(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
管状をなして延在し、延在方向と直交する上下方向に間隔を空けて複数配置される伝熱管と、
前記伝熱管の外面に配置される放熱フィンと、
前記伝熱管の前記延在方向の両端部に接続され、前記上下方向に筒状をなして延びるヘッダ本体を有するヘッダと、を備え、
前記ヘッダは、
前記ヘッダ本体の内周面から該ヘッダ本体の径方向内側に張り出して、前記ヘッダ本体内を前記上下方向に流通する冷媒の流れを遮る遮蔽部を有し、
該遮蔽部は、前記ヘッダ本体の中心軸線を含む中心領域に前記ヘッダ本体内の冷媒が流通させる第一流通部を形成するとともに、前記中心領域よりも径方向外側の径方向領域に前記冷媒を流通させる第二流通部を形成し、
前記遮蔽部は、前記ヘッダ本体の中心軸線を中心とする平板リング状をなして前記第一流通部を中心の貫通孔として有し、
前記第二流通部は、前記第一流通部及び前記ヘッダの内周面から離れた位置で、
扇形をなすスリットとして前記遮蔽部を貫通して形成され、
前記第二流通部は、前記上下方向と直交する断面における投影面積が前記第一流通部よりも小さく、
前記第一流通部の径D2は、前記遮蔽部の外径D1に対して以下の式を満たしている熱交換器。
【数1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の熱交換器では、冷媒を衝突壁に衝突させた後に噴出口から噴出させることで、分流器であるヘッダ内での冷媒の圧損が増大してしまう。その結果、熱交換器の性能が低下してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、冷媒の圧損を低減しつつ、熱交換器の性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様における熱交換器は、管状をなして延在し、延在方向と直交する上下方向に間隔を空けて複数配置される伝熱管と、前記伝熱管の外面に配置される放熱フィンと、前記伝熱管の前記延在方向の両端部に接続され、前記上下方向に筒状をなして延びるヘッダ本体を有するヘッダと、を備え、前記ヘッダは、前記ヘッダ本体の内周面から該ヘッダ本体の径方向内側に張り出して、前記ヘッダ本体内を前記上下方向に流通する冷媒の流れを遮る遮蔽部を有し、該遮蔽部は、前記ヘッダ本体の中心軸線を含む中心領域に前記ヘッダ本体内の冷媒が流通させる第一流通部を形成するとともに、前記中心領域よりも径方向外側の径方向領域に前記冷媒を流通させる第二流通部を形成し、前記遮蔽部は、前記ヘッダ本体の中心軸線を中心とする平板リング状をなして前記第一流通部を中心の貫通孔として有し、前記第二流通部は、前記第一流通部及び前記ヘッダの内周面から離れた位置で、
扇形をなすスリットとして前記遮蔽部を貫通して形成され、前記第二流通部は、前記上下方向と直交する断面における投影面積が前記第一流通部よりも小さく、前記第一流通部の径D2は、前記遮蔽部の外径D1に対して以下の式を満たしている。
【数5】
【0008】
このような構成によれば、第一流通部を介してヘッダ本体内の中心領域から冷媒を流通させながら、径方向領域を流通する冷媒の流れの一部を遮蔽部によって部分的に遮ることで、冷媒の流れを乱すことができる。加えて、第二流通部を介して径方向領域を流通する冷媒の流れの一部を遮蔽部によって乱すことなく流通させることができる。したがって、乱された冷媒の流れと乱されなかった冷媒の流れとによって、ヘッダ本体内を流通する冷媒の流れ方向を均等に分散させることができる。
【0010】
このような構成によれば、周方向の全域で冷媒の流れを乱すことができる。加えて、環状をなす遮蔽部の一部を貫通して第二流通部が形成されていることで、遮蔽部が配置されている径方向領域を流通する冷媒の流れの一部を乱すことなく上方へ流通させることができる。
【0011】
また、上記熱交換器では、前記第二流通部が複数形成されていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、ヘッダ本体を流通する冷媒の流れに偏りがある場合でも、伝熱管に供給したい冷媒の流量に合わせて、複数の第二流通部をそれぞれ任意の位置に配置することができるしたがって、冷媒の圧損を効果的に低減しながら、冷媒の流れを均等に分散させることができる。
