(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593451
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】四重極マスフィルタ及び四重極型質量分析装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/42 20060101AFI20191010BHJP
【FI】
H01J49/42
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-553556(P2017-553556)
(86)(22)【出願日】2015年12月2日
(86)【国際出願番号】JP2015083915
(87)【国際公開番号】WO2017094146
(87)【国際公開日】20170608
【審査請求日】2018年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 真二
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩子
(72)【発明者】
【氏名】上野 良弘
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−537953(JP,A)
【文献】
特表2009−506506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)中心軸を取り囲むように配置された4本の主ロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の各主ロッド電極の前に配置された該主ロッド電極よりも短いプリロッド電極からなるプレ電極部と、
c)前記主ロッド電極にそれぞれ、通過させるイオンの質量電荷比に応じた直流電圧と高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記プリロッド電極にそれぞれ前記高周波電圧と同じ周波数である高周波電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備え、前記主電極部の前記4本の主ロッド電極は前記中心軸を中心とする一つの円に内接するように配置され、前記プレ電極部にあって、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とは、該中心軸を中心とする内接円の半径が異なる位置に配置されていることを特徴とする四重極マスフィルタ。
【請求項2】
a)中心軸を取り囲むように配置された4本の主ロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の各主ロッド電極の前に配置された該主ロッド電極よりも短いプリロッド電極からなるプレ電極部と、
c)前記主ロッド電極にそれぞれ、通過させるイオンの質量電荷比に応じた直流電圧と高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記プリロッド電極にそれぞれ前記高周波電圧と同じ周波数である高周波電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備え、前記主電極部の前記4本の主ロッド電極は前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状が同一であり、前記プレ電極部にあって、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とは、該中心軸に向いた湾曲面の断面形状が異なることを特徴とする四重極マスフィルタ。
【請求項3】
請求項2に記載の四重極マスフィルタであって、
前記各プリロッド電極は、前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状がいずれも円弧状であり、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とでは円弧の半径が異なることを特徴とする四重極マスフィルタ。
【請求項4】
請求項2に記載の四重極マスフィルタであって、
前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極は前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状が円弧状であり、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極は前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状が楕円弧状であることを特徴とする四重極マスフィルタ。
【請求項5】
a)中心軸を取り囲むように配置された4本の主ロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の各主ロッド電極の前に配置された該主ロッド電極よりも短いプリロッド電極からなるプレ電極部と、
