(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子と、前記第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子と、前記共有インダクタンス素子とがT型回路を構成している、請求項1に記載の無線通信デバイス。
前記T型回路を構成する3つのインダクタンス素子において、前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子のインダクタンスが、前記共有インダクタンス素子のインダクタンスに比べて大きい、請求項2に記載の無線通信デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の無線通信デバイスは、RFICチップを含む給電回路と、前記給電回路に接続されたアンテナ素子と、を有し、前記給電回路が、前記RFICチップと複数のインダクタンス素子とを含む第1の共振ループと、キャパシタンス素子と複数のインダクタンス素子とを含む第2の共振ループとを含み、前記第1の共振ループにおける複数のインダクタンス素子と前記第2の共振ループにおける複数のインダクタンス素子とにおいて、前記第1の共振ループと前記第2の共振ループとに共有される共有インダクタンス素子が含まれ、前記第2の共振ループが、前記アンテナ素子に接続するためのアンテナポートを含んでいる。
【0010】
この態様によれば、無線通信デバイスは、アンテナ素子の設計の自由度を低下させることなく、複数の通信周波数で無線通信することができる。
【0011】
前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子と、前記第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子と、前記共有インダクタンス素子とがT型回路を構成してもよい。これにより、3つのインダクタンス素子が互いにインピーダンス変換し合い、第1および第2の共振ループそれぞれに、大きく損失することなく、また一方に大きく偏ることなく電流が流れる。
【0012】
例えば、前記T型回路を構成する3つのインダクタンス素子において、前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子のインダクタンスが、前記共有インダクタンス素子のインダクタンスに比べて大きい。この場合、第1の共振ループは、第2の共振ループの共振周波数にほぼ影響されずに、所定の第1の共振周波数が得られる。この第1の共振ループにRFICチップが含まれているので、RFICチップは所定の周波数での動作が可能になる。また、第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子のインダクタンス(値)が共有インダクタンス素子のインダクタンスに比べて大きい場合、第2の共振ループは、第1の共振ループの共振周波数にほぼ影響されずに、所定の第2の共振周波数が得られる。この第2の共振ループにアンテナ素子を接続する構造にすることにより、アンテナ素子の電気長に影響されずに2つの共振が得られるので、例えばアンテナ素子の電気長が小さくても、電流経路として2つの第1および第2の共振ループが形成される。その結果、無線通信デバイスは2つの共振周波数を備え、それにより複数の通信周波数で無線通信が可能になる。
【0013】
例えば、前記給電回路が、前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記RFICチップの第1の入出力端子に対して一端が接続された第1のインダクタンス素子と、前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記RFICチップの第2の入出力端子に対して一端が接続された第2のインダクタンス素子と、前記共有インダクタンス素子であって、前記第1のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続された第3のインダクタンス素子と、前記共有インダクタンス素子であって、前記第2のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続され、前記第3のインダクタンス素子の他端に対して他端が接続された第4のインダクタンス素子と、前記第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記第1のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続された第5のインダクタンス素子と、前記第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記第2のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