(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記投射光学系の光路と光軸が平行となるように前記投射鏡と前記レンズの間に配置される別のレンズをさらに備えることを特徴する請求項1から3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
前記投射鏡は、前記画像表示光が斜めに入反射する凹曲面を有し、前記凹曲面と交差する第1断面での曲率よりも前記凹曲面と交差する第2断面での曲率が大きくなるように構成され、前記第1断面は、前記凹曲面に斜入射する画像表示光の入射方向と反射方向の双方を含む平面であり、前記第2断面は、前記第1断面に直交する平面であって、前記凹曲面に斜入射する画像表示光の入射方向と反射方向の双方に直交する方向に沿う平面であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る虚像表示装置10の構成を模式的に示す図である。本実施の形態では、移動体の一例である車両60のダッシュボード内に虚像表示装置10が設置される。虚像表示装置10は、いわゆるヘッドアップディスプレイ装置である。虚像表示装置10は、虚像提示板であるウインドシールド62に画像表示光を投射し、車両60の進行方向(
図1の右方向)の前方に虚像50を提示する。運転者などのユーザEは、ウインドシールド62を介して現実の風景に重畳される虚像50を視認できる。そのため、ユーザEは、車両の走行中に視線をほとんど動かすことなく虚像50に示される情報を得ることができる。
図1において、車両60の進行方向(前後方向)をz方向、車両60の天地方向(上下方向)をy方向、車両60の左右方向をx方向としている。
【0012】
虚像表示装置10は、照明部11と、表示部12と、投射光学系14と、制御部40とを備える。照明部11は、表示光を生成するための光源であり、表示部12を照明するための照明光を生成する。照明部11は、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)などの発光素子と、発光素子からの出力光の強度分布や角度分布を調整するための光学素子とを有する。照明部11は、ほぼ一様な明るさの白色光を表示部12に提供する。照明部11の構成は特に限られないが、発光素子からの出力光を整えるために、例えば、ライトトンネル、フレネルレンズ、光拡散板などの光学素子を用いることができる。
【0013】
表示部12は、照明部11からの照明光を変調して表示光を生成し、虚像50の表示内容に対応する中間像(実像)を形成する。表示部12は、表示光を生成するための透過型の画像表示素子を含み、透過型の液晶パネルといった表示デバイスを含む。画像表示素子は、制御部40から送信される画像信号を受け、画像信号に対応する表示内容の画像表示光を生成する。表示部12は、画像表示光の向きや配光角を整えるための光学素子をさらに含んでもよい。また、表示部12は、例えば、透過型液晶パネル以外のDMD(Digital Mirror Device)やLCOS(Liquid Crystal on Silicon)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)方式等のLSM(Laser Scanning Module)といったプロジェクションユニットと、マイクロレンズアレイシートや光拡散シートといった透過型スクリーンとを組み合わせた構成としてもよい。
【0014】
投射光学系14は、表示部12が生成する画像表示光をウインドシールド62に向けて投射する。投射光学系14は、凸レンズなどの透過型光学素子や凹面鏡などの反射型光学素子を含む。投射光学系14の具体的構成は、別途後述する。
【0015】
制御部40は、表示用画像を生成し、表示用画像に対応する虚像50が提示されるように照明部11および表示部12を動作させる。制御部40は、外部装置64と接続されており、外部装置64からの情報に基づいて表示用画像を生成する。
【0016】
