特許第6593571号(P6593571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6593571
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】クレーン
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/46 20060101AFI20191010BHJP
   B66D 1/44 20060101ALI20191010BHJP
   B66C 13/20 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B66D1/46 E
   B66D1/44 D
   B66C13/20
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-524091(P2019-524091)
(86)(22)【出願日】2018年12月18日
(86)【国際出願番号】JP2018046610
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-241947(P2017-241947)
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】増田 尚隆
(72)【発明者】
【氏名】漆原 健二
(72)【発明者】
【氏名】川野 貴史
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−187585(JP,A)
【文献】 特許第4527860(JP,B2)
【文献】 特開2013−237526(JP,A)
【文献】 特開2005−231808(JP,A)
【文献】 特開2012−062175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66C 19/00−23/94
B66D 1/00− 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
前記操作部の操作に基づいて高速モード及び低速モードの何れかの動作モードで作動し、フックが固定されたワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行うウインチ装置と、
オペレータが前記高速モード及び前記低速モードの何れかを選択するための選択部と、
吊り荷重を演算する荷重演算部と、
前記ワイヤロープの張力を演算する張力演算部と、
前記ウインチ装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記ウインチ装置は、前記高速モードに対応する第一モードと、前記低速モードに対応する第二モードとを切換可能な高低速油圧モータを、有し、
前記制御部は、前記選択部で選択されたモードが高速モードであり、かつ、前記操作部が中立状態から非中立状態である巻上げ側に操作された状態又は巻下げ側に操作された状態、かつ、前記吊り荷重が荷重閾値よりも小さく、かつ、前記張力が張力閾値よりも小さいと判定した場合に、前記高低速油圧モータを前記第一モードに切り換えて、前記ウインチ装置を前記高速モードで作動させることにより、前記操作部が巻上げ側に操作された場合には、前記ウインチ装置による前記ワイヤロープの巻き取りを開始させ、前記操作部が巻下げ側に操作された場合には、前記ウインチ装置による前記ワイヤロープの繰り出しを開始させる、
クレーン。
【請求項2】
前記高低速油圧モータは、高低速切換弁及び制御シリンダを有し、
前記高低速切換弁は、前記制御部の制御下で、前記高低速切換弁から前記制御シリンダに作動油を供給する第一状態と、前記高低速切換弁から前記制御シリンダへの作動油の供給を遮断する第二状態とを切り換え可能であり、
前記高低速油圧モータは、前記第二状態において、モータ容量が前記低速モードに対応する大容量側となり、前記第一状態において、前記モータ容量が前記高速モードに対応する小容量側となる、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記制御部は、前記ウインチ装置が前記高速モードで作動している状態において、前記吊り荷重が前記吊り荷重閾値以上の状態が所定時間連続している場合、又は、前記張力が前記張力閾値以上の状態が所定時間連続している場合に、前記動作モードを前記高速モードから前記低速モードに切り換える切換制御を行う、請求項1に記載のクレーン。
【請求項4】
前記制御部は、前記切換制御の後、前記操作レバーが中立になるまで、前記動作モードを前記低速モードに維持する、請求項3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記制御部は、前記動作モードが前記高速モードである状態において、前記選択部により前記低速モードが選択された場合に、前記低速モードで作動するように前記ウインチ装置を制御する、請求項1に記載のクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関する。特に、本発明は、高低速油圧モータの容量を検出荷重により制御するウインチシステムを備えるクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンの油圧ウインチによって駆動されるワイヤロープには、広範囲の張力と速度が求められる。それを達成するための手段の一つとして、可変容量形モータが使用される。