続された第6のインダクタンス素子と、前記第5のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続され、前記キャパシタンス素子の一端に対して他端が接続された第7のインダクタンス素子と、前記第6のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続され、前記キャパシタンス素子の他端に対して他端が接続された第8のインダクタンス素子と、を含み、前記第1の共振ループが、前記第1〜第4のインダクタンス素子と、前記RFICチップとを含み、前記第2の共振ループが、前記第3〜第8のインダクタンス素子と、前記キャパシタンス素子とを含み、前記アンテナポートが、前記第5のインダクタンス素子と前記第7のインダクタンス素子との間、および前記第6のインダクタンス素子と前記第8のインダクタンス素子との間に設けられている。
【0014】
例えば、前記無線通信デバイスは、前記RFICチップが実装され、前記第1〜第4のインダクタンス素子が導体パターンとして設けられている多層基板であるRFICモジュールと、前記アンテナ素子と、前記第5〜第8のインダクタンス素子と、前記キャパシタンス素子とが導体パターンとして設けられ、前記RFICモジュールが実装されるベース基材とを有する。
【0015】
例えば、前記無線通信デバイスは、前記RFICチップが実装され、前記第1〜8のインダクタンス素子と、前記キャパシタンス素子とが導体パターンとして設けられている多層基板であるRFICモジュールと、前記アンテナ素子が導体パターンとして設けられ、前記RFICモジュールが実装されるベース基材とを有する。
【0016】
例えば、前記給電回路が、前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記RFICチップの第1の入出力端子に対して一端が接続された第1のインダクタンス素子と、前記第1の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記RFICチップの第2の入出力端子に対して一端が接続された第2のインダクタンス素子と、前記共有インダクタンス素子であって、前記第1のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続され、前記キャパシタンス素子の一端に対して他端が接続された第3のインダクタンス素子と、前記共有インダクタンス素子であって、前記第2のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続され、前記キャパシタンス素子の他端に対して他端が接続された第4のインダクタンス素子と、前記第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記第1のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続された第5のインダクタンス素子と、前記第2の共振ループのみに含まれるインダクタンス素子であって、前記第2のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続された第6のインダクタンス素子と、前記第5のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続された第7のインダクタンス素子と、前記第6のインダクタンス素子の他端に対して一端が接続され、前記第7のインダクタンス素子の他端に対して他端が接続された第8のインダクタンス素子と、を含み、前記第1の共振ループが、前記第1〜第4のインダクタンス素子と、前記RFICチップと、前記キャパシタンス素子とを含み、前記第2の共振ループが、前記第3〜第8のインダクタンス素子と、前記キャパシタンス素子とを含み、前記アンテナポートが、前記第5のインダクタンス素子と前記第7のインダクタンス素子との間、および前記第6のインダクタンス素子と前記第8のインダクタンス素子との間に設けられている。
【0017】
例えば、前記無線通信デバイスは、前記RFICチップが実装され、前記第1〜第4のインダクタンス素子と、前記キャパシタンス素子とが導体パターンとして設けられている多層基板であるRFICモジュールと、前記アンテナ素子と、前記第5〜第8のインダクタンス素子とが導体パターンとして設けられ、前記RFICモジュールが実装されるベース基材とを有する。
【0018】
例えば、前記無線通信デバイスは、前記RFICチップが実装され、前記第1〜8のインダクタンス素子と、前記キャパシタンス素子とが導体パターンとして設けられている多層基板であるRFICモジュールと、前記アンテナ素子が導体パターンとして設けられ、前記RFICモジュールが実装されるベース基材とを有する。
【0019】
前記アンテナ素子の電気長が通信電波の波長の二分の一未満であってもよい。これにより、無線通信デバイスを小型化することができる。