外部装置64は、虚像50として表示される画像の元データを生成する装置である。外部装置64は、例えば、車両60の電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)や、ナビゲーション装置、携帯電話やスマートフォン、タブレットといったモバイル装置などである。外部装置64は、虚像50の表示に必要な画像データ、画像データの内容や種別を示す情報、車両60の速度や現在位置といった車両60に関する情報を制御部40に送信する。
【0017】
以下、実施の形態に係る光学配置を詳述する前に、比較例を参照しながら二重像の発生について説明する。虚像50が二重像として見えてしまう要因として、ウインドシールド62の車内側と車外側の二つの界面で反射して視認される画像表示光がずれて提示されることが挙げられる。
【0018】
図2は、虚像提示板22に起因する二重像の発生を模式的に示す図である。
図2では、説明の簡略化のため、虚像提示板22と表示部92の間に配置される凹面鏡などの光学素子を省略している。虚像提示板22は、所定の厚みtを有し、第1面23と、第2面24とを有する。第1面23は、ウインドシールド62の車内側の界面に対応し、第2面24は、ウインドシールド62の車外側の界面に対応する。
【0019】
表示部92の任意の一点からユーザEに達する画像表示光Lは、主に二つの光路L1,L2を通る。第1光路L1は、第1面23で反射されてユーザEに向かう光路であり、第2光路L2は、第1面23で屈折し、第2面24で反射された後、第1面23で再度屈折してユーザEに向かう光路である。このとき、ユーザEに向かう第1光路L1と第2光路L2の間に角度差Δθが存在すると、その角度差Δθに応じて二つの光路L1,L2のそれぞれを通る画像表示光がずれて視認され、虚像51に二重像が生じる。なお、第1面23と第2面24の間を多重反射してユーザEに向かう光路も想定しうるが、多重反射してユーザEに向かう画像表示光の成分は小さく、通常の使用態様において無視できる。
【0020】
図3は、楔ガラスによる二重像の抑制を模式的に示す図である。
図3の虚像提示板82は、いわゆる「楔ガラス」と言われるものであり、虚像提示板82の厚みが場所に応じて変化するよう構成されている。その結果、虚像提示板82の第1面83と第2面84は、ユーザEの視線方向に対して互いに異なる傾斜角を有し、角度差δが設けられる。二つの面83,84の間に角度差δが設けられた楔ガラスを用いることにより、
図2に示すような第1光路L1と第2光路L2の角度差Δθが補正され、二重像を抑制させた虚像52を提示できる。
【0021】
しかしながら、このような「楔ガラス」は角度差δを精密に制御して形成する必要があるため、厚さtが均一な通常のガラスと比べて高価である。また、車両60のウインドシールド62を楔ガラスにする場合には、車両60の形状に応じた専用の楔ガラスが必要となるだけでなく、ウインドシールド62の全体を交換しなければならないため、非常にコストがかかる。したがって、このような特殊な楔ガラスを用いずに二重像の発生を低減できることが好ましい。
【0022】
図4は、比較例に係る虚像表示装置90の光学配置を詳細に示す図である。比較例は、虚像提示板22と表示部92の間に凸レンズ94が設けられる点で
図2の構成と異なる。本比較例では、凸レンズ94を設けることにより、表示部92の任意の一点から出発してから虚像提示板22の第1面23で反射される第1光路L1と、虚像提示板22の第2面24で反射される第2光路L2との間の角度差を低減できる。特に、虚像提示板22と凸レンズ94により構成される合成光学系の焦点に表示部92を配置することで、第1光路L1と第2光路L2の角度差をなくして二重像を解消することができる。
【0023】
図4の比較例では、虚像提示板22に画像表示光Lを斜入射させているため、虚像提示板22が曲面で構成される場合には非点収差が発生しうる。一般的な自動車のウインドシールド62は曲面で構成され、第1面23が凹曲面となるように構成されることから、この凹曲面への画像表示光Lの斜入射により非点収差が生じる。ここでいう「非点収差」とは、合成光学系のメリディオナル(meridional)面内焦点とサジタル(sagittal)面内焦点の不一致をいう。このような非点収差が生じると、虚像53の横方向(x方向)の結像位置と縦方向(y方向)の結像位置にずれが生じ、結像性能の低下につながる。なお、「メリディオナル面」とは合成光学系の光軸と画像表示光Lの主光線を含む平面のことをいい、
