(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の大豆蛋白質を含有する原料、油脂、酸処理澱粉及び水を混合し、有機酸及び/または乳酸発酵によりpH3.5〜5.7にpH調整し、均質化した後、チューブ式熱交換器、高速せん断クッカー、直接蒸気吹込み式殺菌装置から選択されるいずれかの1以上の装置を用いて加熱処理を行い、冷却することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物性様食品の連続生産方法。
【背景技術】
【0002】
チーズは、牛,水牛,羊,山羊,ヤクなどから採取した乳を原料とし、凝固や発酵などの工程を経て製造される乳製品の一種であり、そのまま食する以外に、他の食品と組み合わせて用いられることも多く、例えばピザやパスタ、グラタン、リゾット、チーズフォンデュ等々、様々な料理に用いられ、その需要は年々増加している。
【0003】
チーズは他の食品と組み合わされて用いられる場合、加熱調理されることが多く、加熱により容易にペースト状となる加熱溶融性や、糸曳き性、さらには食品が冷めても硬くならない食感を維持できる物性を有することが好ましい。
【0004】
しかしながら、例えばピザに用いられるナチュラルチーズとして、モッツァレッラチーズやゴーダチーズを挙げることができるが、これらのナチュラルチーズは加熱するとゾル状で強い糸曳き性を示すものの、室温域(15〜25℃)まで冷えると硬いロウ状となり風味、食感ともに著しく低下する。
【0005】
さらに、ピザやグラタン等に用いられるチーズは、調理の際の使いやすさや加熱調理時の溶けやすさから、ブロック状のチーズを削ったり、スライスしたりといった成形チーズとして利用されることが多く、シュレッドできるような成形加工適性も求められている。
【0006】
一方近年、動物性食素材の消費量の急激な増加により、それに伴う肥満、糖尿病などの健康障害も深刻な問題となり、食生活による健康改善に関心が集まっている。また種々の理由によりベジタリアン食のみを食べることを要するか、またはこれを選択する人の数も増加し続けている。このような状況を受け、植物性蛋白質食品の評価が高まっている。
【0007】
特に大豆から得られる蛋白質は動物性蛋白質の代替物として注目されており、消化が良く、コレステロールを含まず、必須アミノ酸がバランス良く含まれた良質の蛋白質である。さらに大豆蛋白質は乳アレルギーの人や、コレステロールまたはラクトースを消化できない人や糖尿病の人に特に有効である。また胃腸の疾病を患っている人にとっては、動物の乳蛋白よりも消化しやすい。
【0008】
以上のことから、大豆を原料とした食品の需要は高く、広範な食品に対して大豆を組み込む努力が行われてきている。
例えば一般的な乳製品であるチーズやヨーグルトとの代替を目的として一部検討されており、大豆蛋白質を含有する原料としては、豆乳や分離大豆蛋白、大豆粉などの大豆素材が使用されている。
【0009】
特許文献1は、豆乳を使用し酪酸菌を用いて発酵させ、生成したカードをそのまま、若しくは加熱殺菌後、固液分離を行い、固形分を所定の水分まで脱水して得られる固形状またはクリーム状のチーズ様の食品の製造法に関し、乳製品アレルギーの人や、肥満体の人、ダイエットを目指している人々に、食品添加物、着香料など一切含まぬ、純粋の植物性チーズ様食品を提供するというものである。
【0010】
特許文献2は、納豆又は納豆菌による豆乳由来の乳製品様の食品の製造法に関する。豆乳に砂糖、葡萄糖、果糖等の糖類を添加し、これに納豆菌又は完成した納豆を加え、断続、又は連続的に攪拌を繰り返しながら反応に必要な、ねさし等の間合いを取り、豆乳が凝集を終えた段階で脱水処理(固液分離)を行うことにより、ゴーダチーズに近い硬さ等の乳製品様食品を得るというものである。
【0011】
特許文献3は、シュレッドなどの成形加工適性を有し、さらに加熱により容易に溶融し、かつ冷めた後もソフトな食感を維持する、大豆蛋白質含有チーズ様食品を開示する。豆乳、分離大豆蛋白質、濃縮大豆蛋白質、大豆粉のような大豆蛋白質を含有する原料として、酸処理澱粉及びSFC(固体脂含量)が10℃で45%以上かつ20℃で20%以上である油脂を含有する大豆蛋白質含有チーズ様食品である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の植物性チーズ様食品は、特定の蛋白質及び脂質を含有する大豆乳化組成物及び大豆蛋白質中の脂質親和性蛋白質の割合が低減された特定の大豆蛋白素材由来の大豆蛋白質を含有し、酸処理澱粉及びSFC(固体脂含量)が10℃で45%以上かつ20℃で20%以上である油脂を含有することを特徴とするものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、大豆乳化組成物Aと大豆蛋白素材Bを併用し、大豆乳化組成物A由来の蛋白質0.6〜1.4重量%、大豆蛋白素材B由来の蛋白質0.6〜1.5重量%を含有し、酸処理澱粉及びSFC(固体脂含量)が10℃で45%以上かつ20℃で20%以上である油脂を含有することを特徴とする、植物性チーズ様食品の製造方法である。
【0020】
