿って湾曲した前記第2油路の前記壁面は、前記ロータの回転方向における下流部が、前記ロータの回転軸線を中心とする円弧に対して前記ロータの回転方向下流へ向かって径方向内側へ延出している、
請求項1又は2に記載の動力伝達装置。
前記ハウジングには、前記ロータ室の前記軸方向における一方に配置され前記第1油路及び前記第2油路に対向する第1開口部と、前記ロータ室の前記軸方向における他方に配置された第2開口部とが形成され、
前記ハウジングは、前記ロータの回転軸線に関して径方向内側において前記ロータ室に対向し、径方向外側において前記第1油路と前記第2開口部とを接続する第3油路を形成する隔壁部を有し、
前記ロータの回転方向に沿って湾曲した前記第2油路の前記壁面の少なくとも一部は、前記軸方向から視て前記隔壁部に重なる位置に配置され、かつ、前記軸方向における端部において前記隔壁部に接続されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
前記ハウジングは、前記ロータの回転軸線に関して径方向外側において前記第1油路に対向する外側面及び径方向内側において前記第2油路に対向する内側面を有して、前記軸方向から視て前記ロータの回転方向下流へ向かって突出する突出部を備え、
前記内側面が、前記ロータの回転方向に沿って湾曲した前記第2油路の前記壁面の少なくとも一部を構成する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
前記ハウジングには、前記ストレーナに対向して配置され、前記ストレーナに接続された第1吸入ポートと、前記油圧制御装置に対向して配置され、前記油圧制御装置に接続された第2吸入ポートと、が形成され、
前記第1油路により、前記第1吸入ポートと前記開口部とが接続され、前記第2油路により、前記第2吸入ポートと前記開口部とが接続される、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
前記オイルポンプは、前記ロータと一体的に回転するロータ軸を有し、前記ロータ軸が前記入力軸と平行になるように配置され、前記入力軸と前記ロータ軸とを駆動連結する伝動機構を介して前記駆動源からの動力が入力されることで前記ロータが回転する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
前記ハウジングは、前記ロータ室を形成されたポンプボディと、前記ポンプボディのうち前記軸方向の一方を覆って前記ポンプボディに固定され、前記第1油路及び前記第2油路を形成されたカバー体と、を含む、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の動力伝達装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に沿って本実施形態に係る動力伝達装置PTについて説明する。
【0011】
[動力伝達装置]
図1Aに示す動力伝達装置PTは、乗用車等の自動車に搭載されて好適な車両用の駆動装置であり、本実施形態ではFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプのエンジン横置きの車両に搭載されて好適な駆動装置としている。エンジンEは、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。動力伝達装置PTは、トルクコンバータ20及び変速機構14を有する自動変速機ATと、自動変速機ATから出力された回転を左右の前輪4L,4Rに分配する差動機構と、エンジンE(原動機)から動力を供給されて作動するオイルポンプ1と、オイルポンプ1から供給された油圧を用いて自動変速機ATを制御する油圧制御装置12等を備えている。
【0012】
自動変速機ATのトルクコンバータ20は、エンジンEの出力軸に駆動連結された入力軸である駆動軸10と、駆動軸10と一体的に回転するポンプインペラ21と、ポンプインペラ21から作動流体である油(ATF、オートマチック・トランスミッション・フルード)を介して駆動力を受取って変速機構14の入力軸13に伝達するタービンランナ22と、ワンウェイクラッチを介してミッションケース17に支持されるステータ23とを有する。タービンランナ22は、ロックアップクラッチ30によって駆動軸10に係合(ロックアップ)されることで、エンジンEから直接的に動力を受取ることが可能である。
【0013】
ミッションケース17の内部に収容される変速機構14は、不図示の複数の摩擦係合装置(クラッチ及びブレーキ)の係脱により、複数の変速段を達成可能に構成された多段式変速機構である。この変速機構14は、各変速段のギヤ比の下で入力軸13の回転を変速して、入力軸13に平行に配置されたカウンタシャフト15へと出力する。差動装置Dは、カウンタシャフト15を介して受け取った回転を、遊星歯車機構(差動歯車機構)によって、左右の車軸を介して左前輪4L及び右前輪4R(車輪)へと分配する。
【0014】