【0003】
また、ワイヤロープの先端に設けられたフックを自由降下させるためのフリーフォールという技術が存在している。この技術を実現するために、固定容量形モータとウインチドラムとの間にクラッチが設けられている。そして、作業者は、フリーフォールを実現する際、クラッチを切ることによりワイヤロープの先端に設けられたフックを自由降下させる。このようなフリーフォールの代わりに、ワイヤロープの高速での巻下げを実現する場合にも、可変容量形モータが使用される。
【0004】
移動式クレーンは、吊上げ荷重の荷重検出器を有する。その荷重検出器による検出荷重に基づいて可変容量モータの容量を制御する技術が開発されている。可変容量モータの一種に、大容量又は小容量のどちらかに切り換え可能な高低速油圧モータが存在する。
【0005】
特許文献1に記載されたウインチシステムの場合、過負荷防止装置により巻下げ操作の開始直前に演算した吊上げ荷重を巻下げ操作終了時まで実作用吊上げ荷重として記憶する。そして、この実作用吊り上げ荷重が、所定値よりも小さい場合に、ウインチシステムの動作モードが、高速モードに切り換えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4527860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたウインチシステムは、宙吊り状態の吊り荷を巻下げる時の技術である。そのため、ウインチ操作開始直前に過負荷防止装置により検出した吊上げ荷重がゼロとなる地切りからの巻上げ操作には適用できない。このため、特許文献1に記載された発明の場合、地切り時の作業性を向上できないといった課題を有する。
【0008】
本発明の目的は、作業性の向上を図れるクレーンを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るクレーンの一態様は、操作部と、操作部の操作に基づいて高速モード及び低速モードの何れかの動作モードで作動し、フックが固定されたワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行うウインチ装置と、オペレータが高速モード及び低速モードの何れかを選択するための選択部と、吊り荷重を演算する荷重演算部と、ワイヤロープの張力を演算する張力演算部と、ウインチ装置の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、選択部で選択されたモードが高速モードであり、かつ、操作部が中立状態から非中立状態へと操作され、かつ、吊り荷重が荷重閾値よりも小さく、かつ、張力が張力閾値よりも小さい場合に、高速モードで作動するようにウインチ装置を制御する。
【0010】
本発明によれば、作業性を向上できるクレーンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るラフテレーンクレーンを示す図である。
図2】ウインチシステムを示す図である。
図3】コントローラのブロック図である。
図4】コントローラで行われる処理を表すフローチャートである。
図5】コントローラで行われる処理を表すフローチャートである。
図6】コントローラで行われる処理を表すフローチャートである。
図7】吊り荷を吊上げている状態のラフテレーンクレーンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るラフテレーンクレーン2を示している。ラフテレーンクレーン2は、ウインチシステム1を有する。ラフテレーンクレーン2は、車両部3に旋回部4が旋回自在に搭載されている。車両部3にはアウトリガ5が設けられている。図1に示したラフテレーンクレーン2は、アウトリガ5が張り出されている。
【0013】
旋回部4の旋回フレーム6には、運転室7が搭載されている。運転室7には、ウインチシステム1の操作レバー10が配置されている。旋回フレーム6には、ウインチ11が配置されている。旋回フレーム6には、伸縮ブーム12が起伏自在に枢着されている。伸縮ブーム12と旋回フレーム6との間には起伏シリンダ13が配置されている。図1に示したラフテレーンクレーン2は、起伏シリンダ13により伸縮ブーム12が起仰された後に伸縮ブーム12が伸長した、クレーン作業姿勢である。
【0014】
図1に示すように、ウインチ11から繰り出されたワイヤロープ14は、伸縮ブームの先端部15とフック16との間で掛け回されている。フック16には吊り荷18を吊り下げる玉掛けワイヤロープ14が掛けられている。図1に示すラフテレーンクレーン2は、吊り荷18が地面20に接地された、地切り直前の状態である。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係るラフテレーンクレーン2のウインチシステム1を構成する油圧回路と制御ブロック図である。ウインチ11は、減速機23を介してウインチドラム22を正逆回転駆動可能な高低速油圧モータ21を有する。高低速油圧モータ21は、1回転に必要な容量を大小切り換えて供給流量に対する回転数を高速モード及び低速モードのうちの一方のモードに切り換えることができる。高低速油圧モータ21が高速モードの場合、ウインチ11の動作モードは高速モードである。一方、高低速油圧モータ21が低速モードの場合、ウインチ11の動作モードは低速モードである。高低速油圧モータ21のモータ容量は、常時大容量側に付勢されている。モータ容量は制御シリンダ24によって大小切換制御される。