【0020】
前記アンテナ素子が、ダイポールアンテナを構成してもよい。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施の形態に係る無線通信デバイスの斜視図であり、
図2は上面図であり、
図3は下面図である。さらに、
図4は、無線通信デバイスの全体構成および等価回路を示している。なお、図中のX−Y−Z座標系は、Z軸が厚さ方向を示している。また、このX−Y−Z座標系は、発明の理解を容易にするためのものであって、発明を限定するものではない。
【0023】
図1に示すように、無線通信デバイス10は、UHF帯の通信周波数で無線通信するように構成されているRFID(Radio-Frequency IDentification)タグである。また、詳細は後述するが、無線通信デバイス10は、実用的な通信距離で通信できる複数の通信周波数で無線通信可能に構成されている。なお、ここで言う「複数の通信周波数で無線通信可能」は、ある通信周波数近傍の周波数と、ある通信周波数と異なる別の通信周波数近傍の周波数とで無線通信可能が可能であることを意味する。
【0024】
無線通信デバイス10は、RFIC(Radio-Frequency Integrated Circuit)モジュール100と、RFICモジュール100が実装されるベース基材12とを有する。
【0025】
まず、RFICモジュール100の詳細について説明する。
図5は、RFICモジュールの分解斜視図である。
【0026】
図5に示すように、本実施の形態の場合、RFICモジュール100は、三層からなる多層基板で構成されている。具体的には、RFICモジュール100は、ポリイミドや液晶ポリマなどの樹脂材料から作製されて可撓性を備える絶縁シート102A、102B、および102Cを積層して構成されている。なお、
図5は、
図1に示すRFICモジュール100を裏返して分解した状態を示している。
【0027】
図5に示すように、RFICモジュール100は、RFICチップ104と、複数のインダクタンス素子106A、106B、106C、および106Dと、外部接続端子108、110とを有する。本実施の形態の場合、インダクタンス素子106A〜106Dと外部接続端子108、110は、絶縁シート102A〜102C上に形成され、銅などの導電材料から作製された導体パターンから構成されている。
【0028】
図5に示すように、RFICチップ104は、絶縁シート102C上の長手方向(Y軸方向)の中央部に実装されている。RFICチップ104は、シリコン等の半導体を素材とする半導体基板に各種の素子を内蔵した構造を有する。また、RFICチップ104は、第1の入出力端子104aと第2の入出力端子104bとを備える。さらに、
図4に示すように、RFICチップ104は、内部容量(キャパシタンス:RFICチップ自身が持つ自己容量)C1を備える。
【0029】
図5に示すように、インダクタンス素子(第1のインダクタンス素子)106Aは、絶縁シート102Cの長手方向(Y軸方向)の一方側で、絶縁シート102C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、
図4に示すように、インダクタンス素子106Aは、インダクタンスL1を備える。インダクタンス素子106Aの一端(コイル外側の端)には、RFICチップ104の第1の入出力端子104aに接続されるランド106Aaが設けられている。なお、他端(コイル中心側の端)にも、ランド106Abが設けられている。
【0030】
図5に示すように、インダクタンス素子(第2のインダクタンス素子)106Bは、絶縁シート102Cの長手方向(Y軸方向)の他方側で、絶縁シート102C上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、
図4に示すように、インダクタンス素子106Bは、インダクタンスL2を備える。インダクタンス素子106Aの一端(コイル外側の端)には、RFICチップ104の第2の入出力端子104bに接続されるランド106Baが設けられている。なお、他端(コイル中心側の端)にも、ランド106Bbが設けられている。
【0031】
図5に示すように、インダクタンス素子(第3のインダクタンス素子)106Cは、絶縁シート102Bの長手方向(Y軸方向)の一方側で、絶縁シート102B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子106Cは、積層方向(Z軸方向)にインダクタンス素子106Aに対して対向している。さらに、
図4に示すように、インダクタンス素子106Cは、インダクタンスL3を備える。インダクタンス素子106Cの一端(コイル中心側の端)には、ランド106Caが設けられている。このランド106Caは、絶縁シート102Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体112を介して、絶縁シート102C上のインダクタンス素子106Aのランド106Abに接続されている。
