(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを用いた電子機器において、タッチパネルの操作面側から見た外観の意匠性を高めることへの要求が高まっている。その一方で、従来からコストダウンへの要求も高い。このような二つの要求を満たす手段として、透明なタッチパネルの上側透明電極基板に意匠性印刷を施す構成が提案されている。
【0003】
例えば、引用文献1には、抵抗膜式タッチパネル100において、上部透明電極基板200の面上に、導電性インクによる印刷電極部230a,230bと、擬似電極部240とを含む意匠性印刷部210を形成することで、それまでの意匠印刷等が形成されたカバーフィルムを廃しながら、カバーフィルムを積層させて構成した場合と同等な意匠性を持たせる例が開示されている(本願の
図6を参照)。
【0004】
引用文献1に係る発明によれば、同文献において主張されている効果、すなわち、それまでのカバーフィルムを廃することで、部品点数を削減しつつ意匠性を確保することができるという効果を奏すると思料される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1の構成は、導電性インクによる印刷電極部230a,230bと、この印刷電極部230a,230bと組み合わせて形成された意匠性印刷部210とを要件とするものであって、上部透明電極基板200の操作面側から見た際に、印刷電極部230a,230bが視認されることを前提としている。この点に関連して、引用文献1には、意匠性を確保するために、印刷電極部230a,230bの色調と合わせた擬似電極部240を配設することが開示されている。
【0007】
しかしながら、このような構成において、擬似電極240の色調を、銀やカーボンを含む導電性インクの色調に対して判別できない程度に合致させることは、実際には極めて難しい。理由は、合致する色調を出すためのインクの溶剤や顔料の調合比率を決定することの困難性、および、決定した調合比率に基づいてインクを調合する際の精度管理の困難性にある。印刷電極部230a,230bの色調と擬似電極240の色調が僅かにでも相違すると、意匠性が大きく損なわれることになる。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであって、意匠印刷の色調の統一性に優れた意匠性の高い抵抗膜式タッチパネルを提供することを目的とする。また、もう一つの観点として、比較的強い力で押圧操作された場合や、意匠性印刷部の範囲を押圧された場合であっても誤動作の生じない抵抗膜式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明による抵抗膜式タッチパネルは、一方の面上に第1透明導電層が形成された第1透明電極基材と、一方の面上に第2透明導電層が形成された第2透明電極基材とを有し、枠状貼合層によって前記第1透明導電層と前記第2透明導電層とを対向させて、前記第1透明電極基材と前記第2透明電極基材とを貼り合わせてなる抵抗膜式タッチパネルであって、前記第1透明電極基材は、前記第1透明導電層の上に、枠状に形成された遮光性導電層と、前記遮光性導電層の上に、前記遮光性導電層の一辺に平行な方向に沿って配置された一対の第1電極と、前記遮光性導電層の上に、前記第1電極の少なくとも一部を露出させて、枠状に形成された絶縁層とを有し、第2透明電極基材は、前記第1電極における前記絶縁層から露出している部分と対向するように配置された一対の第2電極と、電気信号を入出力するための接続端子と、前記接続端子と、前記第2電極との間を接続するための配線パターンとを有し、前記第1電極における前記絶縁層から露出している部分と、前記第2電極とが接触して導通していることを特徴とする。
【0010】
第1透明電極基材において、第1透明導電層の上に、枠状に遮光性導電層を形成したので、操作面側から見た場合、枠状の遮光性導電層のみが視認される。また、遮光性導電層の枠内は透明であり、この枠内の部分を介して、抵抗膜式タッチパネル1と積層されて配設される表示装置による表示を視認することができる。枠状の遮光性導電層は、全体にわたって単一の導電性インクなどによって形成される層なので、色調の相違等が発生しない。したがって、タッチパネルの操作面側から見た外観において、高い意匠性を得ることができる。
【0011】
また、本発明による抵抗膜式タッチパネルにおいて、前記絶縁層は、前記遮光性導電層を覆うように形成されてよい。
【0012】
