特許第6593518号(P6593518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593518
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/12 20060101AFI20191010BHJP
   F01M 1/06 20060101ALI20191010BHJP
   F02F 1/18 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   F01M11/12 A
   F01M1/06 Q
   F02F1/18 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-197656(P2018-197656)
(22)【出願日】2018年10月19日
(62)【分割の表示】特願2014-260856(P2014-260856)の分割
【原出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2019-7493(P2019-7493A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池谷 昌之
(72)【発明者】
【氏名】土居 照幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩一
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102008058920(DE,A1)
【文献】 特開2011−247101(JP,A)
【文献】 特開昭55−54620(JP,A)
【文献】 特開平9−209736(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0069893(KR,A)
【文献】 実開平3−99819(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 11/12
F01M 1/06
F02F 1/00
G01F 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルレベルゲージが挿入されるオイルレベルゲージ挿入穴を有する内燃機関であって、
前記オイルレベルゲージ挿入穴は、
シリンダヘッドからクランク室へ通じるオイル落し通路を有したシリンダブロックの側壁に開口したポートと、
前記ポートを前記オイル落し通路に連通させる貫通孔と、
前記貫通孔と前記オイル落し通路との間に形成された隔壁と、を備え
前記隔壁は、前記貫通孔を形成するとともに前記オイル落とし通路を形成してクランクシャフトの回転中心線まで延びている
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記隔壁は、前記シリンダブロックの側壁である
ことを特徴とする請求項1に記載された内燃機関。
【請求項3】
前記シリンダブロックは、前記シリンダヘッド側に配置されるウォータジャケットを前記側壁内に有し、
前記オイルレベルゲージ挿入穴は、前記ウォータジャケットと前記エンジンの高さ方向で重ならないように前記ウォータジャケットよりも低い位置に、前記オイル落し通路に接近するよう斜めに前記シリンダブロックの側壁に設けられる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された内燃機関。
【請求項4】
前記シリンダブロックは、シリンダの中心線に垂直でクランクシャフトの回転中心線を通る第1の平面によって、上部ブロックと下部ブロックとに分割され、
前記ポートは、前記上部ブロックの前記側壁に設けられ、
前記隔壁は、前記第1の平面まで延びている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載された内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク室内のオイルレベルを検出するオイルレベルゲージを通すオイルレベルゲージ挿入穴を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、クランク室内のオイルレベルを確認するためのオイルレベルゲージ(検油棒)を装着するためのゲージ挿入穴が必ず設けられる。ゲージ挿入穴は、クランク室に近い位置に設けられて、そこからガイドチューブで作業性の良い位置まで案内されることが多い。内燃機関の小型化に伴い、内燃機関の周辺には様々な補機や部品が高密度で配置されるようになってきている。そのため、ゲージ挿入穴を設ける位置及びそのガイドチューブを配置する経路を確保することが困難になっている。
