(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
同一成分を含むサンプルに対するクロマトグラフィー分析を繰り返し行うことにより得られた、分析日時が異なる3つ以上のクロマトグラムデータに対する処理を行うデータ処理装置であって、
前記3つ以上のクロマトグラムデータのそれぞれについて、ピークを自動で検出する自動波形処理部と、
ユーザによる手動操作に基づいて、前記自動波形処理部で検出されたピークのピーク情報を変更する手動波形処理部と、
前記手動波形処理部により同一成分のピークの前記ピーク情報が変更された2つのクロマトグラムデータを解析済みデータとして、当該2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差を算出する時間差算出部と、
前記3つ以上のクロマトグラムデータのうち前記2つの解析済みデータを除く対象データについて、前記手動波形処理部により前記ピーク情報が変更されたピークと同一成分のピークを分析日時に基づいて選択するピーク選択部と、
前記時間差算出部により算出された溶出時間差及び分析日時に基づいて、前記解析済みデータにおけるピークの前記ピーク情報の変更を、前記ピーク選択部により選択された対象データにおけるピークの前記ピーク情報に反映させるピーク情報反映部とを備えることを特徴とするデータ処理装置。
前記表示処理部は、前記解析済みデータ及び前記対象データにおける同一成分のピークに対応付けて、少なくとも分析日時が直前のデータのピーク位置及び分析日時が直後のデータのピーク位置を表示させることを特徴とする請求項2に記載のデータ処理装置。
同一成分を含むサンプルに対するクロマトグラフィー分析を繰り返し行うことにより得られた、分析日時が異なる3つ以上のクロマトグラムデータに対する処理を行うデータ処理方法であって、
前記3つ以上のクロマトグラムデータのそれぞれについて、ピークを自動で検出する自動波形処理ステップと、
ユーザによる手動操作に基づいて、前記自動波形処理ステップで検出されたピークのピーク情報を変更する手動波形処理ステップと、
前記手動波形処理ステップにより同一成分のピークの前記ピーク情報が変更された2つのクロマトグラムデータを解析済みデータとして、当該2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差を算出する時間差算出ステップと、
前記3つ以上のクロマトグラムデータのうち前記2つの解析済みデータを除く対象データについて、前記手動波形処理ステップにより前記ピーク情報が変更されたピークと同一成分のピークを分析日時に基づいて選択するピーク選択ステップと、
前記時間差算出ステップにより算出された溶出時間差及び分析日時に基づいて、前記解析済みデータにおけるピークの前記ピーク情報の変更を、前記ピーク選択ステップにより選択された対象データにおけるピークの前記ピーク情報に反映させるピーク情報反映ステップとを含むことを特徴とするデータ処理方法。
前記表示処理ステップでは、前記解析済みデータ及び前記対象データにおける同一成分のピークに対応付けて、少なくとも分析日時が直前のデータのピーク位置及び分析日時が直後のデータのピーク位置を表示させることを特徴とする請求項6に記載のデータ処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のデータ処理装置では、ユーザ作業が煩雑化するおそれがあった。具体的には、分析動作を連続して複数回行うような場合には、クロマトグラムにおけるピークの開始点及び終了点が適切な位置からずれて検出されることが繰り返し発生してしまう。そして、ユーザは、クロマトグラムごとに手動操作でピークの開始点及び終了点を変更する必要がある。
【0007】
このような場合において、あるクロマトグラムに対する手動操作によるピーク(ピーク情報)の変更内容を、他のクロマトグラムに対してそのまま用いることで、他のクロマトグラムに対するユーザの手動操作を省くことが検討される。例えば、複数のクロマトグラムのそれぞれから同一成分のピークを検出する場合において、手動操作によって補正を行った後のクロマトグラムにおけるピークの開始点及び終了点の時間を、そのまま、他のクロマトグラムにおいてピークの開始点及び終了点の時間としてピークを検出すれば、他のクロマトグラムに対するユーザの手動操作を省くことが可能である。
【0008】
しかし、分析動作を繰り返し行うような場合(クロマトグラムデータを連続して生成する場合)には、前回分析時の残留物がカラム内に存在することなどにより、同一成分のピークであっても、クロマトグラムごとでピークの溶出時間に個別のずれが生じてしまう。その結果、同一成分のピークであっても、クロマトグラムごとでピークの開始点及び終了点の時間が異なり、ピークを精度よく検出できないという不具合が生じる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、自動で波形処理されたデータを補正する作業を効率化でき、かつ、当該補正を精度よく行うことができるデータ処理装置及びデータ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るデータ処理装置は、同一成分を含むサンプルに対するクロマトグラフィー分析を繰り返し行うことにより得られた、分析日時が異なる3つ以上のクロマトグラムデータに対する処理を行う。前記データ処理装置は、自動波形処理部と、手動波形処理部と、時間差算出部と、ピーク選択部と、ピーク情報反映部とを備える。前記自動波形処理部は、前記3つ以上のクロマトグラムデータのそれぞれについて、ピークを自動で検出する。前記手動波形処理部は、ユーザによる手動操作に基づいて、前記自動波形処理部で検出されたピークのピーク情報を変更する。前記時間差算出部は、前記手動波形処理部により同一成分のピークの前記ピーク情報が変更された2つのクロマトグラムデータを解析済みデータとして、当該2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差を算出する。前記ピーク選択部は、前記3つ以上のクロマトグラムデータのうち前記2つの解析済みデータを除く対象データについて、前記手動波形処理部により前記ピーク情報が変更されたピークと同一成分のピークを分析日時に基づいて選択する。前記ピーク情報反映部は、前記時間差算出部により算出された溶出時間差及び分析日時に基づいて、前記解析済みデータにおけるピークの前記ピーク情報の変更を、前記ピーク選択部により選択された対象データにおけるピークの前記ピーク情報に反映させる。
