特許第6593516号(P6593516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593516
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】軸受構造、および、過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20191010BHJP
   F02B 39/14 20060101ALI20191010BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F02B39/00 C
   F02B39/00 J
   F02B39/14 F
   F02B39/14 B
   F16C33/10 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-192508(P2018-192508)
(22)【出願日】2018年10月11日
(62)【分割の表示】特願2017-534178(P2017-534178)の分割
【原出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-11769(P2019-11769A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2018年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-158838(P2015-158838)
(32)【優先日】2015年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】文野 謙治
(72)【発明者】
【氏名】采浦 寛
(72)【発明者】
【氏名】金田 真一
(72)【発明者】
【氏名】大東 祐一
(72)【発明者】
【氏名】小島 英之
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 友美
(72)【発明者】
【氏名】西井 俊輔
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−149742(JP,U)
【文献】 実開昭61−202646(JP,U)
【文献】 実開昭61−202647(JP,U)
【文献】 国際公開第98/28527(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/008591(WO,A1)
【文献】 特開2015−161179(JP,A)
【文献】 特表2013−526672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/10
F02B 39/00,39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに形成された軸受孔と、
前記軸受孔に設けられ、一端にインペラが設けられたシャフトを軸支する軸受と、
前記ハウジングに形成され、前記インペラと前記軸受孔との間に位置する空間と、
前記空間と連通し、前記軸受孔の鉛直下側に延在する通路と、
前記通路と前記軸受孔とを連通する連通開口部と、
前記通路と前記軸受孔との間に、前記シャフトの軸心の直下を含む下部に設けられ、前記シャフトに対向する内壁面を有する下方壁部と、
を備える軸受構造。
【請求項2】
前記内壁面は、前記シャフトの回転方向に、前記シャフトの外周面に沿って延在する請求項1に記載の軸受構造。
【請求項3】
前記連通開口部は、前記下方壁部よりも前記シャフトの回転方向前方側および後方側にそれぞれ設けられる請求項1または2に記載の軸受構造。
【請求項4】
前記連通開口部は、前記シャフトの軸心の直下を含む下部よりも前記シャフトの回転方向後方側の範囲内にのみ設けられている請求項1または2に記載の軸受構造。
【請求項5】
前記軸受孔の内周面に形成され、前記空間から前記シャフトの軸方向に離隔する逃げ溝をさらに備え、
前記連通開口部は、前記通路と前記逃げ溝を連通する請求項1から4のいずれか1項に記載の軸受構造。
【請求項6】
前記逃げ溝のうち、前記シャフトと径方向に所定間隔を空けて対向する対向壁部には、前記シャフトの軸心の直上を挟んで前記シャフトの回転方向後方側に、前記回転方向前方側より、前記シャフトとの間隔が小さい狭小部が形成される請求項5に記載の軸受構造。
【請求項7】
前記シャフトに設けられ、前記空間と前記逃げ溝との間に位置し、前記軸受孔の内周面より径が大きい大径部をさらに備え、
前記下方壁部は、前記大径部の直下から前記逃げ溝側に突出し、前記インペラ側に前記空間が位置する請求項5または6のいずれか1項に記載の軸受構造。
【請求項8】