c)前記主ロッド電極にそれぞれ、通過させるイオンの質量電荷比に応じた絶対値が同一である直流電圧と該質量電荷比に応じた絶対値が同じ振幅を有する高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とに、前記高周波電圧と周波数が同じであって、互いに振幅の絶対値が相違する高周波電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備えることを特徴とする四重極マスフィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の四重極マスフィルタを質量分離器として用いたことを特徴とする四重極型質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の質量電荷比m/zを有するイオンを選択する四重極マスフィルタ、及び、該四重極マスフィルタを質量分離器として用いた四重極型質量分析装置に関する。なお、ここでいう四重極型質量分析装置は、唯一の質量分離器として四重極マスフィルタを用いる一般的なシングル四重極型質量分析装置のみならず、MS/MS分析を行うために二段の四重極マスフィルタを備えた三連四重極型質量分析装置や四重極マスフィルタで選択したイオンを解離したあとに飛行時間型質量分離器で質量電荷比に応じて分離して検出するQ−TOF型質量分析装置を含むものとする。
【背景技術】
【0002】
シングル四重極型質量分析装置では、試料から生成された各種イオンを四重極マスフィルタに導入して特定の質量電荷比を有するイオンのみを選択的に通過させ、通過したイオンを検出器で検出してイオンの量に応じた強度信号を取得する。
【0003】
一般に四重極マスフィルタは、イオン光軸を取り囲むように互いに平行に配置された4本のロッド電極から成り、その4本のロッド電極にそれぞれ直流電圧と高周波電圧(交流電圧)とを加算した電圧が印加される。4本のロッド電極で囲まれる空間をその軸方向に通過し得るイオンの質量電荷比は、該ロッド電極に印加される高周波電圧と直流電圧とに依存する。そこで、測定対象であるイオンの質量電荷比に応じて高周波電圧及び直流電圧を適切に設定することで、その測定対象のイオンを選択的に通過させて検出することができる。また、ロッド電極に印加する高周波電圧及び直流電圧をそれぞれ所定範囲で所定の関係を保ちつつ変化させることにより、四重極マスフィルタを通過するイオンの質量電荷比を所定範囲で走査し、その際に検出器により得られる信号に基づいてマススペクトルを作成することができる。
【0004】
四重極マスフィルタを構成するロッド電極に印加される電圧によって該ロッド電極で囲まれる空間に形成される四重極電場中でのイオンの挙動やイオンが安定に通過する動作条件などについては、非特許文献1等に記載のように、従来詳しく解析されている。
即ち、z軸方向に延伸するロッド電極で囲まれる空間に形成される理想的な四重極電場中を通過するイオンの運動は、マシュー(Mathieu)方程式と呼ばれる次の(1)式で表される。
m(d
2x/dt
2)=−(2zex/r
02)(U−VcosΩt)
m(d
2y/dt
2)=+(2zey/r
02)(U−VcosΩt) …(1)
ここで、mはイオンの質量、r
0はロッド電極の内接円半径、eは電荷量、U、Vはそれぞれ直流電圧の電圧値及び高周波電圧の振幅値、Ωは高周波電圧の周波数である。また、zはz軸上の位置、x、yはz軸に直交するx軸、y軸上の位置を示す。
【0005】
イオンが4本のロッド電極で囲まれる空間に収まりつつ安定して通過できる条件は、上記マシュー方程式を解くことで得られる次の二つのパラメータa、qを互いに直交する軸とした2次元空間上の領域として次の(2)式で表すことができる。
a
x=−a
y=8eU/mr
02 Ω
2
q
x=−q
y=4eV/mr
02 Ω
2 …(2)
【0006】
図11(a)は、マシュー方程式の解の安定条件を説明するためにしばしば利用される安定状態図である。
図11(a)において実線で囲まれた略三角形の領域が上記(1)式の安定解となる安定領域であり、その外側がイオンが発散してしまう不安定領域である。理論的には、或る質量を持つイオンについて安定領域内に位置するように電圧などの条件を定めれば該イオンを安定的に通過させることは可能であるものの、高い質量分解能を得るには安定領域の頂部Pに近い位置に動作条件を定める必要がある。そのため、一般的には、質量分解能を高く保ち、且つ動作条件がばらついたり変動しても不安定領域に入ったりしないように、頂部Pに近い例えば点Aの付近に動作条件を定めるようにしている。
【0007】
しかしながら、四重極型質量分析装置による実際の測定の際には、四重極マスフィルタの外側で生成されたイオンはロッド電極で囲まれる空間の端部を経て該空間中に入射して来る。その端部における電場つまり縁端場はその内側に形成されている四重極電場に比べて弱い。そのため、四重極マスフィルタへ入射して来るイオンが受ける電場による該イオンの挙動は、安定状態図上で示すと、
