(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る水素含有水生成装置1の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、同一構成には同一符号を付し、異なる構成には異なる符号を付すものとする。
【0015】
まず、水素含有水Rを生成するために用いる電極部10について説明する。
図1は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の電極部の模式斜視図である。
図2は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の模式断面図である。電極部10は、水の電気分解作用を利用して、水道水等の原水Wから、水素を含有する水である水素含有水Rを生成する。水素含有水Rは、アルカリ性を示す水である。
【0016】
図1に示すように、電極部10は、陰極部12と、陽極部14とを有する。陰極部12及び陽極部14は、いずれも円筒状の導電体である。陽極部14は、陰極部12の外側に同心状態に設けられて、陰極部12と離間している。電極部10、より具体的には陰極部12及び陽極部14は、両方の端部にそれぞれ開口部としての下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBを有している。陰極部12と陽極部14とは、下部スペーサ54及び上部スペーサ56(
図2参照)によって、陰極部12及び陽極部14の間の距離(電極間隙間と称する。)を維持される。
【0017】
本実施形態において、陰極部12及び陽極部14の電極間隙間の大きさは、0.1mm以上1mm以下とすることが好ましい。電極間隙間の大きさを前述した範囲とすることで、電極部10が水素含有水Rを生成する際に、陰極部12と陽極部14とに印加する電圧の電位差が比較的小さくても、電極部10は、十分な量の水素を発生させることができる。電極間隙間の大きさが前述した範囲であれば、電極部10に印加される電圧が比較的低電圧でも、電極部10は、十分な量の水素を原水Wに溶存させて多くの水素を溶存した水素含有水Rを生成することができる。また、水素含有水Rに溶存する水素の量が同一であれば、電極部10は、消費電力を抑制することができる。
【0018】
本実施形態において、陰極部12及び陽極部14は、チタン(Ti)に白金(Pt)をめっきしたものである。めっきは、例えば、白金(Pt)−イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、チタンは純チタンである。陰極部12及び陽極部14は、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料(例えば、バナジウム(V))であることが好ましい。本実施形態においては、陰極部12及び陽極部14の両方がめっきされているが、陽極部14のみをめっきし、陰極部12はめっきしなくてもよい。これにより、電極部10の製造コストを低減することができる。
【0019】
陰極部12及び陽極部14は、複数の線状の部分である線状部分16が交差した、網状の部材である。陰極部12は、側部に複数の開口12Hを有している。陽極部14は、側部に複数の開口14Hを有している。複数の線状部分16で囲まれる部分が、陰極部12及び陽極部14の開口12H及び開口14Hとなる。陰極部12が有する複数の開口12Hは、陰極部12の側部を陰極部12の厚み方向に貫通している。陽極部14が有する複数の開口14Hは、陽極部14の側部を陽極部14の厚み方向に貫通している。陰極部12及び陽極部14の線状部分16の詳細な形状については後述する。
【0020】
陰極部12は、長手方向E、すなわち筒状の部材である陰極部12が延びる方向に向かうスリット12SLを有している。陽極部14は、長手方向E、すなわち筒状の部材である陽極部14が延びる方向に向かうスリット14SLを有している。電極部10は、陽極部14の外側に複数の拘束部材18を備える。拘束部材18は、例えば、樹脂製の結束バンド、金属の線材等である。拘束部材18は、耐食性が高く、かつ原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。拘束部材18は、陰極部12のスリット12SL及び陽極部14のスリット14SLを閉じて、陰極部12及び陽極部14を陰極部12及び陽極部14の周方向から拘束する。拘束部材18を取り外すことによって、電極部10は、陰極部12と、陽極部14とに容易に分解することができるので、保守、点検、補修及び部品交換が容易である。