抵抗膜式タッチパネルは、押圧操作されたことに伴って操作面側に位置する電極基材が撓み、押圧操作された部分において、第1透明導電層と第2透明導電層とが接触することに基づいて押圧操作位置を特定するものである。本願発明に係る抵抗膜式タッチパネル1が比較的強い力で押圧操作されて、第1透明電極基材が大きく撓んだ場合において、第1透明導電層と導通している遮光性導電層と第2透明導電層とが接触することが想定される。この場合、実際には押圧操作していない部分で遮光性導電層(第1透明導電層)と第2透明導電層とが接触することで、本来の押圧操作位置が特定できない事態が生じ得る。絶縁層で遮光性導電層を覆うことで、遮光性導電層(第1透明導電層)と第2透明導電層との接触を防ぐことができるので、このような事態を回避することができる。また、遮光性導電層の範囲における透明部の周縁部分が不意に押圧された場合に、遮光性導電層と第2透明導電層とが接触することによって、意図に反した入力操作として検出されてしまうこと回避することができる。
【0013】
また、本発明による抵抗膜式タッチパネルにおいて、前記絶縁層は、透明であって、前記遮光性導電層の内側に延在して形成されてよい。
【0014】
上述した、絶縁層で遮光性導電層を覆う構成において、絶縁層を透明とした上で、遮光性導電層の内側に延在して形成することで、視認性への影響を来たすことなく、遮光性導電層(第1透明導電層)と第2透明導電層とが接触することを確実に防ぐことができる点で好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、意匠印刷の色調の統一性に優れた意匠性の高い抵抗膜式タッチパネル1を提供することができる。また、比較的強い力で押圧操作された場合や、意匠性印刷部としての遮光性導電層の範囲を押圧された場合であっても誤動作の生じない抵抗膜式タッチパネルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例に係る抵抗膜式タッチパネル1について、
図1から
図3を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施例に係る抵抗膜式タッチパネル1の構成を示した図である。
図2は、第1実施例における第1透明電極基材2を示した図である。
図1と
図2は、いずれも、理解を促進するために、各層を分解した状態で示している。また、
図3は、第1実施例の要部断面を示した図である。なお、
図3における図示の都合上、各層の厚さについては、実際とは異なる場合がある。
【0019】
抵抗膜式タッチパネル1は、上側に位置する第1透明電極基材2と、下側に位置する第2透明電極基材3とを、枠状貼合層4によって貼り合わせることで形成されている。
【0020】
第1透明電極基材2は、
図3の上側(操作面側)から見て、下記のとおり、各層を順に有してなるものである。なお、
図3においては、第1板状基材21と第1透明導電層22とを一体に示している。
a)第1板状基材21
b)第1透明導電層22
c)遮光性導電層23
d)第1電極24
e)第1絶縁層25
【0021】
第1板状基材21は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)などの透明な絶縁性樹脂からなるシート状の基材である。第1板状基材21の材料は、例示したPET製のシート状基材には限定されず、ガラス板材などの透明な絶縁性の板材も好適に用いることができる。第1板状基材21の材料は、抵抗膜式タッチパネル1に求められる性能や機能に応じて、適宜、選択されてよい。
【0022】
第1透明導電層22は、第1板状基材21の一方の面上に、例えばITO(酸化インジウムスズ)膜をスパッタリング法によって形成したものである。第1透明導電層22は、第1板状基材21の全面に形成されている。なお、第1透明導電層22はITO膜に限定されず、他に、有機導電ポリマー、あるいは、カーボンナノチューブを含有してなる透明な導電性インクなど、公知な方法によって得られる、適当な抵抗値を持つ透明導電層を好適に用いることができる。
【0023】
遮光性導電層23は、例えば導電性のカーボンブラックを含有する黒色の導電性インクで形成した、遮光性を有する導電層である。遮光性導電層23は枠状をなし、上述した第1透明導電層22の上に、印刷によって形成されている。遮光性導電層23の厚さは4〜10μm程度が好ましい。また、抵抗膜式タッチパネル1としての良好な性能や特性を得るためには、遮光性導電層23の電気的特性が、表面抵抗値が300〜400Ω/cm
2、体積抵抗値が40〜60Ωcm程度であることが好ましい。このような電気的特性を得るために、あるいは、遮光性を高めるために、必要に応じて、複数回にわたって印刷を施すことで、遮光性導電層23を複数の層からなるように形成してもよい。
【0024】
第1電極24は、例えば銀を含有する比較的導電性の高いインクを印刷することで、細長い矩形に形成されている。
図2に示すとおり、遮光性導電層23の短い方の辺に平行な方向に沿って、第1透明電極基材2の左右方向(遮光性導電層23の長い方の辺に平行な方向)において、互いに対向した状態で1対の第1電極24が配設されている。それぞれの第1電極24に異なる電圧を印加すると、その電圧が、遮光性導電層23を介して、第1透明導電層22における第1電極24と接している範囲にも印加されるので、第1透明導電層22の左右方向に沿って線形に推移する電位差を生じさせることができる。また、第1透明導電層22に現れる電位を後述する接続端子36へ伝達可能に構成されている。抵抗膜式タッチパネル1は、この電位の情報に基づいて操作位置を特定できるものであって、このような方式自体については、既に十分に公知である。