図11(a)中に点線矢印で示すように不安定領域を通りながら安定領域に入っていく状態となる。図中に符号Bで示す不安定領域を通過する間は、イオンの運動は不安定であるため、一部のイオンは安定した四重極電場に達する前に発散して消失してしまう。これが四重極マスフィルタを通過するイオンの透過率が低下する大きな要因である。
【0008】
上記問題を解決するため、多くの四重極型質量分析装置では、四重極マスフィルタにおいて質量電荷比に応じてイオンを選択するための4本の主ロッド電極から成る主電極部の直前に、該主ロッド電極と同径で長さが短い4本のプリロッド電極から成るプレ電極部が配置され、該プリロッド電極に主ロッド電極に印加されているのと同じ高周波電圧が印加される構成が採られている(特許文献1、2、非特許文献2等参照)。このプリロッド電極には主ロッド電極に印加されているイオン選択用の直流電圧は印加されない。そのため、特許文献2に記載されているように、プリロッド電極で囲まれる空間をまず通過したあとに主ロッド電極で囲まれる空間に入射するイオンの挙動は、安定状態図上で示すと、
図11(b)中に点線矢印で示すように安定領域を通りながら点Aに到達する状態となる。この場合には、イオンは不安定領域を通過しないので効率良く主ロッド電極で囲まれる空間に導入されることになり、プリロッド電極を設けない場合に比べてイオン透過率を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、本発明者らのシミュレーション計算等による検討によれば、上述したようなプリロッド電極を設けた四重極マスフィルタであっても、四重極マスフィルタに入射しようとするイオンのうちのかなりの部分が無駄になっており、イオン透過率は未だ改善の余地が大きい。近年、質量分析の分野では、試料中にごく微量含まれる成分の同定や定量の必要性がますます高まっている。そうした要求に応えるためには検出感度の一層の向上が必要であり、四重極マスフィルタを搭載した四重極型質量分析装置では、四重極マスフィルタのイオン透過率を向上させることが非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3129327号明細書
【特許文献2】特開2005-259616号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】オースチン(Austin WE)ほか2名、「チャプター6 ザ・マス・フィルタ:デザイン・アンド・パフォーマンス クァドルポール・マス・スペクトロメトリー・アンド・イッツ・アプリケーションズ(CHAPTER VI-THE MASS FILTER: DESIGN AND PERFORMANCE, Quadrupole Mass Spectrometry and its Applications)」、エルゼビア(Elsevier)社、1976年
【非特許文献2】ウィルソン(Wilson M. Brubaker)、「アン・インプルーブド・マス・アナライザ(An Improved Quadrupole Mass Analyser)」、アドバンセズ・イン・マス・スペクトロメトリー(Advances in Mass Spectrometry)、Vol. 4、1968年、pp. 293-299
【非特許文献3】ゲーリック(Dieter Gerlich)、「インホモジーニアス・アールエフ・フィールズ:ア・バーサタイル・ツール・フォー・ザ・スタディ・オブ・プロセシズ・ウィズ・スロー・イオンズ(Inhomogeneous RF Fields: A Versatile Tool for the Study of Processes with Slow Ions)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons, Inc.)社、1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、測定対象であるイオンの透過率を向上させることができる四重極マスフィルタを提供することである。また、本発明の他の目的は、そうしたイオン透過率の高い四重極マスフィルタを用いることで、最終的に検出器に到達するイオンの量を増加させ、高い検出感度を達成することができる四重極型質量分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一般に、主電極部のロッド電極に印加される高周波電圧は通過させたい(選択したい)質量電荷比を有するイオンが良好に通過できるように、つまりイオン透過量ができるだけ多くなる(実際には検出されるイオン強度ができるだけ高くなる)ように設定されている。また、プレ電極部に含まれるロッド電極には、主電極部のロッド電極に印加されるのと同じ高周波電圧が印加される。これにより、上記通過させたい質量電荷比を有するイオンはプレ電極部に含まれるロッド電極も良好に通過することができる。ところが、プレ電極部に含まれるロッド電極を出射したイオンが主電極部に含まれるロッド電極で囲まれる空間に入射する時点でのイオンの導入効率は、入射するイオンビームのエミッタンスと受け入れ側のアクセプタンスとのマッチングに依存し、そのマッチングが悪いと入射しようとするイオンの一部が発散してしまう。総合的なイオン透過率を高めるために、こうしたマッチングについては従来あまり考慮されておらず、上述したようなロッド電極で囲まれる空間中のイオン透過率の高さが専ら重要視されていた。これに対し本発明者は、各種条件の下でのシミュレーション計算と検討を繰り返す中で、プリロッド電極を通過したイオンが主ロッド電極で囲まれる空間に入射する時点でのイオン導入効率が、総合的なイオン透過率を高めるために重要であるという知見を得た。