【0021】
陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22は、いずれも棒状の導電体である。陰極用給電部材20は、陰極部12に電気的に接続されている。陰極用給電部材20は、電源30の陰極と電気的に接続されている。陽極用給電部材22は、陽極部14に電気的に接続されている。陽極用給電部材22は、電源30の陽極と電気的に接続されている。電源30は、直流電源である。このような構成によって、陰極部12は、電源30の負極と陰極用給電部材20を介して電気的に接続され、陽極部14は、電源30の正極と陽極用給電部材22を介して電気的に接続される。
【0022】
陰極用給電部材20は、例えば、溶接等の接合手段によって、陰極部12に接合されて、取り付けられるが、陰極部12に電気的に接続されれば、スポット溶接に限られず、任意の接合手段が用いられてよい。陽極用給電部材22は、例えば、溶接等の接合手段によって、陽極部14に接合されて、取り付けられるが、陽極部14に電気的に接続されれば、スポット溶接に限られず、任意の接合手段が用いられてよい。
【0023】
本実施形態において、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22は、陰極部12及び陽極部14と同様に、チタンに白金をめっきした部材である。めっきは、例えば、白金(Pt)−イリジウム(Ir)めっきであってもよい。陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22は、陰極部12及び陽極部14と同様に、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。本実施形態においては、陰極部12はめっきを施さなくてもよいが、この場合、陰極用給電部材20もめっきを施さなくてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る水素含有水生成装置1について説明する。
図2に示すように、水素含有水生成装置1は、電解槽40と、下側基台42と、上側基台44と、給水管46と、排水管48と、脱気弁50と、接合管52と、を備える。
【0025】
電解槽40は、透明な円筒状の槽である。電解槽40の内部には、電極部10が設けられる。電極部10は、長手方向Eが鉛直方向となる向きで配置されている。電解槽40が透明に設けられているので、使用者は、電解槽40の外側から電極部10、特に、電解槽40と対面する位置に設けられる陽極部14を視認することができる。電解槽40の下端部は、下側基台42に覆われて固定される。電解槽40の上端部は、上側基台44に覆われて固定される。
【0026】
下側基台42は、電解槽40の下端部、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22を固定する。陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22は、陰極部12及び陽極部14の下端部側開口部10HAより下方に一部が突出している。下側基台42は、陰極用給電部材20の突出部分20P及び陽極用給電部材22の突出部分22Pに、水密状態で貫通される。下側基台42は、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22を介して陰極部12及び陽極部14を固定する。これにより、水素含有水生成装置1は、電解槽40の外部から陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22を介して電極部10へ給電することができる。また、電極部10は、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22を介して下側基台42及び電解槽40に固定される。上側基台44は、上端部側が閉塞する円筒状の基台である。上側基台44は、電解槽40の上端部を固定する。上側基台44の上端部側には、脱気弁50と上側基台44の内部空間44Sとを連通させる接合管52が貫通する。
【0027】
給水管46は、電解槽40に原水Wを給水するL字状の配管である。給水管46は、電解槽40の側部を水密状態で貫通して設けられる。なお、
