(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プローブは、前記接触棒が上昇した際に前記接触棒の下方を閉じ、かつ、前記接触棒が下降する際に前記接触棒の下方を開くシャッタを備える、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のレーザ加工機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプローブは、接触棒を下降させて下端の高さを孔部内に配置させることが必要となる。例えば、接触棒を深く挿入すると、接触棒の下端がワークの下面から突出することになり、この状態で接触棒を水平方向に移動させても、ワークの下面を支持するワーク支持部に接触棒が接触して誤検出を招くといった問題がある。特に、ワークの板厚が薄い場合に、接触棒の下端がワークの下面から突出しやすいので、接触棒の下端を孔部内の適切な高さに配置させることが求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、接触棒の下端を孔部内の適切な高さに配置させることにより、レーザヘッドによるレーザ加工位置とワークとの相対位置を高精度に取得することが可能なレーザ加工機、算出装置、及びワークの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工機は、所定の孔部が形成された板状のワークを加工するレーザヘッドと、ワークの上面の高さを計測する計
測部と、ワークに対して昇降可能な接触棒を有し、接触棒を下降させて孔部に挿入することによりレーザヘッドによるレーザ加工位置とワークとの相対位置を取得可能なプローブと、計
測部の計測結果に基づいて接触棒の目標下降位置または下降量を算出する算出装置と、算出装置により算出された目標下降位置または下降量に応じて接触棒を下降させる駆動部と、を備える。
【0007】
また、計測部は、孔部の周りにおけるワークの上面の高さを計測してもよい。また、プローブは、レーザヘッドに設けられ、接触棒は、レーザヘッドに対して昇降可能に形成されてもよい。また、計測部は、レーザヘッドに備える非接触センサであってもよい。また、算出装置は、計
測部の計測結果と、ワークの板厚とに基づいて、接触棒の下端部の側面が孔部の垂直面と当接可能な目標下降位置または下降量を算出してもよい。また、駆動部は、レーザヘッドを駆動するためのヘッド駆動部が用いられてもよい。また、プローブは、接触棒が上昇した際に接触棒の下方を閉じ、かつ、接触棒が下降する際に接触棒の下方を開くシャッタを備えてもよい。また、接触棒は、孔部に挿入される下端部が円筒状に形成され、かつ、下端面が球面状に形成されてもよい。
【0008】
本発明に係る算出装置は、所定の孔部が形成された板状のワークの上面の高さに関する計測結果が入力され、計測結果に基づいて、孔部に向けて下降して孔部に挿入される接触棒の目標下降位置または下降量を算出する。
【0009】
本発明に係るワークの加工方法は、所定の孔部が形成された板状のワークの上面の高さを計測することと、計測された高さに基づいて孔部に挿入する接触棒の目標下降位置または下降量を算出することと、目標下降位置または下降量に応じて接触棒を下降させ、孔部に挿入した接触棒によりワークとレーザヘッドによるレーザ加工位置との相対位置を取得することと、相対位置に基づいてレーザヘッドによりワークを加工することと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のレーザ加工機によれば、算出装置により接触棒の目標下降位置又は下降量を算出し、算出結果に基づいて接触棒を下降させるため、接触棒を孔部の適切な位置に確実に挿入することができる。これにより、レーザ加工位置とワークとの相対位置を高精度に取得することが可能となる。また、ワークの板厚が薄い場合であっても、接触棒の下端を孔部内の適切な高さに容易に配置させることができる。
【0011】
また、計測部が孔部の周りにおけるワークの上面の高さを計測する場合、挿入対象である孔部の周りの高さを計測するため、接触棒の目標下降位置または下降量を高精度に得ることができる。また、プローブがレーザヘッドに設けられ、接触棒がレーザヘッドに対して昇降可能に形成される場合、接触棒とレーザヘッドとの位置関係が規定された状態で接触棒を下降させるため、レーザ加工位置とワークとの相対位置を高精度に取得することができる。