【0014】
主電極部へのイオン入射時のイオン導入効率を高めるには、入射するイオンの位置に関するエミッタンスと受け入れ側のイオンの位置に関するアクセプタンスとのマッチングを良くすればよいわけであるが、四重極マスフィルタに入射して来るイオンのイオン位置に関するエミッタンスを変更することは質量分析装置全体の構成や構造の変更に繋がるため困難である。一方、主電極部におけるイオンの位置に関するアクセプタンスを変更することも該主電極部を通過するイオンの透過率を下げるおそれがあるために困難である。そこで、本発明者は、プレ電極部の電極の構成や構造、及び印加電圧などの条件を検討し、それらを適切に定めることで上記マッチングを改善し総合的なイオン透過率を向上させることが可能であることを確認し、本発明を得るに至った。
【0015】
即ち、上記課題を解決するために成された本発明に係る第1の態様の四重極マスフィルタは、
a)中心軸を取り囲むように配置された4本の主ロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の各主ロッド電極の前に配置された該主ロッド電極よりも短いプリロッド電極からなるプレ電極部と、
c)前記主ロッド電極にそれぞれ、通過させるイオンの質量電荷比に応じた直流電圧と高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記プリロッド電極にそれぞれ前記高周波電圧と同じ周波数である高周波電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備え、
前記主電極部の前記4本の主ロッド電極は前記中心軸を中心とする一つの円に内接するように配置され、前記プレ電極部にあって、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とは、該中心軸を中心とする内接円の半径が異なる位置に配置されていることを特徴としている。
【0016】
また上記課題を解決するために成された本発明に係る第2の態様の四重極マスフィルタは、
a)中心軸を取り囲むように配置された4本の主ロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の各主ロッド電極の前に配置された該主ロッド電極よりも短いプリロッド電極からなるプレ電極部と、
c)前記主ロッド電極にそれぞれ、通過させるイオンの質量電荷比に応じた直流電圧と高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記プリロッド電極にそれぞれ前記高周波電圧と同じ周波数である高周波電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備え、
前記主電極部の前記4本の主ロッド電極は前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状が同一であり、前記プレ電極部にあって、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とは、該中心軸に向いた湾曲面の断面形状が異なることを特徴としている。
【0017】
具体的には例えば、前記各プリロッド電極は、前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状がいずれも円弧状であり、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とでは円弧の半径が異なる構成とすることができる。
【0018】
また、前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極は前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状が円弧状であり、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極は前記中心軸に向いた湾曲面の断面形状が楕円弧状である構成としてもよい。
【0019】
また上記課題を解決するために成された本発明に係る第3の態様の四重極マスフィルタは、
a)中心軸を取り囲むように配置された4本の主ロッド電極からなる主電極部と、
b)前記中心軸に沿って前記主電極部の各主ロッド電極の前に配置された該主ロッド電極よりも短いプリロッド電極からなるプレ電極部と、
c)前記主ロッド電極にそれぞれ、通過させるイオンの質量電荷比に応じた
絶対値が同一である直流電圧と