【0003】
特許文献1に記載されたオイルレベルゲージ挿入孔は、シリンダヘッドからクランク室にオイルを戻すためのオイル落し通路をオイルレベルゲージの挿入穴として兼用している。このとき、オイル落し通路のクランク室側開口部からブローバイガスが逆流することを防止するために、オイルの液面に液没する(オイルに浸かる)位置までオイル落し通路を延長するガイドを取り付けている。
【0004】
特許文献2に記載されたオイルレベルゲージの挿入口は、シリンダヘッドに対して吸気マニホールドが結合される部分に設けられている。この挿入口は、吸気マニホールドのフランジ部の背面からシリンダヘッド内のオイル戻し通路へ傾斜して連通する直線状の貫通孔を形成し、吸気マニホールドのフランジ部の背面に開口する挿通孔にオイルレベルゲージガイドを圧入して作られている。オイルレベルゲージは、オイルレベルゲージガイドの遊端部から挿入され、オイル戻し通路を通ってオイルパンまで到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−247101号公報
【特許文献2】特開2009−275519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の場合、オイルレベルゲージ穴が差し込まれるオイル落し通路のオイルの戻り流量を確保するために、クランク室内のオイルの液面に差し込まれるガイド部を設けて当該オイル落し通路にブローバイガスが上がってくることを防止しているが、他のオイル落し通路にその分のブローバイガスが流れるようになる。したがって、全体的なオイルの循環効率が低下するかもしれない。また、特許文献2の場合、シリンダヘッドと吸気マニホールドの結合部に貫通孔を設けるので、組立作業において位置合わせをすることを考慮して設計されなければならない。そして、特許文献1及び特許文献2のいずれも、オイルレベルゲージの装着孔がシリンダヘッドに設けられるため、クランク室からシリンダヘッドまでの内燃機関の寸法が大きくなってしまうだけでなく、それに対応した長いオイルレベルゲージが必要となり、取り扱いが不便である。
【0007】
そこで、本発明は、オイルの循環を妨げることなくかつオイルレベルゲージを取り扱いやすい長さのままで、外形寸法を嵩張らせないオイルレベルゲージの挿入穴を有する内燃機関を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態の内燃機関は、オイルレベルゲージが装着されるオイルレベルゲージ挿入穴を有する。オイルレベルゲージ挿入穴は、ポートと貫通穴と隔壁とを備える。ポートは、シリンダヘッドからクランク室へ通じるオイル落し通路を有したシリンダブロックの側壁に開口する。貫通穴は、ポートをオイル落し通路に連通させる。隔壁は、貫通孔を形成するとともにオイル落とし通路を形成してクランクシャフトの回転中心線まで延びている。
【0009】
シリンダブロックが、シリンダの中心線に垂直でクランクシャフトの回転中心線を通る第1の平面によって、上部ブロックと下部ブロックとに分割される場合、ポートは、上部ブロックの側壁に設けられる。隔壁は、第1の平面まで延びる。また、貫通孔は、オイル落し通路に沿う方向に対して角度を有し、クランク室に向かうにしたがって前記オイル落し通路に接近する。また、ポートは、クランクシャフトの回転中心線に垂直にオイル落し通路を通る第2の平面に対して、回転中心線に沿う方向に外れて配置される。さらに、シリンダブロックがシリンダヘッド側に配置されるウォータジャケットを側壁内に有し、ポートは、シリンダヘッドからウォータジャケットよりも離れた位置に配置される。また、貫通孔は、シリンダの中心線に垂直でクランクシャフトの回転中心線を通る第1の平面からシリンダヘッド側に寄った位置で、オイル落し通路に角度を有して合流する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態の内燃機関によれば、シリンダブロックの側壁にオイルレベルゲージ挿入穴のポートが開口しており、このポートを貫通孔でオイル落し通路に連通させている。したがって、シリンダヘッドからオイル落し通路に流れ込むオイルの循環を妨げない。また、隔壁が設けられているので、オイル落し通路を流れるオイルが貫通孔に入らない。したがって、ブローバイガスがオイル落し通路に吹き上がってもオイルレベルゲージ挿入穴にオイルが上がってくることはない。さらに、シリンダブロックの側壁にポートが開口しているので、シリンダの中心線方向に内燃機関の外形寸法を嵩張らせないとともに、オイルレベルゲージそのものの長さも取り扱いやすい長さに設定することができる。
【0011】