本実施形態に係るオイルポンプ1のロータ軸(駆動軸)であるポンプシャフト2は、変速機構14の入力軸13に平行に配置されている。ポンプシャフト2に取付けられたドリブンスプロケット2bは、トルクコンバータ20のポンプインペラ21に接続されたドライブスプロケット2aにチェーン2cによって連結されている。チェーン2cは伝動機構の一例であり、ベルトやギヤ列等の他の伝動機構を用いてもよい。従って、オイルポンプ1は、駆動源であるエンジンEの回転をチェーン伝動によって受取って作動する。なお、駆動源はポンプシャフト2に駆動力を供給するものであればよく、例えば電動モータであってもよい。
【0015】
油圧制御装置12は、
図1Bに示すように、ミッションケース17の前方の側面(前面)に立設された状態で、ミッションケース17に固定されている。ただし、
図1Bは、トルクコンバータ20が取外された状態の自動変速機ATを、エンジンEが配置される側(図中右方が車両前方となる方向)から視た模式図である。油圧制御装置12は、例えば、内部に油路を形成されたバルブボディと、バルブボディに配置される複数のソレノイドバルブ等によって構成される。油圧制御装置12は、油圧発生源(オイルポンプ1)から供給された油圧を適宜調圧して自動変速機ATに給排することで、摩擦係合装置の係脱等を行って変速機構14を変速制御すると共に、ミッションケース17の内部の潤滑対象部位に油を供給する。なお、油圧発生源とは、機械式のオイルポンプ1の他に、例えば車両のバッテリーから電力を供給されて作動する電動オイルポンプ等を含んだ概念とする。
【0016】
潤滑対象部位を潤滑した油は、ミッションケース17の内壁を伝ってミッションケース17の下部に設けられた貯留部18へと回収される。ミッションケース17の下部に配置されるストレーナ11は、貯留部18に貯留された油をろ過してオイルポンプ1に供給する。ただし、ミッションケース17の下部を貯留部として用いる構成に代えて、オイルパン又はオイルタンク等の貯留装置(貯留部)を設けてもよい。オイルポンプ1から吐出された油のうち、油圧制御装置12やトルクコンバータ20から余剰圧として排出された油は、油圧制御装置12とオイルポンプ1とを接続する油路(不図示)を介してオイルポンプ1へと還流する。
【0017】
[オイルポンプ]
次に、オイルポンプ1について説明する。オイルポンプ1は、
図1B及び
図2に示すように、ミッションケース17の下部に配置され、ストレーナ11と油圧制御装置12との間に位置している。ただし、
図2は、
図1Bにおける下方から視たオイルポンプ1の断面図であり、図中上方側にトルクコンバータ20が、図中下方側に変速機構14が配置される。以下の説明において、ポンプシャフト2の軸中心(シャフト軸O2)の方向を指して「軸方向」とし、軸方向の内トルクコンバータ20の側を第1軸方向A1、軸方向の内その反対側を第2軸方向A2とする。
【0018】
オイルポンプ1は、ポンプシャフト2(シャフト)と一体的に回転するドライブギヤ3(ロータ)と、ドライブギヤ3に従動回転するドリブンギヤ4とを有する、所謂内接ギヤポンプ(トロコイドポンプ)である。ドライブギヤ3及びドリブンギヤ4は、それぞれ、互いに噛合う外歯及び内歯を有し、ドリブンギヤ4がシャフト軸O2に対して偏心した状態で配置される。オイルポンプ1は、ポンプシャフト2と、ドライブギヤ3と、ドリブンギヤ4と、ドライブギヤ及びドリブンギヤ4を収容するギヤ収容室82(ロータ室)を形成されたハウジング6と、を備えている。
【0019】
ハウジング6には、ストレーナ11を介して貯留部18の油を吸引する吸引ポートS1と、油圧制御装置12から還流する油を受入れる受入ポートS2(
図3参照)とが設けられ、これら吸引ポートS1及び受入ポートS2とギヤ収容室82とを接続する吸入油路70が形成されている。吸引ポートS1はストレーナ11に接続される第1吸入ポートに相当し、受入ポートS2は油圧制御装置12に接続される第2吸入ポートに相当する。また、ハウジング6には、圧油を油圧制御装置12へ吐出する吐出ポートD1が設けられ、ギヤ収容室82と吐出ポートD1とを接続する吐出油路74が形成されている。従って、オイルポンプ1は、ポンプシャフト2の回転に伴って、吸引ポートS1及び受入ポートS2を介して吸入した油を加圧し、圧油を吐出ポートD1を介して油圧制御装置12に供給する。
【0020】
ハウジング6の構成について詳しく説明すると、ハウジング6は、ギヤ収容室82を形成されたポンプボディ8と、ポンプボディ8を第1軸方向A1の側から覆うトップカバー9と、ポンプボディ8を第2軸方向A2の側から覆うボトムカバー7(カバー体)とによって構成される。ただし、トップカバー9及びボトムカバー7のトップ/ボトムとは、軸方向において変速機構14に近い側を「ボトム側」とし、その反対側(トルコン側)を「トップ側」としたものであり、車両の上下方向を表すものではない。ハウジング6は、これらポンプボディ8、トップカバー9、及びボトムカバー7が、ボルト等によって互いに締結されることで一体的に形成されると共に、ミッションケース17に対して固定されている。
【0021】
トップカバー9及びボトムカバー7には、ポンプシャフト2がトップカバー9及びポンプボディ8を貫通するように装着されるシャフト穴92,76がそれぞれ形成されている。トップカバー9及びボトムカバー7は、これらシャフト穴92,76に配置されるニードルベアリングを介してポンプシャフト2を回転自在に支持している。シャフト穴76の底部には、ドライブギヤ3とポンプボディ8との間隙から漏れ出た油をハウジング6の外部に排出する排出路77が形成されている。
【0022】