【0012】
また、計測部がレーザヘッドに備える非接触センサである場合、レーザヘッドに備える非接触センサを用いてワークの上面の高さを取得するため、効率的に計測を行うことが可能であり、別途センサ等を設ける必要がないためコストの増加を抑制できる。算出装置が、計
測部の計測結果と、ワークの板厚とに基づいて、接触棒の下端部の側面が孔部の垂直面と当接可能な目標下降位置または下降量を算出する場合、接触棒の下端部の側面を孔部の垂直面に確実に当接させるので、孔部の正確な位置が取得でき、ワークとレーザ加工位置との相対位置を高精度に取得できる。
【0013】
また、駆動部としてレーザヘッドを駆動するためのヘッド駆動部が用いられる場合、レーザヘッドと接触棒の駆動源を共有化させることで、接触棒の駆動源を別途設ける必要がなく、コストの増加を抑制できる。また、接触棒が上昇した際に接触棒の下方を閉じ、かつ、接触棒が下降する際に接触棒の下方を開くシャッタをプローブが備える場合、レーザ加工時等において非使用時の接触棒に異物等が付着することを抑制できる。また、接触棒のうち孔部に挿入される下端部が円筒状に形成されることにより、孔部の内面に対して均一に当接させることができ、また、下端面が球面状に形成されることにより、接触棒が孔部から外れて下降した場合でもワークに対する損傷を抑制できる。
【0014】
本発明の算出装置によれば、接触棒が孔部に挿入される場合の接触棒の目標下降位置または下降量を容易かつ正確に算出するので、接触棒を孔部内の適切な高さに容易に配置させることができる。
【0015】
本発明のワークの加工方法によれば、ワークとレーザ加工位置との相対位置を高精度に取得することができ、レーザヘッドによるワークの加工を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下説明する実施形態に限定されない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部または全部を模式的に記載するとともに、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。X方向と直交する方向をY方向とし、XY平面に垂直な上下方向をZ方向とする。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるとして説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機100の一例を示す斜視図である。なお、
図1ではレーザ加工機100の要部を示している。
図1に示すように、レーザ加工機100は、レーザヘッド10と、ヘッド駆動部(駆動部)20と、プローブ30と、算出装置40と、制御装置50と、を備える。レーザ加工機100は、板状のワークWに対してレーザ光を照射することにより、例えば、所望の孔開け加工、または製品形状に切断する加工装置である。レーザ加工機100は、加工領域に搬入されたワークWに対して加工を行う。ワークWの搬入出は、後述する加工パレット60により行うが、他のローダ装置等により行ってもよい。本実施形態では、レーザ加工機100は、例えばパンチプレスなどの他の加工装置によって孔部が形成されたワークWに対してレーザ加工を行う。レーザ加工機100の各部の動作は、制御装置50によって統括的に制御される。
【0019】
レーザ加工機100は、ワークWを支持する加工パレット60を有する。加工パレット60は、例えばワークWを加工する加工位置に配置される。加工パレット60は、例えば、不図示の駆動装置により、ワークWを載置した状態でX方向等に移動可能形成されてもよい。加工パレット60は、ベースプレート61及び支持プレート62を有している。ベースプレート61は、例えば矩形状に形成されている。支持プレート62は、ワークWの下面(−Z側の面)を支持する。支持プレート62は、ベースプレート61の上面(+Z側の面)に複数設けられている。
【0020】