【0032】
図5に示すように、インダクタンス素子(第4のインダクタンス素子)106Dは、絶縁シート102Bの長手方向(Y軸方向)の他方側で、絶縁シート102B上に渦巻きコイル状に設けられた導体パターンから構成されている。また、インダクタンス素子106Dは、積層方向(Z軸方向)にインダクタンス素子106Bに対して対向している。さらに、
図4に示すように、インダクタンス素子106Dは、インダクタンスL4を備える。インダクタンス素子106Dの一端(コイル中心側の端)には、ランド106Daが設けられている。このランド106Daは、絶縁シート102Bを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体114を介して、絶縁シート102C上のインダクタンス素子106Bのランド106Bbに接続されている。
【0033】
なお、絶縁シート102B上のインダクタンス素子106C、106Dは、1つの導体パターンとして一体化されている。すなわち、それぞれの他端(コイル外側の端)同士が接続されている。また、絶縁シート102Bには、絶縁シート102C上に実装されたRFICチップ104が収容される貫通穴102Baが形成されている。
【0034】
図5に示すように、外部接続端子108、110は、絶縁シート102A上に設けられた導体パターンから構成されている。また、外部接続端子108、110は、絶縁シート102Aの長手方向(Y軸方向)に対向している。
【0035】
一方の外部接続端子108は、絶縁シート102Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体116を介して、絶縁シートB上のインダクタンス素子106Cのランド106Caに接続されている。
【0036】
他方の外部接続端子110は、絶縁シート102Aを貫通するスルーホール導体などの層間接続導体118を介して、絶縁シート102B上のインダクタンス素子106Dのランド106Daに接続されている。
【0037】
なお、RFICチップ104は、半導体基板で構成されている。また、RFICチップ104は、インダクタンス素子106A、106Bの間と、インダクタンス素子106C、106Dの間に存在する。このRFICチップ106がシールドとして機能することにより、絶縁シート102C上に設けられた渦巻コイル状のインダクタンス素子106A、106Bの間での磁界結合および容量結合が抑制される。同様に、絶縁シート102B上に設けられた渦巻コイル状のインダクタンス素子106C、106Dの間での磁界結合および容量結合が抑制される。その結果、通信信号の通過帯域が狭くなることが抑制される。
【0038】
図1に戻り、RFICモジュール100が実装されるベース基材12は、絶縁材料から作製されたシートであって、例えば可撓性を備える樹脂材料から作製されている。また、ベース基材12は、RFICモジュール100が実装される第1の主面12aと、その第1の主面12aに対して裏面である第2の主面12bとを備える。
【0039】
図2に示すように、ベース基材12の第1の主面12aには、入出力パッド14、16と、インダクタンス素子18A、18B、18C、および18Dと、キャパシタンス素子20とが設けられている。
【0040】
一方、
図3に示すように、ベース基材12の第2の主面12bには、アンテナ素子22A、22Bが設けられている。
【0041】
本実施の形態の場合、ベース基材12の第1の主面12a上の入出力パッド14、16とインダクタンス素子106A〜106Dは、銅などの導電材料から作製された導体パターンから構成されている。同様に、ベース基材12の第2の主面12b上のアンテナ素子22A、22Bも導電材料から作製された導体パターンから構成されている。
【0042】
キャパシタンス素子20は、第1の主面12aに設けられて導電材料から作製された対向電極24A、24Bと、第2の主面12bに設けられて導電材料から作製された対向電極22Cとから構成されている。対向電極24A、24Bが対向電極24Cに対してベース基材12の厚さ方向(Z軸方向)に対向し、それらの間に容量が形成されている。また、
図4に示すように、キャパシタンスC2を備えるような大きさに、キャパシタンス素子20の対向電極24A〜24Cは形成されている。
【0043】
また、第1の主面12aと第2の主面12bそれぞれには、第1の主面12a上の導体パターンと第2の主面12b上の導体パターンとを接続するための中継用ランド26A、26B、28A、および28Bが設けられている。中継用ランド26A、26Bは、ベース基材12を貫通するスルーホール導体などの層間接続導体30によって接続されている。同様に、中継用ランド28A、28Bも層間接続導体32によって接続されている。中継用ランド26A、26Bと層間接続導体30は、アンテナ素子22Aと接続するためのアンテナポートとして機能する。また、中継用ランド28A、28Bと層間接続導体32は、アンテナ素子22Bと接続するためのアンテナポートとして機能する。