前記請求項1から7のいずれか1項に記載の軸受構造を備える過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャフトを軸支する軸受構造、および、過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトがベアリングハウジングに回転自在に軸支された過給機が知られている。シャフトの一端にはタービンインペラが設けられ、他端にはコンプレッサインペラが設けられる。過給機はエンジンに接続され、エンジンから排出される排気ガスによってタービンインペラが回転する。このタービンインペラの回転によって、シャフトを介してコンプレッサインペラが回転する。過給機は、コンプレッサインペラの回転に伴い空気を圧縮してエンジンに送出する。
【0003】
特許文献1に記載の過給機では、ハウジングに形成された軸受孔に環状のセミフローティング軸受が収容される。セミフローティング軸受とシャフトの間隙に供給された潤滑油の油膜圧力によってシャフトが軸支される。そして、潤滑油は、セミフローティング軸受とシャフトの間隙を通る。その後、潤滑油は、軸受孔における軸方向の端部に形成された空間に流出する。空間に流出した潤滑油は、鉛直下側に形成された通路を流下してハウジング外部に排出される。また、特許文献1に記載の構成では、軸受孔の鉛直下側の壁部のうち、タービンインペラ側の端部に切欠き部が形成される。切欠き部は、軸受孔と通路を連通する。こうして、軸受孔からの潤滑油の排油性が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−047732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過給機では、上記の特許文献1に記載のように、軸受孔と通路を連通する切欠き部などの連通部を形成することがある。この場合、潤滑油の一部は、空間を介さずに直接、軸受孔から通路に噴出する。この噴出量が多くなり過ぎると、通路には、連通部から噴出する潤滑油の壁が形成される。その結果、空間を通った後の潤滑油が通路を流下するとき、連通部から噴出する潤滑油の壁によって流れが阻害される場合がある。そのため、排油性が低下するおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、排油性を向上することが可能な軸受構造、および、過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る軸受構造は、ハウジングと、ハウジングに形成された軸受孔と、軸受孔に設けられ、一端にインペラが設けられたシャフトを軸支する軸受と、ハウジングに形成され、インペラと軸受孔との間に位置する空間と、空間と連通し、軸受孔の鉛直下側に延在する通路と、通路と軸受孔とを連通する連通開口部と、通路と軸受孔との間に、シャフトの軸心の直下を含む下部に設けられ、シャフトに対向する内壁面を有する下方壁部と、を備える。
【0008】
内壁面は、シャフトの回転方向に、シャフトの外周面に沿って延在してもよい。
【0009】
連通開口部は、下方壁部よりもシャフトの回転方向前方側および後方側にそれぞれ設けられてもよい。
【0010】
連通開口部は、シャフトの軸心の直下を含む下部よりもシャフトの回転方向後方側の範囲内にのみ設けられていてもよい。
【0011】
軸受孔の内周面に形成され、空間からシャフトの軸方向に離隔する逃げ溝をさらに備え、連通開口部は、通路と逃げ溝を連通してもよい。
【0012】
逃げ溝のうち、シャフトと径方向に所定間隔を空けて対向する対向壁部には、シャフトの軸心の直上を挟んでシャフトの回転方向後方側に、回転方向前方側より、シャフトとの間隔が小さい狭小部が形成されてもよい。
【0013】
シャフトに設けられ、空間と逃げ溝との間に位置し、軸受孔の内周面より径が大きい大径部をさらに備え、下方壁部は、大径部の直下から逃げ溝側に突出し、インペラ側に空間が位置してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る過給機は、上記軸受構造を備える。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、排油性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】過給機の概略断面図である。
図2図1の一点鎖線部分を抽出した図である。
図3図2のIII−III線断面図である。
図4図4(a)は、比較例における図2に対応する位置の抽出図である。図4(b)は、比較例における図3に対応する位置の抽出図である。
図5】第1変形例を説明するための説明図である。
図6】第2変形例を説明するための説明図である。
図7】第3変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機Cの左側とし、矢印R方向を過給機Cの右側として説明する。図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備えて構成される。この過給機本体1は、ベアリングハウジング2(ハウジング)を備える。ベアリングハウジング2の左側には、締結機構3によってタービンハウジング4が連結される。ベアリングハウジング2の右側には、締結ボルト5によってコンプレッサハウジング6が連結される。ベアリングハウジング2、タービンハウジング4、コンプレッサハウジング6は一体化されている。
