(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記搬送経路において前記被処理対象物が投射材によって表面加工されるエリアの両側には、前記被処理対象物の搬送方向に貫通して前記被処理対象物が挿通される少なくとも一つの案内筒部材がそれぞれ配置され、
前記投射室は、前記被処理対象物の搬送方向に沿って複数設定されると共に、互いに隣り合う前記投射室同士が前記案内筒部材によって連通されており、
複数の前記投射室の各々には、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置のうちの二台以下の投射装置が設けられている、請求項1記載のショット処理装置。
前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置によって投射された投射材を前記キャビネットの上方側へ搬送するバケットエレベータを含んで構成され、前記投射材を前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置へ循環させる循環装置と、
前記キャビネットの内部の空気を吸引する吸引手段と、
を有し、
前記バケットエレベータの外壁を構成する側壁部及び上壁部の少なくとも一方には、外気吸入用の吸気口が貫通形成されている、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のショット処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような構成では、ショット処理装置の保守点検時に、搬送経路の下方側に配置された投射装置の点検口を開けると、投射材が漏れ出しやすいといった課題がある。保守点検時の作業環境を向上させる点で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記課題を考慮して、保守点検時の作業環境を向上させることができるショット処理装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係るショット処理装置は、長尺状の被処理対象物が所定の搬送方向へ搬送される搬送経路に対して左右幅方向の一方側の斜め下方側から前記被処理対象物に向けて投射材を投射する第一投射装置と、前記搬送経路に対して左右幅方向の他方側の側方側から前記被処理対象物に向けて投射材を投射する第二投射装置と、前記搬送経路に対して前記左右幅方向の一方側の斜め上方側から前記被処理対象物に向けて投射材を投射する第三投射装置と、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置が設けられ、投射された投射材によって前記被処理対象物の表面加工をなす投射室が内部に形成されると共に、前記第一投射装置を点検するための点検用開口が貫通形成され、前記点検用開口が開閉可能な開閉体によって閉塞されているキャビネットと、を有し、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置は、それぞれ回転可能な羽根車を備えると共に、前記羽根車の回転に伴って前記被処理対象物に向けて投射材を投射可能とされた遠心式投射装置とされ、前記第一投射装置は、前記キャビネットの内側に取り付けられ、前記羽根車の全体が前記投射室の内部に配置されており、前記第二投射装置及び前記第三投射装置は、それぞれ前記キャビネットの外側に取り付けられて内部が前記投射室と連通するケースを備え、前記ケースには、前記投射室に臨む前記羽根車が収容されると共に、前記ケースにおいて前記投射室の側とは反対側に貫通形成された点検口が開閉可能な蓋体によって閉塞されている。
【0007】
上記構成によれば、第一投射装置は、長尺状の被処理対象物が所定の搬送方向へ搬送される搬送経路に対して、左右幅方向の一方側の斜め下方側から被処理対象物に向けて投射材を投射する。また、第二投射装置は、搬送経路に対して左右幅方向の他方側の側方側から被処理対象物に向けて投射材を投射する。第三投射装置は、搬送経路に対して左右幅方向の一方側の斜め上方側から前記被処理対象物に向けて投射材を投射する。
【0008】
第一投射装置、第二投射装置及び第三投射装置は、キャビネットに設けられている。このキャビネットには、投射された投射材によって被処理対象物の表面加工をなす投射室が内部に形成されている。また、第一投射装置、第二投射装置及び第三投射装置は、遠心式投射装置とされており、それぞれ回転可能な羽根車を備えると共に、羽根車の回転に伴って被処理対象物に向けて投射材を投射可能となっている。
【0009】
ここで、第一投射装置は、キャビネットの内側に取り付けられている。そして、羽根車の全体が投射室の内部に配置されている。さらに、キャビネットには、第一投射装置を点検するための点検用開口が貫通形成される。点検用開口が開閉可能な開閉体によって閉塞されている。このため、ショット処理装置の保守点検時に、第一投射装置を点検するために、キャビネットの点検用開口を開けた場合、第一投射装置の羽根車付近に残っていた投射材が落下しても、当該投射材は基本的にはキャビネットの内部において落下するに過ぎない。
【0010】
一方、第二投射装置及び第三投射装置は、それぞれキャビネットの外側に取り付けられて内部が投射室と連通するケースを備える。ケースには、投射室に臨む羽根車が収容されると共に、ケースにおいて投射室の側とは反対側に貫通形成された点検口が開閉可能な蓋体によって閉塞されている。このため、ショット処理装置の保守点検時に、第二投射装置を点検するために、第二投射装置のケースの点検口を開けた場合、点検口は側方側に開口するに過ぎない。このため、このショット処理装置は、点検口が下方側や斜め下方側に開口するような対比構造に比べると、ケース内に残った投射材がショット処理装置の装置外に落下するのを抑えることができる。また、ショット処理装置の保守点検時に、第三投射装置を点検するために、第三投射装置のケースの点検口を開けた場合、点検口は斜め上方側に開口しているので、第三投射装置のケース内に残った投射材は基本的には点検口からショット処理装置の装置外には漏れ出さない。
【0011】