ところで、吸入油路70及び吐出油路74はボトムカバー7に形成されており、ポンプボディ8には、ギヤ収容室82が吸入油路70に開口するボトム側開口部82sと、後述するトップ側吸入油路91に対向するトップ側開口部94とが形成されている。ボトム側開口部82s及びトップ側開口部94は、ギヤ収容室82に、軸方向から視てドライブギヤ3及びドリブンギヤ4が露出するように開口している。即ち、ボトム側開口部82sは、軸方向の一方側からロータ室に油が吸入される第1開口部に相当し、トップ側吸入油路91は、軸方向の他方側からロータ室に油が吸入される第2開口部に相当する。本実施形態に係るポンプボディ8には、ロータ室に油が吸入される開口部として、少なくとも第1開口部が形成されるものとする。
【0023】
また、ポンプボディ8には、ギヤ収容室82が吐出油路74に開口する吐出側開口部82dが形成されている。従って、吸引ポートS1及び受入ポートS2からボトムカバー7の内部に流入した油は、第1軸方向A1の側へ移動することでボトム側開口部82sに到達する。そして、ポンプシャフト2の回転に伴って、ドライブギヤ3の外歯とドリブンギヤ4の内歯との間に形成されるポンプ室(油室)であるセルc1に油が吸い込まれた後、セルc1が吐出側開口部82dに到達すると、油が第2軸方向A2の側へ押し出されて吐出油路74に吐出される。これにより、オイルポンプ1はポンプシャフト2の回転に伴って貯留部18に貯留された油と油圧制御装置12から流入する油とを吸入して加圧し、圧油を油圧制御装置12に吐出する。
【0024】
なお、吸入油路70は、ドリブンギヤ4の外周面に摺接するサポート81の背面側(径方向外側)に形成された迂回油路83と、トップカバー9に形成されたトップ側吸入油路91とを介して、ギヤ収容室82のトップ側開口部94に連通されている。これら迂回油路83及びトップ側吸入油路91は、吸入油路70に流入した油の一部が、ギヤ収容室82の径方向外側を迂回してギヤ収容室82に吸い込まれる副吸入油路80を構成している。副吸入油路80は、後述する第1油路から分岐してトップ側開口部94(第2開口部)に接続された第3油路に相当し、サポート81は、内周面においてギヤ収容室82に対向し、外周面において第3油路を形成する隔壁部に相当する。
【0025】
[吸入油路の詳細構成]
次に、吸入油路70の詳細構成について、
図3乃至
図4Cに基づいて説明する。ただし、
図3及び
図4Aは、ポンプボディ8から取外された状態のボトムカバー7を第1軸方向A1の側から視た平面図である。
図4B、Cは
図4Aに図示した位置におけるボトムカバー7の断面図である。なお、説明の便宜を図るため、オイルポンプ1へ流入する油(ATF)を流入経路によって区別する。すなわち、貯留部18からストレーナ11を介してオイルポンプ1に吸引された油を「貯留油」とし、油圧制御装置12からオイルポンプ1へと還流した油を「還流油」とする。
図3及び
図4A、B、Cにおける実線矢印は還流油の流動方向の一例であり、破線矢印は貯留油の流動方向の一例である。また、軸方向に直交する方向の内、ポンプシャフト2に対して油圧制御装置12が配置される側を第1幅方向B1とし、ストレーナ11が配置される側を第2幅方向B2として、これらを区別せずに幅方向とする。
【0026】
図3に示すように、ボトムカバー7には、吸入油路70と、吐出油路74と、シャフト穴76と、ハウジング6の締結ボルトが装着される複数のボルト穴h1とが形成されている。吸入油路70及び吐出油路74は、ポンプボディ8との接合面となる平滑なトップ面78から窪む溝形状と、ボトムカバー7の内部を貫通する管形状とを組合せて形成されている。
【0027】
吸入油路70は、貯留油の流路となる第1油路71(吸引油路)と、還流油の流路となる第2油路72(還流油路)とによって構成されている。第1油路71及び第2油路72の下流部は、貯留油及び還流油の共通油路となる合流部73を形成している。ただし、合流部73とは、油路の形状を加味して、オイルポンプ1の稼働状態において第1油路71及び第2油路72から流入した油が合流する部分を指すものとし、例えば、軸方向から視て第1油路71及び第2油路72を隔てる突出部75の先端を通り、各油路71,72における油の流動方向に略垂直な面よりも下流側の油路形状を合流部とすることができる。なお、本実施例においては、後述する底面71e,72eの傾斜を考慮して、突出部75の先端部を通り第1油路71に略垂直な面、及び突出部75と第2油路72の底面72eの中で第1油路71の底面71eと軸方向高さが略等しい位置を通る面(いずれも破線参照)よりも下流側が合流部に相当する。これらの油路を介して供給される貯留油及び還流油は、図中時計回り方向へ回転するドライブギヤ3の回転に伴ってギヤ収容室82へと吸い込まれる。油の流動方向(時計回り方向)における合流部73の上流部分において、第1油路71を流れる貯留油と第2油路を流れる還流油とが合流する。即ち、第1油路71及び第2油路72は、合流部73から分岐して吸引ポートS1及び受入ポートS2へと延出し、ギヤ収容室82のボトム側開口部82sと対応するポートS1,S2とを接続している。なお、
図3では合流部と第1油路71及び第2油路72との境界を油の流動方向に略垂直な破線によって図示している。
【0028】
