特許第6593594号(P6593594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6593594
(24)【登録日】2019年10月4日
(45)【発行日】2019年10月23日
(54)【発明の名称】ステアリングコラムの組付構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/189 20060101AFI20191010BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20191010BHJP
【FI】
   B62D1/189
   B62D25/08 J
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-215715(P2015-215715)
(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-87755(P2017-87755A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】秋本 康雄
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−231114(JP,A)
【文献】 特開2008−265642(JP,A)
【文献】 特開2003−160055(JP,A)
【文献】 特開2003−127872(JP,A)
【文献】 特開2010−269793(JP,A)
【文献】 特開2011−178268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のクロスメンバに設けられたブラケットに、ステアリングコラムを組み付けるステアリングコラムの組付構造であって、
前記ステアリングコラムには、前記ブラケットに回動可能に組み付くチルト支点部を有し、
前記ステアリングコラムは、前記チルト支点部から車両前後方向へ突き出たフック部を有し、
前記ブラケットは、前記フック部と係止可能な係止部を有し、
前記フック部と前記係止部との係止によって、前記ステアリングコラムのチルト支点部を前記ブラケットに仮置き可能とされ、
前記ブラケットは、車幅方向両側に一対で配設され前記チルト支点部を回動可能に支持する側壁部と、これら側壁部の前後方向一方側で前記側壁部間に配設された端壁部とを有して構成され、
前記フック部は、前記チルト支点部から前記端壁部へ向かう方向へ突き出た突起部から構成され、
前記係止部は、前記端壁部に設けられた、前記突起部が挿通される係止孔から構成される
ことを特徴とする特徴とするステアリングコラムの組付構造。
【請求項2】
前記チルト支点部は、前記ステアリングコラムの上部に設けられて一対の前記側壁部の間に嵌挿されるブロック部から形成され
前記突起部は、前記ブロック部の車幅方向両側部より車幅方向中央側から突き出ている
ことを特徴とする請求項1に記載のステアリングコラムの組付構造。
【請求項3】
前記ステアリングコラムは、車両の前面衝突時、所定以上の衝撃力を受けると、全長が縮み、ステアリングホイール側が前記チルト支点部を支点に前記クロスメンバから脱落するように構成され、
前記クロスメンバあるいは前記ブラケットには、前記係止孔から突き出た突起部と干渉して同突起部の上下方向での移動範囲を規制する規制部が設けられる
ことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のステアリングコラムの組付構造。
【請求項4】
前記規制部は、一端部が前記クロスメンバあるいは前記ブラケットに固定され、他端部が前記突起部の先端部近傍に延びる緩衝部材で構成されることを特徴とする請求項3に記載のステアリングコラムの組付構造。
【請求項5】
前記突起部の先端は、前記規制部と干渉した際に同規制部と係合される係合凹部を有することを特徴とする請求項4に記載のステアリングコラムの組付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングコラムを車体に組み付けるステアリングコラムの組付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置は、一端部にステアリングホイールが組み付き、他端部にステアリングギヤ部が組み付くステアリングコラムを有している。