図2においては、陽極用給電部材22が陽極部14の左側に図示すると共に、給水管46と陽極用給電部材22とが重なり合って図示されるが、給水管46は、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22と重なり合わない位置に向かって延びるよう設けられる。給水管46の下流端部側の開口部である給水部46Hは、陰極部12の内周部12Siより内側に設けられる。給水部46Hは、鉛直方向の上方に向けて給水する。給水部46Hは、陰極部12の下端部側開口部10HAより上方から原水Wを給水する。
【0028】
排水管48は、電解槽40の水素含有水Rを排水するL字状の配管である。排水管48は、上側基台44の内部空間44Sを通って上側基台44の側部を水密状態で貫通する。排水管48の上流端部側の開口部である排水部48Hは、陰極部12の内周部12Siより内側に設けられる。排水部48Hは、給水部46Hより上方から排水する。排水部48Hは、陰極部12の上端部側開口部10HBより下方の水素含有水Rを取水し、電解槽40の外側に排出する。
【0029】
脱気弁50は、接合管52を介して上側基台44に固定される。脱気弁50は、接合管52を介して上側基台44の内部空間44Sと連通する。脱気弁50は、上側基台44の内部空間44Sに貯留した空気Gを放出する。脱気弁50は、上側基台44の内部空間44Sの内部の圧力が所定値を超えた場合、空気Gを放出する。例えば、空気Gは、電解槽40内の水の電気分解反応によって発生した酸素ガスを含む。
【0030】
上述したように、陰極部12と陽極部14とは、下部スペーサ54及び上部スペーサ56によって、電極間隙間を維持される。下部スペーサ54は、円筒状であり、下端部側開口部10HAにおいて、陰極部12の外周部12Soと陽極部14の内周部14Siとの間に配置される。上部スペーサ56は、円筒状であり、上端部側開口部10HBにおいて、陰極部12の外周部12Soと陽極部14の内周部14Siとの間に配置される。上部スペーサ56は、上端部に内側に突出する内鍔部56Fiを有する。内鍔部56Fiは、電極部10と排水部48Hとの距離を所定距離とする。上部スペーサ56は、上端部に外鍔部56Foを有する。外鍔部56Foは、径方向と外側に突出し、周方向の全周に設けられている。外鍔部56Foは、電極部10と電解槽40の内周部40Siとの距離を所定距離とする。
【0031】
次に、水素含有水生成装置1による原水Wの電気分解について説明する。水素含有水生成装置1は、電極部10が原水Wに浸漬され、電源30によって電極部10に電圧が印加されて、陰極部12と陽極部14との間に電位差が発生させることによって、原水Wを電気分解し、水素含有水Rを生成する。
【0032】
水素含有水生成装置1は、電極部10の陰極部12と陽極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陽極部14において、下記式(1)の反応が生じる。
【0033】
2H
2O→O
2+4H
++4e
−・・・(1)
【0034】
水素含有水生成装置1は、電極部10の陰極部12と陽極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陰極部12において、下記式(2)の反応が生じる。
【0036】
水素含有水生成装置1は、電極部10の陰極部12と陽極部14との間に電源30から所定の電圧が印加されると、陰極部12及び陽極部14の全体において、下記式(3)の反応が生じる。
【0038】
以上のように、水素含有水生成装置1は、酸性排水の発生が抑制され、排水部48Hから流出する水素含有水Rは、例えばpH7以上7.5以下程度の中性になる。酸素ガスは、陽極部14の外側に気泡となって集まり、陽極部14の外周部14Soと電解槽40の内周部40Siとの間を移動して、上側基台44の内部空間44S、接合管52及び脱気弁50を介して水素含有水生成装置1に放出される。
【0039】
陽極部14で発生する電離した水素イオンH
+は陰極部12側に集まり、陰極部12には水素ガスの気泡が生成される。この気泡は、直径がナノメートルオーダーの微小な気泡である。ここで、水素含有水生成装置1は、原水Wを給水部46Hから給水させ、水素含有水Rを排水部48Hから排水させる。給水部46H及び排水部48Hは、陰極部12の内周部12Siより内側に設けられる。原水Wは、下端部側開口部10HAから鉛直方向の上方に向かって流入し、水素含有水Rは、上端部側開口部10HBから流出する。すなわち、陰極部12の内側において、下方から上方に向かう水の流れが発生する。