【0019】
ベアリングハウジング2のタービンハウジング4近傍の外周面には、突起2aが設けられている。突起2aは、ベアリングハウジング2の径方向に突出する。また、タービンハウジング4のベアリングハウジング2近傍の外周面には、突起4aが設けられている。突起4aは、タービンハウジング4の径方向に突出する。ベアリングハウジング2とタービンハウジング4は、突起2a、4aを締結機構3によってバンド締結して固定される。締結機構3は、例えば、突起2a、4aを挟持するGカップリングで構成される。
【0020】
ベアリングハウジング2には、軸受孔2bが形成されている。軸受孔2bは、過給機Cの左右方向に貫通する。この軸受孔2bに設けられたセミフローティング軸受7(軸受)によって、シャフト8が回転自在に軸支されている。シャフト8の左端部にはタービンインペラ9(インペラ)が一体的に固定されている。このタービンインペラ9がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト8の右端部にはコンプレッサインペラ10(インペラ)が一体的に固定されている。このコンプレッサインペラ10がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0021】
コンプレッサハウジング6には、過給機Cの右側に開口する吸気口11が形成されている。吸気口11は、不図示のエアクリーナに接続される。また、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6が連結された状態では、これらのベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6の対向面によって、ディフューザ流路12が形成される。ディフューザ流路12は空気を昇圧する。このディフューザ流路12は、シャフト8の径方向内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路12は、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ10を介して吸気口11に連通している。
【0022】
また、コンプレッサハウジング6には、環状のコンプレッサスクロール流路13が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は、ディフューザ流路12よりもシャフト8の径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路13は、不図示のエンジンの吸気口と連通する。コンプレッサスクロール流路13は、ディフューザ流路12にも連通している。したがって、コンプレッサインペラ10が回転すると、吸気口11からコンプレッサハウジング6内に空気が吸気される。また、当該吸気された空気は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において遠心力の作用により増速される。増速された空気は、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0023】
タービンハウジング4には、吐出口14が形成されている。吐出口14は、過給機Cの左側に開口する。また、吐出口14は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。また、タービンハウジング4には、流路15と、環状のタービンスクロール流路16とが設けられている。タービンスクロール流路16は、流路15よりもタービンインペラ9の径方向外側に位置する。タービンスクロール流路16は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。また、タービンスクロール流路16は、上記の流路15にも連通している。したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路16に導かれた排気ガスは、流路15およびタービンインペラ9を介して吐出口14に導かれる。吐出口14に導かれる排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ9を回転させることとなる。
【0024】
そして、上記のタービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達される。コンプレッサインペラ10の回転力によって、上記のとおりに、空気が昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0025】
図2は、図1の一点鎖線部分を抽出した図である。図2に示すように、ベアリングハウジング2の内部には軸受構造Sが設けられている。軸受構造Sでは、ベアリングハウジング2に形成された油路2cから軸受孔2bに潤滑油が流入する。軸受孔2bに流入した潤滑油は、軸受孔2bに設けられたセミフローティング軸受7に供給される。
【0026】