ステアリングコラムの多くは、組立工場の組立ラインを用いて、車体の骨格部材(クロスメンバ)に、人手作業(作業者による)により組み付けられる。具体的にはステアリングコラムは、車両前方側となるステアリングギヤ部側に設けられているチルト支点部(チルト支点となる部位)と、車両後方側となるステアリングホイール側のアッパ部分とを、それぞれクロスメンバに組み付けてあるブラケットに対し位置決めてから、ボルト部材などで固定することで行われる。
【0003】
ところが、ステアリングコラム自身は重量物であるため、人手作業によってステアリングコラムの各部をブラケットの定位置に合わせる作業や、位置決め後に行う固定作業は、かなり労力が必要で、作業効率が低くなりやすい。モータなどステアリング操作をアシストするパワーステアリング装置がステアリングコラムに装備される場合(コラム式パワーステアリング)、ステアリングコラムの重量は、さらに増すため、一層、作業効率が低くなりやすい。
【0004】
そこで、労力が低減されるよう、特許文献1に開示されているようにステアリングコラムのステアリングホイール側にフックを設け、インストルメントパネルの枠部材に上記フックを受ける受け部を設けて、ステアリングコラムを車体に組み付ける際、一旦、ステアリングコラムのステアリングホイール側を車体に仮置きしてから、ステアリングコラムの各部の位置合わせや固定作業を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4951991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記ステアリングコラムの仮置きは、ステアリングホイール側で行うため、反対側に有るチルト支点部は、クロスメンバの所定位置(ブラケット)からずれやすい。特にステアリングホイール側の仮置き位置は、車種毎、異なることが多く、チルト支点部の位置合わせに影響を与えやすい。このため、チルト支点部のブラケットに対する位置合わせ、固定作業が面倒なものとなっていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、チルト支点部の位置合わせや固定作業が容易に行えるよう、ステアリングコラムの仮置きを可能にしたステアリングコラムの組付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、車両のクロスメンバに設けられたブラケットに、ステアリングコラムを組み付けるステアリングコラムの組付構造であって、ステアリングコラムには、ブラケットに回動可能に組み付くチルト支点部を有し、ステアリングコラムは、チルト支点部から車両前後方向へ突き出たフック部を有し、ブラケットは、フック部と係止可能な係止部を有し、フック部と係止部との係止によって、ステアリングコラムのチルト支点部をブラケットに仮置き可能とされ、ブラケットは、車幅方向両側に一対で配設されチルト支点部を回動可能に支持する側壁部と、これら側壁部の前後方向一方側で側壁部間に配設された端壁部とを有して構成され、フック部は、チルト支点部から端壁部へ向かう方向へ突き出た突起部から構成され、係止部は、端壁部に設けられた、突起部が挿通される係止孔から構成されるものとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ステアリングコラムを車体に組み付ける際、チルト支点部から突き出た突起部を、チルト支点部を支持する側壁部間に配設された端壁部の係止孔に挿通して係止する。この係止により、ステアリングコラムのチルト支点部はブラケットに仮置きされる。定位置に配置されるチルト支点部は、この仮置きを利用して、ブラケットの所定位置と位置合わせしやすい位置に導くことが可能となり、仮置き後に行われるチルト支点部の位置合わせや固定作業は容易に行える。
【0010】
したがって、チルト支点部をブラケットに仮置きする構造により、ステアリングコラムの組付作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態に係る態様となる、車体に組み付けられたステアリングコラムを示す側面図。
図2】同ステアリングコラムのチルト支点部とクロスメンバのブラケットとが固定された状態を示す斜視図。
図3】同固定した部分をチルト支点側とブラケット側とに分解した分解斜視図。