一実施形態において、前記搬送経路において前記被処理対象物が投射材によって表面加工されるエリアの両側には、前記被処理対象物の搬送方向に貫通して前記被処理対象物が挿通される少なくとも一つの案内筒部材がそれぞれ配置され、前記投射室は、前記被処理対象物の搬送方向に沿って複数設定されると共に、互いに隣り合う前記投射室同士が前記案内筒部材によって連通されており、複数の前記投射室の各々には、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置のうちの二台以下の投射装置が設けられていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、搬送経路において被処理対象物が投射材によって表面加工されるエリアの両側には、被処理対象物の搬送方向に貫通して被処理対象物が挿通される少なくとも一つの案内筒部材がそれぞれ配置される。投射室は、被処理対象物の搬送方向に沿って複数設定されると共に、互いに隣り合う投射室同士が案内筒部材によって連通されている。したがって、被処理対象物は各投射室の搬入側及び搬出側の案内筒部材を通るので、各投射室の搬入側及び搬出側では被処理対象物が所望の搬送経路から殆どずれずに搬送されると共に、各投射室で被処理対象物が順次表面加工される。
【0013】
ここで、複数の投射室の各々には、第一投射装置、第二投射装置及び第三投射装置のうちの二台以下の投射装置が設けられてもよい。この場合、各投射室の摩耗対策構造を含む内部の構造を簡素化することができる。また、投射室が一室の場合と比較して、底部に溜る投射材の量の偏りを抑えることができ、投射材の回収がし易い。
【0014】
一実施形態において、互いに隣り合う前記投射室同士を連通させる部分のうちの少なくとも一つには、複数の前記案内筒部材が直列的に設けられていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、被処理対象物は、互いに隣り合う投射室同士を連通させる部分のうちの少なくとも一つにおいて複数の案内筒部材を通る。このため、被処理対象物は、複数の案内筒部材に安定的に支持されるので、第一投射装置、第二投射装置及び第三投射装置が被処理対象物に投射材を投射している状況においても、当該被処理対象物の曲り、揺れ、蛇行を抑制することができる。
【0016】
一実施形態において、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置によって投射された投射材を前記キャビネットの上方側へ搬送するバケットエレベータを含んで構成され、前記投射材を前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置へ循環させる循環装置と、前記キャビネットの内部の空気を吸引する吸引手段と、を有し、前記バケットエレベータの外壁を構成する側壁部及び上壁部の少なくとも一方には、外気吸入用の吸気口が貫通形成されていてもよい。
【0017】
上記構成によれば、バケットエレベータの外壁を構成する側壁部及び上壁部の少なくとも一方には、外気吸入用の吸気口が貫通形成されており、キャビネットの内部の空気が吸引手段によって吸引されると、外気が吸気口から吸入される。このため、投射室に換気専用の吸気口を別途設ける必要がないので、投射室の換気専用の吸気口から投射材が漏れるといったこともなく、作業環境の維持に寄与し得る。また、バケットエレベータの側壁部及び上壁部の少なくとも一方に貫通形成された吸気口から外気が吸入されることで、バケットエレベータの構成部品を冷却することができる。
【0018】
一実施形態において、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置のうちの少なくとも一台の投射装置は、前記羽根車と一体に回転される従動プーリと、駆動モータにより回転される駆動プーリと、前記駆動プーリ及び前記従動プーリに掛け回された無端帯状の駆動ベルトと、前記駆動モータを支持すると共に前記駆動モータを介して前記駆動プーリを支持し、前記駆動プーリと前記従動プーリとの間の距離を調節可能に前記キャビネットに対して回動可能に支持された回動部材と、前記回動部材の回動端部と、前記回動部材の回動端部に対向して前記キャビネット側に設けられた支持部と、を連結すると共に、前記回動部材の回動端部と前記支持部との間の距離を調節可能とされた連結機構と、を備えてもよい。
【0019】
上記構成によれば、回動部材は、駆動モータを支持すると共に駆動モータを介して駆動プーリを支持し、駆動プーリと従動プーリとの間の距離を調節可能にキャビネットに対して回動可能に支持されている。また、連結機構は、回動部材の回動端部と、回動部材の回動端部に対向してキャビネット側に設けられた支持部と、を連結すると共に、回動部材の回動端部と支持部との間の距離を調節可能となっている。これにより、駆動プーリと従動プーリとの間の距離が調節され、駆動ベルトのテンションを調節することができる。したがって、駆動ベルトのテンションを調節する際に、例えば、駆動モータの固定ボルトを弛める必要がないので、保守点検時の作業性を良好にすることができる。
【0020】
一実施形態において、前記第一投射装置、前記第二投射装置及び前記第三投射装置に対しては投射材を供給する導入管がそれぞれ設けられており、三つの前記導入管のうちの少なくとも一つの導入管の下端部側には、当該導入管の下端開口側に向かうに従って内径が小さくなる絞り部が設けられていてもよい。
【0021】
上記構成によれば、三つの導入管のうちの少なくとも一つの導入管の下端部側には、当該導入管の下端開口側に向かうに従って内径が小さくなる絞り部が設けられているので、供給する投射材の流れ方向をより調整しやすく、また当該導入管内の投射材の流れ速度を低下させることも可能になっている。さらに、絞り部が設けられた導入管においては投射装置側に供給する投射材の落下範囲が小さくなるので、投射装置側において投射材を受けるための部品も小さくでき、部品の保守点検性の改善にも寄与している。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本開示のショット処理装置によれば、保守点検時の作業環境を向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の一実施形態に係るショット処理装置としてのショットブラスト装置について