大豆乳化組成物Aと大豆蛋白素材Bを併用し、前記SFCを有する油脂、酸処理澱粉及び水を混合し、均質化した後、チューブ式熱交換器又は直接蒸気吹込み式殺菌装置を用いて加熱処理を行い、冷却することにより、従来の大豆乳や全脂豆乳、大豆粉、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白を蛋白質原料として用いた植物性チーズ様食品と対比して、ナチュラルチーズ様のメルティ性(加熱時に溶融とオイルオフ)とナチュラルチーズ様の乳味感に優れた植物性チーズ様食品を製造することができる。
【0021】
(大豆乳化組成物A)
本発明に用いる大豆乳化組成物Aとは、豆乳のように大豆蛋白質が脂質と乳化されている素材のうち、乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量が蛋白質含量に対して100重量%以上であることを特徴とするものである。
なお、水溶性窒素指数(NSI:Nitrogen Solubility Index)が特定の範囲になるまであらかじめ変性処理を施した大豆から得られるものが特に好ましい。このような原料から得られる大豆乳化組成物は、含まれる大豆蛋白質のうち、グリシニンやβ-コングリシニン以外の脂質親和性蛋白質(あるいは別の指標としてリポキシゲナーゼ蛋白質)の割合が特に高く、このため、中性脂質および極性脂質を多く含む乳化組成物である。すなわち、乾物あたりの蛋白質含量が25重量%以上、脂質含量が蛋白質含量に対して100重量%以上であって、LCI値(Lipophilic Proteins Content Index)が55%以上、より好ましくは60%以上であることを主要な特徴とするものである。ここで、LCI値は、蛋白質中の脂質親和性蛋白質の割合を推定する指標である。大豆乳化組成物の蛋白質および脂質の組成の詳細については、特開2013-143931号公報の記載を援用する。
【0022】
(大豆乳化組成物Aの蛋白質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物Aの蛋白質含量は乾物あたり25重量%以上、好ましくは30重量%以上である。また蛋白質含量の上限は限定されないが、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
本発明における蛋白質含量はケルダール法により窒素量として測定し、該窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じて求めるものとする。
【0023】
(大豆乳化組成物Aの脂質)
本発明に用いられる大豆乳化組成物Aの脂質含量は蛋白質含量に対して100重量%以上、好ましくは120〜300重量%、さらに好ましくは120〜200重量%であり、蛋白質よりも脂質が多いことが特徴である。
一般に脂質含量はエーテル抽出法で測定されるが、大豆乳化組成物中には中性脂質のほかにエーテルで抽出されにくい極性脂質も多く含まれるため、本発明における脂質含量は、クロロホルム:メタノールが2:1(体積比)の混合溶媒を用い、常圧沸点において30分間抽出された抽出物量を総脂質量として、脂質含量を算出した値とする。溶媒抽出装置としてはFOSS社製の「ソックステック」を用いることができる。
【0024】
(大豆乳化組成物Aの乾物含量)
本発明に用いられる大豆乳化組成物Aは通常生クリーム様の性状であり、通常の乾物(dry matter)は15〜30重量%程度であるが、特に限定されるものではない。すなわち加水により低粘度の液状としたものや、濃縮加工されてより高粘度のクリーム状としたものであってもよく、また粉末加工されて粉末状としたものであってもよい。
【0025】
(大豆乳化組成物Aの製造態様)
本発明に用いられる、上記特定の豆乳化組成物は、例えば全脂大豆に加水して懸濁液や豆乳を調製した後、遠心分離機によって分画し、比重が軽い上層部分を取り分けることにより得ることができる。
また、LCI値が55%以上の大豆乳化組成物を効率的に得るには、特定の性質をもつ大豆を原料として使用する。例えば水溶性窒素指数(Nitrogen Solubility Index)が20〜77など、特定の水溶性蛋白を含みかつ乾物あたりの脂質含量が15重量%以上の全脂大豆などの含脂大豆に対して、加水して懸濁液を調製する工程の後、該懸濁液を固液分離し、中性脂質及び極性脂質を不溶性画分に移行させて、蛋白質及び糖質を含む水溶性画分を除去し、不溶性画分を回収することにより得ることができる。この製造態様の詳細については特開2013-143931号報の記載を援用する。
【0026】
(大豆蛋白素材B)
本発明の原料として使用される特定の大豆蛋白素材Bは、大豆から水抽出されるグリシニン及びβ−コングリシニンを主体とする蛋白質を主な構成成分とし、かつ総蛋白質中の脂質親和性蛋白質の割合が少ないものである。
すなわち、総蛋白質中の脂質親和性蛋白質の割合がLCI値として40%以下であることを特徴とする大豆蛋白素材である。
(大豆蛋白素材Bの製品形態)
大豆蛋白素材Bの製品の形態としては上記要件を満たす限り特に限定されず、具体的には豆乳が挙げられるが、豆乳以外の形態としては、該豆乳を原料としてさらに蛋白質の純度を高めた形態が挙げられ、典型的には豆乳から糖質、灰分等の水溶性成分を除去して蛋白質の純度を高めた分離大豆蛋白や、前記豆乳あるいは分離大豆蛋白の蛋白質をさらに分画してグリシニンあるいはβ−コングリシニンの純度を高めた分画大豆蛋白の形態が挙げられる。
【0027】
(大豆蛋白素材Bの蛋白質)