【0016】
高低速油圧モータ21には巻上げ側の油路25と巻下げ側の油路26とが接続されている。巻上げ側の油路25にはカウンタバランス弁27が介装されている。巻上げ側の油路25と巻下げ側の油路26との間にはシャトル弁28が介装されている。シャトル弁28と制御シリンダ24とは、パイロット切換弁30を介して油路31により連絡されている。シャトル弁28は、巻上げ側の油路25又は巻下げ側の油路26に発生したモータ作動圧を拾って、パイロット切換弁30に伝達する。パイロット切換弁30は制御シリンダ24にモータ作動圧を連絡・遮断切換する。
【0017】
パイロット切換弁30は、電磁切換弁33と油路34で連絡されている。電磁切換弁33から油路34を経由してパイロット切換弁30にパイロット圧が送られると、パイロット切換弁30は連絡側に切り換わる。パイロット切換弁30と電磁切換弁33とで高低速切換弁が構成される。パイロット切換弁30から制御シリンダ24にモータ作動圧が連絡されると(作動油が供給されると)、高低速油圧モータ21は、高速側に対応する小容量側に切り換えられる。一方、パイロット切換弁30から制御シリンダ24への作動油の供給が遮断されると、高低速油圧モータ21は、低速側に対応する大容量側に切り換えられる。
【0018】
ウインチ11に供給する圧油の方向と流量を制御するパイロット切換弁32には、巻上げ側の油路25と巻下げ側の油路26とが連絡されている。パイロット切換弁32は、巻上げ側の電磁比例弁35と油路37で連絡されている。パイロット切換弁32は、巻下げ側の電磁比例弁36と油路38で連絡されている。パイロット切換弁32と油圧ポンプ40とはポンプ側の油路42で連絡されている。パイロット切換弁32と油タンク41とは戻り側の油路43で連絡されている。パイロット切換弁32は、電磁比例弁35と電磁比例弁36とによって切り換え方向と切換量が制御される。
【0019】
図2に示すように、コントローラ50は、操作レバー10、速度モード選択手段51、荷重用検出手段52、及び、ワイヤロープ掛け数入力手段53とそれぞれ信号線で連絡されている。荷重用検出手段52は、具体的にはそれぞれ既知の、ブーム長さ検出器54、ブーム角度検出器55、及び、起伏シリンダ圧力検出器56により構成されている。また、コントローラ50は、高低速切換の電磁切換弁33、巻上げ側の電磁比例弁35、及び、巻下げ側の電磁比例弁36とそれぞれ信号線で連絡されている。
【0020】
操作レバー10は、運転室(図1参照)内に配置されており、操作レバー10の切り換える方向により巻上げ側の電磁比例弁35と巻下げ側の電磁比例弁36との何れかの弁に通電するかが選択される。さらに、操作レバー10の操作量に応じて電磁比例弁35、36に送られる信号の強さのレベルが変わる。操作レバー10は、操作部の一例に該当する。
【0021】
速度モード選択手段51は、運転室(図1参照)内に配置されている。運転室内のオペレータは、速度モード選択手段51により、高速側と低速側との何れかを選択できる。速度モード選択手段51は、選択部の一例に該当する。
【0022】
ワイヤロープ掛け数入力手段53は、運転室(図1参照)内に配置されている。運転室内のオペレータは、ワイヤロープ掛け数入力手段53から、認識した掛け数を手動入力できる。なお、ワイヤロープ掛け数入力手段53は、ワイヤロープ掛け数検出器を伸縮ブームの先端部15(図1参照)に配置してワイヤロープ掛け数を自動入力するようにしてもよい。
【0023】
図3は、コントローラ50のブロック図である。コントローラ50は、吊り荷重演算部60、ワイヤロープ張力演算部61、吊り荷重比較部62、ワイヤロープ張力比較部63、及び、駆動制御部64を有する。
【0024】
吊り荷重演算部60は、一例として、ブーム長さ検出器54が検出したブーム長さと、ブーム角度検出器55が検出したブーム角度と、起伏シリンダ圧力検出器56が検出した起伏シリンダ圧力とから吊り荷重を演算する。吊り荷重演算部60は、荷重演算部の一例に該当する。
【0025】
ワイヤロープ張力演算部61は、一例として、吊り荷重演算部60が演算した吊り荷重と、ワイヤロープ掛け数入力手段53によって入力されたワイヤロープ掛け数とからワイヤロープ張力を演算する。ワイヤロープ張力演算部61は、張力演算部の一例に該当する。
【0026】
吊り荷重比較部62は、吊り荷重演算部60で演算された吊り荷重演算値と、吊り荷重比較部62が記憶している1つの吊り荷重閾値とを比較する。吊り荷重閾値は、後述するワイヤロープ張力閾値よりも大きな値である。ワイヤロープ張力比較部63は、ワイヤロープ張力演算部61で演算されたワイヤロープ張力演算値と、ワイヤロープ張力比較部63が記憶している1つのワイヤロープ張力閾値とを比較する。ワイヤロープ張力閾値は、モータ容量が小容量に切り換えられた高低速油圧モータ21の許容圧力及びウインチシステム1の仕様等を考慮され設定されてよい。
【0027】
駆動制御部64は、一例として、操作レバー10、速度モード選択手段51、吊り荷重比較部62、ワイヤロープ張力比較部63からの信号に基づき電磁切換弁33の切り換え信号を出力する。具体的には、駆動制御部64は、速度モード選択手段51が高速側に選択され(条件1)、操作レバー10が中立から非中立に操作され(条件2)、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さく(条件3)、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さい(条件4)、との4つの条件を全て満たす場合には、電磁切換弁33を高速側に切り換える信号を出力する。