図1〜
図9を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは装置正面視の手前側を示しており、矢印UPは装置上方側を示しており、矢印LHは装置正面視の左側を示している。
【0025】
(実施形態の構成)
図1には、ショットブラスト装置10が正面図で示されている。本実施形態に係るショットブラスト装置10は、金属製で長尺状の線材Wを被処理対象物としている。ショットブラスト装置10は、線材Wの表面に発生した酸化スケールや錆を除去するための装置である。図中において適宜示される矢印Xは、線材Wが搬送される搬送方向(以下、「線材搬送方向」という。)を示している。
【0026】
図1に示されるショットブラスト装置10に対して線材搬送方向(線材走行方向)の上流側(図中左側)には、図示しない線材供給装置が配置されている。線材供給装置は、ショットブラスト装置10への線材Wの供給用とされ、ショットブラスト装置10でブラスト処理される前の線材Wが巻かれた巻出部と、前記巻出部から巻き出された線材Wを概ね直線状に矯正しながらショットブラスト装置10の搬入側に案内するガイドローラと、を含んで構成されている。
【0027】
また、ショットブラスト装置10に対して線材搬送方向の下流側(図中右側)には、図示しない巻取装置が配置されている。前記巻取装置は、駆動モータで回転駆動されるリールを備えており、ショットブラスト装置10でブラスト処理されて搬出された線材Wを前記リールによって所定の速度および所定の張力で巻き取る装置である。なお、線材Wの搬送には、前記巻取装置の他、抽伸機(ダイスにより線材Wを規定の太さに引き抜く装置であって往復運動しながら線材Wを挟んで引っ張る動作を繰り返す線材走行駆動手段を備える装置)等が適用される。
【0028】
図1に示されるように、ショットブラスト装置10は、キャビネット12を備えている。キャビネット12の内部には、線材Wへの投射材の投射によって線材Wの表面加工をなす投射室14、16、18(「加工室」、「研掃室」ともいう。)が形成されている。投射室14、16、18は、線材Wの搬送方向に沿って複数(本実施形態では三つ)設定されている。なお、投射室14と投射室16とは隔壁12Xで仕切られており、投射室16と投射室18とは隔壁12Yで仕切られている。また、キャビネット12には、線材搬送方向の上流側(図中左側)に線材Wの搬入用とされた搬入口20が形成されると共に、線材搬送方向の下流側(図中右側)に線材Wの搬出用とされた搬出口22が形成されている。
【0029】
また、キャビネット12の内部には、搬送経路Aにおいて線材Wが投射材によって表面加工されるエリアの両側に少なくとも一つの案内筒部材30がそれぞれ配置されている。案内筒部材30は、キャビネット12に固定されており、線材Wの搬送方向に貫通する略筒状に形成されて線材Wが挿通される。案内筒部材30に形成されたガイド孔は、線材搬送方向の下流側へ向けて徐々に小径となっており、ガイド孔の軸心は線材Wの搬送経路Aの中心と一致するように配置されている。
【0030】
また、互いに隣り合う投射室14と投射室16とは案内筒部材30によって連通されており、同様に、互いに隣り合う投射室16と投射室18とは案内筒部材30によって連通されている。より具体的には、互いに隣り合う投射室14と投射室16とを連通させる部分には、複数の(一例として二個の)案内筒部材30が直列的に設けられており、同様に、互いに隣り合う投射室16と投射室18とを連通させる部分には、複数の(一例として二個の)案内筒部材30が直列的に設けられている。
【0031】
また、キャビネット12の搬入口20側には、搬入口20よりも線材搬送方向の上流側に第一シール構造部32が設けられ、第一シール構造部32のケース体32Cがキャビネット12に対して取り付けられている。これに対して、キャビネット12の搬出口22側には、搬出口22よりも線材搬送方向の下流側に第二シール構造部34が設けられ、第二シール構造部34のケース体34Cがキャビネット12に対して取り付けられている。第一シール構造部32及び第二シール構造部34の詳細説明は省略するが、いずれもショットブラスト装置10の内部から投射材が漏れてしまうのを防止又は抑制する構造部とされている。
【0032】
図3には、ショットブラスト装置10の一部が平面図で示されている。
図4には、ショットブラスト装置10を装置左側から見た状態の左側面図が示されており、キャビネット12の下部については装置左側の内側が透視された状態で示されている。
図5には、ショットブラスト装置10を装置背面側から見た状態の背面図が示されている。
図6には、ショットブラスト装置10を装置右側から見た状態の右側面図が示され、下部については装置左右方向中間部が示されている。
【0033】
図3に示されるように、キャビネット12には、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28が設けられている。搬送経路上流側に示される投射室14には、第一投射装置24が設けられ、搬送経路中流側に示される投射室16には、第二投射装置26が設けられ、搬送経路下流側に示される投射室18には、第三投射装置28が設けられている。
【0034】
図4に示されるように、第一投射装置24は、回転可能な羽根車24Aを備えると共に、羽根車24Aの回転に伴って線材Wに向けて投射材を投射可能とされた遠心式投射装置とされている。第一投射装置24の羽根車24Aは駆動モータM1の駆動力により回転する。同様に、
図5に示されるように、第二投射装置26は、回転可能な羽根車26Aを備えると共に、羽根車26Aの回転に伴って線材W(
図1参照)に向けて投射材を投射可能とされた遠心式投射装置とされている。第二投射装置26の羽根車26Aは駆動モータM2の駆動力により回転する。同様に、
図6に示されるように、第三投射装置28は、回転可能な羽根車28Aを備えると共に、羽根車28Aの回転に伴って線材Wに向けて投射材を投射可能とされた遠心式投射装置とされている。第三投射装置28の羽根車28Aは駆動モータM3の駆動力により回転する。
【0035】
なお、