【0044】
一方の入出力パッド14は、RFICモジュール100の一方の外部接続端子108と接続する。他方の入出力パッド16は、RFICモジュール100他方の外部接続端子110と接続する。これらの接続は、例えばはんだや導電性接着剤などを介して行われる。
【0045】
なお、
図2に示すように、入出力パッド14、16は、RFICモジュール100の外部接続端子108、110に比べて大きい。これにより、ベース基材12に対するRFICモジュール100の位置決めにバラツキが生じても、入出力パッド14、16と外部接続端子108、110とが同一の接触面積を介して接続することができる。その結果、ベース基材12に対するRFICモジュール100の位置決めにバラツキが生じても、無線通信デバイス10の通信特性にはバラツキが生じない。
【0046】
ベース基材12の第1の主面12a上のインダクタンス素子(第5のインダクタンス素子)18Aは、一端が入出力パッド14に接続され、他端が中継用ランド26Aに接続されている。すなわち、インダクタンス素子18Aは、入出力パッド14と外部接続端子108とを介して、RFICモジュール100内のインダクタンス素子106Aに接続している。また、インダクタンス素子18Aは、
図4に示すように、インダクタンスL5を備えるために、ミアンダ状に所定の電気長で延在している。
【0047】
インダクタンス素子(第6のインダクタンス素子)18Bは、一端が入出力パッド16に接続され、他端が中継用ランド28Aに接続されている。すなわち、インダクタンス素子18Bは、入出力パッド16と外部接続端子110とを介して、RFICモジュール100内のインダクタンス素子106Bに接続している。また、インダクタンス素子18Bは、
図4に示すように、インダクタンスL6を備えるために、ミアンダ状に所定の電気長で延在している。
【0048】
インダクタンス素子(第7のインダクタンス素子)18Cは、一端が中継用ランド26Aに接続され、他端がキャパシタンス素子20の一端(すなわち対向電極24A)に接続されている。
図4に示すように、インダクタンス素子18Cは、インダクタンスL7を備えるために、所定の電気長で延在している。
【0049】
インダクタンス素子(第8のインダクタンス素子)18Dは、一端が中継用ランド28Aに接続され、他端がキャパシタンス素子20の他端(すなわち対向電極24B)に接続されている。
図4に示すように、インダクタンス素子18Dは、インダクタンスL8を備えるために、所定の電気長で延在している。
【0050】
図3に示すように、ベース基材12の第2の主面12b上の一方のアンテナ素子22Aは、中継用ランド26Bからベース基材12の長手方向(Y軸方向)の一端に向かってミアンダ状に延在している。他方のアンテナ素子22Bは、中継用ランド28Bからベース基材12の長手方向の他端に向かってミアンダ状に延在している。2つのアンテナ素子22A、22Bにより、無線通信デバイス10のダイポールアンテナを構成している。なお、本実施の形態の場合、アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長は、通信電波の波長λの四分の一未満にされている、すなわち、ダイポールアンテナの電気長が波長λの二分の一未満にされている。その結果として、無線通信デバイス10が小型化されている(アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長を波長の四分の一にする場合に比べて)。
【0051】
図4に示すように、これまで説明してきた、RFICチップ104と、インダクタンス素子106A〜106Dおよび18A〜18Dと、キャパシタンス素子20とにより、無線通信デバイス10の給電回路FCが構成されている。
【0052】
給電回路FCには、第1および第2のループ回路LP1、LP2が含まれている。
【0053】
第1のループ回路(第1の共振ループ)LP1は、RFICチップ104と4つのインダクタンス素子106A〜106Dとを含み、所定の共振周波数を備える閉回路(ループ回路)である。そのRFICチップ104は内部容量C1を含んでいる。したがって、第1のループ回路LP1は、RFICチップ104に対して並列なLC並列共振回路である。第1のループ回路LP1が共振周波数f1(例えば約850MHz)を持つように、それに含まれるインダクタンス素子106A〜106DのインダクタンスL1〜L4が決定されている。
【0054】
第2のループ回路(第2の共振ループ)LP2は、6つのインダクタンス素子106C、106D、および18A〜18Dとキャパシタンス素子20とを含み、所定の共振周波数を備える閉回路(ループ回路)である。したがって、第2のループ回路LP2も、RFICチップ104に対して並列なLC並列共振回路である。第2のループ回路LP2が共振周波数f1と異なる共振周波数f2(例えば約950MHz)を持つように、それに含まれるインダクタンス素子18A〜18DのインダクタンスL5〜L8が決定されている。