図4】ステアリングコラムのステアリングホイール側とクロスメンバとが固定された状態を示す斜視図。
図5】同ステアリングコラム部分を脱落可能とした構造を説明する斜視図。
図6】(a)は、仮置き構造を用いてステアリングコラムをクロスメンバに組み付ける手順を説明する側面図、(b)〜(d)は、チルト支点部のフック部がブラケットに係止されるまでを説明する平断面図。
図7】ステアリングコラムのアッパ側がクロスメンバから脱落する挙動を説明する側面図。
図8】本発明の第2の実施形態の要部となる、フック部の規制構造を示す側面図。
図9】本発明の第3の実施形態の要部となる、異なるフック部の規制構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図1から図7に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
図1は、車体(車両)の骨格部材であるフロントのクロスメンバ1(例えばパイプ部材)に、ステアリングコラム3が組み付けられた状態が示されている。また図6には、同ステアリングコラム3の単体(組付前の状態)が示されている。
ステアリングコラム3の構造を説明すると、ステアリングコラム3は、図1に示されるように例えばアッパ側のシャフト部材3a(一部図示)とロア側のシャフト部材3b(一部破線で図示)とをスプライン(図示しない)で軸方向に変位可能に接続したメインシャフト5と、同メインシャフト5の周囲を囲うように設けたコラムチューブ9とを有している。コラムチューブ9は、アッパ側のチューブ部材7aとロア側のチューブ部材7bとを軸方向に変位可能に嵌挿して構成される。つまり、メインシャフト5およびコラムチューブ9共、衝撃吸収機能の確保のため、全長が収縮可能となっている。さらにロア側のチューブ部材7bには、パワーステアリング装置、例えば鋳物製のハウジング10にモータ11を組み付け、同ハウジング10内に、モータ11の駆動力をロア側のシャフト部材3bへ伝える伝達部(例えばギヤ機構;図示はしない)や制御回路部(図示はしない)を収めてなる電動式のアシスト機構部15が設けられている。
【0013】
このステアリングコラム3のアッパ側(車室側)のシャフト部材3a端に、ステアリングホイール16が組み付き、シャフト部材3bのさらにロア側(車両前方側)のシャフト部材に、タイヤを操向するステアリングギヤ部(図示しない)が組み付く。
またチューブ部材7bをなすハウジング10の外周面には、ステアリングコラム3のチルト支点をなすチルト支点部17が設けられている。チルト支点部17は、図2および図3に示されるように例えばハウジング10の上部、ここでは、最も大径となる大径部10aの上部に設けたブロック部21で形成されている。例えばブロック部21は、大径部10aからハウジング10(チューブ部材7b)の外周面に沿って車両前方側へ所定の間隔で並行に延びる一対の縦壁部21aと、両縦壁部21aとの間に介在された筒部21bとを有して構成される。筒部21bには、両縦壁部21aの端面に渡る通孔、具体的にはシャフト部材3と直交するよう車両幅方向に沿って延びる(貫通される)ボルト挿通孔23(図3に図示)が形成されている。
【0014】
このブロック部21で形成されたチルト支点部17が、クロスメンバ1に取着されたブラケット、例えばクロスメンバ1から吊り下がるように取着されたロア側のブラケット29(本願のブラケットに相当)に回動可能に組み付けられる。すなわちブラケット29は、例えば図2図3および図6に示されるようなC形の断面を呈した板金部品、具体的には車幅方向両側に一対で配設されてチルト支点部17が軸支される側壁部33aと、これら側壁部33a,33aの前後方向前側の端部間に配設された端壁部33bとを有した板金製のブラケット29で構成される。このブラケット29の内側、すなわち一対の側壁部33aの間にブロック部21(チルト支点部17)が嵌挿される。そして、ブロック部21とブラケット29とが、側壁部33aに設けた通孔33c(図3図6に図示)およびボルト挿通孔23を挿通するボルト部材27や、同ボルト部材27に螺合されるナット部材28(図3)にて、回動自在に支持される(固定)。これにより、チルト支点部17は、クロスメンバ1に回動可能に組み付く。
【0015】