図3では、第一投射装置24の羽根車24A(図中では模式化して図示)の回転方向を矢印R1で示し、第二投射装置26の羽根車26A(図中では模式化して図示)の回転方向を矢印R2で示し、第三投射装置28の羽根車28A(図中では模式化して図示)の回転方向を矢印R3で示している。第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28については詳細後述する。
【0036】
図4〜
図6に示されるように、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28の上方側には、それぞれ投射材供給用の導入管36が配置され、導入管36の上端にはショット供給装置38が接続されている。計三個のショット供給装置38は、投射材貯蔵用のショットタンク48の下方側に接続されている。また、これらのショット供給装置38は、図示しないショットゲートを備えており、前記ショットゲートが開閉されることで、導入管36を介して第一投射装置24、第二投射装置26、及び第三投射装置28へ投射材を供給する装置である。前記ショットゲートの開閉は、図示しないECU(制御装置)によって制御されるようになっている。
【0037】
第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28には、ショット供給装置38を介して循環装置40が連結されている。循環装置40は、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28によって投射された投射材を搬送して第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28へ循環させる装置である。
図1に示されるように、循環装置40は、キャビネット12の内部の下部側にホッパ42を備えている。ホッパ42には、第一投射装置24、第二投射装置26(
図3参照)及び第三投射装置28によって投射された投射材が回収されるようになっている。ホッパ42の下端部には、バケットエレベータ44の収集口(図示省略)が臨むように配置されている。換言すれば、ホッパ42は、バケットエレベータ44の下端部側の前記収集口へ投射材を収集することができるように配置されている。
【0038】
図2には、ショットブラスト装置10を装置右側から見た状態の右側面図が示されており、バケットエレベータ44についてはその構成が隠れ線(点線)等で示されている。バケットエレベータ44は、公知構造であるため詳細説明を省略するが、
図2に示されるように、ショットブラスト装置10の上部及び下部に配置されたプーリ44Aに無端ベルト44Bが巻き掛けられると共に、無端ベルト44Bに多数のバケット44C(図中では一部のみを図示)が取り付けられている。またプーリ44Aはモータに接続されて回転駆動可能とされている。これにより、バケットエレベータ44は、ホッパ42で回収した投射材をバケット44Cで掬い上げると共に、プーリ44Aをモータで回転させることによって、バケット44C内の投射材をキャビネット12の上方側へ向けて搬送するようになっている。
【0039】
バケットエレベータ44の外壁は、矩形筒状部分を構成する側壁部44Sと、側壁部44Sの上端同士を繋ぐ上壁部44Uと、を含んで構成されている。本実施形態では、側壁部44Sには、外気吸入用の吸気口44E(図中の破断部分参照)が貫通形成されている。
【0040】
また、
図1及び
図2に示されるように、バケットエレベータ44の上部側の近傍には、セパレータ46が配置されている。セパレータ46は、循環装置40の循環経路に設けられ、投射材以外の異物及び投射材が割れた物を分離除去するようになっており、再利用可能な投射材を落とし込む下端部の下方側に、投射材貯蔵用のショットタンク48が配置されている。セパレータ46としては、本実施形態では一例として風力選別機構が適用されている。風力選別機構は、再利用可能な投射材とその他の粉粒状物とを含む混合物を自由落下させて前記混合物に対して気流を当てることによって、気流に乗せられて所定の基準位置を越える物と、前記基準位置を越えずに落下する物と、に選別する。
【0041】
図2に示されるセパレータ46には、ダクト52を含む配管部を介して吸引手段としての集塵機50が接続されている。
図2では、集塵機50をブロック化して図示している。集塵機50は、キャビネット12にもダクト53を含む配管部を介して接続されており、キャビネット12の内部及びセパレータ46の内部の粉塵を含む空気を吸引して収集するようになっている。集塵機50は、特開第2002−239627号公報に開示されているようなバグフィルタ式の集塵機を用いてもよい。なお、前記粉塵は、キャビネット12及びセパレータ46で発生する粉塵である。
【0042】
次に、
図4〜
図6等に示される第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28について説明する。
【0043】
図7の(A)には、第一投射装置24の配置状態が拡大された縦断面図(
図4の一部を拡大した拡大断面図)で示されている。
図7の(A)に示されるように、第一投射装置24は、線材Wが所定の搬送方向(
図7の(A)では紙面手前側から紙面奥側)へ搬送される搬送経路Aに対して左右幅方向の一方側(本実施形態では図中右側(装置手前側))の斜め下方側から線材Wに向けて投射材を投射する。第一投射装置24においてキャビネット12の内側に配置された部分の姿勢は、後述する導入筒24Bを除く部分の軸方向が装置手前側へ向けて装置上方側に傾斜し、キャビネット12の底面に対する前記軸方向の傾斜角度が30°に設定されている。また、第一投射装置24の羽根車24Aの姿勢は、装置奥側へ向けて装置上方側に傾斜し、キャビネット12の底面に対する傾斜角度が60°に設定されている。
【0044】
また、
図7の(A)には、線材Wの搬送方向(
図7の(A)では紙面手前側から紙面奥側)に見た場合の第二投射装置26の羽根車26Aの位置及び第三投射装置28の羽根車28Aの位置がそれぞれ想像線(二点鎖線)で模式的に示されている。