【0055】
また、
図4に示すように、給電回路FCにおいて、第1のループ回路LP1と第2のループ回路LP2は、電気回路的に接続され、インダクタンス素子106C、106Dを共有している。具体的には、インダクタンス素子106A、106C、および18Aそれぞれの一端が互いに接続され、T型回路を構成している。また、インダクタンス素子106B、106D、および18Bそれぞれの一端が互いに接続され、T型回路を構成している。T型回路を構成する3つのインダクタンス素子106A、106C、および18Aそれぞれが互いにインピーダンス変換し合うとともに、T型回路を構成する3つのインダクタンス素子106B、106D、および18Bそれぞれが互いにインピーダンス変換し合う。それにより、第1のループ回路LP1と第2のループ回路LP2それぞれに、大きく損失することなく、また一方に大きく偏ることなく電流が流れる。
【0056】
本実施の形態の場合、インダクタンス素子106AのインダクタンスL1がインダクタンス素子106CのインダクタンスL3に比べて大きく、また、インダクタンス素子106BのインダクタンスL2がインダクタンス素子106DのインダクタンスL4に比べて大きくされている。これにより、アンテナ素子22A、22Bで電波を受信すると、
図4に示す中継用ランド26A、28Aを入力ポートとする給電回路FCの両端に電位差が発生し、インダクタンス素子18B、106D、106C、18Aに電流が流れる。この電流経路で、インダクタンス素子106D、106Cは、第1のループ回路LP1と第2のループ回路LP2に共通のインダクタンス素子であるので、第1のループ回路LP1が共振している周波数では直接信号をRFICチップ104に伝達し、第2のループ回路LP2が共振している周波数では、インダクタンス素子106C、106Dに流れる電流を基点とした信号をRFICチップ104に伝達する。
【0057】
第1および第2のループ回路LP1、LP2はそれぞれ独立の異なる共振周波数をもつ並列共振回路である。そのため、無線通信デバイス10は、複数の通信周波数で無線通信することができる。
【0058】
第1および第2のループ回路LP1、LP2それぞれの共振周波数が近い場合、例えば一方が約850MHzであって他方が約920MHzである場合、無線通信デバイス10の通信周波数が広帯域化される。すなわち、850MHz近傍および920MHz近傍の周波数のみならず、これらの間の周波数でも実用的な通信距離で無線通信することが可能になり、その結果、通信周波数帯域が拡がる。このように通信周波数が広帯域化されることにより、例えば、無線通信デバイス10に製造上のバラツキが生じても、また、使用される国が異なっても(使用される通信周波数が微妙に異なっていても)、無線通信デバイス10は実用的な通信距離で無線通信することができる。
【0059】
第1および第2のループ回路LP1、LP2それぞれの共振周波数が離れている場合、例えば一方が約900MHzであって他方が約2.4GHzである場合、無線通信デバイス10の通信周波数が多周波化される。すなわち、大きく異なる2つの通信周波数それぞれで無線通信することが可能になる。このように通信周波数が多周波化されることにより、無線通信デバイス10は、使用する通信周波数が大きく異なる複数の通信システムそれぞれと無線通信することができる。
【0060】
これにより、アンテナ素子22A、22Bの電気長が小さい場合(上述したように波長λの四分の一未満)であっても、アンテナ素子で電波を受信すれば2つのループ回路LP1、LP2それぞれに電流が流れるので、広帯域化されたまたは多周波化された通信周波数で、すなわち複数の通信周波数で信号受信が可能となる。なお、アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長が波長λの四分の一の長さである場合には、アンテナ素子22A、22Bの直列共振(アンテナ素子の共振)が発生するので、無線通信デバイス10は、3つの共振周波数を備えることができる。これにより、その通信周波数がさらに広帯域化される(通信周波数帯域がさらに拡がる)またはさらに多周波化される(大きく異なる3つの通信周波数で無線通信可能になる)。
【0061】
図6および
図7は、通信周波数が広帯域化されている無線通信デバイス10の周波数特性を示している。
図6は、周波数に対する特性インピーダンス整合特性を示している。
図7は、スミスチャートである。なお、
図7に示すスミスチャートにおいて、ゼロの抵抗値と∞の抵抗値との中点(1で示す点)は50Ωであり、一点鎖線の内側の領域は、反射損失が−6dBを超えている領域(