合流部73は、軸方向から視てギヤ収容室82のボトム側開口部82sと重なる位置において、第1軸方向A1の側(図中手前側)に開放された溝形状に形成されており、ポンプシャフト2の回転軸線であるシャフト軸O2を中心とする周方向に延びている。合流部73は、軸方向から視てボトム側開口部82sの少なくとも一部と重なっている。
【0029】
第1油路71は、
図4Bも参照して、上部(第1軸方向A1の側)を閉塞された管形状の上流部71aと、上部を開放された溝形状の下流部71bとによって構成され、上流部71aにおいて吸引ポートS1に接続されている。第2油路72は、
図4Cも参照して、上部を閉塞された管形状の上流部72aと、上部を開放された溝形状の下流部72bとによって構成され、上流部72aにおいて受入ポートS2に接続されている。第1油路71及び第2油路72の下流部71b,72bは、それぞれ合流部73に接続されると共に、ポンプボディ8の油路を介してギヤ収容室82のボトム側開口部82sに連通している。
【0030】
[第1傾斜部及び第2傾斜部]
次に、軸方向と直交する方向から視た吸入油路70の形状について、
図4に基づいて説明する。ただし、
図4Bは
図4AのA−A線における吸入油路70(第1油路71)の断面形状を表しており、
図4Cは
図4AのB−B線における吸入油路70(第2油路72)の断面形状を表している。破線で示す基準位置Cは、A−A線とB−B線とが交わる位置であり、合流部73の内側に位置する。
【0031】
上述した通り、ギヤ収容室82は、吸入油路70に対して第1軸方向A1の側に配置されており、吸入油路70の油は第1軸方向A1へ移動することでギヤ収容室82に吸い込まれる。そこで、合流部73の底面73eは、
図4B、4Cに示すように、合流部の底面e3からポンプシャフト2の回転方向下流に向けて第1軸方向A1の側へと傾斜するスロープ状に形成されている。すなわち、合流部73は、下流に行くほど浅くなるように形成されている。
【0032】
図4Bに示すように、第1油路71のうち、軸方向においてギヤ収容室82から遠い側(第2軸方向A2の側)の底部である底面71eは、貯留油の流動方向(図中右方)下流に向けて第1軸方向A1の側へと傾斜するスロープ状に形成されている。また、
図4Cに示すように、第2油路72のうち、軸方向においてギヤ収容室82から遠い側の底部である底面72eは、還流油の流動方向(図中右方)下流に向けて第1軸方向A1の側へと傾斜するスロープ状に形成されている。これらの底面71e,72eは、それぞれ合流部73の底面e3に滑らかに連続している。
【0033】
ここで、第1油路71の底面71eには、合流部73の上流位置(基準位置Cの上流)において所定の傾斜角度で傾斜した第1傾斜部e1が設けられ、第2油路72の底面72eには、合流部73に隣接する位置において所定の傾斜角度で傾斜した第2傾斜部e2が設けられている。ただし、所定の傾斜角度とは、軸方向に直交する水平面に対する角度であり、第1傾斜部e1と第2傾斜部e2とが異なる角度となるように設定されるものである。第1傾斜部e1及び第2傾斜部e2の傾斜角度は、油路を流れる油の流動方向がボトム側開口部82sへ向かって指向されるように設定される。また、本実施形態では、第2傾斜部e2の傾斜角度が、第1傾斜部e1の傾斜角度に比して大きくなるように設定されている。
【0034】
第1油路71及び第2油路72には、このように傾斜角度の異なる傾斜部e1,e2が設けられているため、合流部73における貯留油の流れと還流油の流れの衝突を回避するように貯留油及び還流油の流れが指向される。すなわち、吸引ポートS1を介して第1油路71に流入した貯留油は、第2傾斜部e2に比して緩やかな第1傾斜部e1の傾斜角度に沿って指向された状態で合流部73に流入する(
図4B参照)。一方、受入ポートS2を介して第2油路72に流入した還流油は、第1傾斜部e1よりも急峻な第2傾斜部e2の傾斜角度に沿って指向された状態で合流部73に流入する(
図4C参照)。このため、合流部73においては、還流油の流れが貯留油の流れに乗り上げて、還流油が第1軸方向A1の側を流れ、貯留油が第2軸方向A2の側(底面側)を流れるようにして合流する。言い換えれば、第1油路71及び第2油路72は、第2傾斜部e2によって指向される還流油が、第1傾斜部e1によって指向される貯留油に比して、ボトム側開口部82sの中でドライブギヤ3の回転方向における上流側の領域に到達するように構成されている。これにより、還流油の流れと貯留油の流れとの衝突が回避され、合流部73及びその下流における油の流れの乱れが低減される。
【0035】
ところで、第2油路72を流れる還流油は、油圧制御装置12の内部で余剰圧として排出された油がオイルポンプ1に還流したものである。従って、変速機構14におけるクラッチの掴み換え等の大きな流量を必要とする油圧制御が実行されていない間は、比較的多量の還流油が第2油路72へと還流する。また、余剰圧としてオイルポンプ1に戻される還流油は、オイルポンプ1の吸い込み(負圧)によって第1油路71に流入する貯留油に比して流れの勢いが強くなりやすい。要するに、合流部73に流入する還流油の流量は、貯留油の流量に比して大きくなる傾向がある。
【0036】