セミフローティング軸受7は、環状の本体部7aを有する。本体部7aの内部にシャフト8が挿通されている。本体部7aの内周面には、2つの軸受面7b、7cが形成されている。2つの軸受面7b、7cは、シャフト8の軸方向(以下、単に軸方向と称す)に離隔している。
【0027】
本体部7aには、内周面から外周面まで貫通する油孔2dが形成されている。軸受孔2bに供給された潤滑油の一部は、油孔2dを通って、本体部7aの内周面に流入する。本体部7aの内周面に流入した潤滑油は、シャフト8と軸受面7b、7cとの間隙に供給される。そして、シャフト8と軸受面7b、7cとの間隙に供給された潤滑油の油膜圧力によってシャフト8が軸支される。
【0028】
また、本体部7aには、貫通孔7dが設けられる。貫通孔7dは、本体部7aの内周面から外周面まで貫通する。ベアリングハウジング2には、貫通孔7dに対向する部位にピン孔2eが形成されている。ピン孔2eは、軸受孔2bを形成する壁部を貫通している。ピン孔2eに、図2中、下側から位置決めピン20が例えば圧入によって保持される。位置決めピン20の先端は、セミフローティング軸受7の貫通孔7dに挿入される。こうして、位置決めピン20により、セミフローティング軸受7の回転、および、軸方向の移動が規制される。
【0029】
また、シャフト8には、本体部7aよりも、図2中、右側(コンプレッサインペラ10側)に油切り部材21が固定されている。油切り部材21は、環状部材である。油切り部材21は、シャフト8を伝ってコンプレッサインペラ10側に流れる潤滑油を径方向外側に飛散させる。つまり、油切り部材21により、コンプレッサインペラ10側への潤滑油の漏出が抑制される。
【0030】
油切り部材21は、本体部7aに軸方向に対向している。油切り部材21のうち、本体部7aとの対向面21aの外径は、軸受面7cの内径よりも大きい。また、例えば、対向面21aの外径は、本体部7aの外径よりも小さい。
【0031】
シャフト8には、大径部8aが設けられている。大径部8aは、本体部7aの軸受面7bの内径よりも外径が大きい。また、例えば、大径部8aの外径は、本体部7aの外径よりも大きい。大径部8aは、本体部7aに対して、図2中、左側(タービンインペラ9側)に位置する。大径部8aは、本体部7aに軸方向に対向している。
【0032】
このように、本体部7aは、油切り部材21および大径部8aによって軸方向に挟まれている。また、本体部7aは、位置決めピン20によって軸方向の移動が規制される。本体部7aと油切り部材21との間隙、および、本体部7aと大径部8aとの間隙には、それぞれ、潤滑油が供給されている。シャフト8が軸方向に移動すると、油切り部材21または大径部8aが本体部7aとの間の油膜圧力によって支持される。すなわち、セミフローティング軸受7のうち、本体部7aの軸方向の両端面は、軸受面7e、7fとなっている。軸受面7e、7fは、スラスト荷重を受ける。
【0033】
また、本体部7aの外周面のうち、軸方向の両端側それぞれにはダンパ部7g、7hが形成されている。ダンパ部7g、7hは、軸受孔2bの内周面2fとの間隙に供給された潤滑油の油膜圧力によってシャフト8の振動を抑制する。
【0034】
上記のように、軸受面7b、7eやダンパ部7gに供給された後の潤滑油の一部は、軸受孔2bからタービンインペラ9側に流出する。ベアリングハウジング2の内部には、タービンインペラ9と軸受孔2bとの間に空間Saが形成されている。空間Saは、軸受孔2bとシャフト8の軸方向に連続する。また、空間Saは、軸受孔2bよりも径方向外側までシャフト8の回転方向に延在している。軸受孔2bからタービンインペラ9側に流出した潤滑油は、シャフト8と共に連れ回った遠心力により、空間Saにおいて径方向外側に飛散する。
【0035】
空間Saは、軸受孔2bの鉛直下側(図2中、下側)において通路Sbと連通している(ここでは、例えば、連続している。ただし、空間Saの内壁面と通路Sbの内壁面との間に段差が形成されてもよい。)通路Sbは、ベアリングハウジング2の内部における軸受孔2bの鉛直下側に延在している。通路Sbは、図1に示すベアリングハウジング2における、図1中、下側(鉛直下側)に形成された排油口2gと連通している。
【0036】
空間Saのうち、シャフト8より鉛直上側に飛散した潤滑油は、空間Saを形成するベアリングハウジング2の内壁を伝ってシャフト8より鉛直下側に流下する。流下した潤滑油は、空間Saのうち、シャフト8より鉛直下側に飛散した潤滑油と合流する。合流した潤滑油は、通路Sbに導かれる。通路Sbに導かれた潤滑油は、通路Sbを排油口2gに向かって流下する。流下した潤滑油は、ベアリングハウジング2の外部に排出される。
【0037】
空間Saとタービンインペラ9との間にはシールリング22が配設される。シールリング22は、シャフト8とベアリングハウジング2との径方向の間隙に位置する。シールリング22は、空間Sa側からタービンインペラ9側への潤滑油の漏出を抑制する。
【0038】
このように、シールリング22によって、タービンインペラ9側への潤滑油の漏出は抑制される。しかし、軸受孔2bから空間Saに流出する潤滑油の油量が多すぎると、シールリング22によるシール性が低下してしまう。そこで、本実施形態では、軸受孔2bの内周面2fに逃げ溝23が設けられている。