図6のfbの周波数帯域)を示しており、RFICチップ104からインピーダンス周波数特性を見たときに、ほぼ電波が受信できている状態にある。
【0062】
図6に示すように、2つのLC並列共振回路(第1のループ回路LP1と第2のループ回路LP2)を含む給電回路FCにより、無線通信デバイス10の周波数帯域は、異なる2つの周波数f1、f2それぞれにピークを持つ。また、
図4に示すように、2つのLC並列共振回路(第1のループ回路LP1と第2のループ回路LP2)がインダクタンスL3、L4(インダクタンス素子106C、106D)を共有することにより、2つのピーク周波数f1、f2の間の帯域において特性インピーダンスの整合状態が大きく低下することが抑制されている。すなわち、いわゆる2つの共振周波数間に発生する反共振点が実質的に存在しない。したがって、反射損失が−6dBを超えるような実用的な無線通信距離が得られる周波数帯域fbが広い(共振周波数f1、f2のいずれか一方のみを備える場合に比べて)。その結果として、無線通信デバイス10は、広い通信周波数帯域fbを備えることができる。
【0063】
また、特徴すべきは、上述したように、アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長を波長λの四分の一の長さにすることなく、通信周波数を広帯域化している点である。すなわち、アンテナ素子22A、22Bの形状や大きさに関係なく、2つの共振周波数を備える無線通信デバイス10を実現している。そのため、通信周波数を広帯域化したままで、無線通信デバイス10のアンテナ素子22A、22Bを自由に設計することができる。
【0064】
例えば、本実施の形態のように、アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長を波長λの四分の一未満の長さ(すなわちこれらのアンテナ素子からなるダイポールアンテナの電気長を波長λの二分の一未満の長さ)にすることにより、無線通信デバイス10を小型化することができる。
【0065】
これに代わって、アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長を波長λの四分の一の長さにすれば、無線通信デバイス10は、もう一つ共振周波数を備えることができる。例えば、アンテナ素子22A、22Bそれぞれの電気長を、例えば2.4GHzの電波の波長の四分の一の長さにすれば、無線通信デバイス10の通信周波数帯域をさらに拡大することができる。
【0066】
このように、本実施の形態によれば、無線通信デバイス10は、アンテナ素子22A、22Bの設計の自由度を低下させることなく、複数の通信周波数で無線通信することができる。
【0067】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0068】
例えば、上述の実施の形態の場合、
図4に示すように、キャパシタンス素子20は、ベース基材12側に設けられている。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限らない。
【0069】
図8は、別の実施の形態に係る無線通信デバイスの全体構成および等価回路を示している。
【0070】
図8に示す無線通信デバイス210において、
図4に示す実施の形態のキャパシタンス素子20と異なり、キャパシタンス素子220は、ベース基材212ではなく、RFICモジュール300に設けられている。すなわち、インダクタンス素子106A〜106Dとキャパシタンス素子220とがRFICモジュール300に設けられ、インダクタンス素子18A〜18Dとアンテナ素子22A〜22Bとがベース基材212に設けられている。
【0071】
これにより、LC並列共振回路である第1の第1のループ回路LP1は、RFICチップ104と、インダクタンス素子106A〜106Dと、キャパシタンス素子220とを含んでいる。また、LC並列共振回路である第2の第2のループ回路LP2は、インダクタンス素子18A〜18D、106C、および106Dと、キャパシタンス素子220とを含んでいる。インダクタンス素子106C、106D、およびキャパシタンス素子220が、第1および第2のループ回路LP1、LP2に共有されている。
【0072】
このような構成の無線通信デバイス210においても、
図4に示す実施の形態の無線通信デバイス10と同様に、アンテナ素子22A、22Bの設計の自由度を低下させることなく、複数の通信周波数で無線通信することができる。
【0073】
なお、
図8に示す無線通信デバイス210の場合、ベース基材212にキャパシタンス素子が存在しないため、キャパシタンス素子の対向電極をベース基材212の第1の主面と第2の主面の両方に設ける必要がなくなる。また、ベース基材212の一方の主面のみにインダクタンス素子18A〜18Dとアンテナ素子22A、22Bの導体パターンを設けることにより、
図2および
図3に示す無線通信デバイス10の層間接続導体30、32のような層間接続導体をベース基材312に設ける必要がなくなる。