図7の(A)に示されるように、第二投射装置26は、線材Wが搬送される搬送経路Aに対して左右幅方向の他方側(本実施形態では図中左側(装置奥側))の側方側から線材Wに向けて投射材を投射し、第三投射装置28は、線材Wが搬送される搬送経路Aに対して左右幅方向の一方側(本実施形態では図中右側(装置手前側))の斜め上方側から線材Wに向けて投射材を投射する。第二投射装置26の羽根車26Aの姿勢は、キャビネット12の底面に対して平行となる姿勢になっている。第三投射装置28の羽根車28Aの姿勢は、装置手前側へ向けて装置上方側に傾斜し、キャビネット12の底面に対する傾斜角度が60°に設定されている。
【0045】
三台の投射装置のうち第一投射装置24は、キャビネット12の内側に取付部材54を介して取り付けられ、羽根車24Aの全体が投射室14の内部に配置されている。一方、キャビネット12には、
図1に示されるように、第一投射装置24を点検するための点検用開口12Aが貫通形成されており、この点検用開口12Aは、開閉可能な開閉体としての点検扉56によって閉塞されている。
【0046】
ここで、
図7の(A)に示される第一投射装置24の基本構成について概説する。なお、
図7の(B)は
図7の(A)を矢印7B方向から見た状態の図を示し、
図7の(C)は
図7の(A)を矢印7C方向から見た状態を一部断面で示す図であるので、併せて参照されたい。
図7の(A)に示されるように、第一投射装置24は、導入管36から供給される投射材が導入される導入筒24Bを備えると共に、導入筒24Bに導入された投射材が供給されるコントロールケージ24Cを備えている。コントロールケージ24Cは、円筒状に形成されており、その外周壁には投射材の排出部として開口窓が貫通形成されている。コントロールケージ24Cの外周側には、前述した羽根車24Aが配置されている。羽根車24Aは、コントロールケージ24Cの周方向に回転する複数のブレード24A1を備えている。羽根車24Aは、駆動モータM1(
図4参照)の作動によって駆動力伝達機構58を介して回転力を得てコントロールケージ24Cの周方向に回転するようになっている。
【0047】
なお、
図5に示される第二投射装置26及び
図6に示される第三投射装置28は、
図7の(A)に示される第一投射装置24と基本構成は実質的には同様とされるが、後述するケース26D、28D(
図5及び
図6参照)を備える点で
図7の(A)に示される第一投射装置24と異なる。また、例えば、
図7の(A)に示される第一投射装置24は、導入筒24Bの軸線が湾曲状に曲げられているが、
図5に示される第二投射装置26は、導入筒26Bの軸線が直線状とされており、この点も異なる。
【0048】
図7の(A)に示されるように、第一投射装置24に対して投射材を供給する導入管36の下端部側は、投射室14の内部に配置されている。導入管36の下部は、一例として、耐摩耗性が高い鋼材で構成されている。なお、導入管36の下部は熱処理により耐摩耗性が高められていてもよい。導入管36の下端部側には、導入管36の下端開口側に向かうに従って内径が小さくなる絞り部60が設けられている。この絞り部60は、本実施形態では、導入管36の下端部の内面側に固着された絞り管62によって形成されている。
【0049】
図3に示されるように、第二投射装置26は、キャビネット12の装置奥側の縦壁部12Bの外側に取り付けられたケース26Dを備えている。ケース26Dは、その外形が概ね台形錐状に形成され、ケース26Dの内部は、投射室16と連通している。ケース26Dには、投射室16に臨む羽根車26Aが収容されている。詳細図示を省略するが、ケース26Dにおいて投射室16の側とは反対側の縦壁部分には矩形状の点検口26Yが貫通形成されている。なお、この点検口26Yの形状は、後述する第三投射装置28のケース28Dの点検口28Yと同様であるのでそちらも参照されたい。点検口26Yは、開閉可能な蓋体26Xによって閉塞されている。
【0050】
また、第三投射装置28は、キャビネット12の上壁部12Cの上側(外側)に取り付けられたケース28Dを備えている。なお、
図3では、第三投射装置28のケース28D等の外形を簡略化して示している。第三投射装置28のケース28D等の外形のより正確な形状は
図9に示されている。よって、ケース28D等のより正確な形状については
図9を適宜参照されたい。
図9の(A)には、第三投射装置28のケース28D等を装置背面側斜め上方側から見た状態の図が示され、
図9の(B)には
図9の(A)の矢印9B方向から見た状態の図が示されている。なお、図中では導入筒を符号28Bとしている。また、
図3に示される第二投射装置26のケース26Dの形状も、より正確には、
図9に示される第三投射装置28のケース28Dの形状と同様とされている。
【0051】
図3に示されるように、第三投射装置28のケース28Dは、その外形が概ね台形錐状に形成され、ケース28Dの内部は、投射室18と連通している。ケース28Dには、投射室18に臨む羽根車28Aが収容されている。ケース28Dにおいて投射室18の側とは反対側の頂壁部分には矩形状の点検口28Yが貫通形成されている。この点検口28Yは、開閉可能な蓋体28X(
図9参照)によって閉塞されている。
【0052】
図8の(A)には、第三投射装置28を装置正面側斜め上方側から見た状態の図が一部破断して示されており、
図8の(B)には第三投射装置28を装置正面側斜め下方側から見た状態の図が示されている。
【0053】
これらの図に示されるように、第三投射装置28は、駆動力伝達機構64として、従動プーリ66、駆動プーリ68及び駆動ベルト70を含んで構成されている。従動プーリ66は、
図8の(B)に示されるキャビネット12に対して回転可能に支持されると共に羽根車28A(図中では模式化して図示)と一体に回転されるようになっている。また、駆動プーリ68は、
図8の(A)に示される駆動モータM3により回転されるようになっている。従動プーリ66の中心軸と駆動プーリ68の中心軸とは平行に設定されている。
図8の(B)に示されるように、駆動ベルト70は、無端帯状とされ、駆動プーリ68及び従動プーリ66に掛け回されている。なお、
図8の(B)では図を見易くするために図示を省略しているが、従動プーリ66、駆動プーリ68及び駆動ベルト70は、カバー65(
図1参照)の内側に配置されている。また、
図8の(A)の方向視で、駆動ベルト70は、羽根車28Aの中心軸に対して直交する方向に沿って配置されている。