該質量電荷比に応じた絶対値が同じ振幅を有する高周波電圧とを加算した電圧を印加する第1の電圧印加部と、
d)前記中心軸を挟んで位置する2本のプリロッド電極と、該中心軸の周りに該プリロッド電極に隣接する2本のプリロッド電極とに、前記高周波電圧と周波数が同じであって、互いに振幅
の絶対値が相違する高周波電圧を印加する第2の電圧印加部と、
を備えることを特徴としている。
【0020】
また上記課題を解決するために成された本発明に係る四重極型質量分析装置は、上記本発明に係る四重極マスフィルタを少なくとも一つの質量分離器として用いたことを特徴としている。
【0021】
一般的な四重極マスフィルタでは、プレ電極部に含まれるプリロッド電極の配置や形状、或いはプレ電極部に印加される電圧は中心軸の周りに完全な回転対称である。そのため、質量分離のための直流電圧が印加されないプリロッド電極で囲まれる空間におけるイオンの位置に関するアクセプタンス(以下の説明では、特に記載しない限り、アクセプタンスはイオンの位置に関するアクセプタンス、エミッタンスはイオンの位置に関するエミッタンスのことをいう)は円形状である。一方、主ロッド電極には質量分離のための高周波電圧のみならず質量分離のための直流電圧が印加されるため、その影響により、主ロッド電極で囲まれる空間におけるアクセプタンスは楕円形状になる。プレ電極部から主電極部へと送られるイオンビームの断面形状つまりプレ電極部のエミッタンスの形状は、プレ電極部におけるアクセプタンスの形状と同じになるから円形状である。つまり、従来の四重極マスフィルタでは、プレ電極部におけるエミッタンスと主電極部におけるアクセプタンスとでは大きな不整合が生じている。
【0022】
これに対し本発明に係る四重極マスフィルタでは、プレ電極部に含まれるプリロッド電極の配置や形状、又はプリロッド電極に印加される電圧が中心軸の周りに完全な回転対称ではない。そのため、プレ電極部におけるイオンのアクセプタンス、エミッタンスも円形状でなく楕円形状である。この楕円の楕円率(短径/長径)は中心軸の周りの回転非対称性の程度に依存する。そこで、プレ電極部におけるアクセプタンス形状の楕円率が、主電極部におけるアクセプタンス形状の楕円率と、一般に四重極マスフィルタに入射して来るイオンの円形であるエミッタンス形状の楕円率つまり1との間になるように、プリロッド電極の配置や形状、又はプリロッド電極に印加される電圧が定められる。即ち、主電極部におけるアクセプタンス形状の楕円率がa(<1)であり、プレ電極部におけるアクセプタンス形状の楕円率がb(<1)であるとき、a<b<1に定めておけばよい。
【0023】
これにより、四重極マスフィルタに入射して来るイオンのエミッタンス形状は円形であるが、プレ電極部、主電極部、とアクセプタンス形状は段階的に偏平状になるので、エミッタンス形状とアクセプタンス形状との不整合性が緩和される。その結果、従来の四重極マスフィルタに比べて、プレ電極部から主電極部へとイオンが入射する時点でのイオンの損失が減少し、四重極マスフィルタの外部からプレ電極部へイオンが入射する際のイオンの損失が増加したとしても四重極マスフィルタ全体としてみればイオンの透過率が改善される。
【発明の効果】
【0024】
上述したように本発明に係る四重極マスフィルタによれば、選択したいイオンについてのイオン透過率を向上させることができ、より多くの量のイオンを後段へと送ることができる。
【0025】
また本発明に係る四重極型質量分析装置によれば、試料由来の目的とするイオンをより多く検出器に到達させたり、より多くコリジョンセル等で解離させてそれによって生成されるプロダクトイオンを質量分析したりすることができる。それによって、試料由来の目的イオンの検出感度が向上するので、微量成分の同定や定量、或いは構造解析などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る四重極マスフィルタを用いた四重極型質量分析装置の第1実施例の概略構成図。
【
図2】第1実施例の質量分析装置における主ロッド電極及びプリロッド電極の縦断面図。
【
図3】第1実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタの各段階でのエミッタンス及びアクセプタンスの形状を示す模式図。
【
図4】第1実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタにおけるイオン相対強度のシミュレーション結果を示す図。
【
図5】第2実施例の質量分析装置におけるプリロッド電極の縦断面図。
【
図6】第2実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタにおけるイオン相対強度のシミュレーション結果を示す図。
【
図7】第3実施例の質量分析装置におけるプリロッド電極の縦断面図。
【
図8】第3実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタにおけるイオン相対強度のシミュレーション結果を示す図。
【
図9】第4実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタ及び電圧印加部の構成図。