【0039】
逃げ溝23は、空間Saに対して、シャフト8の軸方向に軸受孔2bの中心側に離隔している。逃げ溝23には、軸受面7b、7eやダンパ部7gに供給された後の潤滑油の一部が流入する。
【0040】
また、大径部8aのうち、本体部7aとの対向面8bは、逃げ溝23の径方向内側に位置している。また、対向面8bは、逃げ溝23のうちタービンインペラ9側の内壁面23aよりも、タービンインペラ9から離隔する側に位置している。そのため、軸受面7b、7eを潤滑した後の潤滑油が対向面8bを伝って逃げ溝23に流入し易い。また、逃げ溝23は、本体部7aの径方向外側に位置している。そのため、ダンパ部7gと軸受孔2bとの間隙を通った後の潤滑油が、逃げ溝23に流入し易い。
【0041】
また、大径部8aの外径が本体部7aの外径よりも大きい。そのため、ダンパ部7gから本体部7aの外周面を伝って軸方向に流れた潤滑油が、大径部8aによって流れ方向を径方向に変えられて、逃げ溝23に流入し易い。
【0042】
図3は、図2のIII−III線断面図である。図3では、理解を容易とするため、ベアリングハウジング2の一部を破断線で示して省略する。また、図3では、通路Sbよりもシャフト8の径方向外側の部位の図示を省略する。
【0043】
図3に示すように、ベアリングハウジング2には連通開口部24が設けられている。連通開口部24は、ベアリングハウジング2のうち、軸受孔2bと通路Sbとをシャフト8の径方向に仕切る隔壁を貫通する。連通開口部24は、逃げ溝23(軸受孔2b)と通路Sbを連通する。連通開口部24は、逃げ溝23に流入した潤滑油を通路Sbに導く。
【0044】
大径部8aの回転に連れ回った潤滑油は遠心力で飛散する。そうすると、逃げ溝23のうち、シャフト8より上方に飛散した潤滑油は、逃げ溝23の内壁を伝ってシャフト8より下方に流下する。流下した潤滑油は、逃げ溝23のうち、シャフト8より下方に飛散した潤滑油と合流する。そして、合流した潤滑油は、連通開口部24から通路Sbに噴出する。このように、潤滑油の一部は、空間Saを介さずに直接、軸受孔2bから通路Sbに噴出する。そのため、大径部8aよりもタービンインペラ9側に流れる潤滑油の油量が抑制される。こうして、シールリング22からタービンインペラ9側への潤滑油の漏出が抑制される。
【0045】
図4(a)は、比較例における図2に対応する位置の抽出図である。図4(b)は、比較例における図3に対応する位置の抽出図である。
【0046】
比較例において、連通開口部Xから通路Sbに噴出する潤滑油の油量が多くなり過ぎるとする。この場合、図4(a)、図4(b)に示すように、通路Sbには、連通開口部Xから噴出する潤滑油の壁(図4(a)、図4(b)中、クロスハッチングで示す)が形成される。その結果、空間Saを通った後の潤滑油が通路Sbを流下するとき、連通開口部Xから噴出する潤滑油の壁によって流れが阻害される場合がある。そのため、排油性が低下してしまう。
【0047】
そこで、本実施形態では、分割壁部25(下方壁部)が設けられている。分割壁部25は、連通開口部24をシャフト8の回転方向(図3中、時計回り方向)に複数に分割する。分割壁部25は、シャフト8の軸心の直下を含む下部(下方部)に位置する。分割壁部25のうち、シャフト8に対向する内壁面25aは曲面形状である。内壁面25aの曲率中心は、内壁面25aよりシャフト8側に位置する。内壁面25aは、シャフト8の回転方向(周方向)に延在して形成される。内壁面25aは、シャフト8の回転方向の両端が、図3中、上下方向において、シャフト8の回転方向に延在する領域の中心部(回転方向に延在している内壁面25aの中央部)よりも鉛直上側に突出した曲面形状である。内壁面25aは、シャフト8の外周面に沿って延在する。内壁面25aは、シャフト8の外周面からの距離が、シャフト8の回転方向に亘って大凡一定となる。また、仮に、後述の対向壁部23cが内壁面25aの回転方向の位相まで延在する仮想線を考えるとする。対向壁部23cは、この仮想線と大凡一致するように分割壁部25を形成してもよい。分割壁部25は、図2に示すように、逃げ溝23の軸方向に亘って延在する。分割壁部25は、タービンインペラ9側に空間Saを空けて、大径部8aの直下を含む下部から逃げ溝23側に突出している。分割壁部25は、逃げ溝23のうち、図2中、右側(コンプレッサインペラ10側)の内壁面23bの径方向外側から、大径部8aの直下まで(空間Saの手前まで)軸方向に延在する。
【0048】
詳細には、図2に示すように、ベアリングハウジング2のうち、大径部8aの径方向外側には、環状突起2hが形成されている。環状突起2hは、大径部8aを環状に囲繞する。また、環状突起2hは、逃げ溝23の底面よりも径方向内側に突出する。そして、分割壁部25は、環状突起2hから、逃げ溝23を軸方向に挟んだ反対側の壁部まで延在している。
【0049】
図3に戻って、分割壁部25によって分割された連通開口部24のうち、シャフト8の回転方向の前方側を前方側開口部24aと称する。また、連通開口部24のうち、シャフト8の回転方向の後方側を後方側開口部24bと称する。シャフト8の回転に伴って、図3中、白抜き矢印で示すように流れた潤滑油は、前方側開口部24aおよび後方側開口部24bから流出する。
