(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593576
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】非常用照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 9/02 20060101AFI20191010BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20191010BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20191010BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20191010BHJP
【FI】
F21S9/02 200
F21S2/00 625
H01L33/00 L
F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-251135(P2014-251135)
(22)【出願日】2014年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-115441(P2016-115441A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川越 真
(72)【発明者】
【氏名】井上 優
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 修
(72)【発明者】
【氏名】冨山 和也
(72)【発明者】
【氏名】世良 大志郎
【審査官】
杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−127853(JP,A)
【文献】
特開2000−231810(JP,A)
【文献】
特開2010−092993(JP,A)
【文献】
特開2010−277952(JP,A)
【文献】
特開2013−058469(JP,A)
【文献】
特開2000−231905(JP,A)
【文献】
特開2013−239241(JP,A)
【文献】
特開2008−091232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 9/02
F21S 2/00
H01L 33/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射光のスペクトルが、490nm以上560nm以下の波長範囲での最大値がピーク値に対して60%以上に設定され、かつ、暗所視照度と明所視照度との比であるS/Pと理論発光効率との積が868より大きい
ことを特徴とする非常用照明装置。
【請求項2】
放射光のスペクトルの積分値が、490nm以下の波長範囲で495nm以上の波長範囲の40%以下に設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の非常用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば発光素子を光源とする非常用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば青色を発光するLEDに黄色の蛍光体を組み合わせることで白色光などの様々な波長の放射光を出力する照明装置が知られている。このような照明装置は、通常、明所視での照明条件に対して最適化されており、放射光のスペクトルは、主として青色光の450nm付近に波長ピークを有している。
【0003】
しかしながら、非常用の照明装置は、例えば停電時など、暗所視、あるいは薄明視条件下で点灯される。このような条件下では、色の同定が困難であるとともに、視対象物の輪郭や形状が見えにくくなるため、非常用照明装置の場合、暗所での視認性を向上することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−11812号公報
【特許文献2】特開2013−58469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、暗所での視認性を向上した非常用照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の非常用照明装置は、放射光のスペクトルが、490nm以上560nm以下の波長範囲での最大値がピーク値に対して60%以上
に設定され、かつ、暗所視照度と明所視照度との比であるS/Pと理論発光効率との積が868より大きいものである。
【0007】
また
、非常用照明装置は、放射光のスペクトルの積分値が、490nm以下の波長範囲で495nm以上の波長範囲の40%以下に設定されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、暗所での感度特性が大きい490nm以上560nm以下の波長範囲での放射光のスペクトルを増加させて、投入電力を大きくすることなく暗所での視認性を向上することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の非常用照明装置のスペクトルの例を示す特性図である。
【
図2】同上非常用照明装置を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態の構成を
図1および
図2を参照して説明する。
【0011】
図2において、11は非常用照明装置であり、この非常用照明装置11は、例えば廊下や通路などの天井面などの設置面に埋め込まれたり、この設置面に直付けされたりして配置される。