【0011】
このような構成によれば、自動波形処理部によってクロマトグラムのピークが自動で検出された後、そのピークに対してユーザが手動操作を行うと、手動波形処理部は、ピークのピーク情報を変更する。そして、ピーク情報反映部は、その変更されたピーク情報の内容を、他のクロマトグラムデータ(対象データ)におけるピークのピーク情報に反映させる。
そのため、対象データにおけるピークのピーク情報を、手動操作によらずに自動的に変更できる。
その結果、対象データを補正する作業を効率化できる。
【0012】
また、時間差算出部は、2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差を算出する。ピーク選択部は、対象データについて、解析済みデータのピークと同一成分のピークを、分析日時(分析日時の順序)、すなわち、クロマトグラムデータの生成日時の順序に基づいて選択する。ピーク情報反映部は、これらの溶出時間差及び分析日時(分析日時の順序)に基づいて、解析済みデータにおけるピークのピーク情報の変更を、対象データにおいて選択されたピークのピーク情報に反映させる。
【0013】
すなわち、データ処理装置では、まず、対象データについて、解析済みデータのピークと同一成分のピークを正確に選択する。そして、データ処理装置では、2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差、及び、分析日時(分析日時の順序)に基づくことにより、クロマトグラムごとでのピークの溶出時間のずれを考慮して、解析済みデータにおけるピーク情報の変更内容を、その選択されたピークのピーク情報に反映させる。
そのため、対象データにおけるピークのピーク情報の変更(対象データの補正)を精度よく行うことができる。
このように、本発明に係るデータ処理装置によれば、自動で波形処理されたデータを補正する作業を効率化でき、かつ、当該補正を精度よく行うことができる。
【0014】
(2)また、前記データ処理装置は、表示処理部をさらに備えてもよい。前記表示処理部は、前記解析済みデータ及び前記対象データを分析日時の順序に従って表示させる。
このような構成によれば、ユーザは、解析済みデータ及び対象データにおける同一成分のピークのピーク位置を、分析日時の順序と照らし合わせて確認できる。
そのため、分析日時の順序と、ピーク位置のずれとの関係を容易に確認できる。
【0015】
(3)また、前記表示処理部は、前記解析済みデータ及び前記対象データにおける同一成分のピークに対応付けて、少なくとも分析日時が直前のデータのピーク位置及び分析日時が直後のデータのピーク位置を表示させてもよい。
【0016】
このような構成によれば、ユーザは、同一成分のピークに関して、あるデータにおけるピーク位置を、分析日時が直前及び直後のデータにおけるピーク位置と比較して確認できる。
【0017】
(4)また、前記データ処理装置は、時間範囲指定部をさらに備えてもよい。前記時間範囲指定部は、前記解析済みデータにおける時間範囲を指定する。前記ピーク選択部は、前記時間範囲指定部により指定された時間範囲及び分析日時に基づいて、前記手動波形処理部により前記ピーク情報が変更されたピークと同一成分のピークを選択してもよい。
このような構成によれば、時間範囲設定部によって時間範囲を指定することにより、特定の成分に限定してピーク情報を変更できる。
そのため、全体の処理時間を短くできる。
【0018】
(5)本発明に係るデータ処理方法は、同一成分を含むサンプルに対するクロマトグラフィー分析を繰り返し行うことにより得られた、分析日時が異なる3つ以上のクロマトグラムデータに対する処理を行う。前記データ処理方法は、自動波形処理ステップと、手動波形処理ステップと、時間差算出ステップと、ピーク選択ステップと、ピーク情報反映ステップとを含む。前記自動波形処理ステップでは、前記3つ以上のクロマトグラムデータのそれぞれについて、ピークを自動で検出する。前記手動波形処理ステップでは、ユーザによる手動操作に基づいて、前記自動波形処理ステップで検出されたピークのピーク情報を変更する。前記時間差算出ステップでは、前記手動波形処理ステップにより同一成分のピークの前記ピーク情報が変更された2つのクロマトグラムデータを解析済みデータとして、当該2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差を算出する。前記ピーク選択ステップでは、前記3つ以上のクロマトグラムデータのうち前記2つの解析済みデータを除く対象データについて、前記手動波形処理ステップにより前記ピーク情報が変更されたピークと同一成分のピークを分析日時に基づいて選択する。前記ピーク情報反映ステップでは、前記時間差算出ステップにより算出された溶出時間差及び分析日時に基づいて、前記解析済みデータにおけるピークの前記ピーク情報の変更を、前記ピーク選択ステップにより選択された対象データにおけるピークの前記ピーク情報に反映させる。