複数の支持プレート62は、ベースプレート61に対して立った状態で設けられ、X方向に並んで配置されている。各支持プレート62は、例えば鋸歯状に形成された複数の上端部62aを有している。各上端部62aは、ベースプレート61からの高さ(Z方向の位置)が同一となるように形成されている。
【0021】
複数の上端部62aには、ワークWが載置される。複数の上端部62aの高さが不均一な場合、あるいはワークWの反り等の変形がある場合、ワークWが載置された状態で、ワークWの上面Waの高さは面方向にばらついた状態となっている。また、上端部62aが鋸歯状に形成されているため、上端部62aとワークWとの間の接触面積が小さくなる。なお、上端部62aは、鋸歯状とすることに限定されず、例えば、剣山状または波形状としてもよい。また、加工パレット60は、複数の支持プレート62を用いることに限定されず、例えば、複数のピンがベースプレート61上に配置されてもよい。
【0022】
レーザヘッド10は、レーザ光を射出するノズル11を有している。ノズル11は、−Z方向に向けられており、レーザ光を−Z方向に射出する。ノズル11は、光ファイバ12等の光伝送体を介して不図示のレーザ光源に接続されている。レーザ光源としては、例えば炭酸ガスレーザ光源または固体レーザ光源等が用いられる。
【0023】
ノズル11の先端(−Z側の端部)には、非接触センサ(計
測部)13が設けられている。非接触センサ13は、ノズル11の先端と、加工パレット60に支持されたワークWとの間隔dを非接触で検出する。非接触センサ13は、ノズル11の先端に設けられた電極を有する。非接触センサ13は、当該電極とワークWとの間の静電容量に応じた電圧を算出装置40に出力する。当該電極とワークWとの間隔dが変化すると、両者の間の静電容量が変化し、出力電圧が変化する。したがって、電極とワークWとの間隔dと出力電圧との対応関係をデータテーブルとして予め算出装置40等に記憶させておくことで、算出装置40等において、出力電圧に応じた間隔dを取得することができる。なお、非接触センサ13としては、上記のように静電容量方式のセンサに限定されない。例えば、非接触センサ13として、渦電流方式のセンサまたは光学式のセンサ等を用いてもよい。
【0024】
また、ノズル11とワークWとの間隔dを計測するセンサとして非接触式に限定されず、接触式のセンサが用いられてもよい。また、非接触センサ13は、ノズル11に配置されることに限定されず、ノズル11から離れた箇所に設置されてもよい。制御装置50は、非接触センサ13によりノズル11とワークWとの間隔dを計測することにより、ワークWの上面Waの高さがばらついている場合でも、レーザ加工に際して間隔dが一定となるように、後述するヘッド駆動部20を制御する。
【0025】
ヘッド駆動部20は、レーザヘッド10をX方向、Y方向及びZ方向に移動させる。ヘッド駆動部20は、例えばボールネジ機構またはリニアモータ機構など、レーザヘッド10を移動させる不図示の駆動機構を有している。なお、レーザヘッド10は、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの移動を案内するガイドを有し、各方向に駆動するための駆動機構を備えてもよいし、また、ロボットアームまたはマニュピレータ等によりレーザヘッド10をX方向、Y方向及びZ方向に移動させてもよい。
【0026】
プローブ30は、レーザヘッド10とワークWとの相対位置を取得する。プローブ30は、例えば連結板21によってレーザヘッド10に連結されている。これにより、プローブ30は、レーザヘッド10と一体でX方向、Y方向及びZ方向に移動可能に設けられる。
【0027】
図2(A)及び(B)は、プローブ30の一例を示す図である。プローブ30は、筐体31と、シャッタ32と、スライダ33と、エアシリンダ34と、ベース35と、接触棒36と、接触検出センサ37と、を有している。なお、接触検出センサ37については、
図2においては省略しており、
図3(A)において表記している。筐体31は、スライダ33、ベース35(接触検出センサ37を含む)、及び接触棒36を収容可能であり、下側(−Z側)端部に開口部31aが形成されている。
【0028】