図4のyz平面がメリディオナル面に相当する。一方、「サジタル面」とは、合成光学系の光軸を含む平面であってメリディオナル面に直交する平面であり、
図4のxz平面がサジタル面に相当する。
【0024】
図5(a),(b)は、凹曲面96の一部領域98に入射する平行光束の非点収差を模式的に示す図であり、それぞれ異なる視点から見た図である。
図5(a)は、凹曲面96のメリディオナル面(yz平面)内での光束を示し、
図5(b)は、凹曲面96のサジタル面(xz平面)内での光束を示す。図示されるように、メリディオナル面とサジタル面では平行光束の収束位置Fm,Fsが異なり、メリディオナル面内焦点Fmよりもサジタル面内焦点Fsの方が凹曲面96から遠くに位置する。これは、凹面鏡に平行光束を斜入射させると、その入射角に応じて光の収束位置までの距離(つまり、焦点距離)が変化するためである。凹面鏡の焦点距離をf、凹面鏡に入射する光の入射角をφとすると、斜入射する光の焦点距離はf・cosφと表され、入反射角φが大きいほど焦点距離f・cosφは小さくなる。つまり、光束が斜めに入射するメリディオナル面内での焦点距離がf・cosφに短くなる。一方、サジタル面内での焦点距離はf/cosφに長くなる。
【0025】
メリディオナル面内焦点Fmとサジタル面内焦点Fsの間のずれである非点収差Asを小さくするには、凹曲面96の入反射角φを小さくすればよい。しかしながら、虚像提示板22における画像表示光Lの入反射角を顕著に小さくすることは現実的ではない。そこで、本実施の形態では、虚像提示板22および投射光学系14で構成される合成光学系全体としての非点収差が小さくなるように投射光学系14を構成する。具体的には、投射光学系の光路に対してレンズを斜めに配置する。斜めに配置したレンズにより生じる非点収差を利用することで、二重像の発生の緩和と合成光学系の非点収差の低減を両立させる。
【0026】
(第1の実施の形態)
図6は、第1の実施の形態に係る虚像表示装置10の構成を詳細に示す図である。虚像表示装置10は、照明部11、表示部12および投射光学系14を備える。投射光学系14は、凹面鏡16および凸レンズ36を含む。照明部11、表示部12、凸レンズ36および凹面鏡16は、z方向に延びる光路上に配置されている。凸レンズ36は、z方向に延びる光路に対して凸レンズ36の光軸が斜めに交差するように傾けて配置されている。凹面鏡16は、z方向に入射する画像表示光Lを虚像提示板22に向けてy方向に反射させる。虚像提示板22は、y方向の入射する画像表示光LをユーザEに向けてz方向に反射させる。
【0027】
虚像表示装置10は、表示光生成ユニット30を備える。表示光生成ユニット30は、照明部11、表示部12および凸レンズ36が一体化されたモジュール部品である。表示光生成ユニット30は、筐体32を有し、筐体32の内部に照明部11および表示部12が収容される。凸レンズ36は、画像表示光Lが出射される筐体32の出射口34を塞ぐように筐体32に取り付けられる。凸レンズ36は、筐体32の内部を密閉構造とし、筐体32の内部へのチリやごみなどの侵入を防ぐ防塵カバーとしての機能を有する。図示する例では、筐体32の出射口34に凸レンズ36が直接接触するように凸レンズ36が取り付けられている。変形例では、凸レンズ36の外周に取り付けられる固定部材等を介して凸レンズ36が出射口34に取り付けられてもよい。また、出射口34と凸レンズ36の間に密閉性を高めるためのO−リング等の封止部材が設けられてもよい。
【0028】
虚像提示板22は、画像表示光Lが斜めに入反射する第1面23が凹曲面となるよう構成される。虚像提示板22は、厚みtが一定となるよう構成されており、第1面23および第2面24の曲面形状が同じである。虚像提示板22は、第1面23における画像表示光Lの入射方向と反射方向の双方に直交する方向(軸A)がx方向となるように配置されている。虚像提示板22における画像表示光の入反射角はφ
aであり、虚像提示板22の凹曲面の焦点距離はf
aである。
【0029】