本実施形態における第2傾斜部e2の傾斜角度は、第1傾斜部e1の傾斜角度に比して大きく設定されており、合流部73においては還流油の流れが第1軸方向A1の側の層となり、貯留油の流れが第2軸方向A2の側の層となるように構成されている。このため、比較的流量の大きい還流油がギヤ収容室82に近い側を流れることになり、還流油の流れが貯留油の流れの下側(合流部73の底面側)を潜るように指向される構成に比して、より円滑にギヤ収容室82に油を供給することができる。
【0037】
[軸方向から視た油路形状]
次に、軸方向から視た吸入油路70の形状について、
図3並びに
図5乃至
図7を用いて説明する。ただし、
図5及び
図7はボトムカバー7を第1軸方向から視た平面図であり、
図6は、ポンプボディ8を第1軸方向A1の側から視た平面図である。
図5及び
図6にはドライブギヤ3及びドリブンギヤ4を破線によって図示している。また、
図5乃至
図7には、
図2に示す断面図に対応する切断面を破線として図示している。
図6及び
図7に示すように、ポンプボディ8には複数のボルト穴h2が形成され、ボトムカバー7のボルト穴h1に位置合わせした状態でポンプボディ8及びボトムカバー7がボルトによって固定されるように構成されている。
【0038】
上述した通り、オイルポンプ1はストレーナ11と油圧制御装置12との間に配置されており、
図3に示すように、第2幅方向B2に向けて開口する吸引ポートS1と第1幅方向B1に向けて開口する受入ポートS2とは、シャフト軸O2を間に挟んで配置されている。そして、軸方向と直交する方向(例えば、図中下方側)から視て、吸引ポートS1はシャフト軸O2に対して合流部73と同じ側に配置される一方で、受入ポートS2は合流部73とは反対側に配置される。このため、第1油路71は吸引ポートS1と合流部73とに亘って直線的に形成される一方で、第2油路72はポンプシャフト2を迂回して形成される。
【0039】
本実施形態に係る第2油路72は、ポンプシャフト2が挿着されるシャフト穴76を、ポンプシャフト2の回転方向(時計回り方向)に沿って回り込むように湾曲して形成されている。従って、第2油路72は、還流油の流動方向がドライブギヤ3の回転方向下流に向かうように合流部73に接続されている。合流部73に向かって径方向外側から合流する第1油路71と径方向内側から合流する第2油路72とは、合流部73の上流側に位置する突出部75によって隔てられている。突出部75は、シャフト軸O2に対して径方向内側の内側壁75aにおいて第2油路72に対向し、径方向外側の外側壁75bにおいて第1油路71に対向するように配置され、ドライブギヤ3の回転方向R1へ向かって、径方向内向きに傾斜した方向へ突出している。即ち、合流部73から貯留油及び還流油の流動方向の上流へ遡った場合に、突出部75によって隔てられることで第1油路71及び第2油路72が分岐する。
【0040】
図5に示すように、第1油路71と第2油路72とは、軸方向から視てドライブギヤ3及びドリブンギヤ4の回転軌跡と重なる範囲において合流している。第1油路71がシャフト軸O2に対して略径方向に沿って延出しているのに対し、第2油路72は、ポンプシャフト2を、ポンプシャフト2の回転方向R1(時計回り方向)に沿って回り込むように湾曲して形成されている。即ち、第2油路72の上流部72aは、受入ポートS2から第2幅方向B2へ向かって幅方向にシャフト軸O2を横切るように延出し、第2油路72の下流部72bはドライブギヤ3の回転方向R1に沿って湾曲した湾曲油路として形成されている。また、第2油路72の下流部72bの内、シャフト軸O2に対して径方向内側の壁面72dと、径方向外側の壁面(72c)とは、それぞれドライブギヤ3の回転方向R1に沿って湾曲している。
【0041】
特に、径方向内側の壁面72dが略円周面状に形成されるのに対して、径方向外側の壁面である湾曲面72cは、径方向外側へと膨らんだ形状を有している。即ち、軸方向から視たギヤ収容室82の輪郭(ドリブンギヤ4の外周)と比較したとき、湾曲面72cは、上流部72fにおいて径方向外側へと張り出し、下流部(75a)において径方向内側へと絞るような形状に設定されている。従って、湾曲面72cの下流部である突出部75の内側壁75aは、シャフト軸O2を中心とする円周(点線a1)の接線方向よりも、ドライブギヤ3の回転方向(時計回り方向)に向けて径方向内側へと傾斜している。また、第2油路72の上流部72aが第2幅方向B2へ向かって延出するのに対して、突出部75の内側壁75aは、還流油の流動方向下流へ向かって第1幅方向B1へ向かうように湾曲している。さらに、突出部75の外側壁75bは、ドライブギヤ3の回転方向に沿って延出しており、貯留油を上記回転方向下流に指向する壁部として作用する。
【0042】
なお、本実施形態に係る湾曲面72cは滑らかに湾曲しているものとして説明したが、角度の異なる平面を連続させて実質的に湾曲した形状としたものも湾曲部に含まれるものとする。また、湾曲面72cは、下流部が径方向内側へ向かって延出する形状を有していれば、突出部75のような突出形状以外の部材に設けてもよい。
【0043】
続いて、第1油路71及び第2油路72と、第3油路である副吸入油路80との位置関係について説明する。
図6に示すように、隔壁部であるサポート81は、内周面においてドリブンギヤ4を支持すると共に、外周面において副吸入油路80の一部である迂回油路83を形成している。
図2及び
図7に示すように、迂回油路83は、第1油路71から第1軸方向A1へ向かって分岐している。