大豆蛋白素材Bの蛋白質含量は乾物あたりで30〜99重量%の範囲が好ましい。大豆蛋白素材が豆乳の形態の場合、通常は下限が乾物あたり45重量%以上、あるいは50重量%以上、あるいは55重量%以上であり、上限が70重量%以下、あるいは65重量%以下でありうる。蛋白質の分画や他の成分の添加など、加工方法によっては30重量%以上45重量%未満の範囲にもなりうる。また大豆蛋白素材が当該豆乳をさらに精製して蛋白質純度を高めた分離大豆蛋白の形態の場合は、下限が70重量%超、あるいは80重量%以上であり、上限は99重量%以下、あるいは95重量%以下でありうる。なお、本発明における蛋白質含量はケルダール法により窒素量として測定し、該窒素量に6.25の窒素換算係数を乗じて求めるものとする。
【0028】
脂質親和性蛋白質は、大豆の主要な酸沈殿性大豆蛋白質の内、グリシニン(7Sグロブリン)とβ−コングリシニン(11Sグロブリン)以外のマイナーな酸沈殿性大豆蛋白質群をいい、レシチンや糖脂質などの極性脂質を多く随伴するものである。以下、単に「LP」と略記することがある。
LPは雑多な蛋白質が混在したものであるが故、各々の蛋白質を全て特定し、LPの含量を厳密に測定することは困難であるが、下記LCI(Lipophilic Proteins Content Index:大豆蛋白質中の脂質親和性蛋白質含有割合))値を求めることにより推定することができる。
これによれば、大豆蛋白素材B中の蛋白質のLCI値は通常40%以下、より好ましくは38%以下、さらに好ましくは36%以下である。
通常の未変性(NSI 90以上)の大豆を原料として一般的な大豆蛋白素材を製造する場合ではLPは可溶性の状態で存在するため、水抽出すると水溶性画分側へ抽出される。一方、大豆蛋白素材Bでは、LPを原料大豆中において加熱処理によって変性させ不溶化させて製造するため、LPが抽出されにくく不溶性画分側に残る。
このように蛋白質中におけるLPの割合を低減することによって脂質の含有量を極めて低レベルに保った大豆蛋白素材を得ることがきる。
【0029】
○蛋白質の各成分の組成分析
大豆蛋白素材Bの蛋白質の各成分組成はSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析することができる。
界面活性剤であるSDSと還元剤であるメルカプトエタノールの作用によって蛋白質分子
間の疎水性相互作用、水素結合、分子間のジスルフィド結合が切断され、マイナスに帯電した蛋白質分子は固有の分子量に従った電気泳動距離を示ことにより、蛋白質に特徴的な泳動パターンを呈する。電気泳動後に色素であるクマシーブリリアントブルー(CBB)にてSDSゲルを染色した後に、デンシトメーターを用い、全蛋白質のバンドの濃さに対する各種蛋白質分子に相当するバンドの濃さが占める割合を算出する方法により求めることができる。
【0030】
〔LP含量の推定・LCI値の測定方法〕
(a) 各蛋白質中の主要な蛋白質として、7Sはαサブユニット及びα'サブユニット(α+α')、11Sは酸性サブユニット(AS)、LPは34kDa蛋白質及びリポキシゲナーゼ蛋白質(P34+Lx)を選択し、SDS−PAGEにより選択された各蛋白質の染色比率を求める。電気泳動は表1の条件で行うことが出来る。
(b) X(%)=(P34+Lx)/{(P34+Lx)+(α+α’)+AS}×100(%)を求める。
(c) 低変性脱脂大豆から調製された分離大豆蛋白のLP含量は凡そ38%となることから、X=38(%)となるよう(P34+Lx)に補正係数k*=6を掛ける。
(d) すなわち、以下の式によりLP推定含量(Lipophilic Proteins Content Index、以下
「LCI」と略する。)を算出する。
【0032】
大豆蛋白素材Bは糖質及び蛋白質が乾物の大部分を占める主成分であることができ、この場合は炭水化物(乾物から脂質、蛋白質及び灰分を除いたもの)の含量は、蛋白質との総含量で表すと乾物あたり80重量%以上が好ましく、より好ましくは85重量%以上である。乾物の残成分は灰分と微量の脂質からほぼ構成され、灰分は乾物当たり通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下である。食物繊維は炭水化物に含まれるものの、大豆蛋白素材Aは食物繊維質が除去されているので、乾物当たり3重量%以下、好ましくは2重量%以下の微量である。
【0033】
(大豆蛋白素材Bの脂質)
大豆蛋白素材Bは、原料である大豆粉の脂質含量/蛋白質含量の比よりも低い値の脂質しか含まれず、中性脂質と共に極性脂質の含量も低いことが好ましい。これに対し、一般に脱脂豆乳などは大豆をヘキサンで脱脂した脱脂大豆を水抽出して得られるが、この脱脂豆乳は極性脂質が除去されておらずなお多く含まれる。
そのため、大豆蛋白素材B中の脂質含量は、試料を凍結乾燥後、クロロホルム:メタノールが2:1(体積比)の混合溶媒を用い、常圧沸点において30分間抽出された抽出物量を総脂質量として、脂質含量を算出した値とする。溶媒抽出装置としてはFOSS社製の「ソックステック」を用いることができる。なお上記の測定法は「クロロホルム/メタノール混合溶媒抽出法」と称するものとする。
【0034】