【0025】
第1絶縁層25は、後述する第2透明電極基材3上の、第2電極33、第3電極34、配線パターン35、接続端子36と、遮光性導電層23とが接触して短絡することを防ぐために形成されるものである。第1絶縁層25は、任意の色調の絶縁性インクによって、遮光性導電層23と概ね同じ枠状に形成されている。ただし、第1電極24を露出させるように開口している点と、遮光性導電層23の透明部26の周縁部において、遮光性導電層23がやや露出する程度に第1絶縁層25の端面を退避させている点で、遮光性導電層23の形状と異なる。第1絶縁層25の端面を退避させているのは、第1絶縁層25の遮光性導電層23に対する印刷ズレや、第1絶縁層25を形成するインクの滲みなどが生じた場合であっても、透明部26に第1絶縁層25が入り込むことを防ぐためのマージンを得るためである。
【0026】
なお、第1絶縁層25において、第1電極24を露出させるようにして開口させた部分に関して、必ずしも第1電極24の全体が露出するように開口させる必要はない。後述する第2電極33との接触と導通が可能でさえあれば、第1電極24の一部のみを露出させるように開口させてもよい。
【0027】
第2透明電極基材3は、下記の各層を有してなるものである。なお、これらの層が形成される範囲や配設される位置については、後に詳述する。
a)第2板状基材31
b)第2電極33、配線パターン35、接続端子36
c)第2透明導電層32
d)第3電極34
e)第2絶縁層37
【0028】
第2板状基材31は、例えば透明なガラス板材からなる絶縁性の透明基材である。第2板状基材31の材料は、例示したガラス板材には限定されず、透明なアクリルやポリカーボネートなどの樹脂を薄板状に形成した板材など、公知な絶縁性の透明板材を好適に用いることができる。第2板状基材31の材料は、抵抗膜式タッチパネル1に求められる性能や機能に応じて、適宜、選択されてよい。
【0029】
第2透明導電層32は、第2板状基材31の一方の面上に、例えばITO(酸化インジウムスズ)膜を形成したものである。第2透明導電層32は、
図1に示す一点鎖線の範囲内のみに形成されている。このように所定の範囲のみに第2透明導電層32を形成する方法として、一旦、スパッタリング法によって全面に透明導電層を形成した後、不要な部分の透明導電層をエッチングによって除去するとよい。
【0030】
第2電極33は、第1電極24と同様に、例えば銀を含有する比較的導電性の高いインクを、所定の形状に印刷することで形成されている。第2電極33は、第1電極24の形状に対応した細長い矩形を呈しており、第1電極24と対向するように配設されている。なお、第2電極33は、少なくとも、上述した第1電極24が第1絶縁層25から露出している部分に対向するように配設されていればよい。
【0031】
第3電極34は、第1電極24と同様に、例えば銀を含有する比較的導電性の高いインクを印刷することで、細長い矩形に形成されている。
図1に示すとおり、第2透明電極基材3の短い方の辺に平行な方向に沿って、互いに対向した状態で1対の第3電極34が配設されている。第3電極34は、第2透明導電層32の上に位置しており、第1電極24の場合と同様に、第3電極34を介して、第2透明導電層32に電位差を生じさせることができるとともに、第2透明導電層32に現れる電位を後述する接続端子36へ伝達可能に構成されている。
【0032】
接続端子36は、外部処理装置から、抵抗膜式タッチパネル1へ電気信号を入力したり、抵抗膜式タッチパネル1から電気信号を出力したりするための端子である。接続端子36は、第1電極24と同様に、例えば銀を含有する比較的導電性の高いインクを、所定の形状に印刷することで形成されている。接続端子36には、図示しない可撓性の薄板状接続ケーブル(コネクタテールとも称される)の先端を熱圧着などの方法によって接続する。これによって、薄板状接続ケーブルを介して、抵抗膜式タッチパネル1と外部処理装置との間を接続することができる。本実施例では、1対の第2電極33(上述の通り第1電極24と導通している)、および、1対の第3電極34のそれぞれに対応して、4つの接続端子36が配設されているが、接続端子36の個数は、抵抗膜式タッチパネル1の方式に依存して変動し得る。
【0033】
配線パターン35は、第1電極24と同様に、例えば銀を含有する比較的導電性の高いインクを、所定の形状に印刷することで形成されている。配線パターン35は、第2電極33および第3電極34のそれぞれと、それに対応する接続端子36との間を接続する配線であって、第2板状基材31の周縁にそって配置されている。
【0034】