図7に示すように、突出部75とサポート81とは軸方向から視て部分的に重なるように配置されている。また、突出部75の第1軸方向A1における端部は、サポート81の第2軸方向A2における端部に接続されている。
【0044】
本実施形態に係る第2油路72には、このような湾曲面72cが設けられているため、第2油路72の上流部72aを第2幅方向B2へと流れる還流油は、湾曲面72cにおいて流動方向を折り返されて、ドライブギヤ3の回転方向R1に沿うように指向された状態でボトム側開口部82sに到達する。すなわち、2つの吸入ポート(S1,S2)を介して互いに対向する方向へ向かって油が流入する構成において、貯留油に比して高圧となる還流油の流動方向がドライブギヤ3の回転方向R1に沿った状態でボトム側開口部82sに到達する。このため、例えば還流油がドライブギヤ3の回転方向R1に逆らうように流れて貯留油に合流する構成では、還流油が、流動方向に対して軸方向から視て逆方向のせん断力をドライブギヤ3から受けてしまい、油の流れの乱れが生じるところ、本実施形態の構成によれば、ドライブギヤ3から受けるせん断力を最小化して油の流れの乱れを低減することができる。また、軸方向から視た還流油の流動方向は、湾曲油路(72b)によって貯留油の流動方向(第1幅方向B1)に近付くように指向される。これにより、還流油の流れと貯留油の流れの衝突が回避され、ギヤ収容室82に円滑に油を供給させることができる。
【0045】
また、湾曲面72cの下流部である突出部75の内側壁75aは、シャフト軸O2に対して径方向内側へと傾斜した傾斜面として形成されているため、湾曲面72cに沿って流れる還流油は、ドライブギヤ3の中心側(歯元側)へ指向されることになる。これにより、ドライブギヤ3の回転によって生じる遠心力によってセルc1の径方向外側部分に比して低圧になりやすい径方向内側部分へと、安定して油を供給させることができる。そして、セルc1の径方向内側部分におけるキャビテーションを生じにくくさせることができる。
【0046】
また、第2油路72の下流部72bは、合流部73へ近づくほど流路の断面積が小さくなるように形成されている。即ち、第2傾斜部e2の傾斜(
図4C参照)と、突出部75の内側壁75aの形状(
図5参照)とにより、シャフト軸O2を通る断面における第2油路72の断面積が、内側壁75aの位置において、ドライブギヤ3の回転方向R1へ向かって小さくなるように形成されている。このため、第2油路72の断面積が略一定に設定される構成に比して、内側壁75a及び第2傾斜部e2によってボトム側開口部82sへ向けて指向された還流油の流速が増大する。一方、貯留油は、合流部73において還流油の流れに引き込まれることで、ストレーナ11から第1油路71へと補充される。このため、還流油の流速が増大するほど貯留油の引き込み効果が高くなり、ドライブギヤ3の回転抵抗が低減され、ひいてはオイルポンプ1の駆動負荷が低減される。
【0047】
[本実施形態のまとめ]
本実施形態に係る動力伝達装置(PT)は、
駆動源(E)に駆動連結された入力軸(10)と、
前記入力軸(10)の回転を変速して伝達する変速機構(14)と、
前記変速機構(14)に油を調圧して供給する油圧制御装置(12)と、
油を貯留する貯留部(18)と、
ロータ(3)と、前記ロータ(3)を収容するロータ室(82)が形成されたハウジング(6)とを有し、前記油圧制御装置(12)の内部で余剰圧として排出され還流する油及び前記貯留部(18)からストレーナ(11)を介して吸引した油を、前記ロータ(3)の回転によって、前記ロータ(3)によって区画されたポンプ室(c1)に吸引し、加圧して前記油圧制御装置(12)に供給するオイルポンプ(1)と、を備え、
前記オイルポンプ(1)は、前記ロータ(3)の軸方向から視て、前記油圧制御装置(12)と前記ストレーナ(11)との間に配置され、
前記ハウジング(6)には、前記ストレーナ(11)を介して吸引した油を前記ポンプ室(c1)へ供給する第1油路(71)及び前記油圧制御装置(12)から還流した油を前記ポンプ室(c1)へ供給する第2油路(72)が形成され、
前記第2油路(72)は前記ロータ(3)に沿って湾曲した湾曲油路(72b)を有し、かつ、前記油圧制御装置(12)から還流した油は前記湾曲油路(72b)を前記ロータ(3)の回転方向(R1)に流動する。
【0048】
この構成によれば、オイルポンプのハウジングに形成された複数の油路に対して互いに対向する方向へ向かって油が流入する構成において、油圧制御装置から還流した油の流動方向がロータの回転方向に沿うように指向された状態で、ロータによって区画されるポンプ室に供給される。このため、貯留部から吸入された油が油圧制御装置から流入する油と合流するときには、油圧制御装置から流入する油に沿うように合流する為、油の合流の際の油の流れの乱れを低減させることができ、吐出圧の安定性向上及びオイルポンプの耐久性向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記第1油路(71)は、前記湾曲油路(72b)よりも前記ロータ(3)の回転方向下流側で前記第2油路(72b)と合流する、と好適である。
【0050】