スライダ33は、筐体31の内面に取り付けられ、筐体31の内面に設けられた不図示のガイドに沿って上下方向(Z方向)に移動可能に設けられる。スライダ33は、ガイドにより規定された上限位置と下限位置との間を移動する。スライダ33は、ベース35及び接触棒36を一体で支持する。エアシリンダ34は、スライダ33をZ方向に駆動する駆動源である。エアシリンダ34を駆動することにより、スライダ33が昇降し、このスライダ33とともにベース35及び接触棒36も一体となって上下方向に移動する。なお、スライダ33の駆動をエアシリンダ34で行うことに限定されず、例えばボールねじ機構等が用いられてもよい。
【0029】
シャッタ32は、開口部31aを開閉可能に設けられる。シャッタ32の開閉は、スライダ33とシャッタ32とを不図示のリンク機構により接続し、スライダ33の動作に連動して行われる。スライダ33が上方位置にある場合は、リンク機構によりシャッタ32を動作して開口部31aを閉じ、また、スライダ33が下方位置にある場合は、リンク機構によりシャッタ32を動作して開口部31aを開放する。なお、シャッタ32の動作をリンク機構で行うことに限定されず、電気モータ等の駆動源により行ってもよい。
【0030】
ベース35は、スライダ33に支持される。接触棒36は、ベース35の下方(−Z側)の支持部35aに取り付けられる。接触棒36は、支持部35aを支点として下端部が揺動可能に設けられる。接触棒36は、スライダ33が上下方向に移動することにより、ベース35と一体でワークWに対して昇降可能である。接触棒36は、ワークWに設けられた孔部Wbに挿入可能な挿入部36aを下端部に有する。挿入部36aは、円筒状(または円柱状)に形成され、下端面36bが球面状に形成される。挿入部36aの径は、孔部Wbに挿入可能となるように設定される。例えば、孔部Wbの径が10mm〜20mm程度の場合、挿入部36aの径は例えば2mm程度に設定される。
【0031】
図2(A)に示すように、エアシリンダ34によりスライダ33が筐体31の上方位置に配置される場合、ベース35及び接触棒36が筐体31に収容される。なお、接触棒36が筐体31に収容された状態において、接触棒36は開口部31aの上方に配置される。また、接触棒36が筐体31に収容される状態では、接触棒36は、レーザヘッド10のノズル11よりも上方に配置された状態となる。
【0032】
また、
図2(B)に示すように、エアシリンダ34によりスライダ33が筐体31の下方位置に配置される場合、シャッタ32が開き、接触棒36が開口部31aから下方に突出した状態となる。また、接触棒36が開口部31aから下方に突出した状態では、接触棒36の挿入部36aは、レーザヘッド10のノズル11よりも下方に配置された状態となる。なお、開口部31aにシャッタ32を設けるか否かは任意であり、シャッタ32を設けなくてもよい。
【0033】
接触検出センサ37は、接触棒36が孔部Wbの内面Wcに接触した場合に当該接触を検出する。接触検出センサ37としては、例えば
図3(A)に示すように、ベース35の支持部35aに設けられ、接触棒36の傾きを検出する傾き検出センサが用いられる。この構成では、接触棒36が孔部Wbの内面Wc(
図6(B)及び
図7参照)に接触して傾いた場合、接触検出センサ37から例えば制御装置50に対して電気信号が出力される。制御装置50は、この電気信号を検出することにより、接触棒36が内面Wcに接触したことを検出する。
【0034】
また、接触検出センサとしては、例えば
図3(B)に示すように、接触棒36の挿入部36aの側面にタッチセンサ37Aを配置した構成であってもよい。この構成では、タッチセンサ37Aが孔部Wbの内面Wcに接触した場合、タッチセンサ37Aから制御装置50に対して電気信号が出力される。制御装置50は、この電気信号を検出することにより、接触棒36が内面Wcに接触したことを検出する。
【0035】
また、
図3(A)に示すように、接触棒36の下端面36bは球面状に形成されるが、その直径は、接触棒36の円筒部分の径より大きな直径の球体の一部として形成される。これにより、球面状の下端面の上下高さを短くすることができ、接触棒36がワークWの表面に当たってもワークWの損傷を抑制しつつ、接触棒36の円筒部分の周面を下方まで延ばすことができる。
【0036】