またアッパ側のチューブ部材7aの外周面には、図1図4および図5に示されるようにチルト操作機構部41を介して取付座43が設けられている。チルト操作機構部41は、周知のようにチルトレバー45の操作により、チューブ部材7aの周囲を取り囲むC形の把持部材37を挟み付けたり、緩めたりすることによって、チルト支点部17を支点にステアリングコラム3の傾きが変えられる構造でなる(図1中の矢印αの如く)。チルト操作機構部41の詳細な構造については省略する。
【0016】
取付座43は、図1図4および図5に示されるように把持部材37に取着された車幅方向に延びる支持パネル49と、支持パネル49に組み付くワンウェイカプセル51と、ワンウェイカプセル51と支持パネル49間を固定する樹脂ピン(図示しない)、具体的には所定の衝撃力以上がせん断方向から加わると、せん断される樹脂ピンとを有している。そして、ワンウェイカプセル51が、クロスメンバ1に取着されたブラケット、例えば車幅方向に延びるアッパ側の板金製のブラケット57に固定される。具体的にはワンウェイカプセル51とブラケット57とは、両者間を挿通するボルト部材53や、同ボルト部材53に螺合されるナット部材55(図1)にて固定される。また支持パネル49には、図5に示されるようにボルト部材53が挿通する各ボルト孔59からアッパ側の縁部まで、直線的に連続して延びる逃げ孔61が形成されていて、車両の前面衝突時、ステアリングホイール16からメインシャフト5へ所定以上の衝撃力Fが入力されると、ワンウェイカプセル51の樹脂ピンがせん断され、メインシャフト5およびコラムチューブ9の全長が縮む。これにより、図4および図5に示されるようにワンウェイカプセル51およびボルト部材53は、逃げ孔61を通じ外部へ逃げ、支持パネル49を退避させ、同支持パネル49をブラケット57から離脱させる。つまり、ステアリングコラム3は、所定以上の衝撃力Fが加わると縮んで、加わる衝撃を緩衝する構造となっている。
【0017】
またステアリングコラム3には、ステアリングコラム3の組付作業を容易にするため、ステアリングコラム3の組付作業(人手作業)の際、ステアリングコラム3を車体に仮置きする構造が設けられている。
この仮置き構造には、ステアリングコラム3のチルト支点部17をブラケット29に係止させる構造が用いられている。図1図3図6には、この仮置き構造の具体的な構造が示されている。
【0018】
この仮置き構造は、チルト支点部17を形成するブロック部21から、車両前方側へ向かい突き出るように設けたフック部63と、ブラケット29に設けた係止部65とを有している。仮置き構造は、ブロック部21(チルト支点部17)をブラケット29内に嵌挿させることでフック部63と係止部65とが係止される仕組みとなっている。
すなわち、フック部63は、図1図3に示されるようにブロック部21を形成する各縦壁部21aの端面から車両前方側へ突き出た一対の爪状の突起部62から構成される。特に突起部62は、ブロック部21(チルト支点部17)をブラケット29内に嵌挿し易いように、いずれもブロック部21の車幅方向外側面より車幅方向中央側となる車幅方向中央側に寄せた地点から突き出ていている。つまり、図6(b)〜(d)に示されるように一対の突起部62間の外幅寸法X(車幅方向)が、ブロック部21の車幅方向長さYや、ブロック部21が嵌るブラケット29の側壁部33a間の内寸法Zよりも、若干、狭くなるよう構成されている。なお、本実施形態では、突起部62間の外幅寸法Xは一定に形成されているが、車両前方側に向かって次第に外幅寸法Xが狭くなるよう外側面が傾斜する構造であってもよい。
【0019】
係止部65は、図2図3および図6に示されるようにブラケット29(C形)の端壁部33bに設けた開口部64(本願の係止孔に相当)で形成される。開口部64は、一対の突起部62が挿通可能な形状、例えば角形に形成され、図6(a)に示されるように突起部62が、ブラケット29の開口側(車室側)から差し込めるようにしてある。つまり、図6(a)〜(d)のように、ブロック部21からブラケット29の端壁部33bへ向かって突出された突起部62を開口部64へ差し込むと、ブロック部21がブラケット29内に嵌り、突起部62が開口部64の下縁部で受け止められる。この突起部62と開口部64(縁部)との係止により、チルト支点部17がブラケット29に仮置き、すなわちステアリングコラム3がクロスメンバ1側に仮置きされる構造としている。突起部62と開口部64は、予めチルト支点部17の仮置きを終えたとき(差込み終えたとき)、少なくともチルト支点部17のボルト挿通孔23とブラケット29の通孔33cとの一部が合致するよう形成されていて、チルト支点部17とブラケット29の所定位置との把握を容易にしている。