【0028】
換言すれば、駆動制御部64は、速度モード選択手段51で選択された動作モードが高速モード(高速側)であり、かつ、操作レバー10が中立状態から非中立状態へと操作され、かつ、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さく、かつ、ワイヤロープ張力がワイヤロープ張力閾値よりも小さい場合に、高速モードで作動するようにウインチ11を制御する。つまり、本実施形態の場合、オペレータが速度モード選択手段51により高速側を選択している場合でも、上記条件2〜条件4が満たされない場合には、ウインチ11は、高速モードで作動しない。なお、駆動制御部64は、制御部の一例に該当する。
【0029】
上述した実施の形態に係るラフテレーンクレーン2のウインチシステム1の作動を説明する。図4は、コントローラ50で行われる処理を表すフローチャートである。
【0030】
(高速モード選択で地切り巻上げの場合)
吊り荷18が地面20に接地した状態(図1参照)から高速モードで巻上げる場合の制御の一例を説明する。図4に示すように、ステップS1において、コントローラ50は、速度モード選択手段51において選択されたモードが高速側(高速モード)であるか否かを判断する。ステップS1において、速度モード選択手段51が高速側に選択されている場合(ステップS1において“YES”)、制御処理は、ステップS2に遷移する。一方、ステップS1において、速度モード選択手段51において選択されたモードが高速側(高速モード)ではない場合(ステップS1において“NO”)、制御処理は、ステップS15に遷移する。本例の場合、コントローラ50は、ステップS1においてYESと判断する。
【0031】
次に、図4のステップS2において、コントローラ50は、操作レバー10が中立(中立状態とも称する。)であるか否かを判断する。ステップS2において、操作レバー10が中立である場合(ステップS2において“YES”)、制御処理は、ステップS1に移行する。また、ステップS2において、操作レバー10が中立でない場合(ステップS2において“NO”)、制御処理は、ステップS3に遷移する。なお、操作レバー10が中立でない場合とは、一例として、操作レバー10が中立状態から非中立状態に操作された状態である。非中立状態は、操作レバー10が巻上げ側に位置する状態と、巻下げ側に位置する状態とを含む。ステップS1とステップS2とが繰り返されることにより、コントローラ50は、操作モード選択手段51が高速側に選択されている状態において、操作レバー10が中立状態から非中立状態に切り換えられたか否かを判断する。本例の場合、コントローラ50は、ステップS2においてNOと判断する。
【0032】
一例として、図4のステップS2において、操作レバー10が中立から巻上げ側)に操作されると、図4のステップS3において、コントローラ50は、巻上げ側の電磁比例弁35に駆動信号を出力する。すると、図2に示した電磁比例弁35から油路37を経由してパイロット圧が作用し、パイロット切換弁32が巻上げ側に切り換えられる。その結果、油圧ポンプ40から油路42を経由して圧油が巻上げ側の油路25に送られる。こうして、巻上げ側の油路25には高低速油圧モータ21の作動圧が立つ。
【0033】
次に、図4のステップS4において、コントローラ50は、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さいか否かを判断する。一例として、地切り初期は、ワイヤロープ14の伸びと伸縮ブーム12のタワミが発生するため、吊り荷重演算値は非常に小さい。そのため、本例の場合、コントローラ50は、ステップS4においてYESと判断する。なお、吊り荷重閾値は、一例として、地切り作業を検出するための閾値であってよい。この場合、図4のステップS4において、コントローラ50は、吊り荷重演算値と吊り荷重閾値とを比較することにより、地切り作業を行っている状態か否かを判定する。
【0034】
次に、図4のステップS5において、コントローラ50は、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さいか否かを判断する。一例として、地切り初期は、ワイヤロープ14の伸びと伸縮ブーム12のタワミが発生するため、ワイヤロープ張力演算値は非常に小さい。そのため、地切り初期の場合、コントローラ50は、ステップS5においてYESと判断する。ここまでで、速度モード選択手段51が高速側に選択され(条件1)、操作レバー10が中立から非中立に操作され(条件2)、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さい(条件3)、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さい(条件4)、との4つの条件を全て満たすことが判断される。なお、ワイヤロープ張力閾値は、一例として、地切り作業を検出するための閾値であってよい。この場合、図4のステップS5において、コントローラ50は、ワイヤロープ張力演算値とワイヤロープ張力閾値とを比較することにより、地切り作業を行っている状態か否かを判定する。
【0035】