【0040】
水素含有水生成装置1は、水素含有水Rを優先的に電解槽40から排出できる。水素含有水Rを優先的に電解槽40から排出することによって、電解槽40内の水への酸素溶存量を抑制し、好適に水素含有水Rを生成できる。また、給水部46Hが、陰極部12の内周部12Siより内側の鉛直方向の上方に向かって給水する。すなわち、給水部46Hが、電極部10の長手方向Eに沿って給水するので、給水部46Hから給水される原水Wは、電極部10へ局所的な分布を有して衝突しにくくなり、均一な電気分解が可能となる。また、排水部48Hが、給水部46Hの上方の陰極部12の内周部12Siより内側から排水するので、排水部48Hから排水される水素含有水Rは、電極部10へ局所的な分布を有して乱流を生じにくくなり、均一な電気分解が可能となる。
【0041】
次に、電極部10の形状について、より詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る陰極部及び陽極部の一部を示す模式拡大図である。
図4は、本実施形態に係る陰極部及び陽極部の開口の模式拡大図である。
図5は、
図3のA−A断面図である。
【0042】
図3及び
図4に示すように、本実施形態において、陰極部12及び陽極部14が有する開口12H及び開口14Hは、菱形形状である。開口12H及び開口14Hは、一方の対角線である第1対角線TLlが他方の対角線である第2対角線TLsよりも長い。開口12H及び開口14Hは、第1対角線TLl上の頂部Pa、Pbでの角度が、第2対角線TLs上の頂部Pc、Pdでの角度よりも小さい。開口12H及び開口14Hは、第1対角線TLlが、陰極部12及び陽極部14が延びる方向、すなわち長手方向Eに向かう。第2対角線TLsは、円筒形状の陰極部12及び陽極部14の周方向Cに向かう。
【0043】
陰極部12及び陽極部14は、複数の開口12H及び開口14Hを有するので、開口12H及び開口14Hを通して電気力線を内側と外側とに回すことができる。これにより、陰極部12及び陽極部14は、両面を電気分解に利用することができるので、水素を効率的に発生させることができる。また、陰極部12は、線状部分16で囲まれた開口12Hによって、自身が生成する水素の気泡のぬれ角を小さくすることができるので、水素の気泡を小さい状態で離脱させることができる。すなわち、生成される水素と陰極部12の表面との間に生じる吸着力が、点接触に近い状態になって表面張力が抑制されるので、結果として、陰極部12は、水素の気泡を小さい状態で離脱させて、多くの水素の気泡を溶存した水素含有水Rを生成することができる。また、陽極部14は、線状部分16で囲まれた開口14Hによって、自身が生成する酸素の気泡のぬれ角を小さくすることができるので、酸素の気泡を速やかに離脱させることができる。すなわち、生成される酸素と陽極部14の表面との間に生じる吸着力が、点接触に近い状態になって表面張力が抑制されるので、結果として、陽極部14は、酸素の気泡を速やかに離脱させ、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。
【0044】
図5に示すように、本実施形態において、陰極部12及び陽極部14の線状部分16は、断面が長方形(
図5の例では正方形)となっている。陰極部12は、線状部分16が有する角部16Tによって、水素の気泡のぬれ角をさらに小さくして表面張力を抑制することができる。これにより、陰極部12は、水素の気泡をより小さい状態で離脱させることができるので、より小さい水素の気泡を溶存させた水素含有水Rを生成することができる。また、陰極部12は、断面が長方形の線状部分16を有するので、水素の発生に利用することができる表面積を大きくすることができる。これにより、陰極部12は、水素を原水Wに溶存させる効率が向上する。また、陽極部14は、線状部分16が有する角部16Tによって、酸素の気泡のぬれ角をさらに小さくして表面張力を抑制することができる。これにより、陽極部14は、酸素の気泡を線状部分16から速やかに離脱させ、酸素の気泡を効率的に外部へ放出することができる。
【0045】
次に、本実施形態に係る水素含有水生成装置1によって水素含有水Rが生成される際の電解槽40内の水及び気泡の流れについてより詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る水素含有水生成装置の使用状態を示す模式断面図である。
【0046】