【0054】
一方、
図8の(B)に示されるように、第三投射装置28は、駆動モータM3を支持する回動部材72(ベース部材としても把握される要素である)を備えている。この回動部材72には、駆動モータM3の側部側が取付部材73を介してボルト71等で固定されている。詳細図示を省略するが、駆動モータM3は、位置決め用のピンを用いて回動部材72に対して所定の位置決めがされている。駆動モータM3の中心軸は、羽根車28Aの中心軸と平行に設定されている。回動部材72は、駆動モータM3を介して駆動プーリ68を支持し、駆動プーリ68と従動プーリ66との間の距離を調節可能にキャビネット12に対して回動可能に支持されている。
【0055】
詳細に説明すると、キャビネット12の上壁部12Cには、第三投射装置28のケース28Dの装置左側に段差部12C1が形成されている。この段差部12C1には、上下方向に延びるプレート74の下部、及び段差部12C1から離間する側に延出するブラケット76が共締めされて固定されている。ブラケット76の先端部側には、駆動プーリ68の軸と平行に配置された軸部材78が設けられており、回動部材72の基端部は、この軸部材78の軸周りに回動可能に取り付けられている。
【0056】
また、回動部材72の回動端部72Aと、プレート74の上端部を構成する支持部74Aとは、連結機構80によって連結されている。なお、プレート74の支持部74Aは、回動部材72の回動端部72Aに対向してキャビネット12側に設けられた支持部とされている。連結機構80は、アイボルト状の円環状頭部82A(右側の部分拡大図参照)を備えたボルト82(目玉付ボルトともいう)と、ボルト82の軸部82Bが螺合されるナット84(左側の部分拡大図参照)と、ボルト82の円環状頭部82Aに挿入されるピン86(右側の部分拡大図参照)と、を含んで構成されている。一方、プレート74の上端部には、上方側に開口するU字状の切欠部74Kが形成され、回動部材72の回動端部72Aには、上方側に開口するU字状の切欠部72Kが形成されると共にピン86が固定されるピン固定部72Bが形成されている。なお、上方側に開口するU字状の切欠部74K、72Kに代えて、上下方向を長手方向とする長穴が形成されてもよい。
【0057】
プレート74の上端部の表裏両面側には、切欠部74Kの周囲部の一部にナット84が配設されている。そして、回動部材72の回動端部72Aの切欠部72Kを挿通されたボルト82の軸部82Bがナット84に螺合されると共に、ボルト82の円環状頭部82Aにピン86が挿入されてピン固定部72Bに固定されている。なお、ボルト82の軸方向はプレート74に対して垂直な方向とされている。
【0058】
以上により、連結機構80は、ボルト82の軸部82Bとナット84との相対位置を変えることで、回動部材72の回動端部72Aとプレート74の支持部74Aとの間の距離を調節可能とされている。なお、詳細説明を省略するが、本実施形態では一例として、
図4に示される第一投射装置24及び
図5に示される第二投射装置26も、
図8に示される第三投射装置28の構成(従動プーリ66、駆動プーリ68、駆動ベルト70、回動部材72及び連結機構80を含む構成)に相当する構成を備えている。
【0059】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0060】
本実施形態では、
図7の(A)に示されるように、第一投射装置24は、長尺状の線材Wが所定の搬送方向へ搬送される搬送経路Aに対して左右幅方向の一方側(図中右側)の斜め下方側から線材Wに向けて投射材を投射する。また、第二投射装置26は、搬送経路Aに対して左右幅方向の他方側(図中左側)の側方側から線材Wに向けて投射材を投射し、第三投射装置28は、搬送経路Aに対して左右幅方向の一方側(図中右側)の斜め上方側から線材Wに向けて投射材を投射する。
【0061】
図3に示されるように、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28は、キャビネット12に設けられており、このキャビネット12には、投射された投射材によって線材Wの表面加工をなす投射室14、16、18が内部に形成されている。また、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28は、遠心式投射装置とされており、それぞれ回転可能な羽根車24A、26A、28Aを備えると共に、羽根車24A、26A、28Aの回転に伴って線材W(
図1参照)に向けて投射材を投射可能となっている。
【0062】
ここで、
図7の(A)に示されるように、第一投射装置24は、キャビネット12の内側に取り付けられ、羽根車24Aの全体が投射室14の内部に配置されている。また、
図1に示されるように、キャビネット12には、第一投射装置24を点検するための点検用開口12Aが貫通形成され、点検用開口12Aが開閉可能な点検扉56によって閉塞されている。このため、ショットブラスト装置10の保守点検時に、第一投射装置24を点検するために、キャビネット12の点検用開口12Aを開けた場合、
図7の(A)に示される第一投射装置24の羽根車24A付近に残っていた投射材が落下しても、当該投射材は基本的にはキャビネット12の内部において落下するに過ぎない。
【0063】
一方、