大豆蛋白素材Bは、脂質含量が蛋白質含量に対して10重量%未満が好ましく、より好ましくは9重量%未満、さらに好ましくは8重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、さらに好ましくは4重量%以下であり、3重量%以下とすることも可能である。すなわち蛋白質よりも中性脂質と極性脂質を含めた総脂質が極めて少ない大豆蛋白素材が1つの好ましい態様である。LPが少なくかつ総脂質が少ない大豆蛋白素材を乳酸発酵に供することにより、青臭みが極めて感じにくいすっきりとした風味の乳酸発酵物を得ることができる。このような素材としては、例えば特開2012−16348号に開示される「減脂大豆蛋白素材」が該当する。通常の有機溶剤を用いて脱脂された脱脂大豆から抽出した脱脂豆乳も中性脂質は殆ど含まれないが、極性脂質が一部抽されるため、蛋白質に対する脂質含量はおよそ5〜6重量%である。この態様の場合、乾物あたりでの脂質含量も5重量%以下が好ましく、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以下でありうる。
【0035】
(大豆蛋白素材Bの乾物含量)
大豆蛋白素材Bが豆乳の形態で、性状が液体の場合、乾物(dry matter)は通常3〜20重量%程度であるが、特に限定されるものではない。すなわち加水して低粘度の液状としたものや、減圧濃縮や凍結濃縮等の濃縮加工により高粘度化したものであってもよく、また噴霧乾燥や凍結乾燥等の粉末加工により粉末状としたものであってもよい。
【0036】
本発明において、大豆乳化組成物A及び大豆蛋白素材Bを併用して植物性チーズ様食品を調製するが、大豆乳化組成物A由来の蛋白質含量は0.6〜1.4重量%であり、より好ましくは0.7〜1.2重量%、最も好ましくは0.7〜1.0重量%である。下限未満ではメルティ性が低下し、乳味感に乏しくなる傾向がある。逆に上限を超えると豆乳感がやや強すぎて、硬さ低下によるシュレッド適性が低下する傾向にある。また、大豆蛋白素材B由来の蛋白質含量は0.6〜1.5重量%であり、より好ましくは0.9〜1.5重量%である。下限未満では、豆乳感がやや強すぎて、硬さ低下によるシュレッド適性が低下する傾向にある。逆に上限を超えると、メルティ性が低下し、豆乳感が希薄になり乳味感が低下する傾向にある。
【0037】
本発明において、大豆乳化組成物A由来の蛋白質と大豆蛋白素材B由来の蛋白質の合計量は1〜3重量%であるのが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5重量%である。合計量が1重量%未満であると、豆乳感が希薄になり乳味感に乏しいものになり、硬さ低下によるシュレッド適性が低下する傾向にある。逆に、3重量%を超えると豆乳感がやや強すぎて、乳味感が乏しくなる傾向にある。
【0038】
大豆乳化組成物A由来の蛋白質の大豆蛋白素材B由来の蛋白質に対する含有比率は、0.2〜2であるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.5である。含有比率が0.2未満であると、豆乳感が希薄になり、乳味感に乏しくなる傾向がある。逆に上限を超えると豆乳感がやや強すぎて、やはり乳味感が乏しくなる傾向にある。
【0039】
本発明において、大豆乳化組成物Aと大豆蛋白素材Bを併用して植物性チーズ様食品を調製するが、その調製の一態様は以下の通りである。
大豆乳化組成物Aとして、例えば特開2013-143931号公報の記載の生クリーム様性状の大豆乳化組成物(乾物含量15〜30重量%、乾物中の蛋白質含量25〜50重量%、乾物中の脂質含量40〜75重量%)を使用し、大豆蛋白素材Bとして、例えば特開2012−16348号公報記載の減脂大豆蛋白素材(乾物含量3〜20重量%、乾物中の蛋白質含量45〜70重量%、乾物中の脂質含量10重量%以下)使用する場合は、大豆乳化組成物A10〜24重量部と大豆蛋白素材B13〜27重量部を調合し、好ましくは大豆乳化組成物Aと大豆蛋白素材Bの合計量を30〜50重量部となるよう調合することにより、目的とする植物性チーズ様食品を得ることができる。
【0040】
本発明における植物性チーズ様食品を調製する別の一態様は、大豆乳化組成物Aとして前記生クリーム様性状の大豆乳化組成物に代えて、その濃縮物や乾燥粉末を使用することができる。また、大豆蛋白素材Bとして前記減脂大豆蛋白素材に代えて、その濃縮物や乾燥粉末を使用することができる。かかる濃縮物や乾燥粉末を使用する場合は、大豆乳化組成物Aと大豆蛋白素材B由来の蛋白質含量を調整するよう適量の水に分散、溶解して、乳化油脂組成物を調製することができる。
【0041】
(酸処理澱粉)
本発明の植物性チーズ様食品は酸処理澱粉を含有することが重要である。酸処理澱粉とは未処理の澱粉を塩酸や硫酸等の酸で処理した加工澱粉であり、エンドウ由来、馬鈴薯由来、タピオカ由来、米由来、ワキシーコーン由来、コーン由来などの酸処理澱粉を使用することができる。これらの中でも大豆蛋白質含有チーズ様食品の加工適性の点から原料由来では、エンドウ由来又は馬鈴薯由来の酸処理澱粉を用いることが好ましい。また、大豆蛋白質含有チーズ様食品調製時における調合粘度の点からはエンドウ由来の酸処理澱粉を用いることが最も好ましい。
本発明においては、酸処理澱粉を植物性チーズ様食品中に3〜25重量%、好ましくは5〜20重量%、更に好ましくは10〜20重量%含有することが好ましい。
【0042】
(油脂)
○SFC