電解槽40の内部は、予め原水Wで満たしておく。原水Wの水面は、少なくとも排水部48Hより上方とする。電源30から所定の電圧が印加されると、電極部10において上述した電気分解反応が起こる。ここで、給水部46Hから原水Wを流入させ、排水部48Hから電解槽40内の水を流出させると、陰極部12の内側において、下方から上方に向かう水の流れが発生する。排水部48Hから流出しない水は、電解槽40上部の水面にぶつかり、電極部10の外側に流れる。陽極部14の外周部14Soと電解槽40の内周部40Siとの間において、上方から下方に向かう水の流れが発生する。すなわち、電解槽40の内部では、電極部10の内側及び外側において、水が循環する。電極部10の内側における下方から上方に向かう水の流れの速度は、電極部10の外側における上方から下方に向かう水の流れの速度より速い。
【0047】
原水Wは、陰極部12の内部を通過する間に、電気分解によって陰極部12において生成された水素ガスの気泡を含んで水素含有水Rとなり、排水部48Hから流出する。陽極部14において発生した酸素ガスの気泡は、上方から下方に向かう水の流れによって、陽極部14の外周部14Soと電解槽40の内周部40Siとの間において残留する、又は下降する。酸素ガスの気泡は、互いに結合して大きく成長すると、水の流れに逆らって上昇して水面から排出される。水面から排出した酸素ガスは、上側基台44の内部空間44Sに貯留する。内部空間44Sの内部の圧力が所定値を超えた場合、酸素ガスを含む空気Gが、接合管52及び脱気弁50を介して水素含有水生成装置1に放出される。
【0048】
以上のように、本実施形態の水素含有水生成装置1によれば、側部に複数の開口12Hを有する筒状の陰極部12と、側部に複数の開口14Hを有し、陰極部12の径方向外側に設けられる筒状の陽極部14と、陰極部12及び陽極部14が内部に設けられる透明な筒状の電解槽40と、を含むので、使用者は、電解槽40の外周方向から陽極部14を視認することができる。すなわち、使用者は、容易に陽極部14の劣化状況を確認できる。これにより、使用者は、適切な時期に電極部10、特に陽極部14の交換が行えるので、電極部10の故障による水素含有水生成装置1の停止を防ぐことができる。また、陽極部14が陰極部12の外側に設けられることによって、陰極部12の内側に設けられる従来の構成に比べて直径、すなわち表面積が大きくなるので、電流密度が小さくなり、陽極部14の耐久性が向上する。
【0049】
また、本実施形態の水素含有水生成装置1によれば、陰極部12の一方の端部側(下端部側開口部10HA)から陰極部12の内部に給水する給水部46Hと、陰極部12の他方の端部側(上端部側開口部10HB)から電解槽40内部の水(水素含有水R)を排水する排水部48Hと、を含むので、水素ガスが発生する陰極部12の内側において、一方から他方に向かう水の流れが発生する。これにより、水素含有水Rを優先的に電解槽40から排出できるので、電解槽40内の水への酸素溶存量を抑制し、好適に水素含有水Rを生成できる。
【0050】
また、陰極部12が、鉛直方向に沿って延在し、給水部46Hが、陰極部12の鉛直方向下側の端部側に設けられ、排水部48Hは、陰極部12の鉛直方向上側の端部側に設けられるので、陰極部12の内側において下方から上方に向かう水の流れが発生する。これにより、水素含有水Rを優先的に電解槽40から排出できるので、電解槽40内の水への酸素溶存量を抑制し、好適に水素含有水Rを生成できる。
【0051】
また、給水部46Hが、陰極部12の径方向内側、かつ、下端側の開口(下端部側開口部10HA)より上方に挿入されるので、陰極部12の内側において下方から上方に向かう水の流れをより好適に発生させることができるので、水素含有水Rを優先的に電解槽40から排出できる。
【0052】
また、排水部48Hが、陰極部12の径方向内側、かつ、上端側の開口(上端部側開口部10HB)より下方に挿入されるので、陰極部12の内側において下方から上方に向かう水の流れをより好適に発生させることができるので、水素含有水Rを優先的に電解槽40から排出できる。
【0053】
また、電解槽40の空気Gを排出する脱気弁50を含むので、陽極部14において発生した酸素ガスを好適に外部に排出できる。
【0054】
また、陰極部12の外周部12Soと陽極部14の内周部14Siとの間にスペーサ(下部スペーサ54及び上部スペーサ56)が配置されるので、陰極部12と陽極部14との間の距離である電極間隙間を好適に維持することができる。