【0050】
ここで、潤滑油の流れ方向は、分割壁部25によって変化する。分割壁部25の鉛直下側には潤滑油が直接噴出しない。そのため、連通開口部24から通路Sbに噴出する潤滑油の壁に間隙を形成できる。こうして、通路Sbの閉塞が回避される。そのため、空間Saを通った後の潤滑油が通路Sbを流下するとき、連通開口部24から噴出する潤滑油の壁によって流れが阻害され難くなる。こうして、排油性が向上する。
【0051】
また、対向壁部23cは、逃げ溝23のうち、シャフト8と径方向に所定間隔を空けて対向する。潤滑油は、シャフト8の外周面と逃げ溝23の対向壁部23cとの間を、シャフト8の回転方向に流れる。潤滑油の一部は、後方側開口部24bから排出される。残りの潤滑油は、シャフト8の外周面と、分割壁部25の内壁面25aとの隙間を通って前方側開口部24aに向う。上記のように、分割壁部25の内壁面25aは、曲率中心をシャフト8側に位置させる曲面形状である。そのため、シャフト8の外周面と、分割壁部25の内壁面25aとの隙間を通る潤滑油の流れが滑らかとなる。その結果、分割壁部25の内壁面25aからシャフト8への潤滑油の飛散が抑制される。したがって、シャフト8への潤滑油の付着が抑えられる。こうして、排油性が向上する。
【0052】
また、分割壁部25の内壁面25aは、シャフト8の外周面に沿って延在する。そのため、シャフト8の外周面と、分割壁部25の内壁面25aとの隙間を通る潤滑油の流れがさらに滑らかとなる。その結果、シャフト8への潤滑油の付着が効果的に抑えられて排油性がさらに向上する。また、ここでは、分割壁部25は、ベアリングハウジング2内に対向壁部23cと連続した内壁面として一体形成されてもよい。この場合、ベアリングハウジング2の一部を、例えば、切削などの機械加工によって除去して前方側開口部24aおよび後方側開口部24bが形成される。その結果、前方側開口部24aおよび後方側開口部24bの間に残されたベアリングハウジング2が分割壁部25となる。したがって、分割壁部25は、容易に製作可能である。
【0053】
対向壁部23cのうち、前方側開口部24aからシャフト8の回転方向に連続する部位に、狭小部26が形成されている。狭小部26は、鉛直方向(図3中、上下方向)に延在する壁面である。狭小部26は、対向壁部23cのうち、狭小部26よりシャフト8の回転方向の前方側の部位よりも、シャフト8との径方向の間隙が狭くなっている。
【0054】
逃げ溝23に流入した潤滑油が、連通開口部24から通路Sbに流出せずに、シャフト8の回転に連れ回って狭小部26を回転方向に流通しようとしたとする。しかし、狭小部26とシャフト8との径方向の間隙は狭い。そのため、巻き上げられる潤滑油の油量が抑えられる。その結果、逃げ溝23へ潤滑油が巻き上げられ難くなる。したがって、前方側開口部24aから通路Sbに排出される潤滑油の油量が多くなる。こうして、排油性が向上する。
【0055】
ここでは、狭小部26が前方側開口部24aからシャフト8の回転方向の前方側に連続して形成される場合について説明した。ただし、狭小部26は、シャフト8の軸心の直上を挟んでシャフト8の回転方向の後方側に形成されてもよい。また、狭小部26は、シャフト8の軸心の直上を挟んでシャフト8の回転方向の前方側より、シャフト8との間隔が小さければよい。狭小部26は、例えば、前方側開口部24aから回転方向に離隔して形成されてもよい。
【0056】
また、対向壁部23cに、後方側開口部24bからシャフト8の回転方向の後方側に連続して、シャフト8との間隙が広くなる部位を形成してもよい。この場合、シャフト8の回転に連れ回って後方側開口部24bに向かって潤滑油が効率的に排出される。こうして、排油性が向上する。
【0057】
図5は、第1変形例を説明するための説明図である。図5には、第1変形例における図3に対応する位置の抽出図を示す。図5に示すように、第1変形例においては、分割壁部25は、シャフト8の軸心に垂直な断面形状が大凡扇形となっている。分割壁部35(下方壁部)には、壁面35aおよび壁面35bが形成される。壁面35aは、前方側開口部24a側に形成される。壁面35bは、後方側開口部24b側に形成される。壁面35aおよび壁面35bは、軸方向に垂直な断面において、シャフト8の径方向に沿って延在している。
【0058】
そのため、前方側開口部24aおよび後方側開口部24bから流出する潤滑油の流れが、分割壁部35から、図5中、左右方向に離隔する方向となる。そのため、通路Sbにおける潤滑油の壁に形成する間隙を拡げることができる。こうして、排油性が一層向上する。
【0059】