【0074】
さらに言えば、アンテナ素子のみをベース基材に設け、アンテナ素子以外の構成要素をRFICモジュールに設けることも可能である。
【0075】
図9は、さらに別の実施の形態に係る無線通信デバイスの上面図である。また、
図10は、
図9に示す無線通信デバイスの全体構成および等価回路を示している。
【0076】
図9に示すように、無線通信デバイス410はベース基材412を備え、そのベース基材412の第1の主面412aにRFICモジュール500が実装されている。また、アンテナ素子422A、422Bが、導体パターンとしてベース基材412の第1の主面412aに設けられている。
【0077】
また、
図10に示すように、無線通信デバイス410の給電回路FCは、回路パターン(回路の構成要素およびそれら接続関係)について
図4に示す無線通信デバイス10と同じである。しかしながら、給電回路FCの構成要素全てが、RFICモジュール500内に設けられている。すなわち、インダクタンス素子106A〜106Dおよび418A〜418Dとキャパシタンス素子420とがRFICモジュール500に設けられ、アンテナ素子422A、422Bのみがベース基材412に設けられている。
【0078】
これにより、LC並列共振回路である第1のループ回路LP1は、RFICチップ104と、インダクタンス素子106A〜106Dとを含んでいる。また、LC並列共振回路である第2のループ回路LP2は、インダクタンス素子418A〜418D、106C、および106Dと、キャパシタンス素子420とを含んでいる。インダクタンス素子106C、106Dが、第1および第2のループ回路LP1、LP2に共有されている。
【0079】
図9および
図10に示す無線通信デバイス410の場合、アンテナ素子422Aは入出力パッド414から延在し、アンテナ素子422Bは入出力パッド416から延在している。すなわち、入出力パッド414とそれに接続する外部接続端子508が、アンテナ素子422Aと接続するためのアンテナポートとして機能している。また、入出力パッド416とそれに接続する外部接続端子510が、アンテナ素子22Bと接続するためのアンテナポートとして機能している。
【0080】
このような無線通信デバイス410においても、
図4に示す実施の形態の無線通信デバイス10と同様に、アンテナ素子422A、422Bの設計の自由度を低下させることなく、複数の通信周波数で無線通信することができる。
【0081】
なお、同様に、
図8に示す別の実施の形態の無線通信デバイス210についても、その給電回路FCの構成要素全てをRFICモジュール300内に設けるとともに、アンテナ素子22A、22Bのみをベース基材212に設けることも可能である。
【0082】
さらに、上述の実施の形態の場合、
図2や
図5に示すように、インダクタンス素子18A〜18D、106A〜106Dやキャパシタンス素子20は、導体パターンとしてRFICモジュールやベース基材に設けられているが、例えばいずれかがチップとして設けられてもよい。
【0083】
さらにまた、上述の実施の形態の場合、
図3に示すように、アンテナ素子22A、22Bは、それぞれミアンダ状に延在し、またダイポールアンテナを構成している。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限定されない。例えば、アンテナ素子によって折り返しダイポールアンテナが構成されてもよい。
【0084】
加えて、上述の実施の形態の場合、
図4に示すように、給電回路FCにおける第1のループ回路は、RFICチップ104の内部容量の存在によってLC共振並列回路を構成している。しかしながら、本発明の実施の形態はこれに限定されない。例えば、導体パターンから構成されたキャパシタンス素子を、第1のループ回路は含んでもよい。
【0085】
すなわち、本発明に係る実施の形態の無線通信デバイスは、広義には、RFICチップを含む給電回路と、前記給電回路に接続されたアンテナ素子と、を有し、前記給電回路が、前記RFICチップと複数のインダクタンス素子とを含む第1の共振ループと、キャパシタンス素子と複数のインダクタンス素子とを含む第2の共振ループとを含み、前記第1の共振ループにおける複数のインダクタンス素子と前記第2の共振ループにおける複数のインダクタンス素子とにおいて、前記第1の共振ループと前記第2の共振ループとに共有される共有インダクタンス素子が含まれ、前記第2の共振ループが、前記アンテナ素子に接続するためのアンテナポートを含んでいる、無線通信デバイスである。
【0086】
以上、複数の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、ある実施の形態に対して少なくとも1つの実施の形態を全体としてまたは部分的に組み合わせて本発明に係るさらなる実施の形態とすることが可能であることは、当業者にとって明らかである。