【0055】
次に、従来の水素含有水生成装置に対し、陽極部が陰極部より内側ではなく、陽極部14が陰極部12より外側に設けられることへの影響を検証する。すなわち、本実施形態の水素含有水生成装置1と、陽極部が陰極部より内側に設けられる比較形態の水素含有水生成装置2との、水素含有水Rの水素濃度、酸素濃度及び水温を比較する。
図7は、比較形態に係る水素含有水生成装置の使用状態を示す模式断面図である。
図8は、比較試験における水素濃度を示すグラフである。
図9は、比較試験における酸素濃度を示すグラフである。
図10は、比較試験における水温を示すグラフである。
【0056】
図7に示す比較形態の水素含有水生成装置2は、実施形態に係る水素含有水生成装置1(
図6参照)の構成に対して、直流電圧の印加方向が逆である。すなわち、電極部110は、内側に陽極部を有し、外側に陰極部を有する。陰極用給電部材20は、電極部110の外周部110Soに固定される。陽極用給電部材22は、電極部110の内周部110Siに固定される。
【0057】
給水管146は、I字状の配管である。給水管146は、電解槽40の側部を水密状態で貫通して設けられる。給水管146の下流端部側の開口部である給水部146Hは、電極部110の外周部110Soより外側に設けられる。給水部146Hは、内周方向に向けて原水Wを給水する。
【0058】
排水管148は、I字状の配管である。排水管148は、電解槽40の側部を水密状態で貫通して設けられる。排水管148の上流端部側の開口部である排水部148Hは、電極部110の外周部110Soより外側に設けられる。排水管148は、外周方向に向けて水素含有水Rを排水する。
【0059】
電源30から所定の電圧が印加されると、陰極部、すなわち電極部110の外周部110Soにおいては、水素ガスが生成される。陽極部、すなわち電極部110の内周部110Siにおいては、酸素ガスが生成される。
【0060】
脱気弁50は、接合管52を介して、電極部10の内側に連通する。脱気弁50は、電解槽40内の水の電気分解反応によって発生した酸素ガスを含む空気Gを放出する。このような構成によって、水素含有水生成装置2は、酸素ガスを優先的に電解槽40から排出できる。酸素ガスを優先的に電解槽40から排出することによって、電解槽40内の水への酸素溶存量を抑制して、水素含有水Rを生成する。水素含有水生成装置2の電解槽40は、電極部110の内側及び外側において、いずれも下方から上方に向かう水の流れが発生する。すなわち、水素含有水生成装置2の電解槽40の内部では、電極部10の内側及び外側において、水素含有水生成装置1のような水の循環は起こらない。
【0061】
図8、
図9及び
図10は、水素含有水生成装置1の排水管48及び水素含有水生成装置2の排水管148から排出した水素含有水Rの、水素濃度(ppm)、酸素濃度(ppm)及び水温(℃)を示している。
図8に示すように、陽極部を陰極部の内側に設ける場合に比べ、陽極部14を陰極部12の外側に設ける場合、試験開始直後の水素濃度は低くなるが、最終的な水素濃度はほぼ同等となる。
図9に示すように、陽極部を陰極部の内側に設ける場合に比べ、陽極部14を陰極部12の外側に設ける場合、試験開始直後の酸素濃度は低くなるが、最終的な酸素濃度はほぼ同等となる。
図10に示すように、陽極部を陰極部の内側に設ける場合に比べ、陽極部14を陰極部12の外側に設ける場合、試験開始直後の水温は低くなるが、最終的な水温はほぼ同等となる。
【0062】
以上のように、本実施形態の水素含有水生成装置1は、水素含有水生成装置2とほぼ同等の性能を備えている。水素含有水生成装置1は、水素含有水生成装置2とほぼ同等の性能を備えながら、容易に陽極部14の劣化状況を確認することができる。
【0063】
本実施形態において、陰極部12、陽極部14、及び電解槽40の形状は、いずれも円筒状であるが、これに限定されるものではなく、筒形状であればどのような形状でもよい。また、電極部10は、下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBを有していなくてもよいし、下端部側開口部10HA及び上端部側開口部10HBのいずれかのみを有していてもよい。下端部側開口部10HAを有していない場合、給水部46Hは、電極部10の下端部に向かって、鉛直方向の上方に原水Wを給水する。原水Wは、開口12H及び開口14Hを通り抜けて、陰極部12の内側に流入する。
【0064】