【
図10】第4実施例の質量分析装置における四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタにおけるイオン相対強度のシミュレーション結果を示す図。
【
図11】プリロッド電極を設けない構成において四重極マスフィルタを通過するイオンの運動条件を示す安定領域図(a)、及びプリロッド電極を設けた構成において四重極マスフィルタを通過するイオンの運動条件を示す安定領域図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施例]
本発明に係る四重極マスフィルタを用いた質量分析装置の第1実施例について、添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施例であるシングル型の四重極型質量分析装置の概略構成図、
図2は本実施例の四重極型質量分析装置における主電極部及びプレ電極部の縦断面図である。
【0028】
本実施例の四重極型質量分析装置は、図示しない真空チャンバの内部に、イオン源1、イオンレンズ2、四重極マスフィルタ3、及び検出器4、を備える。イオン源1は例えば電子イオン化法により試料ガス中の試料成分をイオン化する。イオン源1で生成され
図1中に白抜き矢印で示すように右方へ引き出されたイオンは、イオンレンズ2で収束されて四重極マスフィルタ3に導入される。四重極マスフィルタ3は、後述するように4本のロッド電極からなる主電極部31と、その前段に配置されたプレ電極部32とから成る。
【0029】
詳細は後述するが、イオン光軸Cに沿って四重極マスフィルタ3の長軸方向の空間に導入されたイオンのうち、該四重極マスフィルタ3のロッド電極に印加されている高周波電圧と直流電圧とにより形成される電場の作用によって、特定の質量電荷比を有するイオンのみがイオン光軸C付近を振動しながら通り抜け、他のイオンは途中で発散する。四重極マスフィルタ3を通り抜けたイオンは検出器4に到達し、検出器4は到達したイオンの量に応じた検出信号を生成して図示しないデータ処理部へと送る。四重極マスフィルタ3のロッド電極に印加する高周波電圧と直流電圧とを所定の関係を保ちつつそれぞれ変化させると、四重極マスフィルタ3を通り抜け得るイオンの質量電荷比が変化する。そこで、その高周波電圧と直流電圧とをそれぞれ所定の範囲で走査することによって、検出器4に到達し得るイオンの質量電荷比を所定の範囲で変化させることができ、それにより得られた検出信号に基づいて、質量電荷比とイオン強度との関係を示すマススペクトルを作成することができる。
【0030】
図2(a)に示すように、主電極部31は、中心軸でもあるイオン光軸Cを取り囲むように該イオン光軸Cに平行に配置された4本の円柱状の主ロッド電極(a、b、c、d)から成り、その主ロッド電極の直径や、主ロッド電極に内接するイオン光軸Cを中心とする円の半径r
0は同一である。一方、
図2(b)に示すように、プレ電極部32は主電極部31と同様に、イオン光軸Cを取り囲むように該イオン光軸Cに平行に配置された4本の円柱状のプリロッド電極(a、b、c、d)から成り、そのプリロッド電極の直径は同一であるが、プリロッド電極に内接するイオン光軸Cを中心とする円の半径は、プリロッド電極32a、32cと、プリロッド電極32b、32dとで異なる。即ち、2本のプリロッド電極32b、32dの内接円の半径は主電極部31を構成する4本のロッド電極の内接円の半径r
0と同じであるが、他の2本のプリロッド電極32a、32cの内接円の半径R
0はそれよりも大きい。したがって、4本のプリロッド電極32a、32b、32c、32dはイオン光軸Cを中心とする仮想的な楕円筒に外接しているとみなすこともできる。
【0031】
なお、4本のプリロッド電極32a、32b、32c、32dに印加される電圧は、従来と同様に、各プリロッド電極32a〜32dの後方に配置されている主ロッド電極31a〜31dに印加される高周波電圧と同じである。つまり、プリロッド電極32b、32dには高周波電圧V
RF(=V
1sinΩt)が印加され、プリロッド電極32a、32cにはそれとは逆位相で周波数及び振幅が同じ高周波電圧−V
RF(=−V
1sinΩt)が印加される。また、
図2には記載していないが、それ以外に、通常、全てのプリロッド電極32a〜32dに共通の直流バイアス電圧が印加される。
【0032】
中心軸の周りに完全に回転対称である4本のロッド電極から成る四重極マスフィルタにおいて、そのロッド電極で囲まれる空間に形成される四重極電場のx−y面内のポテンシャルは一般に次の(3)式で表される。
φ(x、y、t)={(x
2−y
2)/r
02}(U
DC−V
ACcosΩt) …(3)
(3)式中の静的なポテンシャルは(4)式で表される。
V
s={(x
2−y
2)/r
02}U
DC …(4)
また(3)式による電場は(5)式で表される。
【数1】
(5)式中の動的な電場は(6)式で表される。
【数2】
擬似ポテンシャルは以下の(7)式のようになる。
【数3】