【0019】
(6)また、前記データ処理方法は、表示処理ステップをさらに含んでもよい。前記表示処理ステップは、前記解析済みデータ及び前記対象データを分析日時の順序に従って表示させる。
【0020】
(7)また、前記表示処理ステップでは、前記解析済みデータ及び前記対象データにおける同一成分のピークに対応付けて、少なくとも分析日時が直前のデータのピーク位置及び分析日時が直後のデータのピーク位置を表示させてもよい。
【0021】
(8)また、前記データ処理方法は、時間範囲指定ステップをさらに含んでもよい。前記時間範囲指定ステップでは、前記解析済みデータにおける時間範囲を指定する。前記ピーク選択ステップでは、前記時間範囲指定ステップにより指定された時間範囲及び分析日時に基づいて、前記手動波形処理ステップにより前記ピーク情報が変更されたピークと同一成分のピークを選択する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、対象データのピークのピーク情報を、手動操作によらずに自動的に変更できる。また、2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差、及び、分析日時に基づくことにより、連続して分析を行う場合に生じるクロマトグラムごとでのピークの溶出時間のずれを考慮して、対象データのピークのピーク情報を変更できる。そのため、自動で波形処理されたデータを補正する作業を効率化でき、かつ、当該補正を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.ガスクロマトグラフの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係るデータ処理装置1、及び、当該データ処理装置1とともに用いられるガスクロマトグラフ2の構成例を示した概略図である。
【0025】
データ処理装置1は、ガスクロマトグラフ2で得られるデータに対して各種のデータ処理を行うための装置である。データ処理装置1は、例えば、コンピュータにより構成される。データ処理装置1の詳しい構成については、後述する。
【0026】
ガスクロマトグラフ2は、キャリアガスとともに試料ガスをカラム3内に供給することにより分析を行うためのものであり、上記カラム3以外に、カラムオーブン4、試料導入部5及び検出器6などを備えている。
カラム3は、例えば、キャピラリカラムからなる。カラム3は、ヒータ及びファンなど(いずれも図示せず)とともにカラムオーブン4内に収容されている。
カラムオーブン4は、カラム3を加熱するためのものであり、分析時にはヒータ及びファンを適宜駆動させる。
【0027】
試料導入部5は、カラム3内にキャリアガス及び試料ガスを導入するためのものであり、その内部に試料気化室(図示せず)が形成されている。この試料気化室には、液体試料が注入され、試料気化室内で気化された試料が、キャリアガスとともにカラム3内に導入される。また、試料気化室には、ガス供給流路7及びスプリット流路8が連通している。
ガス供給流路7は、試料導入部5の試料気化室内にキャリアガスを供給するための流路である。
【0028】
スプリット流路8は、スプリット導入法によりカラム3内にキャリアガス及び試料ガスを導入する際に、試料気化室内のガス(キャリアガス及び試料ガスの混合ガス)の一部を所定のスプリット比で外部に排出するための流路である。
【0029】
検出器6は、例えば、水素炎イオン化検出器(FID)や、炎光光度検出器(FPD)により構成される。検出器6は、カラム3から導入されるキャリアガスに含まれる各試料成分を順次検出する。
【0030】
ガスクロマトグラフ2において試料を測定する際は、分析対象となる試料が試料導入部5に注入される。試料は、試料気化室において気化される。また、試料導入部5の試料気化室には、ガス供給流路7を介してキャリアガスが供給される。
【0031】
試料気化室内で気化された試料は、キャリアガスとともにカラム3内に導入される。試料に含まれる各試料成分は、カラム3内を通過する過程で分離されて、検出器6に順次導入される。
【0032】
そして、検出器6において、カラム3から導入されるキャリアガスに含まれる各試料成分が順次検出される。また、検出器6からの検出信号が、データ処理装置1に入力される。
データ処理装置1では、入力された信号に基づいてクロマトグラムが生成される。そして、ユーザは、得られたクロマトグラムを確認して、各種分析を行う。
【0033】
2.制御部及び周辺の部材の具体的構成
図2は、データ処理装置1の制御部14、及び、その周辺の部材の具体的構成を示したブロック図である。
データ処理装置1は、操作部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを備えている。
【0034】
操作部11は、例えば、キーボード及びマウスなどにより構成される。ユーザは、操作部11を操作することにより、分析条件などの各種情報を制御部14に入力することができる。
表示部12は、例えば、液晶表示器などにより構成される。表示部12には、制御部14の制御により、分析結果などの各種情報が表示される。
【0035】
記憶部13は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスクなどにより構成されている。記憶部13は、複数の検出データ131を記憶している。各検出データ131は、データ処理装置1で生成されるクロマトグラムに関するデータである。各検出データ131には、クロマトグラムデータ132と、分析日時情報133と、ピーク情報134とが含まれている。クロマトグラムデータ132と、分析日時情報133と、ピーク情報134とは、互いに対応付けられている。