本実施形態において、電極部10は、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22を介して下側基台42及び電解槽40に固定されるが、固定方法は特に限定されない。また、本実施形態では、筒形状の陰極部12、陽極部14、及び電解槽40の軸方向が鉛直方向と平行となる向きで配置することで、電解槽40内の水の流れを好適に制御でき、水素含有水Rを好適に排出することができる。なお、陰極部12、陽極部14、及び電解槽40の向きは、軸方向が鉛直方向と平行となる向きに限定されないが、軸方向に沿った向きで配置することが好ましい。
【0065】
本実施形態において、陰極用給電部材20は、突出部分20Pとは反対側の端部が上端部側開口部10HBの近傍まで延びるが、陰極用給電部材20の陰極部12に取り付けられる部分の長さは、陰極部12の長手方向Eの寸法の半分以下でもよい。陽極用給電部材22は、突出部分22Pとは反対側の端部が上端部側開口部10HBの近傍まで延びるが、陽極用給電部材22の陰極部12に取り付けられる部分の長さは、陰極部12の長手方向Eの寸法の半分以下でもよい。これらの場合、例えば、電極部10は、陰極用給電部材20が設けられている側とは反対側に、陰極用給電部材20と同じ形状の陰極用支持部材が設けられてもよい。また、電極部10は、陽極用給電部材22が設けられている側とは反対側に、陽極用給電部材22と同じ形状の陽極用支持部材が設けられてもよい。陽極用支持部材及び陰極用支持部材は、陰極用給電部材20及び陽極用給電部材22と同一の材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0066】
陰極用給電部材20は、本実施形態のような棒状の形状でなくてもよく、任意の形状にしてもよい。また、陰極用給電部材20は、下端部側開口部10HAにおいて陰極部12に接続されることに限られず、導電体として陰極部12と電気的に接続されていれば、接続箇所は任意である。陽極用給電部材22は、本実施形態のような棒状の形状でなくてもよく、任意の形状にしてもよい。また、陽極用給電部材22は、下端部側開口部10HAにおいて陽極部14に接続されることに限られず、導電体として陽極部14と電気的に接続されていれば、接続箇所は任意である。
【0067】
本実施形態において、給水管46は、電解槽40の側部を貫通して設けられるL字状の配管であるが、下側基台42を貫通して設けられるI字状の配管であってもよい。給水管46は、下流端部側の開口部である給水部46Hが、陰極部12の内周部12Siより内側の鉛直方向の上方に向けて給水するものであれば、どのような形状でも構わない。また、排水管48は、上側基台44の側部を貫通して設けられるL字状の配管であるが、上側基台44の上部を貫通して設けられるI字状の配管であってもよい。排水管48は、上流端部側の開口部である排水部48Hが、給水部46Hより上方の陰極部12の内周部12Siより内側から排水するものであれば、どのような形状でも構わない。また、接合管52は、脱気弁50と上側基台44の内部空間44Sとを連通させるものであれば、どのような位置に設けてもよく、どのような形状でも構わない。排水管48が上側基台44の上部を貫通して設けられるI字状の配管である場合、接合管52は、上側基台44の上部において排水管48と重ならない位置に設けられてもよい。また、上側基台44は、上部スペーサ56と一体的に設けてもよい。
【0068】
本実施形態においては、陰極部12と陽極部14とが下部スペーサ54及び上部スペーサ56を介して離間して設けられるが、陰極部12と陽極部14との間に、側部に複数の開口を有する円筒状の絶縁体を介在させてもよい。絶縁体は、例えば、陰極部12の外周部12So及び陽極部14の内周部14Siと接する。
【0069】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態によってこの発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
容易に陽極部の劣化状況を確認することができる水素含有水生成装置を提供する。側部に複数の開口12Hを有する筒状の陰極部12と、側部に複数の開口14Hを有し、陰極部12の径方向外側に設けられる筒状の陽極部14と、陰極部12及び陽極部14が内部に設けられる透明な筒状の電解槽40と、陰極部12の一方の端部側から陰極部12の内部に給水する給水部46Hと、陰極部12の他方の端部側から電解槽40内部の水を排水する排水部48Hと、を含む。