凹面鏡16は、画像表示光Lを虚像提示板22に向けて投射する投射鏡である。凹面鏡16は、画像表示光Lが斜めに入反射する凹曲面を有し、凹曲面における画像表示光Lの入射方向と反射方向の双方に直交する方向(軸B)がx方向となるように配置されている。したがって、凹面鏡16の軸Bの向きは、虚像提示板22の軸Aの向きと平行であり、凹面鏡16と虚像提示板22とは互いに向かい合わせの配置となっている。なお、凹面鏡16における画像表示光の入反射角はφ
bであり、凹面鏡16の凹曲面の焦点距離はf
bである。
【0030】
凸レンズ36は、表示部12と凹面鏡16の間に配置される。凸レンズ36は、投射光学系14の光路に対して斜めに配置されており、回転軸Cがメリディオナル面(yz平面)と直交する方向(x方向)となるように配置されている。凸レンズ36は、画像表示光Lが透過する曲面がレンズの光軸周りに回転対称となる形状を有し、例えば球面で構成される。凸レンズ36を斜めに配置するとともに、凸レンズ36の回転軸Cの方向をメリディオナル面と直交させることで、投射光学系14のメリディオナル面内焦点距離をサジタル面内焦点距離に比べて長くできる。これにより、凸レンズ36を斜めにしない場合と比べて、合成光学系20のメリディオナル面内焦点距離とサジタル面内焦点距離の差を低減し、合成光学系20の全体としての非点収差を緩和させることができる。凸レンズ36を斜めに配置することによる焦点距離の調整量は、凸レンズ36の傾斜角φ
cおよび凸レンズ36の焦点距離f
cに依存する。そのため、凸レンズ36の傾斜角φ
cおよび焦点距離f
cを変えることで合成光学系20の非点収差量を調整できる。
【0031】
なお、凸レンズ36、凹面鏡16および虚像提示板22を組み合わせた合成光学系20の非点収差量を小さくするためには、凸レンズ36、凹面鏡16および虚像提示板22のそれぞれにて発生する非点収差量の合計が小さくなるようにすればよい。光学素子の非点収差量は、光学素子の焦点距離fと光学素子の光路に対する傾斜角φの余弦cosφとの積f・cosφに比例する。また、凸レンズ36と、凹面鏡16および虚像提示板22とでは非点収差量の発生方向が逆となるため、凸レンズ36の非点収差量(f
c・cosφ
c)と、凹面鏡16の非点収差量(f
b・cosφ
b)および虚像提示板22の非点収差量(f
a・cosφ
a)とをバランスさせることで、合成光学系20の全体としての非点収差量を低減できる。これにより、非点収差に起因する結像性能の低下を好適に防ぐことができる。
【0032】
さらに、凸レンズ36、凹面鏡16および虚像提示板22により構成される合成光学系20のメリディオナル面内焦点に表示部12を配置することで、二つの面23,24を有する虚像提示板22に起因する二重像の発生を解消できる。ここで、合成光学系20のメリディオナル面内焦点とは、虚像提示板22のメリディオナル面(yz平面)に沿ってユーザEから虚像提示板22に向けて平行光束を入射させたときの平行光束の集光位置である。
【0033】
本実施の形態によれば、表示部12を合成光学系20のメリディオナル面内焦点に配置することで、楔ガラスのような特殊仕様の虚像提示板を用いることなく、二重像の発生を緩和できる。さらに、凸レンズ36を斜めに配置することで、合成光学系20の非点収差量を小さくすることができ、非点収差に起因する結像性能の低下を防ぐことができる。これにより、ユーザEに提示する虚像50の視認性を高めることができる。
【0034】
本実施の形態によれば、非点収差を緩和するための特殊で高価な非球面レンズ等ではなく、球面レンズといった一般的な安価なレンズを利用して非点収差を低減できるため、製造コストを低減できる。
【0035】
なお本実施の形態は、虚像提示板22が平面で構成される場合にも適用可能である。この場合、虚像提示板22では非点収差が発生しないため、凹面鏡16にて生じる非点収差量(f
b・cosφ
b)と凸レンズ36にて生じる非点収差量(f
c・cosφ
c)を同等にすることで、合成光学系20の全体としての非点収差量を低減できる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態に係る虚像表示装置110の構成を詳細に示す図である。本実施の形態では、凹面鏡16と、斜めに配置される凸レンズ(第1凸レンズともいう)36との間にさらに別の凸レンズ(第2凸レンズともいう)118が挿入される点で上述の実施の形態と相違する。