【0020】
また、突起部62は、ステアリングコラム3のチルト操作によってチルト支点部17を中心に上下方向に変位されるが、開口部64は、ステアリングコラム3のチルト範囲内では突起部62の変位を許し、チルト範囲を超えると、突起部62と干渉する形状に設定されている。これにより、普段のチルト操作時には、突起部62と開口部64(縁部)との干渉を防ぎ、衝撃力Fによりステアリングコラム3がブラケット57から離脱したときには、突起部62と開口部64の上縁部とが当接して、突起部62の動きが規制されるようにしている。すなわち、開口部64(縁部)は、開口部64から突き出た突起部62と干渉して同突起部62の上下方向での移動範囲を規制する。つまり、開口部64(縁部)は、同開口部64の上縁部を規制部として、ステアリングコラム3のアッパ側(ステアリングホイール16側)がチルト支点部17を中心にして下方へ回動(脱落)するのを規制することで、無用な脱落(脱落する量)が抑えられる構造としている。
【0021】
つぎに、図6を参照してステアリングコラム3を車体に組み付けるときを説明する。
まず、作業者(図示しない)は、図6(a)に示されるように単体のステアリングコラム3、すなわち取付座43やアシスト機構部15やチルト支点部17が付いたステアリングコラム3を抱え、ブラケット29の後側(車両後方側)において、車両前後方向に沿う向きの姿勢に保ち待機する。この状態から、図6(a)中の矢印aに示されるようにロア側に形成されているチルト支点部17の一対の突起部62(フック部63)を、ブラケット29の開口側から開口部64へ向かって差し込む。これにより、チルト支点部17を構成するブロック部21は、C形のブラケット29内に嵌り、突起部62は開口部64に挿通される。
【0022】
このとき、面倒な位置合わせ作業が強いられる、ブロック部21とC形のブラケット29とを嵌める作業は、ブロック部21の幅方向中央側に一対の突起部62を配置したことで、図6(b)〜(d)に示されるように最初は幅寸法の狭い突起部62がガイドとしてC形のブラケット29に進入され、それに続いて幅寸法の広いブロック部21がC形のブラケット29に進入するという具合いに、突起部62がガイドとなって、タイトなブロック部21とブラケット29とが互いに嵌め合うよう誘導されながら行われる。このため、位置合わせ作業は容易となる。なお、本実施形態では、突起部62間の外幅寸法Xは一定に形成されているが、車両前方側に向かって次第に外幅寸法Xが狭くなるよう外側面が傾斜する構成としておけば、突起部62によるガイドがよりスムーズとなるので、ブロック部21(チルト支点部17)のブラケット29内への嵌挿、すなわち位置合わせ作業がより容易となる。
【0023】
開口部64に突起部62が所定に差し込まれると、ロア側のチューブ部材7bにおける把持をやめる。すると、一対の突起部62は、開口部64の下縁部に係止され、チルト支点部17がブラケット29に仮置きされる。つまり、ステアリングコラム3は、チルト支点部17側が支えられた片支持の姿勢、すなわち作業労力が少なくてすむ姿勢に保たれる。
【0024】
仮置き後は、図6(a)中の矢印bのように突起部62と開口部64とが係止した位置を支点に、ステアリングコラム3のアッパ側を持ち上げて、アッパ側の取付座43のワンウェイカプセル51をブラケット57のボルト孔(図示しない)に合わせ、両者間をボルト部材53で仮止めする。つぎに、仮置きによって、位置合わせしやすい位置に配置されているブラケット29の通孔33cとチルト支点部17のボルト挿通孔23間にボルト部材27を挿通して、ロア側のチューブ部材7bとブラケット29とを仮止めする。その後、調整をして、取付座43とブラケット57、チルト支点部17とブラケット29を本固定する。
【0025】
これにより、作業者は、労力の少ない人手作業で、ステアリングコラム3の組み付けが行える。特にチルト支点部17に仮置き用の突起部62(フック部63)を設けたことにより、定位置に配置されるチルト支点部17は、仮置きを利用して、ブラケット29の所定位置と位置合わせしやすい位置に導くことが可能なので、仮置き後に行われるチルト支点部17の位置合わせや固定作業は容易となる。