次に、図4のステップS6において、コントローラ50は、電磁切換弁33に高速側切換信号を出力するように駆動制御部64を制御する。図2に示すように、電磁切換弁33は連絡側に切り換わり、パイロット圧が油路34を経由してパイロット切換弁30に作用し、パイロット切換弁30は連絡側に切り換わる。すると、巻上げ側の油路25に発生していたモータ作動圧がシャトル弁28、パイロット切換弁30、及び、油路31を経由して制御シリンダ24に作用する。この結果、制御シリンダ24は、高低速油圧モータ21を高速側に切り換える。そして、制御処理は、図5に示すステップS7に遷移する。
【0036】
以上のように、速度モード選択手段51で高速モードを選択しておけば、現実の吊上げ荷重とは無関係に吊上げ荷重演算値とワイヤロープ張力演算値が小さい地切り初期には高速で巻上げをスタートする。
【0037】
次に、図5のステップS7において、コントローラ50は、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さくない状態で所定時間連続したか否かを判断する。ステップS7において、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さくない状態(吊り荷重演算値が吊り荷重閾値以上の状態)が所定時間連続している場合(ステップS7において“YES”)、制御処理は、図6のステップS11に遷移する。一方、ステップS7において、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さくない状態(吊り荷重演算値が吊り荷重閾値以上の状態)が所定時間連続していない場合(ステップS7において“NO”)、制御処理は、図5のステップS8に遷移する。
【0038】
一例として、上記所定時間には、数秒間が設定される。数秒間連続することを条件としたので、伸縮ブームあるいはワイヤロープの振動に伴う見かけ上の荷重変動により制御が不安定になることが防止される。地切り初期には、吊り荷重演算値は非常に小さい。このため、地切り初期の場合、コントローラ50は、ステップS7においてNOと判断する。なお、上記所定時間は、一例として、伸縮ブームあるいはワイヤロープに振動が生じた場合に、この振動に伴う見かけ上の荷重変動が生じてから、この荷重変動が収まるまでに要する時間を考慮して決定されてよい。
【0039】
次に、図5のステップS8において、コントローラ50は、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さくない状態(ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値以上の状態)で所定時間連続したか否かを判断する。ステップS8において、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さくない状態(ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値以上の状態)が所定時間連続している場合(ステップS8において“YES”)、制御処理は、図6のステップS11に移行する。一方、ステップS8において、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さくない状態(ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値以上の状態)が所定時間連続していない場合(ステップS8において“NO”)、制御処理は、図5のステップS9に移行する。
【0040】
一例として、ステップS7と同様に、所定時間としては数秒間が設定される。ここでも、地切り初期には、ワイヤロープ張力演算値は非常に小さいため、NOと判断される。なお、上記所定時間は、一例として、伸縮ブームあるいはワイヤロープに振動が生じた場合に、この振動に伴う見かけ上のワイヤロープ張力変動が生じてから、このワイヤロープ張力変動が収まるまでに要する時間を考慮して決定されてよい。
【0041】
次に、図5のステップS9において、コントローラ50は、速度モード選択手段51が低速側に選択されたか否かを判断する。ステップS9において、速度モード選択手段51が低速側に選択されている場合、制御処理は、図6のステップS11に移行する。一方、ステップS9において、速度モード選択手段51が低速側に選択されていない場合、制御処理は、図5のステップS10に移行する。なお、通常、速度モード選択手段により高速モードを選択して操作レバー10を巻上げ操作した直後に速度モード選択手段により低速側を選択することはありえないので、コントローラ50は、ステップS9において、NOと判断する。
【0042】
次に、図5のステップS10において、コントローラ50は、操作レバー10が中立か否かを判断する。ステップS10において、操作レバー10が中立の場合、制御処理は、ステップS13に遷移する。一方、ステップS10において、操作レバー10が中立でない場合(非中立の場合)、制御処理は、ステップS7に遷移する。なお、巻上げ操作を開始した直後の場合、操作レバー10は非中立であるため、コントローラ50は、ステップS10において、NOと判断する。以降、ステップS7からステップS10までの制御フローがループして連続する。すなわち、制御処理がステップS7からステップS10をループしている間、高低速油圧モータ21が高速モードの状態で、巻上げ動作が継続される。
【0043】