また、シリンダの中心線に垂直かつクランクシャフトの回転中心線を通る第1の平面によってシリンダブロックが上部ブロックと下部ブロックとに分割される場合、上部ブロックの側壁にポートを設け、隔壁が上部ブロックの下端まで延びている発明の内燃機関によれば、鋳造されるシリンダブロックの内部において隔壁が設けられる範囲を精度よく設定することができる。
【0012】
オイル落し通路に沿う方向に対して角度を有し、クランク室に向かうにしたがってオイル落し通路に接近するように貫通孔が構成された発明の内燃機関によれば、ブローバイガスによって吹き戻されるオイルが貫通孔に入りにくい。
【0013】
また、クランクシャフトの回転中心線に垂直にオイル落し通路を通る第2の平面に対して、回転中心線に沿う方向にポートを外して配置した発明の内燃機関によれば、第2の平面に沿う方向にシリンダブロックの寸法が大きくなることを抑えることができるため、内燃機関の外形寸法を嵩張らせない。
【0014】
さらに、シリンダブロックがシリンダヘッド側に配置されるウォータジャケットを側壁内に有し、シリンダヘッドに対してウォータジャケットよりも離れた位置にポートを配置する発明の内燃機関によれば、クランクシャフトを横切る方向にウォータジャケットに重ならないので、シリンダブロックの外形寸法が大きくなることを抑えることができ、内燃機関の外形寸法が嵩張らない。
【0015】
また、シリンダの中心線に垂直でクランクシャフトの回転中心線を通る第1の平面からシリンダヘッド側に寄った位置で、オイル落し通路に角度を有して貫通孔を合流させる発明の内燃機関によれば、オイル落し通路を流れるオイルがブローバイガスによって吹き戻された場合でも、オイルが貫通孔に上がることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態の内燃機関のシリンダブロックの斜視図。
図2図1のシリンダブロックの側面図。
図3図1のオイルレベルゲージ挿入穴の周辺を拡大した斜視図。
図4図3中のF4−F4線に沿うシリンダブロックの断面図。
図5】本発明の第2の実施形態の内燃機関のオイルレベルゲージ挿入穴の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る第1の実施形態の内燃機関Eのオイルレベルゲージ挿入穴1について、図1から図4を参照して説明する。オイルレベルゲージ挿入穴1は、クランク室300内のオイルの量(油面高さ)を検査するオイルレベルゲージを装着するために設けられる。オイルレベルゲージ挿入穴1は、図1から図4に示すようにシリンダブロック100の吸気側の側壁101に開口している。シリンダブロック100は、シリンダヘッド200からクランク室300へ通じるオイル落し通路102を側壁101内に有している。そして、オイルレベルゲージ挿入穴1は、このオイル落し通路102に連通している。
【0018】
本実施形態のシリンダブロック100は、いわゆるラダーフレーム型であって、図1及び図4に示すように、シリンダの中心線Bに垂直かつクランクシャフトの回転中心線Cを通る第1の平面A(分割面)によって、上部ブロック110と下部ブロック120とに分割して作られている。上部ブロック110は、シリンダヘッド側に配置されたウォータジャケット103を側壁101内に有している。
【0019】
オイルレベルゲージ挿入穴1は、図4に示すように、ポート11と貫通孔12と隔壁13とを備える。図4は、オイルレベルゲージ挿入穴1とオイル落し通路102を通るように図3中のF4−F4線に沿って斜めにシリンダブロック100を切った断面図である。ポート11は、シリンダブロック100の側壁101に開口している。
【0020】
本実施形態において、ポート11は、上部ブロック110の側壁101に配置されている。より具体的には、ポート11は、図2に示すようにクランクシャフトの回転中心線Cに垂直かつオイル落し通路102を通る第2の平面Dに対して、クランクシャフトの回転中心線Cに沿う方向へ外れた位置に配置されている。また、ポート11は、図2及び図4に示すように、シリンダヘッド200に対してウォータジャケット103よりも離れた低い位置に配置されている。
【0021】
貫通孔12は、ポート11をオイル落し通路102に連通させる。図3に拡大して示すようにポート11は、オイル落し通路102が配置された部分の外壁に隣り合うように突出して形成されている。貫通孔12は、図4に示すようにオイル落し通路102に沿う方向に対して角度を有し、クランク室300に向かうにしたがってオイル落し通路102に接近するように、すなわちポート11から斜めに延びている。
【0022】
隔壁13は、図4に示すように、貫通孔12とオイル落し通路102との間に形成されている。この隔壁13の下端14は、上部ブロック110と下部ブロック120の境界面、すなわち、第1の平面Aまで延びている。そして、貫通孔12とオイル落し通路102は、下部ブロック120において合流し、一つの穴となってクランク室300に通じている。