【0026】
以上のようにチルト支点部17をブラケット29に仮置きする構造により、面倒とされるチルト支点部17のブラケット29に対する位置合わせや固定作業は容易に行うことができ、ステアリングコラム3の組付作業を効率よく行うことができる。
しかも、突起部62や開口部64は、労力の低減に貢献するだけでなく、クロスメンバ1から脱落するステアリングコラム3の姿勢を安定に保つ機能もある。
【0027】
すなわち、図7に示されるように車両の正面衝突時、所定以上の衝撃力Fがアッパ側のシャフト部材3aに加わり、ワンウェイカプセル51の樹脂ピンがせん断され、支持パネル49がアッパ側のブラケット57から離脱すると、縮んだステアリングコラム3は、チルト支点部17を支点に脱落するため(矢印の如く)、不安定な姿勢に陥りやすい。
このとき、開口部64の形状は、脱落するステアリングコラム3と共に回動変位する突起部62が、チルト範囲を超えると、突起部62と干渉する形状に設定されているため、ステアリングコラム3の脱落時には、突起部62が、開口部64の上縁部と当接して突起部62の動きを規制する(図7)。つまり、開口部64の上縁部が規制部となって、無用なステアリングコラム3の脱落を抑える。これにより、ステアリングコラム3は安定した姿勢に保たれる。
【0028】
図8は、本発明の第2の実施形態を示す。
本実施形態は、別途部品を用いた構造で、ステアリングコラム3の脱落時、すなわち突起部62が上下方側へ変位した際に、突起部62(フック部63)の移動範囲を規制可能としたものである。
具体的には、例えば規制部として図8(a)に示されるように板金製の緩衝部材71が用いられる。緩衝部材71は、J字状に曲成してばね性を確保した板金部品で、一端部がブラケット29の端壁部33bの外面、具体的には開口部64上方の外面部分に固定され、曲成した他端部が開口部64(係止孔)へ延びて、開口部64から突き出た突起部62(フック部63)の先端部直上(近傍)に配置される。むろん、緩衝部材71は、チルト範囲内は突起部62と干渉せず、チルト範囲を超えると、突起部62と干渉する位置関係に設けてある。
【0029】
これにより、ステアリングコラム3の脱落時、図8(b)に示されるように突起部62は、ばね性を有する板金部品(緩衝部材71)と当接するので、ステアリングコラム3は、ばね性により衝撃が緩衝されながら規制される。これにより、安全性の向上が図れる。もちろん、緩衝部材71はクロスメンバ1に取付けても構わない。
図9は、本発明の第3の実施形態を示す。
【0030】
本実施形態は、第2の実施形態の変形例で、板金部品(緩衝部材71)の先端部と当接する突起部62の上部分に、板金部品端と係合可能な係合凹部73を設けて、十分な規制能力が安定して確保されるようにしたものである。つまり、突起部62は、突起部62がチルト範囲(移動範囲)を超えて上方へ変位し突起部62(フック部63)と板金部品端(緩衝部材71端)とが干渉すると、板金部品端(緩衝部材71端)が係合凹部73に係合して、ステアリングコラム3の規制がより確実に行われるよう構成されている。
【0031】
但し、図8および図9において、上述した第1の実施形態と同じ部分には同一符号を付して、その説明を省略した。
なお、上述した実施形態における各構成およびそれの組合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能であることはいうまでもない。また本発明は、上述した実施形態によって限定されることはなく、「特許請求の範囲」によってのみ限定されることはいうまでもない。例えば上述した実施形態のチルト支点部は、一対の縦壁部でなるブロック部を用いたが、これに限らず、一つのブロック部でなるチルト支点部でも構わない。また実施形態では、パワーステアリング装置が付いたステアリングコラムに本発明を適用したが、もちろんパワーステアリング装置の無いステアリングコラムに本発明を適用しても構わない。
【符号の説明】
【0032】
1 クロスメンバ
3 ステアリングコラム
17 チルト支点部
29 ブラケット
62 突起部(フック部)
64 開口部(係止孔、係止部、規制部)
71 緩衝部材
73 係合凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9