【0036】
クロマトグラムデータ132は、後述するデータ処理部141によって、検出器6からの検出信号に基づいて生成されるクロマトグラムのデータ(クロマトグラムデータ)である。
分析日時情報133は、クロマトグラムデータ132が生成された日時、具体的には、検出器6によって検出信号が出力された日時の情報である。
【0037】
ピーク情報134は、クロマトグラムデータ132によって表されるクロマトグラムにおけるピークに関する情報である。具体的には、ピーク情報134には、クロマトグラムにおけるピークの開始点、ピークの終了点、及び、ピーク位置の情報が含まれる。なお、ピークの開始点の情報とは、ピークの開始点の時間の情報であり、ピークの終了点の情報とは、ピークの終了点の時間の情報であり、ピーク位置の情報とは、ピークが一番高い点(ピークトップ)の時間の情報である。
【0038】
制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部14は、操作部11、表示部12及び検出器6との間で、電気信号の入力又は出力が可能である。制御部14は、必要に応じて、記憶部13に情報を格納し、また、記憶部13に記憶されている情報を読み出す。制御部14は、CPUがプログラムを実行することにより、データ処理部141、表示処理部142、自動波形処理部143、手動波形処理部144、時間範囲指定部145、ピーク選択部146、時間差算出部147及びピーク情報反映部148などとして機能する。
【0039】
データ処理部141は、検出器6からの検出信号に基づいてクロマトグラムを得る。データ処理部141で生成されたクロマトグラムのデータは、クロマトグラムデータ132として記憶部13に格納される。また、検出器6から検出信号が出力された日時の情報は、分析日時情報133としてクロマトグラムデータ132に対応付けて記憶部13に格納される。
【0040】
表示処理部142は、生成されたクロマトグラムを表示部12にリアルタイムで表示させる処理を行う。すなわち、データ処理部141でクロマトグラムが生成されると、上記したように、そのデータがクロマトグラムデータ132として記憶部13に格納されるとともに、リアルタイムで表示部12にクロマトグラムが表示される。
【0041】
自動波形処理部143は、記憶部13に記憶されているクロマトグラムデータ132で表されるクロマトグラムにおけるピークを自動で検出する処理を行う。具体的には、記憶部13は、図示しないピーク検出用のパラメータを複数記憶している。そして、自動波形処理部143は、クロマトグラムにおいて、このパラメータを満たす部分の波形をピークとして自動で検出する処理を行う。パラメータとしては、ピークの開始点を検出するためのパラメータ、ピークの終了点を検出するためのパラメータ、及び、ピーク位置(ピークトップの位置)を検出するためのパラメータが挙げられる。すなわち、自動波形処理部143は、クロマトグラムにおける、ピークの開始点、ピークの終了点、及び、ピーク位置を自動で検出する。また、自動波形処理部143によって検出されたピークの情報(ピークの開始点、ピークの終了点、及び、ピーク位置の情報)は、ピーク情報134として記憶部13に格納される。
【0042】
手動波形処理部144は、詳しくは後述するが、ユーザによる操作部11の操作に基づいて、クロマトグラムのピークに関する変更(補正)を受け付ける。また、手動波形処理部144は、この受け付けた内容に基づいて、記憶部13に記憶されているピーク情報134を書き換える。
【0043】
表示処理部142は、上記した処理に加えて、自動波形処理部143によって検出されたクロマトグラムのピークを、表示部12に表示させる処理を行う。また、表示処理部142は、手動波形処理部144が受け付けた内容に基づいて、表示部12に表示されているクロマトグラムのピークを補正して表示する処理を行う。
【0044】
時間範囲指定部145は、詳しくは後述するが、ユーザによる操作部11の操作に基づいて、ピーク情報134を自動で補正(反映処理)する際の時間範囲の指定を受け付ける。
【0045】
ピーク選択部146は、記憶部13に記憶されている分析日時情報133、及び、時間範囲指定部145が受け付けた時間範囲に基づいて、クロマトグラムデータ132で表されるクロマトグラムにおいて、自動で補正を行う対象となるピークを選択する。
【0046】
時間差算出部147は、詳しくは後述するが、手動波形処理部144によって内容が書き換えられた後の2つのピーク情報134に基づいて、ピークの溶出時間差を算出する。
【0047】
ピーク情報反映部148は、詳しくは後述するが、記憶部13に記憶されている分析日時情報133、及び、時間差算出部147が算出するピークの溶出時間差に基づいて、ピーク選択部146が選択するクロマトグラムのピーク(補正対象となるピーク)のピーク情報134に対して、手動波形処理部144によって変更されたピーク情報134の内容を反映する。
【0048】
表示処理部142は、上記した処理に加えて、ピーク情報反映部147によって変更された後のピーク情報134に基づいて、クロマトグラムのピークを補正して表示する処理を行う。
【0049】
3.制御部による制御動作、及び、表示画面の表示態様
(1)自動波形処理
図3は、制御部14による処理の一例を示したフローチャートである。
データ処理装置1及びガスクロマトグラフ2において分析動作が開始されると、データ処理部141(
図2参照)は、検出器6からの検出信号に基づいてクロマトグラムを生成する。そして、図示しないが、表示部12には、クロマトグラムがリアルタイムで表示される。また、生成されたクロマトグラムのデータは、検出データ131(クロマトグラムデータ132及び分析日時情報133)として記憶部13に格納される。なお、この例では、同一成分を含むサンプルに対して、分析日時が異なる分析動作(クロマトグラフィー分析)が4回行われたとして、説明する。