【0012】
そして、この非常用照明装置11は、概略として、商用交流電源などの外部電源eにより動作してバッテリ(バッテリパック)15を充電する充電回路16、この充電回路16により充電されたバッテリ15を電源として動作する点灯回路17、および、この点灯回路17により点灯される光源である光源モジュール18などを備えている。
【0013】
充電回路16としては、例えば定電流回路などが用いられる。なお、この充電回路16は、前段に雑音防止回路や整流回路を含んでいてもよい。
【0014】
点灯回路17は、例えばスイッチング素子を備えたDC−DCコンバータなどが用いられる。
【0015】
光源モジュール18は、発光素子19からの発光をレンズなどの図示しない配光制御部材によって配向制御するようになっている。
【0016】
発光素子19は、青色光を発するLEDチップが用いられ、例えばシリコーン樹脂など透明樹脂である封止樹脂により封止されている。この封止樹脂には、発光素子19からの青色光の一部により励起されて光を放射する蛍光体が混入され、所定のスペクトルを有する白色系の放射光が出力される。
【0017】
また、充電回路16と外部電源eとの間に外部電源eの電源電圧を監視する電源電圧監視回路を設け、外部電源eが所定の電圧値よりも低下したこと(例えば停電したこと)を電源電圧監視回路により検出して、バッテリ15から供給される電力により、点灯回路17が光源モジュール18(発光素子19)を点灯させるようにしてもよい。
【0018】
そして、この非常用照明装置11は、
図1に示すように、放射光のスペクトルが、490nm以上560nm以下の波長範囲での最大値がピーク値(450nm、あるいは450nm付近の波長での値)に対して60%以上に設定されている。また、この放射光のスペクトルの積分値は、490nm以下の波長範囲で495nm以上の波長範囲の40%以下、好ましくは38%に設定されている。すなわち、この非常用照明装置11の放射光は、通常のLEDを発光素子として用いる白色系の放射光に対して、緑色の成分を相対的に多く備える白色光となっている。ここで、この非常用照明装置11の放射光のスペクトルについては、例えば発光素子19を封止する封止樹脂中に含まれる蛍光体の配合を変えたり、光源モジュール18(発光素子19)の出力側を緑色のフィルタによって覆ったりすることで、上記のように設定することが可能である。
【0019】
なお、本実施形態において、LEDチップ、蛍光体を含有する封止樹脂、発光素子19、配光制御部材、フィルタ、光源モジュール18のうち少なくともいずれかを有するものを光源部としてもよい。
【0020】
一般に、所定の低照度条件下、例えば暗所視条件下での明るさ感度すなわち暗所視感度は、507nmにピーク値を有する感度曲線となる。また、所定の高照度条件下、例えば明所視条件下での明るさ感度すなわち明所視感度は、550nmにピーク値を有する感度曲線となる。そのため、例えば1〔lx〕などの薄明視条件下では、暗所視感度と明所視感度とが組み合わせられることで、薄明視感度が、507〜550nmの波長範囲で、かつ、507nm付近にピーク値を有する感度曲線となる。したがって、非常用照明装置11は、その暗所視照度のピーク値によって、暗所視条件下、あるいは薄明視条件下での明暗を予想できる。また、暗所視照度と明所視照度との比、いわゆるS/P(暗所視照度/明所視照度)と、理論発光効率との積が大きいほど、暗所視条件下あるいは薄明視条件下で明るく見えやすいことが知られている。
【0021】
したがって、本実施形態では、非常用照明装置11の放射光のスペクトル、すなわち、非常用照明装置11の光源部の放射光のスペクトルを、490nm以上560nm以下の波長範囲での最大値がピーク値に対して60%以上とする、または、放射光のスペクトルの積分値を、490nm以下の波長範囲で495nm以上の波長範囲の40%以下に設定することで、暗所での感度特性が大きい490nm以上560nm以下の波長範囲での放射光のスペクトルを増加させて、光源部への投入電力を大きくすることなく暗所視条件下および薄明視条件下での視認性を向上できる。したがって、特に暗所視条件下あるいは薄明視条件下で用いられる非常用照明装置11に好適な特性を有する。
【0022】
具体的に、
図1の実線に例を示すスペクトルを有する本実施形態の非常用照明装置11では、
図1の破線に例を示すスペクトルを有する従来例の非常用照明装置11と比較して、490nm以上560nm以下の波長範囲での最大値、および、495nm以上の波長範囲でのスペクトルの積分値が大きくなっている。そして、
図1の実線に例を示すスペクトルを有する本実施形態の非常用照明装置11では、S/Pが1.97、理論発光効率が441〔lm/W〕となり、一般的なハロゲン電球を光源とする照明装置(例えばS/Pが1.36、理論発光効率が185〔lm/W〕)、LEDを光源とし色温度3000〔K〕に設定された照明装置(例えばS/Pが1.15、理論発光効率が335〔lm/W〕)、LEDを光源とし色温度5000〔K〕に設定された照明装置(例えばS/Pが1.74、理論発光効率が333〔lm/W〕)、LEDを光源とし色温度6500〔K〕に設定された照明装置(例えばS/Pが2.13、理論発光効率が315〔lm/W〕)、および、LEDを光源とし色温度8000〔K〕に設定された照明装置(例えばS/Pが2.34、理論発光効率が282〔lm/W〕)などと比較して、暗所視条件下および薄明視条件下で明るいことが分かる。
【0023】
しかも、例えば緑色の単波長光のように、視対象物全体が緑色となってしまうこともなく、色の同定なども可能となる。
【0024】
本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
11 非常用照明装置