図3に示されるように、第二投射装置26及び第三投射装置28は、それぞれキャビネット12の外側に取り付けられて内部が投射室16、18と連通するケース26D、28Dを備え、ケース26D、28Dには、投射室16、18に臨む羽根車26A、28Aが収容されると共に、ケース26D、28Dにおいて投射室16、18の側とは反対側に貫通形成された点検口26Y、28Yが開閉可能な蓋体26X、28Xによって閉塞されている。このため、ショットブラスト装置10の保守点検時に、第二投射装置26を点検するために、第二投射装置26のケース26Dの点検口26Yを開けた場合、点検口26Yは側方側に開口するに過ぎないので、点検口が下方側や斜め下方側に開口するような対比構造に比べると、ケース26D内に残った投射材がショットブラスト装置10の装置外に落下するのを抑えることができる。また、ショットブラスト装置10の保守点検時に、第三投射装置28を点検するために、第三投射装置28のケース28Dの点検口28Yを開けた場合、点検口28Yは斜め上方側に開口しているので、第三投射装置28のケース28D内に残った投射材は基本的には点検口28Yからショットブラスト装置10の装置外には漏れ出さない。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のショットブラスト装置10によれば、保守点検時の作業環境を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態では、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28の組み付けがし易く、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28の部品が交換し易い。補足説明すると、本実施形態では、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28は、天井クレーンで吊り下げた状態でショットブラスト装置10のキャビネット12に近付けて降ろすことにより容易に組付けられる。これに対して、例えば、従来技術のような点検口が下方側や斜め下方側に開口する対比構造では、三つの取付面のうち二面が斜め下向き面となっているので、投射装置の取り付け性が良くない。
【0066】
また、本実施形態では、第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28が組み付け易いため、
図7の(A)に示される線材Wの搬送経路Aの中心と第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28の各投射方向の中心とを合わせるうえでも、前記対比構造よりも有利となっている。そして、線材Wの搬送経路Aの中心と第一投射装置24、第二投射装置26及び第三投射装置28の各投射方向の中心とが良好に合わせられることで、研掃範囲のずれが抑えられるので、良好な研掃能力を発揮することができる。
【0067】
さらに、本実施形態では、第一投射装置24においてキャビネット12の内側に配置された部分の姿勢がキャビネット12の底面に対して30°傾斜した姿勢になっているので、前記対比構造(キャビネットの底面に対して60°傾斜した姿勢で投射装置が斜め下向き面に取り付けられた構造)に比べて、キャビネット12の底面から搬送経路Aの中心(パスライン)までの高さ、ひいては装置全体の高さを抑えることができる。
【0068】
補足説明すると、近年、被処理対象物の線材Wには、小径のものや抗張力の高いもの(例えば特殊鋼、合金鋼等)が適用されることがあるが、このような線材Wの酸化スケール等を除去するためには、ショットブラスト装置は高出力の投射装置を付設する必要がある。これに伴い、ショットブラスト装置が大型化することも多い。これに対して、本実施形態のショットブラスト装置10では、装置全体の高さを抑えることができる。
【0069】
また、詳細図示を省略するが、
図7の(A)に示される第一投射装置24の羽根車24Aの周辺には投射室14専用のライニング部品があるため、第一投射装置24専用の保護ライナなどは簡易なものとすることが可能である。したがって、この点において、製造コスト、部品点数の減少に繋がっている。
【0070】
また、本実施形態では、
図1に示されるように、搬送経路Aにおいて線材Wが投射材によって表面加工されるエリアの両側には、線材Wの搬送方向に貫通して線材Wが挿通される少なくとも一つの案内筒部材30がそれぞれ配置されている。そして、投射室14、16、18は、線材Wの搬送方向に沿って複数設定されると共に、互いに隣り合う投射室14と投射室16とが案内筒部材30によって連通され、互いに隣り合う投射室16と投射室18とが案内筒部材30によって連通されている。したがって、線材Wは各投射室14、16、18の搬入側及び搬出側の案内筒部材30を通るので、各投射室14、16、18の搬入側及び搬出側では線材Wが所望の搬送経路Aから殆どずれずに搬送されると共に、各投射室14、16、18で線材Wが順次表面加工される。
【0071】
ここで、投射室14には第一投射装置24が設けられ、投射室16には第二投射装置26(
図3参照)が設けられ、投射室18には第三投射装置28が設けられている。このため、各投射室14、16、18の摩耗対策構造を含む内部の構造を簡素化することができる。また、例えば、投射室が一室の場合と比較して、投射室14、16、18の底部に溜る投射材の量の偏りを抑えることができ、投射材の回収がし易い。
【0072】
また、本実施形態では、互いに隣り合う投射室14と投射室16とを連通させる部分及び互いに隣り合う投射室16と投射室18とを連通させる部分には、複数の案内筒部材30が直列的に設けられている。したがって、線材Wは、投射室14と投射室16とを連通させる部分及び投射室16と投射室18とを連通させる部分において複数の案内筒部材30を通る。このため、線材Wは、複数の案内筒部材30に安定的に支持されるので、第一投射装置24、第二投射装置26(
図3参照)及び第三投射装置28が線材Wに投射材を投射している状況においても当該線材Wの曲り、揺れ、蛇行を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、
図2に示されるように、バケットエレベータ44の外壁の一部を構成する側壁部44Sには、外気吸入用の吸気口44Eが貫通形成されており、キャビネット12の内部の空気が集塵機50によって吸引されると、外気が吸気口44Eから吸入される。このため、
図1に示される投射室14、16、18に換気専用の吸気口を別途設ける必要がないので、投射室14、16、18の換気専用の吸気口から投射材が漏れるといったこともなく、作業環境の維持に寄与し得る。また、
図2に示されるバケットエレベータ44の側壁部44Sに貫通形成された吸気口44Eから外気が吸入されることで、バケットエレベータ44の無端ベルト44B等(構成部品)を冷却することができる。
【0074】
また、本実施形態では、