【0050】
そして、ユーザによって操作部11が操作されて、自動波形処理のための操作が行われると、自動波形処理部143は、記憶部13に記憶されている4つの検出データ131(クロマトグラムデータ132及び分析日時情報133)を読み出す。また、自動波形処理部143は、記憶部13から図示しないパラメータを読出し、そのパラメータを満たす波形の部分を、各クロマトグラムデータ132で表されるクロマトグラムにおけるピークとして検出する(ステップS101:自動波形処理ステップ)。そして、表示処理部142は、自動波形処理部143によって検出されるクロマトグラムのピークを、表示画面121に表示させる。
【0051】
図4は、表示画面121の表示態様の一例であって、自動波形処理が行われたクロマトグラムを表示する際の表示例を示した概略図である。
上記した表示部12(
図2参照)には、表示画面121が含まれている。
【0052】
自動波形処理が行われると、表示部12の表示画面121には、複数のクロマトグラム領域122が表示される。クロマトグラム領域122は、自動波形処理によってピークが検出された後のクロマトグラムを表示するための領域である。この例では、表示画面121には、クロマトグラム領域122として、第1クロマトグラム領域123、第2クロマトグラム領域124、第3クロマトグラム領域125及び第4クロマトグラム領域126が表示されている。なお、第1クロマトグラム領域123〜第4クロマトグラム領域126では、横軸が時間、縦軸が信号強度を表している。
【0053】
第1クロマトグラム領域123、第2クロマトグラム領域124、第3クロマトグラム領域125及び第4クロマトグラム領域126は、表示部12において、この順序で、上方から下方に向かって並ぶように配置されている。
【0054】
この例では、分析日時(データが生成された日時)の順序が最初である分析日時情報133に対応づけられるクロマトグラムデータ132の内容(クロマトグラムデータ132で表されるクロマトグラム)が、第1クロマトグラム領域123に表示される。また、分析日時の順序が2番目である分析日時情報133に対応づけられるクロマトグラムデータ132が、第2クロマトグラム領域124に表示される。また、分析日時の順序が3番目である分析日時情報133に対応づけられるクロマトグラムデータ132が、第3クロマトグラム領域125に表示される。また、分析日時の順序が4番目である分析日時情報133に対応づけられるクロマトグラムデータ132が、第4クロマトグラム領域126に表示される。具体的には、第1クロマトグラム領域123〜第4クロマトグラム領域126のそれぞれでは、クロマトグラムA〜Dのそれぞれが表示されるとともに、自動波形処理部143によって検出されたピークが表示される。
【0055】
このように、表示画面121では、上方側に配置されるクロマトグラム領域122に表示されるクロマトグラムほど、その生成日時が前であって、下方側に配置されるクロマトグラム領域122に表示されるクロマトグラムほど、その生成日時が後となるように、生成日時の順序に従って(分析日時の順序に従って)クロマトグラムが表示される。
【0056】
具体的には、第1クロマトグラム領域123では、クロマトグラムA上において、点Eと、点Fとを結ぶベースラインGが表示されることにより、点Eがピークの開始点として表され、点Fがピークの終了点として表され、ベースラインGの一端(点E)から他端(点F)までの間の波形がピークP
1として表される。
【0057】
また、第2クロマトグラム領域124では、クロマトグラムB上において、点Hと、点Iとを結ぶベースラインJが表示されることにより、点Hがピークの開始点として表され、点Iがピークの終了点として表され、ベースラインJの一端(点H)から他端(点I)までの間の波形がピークP
2として表される。
【0058】
また、第3クロマトグラム領域125では、クロマトグラムC上において、点Kと、点Lとを結ぶベースラインMが表示されることにより、点Kがピークの開始点として表され、点Lがピークの終了点として表され、ベースラインMの一端(点K)から他端(点L)までの間の波形がピークP
3として表される。
【0059】
また、第4クロマトグラム領域126では、クロマトグラムD上において、点Nと、点Oとを結ぶベースラインQが表示されることにより、点Nがピークの開始点として表され、点Oがピークの終了点として表され、ベースラインQの一端(点N)から他端(点O)までの間の波形がピークP
4として表される。
【0060】
なお、第1クロマトグラム領域123〜第4クロマトグラム領域126で表示されるクロマトグラムA〜DにおけるピークP
1〜P
4は、同一成分を表している。
【0061】
また、クロマトグラムA〜DにおけるピークP
1〜P
4の情報(ピークの開始点の時間、ピークの終了点の時間、ピーク位置の情報時間)は、ピーク情報134として記憶部13に記憶される。
【0062】
また、各クロマトグラム領域122では、各ピークのピーク位置(ピークトップの位置)が矢印で示されるとともに、表示しているクロマトグラムの生成日時(分析日時)に対して、生成日時が直前となるクロマトグラムにおけるピークのピーク位置、及び、生成日時が直後となるクロマトグラムにおけるピークのピーク位置が矢印で示されている。
【0063】
具体的には、第1クロマトグラム領域123では、クロマトグラムAのピークP
1のピーク位置が矢印A
1で示され、クロマトグラムAの生成日時に対して、直後の生成日時であるクロマトグラムBのピークP
2のピーク位置が矢印A
2で示されている。また、第2クロマトグラム領域124では、クロマトグラムBのピークP