【0037】
虚像表示装置110は、照明部11、表示部12、および、投射光学系114を備える。虚像表示装置110は、表示光生成ユニット30を備え、表示光生成ユニット30は、照明部11、表示部12、筐体32、および、第1凸レンズ36を有する。投射光学系114は、第1凸レンズ36、第2凸レンズ118および凹面鏡16を有する。合成光学系120は、虚像提示板22および投射光学系114により構成される。
【0038】
第1凸レンズ36は、投射光学系114の光路に対して斜めに配置される。第2凸レンズ118は、投射光学系114の光路とレンズの光軸が平行となるように配置される。第1凸レンズ36および第2凸レンズ118は、画像表示光Lが透過する曲面が光軸周りに回転対称となる形状を有し、例えば球面で構成される。
【0039】
本実施の形態によれば、光路に対して斜めに配置される第1凸レンズ36と、光路に対して垂直に配置される第2凸レンズ118とを組み合わせることにより、合成光学系120の非点収差量および結像性能の双方をより好適に調整できる。例えば、合成光学系120の非点収差量が低減されるように第1凸レンズ36の焦点距離f
cおよび傾斜角φ
cを選択するとともに、合成光学系120の結像性能が向上するように第2凸レンズ118の焦点距離や配置を決めることができる。したがって、本実施の形態によれば、ユーザEに提示する虚像150の視認性をより高めることができる。
【0040】
図8(a)〜(c)は、第3の実施の形態に係る虚像表示装置の構成を詳細に示す図である。
図8(a)は、
図1に対応し、yz平面で見た構成を示す。
図8(b)は、xz平面で見た構成を示し、
図8(c)は、xy平面で見た構成を示す。本実施の形態では、虚像提示板22と凹面鏡216がねじれ配置となっている点で上述の第1の実施の形態と相違する。
【0041】
虚像表示装置210は、照明部11、表示部12および投射光学系214を備える。虚像表示装置210は、表示光生成ユニット30を備え、表示光生成ユニット30は、照明部11、表示部12、筐体32および凸レンズ36を有する。投射光学系214は、凹面鏡216および凸レンズ36を含む。照明部11、表示部12、凸レンズ36および凹面鏡216は、x方向に延びる光軸上に配置されている。凹面鏡216は、x方向に入射する画像表示光Lを虚像提示板22に向けてy方向に反射させる。虚像提示板22は、y方向に入射する画像表示光LをユーザEに向けてz方向に反射させる。
【0042】
虚像提示板22は、画像表示光Lが斜めに入反射する第1面23が凹曲面となるよう構成される。虚像提示板22は、第1面23における画像表示光Lの入射方向と反射方向の双方に直交する方向(軸A)がx方向となるように配置されている。凹面鏡216は、画像表示光Lの入射方向と反射方向の双方に直交する方向(軸B)がz方向となるように配置されている。したがって、凹面鏡216の軸Bの向きは、虚像提示板22の軸Aの向きと直交しており、凹面鏡216と虚像提示板22とはねじれた配置となっている。
【0043】
本実施の形態では、虚像提示板22と凹面鏡216がねじれ配置となっているため、虚像提示板22にて発生する非点収差と凹面鏡216にて発生する非点収差とが互いに逆向きに生じる。例えば、虚像提示板22のメリディオナル面(yz平面)に平行光束を入射させた場合、その平行光束は、虚像提示板22および凹面鏡216にて反射して凸レンズ36を通過した後、表示部12におけるx方向の光軸上でxz平面内で収束する。したがって、虚像提示板22は、表示部12の光軸上において、xz平面内の光束の焦点距離を短くし、xy平面内の光束の焦点距離を長くするように作用する。一方、凹面鏡216は、xy平面内の光束の焦点距離を短くし、xz平面内の光束の焦点距離を短くするよう作用する。したがって、このようなねじれ配置の虚像提示板22と凹面鏡216を組み合わせることにより、ねじれ配置の凹面鏡216が設けられない場合よりも非点収差量を小さくできる。
【0044】