以上のように、地切り初期においては、現実の吊上げ荷重に関係なく、演算される吊上げ荷重とワイヤロープ張力とはゼロからスタートし徐々に増加していく。そのため、本発明に係る移動式クレーンのウインチシステムは、速度モード選択手段で高速モードを選択しておけば、吊上げ荷重演算値とワイヤロープ張力演算値が小さい地切り初期には高速で巻上げることができるためクレーン作業性が向上する。
【0044】
地切りが完了している状態(図7参照)において、コントローラ50が、図5のステップS7及びステップS8でNOと判断した場合には、ステップS7からステップS10までの制御フローのループが連続する。すなわち、この場合は、操作レバーが中立に戻されるまで(ステップS10)まで高低速油圧モータ21は高速モードで運転される。
【0045】
一方、地切り途中において、コントローラ50が、図5のステップS7又はステップS8でYESと判断した場合、図6のステップS11において、電磁切換弁33に低速側切換信号が出力される。
【0046】
この場合には、図3に示す駆動制御部64から電磁切換弁33に低速側切換信号が出力される。図2に示すように、電磁切換弁33は遮断側に切り換わり、パイロット切換弁30に作用していた油路34のパイロット圧はタンクに戻り、パイロット切換弁30は遮断側に切り換わる。さらに、制御シリンダ24に加えられていた圧油は、油路31、パイロット切換弁30を経由してタンクに戻る。すると、常時低速側に付勢されている高低速モータ21は低速側に戻る。
【0047】
この時、図4のステップS3で示した巻上げ側の電磁比例弁35への駆動信号出力は継続されているので、低速モードでの巻上げとなる。図6で示す低速モードでの運転に入ると、ステップS12において、コントローラ50は、操作レバー10が中立か否かを判断する。ステップS12において、操作レバー10が中立でないと判断されると、図6のステップS11とステップS12とで制御フローがループする。すなわち、高低速油圧モータ21の低速モードでの運転が継続する。
【0048】
図5に示したステップS7からステップS10がループする高速モードでの運転中、ステップS10で操作レバー10が中立にもどされた場合(ステップS10において“YES”)、制御処理は、ステップS13に遷移する。ステップS13において、電磁切換弁33(図2参照)に低速側切換信号が出力される。また、ステップS14において、巻上げ側の電磁比例弁35への駆動信号出力が停止する。すなわち、高低速油圧モータ21は低速側に戻ると共に、パイロット切換弁32は中立位置に切り換わり油圧ポンプ40からの圧油が高低速油圧モータ21に供給されなくなる。すると、高低速油圧モータ21は停止する。
【0049】
同様に、図6で示した低速モードでの運転中、ステップS12において、操作レバー10が中立の場合(ステップS12において“YES”)、図5のステップS14において巻上げ側の電磁比例弁35への駆動信号出力が停止し、低速モードで運転中の高低速油圧モータ21が停止する。
【0050】
(低速モード選択で地切り巻上げの場合)
吊り荷18が地面20に接地した状態(図1参照)から低速モードで巻上げる場合の一例を説明する。まず、図4のステップS1において、コントローラ50は、速度モード選択手段51(図3参照)が高速側に選択されたか否かを判断する。本例の場合、ステップS1において、コントローラ50は、NOと判断する。
【0051】
次に、図4のステップS15において、コントローラ50は、操作レバー10が中立か否かを判断する。ステップS15において操作レバー10が中立の場合(ステップS15において“YES”)、制御処理は、ステップ1に戻る。一方、ステップS15において操作レバー10が非中立(本例の場合、巻上げ側)の場合(ステップS15において“NO”)、巻上げ側の電磁比例弁35に駆動信号が出力される。
【0052】
次に、図2に示した電磁比例弁35から油路37を経由してパイロット圧が作用し、パイロット切換弁32が切り換えられる。すると、油圧ポンプ40から油路42を経由して圧油が巻上げ側の油路25に送られる。その結果、高低速モータ21は、低速モードでウインチドラム22を巻上げ側に駆動する。以降は、図6に示したフローを継続して低速モードでの運転を継続する。
【0053】
(高速モード選択で宙吊り状態から巻上下げの場合)
吊り荷18が地面20よりも離れた宙吊り状態(図7参照)から高速モードで巻上下げする場合の一例を説明する。
【0054】
まず、図4のステップS1において、コントローラ50は、速度モード選択手段51が高速側に選択されたか否かを判断する。本例の場合、ステップS1において、コントローラ50は、YESと判断する。
【0055】
次に、図4のステップS2において、コントローラ50は、操作レバー10が中立か否かを判断する。図4のステップS2において操作レバー10が非中立(巻上げ側又は巻下げ側)の場合(ステップS2において“NO”)、巻上げ側の電磁比例弁35に駆動信号が出力される。
【0056】
すると、図2に示した電磁比例弁35又は電磁比例弁36から油路37又は油路38を経由してパイロット圧が作用し、パイロット切換弁32が切り換えられる。すると、油圧ポンプ40から油路42を経由して圧油が巻上げ側の油路25又は巻下げ側の油路26に送られる。こうして、巻上げ側の油路25又は巻下げ側の油路26に高低速油圧モータ21の作動圧が発生する。なお、ステップS2において操作レバー10が中立の場合(ステップS2において“YES”)、操作レバー10が非中立となる状態までフローが継続する。