2のピーク位置が矢印B
2で示され、クロマトグラムBの生成日時に対して、直前の生成日時であるクロマトグラムAのピークP
1のピーク位置が矢印B
1で示され、クロマトグラムBの生成日時に対して、直後の生成日時であるクロマトグラムCのピークP
3のピーク位置が矢印B
3で示されている。また、第3クロマトグラム領域125では、クロマトグラムCのピークP
3のピーク位置が矢印C
3で示され、クロマトグラムCの生成日時に対して、直前の生成日時であるクロマトグラムBのピークP
2のピーク位置が矢印C
2で示され、クロマトグラムCの生成日時に対して、直後の生成日時であるクロマトグラムDのピークP
4のピーク位置が矢印C
4で示されている。また、第4クロマトグラム領域126では、クロマトグラムDのピークP
4のピーク位置が矢印D
4で示され、クロマトグラムDの生成日時に対して、直前の生成日時であるクロマトグラムCのピークP
3のピーク位置が矢印D
3で示されている。
【0064】
クロマトグラム領域122では、クロマトグラムA〜DにおけるピークP
1〜P
4は、同一成分を表すピークであるが、分析日時が後になるほど(下方側に配置されるクロマトグラム領域122に表示されるクロマトグラムほど)、右側、すなわち、遅い時点に表れている。また、クロマトグラム領域122では、分析日時が1つ後になるたびに、クロマトグラムにおける同一成分のピークが、ほぼ同一時間だけ遅れるように表れている。
【0065】
これは、データ処理装置1において、連続してクロマトグラフィー分析を行う場合に、前回分析時の残留物がカラム3内に存在することなどに起因している。そこで、本実施形態では、以下のようにして、各クロマトグラムのピークを自動で補正する。
【0066】
(2)ピーク情報の反映処理
表示画面121において、クロマトグラムA〜DにおけるピークP
1〜P
4では、その終了点が、クロマトグラムにおいて傾きが水平になる時点よりも前の時点で検出されている。そのため、ユーザは、自動波形処理が行われたクロマトグラムに対して、手動操作でピークを補正する。このとき、ユーザは、クロマトグラム領域122に表示されているクロマトグラムを2つ選択し、その選択した各クロマトグラムに対して手動操作でピークの補正を行う(
図3のステップS102でYES)。この例では、ユーザは、第1クロマトグラム領域123に表示されるクロマトグラムA、及び、第3クロマトグラム領域125に表示されるクロマトグラムCを、手動操作で補正する。
具体的には、ユーザは、手動操作でクロマトグラムのピークの補正を行う場合には、まず、補正する対象となるクロマトグラムが表示されているクロマトグラム領域122(
図4参照)を選択する。
【0067】
図5は、表示画面121の表示態様の一例であって、クロマトグラムAに対して手動波形処理が行われる際の表示例を示した概略図である。
ここでは、ユーザが、第1クロマトグラム領域123を選択した場合を例に挙げて説明する。
【0068】
ユーザの操作部11の操作によって、第1クロマトグラム領域123が指定されると、表示処理部142は、表示画面121において、第1クロマトグラム領域123のクロマトグラムAを拡大して表示する。この状態において、ユーザは、例えば、ドラッグ操作などにより、終了点Fを選択した後、グラフA上の点Rを選択(指定)する。
【0069】
すると、手動波形処理部144は、ユーザの指定を受け付け、クロマトグラムAにおいて、ピークP
1の終了点を点Fから点Rに変更する処理を行う(
図3のステップS103:手動波形処理ステップ)。また、表示処理部142は、ピークの開始点Eと、変更した後のピークの終了点Rとを結ぶベースラインSを表示する。このとき、変更されたピークP
1の情報(新たなピークの終了点Rの時間の情報)は、新たなピーク情報134として、記憶部13において上書きされる。そして、記憶部13において、この新たなピーク情報134に対応づけられているクロマトグラムデータ132は、解析済みデータとして記憶される(
図3のステップS104)。また、記憶部13では、クロマトグラムデータ132のうち、解析済みデータ以外のデータが、対象データとされる。
【0070】
そして、ユーザによる手動操作が終了すると、表示処理部142は、
図6に示すように、再度、各クロマトグラム領域122を表示画面121に表示させる。このとき、表示処理部142は、変更した後のピークP
1を含むクロマトグラムAを、第1クロマトグラム領域123に表示させる(表示処理ステップ)。
図6は、表示画面121の表示態様の一例であって、解析済みデータ及び対象データを表示する際の表示例を示した概略図である。
【0071】
この例では、ユーザは、上記の第1クロマトグラム領域123に対する手動操作と同様にして、第3クロマトグラム領域125を指定し、クロマトグラムCにおいて、ピークP
3を補正する。これにより、第3クロマトグラム領域125では、クロマトグラムCにおいて、ピークの開始点Kと、新たなピークの終了点Tとを結ぶベースラインUが表示されている。また、ピークに関する情報は、新たなピーク情報134として、記憶部13において上書きされる。そして、記憶部13において、この新たなピーク情報134に対応づけられているクロマトグラムデータ132は、解析済みデータとして記憶される。また、この状態において、
図4に示す場合と同様に、各クロマトグラム領域122では、分析対象であるクロマトグラムのピークのピーク位置が矢印で示される。さらに、各クロマトグラム領域122では、このピークと同一成分のピークであって、分析日時が直前であるクロマトグラムのピーク位置、及び、分析日時が直後であるクロマトグラムのピーク位置のそれぞれが、分析対象のピークに対応付けるように矢印で示されている。