【0013】
また、上記熱交換器では、前記第二流通部は、前記遮蔽部の外部に形成されていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第二流通部を遮蔽部の外部に形成することで、遮蔽部の内部に加工を施すことなく、簡単な加工で冷媒の流通可能な領域を拡大することができる。
【0015】
また、上記熱交換器では、前記遮蔽部は、前記ヘッダ本体に形成された開口に挿入可能な突起部を有していてもよい。
【0016】
このような構成によれば、第二流通部を予め定めたヘッダ本体に対する任意の位置に配置することが容易にできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱交換器によれば、ヘッダ本体内の冷媒の流れを部分的に乱して均等に分散させることで、冷媒の圧損を低減しつつ、熱交換器の性能を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第一実施形態》
以下、本発明に係る第一実施形態の熱交換器1について
図1及び
図2を参照して説明する。
本実施形態における熱交換器1は、例えば、カーエアコンや、PAC及びRACの室外機や、輸送用冷凍機や、給湯器に使用される蒸発器である。具体的には、熱交換器1は、
図1に示すように、管状をなして延在する複数の伝熱管2と、伝熱管2の外面に配置される複数の放熱フィン3と、伝熱管2の延在方向の両端部に接続される二つのヘッダ4とを有している。つまり、本実施形態の熱交換器1は、伝熱管2と放熱フィン3とを交互に上下方向に積層し、一方のヘッダ4に流入した冷媒が他方のヘッダ4に向かって流れるマルチフロータイプの熱交換器1である。
【0020】
なお、本実施形態における延在方向とは、伝熱管2の延びている方向であって、水平方向とする。また、本実施形態における上下方向とは、後述するヘッダ本体41の延びる方向であって、鉛直方向とする。
【0021】
伝熱管2は、延在方向と直交する上下方向に間隔を空けて複数配置される。本実施形態の伝熱管2は、扁平管であって、八本配置されている。伝熱管2は、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材質により形成されている。本実施形態では、複数の伝熱管2のうち、上下方向の下方に配置された四本の伝熱管2である第一伝熱管群21が、延在方向の一方に配置されたヘッダ4に向かって冷媒を流通させる。また、複数の伝熱管2のうち、上下方向の上方に配置された四本の伝熱管2である第二伝熱管群22が、延在方向の他方に配置されたヘッダ4に向かって冷媒を流通させる。
【0022】
放熱フィン3は、上下方向に隣接する伝熱管2同士の間に配置されている。本実施形態の放熱フィン3は、コルゲート状をなす薄板部材である。放熱フィン3は、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い材質により形成されている。放熱フィン3は、隣接する二つの伝熱管2に対して、ロウ材等の熱伝達に優れた接着剤等によって接続されている。
【0023】
ヘッダ4は、複数の伝熱管2を延在方向の両側から挟み込むように二カ所に配置されている。本実施形態では、延在方向の一方に配置された片側のヘッダ4を例に挙げて説明する。なお、延在方向の他方に配置されたヘッダも同様の構成を有している。
【0024】
本実施形態のヘッダ4は、上下方向に筒状をなして延びるヘッダ本体41と、ヘッダ本体41内を上下方向に流通する冷媒の流れを遮る遮蔽部5と、を有している。
【0025】
ヘッダ本体41は、複数の伝熱管2が直交して接続されている。本実施形態のヘッダ本体41は、円筒状をなして上下方向に延在している。ヘッダ本体41は、第一伝熱管群21が上下方向の中央よりも下方に連通しており、第一伝熱管群21から内部に冷媒が流入する。ヘッダ本体41は、第二伝熱管群22が上下方向の中央よりも上方に連通しており、内部から第二伝熱管群22に冷媒を排出する。したがって、ヘッダ本体41内では、冷媒は、第一伝熱管群21から流入して下方から上方に向かって流通した後に、第二伝熱管群22に流入する。
【0026】