図6は、第2変形例を説明するための説明図である。図6には、第2変形例における図3に対応する位置の抽出図を示す。図6に示すように、第2変形例では、分割壁部25を設けられていない。その代わりに、シャフト8の軸心の直下を含む下部に連続壁部55(下方壁部)が設けられる。連続壁部55は、ベアリングハウジング2のうち、逃げ溝23を形成する壁部2i(内周面2f)の一部である。壁部2iは、少なくともシャフト8の軸心の直上から、シャフト8の回転方向の後方側に連続壁部55まで延在する。連続壁部55は、例えば、シャフト8の直下を含み僅かにシャフト8の回転方向の後方側まで延在する。連通開口部44は、シャフト8の軸心の直下よりも、シャフト8の回転方向(図6中、時計回り方向)の後方側(図6中、破線の矢印で示す)の連続壁部55から、回転方向の後方側に向かって延在している。換言すれば、連通開口部44は、シャフト8の軸心の直下よりもシャフト8の回転方向後方側の範囲内でのみ、通路Sbと軸受孔2bとを連通する。
【0060】
内壁面44e、44fは、連通開口部44を形成する。内壁面44eは、連通開口部44のうち、シャフト8の回転方向の前方側に位置する壁面である。換言すれば、内壁面44eは、連続壁部55のうち、シャフト8の回転方向の後方側の端面である。内壁面44eは、シャフト8の軸心の鉛直下側より回転方向の後方側に位置する。逃げ溝23を形成する壁部2iは、内壁面44e(連続壁部55の端面)から、シャフト8の回転方向の前方側に、内壁面44fまで延在する。
【0061】
連続壁部55のうち、シャフト8に対向する内壁面55aは、上記の分割壁部25の内壁面25aと同様、曲面形状である。内壁面55aの曲率中心は、内壁面55aよりシャフト8側に位置する。内壁面55aは、シャフト8の外周面に沿って延在する。内壁面55aは、シャフト8の外周面からの距離が、シャフト8の回転方向に亘って大凡一定となる。連続壁部55は、逃げ溝23の軸方向に亘って延在する。連続壁部55は、上記の分割壁部25と同様、タービンインペラ9側に空間Saを空けて、大径部8aの直下を含む下部から逃げ溝23側に突出して形成される。連続壁部55は、逃げ溝23のうち、コンプレッサインペラ10側の内壁面23b(図2参照)の径方向外側から、大径部8aの直下を含む下部まで(空間Saの手前まで)軸方向に延在する。
【0062】
潤滑油は、シャフト8の外周面と逃げ溝23の対向壁部23cとの間を、シャフト8の回転方向に流れる。このとき、潤滑油の一部が連通開口部44から排出される。残りの潤滑油は、シャフト8の外周面と、連続壁部55の内壁面55aとの隙間を通って逃げ溝23の内部に流入する。上記のように、連続壁部55の内壁面55aは、曲率中心をシャフト8側に位置させる曲面形状である。そのため、シャフト8の外周面と、連続壁部55の内壁面55aとの隙間を通る潤滑油の流れが滑らかとなる。その結果、連続壁部55の内壁面55aからシャフト8への潤滑油の飛散が抑制される。したがって、シャフト8への潤滑油の付着が抑えられる。こうして、排油性が向上する。また、連続壁部55の内壁面55aは、シャフト8の外周面に沿って延在する。そのため、シャフト8の外周面と、連続壁部55の内壁面55aとの隙間を通る潤滑油の流れがさらに滑らかとなる。その結果、排油性がさらに向上する。また、ここでは、連続壁部55は、ベアリングハウジング2と一体形成されている。ベアリングハウジング2の一部を、例えば、切削などの機械加工によって除去して連通開口部44が形成される。その結果、連通開口部44からシャフト8の回転方向の前方側に残されたベアリングハウジング2が連続壁部55となる。そのため、連続壁部55は、容易に製作可能である。
【0063】
図6中、白抜き矢印で示すように、潤滑油が連通開口部44から通路Sbに流出する。しかし、内壁面44eよりもシャフト8の回転方向前方側では、潤滑油がベアリングハウジング2によって遮られる。そのため、連通開口部44から通路Sbに噴出する潤滑油の壁に間隙を形成することができる。こうして、排油性が向上する。
【0064】
図7は、第3変形例を説明するための説明図である。図7には、第3変形例における図6に対応する位置の抽出図を示す。図7に示すように、第3変形例では、第2変形例の構成に加えて、狭小部66が設けられる。狭小部66は、上述した実施形態の狭小部26と同様、対向壁部23cのうち、狭小部66よりシャフト8の回転方向の前方側の部位よりも、シャフト8との径方向の間隙が狭くなっている。ここでは、狭小部66は、連続壁部55の内壁面55aに形成される。すなわち、連続壁部55の内壁面55aを、シャフト8の回転方向の前方側の部位よりも、シャフト8に近く配置して狭小部66としている。内壁面55a(狭小部66)は、上記の第2変形例と同様、シャフト8の外周面に沿って延在する曲面形状である。ただし、狭小部66は、連続壁部55の内壁面55aよりも、シャフト8の回転方向の前方側に形成されてもよい。
【0065】
逃げ溝23に流入した潤滑油が、連通開口部44から通路Sbに流出せずに、シャフト8の回転に連れ回って狭小部66を回転方向に流通しようとする(潤滑油が巻き上げられる)力が遠心力によって作用する。しかし、狭小部66とシャフト8との径方向の間隙は狭い。そのため、巻き上げられる潤滑油の油量が抑えられる。その結果、逃げ溝23へ潤滑油が巻き上げられ難くなる。潤滑油を連通開口部44から通路Sbに効率よく排出できる。こうして、排油性が向上する。
【0066】