【0072】
このように、表示画面121のクロマトグラム領域122には、ユーザの手動操作によってピークに関する情報が変更されたクロマトグラム(解析済みデータに対応するクロマトグラム)、及び、自動波形処理のみが行われたクロマトグラム(対象データに対応するクロマトグラム)が表示される。具体的には、
図6では、第1クロマトグラム領域123及び第3クロマトグラム領域125に、解析済みデータに対応するクロマトグラムA及びCが表示され、第2クロマトグラム領域124及び第4クロマトグラム領域126に、対象データに対応するクロマトグラムB及びDが表示される。また、これらは、分析日時の順序に従って、上下方向に沿って並ぶように配置されている。
【0073】
この状態から、ユーザは、操作部11を操作して、解析済みデータにおけるピーク情報134の内容を、対象データのピーク情報134に反映させる。具体的には、ユーザは、操作部11を操作して、解析済みデータにおける時間範囲を設定する。この例では、ユーザは、第1クロマトグラム領域123において、時間t1及び時間t2を設定する。そして、時間範囲指定部145は、設定された時間範囲、すなわち、時間t1から時間t2までを指定する(
図3のステップS105でYES:時間範囲指定ステップ)。
【0074】
また、ピーク選択部146は、時間範囲指定部145が指定した時間範囲、及び、各クロマトグラム領域122に表示されるクロマトグラムの分析日時の順序(クロマトグラムの生成日時の順序)に基づいて、対象データにおけるピークを選択する(
図3のステップS106:ピーク選択ステップ)。
【0075】
具体的には、ピーク選択部146は、対象データのクロマトグラムのうち、分析日時がクロマトグラムAの直後であるクロマトグラムBを選択し、そのクロマトグラムBにおいて、クロマトグラムAのピークP
1(手動波形処理部144によって内容が変更されたピークであって、指定された時間範囲に含まれるピーク)に最も近い時間に位置するピークP
2を、ピークP
1と同一成分のピークとして選択する。また、ピーク選択部146は、対象データのクロマトグラムのうち、分析日時がクロマトグラムCの直後であるクロマトグラムDを選択し、そのクロマトグラムDにおいて、クロマトグラムAのピークP
1に最も近い時間に位置するピークP
4を、ピークP
1(手動波形処理部144によって内容が変更されたピークであって、指定された時間範囲に含まれるピーク)と同一成分のピークとして選択する。
そして、時間差算出部147は、2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差を算出する(
図3のステップS107:時間差算出ステップ)。
【0076】
具体的には、時間差算出部147は、第1クロマトグラム領域123に表示されるクロマトグラムAのピーク位置の時間(矢印A
1で示される時間)t
3と、第3クロマトグラム領域125に表示されるクロマトグラムCのピーク位置の時間(矢印C
3で示される時間)t
4との間の溶出時間差Δtを算出する。
【0077】
また、ピーク情報反映部148は、時間差算出部147が算出した溶出時間差Δt、及び、各クロマトグラム領域122に表示されるクロマトグラムの分析日時の順序(クロマトグラムの生成日時の順序)に基づいて、解析済みデータにおけるピーク情報の内容を、ピーク選択部146が選択した対象データのピーク情報に反映させる(
図3のステップS108:ピーク情報反映ステップ)。
図7は、表示画面121の表示態様の一例であって、解析済みデータのピーク情報が反映された対象データを表示する際の表示例を示した概略図である。
【0078】
クロマトグラム領域122では、クロマトグラムの分析日時が後になるたびに、同一成分のピークが同じ時間だけ遅れることから、ピーク情報反映部148は、以下のように、ピーク情報を反映させる。
【0079】
具体的には、ピーク情報反映部148は、第2クロマトグラム領域124において、クロマトグラムAのピークの終了点Rの時間であるt
5に、溶出時間差Δtの半分を加えた時間をt
6とし、クロマトグラムBにおいて、この時間t
6に該当する点を新たな終了点Vとする。そして、表示処理部142は、第2クロマトグラム領域124において、ピークの開始点Hと、新たなピークの終了点Vとを結ぶベースラインWを表示させる。
これは、一方の解析済みデータであるクロマトグラムAの分析日時が1番目であって、かつ、他方の解析済みデータであるクロマトグラムCの分析日時が3番目であること、及び、ピーク選択部146によって選択されたピークP
2を含むクロマトグラムBの分析日時が2番目であることに基づいている。したがって、例えば、一方の解析済みデータの分析日時が1番目であり、他方の解析済みデータの分析日時が2番目である場合には、対象データのピークの終了点に加えられる時間は、溶出時間差Δtの半分ではなく、溶出時間差Δtそのものとなる。
【0080】
また、ピーク情報反映部148は、第4クロマトグラム領域126において、クロマトグラムCのピークの終了点Tの時間であるt
7に、溶出時間差Δtの半分を加えた時間をt
8とし、クロマトグラムDにおいて、この時間t
8に該当する点を新たな終了点Xとする。そして、表示処理部142は、第4クロマトグラム領域126において、ピークの開始点Nと、新たなピークの終了点Xとを結ぶベースラインYを表示させる。
これは、ピーク選択部146によって選択されたピークP
4を含むクロマトグラムDの分析日時が、解析済みデータであるクロマトグラムCの分析日時の直後であることに基づいている。
【0081】
このように、データ処理装置1では、2つの解析済みデータの溶出時間差Δtを算出し、クロマトグラムの分析日時の順序に基づいて、解析済みのデータのピークに関する時間を、溶出時間差Δtに基づく時間だけずらす処理を行うことにより、解析済みデータにおけるピーク情報134の変更内容を、対象データのピーク情報134に反映させる。