本発明の植物性チーズ様食品は、SFC(固体脂含量)が10℃で45%以上かつ20℃で20%以上である油脂を含有することが重要である。チーズ様食品の加工適性の点から、10℃でのSFCは50%以上がより好ましく、55%以上がさらに好ましい。また、20℃でのSFCは25%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。かかる油脂としては、食用として使用できるもので融点20〜50℃程度のものを広く採用することができ、例えばナタネ油、大豆油、ひまわり油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂が例示できる
【0043】
○トリグリセリド組成
さらに、上記範囲のSFCを有する油脂の中でもP2O型トリグリセリド(但し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を示す)を8%以上、より好ましくは10%以上含むものが、大豆蛋白質含有チーズ様食品の成形加工適性の点から好ましい。
P2O型トリグリセリドは、トリグリセリド分子内における脂肪酸の位置異性体を限定するものではなく、1,3−パルミトイル,2−オレイルグリセリンと1,2−パルミトイル,3−オレイルグリセリンの双方を意味する。P2O型トリグリセリドは、パーム油を分別して得られるパームオレインを更に分別して得られるパーム油中融点部を使用するのが好ましいが、それらを硬化したり、あるいはオレイン酸、パルミチン酸を含む油脂のエステル交換等によっても得ることができる。
【0044】
○上昇融点
本発明の植物性チーズ様食品は風味、口溶けの点から上昇融点が20〜50℃、好ましくは25〜45℃、より好ましくは30〜40℃の範囲の油脂を用いることが好ましい。
【0045】
○油脂含量
本発明の植物性チーズ様食品は油脂を10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%含有することが適当であり、上記油脂含量において、油脂がより良好な結晶のネットワークを形成し、酸処理澱粉の老化が進行することで、植物性チーズ様食品の成形加工適性が得られると考えられる。
【0046】
本発明の植物性チーズ様食品は植物性油脂以外の油脂として、バター、生クリームなどに由来する乳脂などを少量含有することもでき、植物性チーズ様食品の風味を向上させることができる。また、植物性チーズ様食品中にナチュラルチーズ及び/又はプロセスチーズを含有させることもでき、少量のナチュラルチーズ及び/又はプロセスチーズを含有させることにより、より植物性チーズ様食品の風味を向上させることができる。
ただし純植物性の植物性チーズ様食品に調製する場合は、動物由来の油脂やナチュラルチーズ及び/又はプロセスチーズの含量を0重量%とする必要がある。
【0047】
○増粘剤
本発明の植物性チーズ様食品は、さらに増粘剤を含有させることにより、植物性チーズ様食品に、より粘りを付与でき、シュレッドなどの成形加工適性が、さらに向上するので好ましい。増粘剤としては、ヒドロキシプロピル化澱粉などの加工澱粉、ローカストビーンガム、グアガム等を用いることが好ましい。
【0048】
○乳化剤
本発明の植物性チーズ様食品は、風味を害しない程度の乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の乳化剤を使用することができ、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、プロプレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド等各種有機酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが例示できる。
【0049】
以上の乳化剤のほかに、公知の添加剤として、リン酸塩等のpH調整剤等も使用することができる。さらに本発明の植物性チーズ様食品は、風味付与の目的でミルクフレーバー、チーズフレーバー、豆乳フレーバーなどの香料、各種香辛料、フルーツピューレやジャム類、甘味付与の目的でスクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの甘味料、また着色の目的でベータカロチンやパプリカ色素、アナトー色素などの着色料を使用することができる。また、日持ち向上の目的で、グリシン、酢酸ナトリウム、卵白リゾチームなどの日持ち向上剤を使用することもできる。
【0050】
(植物性チーズ様食品の物性)
本発明の植物性チーズ様食品は、上記の組成を有し、さらに物性として、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが500g〜2000g/19.6mm2であることが好ましく、より好ましくは700g〜1800gの硬さであると、シュレッド加工に適した物性となる。
なお、本発明の植物性チーズ様食品のレオメーターによる硬さの測定は、サンプルを株式会社レオテック製のレオメーター「RT−2002J」と直径5mm円形プランジャーを用い、テーブルスピード50mm/分の条件で測定するものとする。サンプルとしては、製造後に5℃、7日間保管したものを用いた。
【0051】
(成形チーズ様食品)