図8に示される第三投射装置28等においては、回動部材72は、駆動モータM3を支持すると共に駆動モータM3を介して駆動プーリ68を支持し、駆動プーリ68と従動プーリ66との間の距離を調節可能にキャビネット12に対して回動可能に支持されている。また、連結機構80は、回動部材72の回動端部72Aと、回動部材72の回動端部72Aに対向してキャビネット12側に設けられた支持部74Aと、を連結すると共に、回動部材72の回動端部72Aと支持部74Aとの間の距離を調節可能となっている。これにより、駆動プーリ68と従動プーリ66との間の距離が調節され、駆動ベルト70のテンションを調節することができる。したがって、駆動ベルト70のテンションを調節する際に、例えば、駆動モータの固定用のボルトを弛めて投射装置の軸心との平行度を合わせるような必要がないので、保守点検時の作業性を良好にすることができる。
【0075】
また、本実施形態では、
図7の(A)に示されるように、第一投射装置24に対して投射材を供給する導入管36の下端部側が投射室14の内部に配置されている。この導入管36の下端部側には、導入管36の下端開口側に向かうに従って内径が小さくなる絞り部60が設けられている。したがって、供給する投射材の流れ方向をより調整しやすく、また導入管36内の投射材の流れ速度を低下させることも可能になっている。さらに、絞り部60が設けられた導入管36においては第一投射装置24側に供給する投射材の落下範囲が小さくなるので、投射室14という限られた空間に配置される第一投射装置24の導入筒24Bを小さくすることも可能であり、部品の保守点検性の改善にも寄与している。
【0076】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、「左右幅方向の一方側」が
図7の(A)の断面視で右側とされると共に「左右幅方向の他方側」が
図7の(A)の断面視で左側とされているが、上記実施形態の変形例として、「左右幅方向の一方側」が
図7の(A)に相当する断面視で左側とされると共に「左右幅方向の他方側」が
図7の(A)に相当する断面視で右側とされるような構成も採り得る。なお、「左右幅方向」は、
図7の(A)のように線材W(被処理対象物)の搬送方向に見た場合にはその左右方向に相当する。
【0077】
また、上記実施形態の変形例として、被処理対象物の搬送方向に沿って投射室が二つ設定されると共に、第一の投射室には、第一投射装置(24)、第二投射装置(26)及び第三投射装置(28)のうちの二台が設定され、第二の投射室には、第一投射装置(24)、第二投射装置(26)及び第三投射装置(28)のうちの残りの一台が設定されてもよい。つまり、複数の投射室の各々には、第一投射装置(24)、第二投射装置(26)及び第三投射装置(28)のうちの二台以下の投射装置が設けられていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態の変形例として、第一投射装置(24)、第二投射装置(26)及び第三投射装置(28)のうちのいずれか一台又は二台が、
図8に示される軸部材78、回動部材72及び連結機構80に相当する構成を備えずに、例えば駆動モータ(M1、M2、M3)が回動不能にキャビネット(12)側に固定されるような構成も採り得る。さらに、他の変形例として、第一投射装置(24)、第二投射装置(26)及び第三投射装置(28)のいずれもが、
図8に示される軸部材78、回動部材72及び連結機構80に相当する構成を備えずに、例えば駆動モータ(M1、M2、M3)が回動不能にキャビネット(12)側に固定されるような構成も採り得る。
【0079】
また、上記実施形態の変形例として、
図1に示される互いに隣り合う投射室14と投射室16とを連通させる部分及び互いに隣り合う投射室16と投射室18とを連通させる部分の一方にのみ、案内筒部材(30)が直列的に設けられる構成も採り得る。また、上記実施形態の他の変形例として、
図1に示される互いに隣り合う投射室14と投射室16とを連通させる部分及び互いに隣り合う投射室16と投射室18とを連通させる部分のいずれについても一つの案内筒部材(30)が設けられる構成も採り得る。さらに、上記実施形態の他の変形例として、互いに隣り合う投射室同士が案内筒部材によって連通されたものでない構成も採り得る。
【0080】
また、上記実施形態の変形例として、上記実施形態の構成に代えて又は上記実施形態の構成に加えて、バケットエレベータ(44)に貫通形成される外気吸入用の吸気口は、バケットエレベータ(44)の上壁部(44U)に形成されてもよい。また、上記実施形態の他の変形例として、外気吸入用の吸気口がバケットエレベータ(44)でなくキャビネット(12)に貫通形成される構成も採り得る。
【0081】
また、上記実施形態の変形例として、第二投射装置(26)に対して投射材を供給する導入管(36)の下端部側及び第三投射装置(28)に対して投射材を供給する導入管(36)の下端部側の少なくとも一方に、当該少なくとも一方の導入管(36)の下端開口側に向かうに従って内径が小さくなる絞り部が設けられてもよい。また、上記実施形態の変形例として、第一投射装置(24)に対して投射材を供給する導入管(36)の下端部側に絞り部(60)が設けられない構成も採り得る。また、上記実施形態の変形例として、循環装置40やセパレータ46の近傍には、循環装置40やセパレータ46を保守点検するために作業員が立ち入ることが可能なメンテナンスステーションが配置されてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、ショット処理装置がショットブラスト装置10とされているが、ショット処理装置は、ショットピーニング装置であってもよい。
【0083】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0084】
以上、本開示の一例について説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0085】
なお、本開示の実施形態ではない参考例として、被処理対象物が長尺状の部材とされないショット処理装置において、キャビネット(12)の内部の空気を吸引する吸引手段と、側壁部(44S)及び上壁部(44U)の少なくとも一方に外気吸入用の吸気口(44E)が貫通形成されているバケットエレベータ(44)と、を備えるような構成も採り得る。