【0057】
次に、図4のステップS4において、コントローラ50は、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さいか否かを判断する。本例の場合、吊り荷18が宙吊り状態なのでワイヤロープ14の伸びと伸縮ブーム12のタワミの発生がないため、吊り荷重演算値は、ウインチシステム1が起動するとほぼ同時に真の吊り荷重値が演算される。そのため、ステップS4では真の吊り荷重値演算値と吊り荷重閾値とが比較される。ステップS4において真の吊り荷重値演算値が吊り荷重閾値よりも小さくない場合(ステップS4において“NO”)、制御処理は、図6のステップS11に遷移する。そして、ステップS11において、電磁切換弁33に低速側切換信号が出力される。その結果、ウインチ11が低速モードで作動する。
【0058】
一方、ステップS4において真の吊り荷重値演算値が吊り荷重閾値よりも小さい場合(ステップS4において“YES”)、制御処理は、ステップS5に遷移する。ステップS5において、コントローラ50は、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さいか否かを判断する。本例の場合、吊り荷18が宙吊り状態なので、ワイヤロープ14の伸びと伸縮ブーム12のタワミが発生しないため、ワイヤロープ張力演算値はウインチシステム1の起動とほぼ同時に真のワイヤロープ張力演算値が演算される。そのため、ステップS5で真のワイヤロープ張力演算値とワイヤロープ張力閾値とが比較される。ステップS5においてワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さくない場合(ステップS4において“NO”)、制御処理は図6のステップS11に遷移し、電磁切換弁33に低速側切換信号が出力され、ウインチ11が低速モードで作動する。
【0059】
ここまでで、速度モード選択手段51が高速側に選択され(条件1)、操作レバー10が中立から非中立に操作され(条件2)、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さい(条件3)、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さい(条件4)、との4つの条件を全て満たすかどうか判断される。上述したように、高速モード選択で宙吊り状態から巻上下げの場合には、地切りからの巻上げに比べ、非常に短時間で高速モードを許容する運転条件の判断が終了する。そして、高速モードでの運転、あるいは低速モードでの運転が継続する。なお、図5に記載した高速モードで運転中の制御フローの内容は、地切りからスタートした場合と同じであるのでその詳細な説明を省略する。
【0060】
(低速モード選択で宙吊り状態から巻上下げの場合)
吊り荷18が地面20よりも離れた宙吊り状態(図7参照)から低速モードで巻上下げする場合の一例を説明する。先ず、図4のステップS1において、コントローラ50は、速度モード選択手段51が高速側に選択されたか否かを判断する。本例の場合、ステップS1においてコントローラ50は、NOと判断する。
【0061】
次に、図4のステップS15において、コントローラ50は、操作レバー10が中立か否かを判断する。ステップS15において操作レバー10が中立の場合(ステップS15において“YES”)、制御処理は、ステップ1に遷移する。一方、ステップS15において操作レバー10が非中立(巻上げ側又は巻下げ側)の場合(ステップS15において“NO”)、ステップS16において、巻上げ側の電磁比例弁35又は巻下げ側の電磁比例弁36に駆動信号が出力される。これから以降は、図6に示したフローを継続して低速モードでの運転を継続するので詳細な説明を省略する。
【0062】
<付記>
本発明に係るクレーンが備えるウインチシステムは、以下のような構成であってもよい。
【0063】
<ウインチシステムの第1例>
具体的には、上記ウインチシステムは、高低速油圧モータにより駆動されるウインチと、ウインチを操作する操作レバーと、高低速油圧モータを高速モードか低速モードかに選択可能な速度モード選択手段と、伸縮ブームの長さと、起伏角度と、起伏シリンダの圧力とを検出する荷重用検出手段と、ワイヤロープの掛け数を入力するワイヤロープ掛け数入力手段と、操作レバー、速度モード選択手段、荷重用検出手段、及び、ワイヤロープ掛け数入力手段からの信号を受けウインチに駆動信号を出力するコントローラと、を備える。
高低速油圧モータは、モータ容量を大小切換制御する制御シリンダと、制御シリンダにモータ作動圧を連絡・遮断切換する高低速切換弁と、を備える。
モータ容量は、常時大容量側に付勢され、高低速切換弁が高速側に切り換えられると、モータ作動圧が前記制御シリンダに連絡されモータ容量が小容量側に切り換わるよう構成されている。
コントローラは、吊り荷重を演算する吊り荷重演算部と、ワイヤロープ張力を演算するワイヤロープ張力演算部と、吊り荷重演算値と吊り荷重閾値とを比較する吊り荷重比較部と、ワイヤロープ張力演算値とワイヤロープ張力閾値とを比較するワイヤロープ張力比較部と、操作レバー、速度モード選択手段、吊り荷重比較部、及びワイヤロープ張力比較部からの信号に基づき高低速切換弁の切り換え信号を出力する駆動制御部と、を備えている。