本発明の植物性チーズ様食品は上記の物性を有することにより、優れた成形加工適性を有し、スライス状、サイノメ状、タンザク状またはシュレッド状などの適当な形状にカットし、大豆蛋白質含有成形チーズ様食品を提供することが可能となる。
【0052】
(メルティ性)
本発明の植物性チーズ様食品は、加熱によりナチュラルチーズ様のメルティ性を有することを特徴とし、200℃で5分間加熱されることにより、ペースト状を呈し、良好な加熱溶融性と適度なオイルオフを示すナチュラルチーズ様メルティ性を有する植物性チーズ様食品を提供することができる。メルティ性の有無の評価は、具体的には、本発明では以下の方法で評価する。
植物性チーズ様食品をカットし、およそ30×5×3mmのシュレッド状の植物性チーズ様食品を調製し、内径85mm、厚さ30mmの円形の耐熱性金属容器内にろ紙を置いて10g載せ、1gの水をろ紙に添加した後、200℃のオーブンで5分間加熱し、メルティ性(加熱溶融性、オイルオフの有無、焦げの有無)を評価する。
【0053】
(溶融後冷却状態での展延性)
本発明の植物性チーズ様食品は、加熱により溶融した後、再度冷却しても展延性を有し、ソフトな食感を維持することが特徴である。展延性の有無の評価は、具体的には、本発明では以下の方法で評価する。
植物性チーズ様食品をカットし、およそ30×5×3mmのシュレッド状の植物性チーズ様食品を調製し、アルミホイル上に10g載せ、200℃のオーブンで5分間加熱し加熱溶融させた後に、20℃まで冷却した状態で、ヘラで横に広げた際に該食品がアルミホイル上に延び広げられるか否かを評価する。
本発明において「ソフトな食感」とは、該食品を加熱溶融させる前の硬さと比較して柔らかい物性をいうが、具体的には上記のように該食品が加熱溶融後に冷却されても展延性を有している場合に、ソフトな食感を維持していると評価することができる。
展延性をより具体的な数値として表す場合には、該食品を加熱溶融後に20℃まで冷却した状態で、レオメータ測定値(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分)による硬さとして、100g/19.6mm2未満、より好ましくは50g/19.6mm2以下となるような物性をいう。
【0054】
(製造方法)
本発明の植物性チーズ様食品の製造方法としては、例えば、大豆乳化組成物A、大豆蛋白素材B、油脂、酸処理澱粉、食塩、pH調整剤、色素および水が混合された水中油型乳化物を予備乳化し、有機酸及び/または乳酸発酵によりpH3.5〜5.7にpH調整し、均質化した後、殺菌及び冷却の工程を経て製造することができる。
前記pH調整は、有機酸やアルカリ性塩を用いてpHを3.5〜5.7に調整することが好ましいが、水中油型乳化物を乳酸発酵することにより該pH範囲に調整することもできる。乳酸発酵する場合は乳酸菌スターターを用い、15〜45℃で、pH3.5〜5.7好ましくはpH4〜5.5になるまで行う。
pHが5.7を超えると日持ちが悪くなる傾向を示し、pHが3.5未満では酸味が強く、植物性チーズ様食品として使用したときに、食品全体としてのバランスが悪くなるため、上記範囲内に調整するのが適当である。加熱殺菌は澱粉を糊化させる目的もあり、好ましくは70〜95℃にて実施する。
【0055】
上記の製造方法においてはバッチ式、連続式のいずれの方法も採用できるが、本発明の植物性チーズ様食品は、酸処理澱粉を含有することを特徴としていることから、従来のナチュラルチーズやプロセスチーズといった蛋白質のゲルを骨格としたチーズと異なり、加熱処理工程において、バッチ生産ではなく、チューブ式熱交換器、プロセスチーズ製造に用いられる高速せん断クッカー、直接蒸気吹込み式殺菌装置から選択されるいずれかの1以上の装置を用いて連続的に加熱処理を行う連続生産が可能であることも特徴である。連続的に加熱処理を行う熱交換器として、掻きとり式連続熱交換機などが挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を示し、本発明の詳細をより具体的に説明する。なお、例中、「部」あるいは「%」はいずれも重量基準を表すものとする
各例における風味評価は、下記基準でパネラー5人の平均値により評価した。
(風味評価基準)
(豆乳風味):◎程よく、すっきりした豆乳風味
○やや弱いが、すっきりした豆乳風味
△豆乳風味が弱すぎる又はやや強すぎる
×豆乳風味が殆どない又は強すぎる
(乳味感):◎非常に良好 ○:良好 △:やや弱い ×:乳味感なし
(コク味):◎非常に良好 ○:良好 △:やや弱い ×:コク味なし
【0057】
実施例1
大豆乳化物A(不二製油(株)製「濃久里夢」:乾物含量19.8%、乾物あたりの蛋白含量28.3%、乾物あたりの脂質62.1%、LCI値67%)12部、大豆蛋白素材B(不二製油(株)製「美味投入」:乾物含量10.0%、乾物あたりの蛋白質含量54.0%、乾物あたりの脂質5%、LCI値34%)25部、パーム油中融点画分(SFC:10℃で90%、20℃で80%/P2O型トリグリセリド含量65%/上昇融点30℃)25部、エンドウ由来の酸処理澱粉18部、食塩1.2部、水12部、タピオカ由来加工澱粉3部、酵母エキス0.2部、粉末セルロース3部、乳酸を含むpH調整剤1.1部及び色素0.001部を、55℃で10分間調合し、さらに100kg/cm2の圧力下で均質化した。
均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌、充填し、トンネルフリーザーにて急冷後、冷蔵庫でエージングを行い、植物性チーズ様食品を得た。