第2電極33、第3電極34、配線パターン35、および、接続端子36のうち、第3電極34のみが第2透明導電層32の上に位置している。その一方で、第2電極33、配線パターン35、および、接続端子36は、第2透明導電層32が形成されていない部分の上に位置して形成されている。したがって、第2透明電極基材3上において、第2電極33もしくは第3電極34から、配線パターン35を介して、それぞれに対応する接続端子36まで至る各々の回路の間は絶縁されている。
【0035】
なお、第2電極33、第3電極34、配線パターン35、および、接続端子36は、製造コストの抑制の観点から言えば、これらを1つの工程で同時に形成することが好ましい。
【0036】
第2絶縁層37は、上述した第1絶縁層25と概ね同じ形状の枠状であって、任意の色調の絶縁性インクによって、第2電極33における第1電極24と接触する部分を露出させるように開口して形成されている(
図1においては、第2絶縁層37を省略している)。第2絶縁層37は、第2電極33、第3電極34、配線パターン35の上に位置する。なお、第2絶縁層37は、第1絶縁層25と枠状貼合層4とによって必要な絶縁性が得られるのであれば、必ずしも必要ではない。
【0037】
上述した第1透明電極基材2と第2透明電極基材3とを、枠状貼合層4によって貼り合わせて抵抗膜式タッチパネル1を完成させた状態において、第1電極24と第2電極33とが互いに接触して導通した状態となる。したがって、抵抗膜式タッチパネル1は、接続端子36を介して、必要な電圧を第1電極24あるいは第2電極33に印加し、かつ、それに同期して、第2電極33あるいは第1電極24に現れる電位を読み取ることで、押圧操作位置を特定することができる。
【0038】
以上のように構成された第1実施例に係る抵抗膜式タッチパネル1によれば、第1透明電極基材2において、第1透明導電層22の上に、枠状に遮光性導電層23を形成したので、操作面側から見た場合、枠状の遮光性導電層23のみが視認される。その遮光性導電層23は、全体にわたって単一の導電性インクなどによって形成される層なので、視認される範囲において、色調の相違等が発生しない。したがって、タッチパネルの操作面側から見た外観において、高い意匠性を得ることができる。
【0039】
図4は、本発明の第2実施例に係る抵抗膜式タッチパネル1の要部断面図であって、第1実施例において
図3に示した部分に相当する部分を示した図である。第1実施例と同一な部位には、第1実施例と同じ符号を付して示している。
【0040】
第2実施例における第1実施例との相違点は、遮光性導電層23の透明部26の周縁部において、第1絶縁層25によって遮光性導電層23を完全に覆った点にある。このようにすることで、第1透明電極基材2の操作面に対して比較的強い力を加えて押圧操作されて、第1透明電極基材2が大きく撓んだ場合であっても、第1透明導電層22と導通している遮光性導電層23と第2透明導電層32との間に第1絶縁層25が介在するため、双方が接触して導通することによって生じる不都合を回避することができる。不都合とは、具体的に、実際には押圧操作していない部分で遮光性導電層23(第1透明導電層22)と第2透明導電層32とが接触することで、本来の押圧操作位置が特定できない事態が生じることを指す。
【0041】
また、遮光性導電層23の範囲における透明部の周縁部分が押圧された場合であっても、同様に、遮光性導電層23と第2透明導電層32とが接触して導通することによって生じる不都合を回避することができる。この場合の不都合とは、本来は入力操作ができない遮光性導電層23の範囲が何らかの理由で不意に押圧された場合に、意図に反した入力操作として検出されてしまうことを指す。
【0042】
なお、第2実施例においては、第1絶縁層25の遮光性導電層23に対する印刷ズレや、第1絶縁層25を形成するインクの滲みなどが生じたことによって、第1絶縁層25が透明部26に入り込んで形成される可能性が否定できない。第1絶縁層25が不透明であると、透明部26の周囲に第1絶縁層25が視認され、意匠性を損なう虞があるため、第1絶縁層25として透明なものを用いるのが好ましい。
【0043】
図5は、本発明の第3実施例に係る抵抗膜式タッチパネル1の要部断面図であって、第1実施例において
図3に示した部分(第2実施例において
図4に示した部分)に相当する部分を示した図である。第1実施例と同一な部位には、第1実施例と同じ符号を付して示している。
【0044】
第3実施例における第2実施例との相違点は、遮光性導電層23の透明部26の周縁部において、第1絶縁層25が、遮光性導電層23を覆った上で、さらに、遮光性導電層23の内側に延在した状態、すなわち、第1絶縁層25が透明部26に入り込んだ状態で形成した点にある。この場合は、第1絶縁層25が透明部26に入り込むことが前提となるので、第1絶縁層25を透明とする必要がある。このように構成することで、視認性への影響を来たすことなく、遮光性導電層23(第1透明導電層22)と第2透明導電層32とが接触することを確実に防ぐことができる。