(7)式の1行目右辺は非特許文献3の記載に基づく。(7)式の2行目は安定領域のパラメータを示す(2)式に基づく。また、E
inは入射イオンのエネルギである。
【0033】
(7)式は、4本の主ロッド電極から成る主電極部において、z軸(イオン光軸C)に直交するx−y面内でのアクセプタンスの形状は楕円になることを理論的に示している。一方、四重極マスフィルタに入射するイオンの運動状態つまりはエミッタンスの形状はほぼ円形である。従来の四重極マスフィルタではプレ電極部から出射されるイオンのエミッタンスの形状も円形である。この入射イオンのエミッタンスの断面形状と主電極部におけるアクセプタンスの断面形状との相違がイオンの導入効率を低下させる大きな原因の一つであると推測できる。これに対し、本実施例の質量分析装置では、プレ電極部32におけるプリロッド電極32a〜32dの配置を上述したようにイオン光軸Cを中心とする楕円筒に外接するように配置したため、プレ電極部32におけるアクセプタンスの形状が円形ではなく楕円形になる。
【0034】
また、プレ電極部32におけるアクセプタンス形状を示す楕円形の楕円率が、主電極部31におけるアクセプタンス形状を示す楕円形の楕円率よりも大きくなる(つまりは円形に近くなる)ように、プリロッド電極32a、32cの外側への位置のずらし量が決められている。イオンレンズ2を経てプレ電極部32に入射しようとするイオンのエミッタンスの断面形状100、プレ電極部32におけるアクセプタンスの断面形状101、及び、主電極部31におけるアクセプタンスの断面形状102の関係を
図3に示す。このように本実施例の質量分析装置では、従来の質量分析装置のようにアクセプタンスの形状が急に変化するのではなく、イオンがイオン光軸Cに沿って進行するに伴って徐々にアクセプタンスの形状が変化つまり偏平になる。そのため、入射するイオンのエミッタンスと受け入れ側のアクセプタンスとの不整合性が小さくなり、イオン導入時のイオン損失が軽減される。
【0035】
シミュレーション計算による、第1実施例で用いた四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタとのイオン相対強度の比較結果を
図4に示す。このシミュレーションでは、イオン源1の位置に相当するイオン光軸(z軸)C上の所定の位置から出射したm/z=500であるイオンの軌道を計算することで、四重極マスフィルタ3を通り抜けるイオンの相対強度を算出した。
図4から明らかであるように、上記実施例における四重極マスフィルタ3は従来の四重極マスフィルタに比べて、相対強度が約1.8倍になっている。つまり、検出器4に到達するイオンの量が約2倍に増加し、それだけ検出感度が向上するということができる。
【0036】
[第2実施例]
図5は本発明の別の実施例(第2実施例)である質量分析装置におけるプレ電極部32の縦断面図である。プレ電極部32以外の構成は第1実施例と全く同じである。この第2実施例の質量分析装置では、4本のプリロッド電極32a〜32dはいずれも半径がr
0である円に接しているが、プリロッド電極32a、32cとプリロッド電極32b、32dとではその半径が相違している。つまり、イオン光軸Cに向いたプリロッド電極32a〜32dの湾曲面の断面の円弧形状が相違しており、その断面形状はイオン光軸Cの周りに回転非対称である。それによって、第1実施例と同様に プレ電極部32におけるアクセプタンスの形状が円形ではなく楕円形になる。その楕円率はプリロッド電極32b、32dの半径で調整可能である。
【0037】
シミュレーション計算による、第2実施例で用いた四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタとのイオン相対強度の比較結果を
図6に示す。
図6から明らかであるように、第2実施例における四重極マスフィルタ3は従来の四重極マスフィルタに比べて、相対強度が約1.3〜1.4倍になっている。これにより、この第2実施例の質量分析装置においても第1実施例と同様に、検出感度を向上させることができることが分かる。
【0038】
[第3実施例]
図7は本発明の別の実施例(第3実施例)である質量分析装置におけるプレ電極部32の縦断面図である。プレ電極部32以外の構成は第1実施例と全く同じである。この第3実施例の質量分析装置では、4本のプリロッド電極32a〜32dはいずれも半径がr
0である円に接しているが、プリロッド電極32a、32cの断面形状は円形であるのに対し、プリロッド電極32b、32dの断面形状は楕円形である。つまり、イオン光軸Cに向いたプリロッド電極32a〜32dの湾曲面の断面形状が相違しており、その断面形状はイオン光軸Cの周りに回転非対称である。それによって、第1実施例と同様に プレ電極部32におけるアクセプタンスの形状が円形ではなく楕円形になる。その楕円率はプリロッド電極32b、32dの楕円率で以て調整可能である。
【0039】
シミュレーション計算による、第3実施例で用いた四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタとのイオン相対強度の比較結果を
図8に示す。