算出装置40は、非接触センサ13の計測結果に基づいて、接触棒36の目標下降位置または下降量を算出する。また、算出装置40は、外部装置からワークWの板厚情報を取得可能である。例えば、制御装置50は、ワークWをレーザ加工するためにワークWの材質、板厚に関する情報が提供されており、算出装置40は制御装置50からワークWの板厚情報を取得してもよい。また、算出装置40は制御装置50と異なる外部装置(例えば、ワークWの加工データを作成する装置など)からワークWの板厚情報を取得してもよい。算出装置40は、ワークWの上面の高さと、ワークWの板厚情報とに基づいて、接触棒36の目標下降位置又は下降量を算出する。
【0037】
次に、
図4〜
図10を参照して、上記のように構成されたレーザ加工機100の動作を説明する。
図4は、レーザ加工機100の動作の手順を示すフローチャートである。また、
図5〜
図10は、動作の要部に関する部分について表している。以下に説明する各部の動作は、制御装置50からの指示に基づいて行われる。
【0038】
レーザ加工機100には、パンチプレスなどの加工装置によって孔部Wbが形成されたワークWが、加工パレット60(
図1参照)に載置されて、レーザ加工機100の加工領域まで搬送される。孔部Wbとしては、例えばワークWのアライメントのため、ワークWの角部近傍に設けられる孔部、またはレーザ加工によって切断する製品ごとに設けられる孔部などが挙げられる。以下の例では、ワークWの角部近傍に設けられる孔部Wbを用いて説明する。各孔部Wbの大きさは、ほぼ同一に形成されるが、互いに異なる大きさでもよい。ワークWは、加工パレット60上に単に載置された状態で支持されており、レーザ加工機100のレーザヘッド10によるレーザ加工位置(レーザ加工機100に設定されているレーザ加工座標系)からずれている場合がある。
【0039】
制御装置50は、まず、
図4に示すステップS01に先だって、ワークWの粗い位置合わせ(ラフアライメント)を行う。制御装置50は、ヘッド駆動部20を駆動して、非接触センサ13を水平方向に移動させる。このとき、制御装置50は、
図5に示すように、ワークWの四辺のうち直交する二辺を選択し、非接触センサ13がこの辺を跨いでワークWの上方から外れるようにレーザヘッド10を移動させる。この場合、非接触センサ13がワークWの一辺を跨ぐときに、非接触センサ13で発生する出力電圧の値が変化する。制御装置50は、出力電圧の値が変化した位置をワークWの一辺上の位置であるとして検出する。
【0040】
このような動作を、ワークWのうち直交する二辺の一辺に対して1カ所、他の一辺に対して2か所行う。これにより、ワークWの直交する二辺について異なる3点の位置座標を検出できるため、当該位置座標に基づいてワークWの位置を算出することができる。この位置座標から、レーザヘッド10によるレーザ加工位置との相対位置が算出される。
図5に示すように、X方向及びY方向がレーザ加工機100に設定されているレーザ加工座標系である場合、このレーザ加工座標系から、ワークWのX方向のずれ量、Y方向のずれ量、Z方向を軸とした回転量が確認され、これらによってレーザ加工座標系を補正することにより、レーザヘッド10によるレーザ加工位置とワークWとの粗い位置合わせが完了する。
【0041】
なお、上記のような粗い位置合わせを行うか否かは任意である。また、粗い位置合わせの手法として上記に限定されず、例えば、レーザ加工機100に設けられた固定部材等にワークWの直交する二辺を突き当てることにより粗い位置合わせを行ってもよい。
【0042】
続いて、
図4に示すように、非接触センサ13によってワークWの上面Waの高さを計測する(ステップS01)。制御装置50は、粗い位置合わせにより補正された値を用いてレーザヘッド10を駆動し、
図6(A)に示すように、レーザヘッド10のノズル11に備える非接触センサ13をワークWに対向させ、非接触センサ13とワークWとの間の静電容量に応じて発生する出力電圧を検出し、検出した出力電圧の大きさに対応した間隔dを求めることによりワークWの上面Waの高さを計測する。
【0043】
このとき、制御装置50は、粗い位置合わせにより孔部Wbの位置(だいたいの位置)が取得されるので、