凸レンズ36は、表示部12と凹面鏡216の間に配置され、x軸方向に延びる光路に対して斜めに配置される。凸レンズ36は、回転軸Cが凹面鏡216のメリディオナル面(xy平面)に直交する方向(z方向)となるように配置されている。凸レンズ36をこのように配置することで、凹面鏡216に起因する非点収差量を凸レンズ36により低減できる。例えば、虚像提示板22に起因する非点収差量よりも凹面鏡216に起因する非点収差量が大きい場合、これらの非点収差量の差分を凹面鏡216によりさらに低減することができる。
【0045】
本実施の形態によれば、虚像提示板22に対してねじれ配置の凹面鏡216を設けることで、合成光学系220の非点収差量を小さくできる。さらに、表示光生成ユニット30の凸レンズ36を斜めに配置することで、合成光学系220の非点収差量をさらに小さくできる。これにより、非点収差に起因する結像性能の低下を防ぐことができ、ユーザEに提示される虚像250の視認性を高めることができる。
【0046】
なお、凹面鏡216に起因する非点収差量よりも虚像提示板22に起因する非点収差量が大きい場合、凸レンズ36の回転方向を変えてもよい。具体的には、凸レンズ36の回転軸Cがy方向となるようにして凸レンズ36を斜めに配置することで、虚像提示板22により生じる非点収差量を凸レンズ36により低減できる。
【0047】
また、凹面鏡216に起因する非点収差量よりも虚像提示板22に起因する非点収差量が大きい場合、凸レンズ36の代わりに凹レンズを用いてもよい。この場合、凹レンズの回転軸Cがz方向となるように凹レンズを斜めに配置することで、虚像提示板22により生じる非点収差量を凹レンズにより低減できる。
【0048】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0049】
変形例では、投射鏡である凹面鏡16のメリディオナル面内(第1断面)の曲率とサジタル面内(第2断面)の曲率とを異ならせてもよい。ここで、凹面鏡16のメリディオナル面は、凹面鏡16に斜入射する画像表示光の入射方向と反射方向の双方を含む平面であって、凹面鏡16の凹曲面と交差する平面である。一方、凹面鏡16のサジタル面は、メリディオナル面に直交する平面であり、画像表示光の入射方向と反射方向の双方に直交する方向に沿う平面であって、凹面鏡16の凹曲面と交差する平面である。メリディオナル面内の曲率は、メリディオナル面に沿って入射する平行光束の焦点距離、つまり、メリディオナル面内焦点距離に関連する。一方、サジタル面内の曲率は、サジタル面内焦点距離に関連する。したがって、凹面鏡16のメリディオナル面内の曲率とサジタル面内の曲率を適切に設定することで、合成光学系120のメリディオナル面内焦点とサジタル面内焦点が一致するようにできる。例えば、凹面鏡16のメリディオナル面内の曲率をサジタル面内の曲率よりも小さくすることで、メリディオナル面内焦点距離とサジタル面内焦点距離の差を低減できる。これにより、合成光学系の非点収差量を低減し、非点収差に起因する結像性能の低下を防ぐことができる。
【0050】
上述の実施の形態では、虚像提示板22の第1面23が凹曲面または平面で構成される場合について示した。変形例では、虚像提示板22の第1面23が凸曲面で構成される場合にその非点収差を緩和するように合成光学系を構成してもよい。この場合、投射鏡である凹面鏡を凸面鏡に置換してもよいし、表示光生成ユニット30の凸レンズ36を凹レンズに置換してもよい。
【0051】
上述の実施の形態では、照明部11、表示部12および凸レンズ36が表示光生成ユニット30として一体化される場合について示した。変形例では、これらが一体的なモジュールとして構成されなくてもよい。
【解決手段】虚像表示装置10は、虚像提示板22を介してユーザに虚像を提示する。虚像表示装置10は、画像表示光Lを生成する表示部12と、画像表示光Lを虚像提示板22に向けて投射する投射光学系14とを備える。投射光学系14は、虚像提示板22に向けて画像表示光Lを投射する投射鏡16と、投射光学系14の光路に対して光軸が斜めに交差するように配置されるレンズ36とを含む。表示部12は、虚像提示板22および投射光学系14により構成される合成光学系20のメリディオナル面内焦点に配置される。合成光学系20のメリディオナル面内焦点は、虚像提示板22のメリディオナル面に沿ってユーザEから虚像提示板22に向けて平行光束を入射させたときの当該平行光束の集光位置である。