遮蔽部5は、ヘッダ本体41の内周面からヘッダ本体41の径方向内側に張り出している。遮蔽部5は、ヘッダ本体41の中心軸線Oを含む中心領域100にヘッダ本体41内の冷媒が流通させる第一流通部52を形成するとともに、中心領域100よりも径方向外側の径方向領域200に冷媒を流通させる第二流通部53を形成する。
【0027】
ここで、中心領域100とは、
図2に示すように、ヘッダ本体41の上下方向と直交する断面において、中心軸線Oを中心として形成されている円形状の領域である。また、径方向領域200とは、ヘッダ本体41の上下方向と直交する断面において、中心領域100とヘッダ本体41の内周面との間に形成される円環状の領域である。
【0028】
本実施形態の遮蔽部5は、ヘッダ本体41の上下方向の中央付近に配置されている。遮蔽部5は、ヘッダ本体41と一体に形成されている。つまり、遮蔽部5は、ヘッダ本体41内の空間を、第一伝熱管群21が接続されている下方の領域と、第二伝熱管群22が接続されている上方の領域とに区分けしている。遮蔽部5は、ヘッダ本体41の中心軸線Oを中心とする環状をなして、径方向領域200に形成されている。具体的には、遮蔽部5は、外径がヘッダ本体41の内径と同じ大きさに形成された平板リング状の部材である。
【0029】
本実施形態の第一流通部52は、平板リング状をなす遮蔽部5の中心の円形状の貫通孔である。第一流通部52は、その径D
2(遮蔽部5の内径)が遮蔽部5の外径D
1に対して以下の範囲に収まるように形成されている。
【0031】
これは、ヘッダ本体41内の冷媒の気相と液相との関係から定められている。具体的には、ヘッダ本体41内の冷媒中のボイド率は、第一流通部52の径D
2と遮蔽部5の外径D
1とによって、D
22/D
12で表される。そのため、以下のように、平板リング状の遮蔽部5の径方向の長さ(D
1−D
2)/2が、ボイド率が0.1以上0.9以下の範囲に収まるように設定されている。
【0033】
したがって、仮に遮蔽部5の外径が10mmの場合に、ボイド率を0.9とすると、遮蔽部5の径方向の長さ(D
1−D
2)/2は0.2mm程度となる。また、仮に遮蔽部5の外径が30mmの場合に、ボイド率を0.1とすると、遮蔽部5の径方向の長さ(D
1−D
2)/2は10mm程度となる。
【0034】
なお、本実施形態では、遮蔽部5の外形状及び第一流通部52が円形状をなしている場合を例に挙げて説明しているが、仮に、遮蔽部5の外形状及び第一流通部52が矩形状をなしている場合にはD
1及びD
2として等価直径を用いて遮蔽部5と第一流通部52との関係を算出すればよい。
【0035】
第二流通部53は、遮蔽部5を貫通して形成されている。本実施形態の第二流通部53は、中心軸線Oを基準とする周方向に延びる扇形をなすスリットである。具体的には、第二流通部53のヘッダ本体41の上下方向と直交する断面における投影面積をA
s1とした場合に、第二流通部53は、投影面積A
s1が遮蔽部5の外径D
1及び第一流通部52の径D
2に対して以下の範囲に収まるように形成されていることが好ましい。
【0037】
また、平板リング状をなす遮蔽部5に対して第二流通部53の形成される領域は、0°<θ≦360°の範囲で形成されていることが好ましい。つまり、第二流通部53は、投影面積Asが所定の範囲に収まる大きさで形成されていれば、細長い形状で遮蔽部5の全域に形成されていてもよい。本実施形態の第二流通部53は、径方向領域200のうち、ヘッダ本体41の伝熱管2と連通している部分と中心軸線Oを挟んで反対側の内周面付近に形成されている。
【0038】
上記のような熱交換器1では、第一伝熱管群21である四本の伝熱管2から気液二層状態の冷媒がヘッダ本体41内に流入する。ヘッダ本体41内に流入した冷媒は、ヘッダ本体41内を下方から上方に向かって気相と液相とに分離して流れる際に、遮蔽部5を通過する。遮蔽部5を通過する際に、中心領域100の冷媒は、第一流通部52からヘッダ本体41の上方に向かって流通する。また、遮蔽部5を通過する際に、径方向領域200の冷媒のうち、ヘッダ本体41の内周面に沿って流れる液相の冷媒の一部が、遮蔽部5に衝突して流れが乱されながら、第一流通部52や第二流通部53からヘッダ本体41の上方に流通する。さらに、遮蔽部5を通過する際に、径方向領域200の冷媒のうち、ヘッダ本体41の伝熱管2と連通している部分と中心軸線Oを挟んで反対側の内周面に沿って上方に向かう液相の冷媒は、遮蔽部5に衝突せずに、第二流通部53からヘッダ本体41の上方に向かって流通する。遮蔽部5よりも上方に流れ出た冷媒は、第二伝熱管群22である四本の伝熱管2にヘッダ本体41内から流れ出る。