ここでは、狭小部66が連通開口部44との境界(狭小部66の回転方向の後方側端部)からシャフト8の回転方向の前方側に連続して形成される場合について説明した。ただし、狭小部66の回転方向の後方側端部は、例えば、連通開口部44から回転方向に離隔して形成されてもよい。ここで、狭小部66は、シャフト8の軸心の直上(シャフト8の軸心に交差する上下方向の基準線)を挟んでシャフト8の回転方向の後方側に形成されればよい。また、狭小部26は、シャフト8の軸心の直上を挟んでシャフト8の回転方向の前方側より、シャフト8との間隔が小さければよい。
【0067】
上述した実施形態および第1変形例では、連通開口部24は、シャフト8の回転方向に2つに分割される場合について説明した。ただし、連通開口部24は、シャフト8の回転方向に3つ以上に分割されてもよい。
【0068】
また、上述した実施形態および第1変形例では、軸受孔2bのタービンインペラ9側に連通開口部24および分割壁部25、35が設けられる場合について説明した。ただし、軸受孔2bのコンプレッサインペラ10側に連通開口部24および分割壁部25、35を設けてもよい。同様に、上述した第2変形例および第3変形例では、軸受孔2bのタービンインペラ9側に連通開口部44が設けられる場合について説明した。ただし、軸受孔2bのコンプレッサインペラ10側に連通開口部44を設けてもよい。
【0069】
また、上述した実施形態および変形例では、軸受としてセミフローティング軸受7を例に挙げて説明した。ただし、セミフローティング軸受7の代わりに、シャフト8の回転方向に回転するフルフローティングメタルや玉軸受を設けてもよい。
【0070】
また、上述した実施形態および変形例では、油切り部材21のうち、本体部7aとの対向面21aの外径は、本体部7aの外径よりも小さい場合について説明した。ただし、対向面21aの外径は、本体部7aの外径と同一、または、本体部7aの外径よりも大きくてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態および変形例では、逃げ溝23が形成される場合について説明した。ただし、逃げ溝23は必須の構成ではない。ただし、逃げ溝23を設けることで、軸方向に流通する潤滑油の流れを径方向に変え易い。そのため、連通開口部24、44から通路Sbへ潤滑油が流出し易い。その結果、排油性が向上する。
【0072】
また、上述した実施形態および変形例では、大径部8aのうち、本体部7aとの対向面8bは、逃げ溝23の径方向内側に位置する場合について説明した。すなわち、逃げ溝23が、セミフローティング軸受7の軸受面7eの径方向外側に位置する場合について説明した。ただし、逃げ溝23は、セミフローティング軸受7の軸受面7eの径方向外側に位置せずともよい。ただし、逃げ溝23が、セミフローティング軸受7の軸受面7eの径方向外側に位置することで、以下の効果を奏する。すなわち、軸受面7eと大径部8aの隙間から径方向に噴出する潤滑油が、効率的に排出される。こうして、排油性がさらに向上する。
【0073】
また、上述した実施形態および変形例では、分割壁部25、35および連続壁部55は、シャフト8の軸心の直下に位置する場合について説明した。ただし、分割壁部25、35および連続壁部55は、シャフト8の軸心の直下を避けて配設されてもよい。ただし、分割壁部25、35および連続壁部55の少なくとも一部が、シャフト8の軸心の直下に位置することで、以下の効果を奏する。すなわち、分割壁部25、35および連続壁部55は、重力を受けて鉛直下側に流下する潤滑油を好適に遮る。そして、分割壁部25、35および連続壁部55は、通路Sbにおける潤滑油の壁に間隙を形成しやすくなる。
【0074】
また、上述した実施形態、第1変形例、および、第3変形例では、狭小部26、66を備える場合について説明した。ただし、狭小部26、66は、必須の構成ではない。狭小部26、66を形成せずともよい。
【0075】
また、上述した実施形態および変形例では、分割壁部25、35および連続壁部55は、ベアリングハウジング2に一体形成される場合について説明した。ただし、分割壁部25、35および連続壁部55は、ベアリングハウジング2と別体に形成され、シャフト8の軸心の直下に取り付けられてもよい。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、シャフトを軸支する軸受構造、および、過給機に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
C 過給機
S 軸受構造
Sa 空間
Sb 通路
2 ベアリングハウジング(ハウジング)
2b 軸受孔
2c 油路
2e ピン孔
2f 内周面
7 セミフローティング軸受(軸受)
8 シャフト
8a 大径部
9 タービンインペラ(インペラ)
10 コンプレッサインペラ(インペラ)
23 逃げ溝
23c 対向壁部
24 連通開口部
24a 前方側開口部
24b 後方側開口部
25 分割壁部(下方壁部)
26 狭小部
35 分割壁部(下方壁部)
44 連通開口部
44e 内壁面
55 連続壁部(下方壁部)
66 狭小部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7