図6(B)に示すように、孔部Wbの周りの領域WdにおけるワークWの上面Waの高さを計測させてもよい。例えば、制御装置50は、非接触センサ13を孔部Wbの周りの1か所に対向させ、続いて、非接触センサ13を矢印に示すように孔部Wbの周りの領域Wdに沿って回動させながら間隔dを求めてもよい。これにより、接触棒36の挿入対象となる孔部Wb近傍におけるワークWの高さを求めることができ、算出装置40によって精度よく目標下降位置又は下降量を算出することができる。
【0044】
次に、算出装置40は、接触棒36の目標下降位置又は下降量を算出する(ステップS02)。ステップS02において、算出装置40は、非接触センサ13で求めたワークWの上面Waの高さ(間隔d)と、外部装置等から得られるワークWの板厚情報とに基づいて、接触棒36の目標下降位置又は下降量を算出する。接触棒36の目標下降位置は、例えば、接触棒36の下端の座標値として算出される。また、接触棒36の下降量は、接触棒36が突出した状態(
図2(B)に示す状態)から下方に移動させる距離として算出される。上記した目標下降位置及び下降量はいずれか一方が算出されてもよく、双方が算出されてもよい。
【0045】
また、算出装置40は、接触棒36の挿入部36aが孔部Wbの垂直面(せん断面)Weと当接可能な目標下降位置又は下降量を算出する。ワークWをパンチプレス等により孔部Wbを形成した場合、
図7(A)に示すように、孔部Wbの内面Wcは、上面Wa側にダレWfが生じており、ほぼ中央部分に垂直面(せん断面)Weが形成され、垂直面Weの下方に傾斜した破断面Wgが形成される。挿入部36aが孔部Wbの内面Wcのうち垂直面Weと当接することにより孔部Wbの位置を正確に計測することができる。算出装置40は、例えば、接触棒36の下端面36bの高さがワークWの下面Whよりも0.1mm程度上側に位置するように目標下降位置DP又は下降量DQを算出する。これにより、接触棒36が孔部WbのダレWf、または下方の支持プレート62に接触することが抑制される。
【0046】
次に、制御装置50は、接触棒36を孔部Wbに挿入する(ステップS03)。ステップS03において、先ず、制御装置50は、ヘッド駆動部20を駆動して、プローブ30(接触棒36)をX方向及びY方向に移動させ、孔部Wbの上方にプローブ30を配置させる。続いて、制御装置50は、エアシリンダ34を駆動してスライダ33を下方に移動させる。この動作により、シャッタ32が開き、接触棒36が筐体31から下方に突出する。続いて、制御装置50は、
図7(B)に示すように、ヘッド駆動部20を駆動してレーザヘッド10とプローブ30とを一体で下方に移動させる。この動作により、接触棒36が下降(−Z方向に移動)し、挿入部36aが孔部Wbに挿入される。
【0047】
このとき、制御装置50は、先に算出された目標下降位置DP又は下降量DQに応じて接触棒36を下降(−Z方向に移動)させる。ここで、接触棒36の目標下降位置DP又は下降量DQとしては、上記のように下端面36bの高さがワークWの下面Whよりも上側に位置するように算出されている。このため、接触棒36の挿入部36aが孔部Wbに浅く挿入されること、または下端面36bが孔部Wbから突き抜けてワークWの支持プレート62の上端部62a等に当接することが防止される。
【0048】
次に、制御装置50は、ワークWとレーザヘッド10のレーザ加工位置との相対位置を取得する(ステップS04)。ステップS04において、制御装置50は、ヘッド駆動部20によってレーザヘッド10とプローブ30とを一体でX方向又はY方向に移動させ、挿入部36aの側面を孔部Wbの内面Wc(垂直面We)に当接させる。挿入部36aの側面が孔部Wbの内面Wcに当接した場合、接触検出センサ37から制御装置50に電気信号が出力される。制御装置50は、電気信号を検出したタイミングで、レーザヘッド10のX方向及びY方向への駆動量を求め、この位置を検出することにより、レーザヘッド10のレーザ加工位置とワークWとの相対位置を取得する。
【0049】
図8(A)〜(C)は、レーザヘッド10のレーザ加工位置とワークWとの相対位置を取得する動作の一例を示す図である。まず、