【0039】
第一実施形態の熱交換器1によれば、第一流通部52を介してヘッダ本体41内の中心領域100から冷媒を流通させながら、径方向領域200を流通する冷媒の流れを遮蔽部5によって遮ることで、冷媒の流れを乱すことができる。加えて、第二流通部53を介して径方向領域200を流通する冷媒の流れの一部を遮蔽部5によって乱すことなく流通させることができる。したがって、乱された冷媒の流れと乱されなかった冷媒の流れとによって、ヘッダ本体41内を流通する冷媒の流れ方向を均等に分散させることができる。これにより、冷媒の圧損を低減ししつつ、熱交換器1の性能を向上することができる。
【0040】
具体的には、ヘッダ本体41内を流通する際に冷媒は気相と液相とに分離して流通するが、気相の冷媒よりも液相の冷媒の方が上下方向に向かって流れやすい。そのため、第二伝熱管群22の中でも上方に配置された伝熱管2に液相の冷媒が供給されやすくなり、第二伝熱管群22を流通する冷媒の気相と液相との割合に偏りが生じる恐れがある。特に、液相の冷媒の多くは、ヘッダ本体41の内周面付近の径方向領域200に沿って上方に向かって流れる。ところが、遮蔽部5によってヘッダ本体41の内周面に沿って流れる冷媒を衝突させることで径方向領域200を流通する液相の冷媒の流れを乱すことができ、第二伝熱管群22の中でも下方に配置された伝熱管2に対して液相の冷媒を供給することができる。さらに、同じく径方向領域200に形成された第二流通部53や中心領域100に形成された第一流通部52によって流れを乱さずに冷媒を流通させることで、第二伝熱管群22の中でも上方に配置された伝熱管2に対して液相の冷媒を供給することができる。したがって、気相と液相との割合に偏りが生じないように冷媒の流れを分散させて均流化し、ヘッダ本体41の上方の領域に対して均等に冷媒を供給することができる。したがって、第二伝熱管群22に気相と液相とが均等に混合された冷媒を供給することができ、熱交換器1の冷却効率を向上させることができる。
【0041】
また、遮蔽部5によってヘッダ本体41内を流通する全ての冷媒の流れを乱すわけではなく、第一流通部52や第二流通部53を介して冷媒の一部の流れを乱さずに冷媒を流通させることで、冷媒が遮蔽部5に衝突することで生じる冷媒の圧損を低減することができる。特に、第一流通部52だけでなく第二流通部53を形成することで、ヘッダ本体41内の中心領域100及び径方向領域200の位置の異なる二つの領域において、冷媒の圧損を低減しながら、ヘッダ本体41内の上方に冷媒を流入させることができる。
【0042】
これらにより、ヘッダ本体41内の冷媒の流れを部分的に乱して分散させることで、冷媒の圧損を低減ししつつ、熱交換器1の性能を向上することができる。
【0043】
また、遮蔽部5が平板リング状に形成されていることで、ヘッダ本体41内の内周面に沿う周方向の全域にわたって冷媒の流れを乱すことができる。加えて、遮蔽部5の一部を貫通して第二流通部53が形成されていることで、遮蔽部5が配置されている径方向領域200を流通する冷媒の一部の流れを乱すことなくヘッダ本体の上方へ流通させることができる。
【0044】
《第二実施形態》
次に、
図3を参照して第二実施形態の熱交換器について説明する。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第二実施形態の熱交換器は、遮蔽部の第二流通部の構成について、第一実施形態と相違する。
【0045】
即ち、第二実施形態の遮蔽部5aは、第二流通部53aが複数形成されている。第二実施形態の第二流通部53aは、
図3に示すように、複数の円形状をなして遮蔽部5aを貫通する。第二流通部53aは、第一実施形態の第二流通部53よりも小さな貫通孔によって構成されている。第二流通部53aは、例えば、径方向領域200の中で、液相の冷媒が局所的に偏って流通している範囲に形成することが好ましい。第二流通部53aは、ヘッダ本体41の上下方向と直交する断面における投影面積A