【0082】
4.作用効果
(1)本実施形態では、自動波形処理部143によって、各クロマトグラムデータ132で表されるクロマトグラムのピークが自動で検出された後(自動波形処理ステップ)、そのピークに対してユーザが手動操作を行うと、手動波形処理部144は、そのピークの情報(ピーク情報)を変更する(手動波形処理ステップ)。また、変更された情報は、新たなピーク情報134として、記憶部13において上書きされる。そして、ピーク情報反映部148は、その変更されたピーク情報134の内容を、他のクロマトグラムデータ(対象データ)におけるピークのピーク情報134に反映させる(ピーク情報反映ステップ)。
【0083】
そのため、対象データにおけるピークのピーク情報134を、手動操作によらずに自動的に変更できる。
その結果、対象データを補正する作業を効率化できる。
【0084】
また、時間差算出部147は、2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差Δtを算出する(時間差算出ステップ)。ピーク選択部146は、対象データについて、解析済みデータのピーク(クロマトグラムAのピークP
1)と同一成分のピークを、分析日時(分析日時の順序)、すなわち、クロマトグラムデータの生成日時の順序に基づいて選択する(ピーク選択ステップ)。ピーク情報反映部148は、溶出時間差Δt及び分析日時(分析日時の順序)に基づいて、解析済みデータにおけるピークのピーク情報134の変更を、対象データにおいて選択されたピークのピーク情報134に反映させる(ピーク情報反映ステップ)。
【0085】
すなわち、データ処理装置1では、まず、ピーク選択部146によって、対象データについて、解析済みデータのピーク(クロマトグラムAのピークP
1)と同一成分のピークを正確に選択する。そして、データ処理装置1では、2つの解析済みデータにおける同一成分のピーク間の溶出時間差Δt、及び、分析日時(分析日時の順序)に基づくことにより、クロマトグラムごとでのピークの溶出時間のずれを考慮して、解析済みデータにおけるピーク情報134の変更内容(新たなピークの時間に関する情報)を、その選択されたピークのピーク情報134に反映させる。
【0086】
そのため、対象データにおけるピークのピーク情報134の変更(対象データの補正)を精度よく行うことができる。
このように、本実施形態のデータ処理装置1及びデータ処理方法によれば、自動で波形処理されたデータ(ピーク)を補正する作業を効率化でき、かつ、当該補正を精度よく行うことができる。
【0087】
(2)また、本実施形態では、表示処理部142は、ユーザの手動操作によってピークに関する情報が変更されたクロマトグラム(解析済みデータに対応するクロマトグラム)、及び、自動波形処理のみが行われたクロマトグラム(対象データに対応するクロマトグラム)を、表示画面121において、分析日時の順序に従って、上下方向に沿って並ぶように表示させる(表示処理ステップ)。
【0088】
そのため、ユーザは、各クロマトグラムにおける同一成分のピークのピーク位置を、分析日時の順序と照らし合わせて確認できる。
その結果、分析日時の順序と、ピーク位置のずれとの関係を容易に確認できる。
【0089】
(3)また、本実施形態では、表示処理部142は、各クロマトグラム領域122において、分析対象であるクロマトグラムのピークのピーク位置を矢印で示す。さらに、表示処理部142は、各クロマトグラム領域122において、このピークと同一成分のピークであって、分析日時が直前であるクロマトグラムのピーク位置、及び、分析日時が直後であるクロマトグラムのピーク位置のそれぞれを、分析対象のピークに対応付けるように矢印で示す。
【0090】
そのため、ユーザは、同一成分のピークに関して、あるデータにおけるピーク位置を、分析日時が直前及び直後のデータにおけるピーク位置と比較して確認できる。
【0091】
(4)また、本実施形態では、時間範囲指定部145は、解析済みデータにおける時間範囲を指定する。ピーク選択部146は、時間範囲指定部145により指定された時間範囲及び分析日時に基づいて、ピーク情報134が変更されたピークと同一成分のピークを選択する。
【0092】
そのため、時間範囲指定部145によって時間範囲を指定することにより、特定の成分に限定してピーク情報134を変更できる。
そのため、全体の処理時間を短くできる。
【0093】
5.変形例
以上の説明では、データ処理装置1は、ガスクロマトグラフ2とともに用いられるとして説明した。しかし、データ処理装置1は、ガスクロマトグラフ(GC)以外の装置とともに用いることが可能である。例えば、データ処理装置1は、液体クロマトグラフ(LC)などとともに用いることが可能である。
【0094】
また、以上の説明では、ユーザは、手動操作によって、クロマトグラムにおけるピークの終了点を変更するとして説明した。しかし、ユーザは、クロマトグラムにおけるピークに関して、その他の情報(ピーク情報)を変更することも可能である。そして、ピーク情報反映部148は、ユーザによって変更されたその他のピーク情報の内容を、他のクロマトグラムのピーク情報に反映させることも可能である。例えば、ユーザは、手動操作によって、クロマトグラムにおけるピークの開始点、及び、ピーク位置を変更することが可能である。そして、ピーク情報反映部148は、変更されたピークの開始点、及び、ピーク位置の情報を、他のクロマトグラムのピーク情報に反映させることも可能である。
【0095】
また、以上の説明では、対象データは、2つであるとして説明した。しかし、対象データは、3つ以上であってもよい。