この構成によれば、貯留油から吸引された油が、油圧制御装置から還流し、湾曲油路によって指向された状態の油の流れと合流するので、2つの油路を流れる油が対向する方向に衝突せず、スムーズに合流する。これにより、油の合流の際の油の流れの乱れを低減させることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記ハウジング(6)は、前記ロータ軸(2)に対して前記湾曲油路(72b)の径方向外側の壁面に、前記ロータ(3)の回転方向における下流部(75a)が、前記ロータ(3)の回転軸線(O2)を中心とする円弧に対して前記ロータ(3)の回転方向下流へ向かって径方向内側へ延出するように湾曲した湾曲面(72c)を含む、と好適である。
【0052】
この構成によれば、油圧制御装置から流入する油は、第2油路に設けられた湾曲面の形状に沿って、ロータの回転軸線に対して径方向内側へ指向された状態でロータ室に向かって流れるため、ロータによって形成される油室の内、ロータの回転によって生じる遠心力によって低圧になりやすい径方向内側の領域へと安定して油が供給されることになり、キャビテーションの発生を効果的に低減することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記第1油路(71)は、前記ストレーナ(11)を介して吸引した油の流れを前記ロータ(3)の回転方向下流に指向する壁部(75b)を有する、と好適である。
【0054】
この構成によれば、貯留部から吸引された油の流れが、壁部によってロータの回転方向下流に指向された状態で油圧制御装置から還流した油に合流するため、油圧制御装置からの油が湾曲油路によってロータの回転方向下流に指向されることと相俟って、2つの油路を流れる油の衝突を回避して、より一層スムーズに合流させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記第2油路(72)は、前記ロータ(3)の回転軸線(O2)を通る断面における前記第2油路(72)の断面積が、前記湾曲油路(72b)の下流部において、前記ロータ(3)の回転方向下流へ向かって小さくなるように形成される、と好適である。
【0056】
この構成によれば、第2油路の湾曲部分から下流へ流れる油の流速が増大し、貯留部から流入する油を引き込む効果が高くなる。これにより、貯留部からの油の吸引に要するロータの回転抵抗が低減され、オイルポンプの駆動負荷が低減される。
【0057】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記ハウジング(6)には、前記ロータ室(82)の前記軸方向における一方に配置され前記第1油路(71)及び前記第2油路(72)に対向する第1開口部(82s)と、前記ロータ室(82)の前記軸方向における他方に配置された第2開口部(94)とが形成され、
前記ハウジング(6)は、前記ロータ(3)の回転軸線(O2)に関して径方向内側において前記ロータ室(82)に対向し、径方向外側において前記第1油路(71)と前記第2開口部(94)とを接続する第3油路(80)を形成する隔壁部(81)を有し、
前記湾曲油路(72b)の径方向外側の壁面の少なくとも一部は、前記軸方向から視て前記隔壁部(81)に重なる位置に配置され、かつ、前記軸方向における端部において前記隔壁部(81)に接続されている、と好適である。
【0058】
この構成によれば、湾曲油路の径方向外側の壁面と隔壁部とによって、第2油路を流れる油が第3油路へ流入しにくくなる。このため、貯留部から流入する油に比して高圧となる油圧制御装置からの油が第1開口部へと直接的に案内されることになり、オイルポンプの駆動負荷が低減される。
【0059】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記ハウジング(6)は、前記ロータ(3)の回転軸線(O2)に関して径方向外側において前記第1油路(71)に対向する外側面(75b)及び径方向内側において前記第2油路に対向する内側面(75a)を有して、前記軸方向から視て前記ロータ(3)の回転方向下流へ向かって突出する突出部(75)を備え、
前記内側面(75a)が、前記湾曲油路(72b)の径方向外側の壁面の少なくとも一部を構成する、と好適である。
【0060】
この構成によれば、突出部の内側面によって第2油路を流れる油がロータの回転方向に沿った方向へ指向される一方で、突出部の外側面によって第1油路を流れる油がロータの回転方向に沿った方向へ指向されることになり、突出部の下流側で合流する油の流れの乱れをより一層低減することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記ハウジング(6)には、前記ロータ室(82)の前記軸方向における一方に配置され前記軸方向から視て前記ポンプ室(c1)が露出する開口部(82s)が形成され、
前記第1油路(71)のうち、前記軸方向において前記ロータ室(82)から遠い側の底部には、油の流動方向が前記開口部(82s)へ向かうように傾斜した第1傾斜部(e1)が設けられ、
前記第2油路(72)のうち、前記軸方向において前記ロータ室(82)から遠い側の底部には、油の流動方向下流が前記開口部(82s)のうち前記第1傾斜部(e1)より上流側の領域に向かうように傾斜した第2傾斜部(e2)が設けられる、と好適である。
【0062】