図8(A)に示すように、制御装置50は、接触棒36の挿入部36aを孔部Wbの内部で−X方向に移動させて内面Wcに接触させる。その後、制御装置50は、接触棒36を+X方向に移動させて挿入部36aを内面Wcに接触させる。制御装置50は、−X側の接触位置と+X側の接触位置との距離を計測した後に、その中点C1の位置(座標値)を算出し、中点C1に挿入部36aを移動させる。
【0050】
続いて、
図8(B)に示すように、制御装置50は、中点C1を通るように接触棒36の挿入部36aを+Y方向に移動させて内面Wcに接触させる。その後、制御装置50は、接触棒36を−Y方向に移動させて挿入部36aを内面Wcに接触させる。制御装置50は、+Y側の接触位置と−Y側の接触位置との距離を計測した後に、その中点C2の位置(座標値)を算出し、中点C2に挿入部36aを移動させる。
【0051】
次に、
図8(C)に示すように、制御装置50は、中点C2を通るように接触棒36の挿入部36aを−X方向に移動させて内面Wcに接触させる。その後、制御装置50は、接触棒36を+X方向に移動させて挿入部36aを内面Wcに接触させる。制御装置50は、−X側の接触位置と+X側の接触位置との距離を計測した後に、その中点C3の位置座標を求める。この中点C3の位置座標を求めることにより、孔部Wbの中心の位置座標を求めることができる。
【0052】
上記のように、先ず孔部Wb内においてX方向の中点C1を算出し、続いて中点C1を通るY方向の中点C2を算出し、続いて中点C2を通るX方向の中点C3を孔部Wbの中心とするので、例えば中点C1の算出時にX方向の距離が短く、中点C1の算出に誤差を含む場合であっても、その後の中点C2の算出を経て改めてX方向の中点C3を算出することにより、孔部Wbの中心の位置座標を正確に算出することができる。なお、上記した孔部Wbの中心の位置座標の算出手法は任意であり、例えば、孔部Wbの内面Wcの3点に挿入部36aを接触させ、この3点の各座標値から孔部Wbの中心の位置座標を求めてもよい。
【0053】
制御装置50は、ワークWに設けられた3つの孔部Wbに対して、上記ステップS01からステップS04の動作を繰り返して行う。これにより、3つの孔部Wbの中心の位置座標が求められる。制御装置50は、これら3つの孔部Wbの位置が基準として、先に行った粗い位置合わせからさらにレーザ加工座標系におけるワークWの位置を更新する。これにより、レーザヘッド10のレーザ加工位置とワークWとの相対位置(位置合わせ)が正確に取得される。すなわち、前工程機械(パンチプレス等)の前工程加工座標系とレーザ加工座標系とを合わせることとなる。従って、レーザ加工機100に搬入された状態のワークWに対してレーザヘッド10の加工開始位置、駆動方向等が正確に設定される。
【0054】
次に、制御装置50は、更新された相対位置に基づいてレーザヘッド10によりワークWを加工する(ステップS05)。ステップS05において、制御装置50は、
図9に示すように、ヘッド駆動部20によってレーザヘッド10を移動させつつ、ノズル11からワークWに対してレーザ光Lを射出する。レーザ加工では、ワークWのうち予め設定された領域が切断される。制御装置50は、ステップS04で取得したワークWとレーザ加工位置との相対位置に基づいてレーザヘッド10を移動させる。したがって、ワークWがX方向及びY方向にずれている場合または傾いて配置されている場合(
図5参照)であっても、レーザヘッド10がX方向及びY方向のずれまたは傾きを考慮して移動する。なお、非接触センサ13は、レーザ加工時においてもワークWの上面Waの高さを検出している。制御装置50は、非接触センサ13の検出結果に応じてワークWとノズル11との間隔d(
図6(A)参照)を一定に維持するようにヘッド駆動部20の駆動を制御している。
【0055】
このように、本実施形態に係るレーザ加工機100によれば、算出装置40により接触棒36の目標下降位置DP又は下降量DQを算出し、算出結果に基づいて接触棒36を下降させるため、接触棒36を孔部Wbの所望の位置に確実に挿入することができる。これにより、レーザヘッド10のレーザ加工位置とワークWとの相対位置を高精度に取得することが可能となるため、ワークWの加工精度を高めることができる。
【0056】
なお、上記した実施形態では、ワークWの角部近傍に形成された孔部Wbに接触棒36を挿入することにより、ワークWとレーザヘッド10との相対位置を求めることを記載しているが、1枚のワークWにおいて複数の製品を作成する場合は、製品ごとにレーザヘッド10のレーザ加工位置との位置合わせを行ってもよい。