s2の合計が、第一実施形態の第二流通部53の投影面積A
s1と同程度に収まるように形成されている。
【0046】
上記のような第二実施形態の熱交換器1によれば、径方向領域200のなかで、液相の冷媒が局所的に偏って流通している部分がある場合でも、第二伝熱管群22のそれぞれの伝熱管2に供給したい冷媒の流量に合わせて、複数の第二流通部53aをそれぞれ任意の位置に配置することができる。そのため、ヘッダ本体41の内周面に沿って上方に向かう液相の冷媒の流れを効果的に乱すことができる。したがって、冷媒の圧損を効果的に低減しながら、ヘッダ本体41内の冷媒の流れを効果的に分散させることができる。
【0047】
《第三実施形態》
次に、
図4を参照して第三実施形態の熱交換器について説明する。
第三実施形態においては第一実施形態及び第二実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第三実施形態の熱交換器は、遮蔽部の構成について、第一実施形態及び第二実施形態と相違する。
【0048】
即ち、第三実施形態では、第二流通部53bが遮蔽部5bの外部に形成されている。第三実施形態の遮蔽部5bは、
図4に示すように、第二流通部53bが切り欠きとして形成されている。第二流通部53bは、平板リング状をなす遮蔽部5bを径方向内側から扇形に切り欠かれることで、遮蔽部5bの外部に形成されている。第二流通部53bは、遮蔽部5bの内径からの径方向の距離dが、遮蔽部5bの外径D
1及び第一流通部52の径D
2に対して以下の範囲に収まるように形成されていることが好ましい。
【0050】
つまり、第二流通部53bは、遮蔽部5bの内径からの径方向の距離dが、遮蔽部5bの径方向の長さ(D
1−D
2)/2の10%以上100%未満の範囲で形成されていることが好ましい。したがって、仮に遮蔽部5bの外径が10mmの場合に、第二流通部53bを10%の比率で形成すると、遮蔽部5bの内径からの径方向の距離dは0.2mm程度となる。また、仮に遮蔽部5bの外径が30mmの場合に、第二流通部53bを100%に近い比率で形成すると、遮蔽部5bの内径からの径方向の距離dは10mmに近い値となる。
また、平板リング状をなす遮蔽部5bに対して第二流通部53bの形成される領域は、第一実施形態と同様に、0°<θ≦360°の範囲で形成されていることが好ましい。
【0051】
上記の第三実施形態の熱交換器1によれば、第二流通部53bを遮蔽部5bの外部に切り欠きとして形成することで、遮蔽部5bの内部に加工を施すことなく、簡単な加工で遮蔽部5bの径方向内側に張り出す長さを部分的に短くすることができる。そのため、中心領域100に形成された第一流通部52と第二流通部53bとがつながるように冷媒の流通可能な領域を拡大することが容易にできる。
【0052】
《第四実施形態》
次に、
図5を参照して第四実施形態の熱交換器について説明する。
第四実施形態においては第一実施形態から第三実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第四実施形態の熱交換器は、遮蔽部の構成について、第一実施形態から第三実施形態と相違する。
【0053】
即ち、第四実施形態では、遮蔽部5cがヘッダ本体41と別に形成されている。第四実施形態では、ヘッダ本体41に遮蔽部挿入スリット6が設けられ、この遮蔽部挿入スリット6に遮蔽部5cが嵌め込まれる。
【0054】
遮蔽部挿入スリット6は、
図5(a)に示すように、ヘッダ本体41を径方向の外側から分断するよう形成されている。遮蔽部挿入スリット6は、ヘッダ本体41を水平方向に貫通する挿入部61と、挿入部61に対して垂直に形成された位置決め部62とを有する。
【0055】
本実施形態の挿入部61は、ヘッダ本体41を外周側から水平にカットすることで形成されている。
本実施形態の位置決め部62は、挿入部61と繋がるようにヘッダ本体41に形成された開口である。位置決め部62は、ヘッダ本体41において、挿入部61から矩形状をなして窪んでいる。位置決め部62は、ヘッダ本体41を径方向外側からプレス等により穴あけ加工を施すことで形成されている。
【0056】
第四実施形態の遮蔽部5cは、