この構成によれば、第2油路からの油の流れが、第1油路からの油の流れに乗り上げるようにして流れて、第1油路からの油に比してロータ室へと吸い込まれやすくなる。このため、貯留部からオイルポンプに吸引される油に比して高圧となる油圧制御装置からオイルポンプに還流する油が、ロータ室へと円滑に供給されるため、オイルポンプの駆動負荷が低減される。
【0063】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記ハウジング(6)には、前記ストレーナ(11)に対向して配置され、前記ストレーナ(11)に接続された第1吸入ポート(S1)と、前記油圧制御装置(12)に対向して配置され、前記油圧制御装置(12)に接続された第2吸入ポート(S2)と、前記ロータ室(82)の前記軸方向における一方に配置され前記軸方向から視て前記ポンプ室(c1)が露出する開口部(82s)と、が形成され、
前記第1油路(71)により、前記第1吸入ポート(S1)と前記開口部(82s)とが接続され、前記第2油路(72)により、前記第2吸入ポート(S2)と前記開口部(82s)とが接続される、と好適である。
【0064】
この構成によれば、第1吸入ポート及び第2吸入ポートが、それぞれストレーナ及び油圧制御装置に対向するように配置されるため、オイルポンプとストレーナ及び油圧制御装置とを接続する油路構成を簡略化することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記オイルポンプ(1)は、前記ロータ(3)と一体的に回転するロータ軸(2)を有し、前記ロータ軸(2)が前記入力軸(10)と平行になるように配置され、前記入力軸(10)と前記ロータ軸(2)とを駆動連結する伝動機構(2c)を介して前記駆動源(E)からの動力が入力されることで前記ロータ(3)が回転する、と好適である。
【0066】
この構成によれば、入力軸とは異なる軸線上にオイルポンプを配置することで、変速機構及びオイルポンプを含む機構をコンパクトに配置すると共に、設計上の自由度を向上させる
【0067】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記変速機構(14)を収容するケース(17)を備え、
前記油圧制御装置(12)は、前記ケース(17)の側面に配置され、
前記貯留部(18)は、前記ケース(17)の下部に設けられ、
前記オイルポンプ(1)は、前記入力軸(10)よりも下方に配置される、と好適である。
【0068】
この構成によれば、油が貯留されるケースの下部に近い位置にオイルポンプが配置されるため、貯留部からの油の汲み上げに要する負荷が低減され、オイルポンプの駆動負荷が低減される。
【0069】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、オイルポンプ(1)の前記ロータ(3)は、外歯を有するドライブギヤ(3)であり、
前記オイルポンプ(1)は、前記外歯に噛合う内歯を有し、前記ドライブギヤ(3)に対して偏心した状態で前記ロータ室(82)に収容され、前記ドライブギヤ(3)に従動回転するドリブンギヤ(4)を備えると好適である。
【0070】
この構成によれば、ロータ室に収容されたドライブギヤとドリブンギヤとの間に形成される油室に油を吸い込んで加圧する内接ギヤポンプの構成において、キャビテーションの発生を低減することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る動力伝達装置(PT)において、前記ハウジング(6)は、前記ロータ室(82)を形成されたポンプボディ(8)と、前記ポンプボディ(8)のうち前記軸方向の一方を覆って前記ポンプボディ(8)に固定され、前記第1油路(71)及び前記第2油路(72)を形成されたカバー体(7)と、を含むと好適である。
【0072】
この構成によれば、ポンプボディとカバー体と別個に製造して組付けることで、複雑な立体形状を有するハウジングを容易に製造することができる。
【0073】
[他の実施形態]
上述した実施形態において、オイルポンプ1はトロコイド型の内接ギヤポンプとして適用されているが、ドライブギヤとドリブンギヤとの間にシール部材(クレセント)を介在する構成であってもよく、或いはロータに形成された溝に径方向に移動自在の羽根を収容したベーンポンプとして適用してもよい。要するに、ロータ室(ギヤ収容室)に収容されたロータの回転に伴って、第1油路及び第2油路を介して流入する油の少なくとも一部が合流部において合流して、ロータによって区画された油室(ポンプ室)に吸い込まれて加圧される構成であればよい。
【0074】
なお、上述の実施形態においては、第1油路71及び第2油路72の上流部71a,72aは、油の流動方向が対向する方向となるように形成されているが、シャフト軸O2に対して合流部73と同じ側に吸引ポートS1が配置され、合流部73とは反対側に受入ポートS2が配置される構成であれば、第1油路及び第2油路の形成方向はこれに限らない。また、軸方向から視て第2油路がシャフト軸O2の周囲を回り込むように湾曲して形成される構成に限らず、例えば合流部に対して軸方向の一方から合流する構成であっても構わない。これらの場合であっても、一旦合流部の位置よりもシャフト軸O2から遠ざかった油の流れを、合流部の側へ折り返す折返し部を設けることにより、本実施形態と同様の効果を奏することができる。