【0057】
図10は、レーザ加工によって切断する領域(製品)Wiごとに孔部Wjが形成されたワークWの例を示す図である。
図10に示すように、領域Wiごとに孔部Wjが形成される場合、孔部Wjごとに
図4に示すステップS01〜S04の動作を行う。これにより、ワークWの全体の位置合わせとともに、各切断領域Wiについてもレーザヘッド10のレーザ加工位置との位置合わせを行うことができ、1枚のワークWから複数の製品を作成する場合、各製品を正確にレーザ加工することができる。なお、複数の孔部Wjの全てを計測することに限定されず、例えば、複数の孔部Wjの1つについて上記のステップS01〜S04を行ってもよい。
【0058】
また、孔部Wb及び孔部Wjは、レーザ加工される製品とは別に設けられることに限定されない。例えば
図10に示すように、パンチプレス等により予め製品中に孔部Wkが形成されている場合は、この孔部Wkを用いてレーザヘッド10との位置合わせを行ってもよい。このとき、孔部Wkのみを用いる場合、または孔部Wbまたは孔部Wjと孔部Wkを組み合わせて用いる場合のいずれであってもよい。
【0059】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、接触棒36の挿入部36aが円筒状(円柱状)に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば楕円柱状、長円形状、多角柱状など、他の形状であってもよい。また、接触棒36の下端面36bが球面状に形成された構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、平面状等、他の形状であってもよい。
【0060】
また、上記した実施形態では、プローブ30において筐体31の下方に開閉可能なシャッタ32が設けられた構成を例に挙げて説明したが、シャッタ32の開閉機構としては上記した実施形態の構成に限定されず、例えばスライド型の構成であってもよい。
【0061】
また、上記した実施形態では、接触棒36を昇降させる駆動部として、レーザヘッド10を駆動するヘッド駆動部20が用いられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、接触棒36を昇降させる駆動部がヘッド駆動部20とは別に設けられてもよい。また、上記した実施形態では、プローブ30がレーザヘッド10と一体で移動する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、プローブ30とレーザヘッド10とが独立して別個に移動する構成であってもよい。また、プローブ30とレーザヘッド10とが別々に設けられてもよい。
【0062】
また、上記した実施形態では、非接触センサ13の計測結果とワークWの板厚情報とに基づいて目標下降位置DP又は下降量DQを算出する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、ワークWの板厚情報を用いることなく、非接触センサ13の計測結果のみを用いて目標下降位置DP又は下降量DQを算出してもよい。
【0063】
また、上記した実施形態では、非接触センサ13を用いてワークWの上面Waの高さを計測しているが、これに限定されない。例えば、プローブ30に備える接触棒36を用いてワークWの上面Waの高さを計測してもよい。この場合、先ずプローブ30の接触棒36を下方に突出させ、この状態でヘッド駆動部20を駆動して接触棒36を下降させ、下端面36bがワークWの上面Waに当接させることで、当接するまでに下降した距離に基づいてワークWの上面Waの高さを検出してもよい。また、算出装置40は、接触棒36がワークWに当接するまでに下降した距離に、孔部Wbに挿入する所定量の長さを加えた量を接触棒36の下降量DQとして算出してもよい。また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2015−236568、及び本明細書で引用した全ての文献、の内容を援用して本文の記載の一部とする。