該チーズ様食品の物性(硬さ、加熱溶融性、加熱溶融後の展延性)と風味について、品質評価を行った。
該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.1%(大豆乳化物A由来:0.7%、大豆蛋白素材B由来:1.4%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが600g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0058】
比較例1
実施例1の大豆乳化物A12部、大豆蛋白素材B25部を、大豆乳化物A37部に変更して、実施例1同様に植物性チーズ様食品を調製した。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.1%(大豆乳化物A由来:2.1%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが350g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0059】
比較例2
実施例1の大豆乳化物A12部、大豆蛋白素材B25部及び水11部を、大豆乳化物B39部及び水9部に変更して、実施例1同様に植物性チーズ様食品を調製した。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.1%(大豆乳化物B由来:2.1%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが700g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。シュレッドなどの成形加工適性を有していた。200℃で5分間加熱した際には加熱溶融するが、ナチュラルチーズ様のオイルオフがなく、やや焦げの発生が認められた。風味的には、大豆の風味が弱く、水っぽく乳味感の乏しいものであった。
【0060】
比較例3
実施例1の大豆乳化物A12部、大豆蛋白素材B25部及び水11部を、市販の無調整豆乳(全固形分9.2%、蛋白質含量4.9%、脂質含量3.7%)40及び水8部に変更して、実施例1同様に植物性チーズ様食品を調製した。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.1%(無調整豆乳由来:2.1%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが650g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0061】
表2に、実施例1及び比較例1〜3の評価結果を示す。
表2
【0062】
表2に示すように、大豆乳化物A12部と大豆蛋白素材B25部を併用した実施例1は、シュレッドなどの成形加工適性と200℃で5分間加熱した際に加熱溶融しナチュラルチーズ様のオイルオフがあり、適度な豆乳風味と乳味感を有するものであった。大豆乳化物A37部を用いた比較例1は、シュレッドなどの成形加工適性がやや弱く、200℃で5分間加熱した際に加熱溶融しナチュラルチーズ様のオイルオフがあったが、豆乳風味がやや強く乳味感に乏しいものであった。逆に、大豆蛋白素材B39部を用いた比較例2は、シュレッドなどの成形加工適性と200℃で5分間加熱した際に加熱溶融したが、ナチュラルチーズ様のオイルオフがなく、やや焦げの発生が認められた。風味的には、大豆の風味が弱く、水っぽく乳味感の乏しいものであった。無調製豆乳40部を用いた比較例3は、ほぼ比較例2同様の結果であった。
【0063】
実施例2
実施例1において、大豆乳化物A12部と大豆蛋白素材B25部を、大豆乳化物A10部と大豆蛋白素材B27部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を得た。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.1%(大豆乳化物A由来:0.6%、大豆蛋白素材B由来:1.5%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが650g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0064】
実施例3
実施例1において、大豆乳化物A12部と大豆蛋白素材B25部を、大豆乳化物A15部と大豆蛋白素材B22部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を得た。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.0%(大豆乳化物A由来:0.8%、大豆蛋白素材B由来:1.2%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが600g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0065】
実施例4