駆動制御部は、速度モード選択手段が高速側に選択され、操作レバーが中立から非中立に操作され、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さく、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さい、との4つの条件を全て満たす場合に、高低速切換弁を高速側に切り換える信号を出力する。
【0064】
このようなウインチシステムによれば、吊上げ荷重演算値及びワイヤロープ張力演算値が小さい地切り初期に高速で巻上げることができるためクレーン作業性が向上する。
【0065】
また、吊り荷重が吊り荷重閾値よりも小さいといった条件、及び、ワイヤロープ張力がワイヤロープ張力閾値よりも小さいといった条件を同時に満たす場合に高低速切換弁を高速側に切り換える。このため、誤ったワイヤロープ掛け数入力があった場合であっても、過大なロープ張力が作用するような条件での高速側への切り換わりが防止される。
【0066】
<ウインチシステムの第2例>
また、上述のウインチシステムを実施する場合に、好ましくは、高低速切換弁が高速側に切り換えられている状態において、吊り荷重比較部が、吊り荷重演算値が吊り荷重閾値よりも小さくない状態を所定時間連続して検出した場合、又は、ワイヤロープ張力比較部が、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さくない状態を所定時間連続して検出した場合には、駆動制御部は、高低速切換弁を低速側に切り換える信号を出力する。
【0067】
上述のウインチシステムによれば、高低速油圧モータの作動圧が許容範囲を超えることを防止できる。この理由は、吊り荷重が吊り荷重閾値よりも小さくない状態を所定時間連続して検出した場合、又は、ワイヤロープ張力比較部が、ワイヤロープ張力演算値がワイヤロープ張力閾値よりも小さくない状態を所定時間連続して検出した場合に、速度モード選択手段が高速側に切り換えられている状態であっても高低速油圧モータを低速側(大容量側)に切り換えるからである。
【0068】
また、閾値よりも小さくない状態が所定時間連続することを判定条件としたので、伸縮ブームあるいはワイヤロープの振動に伴う見かけ上の荷重変動によって発生する頻繁な高低速切換が防止され、安定した制御が行われる。
【0069】
<ウインチシステムの第3例>
また、上述のウインチシステムを実施する場合に、駆動制御部は、操作レバーが中立になるまで、高低速切換弁を低速側に切り換える信号の出力を継続すると、好ましい。
【0070】
このようなウインチシステムによれば、検出吊り荷重又は検出ワイヤロープ張力が閾値近傍であるような条件であっても、検出値の変動によってモードが切換ることを防止できる。この理由は、速度モード選択手段が高速側に切り換えられている状態において、高速モードで運転中に高低速油圧モータが低速側(大容量側)に切り換わると操作レバーが中立になるまで低速モードを維持するからである。
【0071】
<ウインチシステムの第4例>
また、上述のウインチシステムを実施する場合に、高低速切換弁が高速側に切り換えられている状態において、速度モード選択手段が低速側に切り換えられた場合には、駆動制御部は、高低速切換弁を低速側に切り換える信号を出力すると好ましい。
【0072】
このようなウインチシステムによれば、速度モード選択手段が高速側に切り換えられて高速モードで運転中の状態であっても、オペレータの意思による低速モードへの切り換えが可能となる。
【0073】
2017年12月18日出願の特願2017−241947の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0074】
1 ウインチシステム
10 操作レバー
11 ウインチ
12 伸縮ブーム
13 起伏シリンダ
14 ワイヤロープ
15 先端部
16 フック
18 吊り荷
2 ラフテレーンクレーン
20 地面
21 高低速油圧モータ
22 ウインチドラム
23 減速機
24 制御シリンダ
25 巻上げ側の油路
26 巻下げ側の油路
27 カウンタバランス弁
28 シャトル弁
3 車両部
30、32 パイロット切換弁
31、34 油路
33 電磁切換弁
35、36 電磁比例弁
37、38 油路
4 旋回部
40 ポンプ
41 タンク
42、43 油路
5 アウトリガ
50 コントローラ
51 速度モード選択手段
52 荷重用検出手段
53 ワイヤロープ掛け数入力手段
54 ブーム長さ検出器
55 角度検出器
56 圧力検出器
6 フレーム
60 吊り荷重演算部
61 ワイヤロープ張力演算部
62 吊り荷重比較部
63 ワイヤロープ張力比較部
64 駆動制御部
7 運転室
【要約】
操作部と、操作部の操作に基づいて高速モード及び低速モードの何れかの動作モードで作動し、フックが固定されたワイヤロープの巻き取り及び繰り出しを行うウインチ装置と、オペレータが高速モード及び低速モードの何れかを選択するための選択部と、吊り荷重を演算する荷重演算部と、ワイヤロープの張力を演算する張力演算部と、ウインチ装置の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、選択部で選択されたモードが高速モードであり、かつ、操作部が中立状態から非中立状態へと操作され、かつ、吊り荷重が荷重閾値よりも小さく、かつ、張力が張力閾値よりも小さい場合に、高速モードで作動するようにウインチ装置を制御する。これにより作業性に優れた移動式クレーンのウインチシステムを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7