図5(b)に示すように、第一流通部52及び第二流通部53を形成する遮蔽部本体51cと、遮蔽部本体51cから突出する突起部54とを有する。
【0057】
遮蔽部本体51cは、挿入部61に接触しながら挿入可能な形状で形成される。具体的には、遮蔽部本体51cは、第一実施形態の遮蔽部5と同様の形状をなしており、第一実施形態の遮蔽部5よりも一回り大きく形成されている。
【0058】
突起部54は、曲げ加工や溶接等によって形成されている。突起部54は、位置決め部62に挿入可能な形状で形成されている。具体的には、突起部54は、直方状をなして遮蔽部本体51cの上方を向く面から垂直に突出している。
【0059】
上記の第四実施形態の熱交換器1によれば、遮蔽部本体51cを突起部54が位置決め部62に挿入されるように挿入部61に嵌め込むことで、予め定めた位置に第二流通部53を配置することができる。したがって、第二流通部53を予め定めたヘッダ本体41に対する任意の箇所に容易に配置することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0061】
例えば、第二実施形態の複数の第二流通部53aは、円形状をなしていることに限定されるものではなく、任意の形状で形成されていてもよい。例えば、第二実施形態の変形例として、第二流通部530aは、
図6に示すように、第一実施形態の第二流通部53よりも開口面積の小さな扇形のスリットとして遮蔽部50aに形成されていてもよい。
【0062】
また、第三実施形態の遮蔽部5bは、遮蔽部5bの外部に第二流通部53bが形成されていればよく、平板リング状をなす遮蔽部5bに対して切り欠きとして第二流通部53bが形成されている構造に限定されるものではない。例えば、第三実施形態の変形例として、
図7に示すように、遮蔽部50bがヘッダ本体41の内周面の一部から張り出しており、遮蔽部50bが張り出していない領域を第二流通部530bとしてもよい。これは、第三実施形態における遮蔽部5bの内径からの径方向の距離dが0.5(D1−D2)に近い値であって、第二流通部53bが270°程度の領域にわたって形成されている場合である。このように遮蔽部50bを形成することで、径方向領域200における遮蔽部50bの面積を減らすことができ、冷媒の流通可能な領域をより拡大することができる。したがって、冷媒が遮熱部に衝突することで生じる冷媒の圧損をより一層低減することができる。
【0063】
また、第四実施形態の遮蔽部5cにおける突起部54は、遮蔽部本体51cに対して垂直に突出していることに限定されるものではなく、ヘッダ本体41に形成された開口に挿入可能に形成されていればよい。例えば、第四実施形態の変形例として、
図8(a)に示すように、位置決め部620がヘッダ本体41の内周面から窪むように形成されている場合には、遮蔽部500cの突起部540は、
図8(b)に示すように、遮蔽部本体510cと同一平面上に形成されるように、遮蔽部本体510cの外周面から水平に突出していてもよい。
【0064】
また、遮蔽部5は一つのヘッダ本体41に対して一つのみ形成されている構造に限定されるものではない。例えば、
図9に示すように、一つのヘッダ本体41に対して複数の遮蔽部5が設けられていてもよい。また、複数の遮蔽部5を形成する際には、一つ一つの遮蔽部5の第二流通部53の位置や形状が異なるようにしてもよく、同じとしてもよい。即ち、複数の遮蔽部5を有する場合、各遮蔽部5が各実施形態や変形例に示した構造の中から任意の構造のものを選択して用いてもよい。このような構成とすることで、各伝熱管2に供給する冷媒の流量を細かく調整することができる。
【0065】
また、上述した各実施形態や変形例は、それぞれ単独の構成として用いられても良く、組み合わせて用いられてもよい。例えば、第二実施形態のように複数の第二流通部53aを有する遮蔽部5aが第四実施形態のように突起部54を有していてもよい。即ち、各実施形態における構成要素を他の実施形態の構成要素に置き換えることにより適宜組み合わせてもよい。
【0066】
また、熱交換器1は、本実施形態のように蒸発器であることに限定されるものではなく、例えば、凝縮器であってもよい。仮に、熱交換器1が凝縮器の場合には、ヘッダ本体内や伝熱管を流通する冷媒の流通方向は本実施形態とは逆向きとなる。