実施例1において、大豆乳化物A12部と大豆蛋白素材B25部を、大豆乳化物A21部と大豆蛋白素材B16部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を得た。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.1%(大豆乳化物A由来:1.2%、大豆蛋白素材B由来:0.9%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが550g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0066】
比較例4
実施例1において、大豆乳化物A12部と大豆蛋白素材B25部を、大豆乳化物A6部と大豆蛋白素材B31部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を得た。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.0%(大豆乳化物A由来:0.3%、大豆蛋白素材B由来:1.7%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが580g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0067】
比較例5
実施例1において、大豆乳化物A12部と大豆蛋白素材B25部を、大豆乳化物A27部と大豆蛋白素材B10部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を得た。該チーズ様食品の油脂含量は30%、蛋白質含量は2.0%(大豆乳化物A由来:1.5%、大豆蛋白素材B由来:0.5%)、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが400g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0068】
表3に、実施例2〜4及び比較例4〜5の評価結果を示す。
表3
【0069】
表3に示すように、大豆乳化物A由来の蛋白質が0.6〜1.2%、大豆蛋白素材B由来の蛋白質が0.9〜1.5%の実施例2〜4は、シュレッドなどの成形加工適性と200℃で5分間加熱した際に加熱溶融しナチュラルチーズ様のオイルオフがあり、適度な豆乳風味と乳味感を有するものであった。一方、大豆乳化物A由来の蛋白質が0.3%、大豆蛋白素材B由来の蛋白質が1.7%の比較例4は、シュレッドなどの成形加工適性と200℃で5分間加熱した際に加熱溶融したが、ナチュラルチーズ様のオイルオフがなく、やや焦げの発生が認められた。また、大豆乳化物A由来の蛋白質が1.5%、大豆蛋白素材B由来の蛋白質が0.5%の比較例5は、シュレッドなどの成形加工適性がやや弱く、200℃で5分間加熱した際に加熱溶融しナチュラルチーズ様のオイルオフがあったが、豆乳風味がやや強く乳味感に乏しいものであった。
【0070】
実施例5
実施例1において、パーム油中融点画分25部を精製硬化ヤシ油(SFC:10℃で89.8%、29℃で60.2%、上昇融点:32.5℃)25部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を調製した。この植物性チーズ様食品は、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが650g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0071】
比較例6
実施例1において、パーム油中融点画分25部を乳脂(SFC:10℃で46.8%、20℃で17.2%,上昇融点31℃)25部に代えて、実施例1同様に植物性チーズ様食品を調製した。この植物性チーズ様食品は、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが300g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0072】
比較例7
実施例1において、エンドウ由来の酸処理澱粉18部を米由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉18部に代えて、実施例1同様にして植物性チーズ様食品を調製した。この植物性チーズ様食品は、pHは5.4であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが250g/19.6mm2(直径5mm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、株式会社レオテック製)であった。
【0073】
表4に、実施例5及び比較例6〜7の評価結果を示す。
表4
【0074】
表4に示すように、パーム中融点画分に代えて精製硬化ヤシ油(SFC:10℃で89.8%、29℃で60.2%)を用いた実施例5は、実施例1同様のシュレッド性、メルティ性、豆乳風味、乳味感を有するものであった。一方、パーム中融点画分に代えて乳脂(SFC:10℃で46.8%、20℃で17.2%)を用いた比較例6では、メルティ性、豆乳風味、乳味感は良好であったが、シュレッド性に乏しいものであった。酸処理澱粉に代えて、リン酸架橋澱粉を用いた比較例7では、豆乳風味、乳味感は良好であったが、シュレッド性に乏しいとともにメルティ性のないものであった。