図8から明らかであるように、第3実施例における四重極マスフィルタ3は従来の四重極マスフィルタに比べて、相対強度が約1.3倍になっている。これにより、この第3実施例の質量分析装置においても第1実施例と同様に、検出感度を向上させることができることが分かる。
【0040】
[第4実施例]
図9は本発明の別の実施例(第4実施例)である質量分析装置における四重極マスフィルタ及び電圧印加部の構成図である。
図9では、主電極部31及びプレ電極部32をそれぞれ、イオン光軸Cに直交するx−y面で以て記載してある。この第4実施例の質量分析装置では、プリロッド電極32a〜32dの配置や形状は従来と全く同じであるが、それらプリロッド電極32a〜32dに電圧を印加する電圧印加部の構成が従来と異なる。
図9に示すように、プレ電極部32及び主電極部31に含まれる合計で8本のロッド電極にはそれぞれ、高周波電圧生成部51、直流電圧生成部52、バイアス電圧生成部53、及び電圧合成部54を含む電圧印加部から所定の電圧が印加される。
【0041】
より詳しく述べると、高周波電圧生成部51は制御部50からの指示により、選択対象であるイオンの質量電荷比に応じた、振幅は等しく位相が逆である高周波電圧+V
RF、−V
RFを生成する。直流電圧生成部52は制御部50からの指示により、選択対象であるイオンの質量電荷比に応じた、電圧値の絶対値が等しく極性が逆である直流電圧+U
DC、−U
DCを生成する。また、バイアス電圧生成部53は、イオンを加速したり減速させたりするために前段又は後段に配置される電極やイオン光学系との間に適宜の電位差を生じさせるべく所定の直流バイアス電圧V
B1、V
B2を生成する。電圧合成部54は電圧を加算する加算部と電圧を増幅する(又は縮小する)増幅部とを含む。この電圧合成部54において、正位相の高周波電圧+V
RFと正極性の直流電圧+U
DCとは加算され、逆位相の高周波電圧−V
RFと負極性の直流電圧−U
DCとは加算され、さらに、その±(U
DC+V
RF)の電圧にそれぞれ直流バイアス電圧V
B1が加算されて、主電極部31の主ロッド電極31a〜31dに印加される。これは従来の一般的な四重極マスフィルタと同様である。
【0042】
電圧合成部54において、正位相の高周波電圧+V
RFは直流バイアス電圧V
B2と加算され、プリロッド電極32b、32dに印加される。また、逆位相の高周波電圧−V
RFは増幅部でα倍されたうえで直流バイアス電圧V
B2と加算され、プリロッド電極32a、32cに印加される。即ち、イオン光軸Cを挟んだ2本のプリロッド電極32b、32dにはV
RF+V
B2なる電圧が印加され、他の2本のプリロッド電極32a、32cには、−αV
RF+V
B2なる電圧が印加される。これにより、プリロッド電極32a〜32dに印加される高周波電圧の振幅はイオン光軸Cの周りに回転非対称となる。それによって、第1実施例と同様に プレ電極部32におけるアクセプタンスの形状が円形ではなく楕円形になる。その楕円率は増幅部の増幅率αで以て調整可能である。
【0043】
シミュレーション計算による、第4実施例で用いた四重極マスフィルタと従来の四重極マスフィルタとのイオン相対強度の比較結果を
図10に示す。
図10から明らかであるように、第4実施例における四重極マスフィルタ3は従来の四重極マスフィルタに比べて、相対強度が約1.5〜1.6倍になっている。これにより、この第4実施例の質量分析装置においても第1実施例と同様に、検出感度を向上させることができることが分かる。
【0044】
なお、
図9では理解を容易にするために、加算部及び増幅部を含む電圧合成部54により各ロッド電極へ印加する電圧を生成する構成としていたが、同様の電圧を生成するための回路構成はこれに限らないことは明らかである。例えば、高周波電圧波形をデジタルデータで生成し、デジタル値の段階で加算や乗算を実行したあとにデジタル・アナログ変換することで高周波電圧に対応するアナログ波形を生成し、これをドライブ回路を通してロッド電極に印加する構成とすることもできる。もちろん、それ以外の回路構成とすることも容易に想到し得る。
【0045】
また、上記第1〜第4実施例は本発明に特徴的である四重極マスフィルタをシングルタイプの四重極型質量分析装置に適用した例であるが、この四重極マスフィルタを三連四重極型質量分析装置の前段四重極マスフィルタ及び後段四重極マスフィルタに適用したり、Q−TOF型質量分析装置の四重極マスフィルタに適用したりしてもよいことは当然である。
【0046】
さらにまた、上記実施例はいずれも本発明の一例に過ぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜、変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【符号の説明】
【0047】
1…イオン源
2…イオンレンズ
3…四重極マスフィルタ
31…主電極部
31a〜31d…主ロッド電極
32…プレ電極部
32a〜32d…プリロッド電極
4…検出器
50…制御部
51…高周波電圧生成部
52…直流電圧生成部
53…バイアス電圧生成部
54…電圧合成部
C…イオン光軸(中心軸)