【0023】
以上のように構成された内燃機関Eのオイルレベルゲージ挿入穴1にオイルレベルゲージGが挿入されると、オイルレベルゲージGは、図4に示すように隔壁13によってガイドされることで、オイル落し通路102を流れ落ちるオイルの妨げとならない位置に保持されるとともに、隔壁13に沿ってオイルレベルゲージGの先端がクランク室300へ延びている。また、貫通孔12は、上部ブロック110の中では隔壁13によってオイル落し通路102から分かれている。オイル落し通路102を流れてきたオイルのうち、隔壁13に沿って落ちてきたオイルは、オイルレベルゲージGによって案内され、クランク室300内に落ちる。したがって、ブローバイガスがクランク室300から上がってきても、オイル落し通路102を流れてきたオイルが貫通孔12に上がることが防止される。
【0024】
また、オイルレベルゲージ挿入穴1は、オイル落し通路102やウォータジャケット103と重ならない位置のシリンダブロック100の側壁101に配置されるので、シリンダブロック100の外形寸法を大きくしなくてもよい。さらに、オイルレベルゲージ挿入穴1のポート11がウォータジャケット103よりも低い位置に配置されていることで、内燃機関Eのシリンダヘッド側への寸法も嵩張らない。また、ポート11には、オイルレベルゲージGを操作しやすい位置まで延長するガイドチューブが装着されることがある。したがって、オイルレベルゲージ挿入穴1のポート11がシリンダブロック100の側壁101に設けられていることで、オイルレベルゲージGそのものの長さも取り扱いやすい長さに設定することが容易である。
【0025】
本発明に係る第2の実施形態の内燃機関Eについて、図5を参照して説明する。第2の実施形態の内燃機関Eの説明において、第1の実施形態の内燃機関Eと同じ機能を有する構成は、同じ符号を付し、詳細な説明については第1の実施形態の記載を参酌することとする。
【0026】
第2の実施形態の内燃機関Eは、オイルレベルゲージ挿入穴1に係る内部構造が第1の実施形態と異なっている。図5は、第1の実施形態のオイルレベルゲージ挿入穴1の断面図である図4と同じ位置でシリンダブロック100を切った場合の断面図を示す。この実施形態の貫通孔12は、シリンダの中心線Bに垂直でクランクシャフトの回転中心線Cを通る第1の平面A、すなわちシリンダブロック100の上部ブロック110と下部ブロック120との間の分割面から、シリンダヘッド200側に寄った位置で、オイル落し通路102に角度を有して合流している。また、貫通孔12は、オイルレベルゲージGを通すことができる程度の大きさの穴であれば、オイル落し通路102よりも小さい穴でよい。
【0027】
以上のように構成された第2の実施形態の内燃機関Eのオイルレベルゲージ挿入穴1にオイルレベルゲージGが挿入されると、オイルレベルゲージGは隔壁13と反対側に位置するオイル落し通路102の内面に沿って曲げられてクランク室300へ延びる。つまり、オイルレベルゲージGは、隔壁13に接しない。貫通孔12は、オイル落し通路102に斜めに合流しているため、オイル落し通路102との開口形状は、楕円形であり、オイル落し通路102を流れ落ちるオイルのうち隔壁13に沿って流れるオイルは、貫通孔12とオイル落し通路102の合流する部分で分かれて流れることになる。また、ブローバイガスがオイル落し通路102に流れるオイルを吹き戻しても、貫通孔12とオイル落し通路102の合流部の開口形状が楕円形であるので、貫通孔12にオイルが上がってくることを防止できる。
【0028】
以上、本発明に係る内燃機関Eのオイルレベルゲージ挿入穴1について、2つの実施形態を説明した。これらの実施形態は、発明をわかりやすくするために一例を示したに過ぎない。したがって、これらの実施形態に発明を限定することを意図したものではない。本発明は、他の様々な形で実施されることが可能であり、発明の用紙を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更をすることが可能である。上述の各実施形態及びその変形例は、発明の範囲に含まれるとともに特許請求の範囲に記載された発明に対しそれらの均等の範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0029】
E…内燃機関、1…オイルレベルゲージ挿入穴、11…ポート、12…貫通孔、13…隔壁、14…下端、100…シリンダブロック、101…側壁、102…オイル落し通路、103…ウォータジャケット、110…上部ブロック、120…下部ブロック、200…シリンダヘッド、A…第1の平面、B…シリンダの中心線、C…(クランクシャフトの)回転中心線、D…第2の平面。
図1
図2
図3
図4
図5